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エンパイアウォー㉑~我ら、義と忠を重んじる将なれば

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #弥助アレキサンダー

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「大帝剣『弥助アレキサンダー』の居所がわかった。これでようやく、次なる魔軍将に戦いを挑むことができる」
 ダンピールの黒騎士、ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)が、いったん、言葉をおいて。
 しかし、と説明を続ける。
「敵が存在するのは、『関門海峡』の海上だ。そのうえ、『弥助アレキサンダー』に挑むためには、一般人である『毛利水軍』、隠し将『豊臣秀吉』をそれぞれ退けなければならない」

 『毛利水軍』は、大軍勢を操るメガリス『大帝の剣』の能力によって、猟兵が敵だと洗脳されている。
 どの兵も会敵するなり、敵意を剥き出しに襲い掛かってくる。
「毛利水軍は、俺たち猟兵に比べれば戦闘能力はそれほどではない。しかし、いずれも屈強な武士たちだ。命を奪うことで排除するやり方でも、たしかに道はひらけるだろうが……。江戸幕府の未来には、禍根を残す結果となるかもしれん」

 隠し将『豊臣秀吉』は、対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』の能力によって、スピードと反応速度を強化している。
「ヤツは動物じみた外見をしているが、かなりの実力者だ。関門海峡の海上を飛び跳ねながら、あらゆる角度からの攻撃を、超高速で受け止める。豊臣秀吉を倒さない限り、弥助アレキサンダーへの攻撃は叶わないだろう」

 大帝剣『弥助アレキサンダー』は、メガリス『闘神の独鈷杵』の力によって発生した『関門海峡の大渦』の中心で、猟兵たちを待ち受けている。
 渦の中心で浮遊しながら、3つのメガリスの力を高めているという。
「弥助アレキサンダーは水上を浮遊しながら、3つのメガリスを操り、果敢に戦いを挑んでくる。この男も、かなりの手練れだ。だが、この男を撃破しない限り、この戦いに未来はない」

 ヴォルフラムはそこまで告げると、手のひらにグリモアを掲げ。
 猟兵たちをまっすぐに見やり、言った。
「俺は転送経路の安全を確保するため、おまえたちに何があっても、助力できない。くれぐれも、海上戦への備えも怠らないように。――武運を祈る」


「秀吉殿、奴らが来たぜ! ここが正念場だ!」
 勇ましくそう吠えたのは、UDCアースでいうところのアフロヘアーをした褐色の男。
 この男こそ、大帝剣『弥助アレキサンダー』。
 そして、眼前に佇むのは、
「フェンフェン! フェン?」
 隠し将『豊臣秀吉』――なのだが、その姿はどう見ても、黒い毛玉のごとき生き物だ。
 しかし、弥助アレキサンダーは深く頷き、会話を続ける。
 はた目には意味不明なやりとりも、彼らにはすべて通じているらしい。
「ああ、大丈夫だ。『大帝の剣』『逆賊の十字架』『闘神の独鈷杵』。……メガリスは、俺達渡来人の至宝。扱いは心得てるよ」
「フェン……フェンフェン!」
「それも、心得ている。俺も侍、秀吉殿の覚悟に口は挟まねぇ。秀吉殿を盾にして、万にひとつの負けも無いように全力を尽くすよ」
 弥助アレキサンダーは、まるで『武将の鑑』のごとき言葉を聞いた後のように、感銘をうけた面持ちで。
 黒い毛玉――もとい、豊臣秀吉がうっそりと頷く。
「フェンフェン、フェフェン」
「ああ、そうだな。『全ては信長様の為に』。これがまた言えるなんて、嬉しいねぇ……!」
 ふたりはがっしと手を組み交わすと、それぞれの配置へつくべく、行動を開始した。


西東西
 こんにちは、西東西です。
 このシナリオは、「難易度:難しい」の「戦争シナリオ」です。

 どの章もプレイングの行動内容を重視し、難易度相応の判定を行います。
 1章~3章まですべて「海上での戦い」となるため、海上戦に対する対策も、行動判定に加味します。
 挑戦者多数となった場合は、行動成功度の高い方を採用します。

 ●特殊ルール
 大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、【苦戦】や【失敗】となる危険性があるので注意してください。

 それでは、ご武運を。
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第1章 冒険 『毛利水軍を突破せよ』

POW   :    邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。

SPD   :    毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。

WIZ   :    毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。

👑3
🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シル・ウィンディア
洗脳なんて…
人の意志を弄ぶだなんて
許さないっ!

首洗って待っててっ!

とは言ったものの…
どうやって抜けようかな、これ

【空中浮遊】で水軍の射程外で敵の陣形をじっくり観察
完璧な夫人でも
どこかに隙はあるはずなんだよね
でも、あからさまな隙のあるところは狙わないでおこう
罠っぽいしね

普通で考えたら船を使って接敵するって考えるだろうから
鉄砲とか弓とかで攻撃してくるだろうなぁ…
よし、それなら…

水しぶきが上がる位の水面すれすれを
【空中戦】【残像】を駆使して飛んでいくよ
矢や弾の弾幕が厚くなってきたら
【高速詠唱】のUCで一気に加速っ!
当たりそうになっても
風の【属性攻撃】が付与された杖で
【武器受け】して
敵の攻撃を逸らすね




 風の精霊エアリアルの力を借り受けて、風精の翼を羽ばたかせながら空をゆくのはシル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)。
 頬を撫でる潮風に、きらきらと陽光を反射する海原。
 二方位に陸地を臨む絶景はうつくしく映ったが、やがて視界を埋めつくすように浮かぶ船団をみとめ、エルフの少女は可憐な唇を噛みしめる。
 ――船に乗る一般人すべてが、大軍勢を操るメガリス『大帝の剣』の能力によって洗脳されている。
「武士とはいえ、争いのために洗脳するだなんて……。人の意志を弄ぶだなんて、許さないっ!」
 彼らをメガリスの力から解きはなつためには、猟兵である自分たちが、この戦場を突破していかなければならない。
 ぐっと拳を握りしめるも、ただ憤るばかりでは、メガリス使用者である弥助アレキサンダーの元へたどり着くことは難しい。
「首洗って待っててっ! ……て、言いたいところなんだけど。一体どうやって抜けようかな、これ」
 鳥よりも大きな姿が羽ばたく様は、海上ではあまりにも目立ち過ぎた。
 鉄砲や弓矢などの攻撃が届かぬよう、シルはできる限り高高度に位置取り、敵陣形の観察に徹する。
 多くの船団は大型船である『安宅船』を中核に据え、小型船の『関船』・『小早』が脇を固める陣形をとっている。
 百余名の戦闘員を擁する『安宅船』が主力を司り、小回りの利く『関船』・『小早』が安宅舟に近づく船の露払いや、遊撃部隊の役割を引き受けているようだ。
「どんなに完璧な布陣でも、どこかに隙があるはずなんだよね……」
 隙あらば突撃を仕掛けようと思っていたが、洗脳された武士たちは練度高く船団を組み、容易に飛びこめるような場所は見当たらない。
「一般人同士の海上戦を考えれば、接敵には船を用いるはずよね。とすれば、用意している装備はおそらく鉄砲や弓のはず。……よし、それなら」
 風の精霊『エアリィ』と契約した杖を握りしめ、シンは意を決し、海面すれすれまで急降下!
 残像を駆使しながら、一気に船の合間を飛翔していく。
 いくつかの小型船をかいくぐることに成功したが、シルの予想通り、水軍兵たちが最も注意を払っていたのは、海上からの接敵だ。
 それゆえに、水面を高速移動するシルの姿は、『安宅船』の武士たちに最大級の警戒をもって迎えられた。
「備えよ――、撃ていッ!」
 敵襲を報せる陣太鼓が次々と鳴り渡り、銃を構えた武士、弓を引く武士が、恐るべき精度でシルを仕留めにかかる。
「ちょ、ちょっと! 待ってよ!」
 想定よりも早い弾幕の嵐に、シルは焦りを覚えた。
「風の精霊、エアリアル……。わたしに力を……。さぁ、一緒に舞おうかっ!!」
 かろうじて高速詠唱でユーベルコードを唱えきると、『エレメンタルドライブ・エアリアル』を発動し、急加速!
 しかし、杖の威力を増強させたとて、高速飛翔を維持しながらすべての攻撃を完全に防ぎきるには、シルの技量はまだまだ未熟だった。
(「わたしの『武器受け』の腕じゃ、この集中砲火を耐えきれない……!」)
 一般人の攻撃とはいえ、単騎のシルと、数百の武士たちによる一点集中攻撃。
 たとえ戦場を抜けることができたとしても、敵将にまみえるまでに、無用の傷を負うことになるのは否めない。
(「だからって! ここであきらめるの?!」)
 ゆき過ぎる武士たちの眼は、あらん限りの敵意に満ち満ちていた。
 かりそめの怒りに魂を燃やし、異端分子たるシルを撃ち落とさんと、砲弾と弓矢を浴びせ続ける。
 風の護りを越えた銃弾が、腕の皮膚を裂いた。
 眼前に迫った弓矢を、間一髪のところでふり払う。
(「だってこんなの、許せないじゃないっ!」)
 再び噛みしめた唇から、血の味がにじむ。
 倒れるべきはここではない。
 争うべきは、彼らではないのだ……!

 しかし、今のシルには、これ以上の手だてがない。
 悔しさを胸に撤退を考えた、その時だった。
 轟くように陣太鼓が鳴り渡る戦場に、場違いなほどのんきな、そしてどこか眠たげな、歌声が響いた。
 声の主を求め、シルが目線を向けた先には――。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

陰白・幽
うーみーはー広いなーおおきーいなー……おっとと、歌ってる場合じゃないよね〜

海の上での戦いだとまともにやったら海賊さんに負けちゃうよね……よし、ボクはボクの得意なことをしよっと。

まーずはボクのトゲ付き鉄球でズガーンといくよー。船に当たれば大きな穴が開いたりとか、当たらなくても鎖で船の動きの邪魔をするよー。
あとは船に飛び移ってUC使って鎖で繋いで船と船をぶつけたり、鋼糸を使って足とかに引っ掛けて海賊さん達をを船から落とすよー。
船とかを壊して危なくなったらボクは空を飛んで避難だよー。
グッバイ海賊さん、また会おうねー……

信長さんの部下?のみんなって変な人ばっかな気がするけどここの2人はどんな人だろ〜




「うみー それはひろくて、とってもとってもおおきいんだー」
 轟くように陣太鼓が鳴り渡る戦場に、場違いなほどのんきな、そしてどこか眠たげな歌声を響かせていたのは、白きドラゴニアンの陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)。
 自前の龍翼をもってすれば、海上移動などお手のもの。
 マイペースに飛翔しながら戦場までやってきたものの、眼下の船団がなにやら騒がしい。
 見れば、エルフの猟兵少女が船団の集中砲火を受け、ほうほうの体で逃げ回っているようだ。
 大型船『安宅船』に詰めた百余名の武士たちの、鉄砲や弓矢の雨あられ。
 海面に近づこうものなら、小型船の『関船』・『小早』が、遊撃部隊のごとく突撃を仕掛けにやってくる。
「おっとと、海賊さんたち、もう動きはじめた感じ? ってことは、歌ってる場合じゃないよね?」
 幽はニャンボーシを引き下げしっかりと被りなおすと、龍を滅ぼすために作られたというトゲ付き鉄球の鎖を、しゃらりと鳴らした。
 一般人とはいえ、相手は海賊を生業とする手練れの者たち。
 まともに海の上で戦い、勝てるかというと、実のところあまり自信がない。
「……よし、ボクはボクの得意なことをしよっと。まーずは、このトゲ付き鉄球でズガーンといくよー」
 「そーれ」の掛け声にあわせ、『龍破の鉄球』をぶうんとひと投げ。
 猟兵である幽にとっては、軽々と扱える代物ではあるけれど。
 投げ込まれた方は、そうはいかない。
 ――ド、ゴオオォォン!
 一艘の『関船』に穴があき、見る間に海中へと沈んでいく。
 戦闘員たちはというと、沈没を察して次々と海に飛びこみ、他船へと乗り移るなり、早々に攻撃を再開している。
 このあたりの対応の早さは、さすがは『海賊』といったところか。
 小型船めがけ鉄球を投げるのは簡単だったが、大型船からの攻撃は激しくなる一方。
 船を破壊するたびに、ふわり、ひらりと空を飛び避難していたものの、このままではらちがあかない。
 眼前を進む大型の『安宅船』。
 その最も高い屋根に舞い降りると、ユーベルコードを発動!
 別の『安宅船』の船体へドラゴンオーラをはなち、爆破するとともに、オーラの鎖で船と船とを繋いでいく。
「我らの陣営に仇成す者ぞ! 皆のもの、討ちとれィ!!」
「「「 オオオーッ! 」」」
 血気盛んな武士たちが槍や刀を手に屋根の上へ迫ったが、すぐさま竜繰鋼糸をはなち足を絡めとると、近づく者たちを屋根から振り落としていく。
 沈没する一艘に引きずられ、幽が足場としている船も、早くも傾きはじめた。
 この場での仕事は、すでに済んでいる。
 長居は無用だ。
「グッバイ海賊さん、また会おうねー……」
 龍の翼で空を打ち、太陽を背に天高く舞いあがる。
 先ほど見かけたエルフの猟兵少女は、なんとか逃げおおせたらしい。
 ほかの猟兵たちの進撃もはじまっているのだろう。
 見れば、あちこちで水柱や閃光がたち、武士たちが鬨(とき)の声をあげている。
 幽は己が手に掛けた沈みゆく船団を見やって。
 それから、海原の果てに視線を移し、ひとりごちた。
「信長さんの部下? ……のみんなって、変な人ばっかな気がするけど。ここのふたりは、どんな人だろ?」

成功 🔵​🔵​🔴​

ヒルデガルト・アオスライセン
飛行は可能ですが、UC回数切れのみ使います
反射光の屈折操作で外見をうっすらと、透明のように見せかけ
水面ギリギリをスカイステッパーで跳ねる様に移動し、船底・側面に穴を開けながら大渦へ進みます

武に生きた精鋭の弓は気持ち悪い射程と精度を誇ります
軌道を読まれぬようフェイント、三次元の高度昇降も混ぜて細心の注意を払います
攻撃よりも回避に重点を置き
光の波長を身体で受け、矢尻が放つ反射光を感知したら迷わず避けて下さい

船内に敵兵があれば、拾った瓶・箱に聖水と閃光を凝縮した簡易フラッシュバンを投げ捨て自由を奪います

避けれぬ矢雨は力術の壁とガントレット
砲撃は軌道を変えるか、聖者の身代わりに庇わせます

※諸々ご自由に




 船団の中核を担う大型の『安宅船』二隻が、不自然な沈み方をしている。
 近くを飛翔していた、白きドラゴニアンの猟兵がユーベルコードで手をくだしたらしい。
 それでも海へ飛びこみ、すぐさま別の船から攻撃を仕掛ける武士たちの姿に、戦乱を生きる人間たちのしたたかさを感じずにはいられない。
 飛翔能力や、自前の翼で飛ぶ猟兵たちをよそに、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)はスカイステッパーで跳ねるように海面を移動していた。
 水面ギリギリを疾走する姿は、飛び魚にも似て。
 煌めくプリズムのごとき純白のバトルドレスをなびかせ、風をきって跳ねる、跳ねる。
 ヒルデガルトの腕をもってすれば、図体の大きな『安宅船』は、通りすぎざまに側面に穴をあけるのは容易なこと。
 居並ぶ櫂のそばでは、武士たちの声も呼吸も聞こえたけれど、
 反射光の屈折操作で外見を透明に見せかけた姿は、よく目を凝らさない限り、ひとの眼には映らない。
 それでも、数隻の船に穴をあけた頃には、屈強な戦士たちには『姿の見えない敵』が居ることに気づいた。
 海面に残る不自然な『足跡』の軌跡をたどり、ついにヒルデガルトの姿を視認した武士が声をあげる。
「曲者だ! 曲者がいたぞ!」
 すぐさま陣太鼓が鳴りわたり、小型船の『関船』・『小早』が群れを成して襲いくる。
「そうこなくては」
 吐息とともに短く吐き、より高く跳躍!
 よく梳かれた髪が、陽の光に透けて。
 大型船の側面におびただしい数の矢雨が突き刺さるのを眼下に、ヒルデガルトは次の足場めがけ、船のへりを蹴った。
 着地と同時にかすめた矢を、ガントレットで弾き、振りはらう。
 矢尻がはなつ反射光を感知したのだ。
 念には念をと、光の波長に注意を払っていたのが幸いした。
(「武に生きた精鋭の弓は、気持ち悪いほどの射程と、精度を誇るもの」)
 ヒルデガルトを狙う矢や鉄砲は、猟兵である彼女が舌を巻くほどの正確さで、執拗に付け狙う。
 一瞬でも動きを止めようものなら、蜂の巣にされかねない。
 すべらかな銀靴『モーメントグリーヴ』のヒールを鳴らし、スラスターを吹かせ急旋回。
 軌道を読まれぬよう動きにフェイントを挟み、三次元を意識した高度昇降をおり混ぜながら、細心の注意をもって攻撃をかいくぐる。
 とはいえ、武士たちを鎮静化させなければ攻撃の雨はやまず、ヒルデガルトも大渦へ進むことが叶わない。
 ヒルデガルトはあえて船の上に着地すると、戦く武士たちの真中に飛びこんだ。
 探していたのは、『工作』の道具だ。
 仲間を射殺すわけにもいかないと攻撃が止んだ隙をついて、手近に転がっていた木箱を拾い走る。
「逃すな! 斬り捨てィ!」
 指揮官の声に囲いこみ、抜刀する武士たちをよそに、ヒルデガルトは力強く甲板を蹴った。
 ――木箱に詰めこんだのは、爆発させるために持っていた聖水瓶と、ペルスペクティヴァで精製した閃光。
 それを、群がる武士たちの中心へ放り投げる。
「刮目なさい」
 声と同時に、ヒルデガルトはより高い位置へ跳躍!
 次の瞬間、閃光と爆音が響きわたり、至近距離で直撃を受けた武士たちが失神し、次々と倒れていく。
 傷を与えるような攻撃を加えたのではない。
 ――目を眩ませる閃光と、耳をつんざく爆発による、無力化。
 『音響閃光弾』の仕組みが理解できる者ならその効力は頷けただろうが、武士たちにとっては、神の御業のごとき所業に見えたかもしれない。
「案外、うまくいくものね」
 戦力外となった武士たちをその場に残し、ヒルデガルトは次なる船を鎮めにかかった。

 船外へ投げ出された武士たちも多くいたが、創意工夫を凝らした猟兵たちの手心により、毛利水軍の兵たちに死者は出ていない。
 沈黙し、機動力をうしなった船団を後にして。
 海原の先に見えてきたのは、将と呼ぶにはあまりに異様な、1体の大きな毛玉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『隠し将『豊臣秀吉』』

POW   :    墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:フジキチ

👑4
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 船外へ投げ出された武士たちも多くいたが、創意工夫を凝らした猟兵たちの手心により、毛利水軍の兵たちに死者は出ていない。
 沈黙し、機動力をうしなった船団を後にして。
 海原の先に見えてきたのは、将と呼ぶにはあまりに異様な、1体の大きな毛玉だった。
 その毛玉が、高速移動で海上を飛び跳ねている。

 グリモア猟兵によれば、隠し将『豊臣秀吉』は、対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』の能力によって、スピードと反応速度を強化しているという。
 秀吉の背後には、弥助アレキサンダーの維持する大渦が見えている。
「フェンフェン、フェフェン!」
 猟兵たちは、だれひとり彼の言葉を理解するすべをもたなかったが。
 その気迫から、「弥助アレキサンダーへの攻撃はひとつも通さない」といった、強固な意思を感じとることはできた。

 大帝剣『弥助アレキサンダー』を撃破するためには、まずは隠し将『豊臣秀吉』を退けなければならない。
 猟兵たちは覚悟を決め、海上を跳ねまわる秀吉へと挑みかかった。


 ※2章について
 ・引き続き、海上戦闘となります。
  1章よりも、足場となるモノがありません。

 ・1章で発生した『破壊した船の木片』は、戦場にいくつか浮かんでいます。
  ただし、高波にのまれれば沈み、敵の攻撃を受ければ破壊されてしまうような、なんのへんてつもない木片です。
 ・隠し将『豊臣秀吉』は、必ず先制攻撃を行います。
  詳細は本シナリオのマスターコメントをご一読ください。
フィオレッタ・アネリ
もふもふなヒデヨシさん、忠義に厚くてイイ人みたいだけど…
大帝の剣を止めるために、ぜったい負けられないね

まずは《ファヴォーニオ》で風を纏って空中浮遊
空中戦で空を飛び回り、ヒデヨシさんの先制攻撃を見切りで避けながら
動きを観察して、攻撃の軌道やパターンを覚えるようにする
避けきれなければ風の壁を作り出してオーラ防御

先制攻撃を凌いだらこっちの番!

勇気を持って攻撃にタイミングをあわせ
《春の祝福》で威力を増幅した《メリアデス》の蔦でカウンター
ヒデヨシさんを絡め取る
さらに蔦を何重にも作り出して、全力魔法で完全に拘束するよ

拘束後は《クローリス》の精神攻撃で上下感覚を混乱させて
念動力で大渦に放り投げて沈めちゃう!


陰白・幽
海……あの変な毛玉?お猿さんなのかな?……まあ、何にしたってぶっ飛ばすのは変わらないよねー。

海の上で足場も減ったし……ボクは今回も空を飛んで動くよー。
着地から次の跳躍までの一瞬は隙ができると思うからそのタイミングを狙ってトゲ付き鉄球で攻撃して隙ができたところで飛び蹴りの追撃を狙っていくよー
敵の墨俣城は大きいから距離をとってスピードを上げて回避に専念するよー……敵は大きいから攻撃を当てるチャンスは多いと思うから隙をついてドラゴニアンチェインを敵の腕や足に当てて、ぐるぐる回りながら回避を続けて、グルグルにして動きを封じて、最後はボクの怪力で城ごと敵を投げ飛ばすよー
……ロボットカッコよかったなー




 渦巻き、荒波のぶつかりあう海上を眼下に、自前の翼で悠々と羽ばたくドラゴニアンの陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)。
 幽は海上を飛び跳ねる隠し将『豊臣秀吉』を前に、ダボダボの袖で目元をこすった。
 睡眠を愛するあまり、戦場で眼をひらきながら夢でも視ているのかと思ったのだ。
 頬をむにっと、つねってもみた。
「……いたいよー」
 おそらく夢ではないはずなのだが。
 念のため、そばを飛んでいた猟兵にも確認してみる。
「……あの変な毛玉? お猿さんなのかな?」
 風精の精霊魔術《ファヴォーニオ》を駆使して空中浮遊していた気のいい神――もとい、フィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)は、空に踊る花のようにまばゆい笑顔を向け、言った。
「そう、あのもふもふなお猿が、ヒデヨシさん。忠義に厚くてイイ人みたいだけど……。大帝の剣を止めるために、ぜったい負けられないね!」
 拳を固め、意気ごむ少女を見て。
 ドラゴニアンの少年は、どうやら今が夢ではないらしいと判じた。
 もふもふの『毛玉』でも、ヒトの身と同程度の体積であれば愛でようもあるが。
 仰ぎ見るほどの大玉ともなれば、勢いよく転がり迫るさまは、山頂から滑落してきた大岩のごとき破壊力をもつ。
「……まあ、何にしたって。ぶっ飛ばすのは変わらないよねー」
 弥助アレキサンダーと戦うためには、避けては通れぬ相手だ。
 幽は緒戦でも使用したトゲ付き武器『龍破の鉄球』を構え、跳ねまわる秀吉を見やった。
 それを開戦の合図ととったのか。
 ひときわ高く飛びあがった秀吉が、叫んだ。
「フェンフェン! フェフェーン!!」
 声にあわせ、潮の流れが早くなる。
 激しくぶつかり合う渦の真中から召喚されたのは、秀吉の2倍ほどもある巨大な『墨俣城型ロボ』だ。
 ――サムライエンパイアに存在する城に、手足を付けたようなロボット。
 秀吉は、軽い身のこなしで本丸の上に飛び乗ると、それまでと同じように跳ねてみせた。
「フェン、フェーン!」
 秀吉の動きをトレースし、巨大な墨俣城も海面を蹴り、跳躍!
 ロボが飛び跳ねるごとに海面が激しく波うち、木片に捕まっていた猟兵たちがたまらず悲鳴をあげる。
 飛行状態の猟兵たちには、水面の状態など影響のないこと。
 幽は距離をとって飛び、スピードを上げ、まずは回避に専念。
 フィオレッタも墨俣城の周囲を飛び回り、攻撃の軌道やパターンを観察する。
 しかし、敵は高速化されているうえにトリッキーな動きが多い。
 そうこうしている間に、秀吉の方がフィオレッタの動きを捉えた。
「フェフェフェーン!」
 『猿玉変化』した墨俣城で体当たりを仕掛け、空飛ぶ猟兵を容赦なく海面へ叩きつける。
「っく……!」
 フィオレッタはとっさに風の壁を作りだし防御を試みたが、その巨躯に抑えこまれては、風精の精霊魔術を駆使しても浮かびあがることができず。
 そのまま、なすすべなく海中へと沈んだ。
 仲間のもとへ駆けつけようにも、幽は墨俣城の攻撃を回避するので精一杯。
「……もうちょっと、大人しくしてほしいなー……」
 つぶやき、墨俣城の動きを注視する。
 ――海面に着地する瞬間。
 跳躍までの一瞬の隙を狙い、手にしていたトゲ付き鉄球を振りかぶり、投げた!
 ――ドガゴォン!!!
 砲弾のごとく撃ちこまれた鉄球が、墨俣城の屋根の一部を崩落させる。
 巨躯であるということは、それだけ的が大きいということ。
 どれだけ動きが早かろうと、狙いを定めることさえできれば、攻撃は外しようがない。
 衝撃を受け、墨俣城にしがみつき難を逃れた秀吉が跳ね、沈みかけていた墨俣城の体勢を立て直す。
「フェフェンッ! フェーン!!!」
 冷静に戦況を確認し、攻撃を再開しようとした、その時だ。
 海中から甘やかな馨りと金色の疾風が吹き抜けたかと思うと、明朗な声が響き渡った。
「花よ、森よ、風よ――春と豊穣の恵みあれ!!」
 力ある言葉とともに、芽吹いた蔦が一斉に墨俣城に絡みついた。
 フィオレッタの樹精の精霊魔術《メリアデス》だ!
 海中に沈み敵の注意が逸れたところで、反撃の機会をうかがっていたのだ。
「ヒデヨシさん、今度はこっちの番だよ!」
 神の祝福を受けた精霊たちは、喜んでフィオレッタに力をかした。
 秀吉は本丸の上で懸命に跳ねたが、驚異的な成長速度で石垣や屋根瓦をしめあげる蔦が、跳躍しようとする動きを抑制する。
「フェン! フェンン~~~~!!!!」
「おねーさん、無事だったんだねー。……それじゃ、ボクもー」
 仲間の復帰が確認できたところで、幽のマイペースは変わらない。
 ふたたびトゲ付き鉄球の鎖を手に、ぶんぶんと勢いをつけて回して。
 スピードに乗せぶうんと振りかぶり、ロボの腹部めがけて投げこめば、正面の石垣にクリーンヒット!
 竜翼で力強く空を打ち、勢いよく降下して、ロボの横合いからさらに追撃の飛び蹴りを見舞った。
 その時には、ユーベルコード『ドラゴニアン・チェイン』を発動させている。
 打撃地点を起点に、オーラの鎖を巻きつけるべく、墨俣城の周囲を何度も高速旋回していく。
 腹に穴をあけられた墨俣城ロボは、秀吉の動きをトレースすることもできず、しだいに海中へと沈みはじめた。
「さあ! ヒデヨシさん、ロボットさん、覚悟してね!」
 フィオレッタの言葉に続いて、花精の精霊魔術《クローリス》が、上下感覚を混乱させる精神攻撃を仕掛ければ、
「フェンフェンフェ~ン……!」
 目をまわした秀吉が、たまらず墨俣城ロボから飛び降りた。
 ――できれば秀吉ごと手を下したかったが、逃げたものは仕方がない。
 オーラの鎖でぐるぐる巻きにした墨俣城を、幽がうんしょと、引っ張りあげて。
 フィオレッタも念動力を発動し、支援する。
「いー くー よー……」
「せー、の!!」
 文字通り手も足も出せなくなった墨俣城は、猟兵ふたりのなすがままに、出現した大渦へと放りこまれた。
 腹と屋根にあいた穴から次々と海水が流れこみ、ロボットはなすすべもなく沈んでいく。
 秀吉は元のとおり海水面を跳ねまわっているが、これでもう、墨俣城ロボを召喚されることはないだろう。
 標的を秀吉へと向ける仲間の猟兵たちを見やりながら、
「……ロボット、カッコよかったなー」
 幽は沈みゆく城を見送り、すこしだけ、残念そうにつぶやいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヒルデガルト・アオスライセン
速さと格が上で
毛皮の剛性に伸縮と弾性
殴打は凡そ通じない、でもやるわ

靴とベルトの空圧操作で飛行
香水を着用

イーコアで敵速度・距離を常に収集
属性攻撃&オーラ防御で氷の闘気を身に纏い
毎接近時に気取られぬよう体温を奪います

盾、籠手捌きと回転を軸にした軌道で衝撃を受け流し
牽制に剣、水圧砲から冷水を射出
武装は使い捨て身軽に

目が慣れるギリギリまで様子見
陽と雲に紛れる様に急上昇して時間稼ぎ、低気温の上空に誘導したい

身代わりに香水をつけ、氷の闘気を全て流し込み、凍結機雷を作ります
光の屈折で距離を狂わせ、囮を犠牲に回避
間髪入れず凝固部分を魂砕きで光に還します

※諸々ご自由に


鎹・たから
あなたも、守りたいものがあるのですね
けれどそのために
無辜の人々が犠牲になっています
こども達の未来が、うばわれてしまう

ならばたから達は、あなたをほろぼします

木片を足場に飛び跳ねて戦いましょう
伸びる一撃を可能な限りジャンプとオーラ、残像で避け
また、攻撃技持つ味方をかばうこと優先
【オーラ防御、残像、かばう、覚悟、勇気】

彼の伸びた部位を足場に使うことも吝かではありません
手裏剣とセイバーで体を斬り裂き
目の前を飛び跳ねては此方へ意識を惹いて隙を作り
味方の攻撃に繋げます
【空中戦、ダッシュ、2回攻撃、気絶攻撃、鎧砕き】

たからだけで仕留められるとは思っていません
けれど、きっと必ず
この一撃一撃が、勝利に近付きます




 ――このままでは、防衛線を突破されてしまう……!
 と、おそらく考えたであろう秀吉は。
 後がないことを悟り、さらに高速での攻撃を仕掛けはじめた。
「フェンフェンフェン、フェーン!!」
 水面をランダムに跳ねる水きり石のごとく、黒い毛玉が四方八方に突撃を仕掛ける。
 これまで攻撃を仕掛けていた猟兵たちも、その速さには手をこまねき。
 木片や浮きを頼りに戦場に至った猟兵たちは、敵の攻撃や大波にのまれ、撤退を余儀なくされていった。
 しかし、
「速さと格が上で、毛皮の剛性に伸縮と弾性。殴打はおよそ通じない。――でも、やるわ」
 純白のバトルドレスをひるがえし、ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)が、決意とともに空を蹴った。
 彼女自身に、翼はなく。
 彼女の持ちこんでいた、光を糧に力場を発生させる装置――バックル型波長増幅ギア『ボイドテリトリーモジュール』が、望むままの空圧操作を可能にしていた。
 それは、『聖水』がある限り永久稼働する代物で。
 ヒルデガルトが強固な『聖水瓶』と、光を操り聖水を精製する技術『ペルスペクティヴァ』を持っていたがゆえに、できたことだ。
 ただようスノーフレークの仄かな芳香は、かの神官戦士がまとったものだろうか。
「なんて軽やかな――」
 海上の木片をよすがに移動していた鎹・たから(雪氣硝・f01148)が、上空を駆るヒルデガルトを見やり、思わず呟く。
 大きく波打つ海面に木片がのまれれば、たからはユーベルコード『灰雪(ハネユキ)』を駆使し、空中を蹴って難を逃れた。
 とはいえ、自身で力場を生成するヒルデガルトとは違い、たからのジャンプには限りがある。
 秀吉はそれを見てとり、まずは標的をたからに定めて、
「フェン! フェフェーン!」
 『猿玉変化』でバウンドモードへと移行し、振りかぶった腕をぐんと伸ばして、羅刹の少女を捕獲しようと試みる。
 たからは跳躍と同時に残像を残し、オーラを展開。
 しかし、対象を異形強化するメガリス『逆賊の十字架』の支援効果は凄まじく、その反応速度からは逃れられなかった。
「くっ……!」
 漆黒の鍵爪にわしづかみにされ、白雪のごとき肌が裂ける。
 否応なく秀吉の元へとさらわれるたからを救ったのは、彼方から放出された、怒涛の冷水砲だった。
「フェッ!? フェ~~~ン!!」
 人間であれば押し流され、体温を奪い尽くされ、海の藻屑となってもおかしくはないほどの水撃。
 秀吉はかろうじて踏みとどまり、やむを得ずたからを手放すに留まった。
「さすがに、隠し将相手ではこの程度ね」
 マンモスをも吹き飛ばすとうたわれる超重聖水放射機であっても、かの豊臣秀吉をくだすには物足りない。
 ヒルデガルトは『水圧砲』を海へと投げ捨て、たて続けに伸ばされた秀吉の腕を、黄金の眼で見定める。
 陽光にきらめく銀靴が力場を踏みしめ、空を蹴り。
 構えた盾と籠手捌きで身体を捻ると、悪夢のごとき漆黒の毛並みが脇をかすめていった。
 目線を移せば、スノーフレークオブシディアンの角を戴く少女が、木片を頼りに跳ね戻ってくる。
 ヒルデガルトは微かに唇の端をもたげ、羅刹の少女に目配せをして。
 手にしていた『機構剣リジェクションバスター』をはなち、彗星のような軌道を取るそれを、秀吉めがけ撃ちはなった。
 ――彼女は、己のために『機』をつくろうというのだ。
(「たからだけでは、仕留められない敵であっても。彼女とならば。勝利に近付くことができるかもしれません」)
 もとより、己の動きは『だれか』を活かすために捧げる心づもりだ。
 自律稼働する剣に眼を奪われた秀吉の死角へと回りこみ、たからは伸びた腕に飛び乗った。
「あなたも、守りたいものがあるのですね。けれど」
 ゴムのように戻ろうとするその腕を、タイトロープ代わりに駆け抜ける。
 胸元を彩るあざやかな紅椿のスカーフが、空に紅をひいて。
「――けれどそのために。無辜の人々が犠牲になっています。こども達の未来が、うばわれてしまう」
 接敵に気づいた秀吉が、ふたたび鍵爪を閃かせる。
 しかし、むつの結晶をかたどる鋭い刃が舞う方が、早い!
「ならばたから達は。あなたを、ほろぼします」
 眉間を斬り裂かれ、秀吉の小さな眼が痛みに縮む。
 透明無垢な硝子のつるぎで、さらに一撃を加えようとしたが、
「フェンフェン、フェーン!!!!」
 薙ぎ払うように向けられた腕がたからの体躯を跳ね飛ばし、やむなく距離をおいた。
 だが、『これで十分』だ。
 陽光に眼を細め上空を見やれば、そこに、彼の神官戦士の影が浮かぶ。
 ――あとは、彼女に任せれば良い。
 たからはできる限りその場から離れるべく、急ぎ木片を蹴り、空を蹴った。
 秀吉はたからがおそれをなして逃げ出したとみて、追うことをしなかった。
 それが、彼の命運を分けた。
 残る猟兵は、己の真上を浮遊する者、ただひとり。
「フェン! フェーン!!」
 弥助アレキサンダーへの誓いを胸に、秀吉は海面を蹴る。
 その身体は、一瞬ではるか上空へと至り。
 先ほどから巧妙に光を操っていた忌まわしき猟兵の姿を、とらえる。
 今度こそ。
 今度こそ逃げ場はないと閃かせた鍵爪が、少女の柔肌を斬り裂いて。
 しかし、流れ出たのは鮮血ではなかった。
 弾けるように、膨大な冷気が放出され。
 触れた爪先から、毛先から、次々と身体が凍りついていく!
「フェ……フェフェン!?」
 仄かな芳香が鼻先をかすめた時には、すべてが『整って』いた。
 凍結機雷と化した『身代わり』に、攻撃を喰らわせ。
 さらに上空で待機していたヒルデガルトが、急降下の勢いに乗せ、迫る。
「せー、のっ!!」
 きらめく銀の髪が、彗星のごとく尾を描いて。
 悪を撃ち、光の塵に粉砕する重い蹴りが、凍りついた秀吉の眉間を、砕いた。
「フェッ――」
 技巧に技巧を尽くした策は、秀吉の理解の及ぶところではなく。
 隠し将『豊臣秀吉』は、己がいかにして破られたのかを悟る間もなく、粉々に砕かれ、海へと墜落した。
 ――ド、ォォオオオオッ!!
 流星落としのごときその所業は、戦場に一本の水柱をうみだし、周囲の海を大いに荒らした。

 時間稼ぎの意を汲み、早々に避難していたたからは。
 水柱がいたずらにつくりだした虹に眼を向けながら、ヒルデガルド――同い年の猟兵の少女へと手を振った。
 いかなヒルデガルトであっても、策を尽くすためには敵の眼を逸らすだけの時間が、どうしても必要で。
 決め手の一撃を持たぬたからには、どうしても仲間の力が必要だった。
 どちらが欠けても、完成しなかった策。
 それが、奇跡のように、この戦場を制したのだ。

 かくして隠し将『豊臣秀吉』は倒れ、骸の海へと還り。
 残るは、大帝剣『弥助アレキサンダー』ただひとり。
 猟兵たちは大渦の中心で浮遊し、3つのメガリスを手にした男と、対峙することになる――。
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『大帝剣『弥助アレキサンダー』』

POW   :    大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:みやこなぎ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 戦場に立った、一本の巨大な水柱を認め。
 関門海峡の大渦の中心に浮遊し、仁王立ちで君臨し続けていた大帝剣『弥助アレキサンダー』は、盟友・豊臣秀吉の死を悟った。
「……秀吉殿ほどの手練れが断固として盾役を退こうとしなかったのは、こういうわけか」
 空に描かれた七色の虹は鮮やかに映ったが、弥助の胸中には、これまでにない暗雲がたれこめている。
 『大帝の剣』。
 『逆賊の十字架』。
 『闘神の独鈷杵』。
 渡来人の至宝である3種のメガリスをもってしても、立ちはだかる猟兵たち。
「だが、俺にだって意地がある。秀吉殿に後を託されたからには、ここを退くわけにはいかないんでな」
 足場のない戦場を渡る影をみやり、弥助は顔をあげた。
 かれらこそが、盟友をくだした仇。
 かれらこそが、己がくださねばならぬ敵。
 弥助は厚い唇を引き結び、手にした『大帝の剣』を握りしめる。
「さあ来い、猟兵ども。俺たちの遺志が勝つか。おまえたちの意志が勝つか。勝負といこうぜ!」

 戦局がどうであれ。
 胸に掲げる誓いは、ただひとつ。
 そう。
 ――すべては、信長のために。


 ※3章について
 ・引き続き、海上戦闘となります。
  本戦場では、大渦の中心上に浮かぶ敵を相手に戦うことになります。
  2章で存在していた木片は渦によって流され、海上には一切の足場がありません。

 ・大帝剣『弥助アレキサンダー』は必ず先制攻撃を行い、水上を浮遊(高くは飛びません)しながら3つのメガリスを用いて戦います。
  詳細は、本シナリオのマスターコメントをご一読ください。
 

 猟兵たちが、最後にたどりついた場所。
 そこはおよそ、地に住まう人間の存在する世ではなかった。
 視界の端から端まで、海原が蠢く戦場。
 太陽は中天にあり、陽光が燦々と降りそそぐ真下では、怒涛の勢いで大渦が逆巻いている。
 海面からわずかに浮いた地点に、黒髪を丸くふくらませた大男が仁王立ちをしていて。
 その様は、まさに『威風堂々』。
 むせかえるような潮の香りに、絶え間なく鳴りわたる潮騒。
 べたつく潮風を一身に受けながら、厚い唇を引き結び、海に影落とし迫る『敵』を待つ――。
ガーネット・グレイローズ
さて、決着をつけようか。弥助アレキサンダー!

ブレイカーシップ・ブレイブナイツを発動。小型自立宇宙船を
召喚し、その船体を足場にして弥助に接近。
体を視肉と化した相手の攻撃パターンを把握するため、弥助を
取り囲むように展開。<戦闘知識>で予めプログラムした
フォーメーションを組み、戦わせる。
シップから<援護射撃>を受けながら、<空中戦><ジャンプ>の技で
次々と船の上を飛び移り、敵に的を絞らせない。
クロスグレイブで熱線を撃ち込み、焼けた部分をさらに
スラッシュストリングで切り崩す。<念動力>で糸を高速震動させ、
糸鋸の要領で視肉を切り裂く<鎧無視攻撃>だ。
弥助本体を確認したら、<クイックドロウ>で仕留める!


陰白・幽
敵も強かったけどボク達猟兵もすごく頑張ったからやっと弥助さんを見ることができたよ……むむ、あのもふもふ(アフロを見ながら)は只者じゃないと思うから全力で行かねばー

海上戦だから今回も飛んで動くよー
敵に対しては初めは距離をとって鎖で牽制をしながら攻撃して、鎖を相手の体の一部に巻きつけるようにして動きを崩して近距離の格闘戦に持ち込むよー

敵はボクのユーベルコードの発動よりも早く使うはずだから視肉を使った防御か、当てにくるから、視肉に当たらない敵の近くに瞬間移動して防御されない角度で蹴りを入れてやるよー

ずーっと海の上だったから飛びつかれた〜帰ってゆっくり休まねば〜はぁ〜あ


トゥール・ビヨン
アドリブ歓迎
パンデュールに搭乗し操縦して戦うよ

織田信長は討たれた
だけど、キミも退くわけにはいかないんだね

なら、ボク達が相手だ弥助アレキサンダー
いくよ、パンデュール。ボク達の力を見せよう!

超巨大肉塊、先ずはあれをどうにかしよう

直接肉塊には触れないよう先ずはドゥ・エギールの武器受けで凌ぎながら時間稼ぎを行う

触れた場合は闘志を失わないよう自分に呼び掛けるように自身を鼓舞するよ

サムライエンパイアのみんなのために……ここでボクが負けるわけには行かないんだ!

その間、協力した仲間が隙を作ってくれたらプログラムド・ジェノサイドを発動し肉塊を徹底的に破壊してしまおう

再度、肉塊を構成される前に2回攻撃で敵を討つ!


フィオレッタ・アネリ
あの剣だけは何とかしなきゃ…
人の心を操って戦いに駆り立てるなんて、そんなのぜんぜん高鳴らないよ!

海上はサーフボードみたいな樹の板をたくさん作り出して、風の精霊力で操って高速移動するね

触れた者の…ってコトは、触らなければ大丈夫だよね
《クローリス》の幻影で、海上を移動する分身(板は本物)をたくさん出し
距離をとって周回しながら、全ての板から《メリアデス》の投げ槍を飛ばして牽制

痺れを切らせて分身や自分に近づいて攻撃してきたら
花吹雪で目眩ませをして上空にジャンプ!

真の姿に戻りながら、《春の祝福》で
普段の数十倍の大きさと鋭さの樹木の槍を作って
そのまま視肉ごと貫いて串刺しにしちゃう!

※アドリブなど歓迎です!



 
「もふもふ達も強かったけど、ボク達猟兵もすごく頑張ったから。やっと弥助さんを見ることができたよー」
 先の戦場から飛翔を続けていた白き翼のドラゴニアン、陰白・幽(無限の可能性を持つ永眠龍・f00662)は、ようやくまみえた魔軍将の姿に、喜びの声をあげる。
 ――しかし。
 飛来する猟兵たちの姿を認め、大帝剣『弥助アレキサンダー』は、背に負った剣に手を掛けた。
 鋭き眼光は、近づく者たちを容赦なく射抜く。
 ここまでの戦いをマイペースに乗りきってきた幽でさえも、その存在感、威圧感には、表情を引き締めずにはいられない。
「……むむ。こっちのもふもふは只者じゃないと思うから、全力で行かねばー」
 幽とともに、墨俣城ロボをくだしたフィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)も、風精の精霊魔術を頼りに、空を翔けていた。
 いかに相手が強大であろうと、彼女には退けない理由がある。
「あの剣だけは何とかしなきゃ……。人の心を操って戦いに駆りたてるなんて、そんなのぜんぜん高鳴らないよ!」
 ――メガリス『大帝の剣』の力によって、猟兵たちに敵意を抱くよう操られていた毛利水軍の武士たち。
 先の戦場では、彼らを眠らせることで傷つけることなくやり過ごしたが。
 意に染まぬ者を、否応なく巻きこむやり方。
 それは、心のままに生きることを良しとするフィオレッタにとって、とうてい受け入れられるものではない。
 一方、彼の者の心情をおもんぱかり、呼びかけを行ったのはトゥール・ビヨン(時計職人見習い・f05703)。
 身長25.4cmのフェアリーの身体に、全長220cmの超常機械鎧『パンデュール』。
 相棒たる愛機に搭乗し、トゥールは三種のメガリスを持つ大男へと言いはなつ。
「織田信長は討たれた。もう、戦争は終結したんだよ」
 己よりも巨大な機械兵器に臆することなく、弥助アレキサンダーは唇の端をもたげた。
「それがどうした」
 晴れわたる空のように、清々しい一声。
 次々と迫る猟兵たちを、眼に焼き付けるがごとくしかと見やって。
「信長様の生き死には問題じゃねぇ。これは、俺の矜持をかけた戦いだ」
 ――あの方は「磨くほどに光る」と、俺の肌を称えてくれた。
 ――皮膚の色の別なく、俺を重用してくださった。
 猟兵たちの眼の前で、大帝剣『弥助アレキサンダー』の背が、いびつにふくれあがっていくのが見える。
「おおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!」
 腹底から轟く咆哮は空をわたり、迫る猟兵たちに殺気を叩きつけた。
 男の遺志に応え、首に提げられたメガリス『逆賊の十字架』が輝いて。
 弥助アレキサンダーの背を突きやぶり、己の血にまみれ現れたのは、『視肉』によって新たにかたちづくられた4つの腕。
 阿修羅のごとき禍々しき姿は、『視肉』伝承につらなる祟り神『太歳星君』の姿にも似て――。
「……キミも、退くわけにはいかないんだね。なら、ボク達が相手だ。弥助アレキサンダー!」
 決意の強さは、敵はもちろん、猟兵であるトゥールたちとて同じこと。
 それぞれに抱く想いゆえに、互いが、互いの前を退くわけにはいかない。
 だから、ここが最後の戦場なのだ。
 意地と、知恵と、覚悟をもって。
 ただ純粋に、ぶつかりあうためだけの背水の陣。
「上等だ。決着をつけようか、弥助アレキサンダー!」
 真紅の髪を潮風になびかせ、ダンピールの娘ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が地を蹴った。
 翼を持たぬガーネットが足場にしているのは、ユーベルコード『ブレイカーシップ・ブレイブナイツ』によって召喚した、50体もの小型自立宇宙船団。
 戦況によって、予めプログラムしたフォーメーションを組み自律する船団は、ガーネットの意のままに宙に足場を作った。
 まずは、相手の攻撃パターンを把握するべく、弥助アレキサンダーを取り囲むように展開。
 視肉の腕のひとつがガーネットへ迫るも、すかさずいくつかの宇宙船が援護射撃で牽制し、あるいは盾となり、渦巻く海へと沈んでいく。
 ――船団の犠牲を恐れては、前へ進むことはできない。
 右へ、左へ。
 ガーネットは跳躍により次々と位置を変えながら、携えた巨大な十字砲の熱線をとめどなく叩きこんで。
 切れ長の灰眼で弥助アレキサンダーを見据え、吠えた。
「『視肉』の特性は恐ろしいものだが。要は、直接触れなければいいのだろう……!」
 はなったのは、宇宙怪獣の肉体さえ切り裂く、戦闘用のブレードワイヤー。
 高速震動させたそれは、糸鋸のごとき強靭な刃となり1本の腕を大きく削いだ。
 しかし『視肉』の腕は血を流しながら、見る間に欠けた部位を復元させていく。
「まずは、あの腕をどうにかしないと――」
 トゥールは機械鎧『パンデュール』を駆り、あえて間合いに迫った。
 両刃の薙刀型超常武装『ドゥ・エギール』で腕からの連撃をさばき、活路を見出せぬものかと奮闘する。
 そこへ、
 ――ドォン!!
 ふいに轟音が響きわたり、浮遊していた弥助アレキサンダーの身体が傾いだ。
 幽の投げはなったトゲ付き武器『龍破の鉄球』が、腹部に命中したのだ。
 本当は腕に当てたかったのだが、いかんせん的が動くので難しい。
「……もう一回いくよー。今度は避けないでねー」
 この戦いに赴いてから、幾度活躍しただろう。
 幽は慣れた手つきで鉄球を回収すると、ふたたび、弥助アレキサンダーめがけ身構える。
 猟兵たちの反撃は、これだけでは終わらない。
「仲間たちと一緒に戦うっていうのは、こういうことだよ!」
 声がするなり、弥助アレキサンダーの四方位から、一斉に槍の雨が降りそそいだ。
 見れば、海上に数多の樹の板を浮かべたフィオレッタが、文字通り弥助を取り囲むように包囲している。
 風の精霊力と渦の流れを巧みに利用し、サーファーのごとく高速移動するその姿は、花精の精霊魔術《クローリス》の幻影によって数重にも複製されている。
「あんたは、もういっぺん海に沈んどきな!」
 己の盾となった秀吉がフィオレッタへそうしたように『視肉』の腕を振りおろすも、捉えたのは木板が割れる感覚のみ。
 まやかしの少女の姿は花霞のごとくかき消え、
 ――ッバァン!!
 予告通りはなたれた幽の二撃目が、今度こそ『視肉』の腕をとらえた。
 周囲を旋回飛行し、鎖を撒きつけることによって腕の動きを封じこめにかかった。
「こんなもので俺を縛れると思うな……!」
 弥助アレキサンダーは、別の『視肉』の腕で幽に触れようと手を伸べたが、
「眠れる我を……今、ここに――」
 唱えた瞬間、漆黒の瞳に光が宿り、その姿がかき消えた。
 いずこへ、と視線を巡らせた時には、幽の姿は弥助アレキサンダーの背面に移動している。
「残念。こっちだよー」
 振り返る暇もなく。
 のんびりした声とは裏腹に、渾身の一撃が下顎に炸裂!
「っ……ハ……!」
 大渦の上でたたらを踏んだところへ、トゥールの刃が閃き、迫っていた2つの腕を切りはらう。
 『視肉』の腕が集中的に狙ったのは、機械鎧『パンデュール』に搭乗し、最も近くで戦っていたトゥールだった。
 機体が大きく、間合いに踏みこんでいただけに、その肉に触れる危険性は最も高く。
 それでも、仲間たちに背中を預け、時間を稼ぐべく歯を食いしばる。
「いくよ、パンデュール。ボク達の力を見せよう!」
 両刃で幾度も『視肉』を凌げば、全身が返り血で染まっていく。
 ――だれかが合図をしたわけでもなければ。
 ――だれかが呼びかけたわけでもない。
 それでもガーネット、幽、フィオレッタの3人は、それぞれの動きがトゥールの動きに重なるようにと、各方位から最も近い腕を狙い、渾身の一撃を見舞った。
「勇敢なる騎士たちよ、集え!」
 声に呼応し、階段のように連なった小型宇宙船を駆けおりるようにして、『灰薔薇』の娘が十字砲で弾幕を張り。
「……前のもふもふにも言ったけど。すこし大人しくしててねー」
 幽は縛りあげた1本の腕をそのままに、弥助アレキサンダーに蹴りによる連撃を叩きこむ。
 水面を撃つ腕を振りきるように花吹雪を散らし、女神は上空へと高く舞いあがった。
 花と春、豊穣を司る真の姿を解放し、【春の祝福(ベネディツィオーネ・プリマヴェリレ)】をうたいあげる。
「花よ、森よ、風よ――春と豊穣の恵みあれ!!」
 精霊たちを祝福するそのユーベルコードは、大海原の真中であっても、花と緑の恵みを世にもたらした。
 それはこの場にあって、鋭く巨大な、一本の樹木の槍として顕現して。
「あなたたちの遺志! ここで打ち砕かせてもらうよ!」
 力ある声とともに投げはなてば、槍は弥助アレキサンダーの胸を、背に生えた『視肉』の腕ごと貫いた。
 仲間たちの連携により、敵が動きを止めた瞬間を、トゥールは見逃さなかった。
 『視肉』に触れようが、触れまいが。
 胸中に猛るこの勇気だけは、だれにも侵させはしない。
「サムライエンパイアのみんなのために……。ここで、ボク達が負けるわけにはいかないんだ!」
 双刃『ドゥ・エギール』を頭上に構え高速回転させると、その勢いに乗せ幾重にも袈裟斬りを叩きこむ。
 ――回避する間を与えない、予めプログラムしていた超高速の連続攻撃。
 その刃が止まった時。
 斬り捨てられた4本の腕がそれぞれに巨大な水柱をたて、大渦にのまれ、海の底深くヘと沈んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヒルデガルト・アオスライセン
彼等は死して尚、譲れぬ信念がある
ですが、私には

長引けば心の差で負ける恐れがあり
秀吉戦を見ていたなら既存攻撃が見切られる可能性があるのでスタイル変更

闘気を拳に結集し、帝剣に備え
籠手から放つ爆発で攻防一体の型を取ります
腕さえ無事ならそれで構いません

初発に対して、SPD型であるかのような防御態勢
回避をし損ね、体勢を崩したように見せかけて次を誘います

次打を狙って大剣の傾斜防御で力を逸らし
UCで武器を掴みます
勢いのまま猟兵様の攻撃範囲か、渦の底へ弥助ごと投げ捨てます

渦へ向かうなら
天上より光柱の神聖術で叩き落とし追撃

掴まれた方は無意識に投げを警戒するかもしれません
フリを織り交ぜ、殴り蹴ります

※諸々ご自由に


ユートピア・ドリームランド
◆心情
他の猟兵様方が開いてくれた道を使うのです。
ユートピアもなりふり選ばず仕留めに掛からせて頂きます

◆海戦工夫
バラックスクラップを靴底から冷気噴射する靴にし装備
【属性攻撃】で常に足元に氷を作り走り続けます

◆対策
単純で重いだけにフェイント等は不得手な武器でしょう
よく見て、走り続け直撃をさけます
周辺破壊に乗ってあえて吹き飛ばされ距離をとる事で追撃を防ぎます

◆攻撃
弥助様のUCは周辺破壊、つまり海への衝撃を伴います
打てば打つほど多くの魚が浮くでしょうからグルメツールで回収し【大食い】していきます
お行儀が悪いですが背に腹は代えられません
十分魚肉を食べたら反撃です
正面から全力のUCを叩きつけます、お覚悟を




「見事なり、猟兵! しかし、俺はまだ倒れてはいないぞ……!」
 メガリス『大帝の剣』によって得た超常の力――4本の『視肉』の腕を失い、弥助アレキサンダーはすでに満身創痍ともいえる様相を呈している。
 それでも残る2つのメガリスを手に、闘志を失ってはいない。
 それどころか笑みを浮かべ、敵に挑発を仕掛けもする。
 だが、機は明らかに猟兵側にあり。
 それは、まだ経験の浅いヤドリガミ――ユートピア・ドリームランド(ごみ処理船のブラックホール・f21634)にも、十分にわかった。
 だから駆けた。
 バラックスクラップで作りあげた冷気噴射靴で、足元に氷を作りながら。
 慣れない靴に、なんども足をとられそうになったけれど。
「ユートピアもなりふり選ばず、仕留めに掛からせて頂きます……!」
 他の猟兵たちがきり開いた道を、閉ざさぬためにも――。

 そして、おなじ時。
 おなじ瞬間。
 神官戦士ヒルデガルト・アオスライセン(リベリアス・f15994)は、死を目前にしようとも踏みとどまる『遺志』を目の当たりにして、唇を噛みしめていた。
 ――万にひとつの勝ち目がなくとも。
 ――億にひとつでもあるのならば、賭けてみるのも一興。
 かの魔王の言葉、生き様をそのままに、眼前の男は最期まで命を燃やし尽くそうとしているのだ。

 『不死と汚染の大地から聖都を護り、最期には決死のコール・ゴッドを敢行して尊い犠牲になる。』

 かつて背負っていた己の使命を、「馬鹿馬鹿しい」からと投げだした。
 尊い決断だと思っていた。
 だれに従うでなく生きるのが人生であり。
 自らきりひらいた道程にこそ、真の価値があるのだと。
 ――しかし、眼前の男の生きざま。一寸の曇りもない忠義心を前に、だれがそれを否定できようか。
(「彼等は死して尚、譲れぬ信念がある。ですが、私には――」)
 ――長引けば、心の差で負けるかもしれない。
 よぎった想いをふり払うように、ヒルデガルトは闘気を拳に結集させる。
 己が持ちあわせているのは、己をとりまく世界への『反抗心』。
 矜持持つ者とはまた違った、爆発的なエネルギーが己にはあるはずなのだと。
 柄にもなく、『神』に問いかける。
 ――だが少女は、聞こえもしない『声』に期待はしない。
 海原の広がるこの戦場に、己の持ちえた技術だけで浮かんでいるように。
 最後の最後にすがることができるのは、己だけなのだと、頷いて。
 秀吉戦で用いたバックル型波長増幅ギア『ボイドテリトリーモジュール』を使い、ヒルデガルトは自ら力場を生成しながら、空を駆る。
 弥助アレキサンダーの筋骨たくましい両腕が、両手剣型メガリス『大帝の剣』を振りかぶった。
(「来る」)
 力場を蹴る。
 銀靴が陽光に煌めく。
 潮風にさらわれた銀髪が、跳ねる。
 これまでの戦場で凝らした技巧など、直ぐ刃のようなこの男には通じまい。
 ――なればその帝剣、受けに行くより他になし。
 避けるでなく、まっすぐに向かいくる娘を前に、黒き肌の大男が愉し気に笑んだ。
 剣尖は揺るがず、まっすぐに振りおろされる。
 その真下に、飛びこんで。
 神に流れる黄金の血――その色を瞳に宿した娘は、太陽の名をもつ籠手を構えた。
 インパクトと同時に、ひとすじの閃光がはしって。
 一瞬、世界からすべての音が消え去ったかのような静寂。
 そして、空を裂くように、烈風のごとき衝撃が一帯をおそった。

 メガリスと光の衝撃。
 ふたつの力に圧し飛ばされ、ユートピアは海面を転がった。
 すぐに沈みそうになる身体を、水を凍らせることでなんとかふたたび、海面へと立ちあがる。
 先の閃光を起こした主だろう。
 血濡れの腕を垂れ提げた少女猟兵が、弥助アレキサンダーの前で、体勢を崩しているのが見えた。
 少女の飛翔を維持していた装置。
 その聖水瓶から、とめどなく水が漏れている。
 しかし、機動力が失われつつあってもなお、彼女は黄金の瞳を燃やし続けている。
(「行かなくては」)
 ユートピアの胸に、ふとそんな言葉が浮かびあがり。
 衝動に突き動かされるままにグルメツールをとりだして。
 海面に浮きあがってきた魚たちを回収し、食べて、食べて、食べまくった。
 ブラックホールのヤドリガミなれば、回収はお手の物。
 行儀が悪いが、背に腹は代えられない。
 なぜならそれが、フードファイターたる己の活力に直結するのだから。
 戦争にまきこまれ、命をうばわれた人間を悼む者がいるなら。
 戦争にまきこまれ、命をうばわれた魚たちを悼む者があってもいい。
 ――ユーベルコード『フードファイト・ワイルドモード』。
 とりこんだ魚たちがユートピアの血肉となり、全身の細胞が沸騰するように活性化していくのがわかる。
 冷気噴射靴で、トントンと、凍った水面を叩いて。
 赤い瞳で、まっすぐに敵を見る。
「さあ、今からが反撃です」
 スタートをきるように、一歩一歩、氷を踏みしめて。
 向かうは、少女――ヒルデガルトの間合いへ。

 体勢を崩したと見せかけたところで、弥助アレキサンダーはすぐに次撃をうってきた。
 彼自身、戦闘を長引かせるだけの体力がなかったのかもしれないが。
 どちらにせよその選択は、ヒルデガルトの望むところだった。
 『身代わり』が間にあわず、ほとんどの衝撃を受けた左腕はもはや、使い物にならない。
 メガリスの威力はすさまじく、直撃を受けた少女の腕はほとんどが潰れ、感覚を失いつつあった。
 意識を留めていられるのは、『不尽の生命力を齎す霊液』がその小柄な体躯を満たしているからに他ならない。
 弥助アレキサンダーは、開戦当初からその位置をほとんど変えていない。
 大渦の中心に、ただ堂々として、在る。
 ふたたび振りおろされる一撃に、ヒルデガルトは賭けた。
 その姿が、億にひとつの可能性に賭けるという、あの言葉に重なって――。
 雑念を振りはらう。
 剣先を受けとめると見せかけ、あえて体勢を崩す。
 潰れた左腕もあって、思っていた以上にうまく凌ぐことができた。
 剣先はするり、籠手をすべり流れて。
 感覚のない左腕を気力で動かし、両の手で剣を掴む。
(「――建国の祖、バーバリアンの暴威を、この手に!」)
「押し、止める!!」
 吠えた少女が、剣を掴む弥助アレキサンダーごと持ちあげ、放り投げた。
 落とす先を選ぶだけの力は、もはやなく。
 しかし、役目を終え、沈みゆくヒルデガルトの眼には、猛然と駆けるユートピアが見えていた。
 ザクザクと、海原に不似合いな足音を響かせて。
 両手にナイフを閃かせたユートピアが、浮遊状態で倒れている弥助アレキサンダーめがけ、跳ねる。
「――お覚悟を」
 その言葉に。
 男が満面の笑みを浮かべたのを、ユートピアは見た。
 斬り裂けば、その身はおどろくほどやわく、大渦にのみこまれ。
 その身は一瞬にして、灰塵と化して消えた。

 飛翔装置を失ったヒルデガルトは、海の底に沈みながら、水面のきらめきが遠ざかるのを見ていた。
 オブリビオンを倒したのだろう。
 海はおどろくほど穏やかに変じていたが、満身創痍の少女には、もはや浮かびあがるだけの力はない。
 まぶたを閉ざそうとした、その時だった。
 海面にいくつもの水しぶきがあがり、次々と猟兵たちが向かいくる。
 ――神を見はなした己を、救うために。
 胸の内に、熱いものが沸きあがり。
 ヒルデガルトはふたたび肺を呼吸で満たすまでの間。
 すこしだけ、まぶたを閉ざした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月31日


挿絵イラスト