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エンパイアウォー⑧～屍人量産・餓鬼の計～

作者：ナイン高橋

●サムライエンパイア・山陰道周辺の農村
「なんだアンタ？みすぼらしい身なりで、背中に変なもの背負って……うお、なんだやめぎゃあああ！」
　それは平和な村に突如として訪れた災厄であった。
「な、なんだこいつら……人を、食ってやがる」
　それは躊躇なく、近寄ってきた村人に食らいつき、そして群がり、貪っていった。
「やばいやばいぞ、囲まれてる！」
　それは、一体ではない。見回せばその数は１０にも及ぶだけの数がいた。
「どうすんだいあんた！？」
「どうするって、逃げるしかないだろ！こんな化け物の相手が出来るか！」
　それは動きは鈍いように思う。しかし確実に包囲を狭め、村の住人達に寄ってくる。
「おい、城の方には化け物はいねぇぞ！」
「城なら閂さえかけちまえばそう簡単に侵入ってきたりは出来ないだろう」
「皆、逃げるぞ！ついてこい！」
　村人たちが向かうは鳥取城。
　彼らはまだ知らない。それらは、村人を鳥取城へと追い立てるようにして迫ってきている事を。
　彼らが気付くのは、城の中にて、飢えに苦しむその前だった。

●グリモアベース
「これが、安倍晴明の作戦『鳥取城餓え殺し』となります」
　頭巾から羅刹の角を覗かせた破戒僧、朝倉・くしな（鬼道僧・f06448）は予知した未来を伝える。
　予知ではこの後、村人達は全て鳥取城に辿り付き、そして閉じ込められた上に苦しみ飢え死ぬ。
　このようにして死んだ村人の死体を使う事によって、強化型『水晶屍人』を量産しようというのだ。
「強化型『水晶屍人』は爆発的な増え方はしませんが、その個体の戦闘能力はかなり増強されております」
　数にして10体。それだけ集まれば猟兵達とも渡り合える程の超絶強化を施されてる。
　そしてその強化型『水晶屍人』が量産された暁には、山陰道を通る幕府軍と猟兵全てを殺し尽くしても、ありあまる戦力となるのだ。
「これを防ぐには、農民達が連れ去られそうになる所に駆けつけて、『水晶屍人』を撃破。人々を救出するしかありません」
　そこで先程の予知となる。
　今回テレポートする先は農村の外れとなる。
　タイミングとしては、農民の一人が水晶屍人に襲われる直前にテレポートする事になる。
　残念ながら事前に農民たちを逃がす事は時間的に難しいだろう。
　鳥取城以外の方角から迫る10体の強化型『水晶屍人』の群れを相手にしながら、農民たちを守って欲しい。
　明らかに化け物であり恐怖を煽る事を目的として現れた『水晶屍人』の姿を見れば、農民達は自然に逃げ出し始める。
　ただし農民達は訓練等も受けていない一般人だ。彼ら自身に統率を期待するは難しい。
　そして放っておくと『水晶屍人』の姿をみた農民達は連れ立って鳥取城に逃げ込もうとしてしまう可能性がある。
　恐怖に駆られる農民達を誘導する事もまた重要な任務になる。
　十分に戦闘が行えているのであれば、時には戦闘以外のフォローに徹するのも一つの手段かもしれない。
「強化型『水晶屍人』は強くはなってはいますが、群れで猟兵と渡り合える程度です。きちんと対策を取り、弱点を攻めれば必ず勝てる相手です」
　そしてくしなはグリモアベースと件の農村へと空間を繋げる。
「『水晶屍人』は野放しにすれば甚大な被害が出かねない存在です。これを止められるのは猟兵だけ。ご武運を」

第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙 【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。 SPD   :    屍人乱撃 【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    水晶閃光 【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。 イラスト：小日向　マキナ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●ドーンブレイカーの場合
「なんだアンタ？みすぼらしい身なりで、背中に変なもの背負って……」
「【Select…COUNT ACTION! 3…2…1…!】骸の海の向こう側まで…【Good luck!】ぶっ飛べええええ！！」
　アーサー・ツヴァイク（ドーンブレイカー・f03446）が予知通りに話しかけにいった農民に襲い掛かろうとしていた水晶屍人へと右腕のロケットパンチを発射！
「超速連続攻撃が出来るとは言っても、マッハ8のロケットパンチには対応できまい！」
「うおわっ！危ねぇ！？」
　自分のすぐ横を右腕がカッ飛んでいった農民は尻もちをついて吹っ飛ばされていった水晶屍人の行方を見やる。
　と、ぞろぞろとまだ歩いてくる次なる水晶屍人の姿が見えてくる。
「な、なんじゃあれは……？」
「俺の名は、暁の戦士ドーンブレイカー！ここは危険だ！避難しろ！」
　呆けている農民に避難の声をかけるとアーサーは水晶屍人の元へとダッシュする。
　ランドランを槍形態にして一体を串刺しにして動きを止め、鎌形態にしたスライスネッカーで次の水晶屍人の脚を砕いて機動力を奪う。
「に、逃げるって言ったって何処に……お、城の方にはそいつらいねぇぞ！」
　農民は素直にアーサーの言葉に従って逃げようと周囲を見回し、そして水晶屍人は城の方角にはいない事に気付く。
「ブーステッド・ソニックアーム！！！」
　農民が走って逃げ出そうとする前にアーサーが鳥取城の方角に水晶屍人の内の一体を吹き飛ばす。
「そっちは危険だ。逃げるなら別の方角にするんだ」
「お……おう」

成功 🔵​🔵​🔴​

●森の狩人の場合
「飢えの恐ろしさは、森に生きる身には骨身に沁みています」
　元は森に住まう民、エルフのシリン・カービン（緑の狩り人・f04146）は餓えて死しその上で利用されてる水晶屍人の姿を見て冥福を祈る。
　そして目を開けた時には既にオブリビオンを狩るハンターの顔となっていた。
「助かりたくば、私の後ろへ！」
　精霊術の力によって風の精霊に手助けを願い、周囲に声を響かせる。
　逃げ惑っていた農民達はシリンの力強い言葉に縋るように集まってくる。
（そして、農民が誘導されれば屍人もこちらに向かってくる筈）
　シリアの予想通り、鳥取城へ農民たちを追い込む事を目的として行動している水晶屍人達は集団になって動かなくなった存在を敏感に感じ取り、襲い掛かってくる。
「羽根妖精よ、私に続け」
　シリンはユーベルコードを発動。
　自身が背負い腰に下げた精霊猟銃・精霊猟刀を46個複製すると、その内半数を集まった農民の周囲に展開させ、護衛とする。
　そしてもう半分は。
「私に続け！」
　手近な水晶屍人に走るシリンに追従するように操作。
　そして迫ってきたシリンに対して農具による攻撃を仕掛けようとしてきた水晶屍人を、ぴょんと頭上を飛び越えて背後に着地。
　敢えて振り向き、そして攻撃の間合いに近づく。
（来た……！）
　予めその死体の中にインプットされていたのであろう高速連続攻撃：屍人乱撃を誘発。
　シリンはぎりぎりのところを見切って回避すると、攻撃を続けている水晶屍人をそのままに次の屍人に向かって走る。
　屍人乱撃は屍人とは思えぬ高速連続攻撃が可能にはなるが、一度発動したら途中で止める事が出来ない弱点がある。
　別の水晶屍人に精霊猟銃で銃撃を当ててこちらを振り向かせ、屍人乱撃を誘発させる。
　予め行動をインプットされて送り出され、そして司令官などを伴っていない水晶屍人にはこのような対処はとても、よく効くものだった。
　そして誘導した水晶屍人同士がぶつかって動きを止めたところに。
「飢えはもう、終わり」
　複製猟銃の一斉射撃を見舞うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●美少女ヤクザモンスターの場合
「今度は増えるゾンビの群れたぁ、いけすかない作戦ばかり立てるな全く」
　可愛らしい美少女の顔。触手の詰まった下半身。
「カタギにゃこれ以上手は出させねえぜ」
　そして中身はヤクザなバイオモンスターミスツ・シューパリツェ（バイオモンスターのバーバリアン・f17654）が固定化された笑顔の表情のままに農村にテレポートしてきた。
「避難誘導は他の猟兵に任せて俺はゾンビ退治だ」
　そのまま水晶屍人を捕捉すると触手の脚で突撃。
「黄泉路から引っ張り出された憐れな骸共！お仲間増やそうなんざ俺が見捨てちゃおかねえぜ！」
　触手≪撃式≫で空中にバンバン射撃してヤクザな存在感を出しながら恫喝しにいく！
「碌に聞こえる頭も持ってなさそうだが、こっから先は通しやしねえ、ってくらいわかるだろ？」
　見得切る啖呵は果たして理解してはいなさそうではあるが、ドスを振りかざして斬りつければ、流石の水晶屍人もミスツを外敵と認定する。
　そして水晶屍人はミスツを追い込むべき一般人ではないと判断すると、もはや見せしめに殺す対象として牙での噛み付き攻撃を仕掛けてくる。
　その鋭い牙は生前の人の歯ではなく背中の水晶からコーテイングがされているようで、通常では考えられないような鋭さを持つ。
　ガキーン……！
「やるんならやられる事も覚悟してこねえとな？」
　しかしその牙すらも、ミスツの身体には全く歯が立たなかった。
　ミスツは攻撃を受ける直前にユーベルコード：仇返し・砲仙花（アダガエシ・ホウセンカ）を発動させる事で己の機動力を犠牲にして防御力を極限にまで高めたのだ。
　そしてただただ防御力を上げただけではない。己の身体が強靭になったという事はつまり、それだけ威力の高い重火器も反動なしで利用可能になるという事でもある。
「そら、釣りも遠慮せずとっとけ、俺の奢りだ」
　銃口砲手を水晶屍人の口に突っ込むと、火属性弾を一斉放射し吹き飛ばす！
「ゾンビには火か聖水が俺の世界の映画じゃ定番なんでな？」
　火薬から出た煙をポゥ、と口から吹き出しながら、ニヒルに極めるミスツだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

●聖者と建城とお面配布の場合
　鈴木・志乃（ブラック・f12101）はこの依頼に参加した時には既に満身創痍な状態であった。
　生命体の埒外にあるものである猟兵であっても、決して無限の体力がある訳ではない。
　このエンパイアウォーにて志乃は既に80を超える戦場を駆け回ってきていたのだ。
「……大丈夫、皆還ろう、骸の海に」
　それでも彼女は歩みを止めずに、また一つ。この農村を救いに来た。
　志乃は農民が水晶屍人に襲われそうになっているのを目撃すると、念動力を用いて農民と水晶屍人の間にそこら辺の器物を持ち上げ落とし、壁を築く。
「城には行かないで！ こいつら城が本拠地なんです！！」
　そして稼いだ時間で、城に逃げようとしていた農民を誘導する。
（……これで聞いてくれるかは怪しいけどね）
　助けてくれた志乃に対して農民はその言葉に耳を貸しはするも……水晶屍人は城以外の方向からやってきているのだ。
　なれば何処に逃げればいいのか？何処を見ても水晶屍人がいるのであれば、やはり確実に水晶屍人の見えない城に向かうべきではないのかと混乱が生じる。
　しかしそこへが心強い援軍の声がかかる。
「皆の者っ！これを見よぉ！」
　そこには幕府より授かりし猟兵の証、天下自在符を天に掲げるガルディエ・ワールレイド（黒竜の騎士・f11085）がいた。
「この場にて、鳥取城とは別に、城を築いた！あそこの城と兵は味方だ！安心して避難しな！」
　そしてガルディエが示したのは、ガルディエ自身のユーベルコードによって建築した無敵の城。万の軍勢（ブレイブ・アーミー）。
　及びその城に駐屯している兵士たちである。
（想像から作れる城だ。多少は強引な場所でも構わず作れるし、騎兵も足止めに使えるぜ）
　逃げる場所を探していた農民達は助けが来たと安堵して素直に従ってくれる。
　さらに城から離れた位置で襲われそうになった農民の元には……。
「村人を襲うとか、許すわけにはいかないっすねー」
　お面の乗ったバイクが颯爽と登場し、そのまま水晶屍人を轢き潰し、前輪で回転しながらビーム砲で広範囲を薙ぎ払う。
　宇宙バイク【アルタイル】に乗ったリカルド・マスケラス（ちょこっとチャラいお助けヒーロー・f12160）である。
「大丈夫、ここにはお稲荷様の加護があるっすよ。心配なら、このお面もつけるといいっす」
　リカルドは助けた農民に声をかけてガルディエの作った城への避難を説得しつつ己のユーベルコードで呼び出したお面を被せていく。
　しれっと被せた狐面であるが、これは仮面憑きの舞闘会で作った面。
　リカルドの分体であり、同意した状態で被せる事で憑依。リカルドの身体能力や技能を付与するというユーベルコードなのだ。
（そうなれば、自衛能力が上がるので、守りやすくなるはずし、倒れた敵の武器を拾えば戦力にもなるっすよ）
　だが一度に沢山の人に憑依可能な半面、本体への負担が大きい術だ。
「まあ、長く持たないんで、猟兵のみんなには頑張って欲しいっすけどね」
　リカルドの身体能力を用いて避難し始めた農民を見送りながら小声で弱音を吐く。既に代償は払われているのだ。
「代償はバカにならないっすよね」
「なら早めに終わらせよう！」
　避難誘導が上手く軌道に乗った所で志乃は攻勢に出る。
　強化されている水晶屍人の力はガルディエの呼び出した兵士では倒し切れはしないものの、足止めは可能。
　そのまま志乃はタックルを決めて相手の牙を光の鎖で封じ残りの水晶屍人を一か所に集める。
　「よし、俺も出るぜ！餓え殺しの再現で水晶屍人量産なんて許すわけにはいかねぇんだよ！」
　馬に騎乗したガルディエも城の守りを召喚した兵士に任せ、魔槍斧ジレイザと魔剣レギアを構え前線に出てきて、志乃を守りながら水晶屍人をのけ反らせる。
「今一時銀貨の星を降らせる、世界の祈りの風よ」
　志乃はその間に祈りを捧げ、破魔の力を先程バリケードにした器物に浸透させていく。
　水晶屍人達が志乃の詠唱から何かを感じ取ったのか、それぞれが肩の水晶から眩い閃光を放ち、目くらましを行う。
「わお！」
「ぐっ！」
　バイクや騎馬に騎乗していたリカルドとガルディエは視界を塞がれると、バランスを取るために動きと止めざるを得なかった。
　この間に水晶屍人はその場を逃れ、そして農民を襲おうと動きだそうとする。
「なーに？ 閃光？ 視界に頼る気は端から無いよ」
　だが志乃は全く動じる事なく、両目を閉じて祈りを続ける。
「あんたら怨念で霊なんだから、第六感で見切るに決まってるでしょ」
　そのまま残りの体力全てを使い切って、ユーベルコードを起動。
「屍人は飢えた人々の怨念で出来ていると聞いた」
　ユーベルコード：流星群。それは無機物を世界に幸福な幻想を生み出す祈りと浄化の風に変換する世界法則さえも覆す奇跡。
「生み出す幻想は山と積まれたこの世界のご馳走。せめて夢の中でぐらい、たんとおあがりよ」
　その風は目を閉じていた志乃によって狙い通りに水晶屍人を巻き込み、そして浄化していく。
「浄化の風で安らかに眠れ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月19日