エンパイアウォー⑰~安倍晴明討伐戦・第二部隊
「みなさまお集まりいただきありがとうございます」
大神・狼煙(コーヒー味・f06108)は猟兵達を見回すと地図を広げて、とある城を示した。
「無辜の民を水晶の屍に変えて操る陰陽師、安倍晴明の居場所が突き止められました。これに伴い、既に多くの猟兵が強襲を仕掛けています」
先に戦場に出た仲間達を思い、鼓舞される猟兵がいる傍ら、この眼鏡が何を言わんとしているのかを察した猟兵が視線を細める。
「敵が強大である事は言うまでもありませんが、最終討伐目標である織田信長を前にして、ここで足止めを食うわけにはいきません」
そうでなくとも、戦闘が長引けば幕府軍に被害が及び、最終的に瓦解するのはこちらなのだ。腹を括った者、嫌な予感がした者、反応は様々だが。
「そこで、部隊を三つに分けて波状攻撃を仕掛けます」
強力な敵を前に、戦力を分散するというだけでもリスキーな話だが、相手は倒しただけでは蘇るオブリビオン。その生命の根源を断つには、短期間にその生命を幾度となく散らさなければならない。理には適っているが……。
「なに、問題はありませんよ。みなさんの実力なら、倒せない敵ではありません。せっかくですし、ピーチサラダでも作ってお待ちしております。必ずやご帰還ください」
おいバカやめろわざわざ余計なフラグを建てるんじゃねぇ!?……ってツッコミを入れようとした猟兵がいたらしいが、その人物は真っ先に戦場に送り出されてしまったらしく、眼鏡はフルーツのカットに入った。
久澄零太
おかしいな、デスマーチ終わったのに強行軍してる俺がいる……
みなさまやっふぉい、久澄(発狂)ですよ☆
前回数的問題でプレイングが採用しきれない事があったからね、戦力を分けてしまうのも仕方ないよね!!
そういうわけで、参加希望者はできれば第一部隊から順にプレ投げてくれると嬉しいなー?
以下注意点
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
美国・翠華
アドリブOK
私も屍みたいなものだけど
だから苦しみもわかる。あなたは止めなきゃいけない。
【戦闘】
敵の攻撃は最初のチェーンソー剣を注意深く見て
初撃を交わして攻撃を仕掛ける。
もう一回仕掛けてくるようなら自分の早業のスキルを生かして
攻撃を受け止めに行く。
暗殺スキルも使用して相手のスキを突いて急所を狙いに行くわ。
ダメージが大きくなるようなら自分のユーベルコードを発動させて
捨て身で攻撃を仕掛けに行く。
とある城の扉の向こう。やたら広い座敷の中心に、ここを根城にする陰陽師が座して来訪者を待っていた。
「貴方が、安倍晴明……」
本日の来客、美国・翠華(生かされる屍・f15133)は晴明の姿をじっと見つめて胸に手を当てた。
「私も屍みたいなものだけど……だから、苦しみも分かる。あなたは止めなきゃいけない」
翠華の言葉には、主語がなかった。故に、彼女は水晶屍人と化した人々を想い晴明に憎しみを向けていたのか、それとも、死を失い、生きる努力を必要としなくなったことであらゆる熱意を失って『生ける屍』に堕ちてしまった晴明を同情していたのか、その答えは彼女にしか……あるいは、彼女にすら分からなかったのかもしれない。
「そうですか……それで?」
武器に手をかけつつも、まだ動かない晴明に対して、翠華は大振りなナイフを抜いた。
「ここで、倒す!」
宣言と同時に畳を蹴り、瞬く間に距離を詰め己の間合いに踏み込んだ翠華だったが、晴明の方が動きは速い。唸る駆動刃を手に後方へ飛び、翠華の間合いから離れようとしつつ背後から彼女の首を落とそうとする刃を、翠華は視線だけで観察しており、咄嗟に屈んで回避。
(大型の上に動き続ける機械の刃……一度躱せば反撃の隙が……)
「それで避けたつもりですか?」
晴明の脚がステップを刻むように回転。空ぶった刃が翻り、回避直後の翠華の頭上から急降下!
「冗談でしょ……!?」
屈んだ膝を屈伸させて、重心を後ろに倒し、頭から両断しようとする駆動刃の下を頭から後ろ向きにスライディングする形でギリギリ回避する翠華だが、完全には躱し切れず額に傷が残り、散った血が彼女の目を潰す。
「しまっ……」
ただ見るだけで躱せるほど、敵の攻撃は甘くない。一時的に視界が潰されて後悔する翠華の耳に、更なる駆動音が迫る。
「ほら、早く目を開けないとバラバラですよ?」
「かはっ!?」
刃の音から攻撃の方向を探ろうとした翠華の腹を晴明が蹴り飛ばし、倒れた彼女の脚に駆動刃を押し付けて。
「いたぁああああああ!?」
皮を、肉を、大動脈を、大腿骨を喰いちぎられて、隻脚となった翠華の脚からおびただしい量の血が溢れだし、傷口から走る激痛は、明らかに純粋な痛みのそれではなかった。
「アシヲモッテカレタアゲク、ノロイマデモライヤガッテ……」
急激な大量出血により、意識が影を纏っていく翠華の脳裏に、声が響く。決して受け入れるべきではない『同居人』に、縋る思いで告げた言葉は。
「私に……協力して……少しだけ……自由を上げる……」
「チッ、シャアネエナァ……」
ぞるり、血だまりが意思を持ったように蠢く。逆流する翠華の血は傷口を塞ぎ、収束した血液が硬化、赤黒い仮初の脚を形成すると翠華の体が跳ね起きて、切られた足を起点にして全身を血が覆い尽くし、両目が黒く染まると瞳ばかりが赤く輝いて。
「こっから先はオレの出番だァ!!」
体を乗っ取ったUDCが翠華の体で、獲物を見据えながら舌なめずりするとただでさえ歪なナイフがその刃を伸ばし、牙のような小刃が数と鋭さを増す。
「いやっはぁああああ!!」
「おや?」
動きが変わった翠華に晴明は首を傾げるも、明らかに人外の速度で迫る翠華に、咄嗟に駆動刃を寝かせた腹でナイフを受け、弾き飛ばそうとした瞬間に翠華は武器の上で刃を滑らせて、火花を散らしながら晴明の武器を掻い潜り、その懐へ潜り込むと首を貫こうとして、寸前に躱されて水晶色の髪を散らすばかり。
「中々、面白いですね?」
両者、飛び退いて距離を取り、晴明が口角を上げるが翠華は突如えずくと、血の塊を吐き出して。
「あー……くそっ。こいつの体が限界か……」
翠華は吐き出した血を忌々し気に見ると、口に残った血を吐き捨てて。
「覚えてろよ水晶野郎。テメエはいつかぶっ潰す!」
捨て台詞を残して、翠華は後々繋げる為に切られた自分の脚を回収しつつ、戦場から緊急離脱するのだった。
失敗
🔴🔴🔴
チトセ・シロガネ
ユー、なんか気に食わない顔してるネ。
【戦闘知識・第六感】からこの攻撃は避けちゃノーグッドだとボクの戦闘経験とフォトンセンスが告げるネ。
だから面倒なあの札を【早業・見切り】で軌道を読んで
【武器受け・オーラ防御】で受けて【武器落とし】でスラッシュダウンするネ。
たくさんショットしてくるようなら【念動力】でまとめて【範囲攻撃】でバラバラにするヨ。
お札対処ついでにこちらの番ネ。UC【破邪光芒】を発動!
札を切り伏せるついでに【カウンター】からの【怪力・鎧無視攻撃】の【衝撃波】でヤツに一撃くれてやるネ!
物騒なお札はペーパー吹雪に
その不気味フェイスを福笑いみたいにしてやるネ!
「ユー、なんか気に食わない顔してるネ」
戦場に立ったチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)が晴明に抱いた印象は、それだった。
「気に食わない……まぁ、そうなのでしょうね。私は今の在り方に不満を抱いているのでしょう……」
チトセの指摘に首肯して、晴明は五芒符を構える。
「だからこそ、あなたが私の心に熱を注いでくださると期待していますよ?」
本当に期待しているのか、できるわけがないと嘲っているのか、薄い微笑みを浮かべた晴明が放つ札を前に、チトセの眼光が引き絞られる。
「この攻撃は避けちゃノーグッドだとボクの戦闘経験とフォトンセンスが告げるネ……」
迫りくる札に向け、一瞬の思考と共に二振りの光の刃を抜くと交差させる形で符を真正面から受け止める。
「オゥ……やはりノーマルの札ではありませんネ……!」
斬りつけた側のチトセが、符に込められた呪詛から両腕に激痛を走らせながらも、止めてしまえば後は容易い。
「己が魂に宿る星光よ、一筋の希望となりて、悪意を断ち切れ」
一瞬だけ武器を手放して、交差させていた光の刃の柄を叩き合わせるようにして連結。重なる光は城の天井を穿ち、光の柱となって符を焼き払う。
「物騒なお札はペーパー吹雪に、その不気味フェイスを福笑いみたいにしてやるネ!」
ガガガガ……!城ごと両断する光の刃が晴明に振り下ろされるが、それほどの大技をまともに受けてやるほど、晴明も馬鹿ではない。ヒラリ、刃の軌道から逸れて城を両断した光を見送るのだが。
「……おや?」
チリチリと、触れてもいないのに肌が焼かれる痛みが走る。完全に躱したにも関わらず、膨大なエネルギーを持つ光刃の熱と剣圧が晴明の身を蝕んでいるのだ。
「ンー、福笑いにはちょーっと物足りないデスネ?」
不機嫌そうに表情を歪めた晴明に、チトセもまた不満を漏らすのだった。
成功
🔵🔵🔴
法月・志蓮
【現の夢】
WIZ
基本名前呼び、フェリスはフェリと呼ぶ
さて、強敵だが……何時も通り、冷静に仕事を果たそう
先制攻撃は動体『視力』や『第六感』を駆使した『見切り』で避ける
戦場に溢れる怨霊はユナが対処してくれるはずだ。ユナの事を優先的に援護しながら耐えるぞ
最悪『かばう』事で『呪詛耐性』と『激痛耐性』で耐えるか……
その間、後の狙撃に備えて敵の動きを観察して『戦闘知識』を蓄積しておこう
敵の強化が消えたらエルカの号令に応えて反撃開始だ
フェリのサポートと合わせて【流れ断つ点撃】を放ち、敵の防御や回避を封じて一斉攻撃を直撃させてやろう
俺は『スナイパー』だからな。支援狙撃はキッチリ決めてやるさ
エルカ・エーネ
【現の夢】の7人で参加だよう!
飽きたとか意味わかんないから、ちょっとでも痛い目見ちゃえー!
先制への対抗で、五芒符への対抗は主にユナさんが
わたしのとこもいっぱいのたぬきちゃんが先制を防ぐべく飛び込んでいくからねぇー!
目測も何もないくらいにとびかかってー
ほーらがんばれたぬきちゃん!
ダメージを負いそうなひとのところにはたぬきちゃんがダッシュして大きなたぬきの形になってディフェンスだよう
先制攻撃への対処の後には、私が「なぎはらえーーー!!」って声かけしてから【現の夢】のみんなが一斉攻撃してくれる……はずーっ!
私も鈴蘭の嵐で加勢をするね
えへへたのし……
い、いけない(きりり)
エクセレス・フィオーレカリバー
【現の夢】
青薔薇騎士団を召喚してあとは騎士団長に任せるわ
騎士団長、あとは任せたわよ。
団長「はっ! ではこれよりエクセレス様に代わり私、青薔薇の騎士団長がプレイングを取り仕切らせていただきます」
「青薔薇騎士団は大盾を持ち防御陣形。先制攻撃からエクセレス様とエルカ様を守ります、ネズミ一匹通しません。はっ?たぬきは通せと…?」
「ごほん……対処の後、防御陣形を解き、エルカ様の号令に合わせ聖なる矢の一斉射を2回行います」【属性攻撃】【2回攻撃】【一斉発射】
まあこんなもんね!
アリサ・マーキュリー
【現の夢】
飽きた…そんな理由で人々を…戯れに殺して屍人にしたっていうの!?
こいつは…こいつだけは許せない!絶対、叩きのめす!
攻撃は味方がバフを撒いてくれる事を信じて、見切りと気合、覚悟と激痛耐性で耐える
五芒星の対策も私には何もできないけど、ユナがきっとやってくれる。
私に出来るのは、皆を信じる事だけだから。
どれだけ傷付いても絶対に諦めない。必ずお前を倒す。
攻撃を耐え切って強化が消えたら、エルカの号令と共にやり返す
だまし討ちと捨て身の攻撃でボロボロになってでも奴に攻撃を食らわす
例えこの怒りが無意味なものだとしても。それでも、怒る事すら出来なかった人達の為に私は怒ろう。
その怒りを炎へと変えよう。
ユナ・アンダーソン
【現の夢】の皆と参加
前回は不覚を取ったけど今度はそうはいかないわよ
今度こそ、そのいけすかない面をぶん殴ってやるんだから
先制攻撃対策
第六感で攻撃を予測しつつ
オーラ防御を範囲攻撃の応用で範囲化し
攻撃や怨霊から激痛耐性と呪詛耐性で耐えながら皆を護りかばいます
戦闘
優しさと祈りを用いてUCを発動
ピリカさんと合体技的に一緒にピカーっと光ります!
いくよ、ピリカさん!
そしてあふれ出た怨霊に救済と安らぎを与えて無力化し
皆が問題なく動けるようにします
さぁ、私に身と心を委ねて
大丈夫、あなた達の全てを救ってあげる
エルカ団長のかけ声と共に皆と一緒に連携して大鎌で攻撃するわ
囲んで棒で叩く!
ピリカ・コルテット
【現の夢】
どーまんっ!!せーまんっ!!
WIZです!!いんてり狐巫女、参上ですよっ☆
◆セーマン対策
できればよける!!妖刀での『武器受け』もアリですねっ!!
ユナさんがいい感じに対処してくれるみたい!!
敵が強化されたら、あっ…って察しよう
◆さくせん
【わたしですよ】でなんだかすごい光を放ちます!!まぶしいぞー!!
事前に『属性攻撃』の力で光属性をめいっぱい身体に集めて、
『全力魔法』パワーを乗せてフル射出するんです!!
ユナさんのUCと合体技的に一緒に撃てると、もっと凄い事になりそうっ!!
楽しい仲間みんなで協力しながら、連携して戦いますよーっ!!
悪霊退散っ!!今日此処では私達が陰陽師ですっ!!れっつごー!!
法月・フェリス
【現の夢】
ぼくの仕事はみんなを戦いやすくすること。サポートは任せて。
先制攻撃に対しては野生の勘と視力、見切りで回避。清明にバフがついたとしても、それを活用させたりはしない。
2回目の攻撃からはエレクトロレギオンが清明の攻撃を請け負って、味方をかばうよ。
反撃のタイミングはエルカ君が計ってくれるから、ぼくはレギオン達を操作しながら清明の戦闘の癖を探す。
反撃時には動く敵を確実に足止めさせるために、志蓮の狙撃の演算補助を行うよ。実直で堅実な志蓮の弾丸は、特別な能力なんてないけれど、だからこそ純粋に強いんだ。
きっと仲間達の攻撃を当てさせてみせるよ。
「前回は不覚を取ったけど今度はそうはいかないわよ。今度こそ、そのいけすかない面をぶん殴ってやるんだから」
一度、晴明を相手にして、敗走を喫することになったユナ・アンダーソン(星骸のスティグマテイカ―・f02647)。その時はチームの助言もあって背を向ける事になったが、同じ轍は踏まないと、決意新たに戦場に立つ。その隣で、怒りに震えるのはアリサ・マーキュリー(God's in his heaven・f01846)。
「飽きた……そんな理由で人々を……戯れに殺して屍人にしたっていうの!?こいつは……こいつだけは許せない!絶対、叩きのめす!」
「何か、おかしなことを言いましたか?」
アリサに対して、晴明は心底不思議そうに首を傾げる。
「人間だってそうでしょう?幼い頃、虫を潰して遊んだことは?巣に水をかけたことは?カタツムリに紙を食べさせた方もいるやもしれませぬ。子を残さんと必死に鳴く蝉を獲って籠に閉じ込めて最期を迎えさせた事などもあるやもしれませぬ。はてさて、私のこれは、それらと何が違うのでしょう?」
「人の命をなんだと……!」
更なる怒りに震えるアリサに、晴明はため息をついて。
「それこそ、傲慢というもの。虫の命は人より軽いとでも?なんと恐ろしい、なんとおぞましい」
「この……!」
「落ち着いて」
挑発されて、先走りそうになったアリサを法月・フェリス(ムーンドロップ・スポッチャー・f02380)が宥めて静かに首を振る。
「相手は強敵なんだよ、冷静さを失っちゃダメ」
「そう言う事だ」
法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)は愛用の狙撃銃を背に隠して、じっと晴明を睨みつける。
「強敵だが……何時も通り、冷静に仕事を果たそう。自分のスタンスを見失うなよ」
などと、口にはしたものの、本来の志蓮の戦闘スタイルは狙撃による支援射撃。早い話、このように戦場に姿を見せた時点で負けなのだ。
(とはいえ、城の内部に入らないと狙いようがないからな……)
敵の前に立ってしまっては狙撃手の意味がない。しかし、敵前に居なければそもそも戦闘に参加できない。城という戦場であるが故のジレンマに、志蓮も内心焦っていたのだろう。先の言葉は、アリサと同時に自分に言い聞かせていたのかもしれない。
「ま、戦場では冷静さを欠いた者から死んでいく……常識ね」
エクセレス・フィオーレカリバー(蒼薔薇の魔剣・f05561)が指を鳴らすと、青薔薇の意匠の城門が召喚される。ゆっくりと開いた扉から現れたのは、白銀の鎧に門と同じ青薔薇の意匠を取り入れた、青薔薇騎士団。騎士達が用意した椅子に腰かけたエクセレスの隣で、騎士団長が敬礼。
「青薔薇騎士団、戦闘配備を完了しました。いつでもエクセレス様の御心のままに!」
「そう、なら騎士らしく私達を守り抜いて見せなさい」
「はっ!青薔薇騎士団は大盾を持ち防御陣形!!……エクセレス様とエルカ様をお守りいたします、ネズミ一匹通しません」
騎士が淹れた紅茶を嗜みつつ、指示を飛ばす騎士団長へエクセレスは「そうそう」と続ける。
「狸は通しなさい」
「はっ!……は?」
一瞬反射的に敬礼した騎士団長が、違う意味で同じ言葉を吐いた。
「見てれば分かるわ」
「飽きたとか意味わかんないから、ちょっとでも痛い目見ちゃえー!」
晴明の態度に怒りを覚えたのはアリサだけではなかったのだろう。エクセレスの示した先で、エルカ・エーネ(サマービーチの家主・f01204)の号令にぽんぽこぽんぽこ、次々と狸が増殖。騎士と狸。総勢数百もの軍勢を前にして、晴明が五芒符を構える。
(来る……!)
部隊の支援役として、武装した機械兵器を展開するフェリス。ただでさえ多かった猟兵側の軍勢がさらに増え、もはや四面楚歌と言えるこの戦況。敵の攻撃に対して、対策を練る役割を担っていたユナが、敵に意識を集中させる目の前で。
「ふむ、随分と数が多い事。ならば、私もこのまま戦うのは得策ではなさそうですね」
晴明は、自分の足元に五芒符を叩き付けた。
「え……」
自己強化にUCを使う事を想定していなかったユナが硬直し、戦場に亀裂が走ると無数の怨霊が湧き出してしまう。彼らの怨念を吸って覇気を纏う晴明を前にして、ピリカ・コルテット(Crazy*Sunshine・f04804)の眼が点に。
「あっ……」
ここに来て何かを察したインテリ狐さん、コメントをどうぞ。
「敵がわざと外す可能性を完全に忘れてたなー、なんて……」
支援役、攻撃役、防衛役、狙撃役……部隊の構成は十分どころの話ではない。ただ、それを活用するだけの策を練り切れていなかった。
「い、いけない!たぬきちゃんとびかかってー!!」
「た、狸が、狸が!」
「おい馬鹿陣形を乱すな!防衛ラインを維持しろ!」
「狸を止めるか陣形を崩すかしないと動けない……!」
「……なんと無様な」
エルカが敵の動きを牽制すべく狸をけしかけるが、騎士団の陣形が巻き添えに乱されてしまう。確かに座敷は広い。だが、猟兵達が動き回ることができる程度にはという話で、二百の狸と百二十九の騎士と百七十の機械兵器。そんなものが一同に会せば味方同士でぶつかり合う事など目に見えていただろうに。混乱する戦場を、晴明は悠々と五芒符を足元に散らし、己を強化し怨霊を増やしながら歩き始めて。
「しまった!青薔薇騎士団!エクセレス様をお守りするんだ!!」
「団長!狸が走り回って盾が降ろせません!」
「団長!陣形を整えるには部隊が収束し過ぎています!」
「団長!怨霊に足を掴まれて身動きが取れません!」
「くっ、もはや防衛ラインはいい!何としてもエクセレス様を……」
「騎士団長!守るべきは私じゃないわ!!」
エクセレスの声が飛ぶが、まともに動けない現状では意味がない。
「何やら私に恨みがあるようでしたが……いかがしましたか?」
「くっ……!」
怨霊に纏わり憑かれて、まともに動けないユナへ五芒符が迫り……。
――タァン!
「……ほう?」
ユナに向かったはずの符を、弾丸が壁に縫いとめて、ユナの血の代わりに壁から新たな怨霊を生み出した。その弾丸の向かい側。混乱する戦場に紛れて、銃口に視線を重ねていた志蓮と、晴明の眼が向かい合い。
「悪いが、そいつをやらせるわけにはいかないんでな」
「ではあなたから潰すとしましょう」
混雑する戦場から一足で距離を詰め、機械兵器と騎士を薙ぎ払いながら肉薄する晴明へ、志蓮は銃口を向けるも弾丸は巻き上げられた騎士と兵器に阻まれ晴明に届くことはなく。
「ガッ……!?」
「初めからコソコソ隠れていればいいものを」
首を掴み上げられて、パキッ。軽い音を立てて頸椎を破壊された志蓮の四肢から力が抜け、愛用の銃を取り落とす。
「志蓮……!?」
目を見開き、口元を両手で覆うフェリスへ、晴明は志蓮をその場に落すと、手近な機械兵器を投げ飛ばし、迫る影にハッとして回避を試みたフェリスだったが、既に注意を逸らした晴明が目の前にあり、彼女の口を塞ぐように頭を掴む。
「あなたの心は揺れていますか?その躍動が私も欲しいのですが……今、その胸を引き裂けば譲っていただけますか?」
貫手を構え、フェリスの心臓を求める晴明。その無機質な指先が彼女の胸を穿つ寸前、甲高い音と共に狙いが逸らされてフェリスの肩に傷を残す。
「……!」
言葉を発することができぬフェリスの視線の先、震える手で銃を構えた志蓮が畳を這いながら晴明を狙っていて……。
「フェリを……放せ……!」
「死にぞこないが足掻きますね……これが、愛とかいうのですか?」
首を傾げ、晴明はフェリスを投げつける。直撃した志蓮が吹き飛び、壁に体を叩き付けられるが、その一瞬で確かに自分の妻を抱き留めていた。
「大丈夫か……フェリ……?」
「うん……うん……!」
最後に小さく微笑んで志蓮は意識を手放し、叩きつけられた衝撃までは緩和しきれなかったフェリスは夫の腕の中で眠りに落ちる……。
「今ですユナさん!」
「いくよ、ピリカさん!」
晴明の注意が夫婦に向いている隙に、バッと両手を掲げて笑顔を浮かべるピリカと、脚に絡み付く怨霊へ手を伸ばすユナ。
「はーい、わたしですよーっ♪」
「さぁ、私に身と心を委ねて……」
カッ!二人の輝きが重なり戦場が激しい閃光に包まれるのだが……ユナのUCにはとある特性がある。
「ユナさん眩いです!これは私も負けていられませんねッ!!」
ぺかー。ピリカが更に光を強め、その光を塗りつぶすようにユナの光が輝きを増していく……ユナの光は救済と安寧を与える事を目的としており、その光が届かぬことがないように、救えぬ者がないように、その場のいかなる光にも負けぬ特性がある。結果、ピリカが光を強めれば強める程、ユナもまた輝きを強めて戦場はもはや閃光に呑まれて何も見えず……。
「大丈夫、あなた達の全てを救ってあげる」
目も開けられぬ閃光の中、ユナの声が響く。
「だから、こっちへいらっしゃい……」
『馬鹿を言うな』
怨霊の、声が返す。
『お前に何が救える』
『既に死した我らに何ができる』
『仲間すら守れなかった貴様に何がある』
『どうせ何もできはしない』
『我らは既に死んでいる』
『もう、全て終わった後なのだ……』
『だからこそ、憎い』
『憎い、生きる貴様らが憎い……!』
どれほどの憎しみがあったのだろう、どれほどの苦しみがあったのだろう。今を生きる猟兵に、その苦しみが分かるはずがない。故に、何を言おうと、何をしようと、怨霊を救う事などできはしない。救われないからこそ、怨霊としてそこにあるのだから。
「えぇ、そうでしょう?」
だからこそ、憎しみを肯定するユナに、怨霊が沈黙する。
「どれほど綺麗事を並べても、苦しみはなくならない。苦しんだ過去は変わらない」
クスリ、ユナは笑う。聖女とは似ても似つかぬ歪んだ顔で。
「だから自分が受けた苦しみを他の人にも与え、同胞を増やす事で『分かって』欲しいんでしょう?忘れて欲しくないから、なかったことにして欲しくないから」
カツリ、気づけばユナの体を掴む怨霊はなく、一歩、踏みだして。
「もう一度言うわ。私に魂と心を委ねて……大丈夫、あなた達の全てを救って……いいえ、奪って、この身に刻んであげる」
『何を……』
城内に先ほどとは違うざわめきが広がる。逃げようとする怨霊を、今度はユナが引っ掴み。
「さぁ、いらっしゃい……」
やがて、座敷を満たしていた光はなくなり、後には倒れたユナが残されていて。
「……何を、したのですか?」
同時に消えた怨霊に、晴明ですら驚きを隠せない。目を見開いた晴明に、エルカがハッとして。
「今だよ!薙ぎ払えーーー!!」
狸が一斉に動き出し、獣の群れに飲み込まれて足を止めた晴明に向けて、エクセレスがカップを傾ける。
「騎士団長、聞いたわね?」
「えぇ……総員、盾を捨てよ!射撃用意!!」
統率された動きで隊列を組み、一斉に弓を構えて矢を番える騎士達の傍ら、ピリカが狸の背を蹴って多角的な軌道で晴明へと回り込み。
「悪霊退散っ!!今日此処では私達が陰陽師ですっ!!」
「くっ、小癪な……!」
狸を駆動刃で薙ぎ払い、符を放つ晴明。桜の妖刀で斬り伏せんとするピリカだが、符は切れるどころか刃に絡み付き。
「私の符は、当たろうと当たらざるとも関係ないのですよ」
「しまった、怨霊ですね……!」
ゾワリ、悪寒が駆けピリカの尻尾がブワッと膨らむが……裏腹に、符は力なく落ちていく。
「な……!」
「なんだかわかりませんが行きます!れっつごー!!」
怨霊が現れない事に驚きを隠せない晴明へピリカが斬りかかり、駆動刃と鍔迫り合う。刃を回転させて刀を弾き飛ばそうとすれば、ピリカはそれに合わせて舞い上がり、距離を取った。その瞬間。
「総員、矢を放て!!」
騎士団長の号令に矢の雨が殺到。輝ける鏃が降り注ぎ、晴明をその場に縫い止めてしまった。
「例えこの怒りが無意味なものだとしても。それでも、怒る事すら出来なかった人達の為に私は怒ろう」
ユナと怨霊の会話は聞いていた。だからこそ、アリサには分かっているのだ。己が胸の内に渦巻く業火に意味はなく、抱いた想いは見当違いも甚だしいと。それでも……煙と炎に包まれた夢を見る。だから、共感してしまうのかもしれない。巻き込まれる民衆の苦しみに……。
「その怒りを炎へと変えよう……燃えなさい」
浮遊するは無数の狐火。向かうは晴明の頭上。一つに重なり、小さな太陽と化したそれは、屍を日の下に引きずり出すかのように、屍を生み出し続けた男の身を灰へと変えるのだった。
成功
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