エンパイアウォー⑧ ~ 死してなお求めるモノ
鳥取城近くには周辺から集まったと思われる村人が、誘われるがままに城の中へと逃げている。
何故逃げてきたのかと分かるのかといえば、自分もそうだったからだ。
住んでいた村に水晶を生やした屍が突然現れて、初めに手近に居た者が食い殺された。
村の外れの畑で仕事をしていた向かいの家の旦那が叫ぶ声が聞こえた。
何事かと村中の人々が畑へ向かうと何かが蠢いてるのが見てとれる。
動物に襲われたのかと思い、農具を片手に近づけばツンとした腐臭が漂っているのに気付いた。
嫌な予感がしてそこで歩みを止めたが、他の者達はそのまま近づいていく。
そして蠢いている者らが起き上がれば何が起きたのか一目瞭然だった。
そこには腹を食い破られ、はらわたが無くなり空っぽになった旦那だったモノが倒れていた。
口の周りを真っ赤に染めて、白く濁った目玉がこちらを見つめている。
彼らは食っていたのだ、人を、ただひたすらに。
小さな悲鳴と近づいていった彼らに、その屍共が飛びかかる所までは見た……その後はがむしゃらに人の気配を避けて逃げた。
殿様に訴え上げれば何かしてくれると思って、山の向こうの城を目指したのだ。
●
フェン・ラフカ(射貫き、切り拓く、魔弾使い・f03329)はホワイトボードに簡単な地図を描いて集まった猟兵達へと向き直す。
「皆さん、まずは戦争への参戦お疲れ様です、とはいえ戦況は待ってくれませんので早速説明といきましょう」
描き上げた簡易地図に大きく赤丸を書き足して現状の説明を始める。
「今回の作戦地域はこちらの赤丸の地帯にあります山間部の村落になります、UDCアースで言えばクレー射撃場がある辺りですね」
鳥取城を中心に周辺の人のいる集落全体で水晶屍人が現れて人を食らっているとの事。
そしてその屍達は人は襲いはするものの、見境無くという訳ではなくある程度近づいて来たり、鳥取城から離れる様に逃げようとする者を襲っているようだ。
「既に知っている方もいるかもしれませんが、この水晶屍人は以前奥羽に現れたモノとは違い、格段に強化されています……それこそ数が揃えば我々を凌駕するほどには」
1体づつならばそこまで大きな脅威ではないそうだが、数体でも集まればそれなりに苦戦する可能性もあるし、10体も揃ってしまえば猟兵と変わらない戦力となるそうだ。
ではなぜそんな超強化が出来たのかと言えば、鳥取城に残る怨念を利用して作り出されたらしい。
「……皆さんは『鳥取の餓え殺し』は知っていますか?」
歩み刻んだ歴史が違えど、その文献はUDCアースにも残っている。
食料が無くなれば馬などの家畜を、それが無くなれば草を、藁を食らい、最後には人も食らい、そして足らなければ殺して食らう、地獄の様な有様である。
兵糧攻めで起きた惨劇だ。
「恨みつらみを残しているとはいえ死者を無理矢理起こして利用するという事には怒りを覚えますが、起きてしまったのならば被害が拡大する前に抑えてしまいましょう……惨劇を繰り返さないために、皆さんよろしくお願いします」
そう言って腰に下げたランタンに火を灯すと道を照らすようにゲートが開いた。
ダムナティリウス
初めましてこんばんは、ダムナティリウスです。
戦争は中盤を過ぎて後半戦突入前といった具合でしょうか?
息切れせず踏ん張りたい所ですね。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●概要
とある集落での強化水晶屍人との戦闘となります。
OPにあったように射撃場辺りで、森の中のある程度切り開かれた村です。
10体ほど現れますが、タイマンや2対1なら負ける事は無いかもしれませんが油断無く対応しましょう。
それではよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
……大丈夫
私が骸の海に返してあげる
さ、おいで
※オーラ防御常時発動
念動力でちょいとその体を引っ張ってやろう
そこにすぐさま足払いして転倒狙うよ
第六感で怨念の動きを見切りながら光の鎖で攻撃を武器受け、口に食ませ縛り上げる
すぐさま抱き締めるよ(手をつなぐ)
祈り、破魔を乗せた全力魔法UCの衝撃波で安倍晴明の邪法、怨念、呪詛、力の源ごと一切合切を昇天させる
噛み割かれるかも
切り裂かれるかも
でも関係ないね
この体がどうなろうと、私の意志は揺らがない
全ての屍人を海に還すまで
私は戦場を徘徊するよ
……
思い出して
一瞬でいいから、貴方が幸せだった時間を
もう、囚われなくていいんだ
その辛い記憶に
ガルディエ・ワールレイド
かつて凄惨な戦が有った場所か
その時に苦しみ、今は死してなお駒として使われる
悪ぃな……同情はするが、骸の海に送ってやるくらいしか出来そうに無ぇ
◆戦闘
武装は《怪力/2回攻撃》を活かす魔槍斧ジレイザと魔剣レギアに二刀流
一対一や一対二での戦いを心がけるぜ
その為にも【戦場の剛刃】で短期決戦を狙う
ただし、一般人救出の為や、味方と連携出来る状況なら三体以上の敵とも戦う
戦闘が一段落すれば、天下自在符を見せた上で、鳥取城は既に乗っ取られていて危険だと伝える
【屍人爪牙】対策
敵爪牙の間合いを《見切り》、武器のリーチを活かして攻撃
防御が必要な状況でも、胴体を攻撃して押し返す、《念動力》で動きを阻害する等で対処
ネリッサ・ハーディ
SIRDのメンバーと共に行動。
皆さんも知っての通り、状況は悪化しつつあります。
まずは、避難する人々を水晶屍人から遮断するのが先決です。
入り混じったままだと厄介ですし、屍人を分離した方が、こちらとしても高火力のUC等で一気に殲滅を図れる筈です。
UCで炎の精を召喚し、人々と屍人の間に炎の壁を作り出し遮断します。
強引に炎を突破してきた場合【2回攻撃】【属性攻撃】を使用して突破を阻止。
避難する村人達を無事に離脱させられたと判断出来たら、そのまま炎の精にて屍人の殲滅。
鳥取の餓え殺し、ですか…戦略的にみれば、味方の損失を抑えられる有効な手段ですが、実際に受ける側としては、たまったものではないでしょうね。
メンカル・プルモーサ
【SIRD】のメンバーで参加。
避難民と屍人が入り混じっているのが厄介だね……こっちで一気に「持ってくる」から隔離をお願い。
【夜飛び唄うは虎鶫】を展開…無事な村人にマーキングをしていって【彼方へ繋ぐ隠れ道】で一気に自分の傍へ持ってくる…村人にはその場で城も危険だ、と伝え炎の壁で隔離している間にここから離れるように伝えるよ…
さて、後は…せっかくガジェットを展開して炎の壁で隔離されてるのだからそのまま利用しよう…ガジェットの攻撃で水晶屍人を個別に炎の壁のほうに追いやって…追い詰めたところで仲間に合図、倒してもらうね…
餓え殺しを知ってて利用してるなら…セイメイはずいぶん性格悪いね…
灯璃・ファルシュピーゲル
【SIRD】一員として緊密に連携
jawohlと指揮に呼応し
仲間の分離・村人避難に合わせ
UCで黒霧を纏わせた狼達を召喚して投入
「先制攻撃・スナイパー・目潰し」で
村人から引き離された個体を順次、
頭部狙いで襲撃、纏わりつかせ足止めと
黒霧での視界潰しを図り避難支援
同時に炎の壁を突破しようとしてる屍人には
「鎧砕き、鎧無視攻撃」で足関節の部位破壊狙いで
狙撃し行動妨害
複数体が連携する動きがあれば
仲間が攻撃中の敵以外を随時狙撃し敵の狙いが
散漫になるよう誘導。弱った敵が出てきたら
仲間と連携し集中砲火で確実に数を減らします
無念があったとしても
利用された時点でただのテロ攻撃
…農民さん方が付き合う必要性は無いですよね
エメラ・アーヴェスピア
【SIRD】
ふぅ…本当に忙しいわね、今回の戦争は
今回の依頼は人命も関わるし、しっかりこなしましょう
…時間よ、猟兵の仕事を始めましょう
さて、一寸他のメンバーと被るのだけど…
『ここに始まるは我が戦場』を展開…対閃光防御はしておくわね
【情報収集】【失せ物探し】で私は水晶屍人を一体残らず探すとしましょう
残すと後が面倒よ…それと得た情報はメンバーと共有、逐次通達して他のメンバーの行動支援ね
そして…『出撃の時だ我が精兵達よ』
編成はLv15を三体とLv1を七体、Lv1は村人の護衛
Lv15は炎壁から逃走する敵を魔導蒸気狙撃銃で狙撃で後始末よ
先程も言ったけど残すと拙いわ、確実に行きましょう
※アドリブ・絡み歓迎
村落の西側にある森と切り開かれた土地との境目に6人は転送された。
目の前に見える家々からは煙や破砕音が聞こえている。
その状況を確認して隣に居た騎士の人が舌打ち混じりに駆け出そうしていたので、少し待ってくださいと止めた。
彼を制止したのはネリッサ・ハーディ(クローク・アンド・ダガー・f03206)だった。
彼女の他にメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)、灯璃・ファルシュピーゲル(Jagd hund der bund・f02585)、エメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)の4人からなるSIRDのチームメンバーだ。
「皆さんも知っての通り、刻一刻と状況は悪化しつつあります……ですが、まずは避難する人々を水晶屍人から遮断するのが先決です。 入り混じったままだと厄介ですし、屍人を分離した方がこちらとしても高火力のUC等で一気に殲滅を図れる筈です」
そう言ってネリッサはメンカルへ目くばせする。
それに小さくうなずき、手にしていた杖を振るえば小型の戦闘兼索敵用のガジェットがずらりと召喚された。
メンカルが使うユーベルコード【夜飛び唄うは虎鶫】である。
時間が惜しい事もあり無詠唱で召喚した為、数こそは少ないがそこまで広くない村落だ、50機ほどもあれば間に合うだろう。
それらを飛ばして村中の索敵と住人を探し回ればおおよその配置が確認できた。
「……うん、敵のほとんどが北側で、後は周囲を適度に囲って南側が手薄」
「そうですか……それならば我々チームが北側、南側はそちらの2人でお願いしても良いですか?」
ぶっきらぼうに分かったという返事をするガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)と何やら決意に満ちた表情で頷く鈴木・志乃(ブラック・f12101)。
それを確認して次なる合図をメンカルへと出す。
「……『秘されし標よ、拓け、導け。 汝は道程、汝は雲路。 魔女が望むは稀人誘う猫の道』」
詠唱が終わると同時に50数人程の質素な身なりをした人々が現れた。
続けて使用したユーベルコード【彼方へ繋ぐ隠れ道】で村の中で確認した村人たちを、ひとまずは安全である森の中へと転移させたのだ。
直前まで殺されるかもしれない状況だったのに、突然森の中へと景色が変わって最初は困惑している様子だったが、すぐに自分たちを見知らぬ人物たちに囲まれていると気付きすぐに動揺が広まった様子だ。
「聞け! 俺らは徳川家のお偉いさんに困っている連中を助けてくれって頼まれたモンだ!」
ガルディエの手には徳川家の家紋が刻まれた天下自在符があった。
それを見た村人たちはざわざわとどよめき、少し間をおいて符の前に平伏した。
「……こんなかで鳥取城へと逃げようと思ってた奴がいると思うが、あそこは既に敵の手中にある。 悪い事は言わねぇから城へと逃げずにここで俺たちを待ってくれ」
城が敵の手にあると聞かされてざわざわと再び騒がしくなるがすぐに落ち着く。
ここまですれば後は戦うのみだ。
●チームSIRD
住人たちを村の中から転移させた後、チームSIRDはガルディエの諫める声を聴きながら戦闘準備をしていた。
「村の中に居た敵はガジェットである程度誘導しておいた」
村人たちを転移させた後は、索敵に使ったガジェットを村中で走らせて屍人を誘導していた。
強化水晶屍人と言われていただけはあり、余裕があるかなと思った距離をとんでもない瞬発力で飛びかかられたり、手にしていた農具を振り回されて壊されたりと何台かダメになったが、外にはほとんど出て来てはいない。
何故ほとんどかと言えば……。
「……エネミーダウン、北西側の屍人はこれで片付いたと思います」
大型の消音機が付いた狙撃銃で屍人を撃ち倒した灯璃が、黒霧をまとった狼と共に合流する。
【シュヴァルツヴァルト・ヴォルフスシャンツェ】で召喚した狼を水晶屍人に当てて、黒い霧によって閃光攻撃をある程度打ち消し、足止めをした個体から順次撃退していたのだ。
しかし、黒霧越しとはいえ強烈な閃光攻撃なのは変わりない、時間をおけば回復するだろうが数体倒した時点で視界に閃光が軽く焼き付いてしまっていた。
そうして村の中に入ると、外で感じていた死臭が濃くなった。
目標の屍人の事もあるのだろうが、破壊された玄関や壁の向こうからも同様に嗅ぎ取れる。
「今回の依頼は人命も関わるし、しっかりこなしましょう……さあ時間よ、猟兵の仕事を始めましょう」
村の中に向かう際に、【ここに始まるは我が戦場】で召喚していた缶型機械を2機前衛として配置する。
もともと10機召喚していたのだが、7機を村人たちの護衛として森の中へと置いてきた、残りの3機を護衛として魔導蒸気狙撃銃を装備させている。
1ヵ所にまとめたという場所に近づいたのもあるが村に入った時点で護衛の1機に索敵と殲滅を指示していた。
強化されたとはいえ元々は奥羽で現れた水晶屍人と同様の能力があると思っている。
その証拠という訳ではないが、先程からややくぐもった銃声が何度か聞こえていた。
そうして村の広場と思われる場所にたどり着く、そこには4体の水晶屍人の姿が確認できた。
「実際に受ける側としてはたまったモノではないのでしょうね……『フォーマルハウトに住みし荒れ狂う火炎の王、その使いたる炎の精を我に与えよ』」
転送前に屍人が強化された理由を簡単に説明された、それを利用して術者が相応の能力を持っているのならば恐らく可能なのだろう。
だが、地獄の様な思いを再び味あわされるとなるとどうだろうか。
そんな事を考えながら、【荒れ狂う火炎の王の使い】の詠唱を紡ぐ。
言葉に合わせて1つ2つと炎の精が現れて次々と集まり、ある程度の大きさになると再び4つへと別れてそれぞれが屍人へと飛んでいく。
飛ばす前に肩から歪に生えた水晶から強烈な閃光が発生したが、エメラが前衛にと配置した機械が対閃光防御を構えたお陰で視界を奪われることは無かった。
相手を見失うことなく炎の精による炎柱が4本出来上がるが、怯むことなくその身を焼かれながら詰め寄ってくる。
パタタッとくぐもった銃声が3発連続で聞こえて、1体がうつ伏せに倒れた。
続いて魔導蒸気狙撃銃で撃たれて2体が仰向けに倒れる。
残りの1体が力尽きる様に膝をついてうつ伏せになる。
そうして動かなくなったのを確認してメンバーの4人は肩の力を抜いた。
「餓え殺しを知ってて利用してるなら……セイメイはずいぶん性格悪いね……」
燃え尽きて動かなくなった屍人らをみてメンカルは呟いた。
「彼らに無念があったとしても、利用された時点でただのテロ攻撃……無関係の農民さん方が付き合う必要性は無いですよね」
そうしてすべてが終わったSIRDのメンバーは村人たちの元へと戻った。
●聖者と龍騎士
SIRDの4人とは反対側へと移動したガルディエと志乃の二人は、南西側に居た屍人と対峙していた。
(鳥取城……かつて凄惨な戦が有った場所か……その時に苦しみ、今は死してなお駒として使われる)
魔槍斧ジレイザと魔剣レギアを両手に構えて、振るわれる爪を見切ってかわしてジレイザで押し戻す。
「悪ぃな……同情はするが、骸の海に送ってやるくらいしか出来そうに無ぇ」
【戦場の剛刃】を発動させて押し戻した勢いを振り子のように利用して踏み込む、そして構えたレギアで胴体を横薙ぎに払い、屍人を沈黙させるのであった。
索敵の結果を聞いていた通り、南側は水晶屍人の数は少なく、増援が来るなどの余程のことが無ければ囲まれるという危険はなさそうだと森から村落に入る時に周囲の様子を見て思った。
家屋の様子もあまり壊れた様子が無く、人が居ないという事を除けばいたって普通の村に見える。
「……って、あれ? あの嬢ちゃんはどこに行った?」
村の様子を見回した時に一緒に来たはずの志乃の姿が見当たらない。
辺りをきょろきょろと探しているガルディエを傍目に志乃は村の東側へと来ていた。
なんとなくだが、ここに来ればいい気がしたのだ。
「……大丈夫、私が返してあげるから……さ、おいで」
誰に言うでもなくそう呟くと森の中から1人の水晶屍人が現れる。
超えに惹かれたのか、白く濁ったうつろな視線は志乃を捉えていた。
森から現れた人物に向き直り、自身をオーラでまとって防御を施す。
そうして構えた瞬間、相手から転がるように地面を駆けて一気に距離を詰めて来て、食らいつこうと飛びかかってきた。
その動きをあらかじめ読んでいたかの様に躱して、代わりに光の鎖をその口に噛ませた。
そして、鎖を噛み切ろうと暴れる屍人を抱きしめた。
「思い出して……一瞬でいいから、貴方が幸せだった時間を」
優しく、問いかける様に言葉を続ける。
暴れる屍人の爪が体を引き裂く、だが志乃の抱きしめた手は揺るがない。
「もう、囚われなくていいんだ……その辛い記憶に」
あぁ、こんな非道な事をするのはいったい誰なのか。
只々この苦しみの連鎖から逃れられるようにと祈り、邪なるモノの手から逃れられるようにとその身にまとわりつく魔を祓う。
そう思って【祈願成就之神子】を発動させると眩しく、それでいて優しい光が輝いた。
すると暴れていた屍人がぴたりと動くのを止めた。
抱きしめていたその体を離すと、そこにはとても穏やかに眠るように、ボロボロになってしまった亡骸あるだけだった。
「……アンタ、神官か何かだったのか?」
声をかけられて振り向くとそこにはガルディエが立っていた、どうやら先程の光を見て駆けつけて来たようだ。
神官かどうかと聞かれると肯定も否定も出来ないなと思い、なんとも曖昧な感じにしていたら彼は言葉をつづけた。
「まぁいい、志乃がそういう事をしたいっていうんなら俺も協力するぜ」
そう言って差し出された手を志乃は取った。
●収束
程なくして村を襲った水晶屍人の撃退は成功した。
村に戻った人々に暫く安全である事と、屍人に襲われて死んでしまった人達は早急に荼毘に付すようにと奥羽であった出来事と共に説明する。
こうして山間部の村で起きた1つの事件は幕を閉じて、猟兵達は次なる戦場へと向かうのであった。
成功
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