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エンパイアウォー⑩~海は鳴いているか

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●海に浮かぶ船に乗り込んで護衛を蹴散らして旗を引き摺り下ろす作戦でございます。
「村上怨霊水軍との戦いでございます」
 グリモアベースでルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)が数人の猟兵を集めていた。窓際の床に正座したルベルの説明は以下のように続く。

「例の、日野富子でございます。彼女が、ありあまる財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造していたのでございます」
 なんと日野富子は大船団を作っていた。

「本来なら、船は建造できても、その船を自在に操る船員を用意するのは一朝一夕にはいきません。
 ですが富子は、戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出し、鉄甲船の大船団を大規模海戦にも耐えられる、最強の水軍にしたのでございます。
 このままでは、南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまうでしょう。そうなる前に、村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を、猟兵の手で沈めなければなりません」
 まるで台本を読むかのように説明したルベルは、続いて戦場の様子を説明する。

「皆様には、海に浮かぶ鉄の城のような『超巨大鉄甲船』の一つに乗り込んで頂きます」

「『超巨大鉄鋼船』は、村上水軍の怨霊の力が宿っている限り、すぐに復元されてしまい、普通の攻撃では破壊することができません。ですが、村上水軍の怨霊は、帆柱に掲げられた村上水軍旗(〇の中に上と書かれている旗)を引きずり降ろすことで消滅します。そのため、猟兵の皆様には空から海から多種多様な手段にて鉄甲船に乗り込んで頂き、妨害する護衛を撃破しつつ、村上水軍旗を奪取して船から脱出していただくことになります」

 ルベルはちらっとカンペを見た。
「船は、全長200m程度、全幅30m程度でございます。敵の数は10体程度。敵以外に、船を動かし続けるだけの村上水軍の亡霊がいます。村上水軍の亡霊は、日野富子が呼び出したようです。村上水軍の亡霊たちは、大金で雇われたので喜んで協力しているようです」

「船上で戦う相手、護衛兵についてです。護衛達は、且つて、織田信長に一揆をおこした農村と共に戦った多数の義勇兵達。彼らは、織田信長の敵だったのです。ですが今、その信念は歪められ、何の為に戦うのかを見失ってしまっています。
 護衛達は前衛と後衛が別れており、お互いを援護するように戦うようです」

 一通り説明したルベルは丁寧に頭を下げた。額を床につけ、依頼が為される。
「対応すべき戦場が多く大変なところを恐縮ですが、頼りにしておりますゆえ、どうぞおひとつ、よろしくお願い申し上げます」

●天気晴朗にして波は穏やかに
 穏やかな海上。『超巨大鉄鋼船』が一隻だけゆらゆらと浮かんでいる。
「幕府軍の船が相手か。金も貰えるし、相手にとって不足なし」
「血が騒ぐのう」
 村上水軍の亡霊たちが会話をしていた。
「そーれ、とんだーとんだー」
「気が早いわ。ははは」
 そんな亡霊達の会話には加わらず、護衛が10体船上で目を光らせている。


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 ※諸々の事情により、参加人数が6人以上の場合は採用されにくくなります。申し訳ありませんが、ご容赦くださいませ。
 ●今回のシナリオに関して
 ・海上の船に乗り込みます→船に護衛が10体いるので倒します→旗を引き摺り下ろして依頼完了!という内容です。5~6人集まり次第、全員連携でのリプレイを執筆する予定です。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『義勇兵の亡霊』

POW   :    我が信念、この体に有り。
自身の【味方】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    我が信念、この刃に有り。
自身に【敵に斃された仲間の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    我が信念、この矢に有り。
【弓】を向けた対象に、【上空から降り注ぐ無数の矢】でダメージを与える。命中率が高い。

イラスト:シルエットさくら

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

セシリア・サヴェージ
怨霊として蘇ってなお金銭で動くとは……いえ、戦いとは関係のない事でした。
直接戦う相手は義勇兵の亡霊ですか。在り方を歪められた彼らの事を考えると……ですが、現在を生きるこの世界の人々のためにも成すべきことを成さなくては。

いつぞやの海賊衆に秘かに舟の【操縦】方法を簡単に教わったのですが、役に立つときが来たようです。追いつきさえすれば結構。
私に気付いた義勇兵が矢を放ってきたら【オーラ防御】で防ぎますが、私はおとりです。船底(水中)に潜ませていた【ダークナイト】に命令して【水泳】させて敵船に接近・船上を強襲してもらいます。
あれが暴れているうちに私も乗り込んで戦闘を行いつつ旗を降ろす機会を伺いましょう。


月凪・ハルマ
まだまだ、船は残ってるか……
これはもうひと頑張りしないとだな

◆SPD
はい、それでは【ガジェットショータイム】
今回召喚するのは敵船まで飛んでいくための飛行機です
【操縦】技能ももってるので、その辺は大丈夫

まぁ間違いなく目立つけど、敵がこっちに気を取られれば
他の猟兵も敵船に乗り込みやすくなるだろうし

……え?着陸はどうするって?


――しません


ある程度敵船に接近したら、自動操縦に切り替えてぶつける
(超乱暴)
あ、もちろん自分は衝突前に脱出しておくので

船に乗り込んだ後は【忍び足】と【迷彩】で【目立たない】様に
移動しながら、亡霊や護衛を発見次第【暗殺】を仕掛けていく

水軍旗も降ろせそうだったら積極的に狙っていこう


ステラ・エヴァンズ
日野様も最後まで厄介なものを残してくださいました…

小舟を出してもらって近くまで行きましょう
後は氷属性の衝撃波で海面を凍らせながら徒歩にて
そのまま衝撃波で船に穴を開け侵入
すぐ復元するとの事ですし沈みはしませんでしょう

皆様と合流したら全員に護星結界を
申し訳ありませんが、ここでお引き取り願いましょう
天津星に雷を纏わせ敵をなぎ払っていきます
感電か痺れによって動きを封じるか鈍らせられれば良し
そのまま勢いに任せ、舞うように立ち回りながら切り伏せていきましょう
結界を張っているので敵からの攻撃は避けません
逆に踏み込みます

旗…衝撃波で切り落とせば良いですか?
…念のため炎を纏わせて燃やしてしまいましょうか


プラシオライト・エターナルバド
「念動力」で身体を浮かせて海を渡り乗船
敵に気付かれないように「忍び足」
【クリスタライズ】で身を潜めて接近を

適宜、姿を消して攪乱しながら
後衛の護衛を狙います
トリックスターで敵の武器を「盗み」
また受ける攻撃を「敵を盾にする」ように絡めて操作
エレノアの「破魔」弾で除霊
傷ついた仲間には、アメグリーンの回復薬弾を発射

自分へ弓を構える所作を見たら、すぐに姿を眩ませて
念動力で自身は素早く移動
「おにさんこちら」声でも惑わせて
「手のなる方は……ハズレです」
同じく念動力で浮かせたエレノアが
自分とは別方向から敵を狙撃

お金に目が眩むと、碌な事がございませんよ
文字通り、死に金となるだけでしょう

アドリブ歓迎、サポート重視


萬・バンジ
※アドリブ連携オール歓迎
面倒やなあ
日野某が消えても動かした金は消えん訳や
使うとこに使う金持ちは厄介やで、ほんまに

何方かに船まで相乗りさせて貰えたら楽やけど
難しそうなら氷結の【属性攻撃】
足の下凍らせながら海の上歩いて行きましょか
船についたら【目立たない】ように隠れて
戦闘が始まったらユーベルコード『天上天下』発動
船の真上に雲呼んで、「麻痺」属性の「雨」降らせます

体の自由を奪えれば隙ができる、連携とれてても援護が遅れる
ボク非力なんで、敵が弱らんと太刀打ちできませんもん
後は雨に紛れつつ「水」の【全力魔法】で追撃や

旗は相棒のサガラに任せます
引きちぎって落としたり。頼んだで


トルメンタ・アンゲルス
自動で直る鉄鋼船ですか。
宇宙船沈めた時みたいに沈める訳はいかないんですねぇ。

ですが、旗をどうにかすればいいんですね。
なら、そこに注力しましょう。
行くぞ相棒!
変身!
『MaximumEngine――Mode:Dragger』

船攻めは他の方にお任せするとして。
俺は陸上に転送してもらい、そこから始めましょう。
目標の大体の位置を捕捉し、Mode:Draggerへ換装。
力を溜め、最初からトップスピードで発進!
約マッハ3.8で飛翔し、一気に接近!

標的まで2kmを切ったら、追撃のブリッツランツェの発動で更に加速!
敵が対応するよりも先に、旗を引き摺り墜とす!
良いのなら、帆柱ごと蹴り折ってやりますよ!



●旗取り、一本!
 唐突に異変は起きた。
 大型の鉄鋼船に接近する影があった。

「敵影! 敵影! 猟兵が船一隻、急速に接近」
 船上がざわりとする。
 護衛兵達が即座に反応し、弓を番える。

 海上を無数の矢が降り注ぐ。
 小回りを利かせて矢を掻い潜り、時に薄闇のオーラで防いでいる船上には一人の猟兵が乗っていた。

「あの動き、我らの操舵技に近い。うまいものだ」
 村上水軍の亡霊たちが不思議そうに見つめている。
「左様でございますか」
「そう――、ん?」
 亡霊が瞬きをし、周囲を見る。
「今、女人の声がしなかったか」
「ふうむ?」
 船上に異変はない。亡霊たちは首を傾げた。

「貴方たちの子孫から教わりましたからね」
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が声を返した。銀の髪が潮風に靡き、陽光にきらきらと輝いている。
「我らの子孫だと!?」
「誇り高き海賊衆でした」

 会話と操舵により敵の意識はセシリアに釘付けとなっている。
(怨霊として蘇ってなお金銭で動くとは……。いえ、戦いとは関係のない事でした)
「私は貴方たちの舟を沈めに参りました。勝負といきましょうか」
 清廉な銀の眸は亡霊たちと護衛兵たちを挑発的に見る。
「興が乗ったぞ! 勝負じゃ! 勝負じゃ!」
 亡霊たちはそう言って楽しげに船を操る。護衛兵は一層苛烈に矢を降らせた。
「ん? 矢が足りぬぞ」
「吾の弓がない」
 数人が目を見開く。
「いかん、予備を持ってまいる」
「疾くせよ」
 敵の足並みが乱れていた。

(予想していたより矢が少ない、ですね)
 海上のセシリアが訝しみながら声を放つ。
「貴方たちは嘗て信長の敵だったのでしょうに……。ですが、現在を生きるこの世界の人々のために、私は成すべきことを成さなくてはなりません」
 セシリアは矢を防ぎながら凛然と声をあげた。
 全き海に揺蕩う者たちよ、我を見よ。太陽すらも引き付けてみせよう。銀色は眩く眼を奪い、海上に煌めいていた。

 その舟にさっと影が差す。
「上?」
 敵が空に? と仰ぎ見れば、飛行機が高速で船に接近していく。

「あれも猟兵だ。あの空飛ぶ舟を射よ!」
 護衛兵の半数が慌てて空への攻撃に切り替えている。
「まだまだ、船は残ってるか……これはもうひと頑張りしないとだな」
 宵空を被り気配を消していた月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)が飛行機の操縦桿を手に呟いた。
(敵がこっちに気を取られれば他の猟兵も敵船に乗り込みやすくなるだろうし)
 囮になろうというわけである。

「ひっ、ぶ、ぶつかるぞ」
「なんと玉砕覚悟かっ!!」
 船上の護衛兵たちが衝撃に身構えた。
 村上水軍の亡霊たちは楽しそうに笑っている。
「はははっ! 楽しい敵じゃのう。船の操舵者は命がいらんとみえる。よき覚悟じゃあ!」

 隕石のように空から衝突する飛行機。

「いや、命は捨てないかな」
 ハルマは気配を消したまま飛行機を自動操縦に切り替え、さっさと脱出していた。
「おっと」
 流れ矢が身体を掠める。だが、甲板に敵に悟られぬまま密やかに着地した瞬間神秘的なアメグリーンの光が身を包む。
「? これは、回復の技?」
 見れば傷が癒えている。
 ハルマは周囲を探り、首を振った。味方がいるのはわかるのだが、慎重に姿を隠しているようなのだ。だが、自分のことは観ているのだろう。それを感じたハルマは帽子を脱ぎ、軽く頭を下げた。

 激しい音をたてて飛行機が海上船に激突する。瞬間、衝突した両者は大きくひしゃげて損壊し、大波が周囲に暴れ狂い押し寄せた。
「かかか、海に在る限り我らは無敵ぞ」
 亡霊たちの旗がはためいている。彼らの誇り高き名をはためかせ、損壊した船を直していく。

「日野様も最後まで厄介なものを残してくださいました……」
 小舟から様子を窺うステラ・エヴァンズ(泡沫の星巫女・f01935)が優しい琥珀色の眸を曇らせ、困ったように呟いた。
「面倒やなあ。日野某が消えても動かした金は消えん訳や。使うとこに使う金持ちは厄介やで、ほんまに」
 相乗りの萬・バンジ(萬万事・f21037)がへらりとした顔で肩を竦めた。肩に相棒を乗せたバンジの魔力を織り込んだ小夜時雨が潮風に揺れる。
「セシリア様、敵船までの道を創ります」
 ステラが声をかけ、氷の衝撃波を放って海面を凍らせていく。
「船上の義勇兵は、歪んでしまって嘗ての敵に従えられているのですね」
「あー嫌や嫌や。敵の成り立ちやら知ってしまうと魔術が鈍るねん。考えるのやめやめ、切り替えてこ」
 バンジが軽く首を振り、怠そうにしながら魔術を使う。相棒の精霊サガラが大きな波飛沫に楽しそうに囀る。
「氷の魔術ですか、助かります」
 2人分の氷結技により海面がピキピキと冷気に覆われてしっかりとした氷の道を創っていく。
「穴を開けます」
 ステラがそう言って船に穴を開ける。
「すぐに塞がるでしょう、お急ぎください……!」
 3人は穴を通り、混乱の最中にある敵船へと乗り込んだのだった。
「ほんにすぐ塞がるんやね」
「この船が無対策で幕府軍と戦うことになれば被害は甚大なものとなるでしょうね」
 ステラは船内にいる猟兵全てを対象として護星結界を張る。薄く色付いた雲の様な膜の様な結界が離れた場所にいる仲間たちにも届き、味方の到着を教えたのだった。

「船底からの侵入者が――、」
 声をあげようとした護衛がハッとする。音が背後からした。バッと振り返ると、そこに人はいない。



「おにさんこちら」



 声がした。女人の声だ。
「!!!」
 護衛が声の方向を見る。
「手のなる方は……ハズレです」
 光の精霊銃エレノアが宙に浮き、銃口を向けていた。先刻ハルマに向けて薬弾を撃ったエレノアが今度は敵に向けて銃を撃つ。弾には破魔の力が宿っている。受けた護衛兵は胸元を抑え、一瞬だけ大きく眼を見開いて。
「あ……何故」
 ――何故、戦っていたのだろう。そんな事を思いながら海へ還っていった。

「うーむ。劣勢のようじゃ。猟兵とは強者ぞろいと聞いておったがこりゃあすごい」
「報酬に見合わぬな。ぬかったわ」
 村上勢が日野富子の仕事を請け負ったことを後悔していた。

「お金に目が眩むと、碌な事がございませんよ。文字通り、死に金となるだけでしょう」
 クリスタライズで透明化し、念動力でふわふわと体を浮かせて隠密でのサポートに徹していたプラシオライト・エターナルバド(かわらないもの・f15252)が姿を見せた。

「その声、さっきの」
 亡霊たちはプラシオライトを幽霊でも見たような顔で指さした。視線の先で再びプラシオライトが姿を透明にすると、亡霊たちは「ひ、ひええええええっ」と声をあげて「幽霊が出たではないか」と騒ぐのであった。

(幽霊は……貴方たちなのではないでしょうか)
 プラシオライトは淡々とした表情で弓兵の背に忍び寄り、矢筒から矢を抜いて海に捨てた。
 プラシオライトは船外で騒ぎが起きる前から姿を透明にして最初に船に忍び込み、ずっと陰ながらサポートをし続けていたのだ。今も姿を消して密やかに活動する彼女は、作戦終了後も仕事を誇ることはないだろう。
 ――ただのサポート役ですので。
 異なる色の双眸には感情の波ひとつ立たぬ。麗しの宝石人形は何者にも染まらぬ静謐さで黙々と誰の目にも知られぬ密やかなサポートをし続けるのであった。


「幽霊が出た、幽霊が」
 船上の混乱が極まっていた。

「幽霊? 何を言っているのでしょう。ですが、好機ですね」

「幽霊――あれは、なんだ?」
 ざぶり、海水から黒腕が伸びて敵船に乗り込む影があった。セシリアが水中から接近させていたダークナイトだ。
「ッ!? 敵だ! 敵が船に!」
「であえ! であえ!」
 護衛兵たちが騒然とした。迎撃に前に走る護衛兵たちの死角から音もなく手裏剣が飛び急所に命中して一瞬で暗殺する。混乱に乗じて忍び込んでいたハルマだ。

 いつの間にか頭上を分厚い雲が覆っていた。
「こりゃ、ひと雨来るな」

 騒乱の中、海から乗り込んだ猟兵たちが合流する。
「幕府軍の歩む道を支えるため、日野富子の策は破らせていただきます!」
 セシリアが勇ましく叫び剣を抜いて護衛兵と斬り結ぶ。
「申し訳ありませんが、ここでお引き取り願いましょう」
 ステラも長い髪を踊らせて天津星を揮う。雷を纏わせた一撃が当たらば護衛兵が痺れに武器の動きを鈍らせ、亡霊たちは船を漕ぐ腕を止めてしまった。
「背を預けます」
 ひそやかに味方の聲が耳に届く。こくりと頷いた気配は伝わったであろう。
「こちらも」
 セシリアが銀色の髪を靡かせて暗黒剣を大上段から真っ直ぐに振り下ろす。ステラの天津星に身を差しだして自分を犠牲に仲間が攻撃する隙を作ろうとしていた護衛兵が斬り捨てられた。
「感謝いたします!」
 ステラが天津星でセシリアの背を狙う弓兵を薙ぎ払った。

 ぽつり、ぽつり。
 雨が降ってきた。

「万物一切、神の随に」
 柱の影に身を潜めたバンジが術の成功にひとつ頷く。

 自然の雨ではない。バンジが降らせたのだ。天上天下、萬バンジと水精サガラが術に喚ばれぬ雨雲なし。降り注ぐ雨は敵のみを縛る麻痺の呪力が籠められている。

「ボク非力なんで、敵が弱らんと太刀打ちできませんもん」
 へらりと笑うバンジは柱の影から水の魔術を操り敵を沈めていく。
「サガラ、旗頼んだで」
 そっと頭を撫でれば、サガラがふわり飛び立って風に乗り旗へ迫る。

「あれが旗みたいだけど」
 ハルマが旗を引きちぎる鳥影を見た。
「味方の、えーと。鳥……?」
 水精サガラが羽をぱたぱたさせ、嘴で旗を齧って引きちぎっていた。
 ぴーっ、ぴぃーっチチチ……、
 サガラが一生懸命旗と格闘する下で亡霊たちがぷんすか怒っている。
「あああっ! 我らが誇り高き旗になんという無礼な!」
「おのれえ~~! 護衛は何をしているのじゃ」
 護衛たちは猟兵によりほとんど撃退されていた。
「かくなる上は、我らが村上の矜持を見せる時ぞ」
「矢を射よ! ああっ、矢が一本もないではないか」
 下で村上さんたちがそんな決意を固めていた時。

 氷の道を後から爆走する猟兵がいた。
「自動で直る鉄鋼船ですか。宇宙船沈めた時みたいに沈める訳はいかないんですねぇ。ですが、旗をどうにかすればいいんですね。なら、そこに注力しましょう」
 そう言って現地へと飛んだトルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は味方の氷の道の上で凛々しく声をあげる。
「行くぞ相棒! 変身! 『MaximumEngine――Mode:Dragger』」
 彼女専用に調整・製造された変身用ベルト『MaximumEngine』が男性の声でアナウンスをする。

 流線型の装甲がトルメンタの全身を覆えば、意志のチカラとコアマシンの出力もフルスロットルに変身したトルメンタが氷の道を爆進する。最初からトップスピードのトルメンタは途中約マッハ3.8で飛翔すると、一気に船へと接近した。

『標的まで2km』
 なんとトルメンタ選手、ここでユーベルコード『追撃のブリッツランツェ』を発動し、あらゆる推進力を利用した亜光速のダッシュを魅せる! 物理法則は海に置いてきた! 誰も反応できないッ!!
『捉えた――』

 ゴールが!
「チチッ!?」
 サガラがビックリしている。
『蹴りぬく!』
「良いでしょう! ダメだとは言われていませんっ!」
 トルメンタはその日一番の笑顔と共に超スピードで帆柱ごと旗を蹴り折り、引き摺り下ろした。

「い、いま何が起き、」
 最後まで言うこと叶わず亡霊たちが消えていく。
「キミらはもう人やない。はよお帰り」
 ばいばい、ほれ、はよはよ、とバンジがひらひら手を振っていた。肩にはサガラが戻り、毛繕いをしている。

 恐るべき一瞬の出来事であった。

「……念のため炎を纏わせて燃やしてしまいましょうか」
 ステラが炎を付けて旗を焼く。
「ああ、我らの旗がぁ~~!」
 亡霊たちはどんどん消えていき、やがて船上で動く者は猟兵だけになった。

「トルメンタさん、早かったですね」
「他の一切を捨てて旗だけを一心に狙う意気込みが最高の速度に繋がりました!」
 きらーん。トルメンタがサングラスを陽光に煌めかせている。
 合流した仲間たちが軽く声を掛け合い。

「サポート助かりました。っす」
 ハルマが軽く頭を下げた。何もない空間へ。
「私はただ仕事をしただけです」
 虚空から滑らかな声があった。ほんの、一言。感情の滲まぬ声は冷たさすら感じさせるほどであったが、ハルマはにっと笑んだ。

「今度は見つけた」

 こうして彼らの作戦は成功を収めたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月15日


挿絵イラスト