エンパイアウォー⑱ ~戦狂いは武人の性か
車懸かりの陣を突破した猟兵達は、遂に上杉謙信と相対した。彼は『軍神』と呼ばれる程、神懸かった戦上手である。嘗て生きながら神と成った存在は、大望果たせず人として死んだ。しかし今、躯の海から蘇り、再び刀を手に軍を動かしている。生前『義』を掲げた軍神が、何故陰謀企む織田信長に仕え、世界を滅ぼそうとしているのか――。
「よくぞ車懸かりを退け、眼前に現れた。流石は我が宿敵を阻んだ者達だ」
彼方を眺めていた上杉謙信は、視線を此方に戻し猟兵達を見据えた。悠々と二刀を構える彼の背後で、地に突き立っていた刀が妖しく光る。それぞれ異なる力を宿す十の毘沙門刀が独りでに浮かび上がった。
好機であったのかもしれない。刀は今まさに動き出したばかりだった。今斬り込めば優位に立てるかもしれない。しかし、猟兵達は動けなかった。迂闊に斬りかかっては返り討ちに合う――。謙信の佇いは、痛切にその予感を伝える。涼やかな目元の美丈夫が発する重圧は、配下の軍勢を破った勢いで進もうとする猟兵達の足を縫い止めた。
強ばる猟兵達の前で、毘沙門刀は円光の如く謙信の背後に寄り集まった。謙信は右手の白い刀を払い、左手の黒い刀を猟兵に向ける。
「私は上杉謙信。猟兵よ、我が敵対者よ。私を止めるがいい。打ち倒せ。殺してみせよ。何度でも何度でも何度でも。車懸かりの陣にて、お相手致そう」
毘沙門刀が翻る。切っ先を猟兵達に向け、回り出す。其れは刀が織り成す車懸かりであった。
軍勢を自身の手足のように自在に動かす人軍一体こそが軍神の得手。ならば、刀を軍と見立てた車懸かりも、彼の意のままに動くだろう。
謙信が信じ、自身と同一視する毘沙門天へ捧げる真言が決戦の火蓋を切った。
「オンベイシラマンダヤソワカ。毘沙門天の加護ぞある」
こふ
●マスターより
マスターのこふです。よろしくお願いします。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
今回のシナリオは、配下の軍勢との戦闘を掻い潜り、上杉謙信の眼前までやってきたところから始まります。配下の軍勢との戦闘描写は不要ですが、もしご入用でしたらプレイングにご記入ください。
●特殊ルール
軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
●判定について
強敵ですので判定は厳しめです。ダイスの結果次第では大いに負傷します。ご了承ください。
第1章 ボス戦
『軍神『上杉謙信』』
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POW : 毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 毘沙門刀車懸かり
自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
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リュセフィーヌ・オールセン
心情
「上杉謙信… なぜオブリビオンになったか分かりませんが、倒させて頂きます!」
鈴蘭の嵐で上杉謙信に戦いを挑みます。
鈴蘭の嵐を使って上杉謙信をひるませた後は、ライオンライドで上杉謙信に向かって特攻します。
無事に上杉謙信を倒せたら、こう言って冥福を祈ります。
「上杉謙信… 安らかに眠って下さい」
「上杉謙信……なぜオブリビオンになったか分かりませんが、倒させて頂きます!」
鈴蘭の花弁がリュセフィーヌ・オールセンの周囲に浮かび上がった。釣錘型の白い花弁は優雅に回転しながら上杉謙信に向かい、次々と爆発する。
小さな花弁からは想像できない程の爆発に吹き飛ばされ、謙信は地を転がる。彼は片膝立ちになると、回転する毘沙門刀を操り、鈴蘭を斬り落としていく。リュセフィーヌは鈴蘭の花弁を一点に集中させ、勢い良く攻め込ませた。炎の力を持つ刀が立ち塞がるかのように進み出て燃え上がる。大きな爆発が起こり、立ち込める土煙で互いの姿が視界から消えた。
「おいで!」
リュセフィーヌはその隙に黄金の獅子を召喚、騎乗する。そして間髪入れず、煙の中から現れた謙信に向かって突撃した。咆哮する獅子は敵を鋭い牙で噛み砕く。
身体の中心から上下二つになった謙信の姿が掻き消えた。その様を見届けるとリュセフィーヌは冥福を祈る。
「安らかに眠って下さい」
猟兵に成ったばかりで、戦闘経験の薄いリュセフィーヌは油断してしまった。彼女の祈りは目前に現れた刀で遮られる。薙ぎ払われた刀は彼女の胸を切り裂き、血吹雪を舞わせた。黄金の獅子が後ろに跳躍しなければ、首を刎ねられていただろう。
痛みと出血で色白の顔をより白くさせるリュセフィーヌ。しかし、彼女は倒したはずの謙信を気丈に見据える。
「何故……」
「我が虚像である」
炎により空気が強く加熱された事で光の異常屈折現象――蜃気楼が発生したのだ。獅子が噛み砕いた謙信は、炎の蜃気楼が生み出した幻であった。
唇を噛み締めるリュセフィーヌに謙信は刀を向ける。
「どうする信心深き猟兵よ」
「私が皆の足を引っ張る訳にはいきません。無念ですが、退きます」
「それも良いだろう」
謙信は刀を下ろした。リュセフィーヌは心配そうに鳴く獅子の鬣を撫でると、後方へと退く。必ず、必ず、もっと強くなる――。彼女の金の瞳は決意に燃えていた。
苦戦
🔵🔴🔴
秋山・小夜
アドリブ歓迎
「あなたが・・・。そうですか。」
まず最初に超電磁加速投射砲紫電改で一発砲撃を加える。
一発撃った後に右手に妖刀夜桜、左手に巨大メイス崩山を展開、突貫する。
ユーベルコードは一発撃った後に発動。攻撃を食らってもあきらめずに挑む。
さすがに重傷を負うのは勘弁なので、一撃離脱を繰り返す。途中で右腕に巨大パイルバンカー震電改を展開して、たたきつけて攻撃したり、防御に使ったりする。
立ちはだかる上杉謙信を見つめ、秋山・小夜は沈んだ声を出す。
「あなたが……。そうですか」
「如何に」
「いえ、征きます」
「来い」
陰っていた小夜の瞳が凄みを帯びて光る。彼女は目にも留まらぬ速さで一発の砲撃を放った。謙信がそれを斬り落とすのを待たず、小夜は右手に漆黒の刀身を持つ妖刀『夜桜』を、左手に巨大な戦棍『崩山』を展開させた。彼女は、人が変わったかのような荒々しい掛け声と共に謙信に向かって突貫する。迎え撃つように毘沙門刀が回る。
上段より振り下ろした夜桜は白い刀で抑えられ、陽動を伴い中段から振り上げた崩山は黒い刀に弾かれた。息付く間もなく、毘沙門刀が襲い掛かる。小夜は身を捻り、地を転がり、夜桜で弾いて斬撃を避ける。小さな切り傷や毘沙門刀が纏う炎の力による火傷こそ負うものの、重症には程遠い。彼女は獰猛な笑みを浮かべた。
小夜の猛攻は続く。夜桜で渾身の一撃を放ち、謙信の攻撃を避けるため大きく退く。一撃離脱を繰り返すうちに傷と疲労が蓄積され、彼女の息が荒くなる。しかし、それは謙信も同様であった。彼自身も度重なる攻撃による疲労で息が荒くなっている。謙信は頬から流れる一筋の血を拭うと、背後の毘沙門刀十本全てを小夜に向けた。
舌打ちをした小夜は、大きく飛び退り間合いを広げる。崩山を巨大パイルバンカー『震電改』に持ち替え、巨大な杭を射出した。と同時に地を蹴り、杭を追い越しかねない速度で謙信に肉薄する。あと一歩で夜桜の間合いという瞬間、彼女の全身から力が抜けた。膝を突く彼女に黒い刀が振り下ろされる。辛うじて震電改で防ぐも、腕に力が入らない。
謙信は混乱する小夜を見下ろす。
「目に見えぬ攻撃こそ警戒すべきだろう、猟兵」
「てめぇ……」
理解した小夜の顔が歪む。彼女の足にできた小さな切り傷が赤黒く腫れ上がり、周囲の皮膚を紫色に染めている。妖刀に意識を飲み込まれた状態であった小夜は、炎や氷などの目に見えて傷と成る攻撃にこそ意識は向いていたが、徐々に体力を奪う毒の攻撃には気が回っていなかった。
小夜は残る力を振り絞って黒い刀を跳ね除け、蹌踉めきながらも後退りする。
「退くか。それも良いだろう。貴様の剣技、見事であった」
謙信に背を向け走る小夜は、悔しさに青い瞳を潤ませる。歯を食いしばり、次は負けないと心に誓った。
苦戦
🔵🔴🔴
サンディ・ノックス
今、嬉しいんだ
とてつもない障害で、挑んで無事に済むとは思えないのに
口だけの強者を腐るほど見ているから本物に会えたのが嬉しい…のかな
胸鎧と一体化、黒の全身鎧の姿に変身
使い慣れた黒剣と使い慣れたUCで戦う
小細工使っても正面からぶつかっても厳しいだろう、なら正面から挑みたい
攻撃の全てを見切れるとは思わないけど少しでもダメージを減らすため躱せるものは躱したい
受けた攻撃もオーラ防御で可能な限り軽減
攻撃回数を重視した解放・宵でいなすのも手だな
ただどう考えても長期戦は不利だ
耐えながら接近して捨て身の一撃、あえて攻撃を受け敵の動きを固定してから全力の一撃を入れる
…ごめんね
心の中で俺の心配をしてくれる人に謝るよ
穏やかな笑顔を浮かべていたサンディ・ノックスの顔が歪み、狂気じみた笑みが浮かんだ。彼は『上杉謙信』という途轍もない障害を前に嬉しくて堪らない。挑んで無事に済むとは思えない『本物』が発する重圧。腐るほど見て来た口だけの強者とは全然違う――。
胸鎧と一体化したサンディの全身が黒の鎧に覆われる。彼は剣呑な光を宿す青い瞳で謙信を見据えた。小細工を弄しても、正面からぶつかっても、どちらも厳しい戦いと成るだろう。ならば、と彼は覚悟を決める。
毘沙門刀が、謙信の振るう二刀が、愚直にも正面から挑みかかるサンディに襲い掛かった。見切れず、躱せなかった斬撃が彼を傷付ける。損傷はオーラによる防御で軽減されている。しかし、完全に無効化出来ていない以上、長期戦は不利となる。黒剣でいなすとしても、十二の毘沙門刀が相手では手数で劣る。
……ごめんね。サンディは自分を心配してくれた顔を心に思い浮かべ、謝る。
突然、サンディは防御を捨て、血吹雪を舞わせながら肉薄する。虚を突かれた謙信は、誘われるように白い刀を突き出した。刀は蝶を縫い止めるかのように彼の腹を貫く。一拍遅れて喀血したサンディは、そのまま両手で黒剣を振りかぶった。目を見開いた謙信は退こうとしたが、サンディの腹に突き立った刀が抜けない。慌てて手を離したが、その一瞬の遅れは致命的となった。
振り下ろされた全力の一撃は、謙信の右肩から左腰に掛けて一文字に斬り裂く。血溜まりに膝を突く謙信。追撃の好機だが、黒剣に取り縋り、辛うじて立つサンディは動けなかった。血を吐き捨てた謙信が右手を差し出すとサンディに突き立っていた白い刀が独りでに抜け、彼の手に戻る。『蓋』がなくなり、サンディの腹から血が溢れ出す。力尽きた彼の身体が崩れ落ちた。
「妙妙たる一撃だ、猟兵。我が毘沙門刀が癒やしの力を持たざるならば、ここで相打ちと成っていただろう」
謙信の傷を薬の力を持つ毘沙門刀が癒やす。そのまま向かい来る毘沙門刀に、サンディは静かに目を閉じた。しかし、傷が癒える感覚に、弾かれたように上体を起こす。輝きが陰る毘沙門刀を見ていた謙信がサンディに視線を移し、美しく笑った。
「また来るがいい猟兵。殺しに来い」
多少傷が癒えたとは言え、万全とは言い難い。サンディは謙信の姿が見えなくなるまで、歩み去るその背中を見ていた。
成功
🔵🔵🔴
カイル・サーヴァント
死之宮・謡(f13193)と参加
何で貴方ほどの人がそっち側に居て、人々を傷つけるのか聞こうと思ったけど……もう聞かない。その代わり、何度だってぶん殴ってでも止めてあげる!
【戦闘】
【盾の守護獣】を発動して基本的に謡に攻撃を任せ防御に集中。
2~3枚は自身の回りに残し残りは謡の方へ。
謡を狙う攻撃は追随する盾で【盾受け】して【かばう】
もし複製した盾たちでの防御が難しい攻撃が来る予兆を感じたら前に飛び出し【いまを護りし白亜の城】での絶対防御の構えをとる
アドリブなど歓迎
死之宮・謡
カイル(f00808)と参加
アドリブ歓迎
ふぅ…張り切ってるねぇ、カイル…嗚呼、そんなカイルも可愛いねぇ…(キャラ崩壊するレベルでデレデレ)
まぁ良い…元が何であろうが所詮はオブリビオン…殺るか……(急に真面目なトーンで)
▼戦闘
防御はカイルに任せて攻撃に専念…
【魔纏:殺戮剣皇】を発動…
ストライフに崩壊の「呪詛」を籠めて「怪力」で振るう「2回攻撃」の斬撃や
「生命力吸収」を籠めた「属性攻撃:水・全力魔法」による黒霧の発生などで攻撃
序でに隙を見てストライフに脆弱の「呪詛」を籠めて「鎧砕き」の要領で武器破壊も狙う…
カイル・サーヴァントと死之宮・謡は上杉謙信の前に立つ。白銀の盾を手に、幼い少女のような顔に決死の覚悟を浮かべるカイル。謡はその横顔を蕩けそうな眼差しで見つめた。
「何で貴方ほどの人がそっち側に居て、人々を傷つけるのか聞こうと思ったけど……もう聞かない。その代わり、何度だってぶん殴ってでも止めてあげる!」
「ふぅ……張り切ってるねぇ、カイル……嗚呼、そんなカイルも可愛いねぇ……」
赤みを増した頬に両手を当て身悶えしていた謡は、突然人が変わったかのように真顔になった。彼女は魔剣を構える。
「まぁ良い……元が何であろうが、所詮はオブリビオン……。カイル、殺るよ」
「うん!」
二人の周囲に盾が展開された。カイルの元に数枚を残し、大多数が一足飛びで謙信に迫る謡を守る。防御をカイルに任せた謡は持てる全ての力を攻撃に込め、謙信を圧倒した。血吹雪が舞い、狂気的な笑い声が響く。
魔剣に籠められた『崩壊』の呪詛は、毘沙門刀が織り成す車懸かりを狂わせる。更に細腕が繰り出すとは思えない威力と素早さで振られる魔剣は、謙信自身が振るう二刀を攻撃に使わせない。
謡の猛攻に防御一辺倒であった謙信は顔を歪め舌打ちをすると、大きく後ろに飛び退いた。と同時に、回転していた十の毘沙門刀が謡目掛けて一斉に飛び出す。その多くはカイルの操る盾に阻まれたが、幾振りかは盾を破壊し謡に迫る。彼女は即座に生命力を吸収する黒霧を発生させた。水の力を持つ魔法は毘沙門刀の力を削ぎ、特に相反する炎の力を消し去る。輝きを失い、地に落ちる刀の後ろから二刀を上段に振りかぶる謙信が現れた。
防御に転ずるかと思われた謡だったが、彼女は赤い瞳を細め、唇を釣り上げるだけで動じない。彼女の前にカイルが飛び出す。
「顕現せよ!」
盾を構えたカイルの姿が白亜の城塞へと転じた。絶対防御の城壁は、謙信の放つ必殺の攻撃さえも寄せ付けない。全体重を乗せた攻撃を弾かれた謙信の身体が浮つく。謡はその隙を見逃さない。謙信を凄まじい剣圧で吹き飛ばすと、魔剣に『脆弱』の呪詛を籠める。そのまま、力を削がれ、動きの鈍った毘沙門刀に斬撃を放った。破片を撒き散らし、毘沙門刀が折れる。
「見事だ、猟兵!」
血で汚れた謙信の顔に凄みのある笑顔が浮かんだ。
大成功
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カタリナ・エスペランサ
「ちょーっと遅刻しちゃったかな? ま、その分キミ用の必殺技を思い出してきたからさ」
「――猟兵カタリナ・エスペランサ。一つお相手願おうか、軍神」
上空から謙信の前に降り立てば、達人と称されていた時のように名乗りを上げて。
UC【閃紅散華】で《先制攻撃》。
ダガーの間合いに入る寸前に紅雷の刃を伸ばして《だまし討ち》、12の毘沙門刀の位置は《第六感》で常に把握。
刀の攻撃は増えた手数の《早業》《武器受け》《武器落とし》で受け流し、攻撃を受けた反動も立ち回りに利用して舞うように三次元的な《空中戦》を展開。
敵の属性攻撃には自分も《戦闘知識》《属性攻撃》で対抗し、手数を頼みに攻め立てます。
※アドリブ・共闘歓迎!
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
【心情】
……生前『義』を掲げた軍神が、どうしてこうなってしまったのか。
いや、今は考えていても仕方ありません。
グリモアや【Q】を識る貴方は危険な存在。
何度でも打倒せというなら、そうしてみせましょう。
いざ勝負です!
【戦闘】
十二本の毘沙門刀が厄介なので、インヴィンシブル・フィールド・バリアを
使ってその攻撃を防ぎます。
「このバリアは金剛不壊!如何なる攻撃でも破れはしません!」
攻撃は「怪力」で緑の斧槍を振るい、数合打ち合ったところで
「フェイント」で隙を作って「ランスチャージ」して、
「串刺し」を狙います。
※万一バリアを破られた際は、緑の大盾や緑の斧槍で
「盾受け」「武器受け」し、「オーラ防御」で耐えます。
「ちょーっと遅刻しちゃったかな?」
「いえ、問題ありません」
疲弊し、肩で息をする上杉謙信と対峙するウィルヘルム・スマラクトヴァルト。その隣にカタリナ・エスペランサが上空から降り立つ。生前『義』を掲げた軍神の現在の有様に内心首を傾げていたウィルヘルムは、共に戦う存在に気持ちを入れ替える。二人は謙信に名乗りを上げた。
「私はウィルヘルム・スマラクトヴァルト。グリモアや【Q】を識る貴方は危険な存在です。何度でも打ち倒せと言うならば、そうしてみせましょう」
「――猟兵カタリナ・エスペランサ。一つお相手願おうか、軍神」
「無論、何度でもお相手致そう」
血で汚れた顔を綻ばせる謙信に、カタリナがダガーを向け大きく羽ばたく。謙信の間合いに入る寸前、彼女のダガーから輝く紅雷の刃が伸びた。間合いの外からの奇襲にも動じず、謙信は残る毘沙門刀を身に纏い、一足飛びで彼女に向かう。間髪入れず、ウィルヘルムの声が響いた。
「このバリアは金剛不壊! 如何なる攻撃でも破れはしません!」
二人の身体を薄く透けた緑の壁が覆い、毘沙門刀が弾かれる。
カタリナはウィルヘルムに礼を叫ぶと、天高く舞い上がる。彼女は上空からの一撃離脱戦法で謙信に挑む。急降下と急上昇。焦れた謙信が氷の力を宿す毘沙門刀で氷柱を生み出し上空に放つも、彼女のペンダントから放たれた光線が焼き切った。
そこに、ウィルヘルムが緑の斧槍を振りかぶり襲い掛かる。謙信は二刀を交差し、重たい攻撃を受け止めた。鈍い金属音が鳴り響く。
「いざ勝負です!」
「来い!」
謙信は身に纏っていた毘沙門刀を全てカタリナに放射し、打ち合い始めた。
カタリナに向かった毘沙門刀は、彼女が放つ攻撃に呼応し、その全てを相殺する。幾度も攻撃を重ねるカタリナによって徐々に輝きが鈍っていくが、毘沙門刀は彼女を主に近づけさせない。
上空ではカタリナと毘沙門刀の打ち合いが、地上ではウィルヘルムと謙信の打ち合いが続く。力で押していたウィルヘルムだったが、攻撃を受け流され、大きく空振りしてしまった。しかし、これは彼が態と作った隙であった。狙い通り隙を狙った謙信に向け、上体を捻り、掛け声と共に斧槍を突き出す。串刺しを狙った神速の一撃。謙信は辛うじて直撃を避けたが、脇腹を抉り取られた。
低く呻いた謙信は血溜まりに膝を突くも、そのまま渾身の力で右腕を振り抜く。白い刀がバリアと共に砕けた。素早く立ち上がった謙信は、刀を持ち替えウィルヘルムの懐に踏み込む。斧槍は近すぎて使えない。ウィルヘルムは迫る黒い刀を緑の大盾で防ぐ。拮抗した力が行き場を無くし、互いの腕が震えた。
ウィルヘルムのバリアが破られたと同時に、カタリナを包んでいたバリアも消えた。風を纏った毘沙門刀が彼女を狙い、飛ぶ。カタリナは暴風のように襲い来る毘沙門刀をダガーで受けると、刀の持つ風の力を利用し更に上空へと舞い上がった。半回転した彼女はそのまま空中を蹴り急降下、音速に迫る速度を乗せたダガーは風の毘沙門刀を砕き、勢いそのまま謙信に肉薄する。
謙信は舌打ちをし、力を抜く。大盾に込められていたウィルヘルムの力を利用し、大きく飛び退いた。彼は残った毘沙門刀を全展開、カタリナと打ち合うも、既に大きく力を削がれていた毘沙門刀は次々と折れていく。残るは、手にする一振りのみ。
「まだだ、未だ終わりではない……」
「終わりだよ。あなたは終わりだ
。……!」
謙信を追い詰めたかに見えたその時、突然、力尽きたようにカタリナが地に落ちた。彼女の身体を力の代償が蝕む。形勢逆転。膝を突いた彼女の首を刎ねんと謙信が刀を振りかぶった。悔しげに顔を歪めたカタリナが謙信を見上げたその時、彼の身体の中心から斧槍が飛び出す。遅れて口から大量の血が吐き出された。気配を消し、隙を狙っていたウィルヘルムが背後から突進し、謙信を串刺しとしたのだ。
謙信は振り向き様に刀を払う。斧槍から手を離し、飛び退くウィルヘルムは油断せず大盾を構えた。睨み合う両者の均衡は、謙信が刀を下げた事で崩れる。
「一睡の夢、愉しめたぞ猟兵。願わくば、再び戦おう」
謙信は目を閉じ、満足気に笑った。彼の身体が溶けて消える。突き立っていた斧槍が音を立てて落ちた。
大成功
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