エンパイアウォー⑥~六花の盾
関ヶ原。またの名を青野原とも言う。
美濃国に存在する其処は古くは南北朝の戦いが、そして近年では天下分け目とも呼ばれる戦が行われた地。
その古戦場に、異様な軍団が一糸乱れぬ整列の元、姿を現した。
風体から見て農民のようだが、彼等は一様に同じ装備を身につけて行軍する。
右手で長槍、左手には大盾。その盾は左の仲間を護るように構えられていた。
横に16人、奥に16列。計算するとの256名もの一個大隊。
『ファランクス』――古代ギリシャにおいて用いられた、歩兵による密集陣形であった。
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「……世界史の参考書まで目を通すことになるなんて、な」
手にした本のページをなぞりながら双代・雅一(氷鏡・f19412)はグリモアベースに集う猟兵達を前にそうぼやいた。
関ヶ原に集結した幕府軍。だが、信長の軍はそう易々と通過させてはくれず。
弥助アレクサンダーの所持する大帝の剣の力によって操られた農民達が、日野富子の財力によって装備を与えられ、幕府軍の前に立ち塞がることが判明している。
「一つの大隊で256人。その中央にはファランクスの陣を指揮するオブリビオンがいる」
そのオブリビオンが大帝の剣の洗脳能力の中継器のような役割を果たしているため、そいつさえ討ち取れば、陣は自然と瓦解する。戦闘意欲を失い、兵は降伏することだろう。
ファランクスを構成してる兵はオブリビオンでも何でもない、力を持たない人達だ。彼らの攻撃は、猟兵には届く心配は無い。
だが、そんな一般人達が要となるオブリビオンを取り囲んでいる、となれば。
「極端な話、彼らの生死は厭わないんだけども……そんな選択をする奴は、恐らく此処にはいないんだろう?」
淡々と雅一は告げ、そして問いかけた。エンパイアに住まう全ての人々の為と言う大きな目的の為には多少の犠牲は致し方ないにせよ。敢えてわざわざ殺す必要もない。
如何にファランクス兵を殺めずに退けた上で、ボスとなるオブリビオンに迫るかが重要となるのだろう。
「さて、出陣だ。どう攻めるかは各々考えて欲しい。最終的に、幕府軍への脅威さえ排除出来れば問題は無いのだから」
天宮朱那
天宮です。日本史は得意だけど世界史は未履修。
オープニング公開と同時にプレイング受付開始と致します。
※ ※ ※
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
※ ※ ※
戦闘はボス戦。256名のファランクス兵の中央にて指揮を執るオブリビオンを撃破するのが目的。
ファランクス兵は一般人です。あっさり死ぬので注意が必要。要工夫。
うっかり死なせても成否には影響無いけど、殺伐とした結果が残ります。また、わざと危害を加えるようなプレイングは省きますのでご注意を。
上手い作戦でファランクス陣形を破った場合、判定は有利に働きます。
技能の表記に【】『』などのカッコ書きは不要です。技能の羅列では無く、どう使っているかも記載頂きますとキャラの動きが明確になります。
シナリオの運営状況についてはTwitterかマスターページに記載しますので、プレイング〆切など決まりましたらお知らせ致します。
第1章 ボス戦
『『雪女』冷結』
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POW : 氷の制裁
【足を魅せる等して肌から冷気を貯め、指先】を向けた対象に、【対象の場所を起点に発生する氷の塊】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD : 氷の神隠
自身と自身の装備、【そこから吹雪を発しながら自身と】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
WIZ : 氷の呟き
【心の底から凍てつく言葉】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
イラスト:煤すずみ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ポーラリア・ベル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
テニエ・ミスチヴァス
◎アドリブ連携歓迎
サムライエンパイアって美味しい料理が多いんだよね
特にスシとかスキヤキとか、最高に好き!
そんな素敵な国を守る為にも協力は惜しまないよ
もちろん後味が悪いのも嫌だから、一般人も死なせないけどね
■戦闘
【UC】で透明化してからジャンプでファランクスを飛び越えていくよ
飛距離が足りなかったら誰かを踏ん付けて更にジャンプ、その時はごめんね!
そのまま忍び足で雪女に近づいたらナイフで暗殺攻撃、大ダメージを狙うよ
気が付かれたら透明化したまま周囲を高速で飛び回って、更にフォークを
目潰し狙いで投擲、隙が出来たらそこを狙って斬りかかる
不可視、高速で動く相手に正確に指先を向けるのは難しいんじゃないかな?
大豪傑・麗刃
この大豪傑麗刃は…いわゆる変態のレッテルをはられている…
たしかに日頃は思い当たるフシもなくもない。だが此度は一応生まれ故郷であるサムライエンパイアの危機。
ネタ一切抜きのシリアスでいくのだ(本気?フリ?さあ?)
さてファランクスとやらについて調べたのだが、どうやら機動力と柔軟性のなさが弱点らしいのだ。ならばこっちは機動力と柔軟性で勝負するのだ。
(スーパー変態人2発動!!)
んで右手に刀2本!左手に脇差2本!これでファランクスの周囲を残像も加えて飛び回り、敵をかく乱させて無理やり道を開けるのだ!
開いたら突撃!氷の塊とやらも効かないのだ!なぜなら今のわたしは暑いもとい熱い男なのだ。熱くなれよおおおおおお
――――ザッザッザッ。
足並み揃えて原っぱの向こう側から異様な軍団が姿を現す。
長槍大盾を装備した農民達、総勢256名。
左手に構えた盾は其方側に立つ仲間を護る態勢。
「あの布陣こそ、世に聞く『ファランクス』の陣……!」
大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は目前の軍団を前に、ごくりと唾を飲み込んだ。中心にいるであろうオブリビオンの姿は人の壁に阻まれて良く見えない。
、テニエ・ミスチヴァス(変幻自在の虹縞猫・f20445)も手にナイフとフォークを構えて敵陣を見据えた。
「サムライエンパイアって美味しい料理が多いんだよね」
「確かに、他の世界には無い料理が目白押しなのだ」
「特にスシとかスキヤキとか、最高に好き!」
猫耳をピンと立てて微笑むテニエ。生まれ故郷の料理を誉められ、麗刃も悪い気はしない。彼も自分の実家で良く出た料理を思い浮かべながら、両手に刀を構える。
そう……故郷の危機である。幾ら自他共に認める変態と称される麗刃であっても、ふざけている場合ではないことくらい、良く解る。
「今回はネタ一切抜きのシリアスで行くのだ……!」
果たしてフリなのか、はたまた本気か。その愉快な面構えからは想像が付かない。
「私もこの素敵な国を守るために協力は惜しまないよ」
ニコッと笑ってテニエは言う。
「もちろん、後味が悪いのも嫌だから、彼らも死なせないけど、ね」
彼ら――槍と盾を持ち此方に向かいくる操られた農民達を前に決意を固めた。
「うぐっ!?」
「ぐへぇっ!?」
陣の奥の方に立つ兵が突然変な悲鳴を上げた。まるで突然なにかに踏まれたように、頭上から衝撃を受けて体勢を崩したのだ。
(「ん、ごめんね!!」)
声に出さずに謝ったのは『変幻自在の猫(ファンタズマゴリア・キャット)』にてその身を透明化したテニエ。全力で助走をつけて大ジャンプしたものの、流石にボスのいるであろう八列ほど先まで届かない。身軽な猫の獣人ゆえか、その踏みつけもしなやかで軽く、死ぬ程のダメージは入らないで済んでいる様子。
『……どうしたの、お前達?』
見えた。中央にてその身をふわふわと浮かせて指揮を執る雪女は訝しげに悲鳴の上がった方に問うた。どうやら彼女にもテニエの姿は目視出来ていない。
持ち前の忍び足で近付く先、手にしたナイフが素早く動く。狙いはその白い首元!
――ざく、り。
『――があぁっっ!!?』
突然己の首を掻き斬られ、何が起こったのか解らないように雪女は慌ててその身を数歩後ろに下げる。見えない敵がいる、と察したか。首の傷を凍らせながら叫ぶ。
『そこか、そこらに居るんだね!?』
雪女は適当な位置を指さすとそこに氷の塊が突然出現、落下する。
勿論そこにテニエはいない。しかし代わりに兵たる農民たちが巻き込まれかけた。
「……! 私はここだよ!」
不可視相手に正確に指を向けることは出来ないと踏んでいたが。まさか当てずっぽうに地面を対象にして撃つなんて。民の犠牲を避ける為、テニエはやむを得ず姿を現した。
『姿を消して……? さっきの悲鳴はお前の仕業か!!』
「ご明察どおりってね!」
ニッと笑って彼女はフォークを投げた。狙いは目。だが届く前に着物の袂で振り払う雪女。――それこそがテニエの狙い。
「隙だらけ、だよ?」
再び振り抜かれたナイフは雪女の逆の腕を斬り裂く!
『くっ……こいつめ!!』
雪女は顔を真っ赤、ではなく真っ青にしてテニエに向けて指を向けようとしたその時。
「どけどけどけーー!! どくのだ!!!」
そこに兵士達を押しのけ強引に道を開けて進んできた麗刃が到着した。
その姿、全身に金のオーラを纏い、髪の毛も逆立たせて青白い電流がバチバチと覆っており、まるで別人のようにシリアスな顔にて雪女を見据えた。
右手に刀、左手に脇差、それを二本ずつの計四本。スーパー変態人2と化した麗刃はファランクス陣の周囲を超高速で飛び回り、残像をも見せて撹乱させた挙げ句、ここまで無理矢理道を切り開いてきたらしい。
「ファランクスの弱点は機動力と柔軟性の無さらしいのだ……ならばそいつで勝負すれば勝つる!!」
『なん……だと!? お前無茶苦茶じゃないのか!?』
雪女は反論しつつ指を向け、大きな氷の塊を麗刃の頭上に落とすも。
「ふんぬぅっ!!」
ばごぉっ!! 頭突きで割って見せた。突撃は止まらない。
『うっそっ!?』
「そんなもの効かないのだ! 何故なら今のわたしは暑い――もとい、熱い男なのだ!」
『熱いってか濃ゆいわ!!』
「熱くなれよおぉぉぉ!!!」
早くシリアスモード終わらせてネタに走りたい麗刃の勢いは止まらない。
「……いや、既に結構ネタだよ、ね」
陣を戻そうとする兵達に押され、外に向けて身を引きつつテニエは呟いたのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシェ・ユヴェール
この陣形……強固ではありますが
それは障害物が無い平地ならばの話です
狭く複雑な地形になればなるほど、陣の維持が難しくなる
――古戦場の地に触れ、名もなき武人達の感情の残滓を探るよう
UCで組み上げるのは、隆起し結晶化する透輝石
陣の中に壁を立てるかの如く
但し転ぶ程度で済むよう足元直下は避けて
陣は乱れ、
結晶は足場にもなりましょう
最低限の相手で済むよう側面から首魁を目指す
農民に仕掛けられた場合のみ
武器受けから武器落としを狙い、傷つけぬよう無力化
攻撃面ではあまり役に立てませんが
冷気の気配に逃げられぬよう留意致します
厚着の衣装と氷結耐性にて堪え
吹雪の中央に勘付く事が出来れば
その足元を結晶化にて縫い止め足止めを
ナザール・ウフラムル
あいつらは猟兵に対しての人質兼幕府軍に対しての攻撃手段ってトコか。
大気を圧縮しての足場と風の後押しでのジャンプで陣形を飛び越えて、真ん中の上空に来たら下方向に加速して雪女に突っ込む。
迎撃で槍が向けられるかもだけど、それはユーベルコードの「触れるものを切り裂く冴え冴えとした風」で穂先を切り落とす。
雪女からの攻撃も、事前に動作があるなら第六感を強化しとけば回避できなくはないだろ。足場を作ってそれを蹴れば空中でも動けるし。
さあ、見えない刃に切り刻まれろ。
陣の奥の方では戦いが始まっているが。指揮官たるオブリビオンが倒れていない証拠だろう。一度乱れた足並みは再び揃い、強固な陣が再構築されていくのをファルシェ・ユヴェール(宝石商・f21045)は見届けるとほう、と一つ溜息をつく。
「見事なものです」
無論、それは大帝の剣という魔法じみた力を持ってなされた規律なのだが。それでもあれだけの人数が一心同体となって動くと言うのは並大抵の事ではない。
「あいつらは猟兵に対しての人質――兼、幕府軍に対しての攻撃手段ってトコか」
ナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)は中性的な顔から想像つかない低い声で呟くと軽く舌打ち。緑色の目で敵陣を睨み付けた。
「あの陣形、強固ではありますが。障害物が無い平地ならばの話です」
複雑な地形になればなるほど、陣の維持が難しくなる。
そう語るファルシェにナザールは首を傾げ問う。
「とは言っても……平地でしか無いっすよね、ここ」
関ヶ原……文字通り原っぱにも見えるこの戦場。それ故にあの陣形を組ませたのだろうけども。ふふ、とファルシェは笑みを零し、告げた。
「だから、平地では無くして差し上げるんですよ」
まるでこれから悪戯でもするかのような笑みであった。
「それじゃ、俺は先に突っ込むんで――」
「ええ、私は陣を乱し、援護と成しましょう」
ナザールは駆け出す。その周りに風を纏って。
ファルフェは膝を立て、その手で地の声を聞く。
向けられる槍。その手前でナザールは地面を蹴った。身に纏った風は彼の跳躍を後押しすることで兵達の頭上を飛び越える。上に向けられ突き上げられた槍の穂先は、触れるものを切り裂くという風が切り落とし、無力化してくれる。
一方、ファルシェは古戦場たるその大地に触れ、名も無き武人達の感情の残滓を探る。
「教えて下さい――」
その気持ちは何色なのか、と。問いかけた先より、地面が突然隆起する。それは結晶と成した透輝石(ダイオプサイド)。模倣宝石(イミテーション)であれど、鮮やかな緑色の結晶は陣を阻むように壁と成り、その兵達の横の守備を崩す。
まるで巨大な緑柱が陣中に次々と突き出るように出現し、その一つをナザールはトン、と足場にして更に先に飛ぶ。そしてその後を追うように、ファルシェもまた巨大な結晶を足場に、混乱する兵達を足下に見つつ陣の中央に向かう。
『な……なんなのコレは……!?』
雪女は目の前で起こった風と大地の力と術に思わず声を荒らげる。
迫るナザールに向け、指を示す雪女の動作ははっきり見えていた。
(「来る――!」)
氷の塊が襲いくるのを際どく避けることが出来たのはカンが働いたのもあったろうか。そのまま身に纏った鋭き刃である風と共にナザールは雪女にぶつかっていく!
「さあ、見えない刃に切り刻まれろ!」
『――――!!!』
女の白い着物がずたずたに切り刻まれる。そこに到着したファルシェを見、女はキッと彼を一睨みすると吹雪を場に巻き起こす。
「……逃がすものですか」
吹雪に紛れてその身を透明にせんと言う意図は逃亡だろう。この為に真夏に厚手の衣装に身を纏ってきた彼の寒さへの耐性は充分だった。
素早くファルシェは地面に手を着いた。雪女のいた位置に組まれる元素組成。それは天然の石とは違っていても、足止めには充分すぎる。
突き刺さる結晶が女の着物裾を縫い止めた。
「攻撃面ではあまり役には立てませんが――」
猛々しい風を纏う仲間が、再び女に向かう。
「このくらいなら、僕だって役に立つでしょう?」
「充分過ぎる程だ――!」
地の槍に捕らわれた雪女を再び風が引き裂いた。
大成功
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グラナト・ラガルティハ
マクベス(f15930)と。
ファランクス…歩兵による密集陣形か。
さらにその歩兵は洗脳された農民。相手にとっては痛くもかゆくもないと言うところだな…。
UC【焔の矢】なら視認できればオブリビオンのみを射抜くことは可能だろうがまずは視界の確保だな。
マクベス、行けるか?
UC使用可能範囲内に移動し。
まずは【戦闘知識】で戦場の確認を。
マクベスの水の精霊の力でオブリビオンを囲む歩兵達を押し流しオブリビオンを視認できたらUC【焔の矢】使用。【属性攻撃】炎で強化さらに【毒使い】で毒も仕込み発動。
致命傷を防いだとしても毒が体を蝕むだろう。
上手くいったか?
ありがとうマクベス、助かった。
(帽子の上から頭を撫でようと)
マクベス・メインクーン
グラナトさん(f16720)と
農民を操ってとかふざけてんな
グラナトさん、敵の指揮官ぶっ飛ばしてやろうぜ
んじゃ、作戦通り行くぜ
【先制攻撃】で【全力魔法】で水の精霊を行使して
一個大隊を大量の水で押し流すぜ
もちろん呼吸は出来るように
下半身くらいまでの水かさにするが
それでも勢いよく流せば陣形が崩れるだろ
長物や盾を持ってりゃ余計流されやすいだろうしな
陣形が丸裸になったとこで
姿が見えるようになった敵に
グラナトさんに攻撃してもらうぜ
火力が足りなきゃ魔装銃で風【属性攻撃】して
更に炎を燃え上がらせる
敵の攻撃には炎の【オーラ防御】で
氷を溶かして防御する
グラナトさんが怪我したらUCで回復する
へへっ、上手くいったな♪
先に向かった猟兵達の戦いのお陰か。敵の陣形は乱れつつあるものの、未だに行軍は止まらず。目に見える先頭列は隣の者を大盾でガッチリと守っているのが窺える。
「ファランクス……歩兵による密集陣形か」
グラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)は低い声で呟いた。戦の神たる彼は覚えがあるものなのだろうか。更に彼はしかめ面の眉間の溝を深め。
「その歩兵は洗脳された農民……成る程、相手にとっては痛くもかゆくもないと言うところだな……」
その独り言にも似た分析を聞き、マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)はチッと舌打ち一つ。
「農民を操ってとか、ふざけてんな」
その表情には明らかに怒りの色が見え。そして少年は壮年の神に興奮気味に告げる。
「グラナトさん、敵の指揮官ぶっ飛ばしてやろうぜ!」
「ああ。無論だとも」
グラナトはゆっくりと頷いた。やる気に満ちた相棒のその意気や良し、と思いつつ彼は作戦をマクベスに伝える。
「さて――マクベス、行けるか?」
「オッケー。んじゃ作戦通り行くぜ」
少年の頷きにグラナトも鷹揚に頷きを返すと、兵の向かってくる丁度真正面に仁王立ちする。真っ直ぐこの先にオブリビオンが居る事だろう。視認さえ出来れば、相手が1キロ先にいようと彼の射程範囲だ。
その為の視界の確保こそ、マクベスの役割。両手に握った小刀は精霊の力を行使する触媒。胸元で交差させ、キンと刃を打ち鳴らし――。
「行っけえぇぇぇっ!!!」
全力全霊でその手を広げて彼は咆えた。呼応するように水の精霊はその場に激流を巻き起こし、まるで突然目の前で河川が決壊でもしたかのような怒濤の水量が一個大隊を押し流す!!
「ひいぃぃっ!!」
「あばばばば」
「お、おいら泳げな――」
慌てる農民達。手にした長槍や大盾はその重さと表面積故に水の中で思うようには動かせず、些細な水の流れの力にも抗えない。
「ったく――慌てすぎだぜあいつら」
精々下半身……膝上くらいの水かさの筈なのに、足が着くことに気がつかずに慌てふためく様子を見てマクベスは苦笑しつつ、グラナトに視線を送った。
『ちょ、何なの全く――天変地異起こすにもいい加減に――』
吹雪という自然災害を起こす雪女が自分を棚に上げて金切り声を上げるその姿、炎神の視界に収まった。
「焔の矢よ――」
グラナトの周囲に形を成す、熱気。
「――撃ち抜け」
その短い詠唱は炎を司る彼の力を呼び起こすには充分。言霊は焔の矢を生み、それは真っ直ぐに彼のずっと先にて指揮を執る女妖に突き刺さる。
『――がはっ!!?』
それはまるで深紅の棘。火星(マーズ)より燃えさかる蠍座α星(アンタレス)の炎は毒をも宿し、氷にてその身を構築した雪女を炎と毒が蝕んでいく。
『おのれ……猟兵風情、が……』
雪女はその身を吹雪で包み込みながらその姿を消そうとする。
だがその前にマクベスの手にした精霊銃が叫びを放つ。
「させるかよ」
撃ち出されたのは風。炎と風は親和性が高い――。果たして女の身体を燃やし続ける炎は更に激しく燃え盛る。
『あ、ああ、あああ――――!!??』
「透明化しても体温は消せないってんならさ。グラナトさんの焔だって消せないよな」
にっと笑みを浮かべる少年の表情は余りに遠すぎて見えないが。雪女はその身が崩れ落ちるのを感じながら、二人に向けて呪詛めいた呟きを放つ。
『おのれ、おのれ……私をこんな目に……赦さない、赦してなるものか……!』
その声が聞こえたかどうか。聞こえたところで、赦しを得ようだなんて欠片も思わない。
「マクベス、最後に決めるぞ」
「おう!!」
再び放たれる焔と風。雪女はその身を砕かれ溶かされ、そして水蒸気と共に骸の海に送還されたのだった。
「あれ、おらは何でこんなところに……」
「悪い夢でも見てた気がするなぁ……」
洗脳が解け、武器を盾をその場に放り出した農民達が首を傾げてそのまま良く解らずに自分達の村に帰って行く。
「上手く……いったか?」
その様子を見て安堵の息をもらすグラナト。マクベスは笑顔でハイタッチして。
「へへっ、上手くいったな♪ 流石グラナトさんだ」
「いや……」
グラナトは目を細めて笑みを浮かべ、マクベスの帽子の上からぽふっと頭に手を乗せて。
「ありがとう、マクベス。助かった」
俺の力だけではない。そう告げると少年は一瞬目を丸くして、顔を真っ赤にして背けた。
「よせよ、照れるだろ……」
「ふっ……では戻るか」
はにかむ少年の姿に初々しさを感じつつ、グラナトはそう促したのだった。
大成功
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