0

エンパイアウォー⑱～十二刀の軍神

作者：夢幻

●軍神『上杉謙信』
「皆、軍神『上杉謙信』が関ヶ原に現れた。これより我らは、彼の軍神へと決戦を挑む！」
　グリモア猟兵の天御鏡・百々（その身に映すは真実と未来・f01640）は集まった猟兵たちに向けて、説明を開始する。
「上杉謙信は率いる多数のオブリビオンの軍勢で『車懸かりの陣』を構成している。とはいえ、この陣の攻略は別の猟兵が向かってくれている。我らは直接謙信と決戦を行い、撃破すれば良い」
　陣への対処を考える必要は無い。味方の援護によって、謙信の眼前まで到達したところから戦闘開始だ。ただし、謙信は車懸かりの陣で自らの蘇生時間も稼いでいるため、完全な撃破には陣の攻略も必要となる。
「そして上杉謙信の戦闘法だが、どうやら十二本の属性の異なる毘沙門刀を操って戦うようだな」
　各々の毘沙門刀の属性は浮いている刀が「水・光・土・火・樹・薬・風・毒・氷・闇」、両手に持つ刀が「アンヘルブラック・ディアブロホワイト」となっている。十二本という手数だけでも厄介なのに、それぞれの刀の持つ属性を利用した攻撃までしてくると言うから恐ろしい。
「先制攻撃こそしてこないが、その実力は正に軍神というのに相応しいものだ。我ら猟兵も全力を尽くさねば、勝機はないであろう」
　他の強力なオブリビオンと異なり先制攻撃をしてこないことは朗報であるが、それだけに彼の実力は凄まじいようだ。
「如何に強力な敵であろうと、貴殿らであれば必ず勝てると信じているぞ」
　百々はそう言うと、猟兵たちを関ヶ原へと転送するのであった。

第1章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬 【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。 SPD   :    毘沙門刀車懸かり 自身に【回転する12本の『毘沙門刀』】をまとい、高速移動と【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。 WIZ   :    毘沙門刀天変地異 「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。 イラスト：色 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「やれやれ、逃げたしたい気持ちでいっぱいなんだが……」

　十二の毘沙門刀を構える上杉謙信をは尋常ではない強敵だ。しかし、逃げるという選択肢を選ぶわけにもいかない。織銀・有士郎（織りなす銀の一振り・f17872）は『涼鳴』を抜き、謙信と相対する。

「でも、アンヘルにディアブロ……まさかその名前を、今このタイミングで聞くとは思わなかったわ」

　謙信の刀の名として、なぜ銀河帝国攻略戦で戦った黒騎士と白騎士の名が付いているかは解らない。しかし、この敵は考えながら戦えそうな相手ではない。

「その二本は特性が解りづらいな。まず出方を伺いたいところだ。でも、相手がそれを許してくれるか……」
「戦いながらの情報収集、厳しくてもやるしかないわ」

　エメラの戦術も情報収集あってこそ。彼女は戦いのため、新兵器を召喚する。

「未来の為に戦地を駆け、過去の存在を追跡、撃滅なさい……『戦地を駆るは我が双輪（シューティングスターカヴァルリィズ）』！！」

　エメラが召喚したのは二輪を駆る白と黒の魔導蒸気騎兵だ。エメラも白騎兵の方二同乗し、準備は整った。というところで、謙信が仕掛けて来た。

「参る……毘沙門天よ、私にその加護を与え給え」

　謙信は回転する12本の毘沙門刀を纏い、個人による車懸かりでエメラの騎兵に迫ってくる。速度のある白騎兵はともかく、情報のない段階では黒騎兵は逃げ切れない。このままでは破壊されてしまうというところだが、猟兵の側もエメラ一人ではない。

「我が太刀が織りなすは三千世界……ゆくぞ、一斉抜刀！」

　有士郎はユーベルコードで涼鳴を複製すると、念力で操って謙信の毘沙門刀に対応する。浮かぶ毘沙門刀に対しては、1本に付き5本もぶつければ弾くことが出来たが、

「面白い技だが……私には通じぬ」

　謙信が両手に持つ二本の刀による斬撃は別だ。何本あろうと関係ない。謙信が白と黒の刀を振るえば、複製されたサムライブレイドは纏めて両断されていく。

「あの二本は特別な能力を持っていないみたいだが、直接振るうだけあって威力が段違いだ」
「迂闊に近づけば真っ二つにされそうね。……でも大分情報は集まったわ」

　有士郎が対応する間、エメラは二体の魔導蒸気騎兵で情報収集を行っていた。まだまだ完全とは言えないが、これ以上耐久するのも危険だろう。ここで二人は攻撃に転じることにした。

「行くわよ！」

　エメラの指示を受け、白と黒の騎兵が謙信へと向かって走る。先行するは白の騎兵だ。謙信は騎兵を倒すべく炎の毘沙門刀から竜巻状の炎を放つが、白の騎兵は囮、収集した情報を元に速度を生かして回避する。そして、別方向から武器を斧に持ち替えた黒の騎兵が謙信へと突っ込んでいく。

「叩き切りなさい！」
「ぬうっ！？」

　集めた情報を元に動く騎兵は、毘沙門刀のガードをすり抜け、謙信へと傷を与える。続けて、有士郎が三千世界の太刀で複製した全ての刃を射出、浮かぶ10本の毘沙門刀を弾き飛ばし、二刀を構える謙信へと涼鳴で斬りかかる。

「全てを読み、全てを出し尽くしたこの一刀。果たして届くか……！」

　有士郎の渾身の一刀はすれ違いざまに謙信を捉えた。しかし、流れる血は謙信だけではなかった。謙信の白の刃もまた、有士郎を捉えていたのだ。

　痛み分けとなったが、ダメージが蓄積出来ればそれでよい。もとより猟兵は数でオブリビオンに対抗する。ダメージを積み重ねれば、いずれ後続の猟兵が必ず撃破してくれるはずだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「はっ、大将自らお相手して頂けるなんざ有り難すぎて涙出るぜ。ま、カチコミに来たのはこっちなんだけどな！」

　塩崎・曲人（正義の在り処・f00257）は道中で拾った刀を両手に持って、謙信の前へと進み出た。大将というのは本来多くの兵に守られているものだ。謙信も車懸かりの陣の中央にいたわけだが、こうして直接戦えるのは、別の猟兵が車懸かりの陣に対応していてくれるからである。

「12本も使うなんて贅沢ですね」

　曲人に並んで現れたのは上泉・祢々（百の華を舞い散らす乙女・f17603）だ。自らの手足五体を刀とする百華流を使う彼女にとっても、十二という数はなかなかに多く感じる。良くもそれだけ制御できるものだというところだが、だからこその軍神ということだろう。

「……ん？　よく見たらあの飛んでる刀たちって……ちょっと思いついたので試してみましょうか」

　どうやら祢々には何か考えがある様子。それを為すために距離を取って相手の技を見切ろうとした祢々であるが、謙信が向かってきたのは祢々の方だった。

「その立ち振る舞い、警戒すべきは少女の方であろう」

　どうやら武器こそ持っていても技も何も感じられないチンピラよりも、確かな武術を修めている祢々こそ脅威と判断したらしい。攻撃回数重視の『毘沙門刀連斬』が祢々を襲う。

「ッ！　……予想以上に速いですね」

　祢々は刀と見立てた両手両足で謙信の攻撃を受け流すが、謙信の連撃の速さは凄まじい。このままでは対応も追いつかなくなるか、というところで、曲人が介入する。

「ヒャッハー！　俺を無視すんじゃねえよ、オラァ！」

　曲人は両手の刀を使った『喧嘩殺法』で謙信に挑みかかる。謙信は毘沙門刀の軌道を円を描くように変え、個人による刀の車懸かりにて応戦する。

「なかなか速いみてぇだが……こっちもテメェをぶん殴る以外のことは考えてねぇんだ、速度じゃ負けねぇぞオイ！」
「私の技に拮抗するとは見事なり……しかし、刀をそのように扱えば、折れるは必然」

　曲人は謙信と拮抗するも、武器の差、そして刀をただの鉄の棒として扱っていたことが仇となった。撃ち合う中で曲人の持つ刀は次第に刃こぼれしていき、ついには両方同時に折れてしまった。

「チィッ！」
「謙信、あなたの動きは覚えました！」

　曲人のピンチに、今度は祢々が謙信へと突っ込む。曲人と謙信が斬り合っている間、見切りに徹することで謙信の動きは覚えている。あとは策を為すまでだ。祢々は振るわれる薬属性の毘沙門刀を、毒属性の毘沙門刀目掛けて蹴り飛ばした！

「相性が悪いモノがぶつかるとどうなるか、いやー楽しみです！」
「何！？」

　そう、謙信の毘沙門刀は属性があるということは、相性もあるということだ。そこを突いて刀同士をぶつければどうなるか。その結果は、折れるとまではいかなかったものの、一時的にその二本は謙信の制御を外れてしまう。謙信は慌ててこれ以上弾いてぶつけられないようにと、毘沙門刀連斬を攻撃重視に切り替える。しかし、戦場に転がった二本の刀、それは先ほど武器を失った曲人にとってちょうどよいものだ。

「こちとら武器は現地調達が基本でな！　良いモンくれてありがとうよ！」

　二本の毘沙門刀を拾った曲人の逆襲は、遂に謙信を捉えた！　毒の刃による一撃は謙信を切り裂き、さらにその身を毒に侵す。

　猟兵の連携は謙信の技を超え、その身に大きな傷を刻んだのだ！

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　続いて上杉謙信へと挑むのは、トルメンタ・アンゲルス（流星ライダー・f02253）であった。

「車掛かりの陣、無限とも思える車輪の動き。なら、その要を穿つまでです。それが如何に強敵であろうとも！」

　車懸かりの陣の要は間違いなく指揮する謙信。とはいえ、彼は陣を復活のための時間稼ぎに使っているため、謙信さえ倒せば陣が崩壊するというわけでもない。謙信と陣、両方の撃破が必要だ。

「行くぞ相棒！　変身！　アクセルユニゾン！」
『MaximumEngine――Mode：Formula』

　サイボーグであるトルメンタは相棒である宇宙バイクの『NoChaser』を装甲として変身合体、謙信に対する戦闘準備を整える。そして彼は、謙信へ向けて全力のダッシュで突っ込んでいく。

「速い……！　が、私の車懸かりを超えるほどではない」

　謙信は刀による円陣を纏い、トルメンタを迎え撃つ。残像を発生するほどのトルメンタのスピードでも、円の軌道を描いて次々と襲い来る刀に加え、牽制に炎や氷
などの属性攻撃を放たれてしまえば、謙信へと攻撃を通すには至らなかった。

「ならば！　もっともっと、更に速く―――！」
『Full Throttle――』「――HyperDrive！！」

　軍神とまで呼ばれる兵（つわもの）を超えるため、トルメンタは更に加速する。ユーベルコード『HyperDrive』によりスーパーブラディオン粒子を全身に巡らせ、超光速戦闘モードとなった彼のスピードは、遂に軍神の技をも凌駕した。

「神程度で、俺は立ち止まっていられないんだよ！！」

　謙信の纏う刀の陣形、その十二の剣閃を超え、トルメンタの蹴撃は謙信を穿った！！

成功 🔵​🔵​🔴​

「越後の竜、上杉謙信……甲斐の虎、武田信玄のライバルとされた名将だな。小細工なんてする気はねぇ、真っ向から仕掛ける！」

　相手が武人ならば、同じく武人たる御剣・刀也（真紅の荒獅子・f00225）がとる手段は一つ、真っ正面からの斬り合いだ。

「越後の竜、上杉謙信。その名に違わぬ名将だ。が、戦場では俺は死人。死人は死を恐れない。さぁ、真っ向勝負と行こうぜ！！」
「自らを死兵と称すか……面白い」

　そして、武人と武人の斬り合いが始まった。謙信の繰り出す『毘沙門刀連斬』を刀也は真っ向から受けて立つ。

　火と水の刀を武器で受けて弾き飛ばし、氷と風の刀の動きを見切って躱す。毒の刀が彼の体を貫いたかと思えば、それは彼の残像だ。土と薬の刀は受け流すことでその軌道を変えて捌き、勇気を持って踏み込むことで光と樹の刀をくぐり抜ければ、謙信は目前だ。謙信はこれまでの戦いのダメージで多少動きが鈍っている様子だが、それでもここまで対応出来たのは、刀也が数々の高い技量を駆使したからこそだ。

　そして謙信が両手で振るう二刀が迫るも、彼はその剣士としての勘を総動員して二刀を避ける。そうして黒と白の刃を避けた刀也、しかし、避けたその場所へと闇の刀が飛来する。謙信は最大の脅威たる二刀を囮とし、刀也を闇の刀が避けれぬ場所に誘導したのだ！　闇の刃は刀也を貫き、これで終わり……と思いきや、刀也の動きは止まらない。元より死兵の覚悟、捨て身で動く彼は、体に闇の刀を突き刺したまま、渾身の力でもって、謙信目掛けて『獅子吼』を振り降ろした！

「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん！！」
「見事……！！」

　刀也の放った雲耀の太刀は、謙信を深く切り裂いた！　これがトドメとなり、謙信はその場に崩れ落ち、骸の海へと還っていく。

　猟兵たちは軍神『上杉謙信』に勝利した。また軍神は骸の海より復活するのだろうが、猟兵による陣の攻略も進んでいる。完全な撃破も、そう遠くはないはずだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年08月18日