エンパイアウォー⑩~その船を解放せよ
●村上怨霊水軍
「ぁぁ……妬ましい、口惜しい……」
「どうして……どうして私たちがこんな……」
鉄甲船の中を女たちの悲痛な声が埋め尽くす。鉄甲船の船員は村上水軍の怨霊であるが、この船に乗る怨霊は船員だけではない。船を守るオブリビオン『残滓』――人々の未練、後悔を集めて生み出された彼女たちは最早己の魂を苛む悲しみの正体を知らず、ただただ嘆き生者を恨む。
引きずり落としましょう、あちらに見える人々の群れを。
水底に沈めてしまいましょう、私たちと同じところに。
きっと仲間が増えるわ。みんなで、一緒にいましょう。
一緒に 一緒に 一緒に
「とっても素敵よね?」
打って変わって弾むような、少女のように軽やかな声が木霊した。
●グリモアベース
グリモアを掲げたスカーレット・ブラックモア(異邦神狩り受ける執行人・f00474)が此度の戦いについて話し始める。
「目的は村上怨霊水軍が動かす鉄甲船、その一隻を沈めることだ」
村上水軍とは戦国時代に瀬戸内海を席巻した大海賊のことである。魔軍将が一人、日野富子は有り余る財力を用いて作り上げた全長200m、全幅30mもある超巨大鉄甲船の大船団に、怨霊として呼び出した村上水軍を乗せて水軍を形成したのだ。
このままでは南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められてしまう。故に猟兵たちがあれらの船を沈めなければならないのだ。
「怨霊となった村上水軍は不滅の存在だ。如何なる攻撃も、ユーベルコードすらも受け付けない。しかし、一つだけ倒す方法がある。帆柱に掲げられた村上水軍旗、あれを引きずりおろせば怨霊は消滅し、船は沈む」
旗は丸の中に「上」と刺繍されているため特に技能がなくともすぐわかるだろう。しかし、当然敵も船を守る戦力を用意している。
「同胞たちが乗り込む船にいるのはオブリビオン『残滓』、過去の人々の未練や後悔の念を集めて生み出された怨霊だ。女性のような姿と声をしているが負の念を持つ本人ではない。余計な心配かもしれないが、惑わされぬようにな」
数は十体ほど、どうにかして残滓を突破しなければ旗まで辿り着けないだろう。
「予め言っておくが船内に直接同胞たちを転移させることはできない」
岸辺までは送れるが、とも付け加える。海上に浮いている船へ乗り込む手段は自分たちで考えなければならない。
「手段と言えば……そうだな、残滓の方は話が通じないが村上水軍の怨霊たちは生前の記憶や感情を持っている者がいるらしい。もしかしたら話が通じるかもしれないな」
村上水軍の全てが日野富子に忠誠を誓っているわけではない。交渉次第によっては船に乗り込みやすくできたり、旗まで到達する手引きをしてくれるかもしれない。
「では、健闘を祈る。我らに勝利を」
樫木間黒
初戦争シナリオで緊張しています。樫木真黒です。
説明はだいたいオープニングに書いてある通りです。オブリビオン『残滓』を倒し船を沈めてください。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦
『残滓』
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POW : 神気のニゴリ
【怨念】【悔恨】【後悔】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
SPD : ミソギの火
【視線】を向けた対象に、【地面を裂いて飛びだす火柱】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : ケガレ乱歩
【分身】の霊を召喚する。これは【瘴気】や【毒】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:オペラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラヴ・フェイタリティ
【アドリブ歓迎】
感じるぜ…嵐だ。恨み嘆きが渦を巻き嵐を起こしてやがる。こいつに立ち向かう…なんともメインヒロインじゃねぇか。なぁメア子。
ヒロインパワーの高まるままにユーベルコードを使えば、ドレスを纏った真の姿が現れる。ここから船までは走りだ。軽やかに岸を蹴り波を踏み海を駆け、一気に船に乗り込む。舞踏会の始まりだぜ!
敵の攻撃を勘と反応速度とスピードで避けながら、拳脚を振るう。恨みつらみの声を聞きながら、浄化の歌を歌う。両方こなさなきゃならないのがメインヒロインの辛いところだな。だが安心しな、あの旗引きずりおろしててめぇら丸ごとあの世に送ってやらァ。ラヴ様のリサイタルをあの世で語り草にしやがれ!
●突入開始
潮風に煽られラヴ・フェイタリティ(怪奇!地下世界の落ちものメインヒロイン!・f17338)の長い髪が揺れる。
「感じるぜ……嵐だ」
目標となる巨大鉄甲船を視界に収め、はためく髪を抑えながら船上を見やる。
「恨み嘆きが渦を巻き嵐を起こしてやがる。こいつに立ち向かう……なんともメインヒロインじゃねぇか。なぁメア子」
誰かに言い聞かせるように言葉を発し、右腕を掲げる。
高まるのはヒロインパワー、人々の積もり積もった恨み、悲哀、嘆き、全てを解き放つのはなんと素晴らしく“ヒロイン”なのだろう。
――故にラヴは姿を変える。ユーベルコードを用いた真の姿の解放、その名も《プリンセスハートオブラヴ》!
ラヴの姿はたちまち赤い長く編みこまれた髪と青いカクテルドレスを身に纏ったものに変化を遂げる。
「さぁ――行くぜ、舞踏会の始まりだ!」
高らかに声を上げて水面に向かってヒールを振り下ろす。バシャンと水飛沫を上げるがラヴの体が水中に沈むことはない。健脚から繰り出される踏み込みは限定的に水を流動性のある液体から足場として機能する個体に変化させたのだ。
そして、足場が崩れるより速く次の一歩が繰り出される。力技ではあるが、その力が水上歩行を可能とした。ラヴの高いヒロインパワー故に成せる技である。
あっという間に海面から船上へステージを変え、彼女を迎え撃とうとする残滓たちに歌を響かせた。
「これ、は……? とても美しい、きれい……素敵……」
「ちょうだい……? 私たちと一緒に来て……ずっと、ずっと、歌って?」
歌の輝きに惹かれた残滓たちが詰め寄る。しかしラヴの歌は浄化の歌。無念で構成されている残滓たちには毒となり、引き寄せようとする腕は空を掠め、頭部にカウンターの蹴りを叩き込まれる。
「どうしてぇぇ……どうして来ないのよぉぉ!! ずっとずっと聞いていたいだけなのにぃ……!」
(恨みつらみの声を聞きながら歌を唄う。両方こなさなきゃならないのがメインヒロインの辛いところだな)
怨嗟の声に動きを止めず、またも攻撃をするりと躱して次は拳で打ちぬく。
「だが安心しな、あの旗引きずりおろしててめぇら丸ごとあの世に送ってやらァ」
スタンドマイクを華麗に回し、高らかに宣言する。
『ラヴ様のリサイタルをあの世で語り草にしやがれ!』
メインヒロインに残滓たちは指一本触れることもできない。観客とアーティストを分け隔つライブ会場のように、圧巻のパフォーマンスが船で繰り広げられていた。
大成功
🔵🔵🔵
リアナ・トラヴェリア
ゴーストが船の主…、か
あんまり迷宮では聞いたことがないけど、場所に取り付くって言うのは聞いた事があるかな
とりあえず鉄の船までは飛んでいこう
飛んでいる間に狙われるかも知れないけれど、その間に海側から来る人の目を引けるなら
船の上まで来たら翼を畳んで急降下。そのまま残滓を上から切り裂くよ
黒剣から光を放って突き刺したまま攻撃しちゃおう
甲板の上に降りて一息付いたら、情報週数
その辺りの幽霊に旗の場所を聞いてみよう
もし代償に消滅を望まれたら破魔の…対アンデッドの魔法を使おう
覚えてて良かった
他の残滓と出会ったら先程と同じ様に閃光を放ちながら戦うよ
さっきの魔法もエンチャントしておこう
少しは有効打になる…よね?
キア・ウィトル
【アドリブ歓迎】
「楽しそうなことをしているね。微力ながら、ボクも花を添えさせてもらおう」
空を飛んで接近します。
空中から【全力魔法】で【鈴蘭の嵐】を使用し、花弁を撒き散らしてライブを盛り上げつつ敵にダメージを与えたいです
時同じくして、翼をはためかせ船上に差す影が二つ。
ドラゴニアンのリアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)とオラトリアのキア・ウィトル(放浪者・f21257)である。彼女らは種族固有の飛行能力を使い、そらから鉄甲船への侵入を果たしたのだ。
幸い、甲板で繰り広げられているリサイタルに気を取られ彼女らの上陸を阻むものはいない。
ライブを目にしたキアはふむ、と思い至った。
「楽しそうなことをしているね。微力ながら、ボクも花を添えさせてもらおう」
言うと髑髏水晶が飾られた杖を構え、呪文を唱える。ふわりと黒い髪が揺れ、推奨が崩れ、花弁となりてふわふわと周囲を取り囲む。
すべて
『ボクの魔 力、花となりて……呑み込め!』
〈鈴蘭の嵐〉が歌に気を取られ集まっていた残滓を飲み込んだ。苦悶の声を上げながら身に纏う布を切り裂かれる残滓たち。憎々し気に空を飛ぶキアを見上げるが、そこを再び花弁の嵐が襲う。ライブ会場を彩るブーケは尚も舞い続ける。
一方、リアナは空中に留まらず黒剣を手に残滓を一体切り裂いた。
「やぁ――――!!」
振り抜いた勢いを生かし、駆け抜ける。後方を見やると切り裂かれても尚残滓はどす黒い瘴気を放ちながら再び動こうとしている。しかし流石に傷が深い。あれでは思い通りに動けないだろうと、船を動かしている怨霊へ向かった。
――船を動かしている怨霊なら話が通じるかもしれない、その情報を元にリアナは聞き込みを優先した。幸運なことにすぐに旗までの道のりを手引きしてくれる者が見つかった。
「もうあの声を聞き続けるのは嫌なんだよ……俺はこんな声を聞きたくて蘇ったんじゃない」
声をかけた船員は乗り合わせているオブリビオンにかなり参っている様子だった。すんなり話が進んだのもそのためであろう。
(破魔の力が通じたら……)
すぐに彼らを解放できたのに。
しかし、水兵たちを消滅させるにはあの旗を引きずりおろすしかないのである。
すぐに解放することを誓い、教えてもらったルートへ向けてリアナは駆ける。水兵たちに手を尽くせなかった代わりに、黒剣に破魔の力を込めて振るう。
グリンガムレイヤー
「……光よ、目覚めて! 〈目覚めゆく白翼の閃光〉!」
一条の光が道を阻む残滓を貫く。その後を援護するかのようにキアの繰り出した花弁が残滓を覆いつくした。
「……ああ、とても、綺麗ね」
「すて、き……」
ユーベルコードの波状攻撃の前に少しずつ残滓が倒れていく。力尽きた残滓の言葉はどこか安らかではあった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
セラフィール・キュベルト
この想念、とても重く、苦しく、哀しく…
救って、差し上げなければなりませんね…。
船までは【空中浮遊】を用いて飛行し乗り込みます。
接近するまでは海面付近を飛行、近づいたところで高度を上げ甲板へ降り立ちます。
オブリビオンを発見次第、聖輝光輪・心恨浄化を発動。
光の波動と共に【破魔】――鎮魂の【祈り】を、彼女達を救いたいと願う【優しさ】を以て捧げます。彼女達を救い、還す為に。
「どうか、どうか。貴女様が貴女様でいられるうちに。その御心、真に闇へと染まらぬうちに。在るべき地へ。私の祈りにて導いて差し上げます故――」
その後、水軍の亡霊様方へもお声かけを。
皆様を救うべく水軍旗を回収したい、と力添えを依頼します。
●苦しみから解き放たれる時
白い翼を広げ、海面付近のコースを通って船に近づくセラフィール・キュベルト(癒し願う聖女・f00816)は残滓たちの呻き声を耳にした。
残滓の声は憎しみ、怒りだけではなく報われない悲しみや切なさを秘めたものであった。故に敵にすら情を持ってしまうほど心優しいセラフィールには耳を貸すだけで心が締め付けられるように痛む。
「この想念……救って、差し上げなければなりませんね……」
祈るように、傷口を抑えるように、胸の前で組んだ両手に力を込める。瞬く間に高度を上げ甲板に降り立った。セラフィールに意識を向けた残滓がケガレ乱歩で分身を向かわせる。が、それに怯むことなく祈りの姿勢を保つ。
セラフィールの頭部に光輪が現れる。
「どうか、どうか」
セラフィールから破魔の光が放たれた。残滓たちは動きを止め、本体より力のない分身の影は次第に薄くなっていく。
「貴女様が貴女様でいられるうちに。その御心、真に闇へと染まらぬうちに。在るべき地へ。私の祈りにて導いて差し上げます故――」
心の底から告げられる祈りの言葉。残滓たちは思うように動けずにいた。
あんなにも憎らしく、美しく、焼き払いたいほどの光であるのに。
何故かあれを消してしまいたいと思えない。同じ場所まで引きずりおろしてしまおうと思わない。
――体が、動かない。
本気で彼女たちを救いたい、解放したいという願いの光、祈りの言葉。そして別の形であるが村上怨霊水軍にも向けられる。
「お願いします」
凛とした切なる言葉。
「皆さんをお救いします。そのためにお力添えをいただきたいのです……」
船に乗る怨霊たちにも変化が訪れていた。
大成功
🔵🔵🔵
マクベス・メインクーン
船一隻、沈めてやろうぜ
海賊船とかちょっとワクワクするけどな
乗ってるやつらは海賊ってよりは幽霊だけど
風の精霊の力も使って上空から飛んで奇襲するぜ
他の猟兵に意識が言ってれば頭上からの攻撃に反応が遅れるだろうしな
【先制攻撃】でUCを使用して
魔装銃で炎【属性攻撃】の弾丸を【範囲攻撃】でお見舞いするぜ
UCで分身出そうが、纏めて燃やす
敵からの攻撃は風の【オーラ防御】で防ぐぜ
怨霊達には、もう日野富子は倒された
従う義理もなんもねぇはずだぜと声をかける
声が届いても届かなくても、船の上の残滓を倒したら
旗は降ろさせてもらうけどな
「――船一隻、沈めてやろうぜ!」
意気揚々と風の精霊の後押しを受けてマクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)が船に乗り込んだ。
残滓の動きが止められている今こそがチャンス、と二丁の魔装銃を構えた。
「コイツを食らいな!」
引き金を交互に、交互に、何度も、何度も引く。上空から高速で、しかも動きを止められて避けられない状況から放たれる炎弾を残滓は避ける手段がない。
「アァァ……熱い! ヤメテ!!」
思わずマクベスは舌打ちする。あまり聞いて気分がいいものではない。
「海賊船」と聞くと年頃の少年である彼の男の子心がくすぐられるが、実態がこんな幽霊船ではわくわくするものも何もない。
残滓の分身は炎に包まれて消えていくが、本体は最後の力を振り絞ろうと既に消滅した仲間の瘴気を取り込みミソギの火を向けた。その火を風精霊の加護で防ぎ、村上怨霊水軍に大声で呼びかける。
「もう日野富子は倒された! もう従う義理はねぇ!」
既に村上怨霊水軍を作り出した存在である日野富子は猟兵たちに討伐されている。それでもまだ水軍が残っているのはまだ契約が生きているのか、情報が届いていないのか。どちらにせよ残滓の嘆き声に苛まれ、猟兵たちの言葉を聞いた彼らは自ら契約を切った。
弱っているとはいえ最初よりも体を膨れ上がらせた残滓の前に怨霊たちが立ち塞がる。その背はまるでマクベスに「行け」と語っているかのようだった。覚悟に言葉を返す必要はない。頷き、精霊の力でブーストをかけ、餞別がてらに残滓に残った銃弾をありったけ放つ。
そして滑り込むように旗の前に立ち――一息に引きずりおろした。
*
各々の手段で船から脱出する前に、乗組員の最期の姿を見た。
誰もが今にも消えてしまうのだというのに楽し気に笑っていた。沈む船を背に女性の声を耳にする。
「――素敵、目を背けたいくらいに」
声の主の気配は完全に消え、船も沈む。
目標である鉄甲船、一隻沈黙。猟兵たちの勝利で終わった。
<了>
大成功
🔵🔵🔵