エンパイアウォー⑩~鉄甲の船に揺蕩いて
「関ヶ原以降の3ルートの内、南海道は唯一の海路になる」
幕府軍を待ち受ける脅威について、集まった猟兵達に説明を始める各務・瞳子(七彩の聴き手・f02599)。そろそろ慣れてきた呈か。
「南海道には、大悪災『日野富子』の軍勢が待ち受けとる」
魔軍将は既に討伐されているが、先に調えられた脅威は、首謀者の生死に関係なく機能するようだ。
「京都の花の御所を制圧した魔軍将、大悪災『日野富子』は、その有り余る財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造しとったんよ」
喩え船は建造出来たとして、船を操る熟達した船員を用意するのは、本来はそう簡単ではないのだが。
「日野富子は、戦国時代、瀬戸内海を荒し回った大海賊『村上水軍』の怨霊を召喚したんや」
鉄甲の大船団を造り上げ、海戦に長けた船員も確保し、最強の水軍を仕立て上げたのだ。
「このままやと、海路を進む幕府軍の船は全滅する。海の藻屑と消えてまう事になるやろな」
そうなる前に、村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を、猟兵の手で沈めなければならない。
「皆には、1隻の『超巨大鉄甲船』に乗り込んで貰う」
船の大きさは、全長約200m、全幅約30m。海上に在るので、海を渡る方法や巨大船に乗り込む作戦も練った方が良いだろう。
「厄介な事に、『超巨大鉄甲船』は村上水軍の怨霊の力が宿っている限り、すぐに復元されてまう」
だが、村上水軍の怨霊は、帆柱に掲げられた村上水軍旗(〇の中に上と書かれている旗)を引きずり降ろす事で消滅する。
「そやさかい、皆で上手い事鉄甲船に乗り込んで、怨霊の護衛を撃破。村上水軍旗を奪取して、船から脱出する……って流れになるんちゃうかな」
護衛として船にいるのは、『水晶宮からの使者』が約10体。
「妖怪『クラゲの火の玉』ってゆうた方が判り易いやろか。怪火と一緒に、クラゲが船の中をあちこち浮遊しとるさかい、排除して回ってな」
近付かなければ勝手に消えるような儚さがあるが、怪火に触れると夢に囚われ続ける事になるという。
「それで、竜宮……水晶宮からの使者って呼ばれとるようやね」
尚、船中の水晶宮の使者を退治してしまわないと、村上水軍旗ごと帆柱を覆う怪火は消えない。無理矢理、怪火に触れる危険を冒すより、船中のクラゲを先に倒してしまう方が手っ取り早いだろう。
「皆のお陰で、脅威の阻止は順調や。このまま、無傷で幕府軍を島原まで送り届けよな」
柊透胡
こんにちは、柊透胡です。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
エンパイアウォー7作目。今回は「⑩村上怨霊水軍」です。
既に倒されてしまっている大悪災『日野富子』ですが、厄介な遺産を残していきました。
『超巨大鉄甲船』の大船団を建造し、瀬戸内海の大海賊『村上水軍』の怨霊を乗せる事で、最強の水軍を仕立て上げた訳です。
海上に浮かぶ鉄甲船は全長200m、全幅30m程度。村上水軍の怨霊の力が宿っている限り、どんな損壊もすぐ復元されてしまいます。
村上水軍の怨霊は、帆柱に掲げられた村上水軍旗(〇の中に上と書かれている旗)を引きずり降ろす事で消滅しますが、当初、帆柱は旗ごと怪火に覆われています。
怪火を消すには、船内に浮遊している『水晶宮からの使者』を殲滅しなければなりません。その数は10体程度です。(「夢占い」についての記載がありましたら、描写の参考に致します)
村上水軍の怨霊達は戦闘には加わらず、船を動かし続けます。富子を恐れているか、大金で雇われて喜んで協力している亡霊が混在しているようです。
それでは、猟兵の皆さんの熱いプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『水晶宮からの使者』
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POW : サヨナラ。
自身に【望みを吸い増殖した怪火】をまとい、高速移動と【檻を出た者のトラウマ投影と夢の欠片】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 夢占い
小さな【浮遊する幻影の怪火】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【鍵の無い檻。望みを何でも投影する幻影空間】で、いつでも外に出られる。
WIZ : 海火垂る
【細波の記憶を染めた青の怪火】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:葛飾ぱち
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
五條・須久那
要アドリブ共闘可
自身の装備である対NBC/対UDC/全天候型ソーラーセイル装備魔導武闘航宙艦「羅摩の宝船弍式」を相手と同じようなサイズで擬装させ、仲間と搭乗し、グラップルを使い押さえ込み接舷する。
仲間が負傷した場合は、自身の医療装備や技術を使い回復させる。
「クラゲなら竜巻で諸共吹き飛ばせないかな?」
UC:クライシスゾーンの効果:超次元の竜巻で「水晶宮からの使者」を殲滅するか怪火を掻き消すか吹き飛ばす。
POW対応:無数に召喚した銀の酒杯模造品群で攻撃を偏向防御。
SPD対応:凡ゆる医療設備、技術の会得と知識を求めるので、このUCがそれらを獲得実現出来ないなら、ここから出る方法を望み投影し脱出する。
瀬戸内海上に浮かぶ鉄の巨大船――超巨大鉄甲船に、これ見よがしに掲げられた村上水軍旗が帆柱ごと怪火に包まれているのは、遠目にもよく判った。
「そろそろ接舷する」
全長約200m、全幅約30mもの威容にも負けぬ魔導武闘航宙艦「羅摩の宝船弍式」を航行させているのは、五條・須久那(国境なき医師団所属の少年ドクター・f17218)。自力で海を渡り、鉄甲船に乗り込む策を講じていなかった猟兵も同乗している。
あまりにも堂々とした接近は、船の護衛によっては迎撃の恐れもあったが……接舷から乗り込むに至るまで、取り立てて抵抗がなかったのは幸いだった。
須久那自身も鉄甲船に乗り込むや、すぐさま、護衛を排除すべく動く。
「クラゲ、だな」
程なく、船内を浮遊するクラゲ――水晶宮の使者2体を発見。何れも怪火を伴いゆらゆらと。
(「クラゲなら……竜巻で、諸共吹き飛ばせないかな?」)
亡霊共が黙々と操る艪を見やり、スピリットヒーローとしての力を解放する須久那。
――――!!
艪から変じた超次元の竜巻が、唸りを上げてクラゲに迫る。呑まれた1体は錐揉み状態に引き絞られ、怪火が頼りなく瞬く。
「……何?」
その時、もう一方のクラゲの周囲に、青い怪火がふわりと灯る。まるで細波の如く揺らめき――竜巻に呑まれたクラゲに降り注ぐ。
「なるほど。これがクラゲの治療か」
瀕死の呈から見る見る立ち直る様子に、須久那は寧ろ興味深そうな面持ち。
彼にとっての『夢』が「凡ゆる医療設備、技術と知識の会得」ならば、回復のユーベルコードとて関心の対象となろう。
尤も、猟兵の役目を忘れる訳もない。
「ならば、竜巻幾つで、その回復量の限界を迎えるだろうな」
巨大な鉄甲船の動力は、一望するだけでも数え切れぬ。須久那は次々と艪を竜巻に換えると、実験するように順々とクラゲへぶつけていった。
成功
🔵🔵🔴
嘉三津・茘繼
怖い&マネーパワーって水軍も動かすんだ
富子さん強烈な人だったんだねー
先ずダッシュ&スライディング&クライミングで
船内を移動して使者を探そう
音がするかは解らないから第六感も使う
見つけたらタールの手を沢山生やし網状にして
投げ網の要領で別の手で投擲
速度を上げて串刺しの先制攻撃だ
刺さったらそのまま【喰い】へ繋げる
痛いのは嫌だから
ナノマシンときゅーてぃくるで武器受け&盾受けとオーラ防御も
狂気耐性と火炎耐性で和らげるよ
夢占いか…怖いのが嫌だから、みないんだよね
望みならあるな
ポカポカの温かい場所で
お腹が空かないで暮らす
暗いとこで怯えてお腹空いてた時間が長いから憧れる
でも
僕の脳は腹の音を誤魔化せないと思うよ?
(「富子さん、強烈な人だったんだねー」)
恐怖心&マネーパワーは水軍をも動かす。嘉三津・茘繼(悪食・f14236)は感心したように唸る。
ともあれ、今はクラゲ退治が先。鉄甲船に乗り込むと、まずダッシュ&スライディング、時にクライミングで、船内にいる筈の水晶宮の使者を探す茘繼。音も立てず漂っていそうだから、勘も働かせてキョロキョロと。
「いた!」
ふわと広げた虹色の傘を認めるや、幾つも伸ばしたブラックタールの手を網状に広げ、ブンッと投網の要領。そのまま飛び掛かり、串刺し攻撃で先制する。
だが、クラゲはボゥと怪火を纏い、網の目からするりと抜け出す。体当たりするや猛スピードで逃げ出した。
「……良かった、痛くない」
咄嗟にナノマシンで肌を硬化し、銀髪にも見えるきゅーてぃくるで受け流したお陰だ。
「そう言えば……夢を見せるんだっけ? あのクラゲ」
クラゲを追いながら、ふわふわと独りごちる茘繼。『夢』で怖いのは嫌だけど……『望み』ならある。
ポカポカの温かい場所で、お腹が空かない暮らし――暗い所で怯えて、空腹であった時間が長かったから憧れる。
グキュルゥゥ――。
(「でも、僕の脳は。腹の音を、誤魔化せない」)
だから、今度こそクラゲを捕まえたら。逃がさないように、しっかり掴んで。喰ってしまおう。
「いいねー。愉快で楽しい私的で詩的なお時間です。みたいな?」
そして――ちゃーんと、実行した。
成功
🔵🔵🔴
サイコトローヴ・リークウィド
「鉄甲船……ちっともカワイイが足りないお船ですねぇ……カワイイの無いお船はさっさと海の底にしまっちゃいましょお♪イヒヒ♪」
戦闘中、敵の注意を引きつけるオトリ役になります。
水晶宮からの使者の「サヨナラ。(POW)」に対し、ユーベルコード「ヘビーアームド・ウェポナイズ」を使うことで、火線で相手の高速移動を阻害しながら群れを分断しつつ各個撃破できるシチュエーションを作ろうとします。
最大の目的は、いち早く敵の群れを殲滅することです。
その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。
「くらげって海の月って書くんですよぅ……ロマンチックですねぇ!カワイイですねぇ!」
クリストフ・ポー
あの海月を倒して、
水軍旗を降ろさせればいい訳だよね。
よし来た、任せなさーい♪
見回して海月が居れば
UCブラッド・ガイストを使用
アンジェリカで襲撃する
僕の為に踊っておくれ、アンジェリカ
海月に効くかは解らないが
フェイントからの2回攻撃
夢?
…ふふ、あれもこれもと有り過ぎるからさ
幻影の檻でも僕を満足させるのは
無理じゃないかな
見当たらなければ船内を捜索
世界知識を基に船構造をある程度推測して
第六感を働かせながらダッシュ
暗所は暗視
鍵掛かってれば鍵開けで突破する
処で雇われの怨霊達は(怨霊が銭をどう使うのか知らないが)
富子が死んだって知ってるの?
行き交うようならコミュ力と恐怖を与える感じで
バラしておく?うん?
「鉄甲船……ちっともカワイイが足りないお船ですねぇ……」
何か、喋った――クリストフ・ポー(美食家・f02167)が怪訝そうに船床を見やれば、そこに黒い水溜り。
「カワイイの無いお船はさっさと海の底にしまっちゃいましょお♪ イヒヒ♪」
口調は少女めいて、その声音は成人のそれ。チャポンと女性体を象るや、ニンマリと手を振ってきた。サイコトローヴ・リークウィド(定形不定のサイコラジカル・f21409)――漆黒のアクアウィタエ。生きている水、というか、ぶっちゃけブラックタールだけど。
旅は道連れ世は情け、という訳でもなかろうが、何となく、同行の呈のクリストフとサイコトローヴ。足早に往けば、果たして薄暗い船倉らしきにふよふよ漂う3体程。
「あのクラゲを倒して、水軍旗を降ろせばいい訳だよね」
「オトリ役は、サイコちゃんにお任せですぅ」
一足先に、船倉に足を踏み入れるサイコトローヴ。重武装モードに変形するや、群れの真ん中目掛けてビームキャノンをぶっ放す。
――――!!
覿面、怪火を燃やして反撃するクラゲを前に、サイコトローヴは寧ろはしゃいだ声を上げる。
「クラゲって海の月って書くんですよぅ……ロマンチックですねぇ! カワイイですねぇ!」
その実、猟兵としては初参戦のサイコトローヴ。ある程度のダメージはやむを得ないと覚悟しているようだが、早晩潰されるのは明白。
(「……まあ、僕のアンジェリカが傷付かないのだから、良しとしよう」)
「今の内に、ヨロシクですよぉ♪」
「よし来た、任せなさーい♪」
内心の本音はおくびも出さず、クリストフは己が血を代償に、ブラッド・ガイストを起動する。
「僕の為に踊っておくれ、アンジェリカ」
美しき彼女が殺戮捕食態に変じていく様に、いつも謝罪の念が湧いてくる。
それでも、十指に備う銀の指輪と糸を以て舞わせれば、花嫁人形の鎌刃が鮮やかに閃く。
「次は、そっちですよぉ」
クラゲを分断するように火線が奔り、左右に2回、刃が唸る。各個撃破も危なげなく――程なく、船倉は静まり返る。
「……ところで、雇われの怨霊達は富子が死んだって知ってるの?」
「さぁ、どうでしょうねぇ?」
そう言えば、船内を捜索する間、船を漕ぎ続ける亡霊は何度も見掛けたが、話し掛けてくるのは勿論、何らかの反応すら見せなかった。
「バラしておく? うん?」
「うーん……それなら、カワイイアンジェリカちゃんと、ロマンチックな海月と戯れる方がいいですねぇ♪ イヒヒ♪」
如何にもムサい海賊の呈の亡霊から目を逸らし、サイコトローヴはニンマリと笑った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アカネ・リアーブル
波に紛れ小舟で近づき羽で飛翔
一息にスカイステッパー
甲板を越し高度を確保しランスチャージで特攻
位置エネルギーも加えて奇襲し着地したら2回攻撃で連撃
攻撃はダンスと見切りで回避
再び空へジャンプこれを繰り返し
夢占い
失踪した兄様が笑っていらっしゃいます
「アカネ。そんな物騒な武器なんてしまってよ。戦いは舞台の上だけで充分じゃないかな?」
明るい笑顔で手を差し伸べて、アカネの舞薙刀を取り上げようとされます
……今まででしたらきっと手放したことでしょう
兄様の望みはアカネの望み
ですが
「アカネは決めたのです。猟兵として力なき人々を守ると。だから……!」
兄様の幻影になぎ払い
一筋涙を流しながらも、クラゲに向かって参ります
波に紛れて小舟で近づき、スカイステッパーで一気に乗り込む――最初の猟兵の突入が大掛かりだっただけに、アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)の侵入は、呆気ない程に上手くいった。
「甲板には……」
翼を広げたまま首を巡らすも、影1つなし――否!
ふわふわと船室から現れたクラゲを認めるや、アカネは舞薙刀を構え突撃を敢行する。
――――。
「え……?」
だが、クラゲの周りを漂う怪火に触れた瞬間。アカネは鍵のない檻に立ち尽くす。
「兄様!?」
目の前には、失踪した筈の兄の姿。懐かしい明るい笑顔を浮かべて、手を差し伸べる。
『アカネ。そんな物騒な武器なんてしまってよ。戦いは舞台の上だけで充分じゃないかな?』
夢占いは望みの侭に――これまでならば、兄の言葉のまま、舞薙刀を手放していただろう。
(「兄様の望みはアカネの望み。ですが……」)
兄に逢いたい、それはアカネの本当の望み。けれど、人は、幾つもの望みに手を伸ばしながら、生きていく。
「アカネは決めたのです。猟兵として力なき人々を守ると。だから……!」
兄の幻影を薙ぎ払うと同時、眼前に広がる哀しい程に蒼い、夏の海。
「……っ」
唇を噛み締め、踵を返す。得物を握り締め、クラゲへと駆け寄るアカネの瞳から、一筋の涙が、零れて、散った。
成功
🔵🔵🔴
弦月・宵
お前(クラゲを見て)たちには見覚えがあるよ。
死の気配につられて出てきたのかな…?
死海を漂う船幽霊にはお似合いだけど、どうか骸の海で遊泳しておいで。
青い炎は見分けやすくていいね。先に散らす。
帆柱の炎は最後か、うん。船員さんは船との離別の覚悟をしておいてね。
仕事熱心なのもいいけど、終わりの時はちゃんと見定めないといけないよ。
UC:ユルユラを使用
ここにはもう、生死に迷うものは居ないから。
オレも迷う必要がない。
柔らかい体を裂くには針水晶がいいかな。
小魚の群れが一塊になって泳ぐみたいに、個々の鉱石をなるべくひとつに集めて各個撃破を狙いたい。
お前が見せるのは幻影ばかりで、話のひとつもできやしないんだもん。
「嗚呼……お前たちには見覚えがあるよ」
弦月・宵(マヨイゴ・f05409)の目の前には、虹色も儚げなクラゲが何体か。
「死の気配につられて出てきたのかな……?」
確かに、死海を漂う船幽霊にはお似合いだろうけど。
「どうか、骸の海で遊泳しておいで」
柔らかな体を裂くのは、針水晶がいいだろうか――宵の周囲に顕れ出る夥しい鉱物の結晶。その内数体は早速、怪火に熔かされるも忽ちの応酬に、クラゲ1体が針山の呈となる。
「青い炎は見分けやすくていいね。先に散らそう」
海火垂るの焔が癒そうとも、圧倒的な手数に畳掛けられては。数体程度の徒党ではどうしようもない。
(「ここにはもう、生死に迷うものは居ないから。オレも迷う必要がない」)
ゆるりゆらりや――あたかも、小魚の群れが一塊になって泳ぐように。クラゲ1体1体を、一思いに、確実に散じていく。そこに、夢を求める哀切は欠片もない。
「だって、お前が見せるのは幻影ばかりで、話のひとつもできやしないんだもん」
――そうして、最後の1体が倒された時。帆柱を覆っていた怪火は、蝋燭の灯が吹き消されるように、揺らいで消える。
「これで、最後か……うん。船員さんは、覚悟出来ているのかな」
甲板に集まったのは、猟兵ばかり。亡霊は最期の最期まで、艪を漕ぎ続けるのだろう。恐怖と金に縛られたまま。
「仕事熱心なのもいいけど……終わりの時はちゃんと見定めないといけないよ」
誰に言うでもなく呟き、宵は徐に村上水軍旗を下ろしていく。
黙々と船を漕ぎ続けた船員、音もなく船の中を漂い続けた護衛――その御旗も粛々と下ろされて。その巨大鉄甲船は、静々と瀬戸内海の底へと沈んでいった。
大成功
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