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幻葬メルヒェン

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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 一人の少女がその領域に一歩足を踏み入れた途端、周囲に紫色の霧が立ち込める。
 するとどこからともなく、甘い香りが漂って、ぐるりと辺りを見渡すと。
 光が幽かに明滅しながら、視界がぼやけて意識が揺らぎ、次第に霧が薄らいで。そこで目にした光景は――メルヘンチックな造形の、まるで童話の世界のような空間だ。

 ――やあ、アリス。この場所こそが、キミの理想の世界だよ。

 此処はあらゆる望みを叶えてくれる、とても素敵な夢の国。
 色とりどりに咲く花たちに、アリスと呼ばれた少女は導かれるように前を行く。
 胸ときめかせながら花咲く小径を抜けた先、そこに現れたのは――全てがお菓子で作られた、小さな可愛い家だった。
 お菓子の家を一目見るなり、アリスは瞳を輝かせながら家に向かって飛び込んでいく。
 扉や壁はクッキーで、チョコの屋根にはカラフルなマカロンが飾り付けられていて。
 中に入れば床だけじゃなく、椅子やテーブルだって、全てがお菓子で作られている。

 ――ここのお菓子は全部アリスだけのモノ。だからいっぱい食べていいんだよ。

 お菓子の甘い香りが少女の鼻を擽って、我慢できなくなったアリスはすぐにお菓子の家にかじりつき、 口いっぱいにお菓子を頬張りながら甘やかな時を過ぎすのだった。
 そしてお腹も満たされ、程良く楽しんだ頃、そろそろ帰ろうかとお菓子の家を出ようとすると――。

 ――おやアリス、一体どこへ行くのかな? お菓子はまだまだ用意してあるよ。
 だから遠慮しないで、もっと食べようよ。そう、ずっとこのまま、永遠に――。

 そんなにたくさん、食べられない、と。アリスは拒絶し、急いでここから抜け出そうとする。けれども一度この領域に入った者は、誰であろうと逃げられない。
 自身の夢を拒んだ瞬間、童話のような世界は昏い闇夜に覆われてしまう。
 その直後、影に潜んだ殺し屋が、逃げるアリスを追いかけ、捕まえ、手にしたナイフを突き刺すと――少女の悲痛な叫びと共に、飛び散る真っ赤な血の彩が、暗闇の中を染め上げていく――。


「その女の子は自分の夢の世界から抜け出せず、影に殺されてしまうみたいだね」
 アリスラビリンスで一人のアリスが殺害される。
 事件を予知したレーツェル・ハンスヴルスト(Lächeln Mörder・f19690)は、うさぎの耳をくるりと巻いて考え込む仕草を見せながら、徐に懐中時計を取り出し、猟兵たちにその内容を語り出す。
 アリスがいるのは、内なる欲が溢れる領域。そこに一度入ってしまうと、自身の欲が具現化し、どれだけ満たされようと決して抜け出すことは許されない。
「そうやって、欲望の檻に閉じ込めるのがオウガのやり方なんだ。もしも逃げようとした場合、影の殺し屋たちが行く手を塞ぎ、あっという間に殺されてしまう。だからといって欲に囚われたままでいるのなら、今度はオウガの餌になってしまうんだ」
 自身の欲を肯定し、至福に微睡む者たちを、オウガは嬲って苦痛を与えて調教し、そうして己の嗜好を満たし、最終的にはアリスの血を飲み、肉を喰らう。
 つまりオウガにとって、アリスは奴隷みたいなものだろう。むしろそれよりタチが悪いのかもしれない。
「こんな酷い悪夢を、いつまでも見させるわけにはいかないね。夢の国っていうのはさ、もっと希望に溢れた世界であるべきだから」
 悪夢の迷路に迷い込んでしまったアリスを救出し、オウガの野望を打ち砕く。
 後はよろしく頼んだよ、と猟兵たちに微笑みながら告げたレーツェルは、懐中時計を空に翳してグリモアの力を発動させる。
「――さあ、狩りの時間だよ」
 すると時計の針が巻き戻り、懐中時計の放つ光が、猟兵たちを包み込む。
 グリモアの光が導く先は、欲に穢れたオウガの根城。
 夢の世界の名を騙る、偽りのネバーランドに、終焉を――。


朱乃天
 お世話になっております。朱乃天(あけの・そら)です。
 今回はアリスラビリンスにおける物語をご案内させて頂きます。

●物語について
 第一章:冒険編『狂騒狂気狂乱』
 第二章:集団戦『影縫い・シャッテンドルヒ』
 第三章:ボス戦『拷問王妃エリザベート』

 ※第一章の領域では、自分の中に抱く欲望が形となって現れます。
 それがどのような欲望なのか、些細なものでも構いませんので、プレイングにて指定をお願いします。
 また、成功度に達成したらアリスも一緒に救出されることになります。

●アリスについて
 10歳くらいの女の子。可愛らしいフリルのワンピースを着ています。
 年相応の無邪気な性格で、お菓子が大好き。
 ユーベルコードは『生まれながらの光』を使用します。

●運営スケジュールについて
 第一章のプレイング受付は【10/10(木)8:31】から開始とさせて頂きます。
 第二章以降は、冒頭部分を追記してからプレイングの受付を開始します。
 各章毎の運営スケジュールは、雑記やTwitterの方で適時お知らせしますので、そちらの方にもお目通しして頂けますと、大変嬉しく思います。

 同行者様がいらっしゃる場合、お相手の【名前】【ID】もしくは【グループ名】の記入をお願いします。
 また、シナリオへのご参加は、どの章からでも全く問題ありませんので、どうぞお気兼ねなくご参加下さいませ。

 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしています。
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第1章 冒険 『狂騒狂気狂乱』

POW   :    欲望を解放する

SPD   :    欲望を押さえつける

WIZ   :    欲望なんてなかった

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ラフィ・シザー
俺の欲望?そうだなぁ大好きなマカロンをいっぱい食べたいとかそれ以外なら誰かを何かを殺したいとか?俺も殺人鬼の端くれだからね。
やっぱりそういう欲はあるよ。
俺はトモダチは殺さない。
だからオウガを殺すんだ現状はそれで満足は出来てる殺すべきオウガも守るべきアリスもたくさんだ。

ハハッ!殺したい誰かに殺したい何かを用意してくれるなら俺は迷わず殺すさ♪
それはオウガが用意したものだからね!

俺は元からこんな感じだからね。
だから今更何を見たって惑いはしない。

アドリブ歓迎。



 猟兵たちが踏み入るその場所は、心に抱く内なる欲を、叶えてくれる夢の国。
 しかし欲に囚われた者は皆、抜け出すことができずにオウガの贄とされてしまう。
 一見、楽園のような夢の世界の正体は、オウガの為の餌場であって、アリスはそこで飼われる奴隷の如き扱いだ。
 そうしたオウガの非道な野望を打ち砕くべく、ラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)が狂気の舞台に乗り込んだ。
 その領域にラフィが足を踏み出すと、周囲に紫色の霧が立ち上り、歪んだ景色は彼の思い描いた欲望を作り上げていく。
 甘い欲ならマカロンをいっぱい平らげたいけど……そう考えながらも、ラフィは更なる欲を求めて、心の中で『ソレ』を願う。
「他ならやっぱり、誰かを、何かを『殺したい』とか? 俺も殺人鬼の端くれだからね」
 そう言って、口角を吊り上げながら、ラフィが不敵に微笑むと。
 まだあどけなさの残る少年らしい顔立ちが、その直後、殺気を帯びた、無慈悲な殺人鬼としての貌になる。
「俺は『トモダチ』は殺さない。だからオウガを殺すんだ」
 そうしてアリスをたくさん守ること。それが自分の欲だと言い張れば、夢の世界は彼の望みの儘に姿形を変えていく。
 そこに顕れたのは、色とりどりの可愛らしい、巨大なマカロンたちの群れだった。
 見た目はいかにもメルヘンチックだが、しかしパカッと二つに割れたように口が開き、ラフィを丸呑みしようと襲い掛かってくる。
「ハハッ! コイツはいい! 殺したい誰かに殺したい何かを用意してくれるなら、俺は迷わず殺すさ♪ それはオウガが用意したものだからね!」
 今更何を見たって、惑いはしない。彼は生まれついての、殺人鬼なのだから――。
 迫るマカロンお化けに動じることなく、ラフィは身の丈近い大きな鋏を取り出し、それを駆使してマカロンたちを次から次へとカットする。
「丁度良かった。マカロンも食べたかったんだよね」
 全てをあっという間に倒し終え、ラフィはただのお菓子になったマカロンを、拾い上げると口に運んで頬張って、蕩けるような甘さを味わうのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エル・クーゴー
●POW



●欲望
『豊かな自分の表情』


●探索
これより作戦行動を開始します

――と、当機は気を引き締めた表情を

当座のタスクを『救助対象アリスの保護>殺し屋の索敵及び迎撃=オウガの位置捕捉』と定義

――と、当機は思案気な表情を

……?
自己モニタリング
思考野にノイズを確認

――と、当機は不安げな表情を

探索行のマッピングデータ網羅進捗率が捗々しくありません

――と、当機は悩ましげな表情を


>ノイズの解析を完了しました
>これよりカウンターを実行します


半径52m内全敵性、ターゲット・ロック
【フルバースト・マキシマム(一斉発射+範囲攻撃+吹き飛ばし)】、ファイア

当機の心は随時アップデート中です
不正なアクセスをシャットします



 機械の身として造られた、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は思考もシステム的で、自我の希薄な彼女に欲望などの感情が、存在するのかどうか定かでないが。
「――これより作戦行動を開始します」
 発する言葉に抑揚はなく、エルは普段通りに淡々と、表情を引き締めながら任務をこなすのだった。
 差し当たっての優先事項は、救助対象でもあるアリスの保護だ。
 思考回路にプログラミングをセットして、作戦をいざ実行しようと領域に足を踏み入れた時――彼女の行く手を遮るように、どこからともなく紫色の霧が立ち込める。
「……? 自己モニタリング、思考野にノイズを確認」
 語る口調は冷静ではあるが、その表情は、ゴーグルで覆っていても些細な変化が読み取れる。
 一瞬、小首を傾げて思案顔になったと思ったら、生じるノイズを判別できず、不安な気持ちを抱いてしまう。
 それなら直に裸眼で確かめようと、ゴーグルを外して周囲を見回す。だがその表情は、困惑気味に強張っていて、普段のエルとは到底思えぬような状態だ。
 視界は閉ざす不思議な霧は濃さを増し、エルの心に合わせるように、次第に黒みを帯びていく。
「――探索行のマッピングデータ網羅進捗率が捗々しくありません」
 救出しに来た筈が、出口の見えない迷路に囚われたような絶望感に陥ってしまう。
 エルにとっては今まで経験したことのない、得体の知れない事象に戸惑いながら。
 何が彼女の回路を狂わせるのか、息を圧迫するような、悩ましげな顔を浮かべるエルの額に汗が滲んで頬を伝う。

 ――だがそれは、全て彼女が望んだものだ。

 この領域は、自身の欲を叶えることができる理想世界。
 表情の乏しいエルが欲したものは、『豊かな自分の表情』である。
 例え機械の身だろうと、『心』もデータ化しているわけではない。
「――ノイズの解析を完了しました。これよりカウンターを実行します」
 アームドフォートを構えて、ターゲットをロックオン。
 蓄積されたエネルギーが一気に火を噴き、レーザービームの一斉掃射で空間全てを吹き飛ばす。
「当機の心は随時アップデート中です。不正なアクセスをシャットします」
 オウガの力によって作られた、偽の感情などは彼女に不要。
 心も常に成長しているとでも言いたげに、再び表情を引き締めながら、次のミッションに備えて戦闘態勢を整えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花園・スピカ
●WIZ

欲望、ですか…
今までずっと外の世界から隔離されていたせいか、正直そういう感情自体があまりよく分からなかったりします

あ、でも新しい事を知る事はわくわくするというか
特に最近は様々な世界で見かけるカッコいい乗り物(※電車等)を見るとこう、胸が高鳴ったりとか…!(ぐっ

…でもこれが本当に『欲望』というものなのでしょうか?
知りたいと思う反面、古いものも新しいものもその全てを知る
なんて不可能であるのは重々承知の事
ましてや未来の事なんて誰にも分からない
それでも私を満足させたり飽きさせることが…はたしてできますか?

なんだか少し容量が増えた(多分鉄道写真で)気がするスマホを片手に、偽りの夢の国にさよならを



 過保護なまでに隔離され、外の世界を知らずに育った花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は、欲望といった感情自体がどういうものか、よく分からずにいた。
「あ、でも新しい事を知る事はわくわくするというか……特に最近は様々な世界で見かけるカッコいい乗り物を見るとこう、胸が高鳴ったりとか……!」
 そんな風に考えながら、外の世界に出てから初めて目にした乗り物を、脳裏に思い浮かべる度にスピカは次第に興奮し、無意識的に拳を握って力が入る。
 すると彼女の想いに反応したのか、景色が突如揺らいで変化して、そこには童話の世界らしい、メルヘンチックな姿の列車がスピカの前に現れたのだった。
「わっ! こんなところに立派な列車が!?」
 突然出てきた列車に驚き隠せず、スピカは目を輝かせながらすぐにスマホを取り出し、目にも止まらぬ速さでシャッターを切る。
 その時、列車のドアが開いて、中から可愛らしい黒いウサギの車掌がスピカに向かって手招きをする。
『さあ、早くしないと乗り遅れるよっ!』
 急かせる車掌にスピカは、迷うことなく、好奇心のままに列車の中へ飛び乗った。
 そうして一息吐いたところで周囲をぐるりを見渡せば。車内は豪奢なデコレーションが施され、まるで自分がお姫様になったような気分に錯覚してしまう。
 ふわふわ大きな椅子に腰を下ろしてゆったりと、寛ぎながら出発するのをじっと待つ。
 列車で旅をしながら行く先は、スピカにとっての理想の世界にきっと運んでくれるだろう。
「……でも、これが本当に『欲望』というものなのでしょうか?」
 窓から外の世界を眺めつつ、心に抱いた、ふとした疑念。
 知りたいと思う反面、古いものも新しいものも、その全てを知る。なんて、不可能なのは重々承知の事である。ましてや未来の事なんて、誰にも分かるはずはない。
「それでも私を満足させたり飽きさせることが……はたしてできますか?」
 ここが望み通りの世界であっても、人の心は絶えず移ろい、変わっていくもの。
 オウガの視せる楽園は、決して現実ではない、偽りだらけの夢の国。
 ――それではそろそろ、さよならを。
 スピカが席を立ち、手にしたスマホを翳すとまばゆい光が溢れ出し、列車は幻のように消えてゆく。
 せめて思い出だけでも、と。残した写真のおかげで容量が、何だか少し増えたスマホを仕舞い込み、別れを告げて少女は再び歩み出す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーヴァルド・リンドブロム
偽りのネバーランド、か
ひとの心に眠りし無邪気な夢、或いは欲望
それと折り合いをつけて現実を生きるのが、正しい姿なのだろう
しかし……時にそれを解放しても、問題あるまい
(大仰に片目を押さえる)

我が名はシーヴァルド、半魔の血と――瞳に呪われた刻印を宿せし者
ううッ、惑いの霧よ、ひと喰らいの悪鬼に支配されし幻想世界よ
俺の欲望を受け止めよ、共にグラン・ギニョールを演じるとしよう……!

欲望は「存分に厨二妄想に浸れる舞台」
オウガに支配されし悪夢こそが願望であり
苦痛にのたうち回りつつ、秘めし力に酔うことが至福
「くっ、鎮まれ邪眼……今はその時ではない……!」

そんな感じで、喜んでるんだぜ
敵は倒すぜ……

※ネタ歓迎です



「偽りのネバーランド、か」
 アリスラビリンスの地に降り立った途端、生温い風がシーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)の肌に纏わるように吹き抜ける。
「ひとの心に眠りし無邪気な夢、或いは欲望……。それと折り合いをつけて現実を生きるのが、正しい姿なのだろう」
 人は誰しも心の中に、夢という名の欲を持つ。そして多くの者は現実を識り、叶わぬ夢を心の隅に仕舞い込み、狭間の世界で葛藤しながら生きてゆく。
「しかし……時にそれを解放しても、問題あるまい」
 時間が経つにつれ、周囲に霧が立ち込める。シーヴァルドは腕を振るって霧を払い、その手で仰々しく右目を押さえ、身体を震わせながら昏き虚空を仰ぎ見る。

『我が名はシーヴァルド、半魔の血と――瞳に呪われた刻印を宿せし者。
 ううッ、惑いの霧よ、ひと喰らいの悪鬼に支配されし幻想世界よ。
 俺の欲望を受け止めよ、共にグラン・ギニョールを演じるとしよう……!』

 ダンピールの青年が、空に向かって吼え猛る。
 その瞬間、風が嵐となって吹き荒び、黒い外套がバサバサと、翼のように大きく靡く。
 其れは彼の秘めたる力の顕現か――渦巻く狂気に呼応して、空から赤い光が降り注ぐ。
 右目を押さえる指間から、彼の瞳が見たモノは――その目と同じくらい鮮やかな、紅く染まった月だった。
 呪われし血の力が発動し、溢れる魔力の奔流が、シーヴァルドの全身を蝕みながら、激しい苦痛に襲われる。
 決して宿命からは抗えず、呪いに苦しみ悶え、のた打ち回るシーヴァルド。
 だが彼は、力を使う行為自体に陶酔し、この状況すらも愉しむように、悦に入る。

 ――オウガが生み出すこの領域は、心に抱く欲望を、具現化させる力を宿す。
 言うなれば、今のシーヴァルドもまた、彼が望んだ世界の中で、自身の欲望を満たしているのだ。
『存分に厨二妄想に浸れる舞台』――オウガに支配されし悪夢こそ、シーヴァルドが心の底から願った夢なのである、と。
「くっ、鎮まれ邪眼……今はその時ではない……!」
 抑え切れずに噴き出るオーラが、禍々しい彩を纏って一気に放出。
 赤い光がドーム状に膨れ上がって世界を呑み込み――やがて光が消えると同時に、欲望を増幅させる霧も晴れ、その先で、彼を待ち受けるのは――血濡れた茨の道だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

赫・絲
かいちゃん(f00067)と

欲望、かー
……うーんこの先ちょっと別々に行く?
ワケにもいかないよねー、あー何でもないよ
ま、後のお楽しみってコトで!
……あんまり楽しーものでも、ないケド

・欲望
生まれたその瞬間から身に負う呪により命の先を縛られているため、少しでも長く生を望む『生きたがり』

知られるつもりはなかったんだけどねー、……仕方ないか

折角「はい、長生きできますよー」って言われたってさ
ここじゃ結局檻の中ってワケでしょ?
そんなの──今と何一つ変わらないそんなモノ、何の意味もありやしない
そんな微睡で満足できる程、飢えてないと思った?
残念だね

行こうか、かいちゃん
くだらない檻もオウガの筋書きも、ぶち壊しに


壥・灰色
いと(f00433)と

欲望、ねえ
余り自覚できるものはないけれど
いとにはあるかい? 欲しくなるようなもの
……まあ、言わなくても、一緒にいたらイヤでも見ることになりそうだけどね

・欲望
破壊欲求
元々戦闘用のホムンクルス『魔剣』として鋳造されたため、潜在的な破壊衝動を持つ


――ああ、なるほどね
自分に関しては、納得したけど

あとで少しだけ話しようか。いと
もう、知ってしまったからね

さて、おれを満たせるかな
影の殺し屋も、出してくれる破壊対象も
その全部をぶち壊しても、きっと満足できない
なぜって、おれはオウガを殺しに来たのだから
アリスを助けに来たのだから

壊鍵、起動

さあ、行こう、いと
おれたちの助けを待っている人の元へ



「欲望、ねえ。余り自覚できるものはないけれど……。いとにはあるかい? 欲しくなるようなもの」
 人の欲望を実現する場所と聞き、自分が欲するモノは何だろうかと壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が思案しながら、徐に、隣に連れ添う少女に話を振ると。
「欲望、かー。……うーんこの先ちょっと別々に行く? ワケにもいかないよねー、あー何でもないよ」
 赫・絲(赤い糸・f00433)は一瞬黙って考えた後、一緒にいるのは気まずくなると思ったか、思わせぶりな態度を取りつつ、目線を逸らす。
「ま、後のお楽しみってコトで! ……あんまり楽しーものでも、ないケド」
 一緒に行動するということは、自分の欲も赤裸々に、相手に知られてしまうだろう。
 とは言えここまで来たら、覚悟を決めていくより他にはない。
「……まあ、言わなくても、一緒にいたらイヤでも見ることになりそうだけどね」
 絲の気持ちを察したか、灰色もそれ以上は聞くつもりはない、と。目の前にある、深い霧の奥へと視線を移す。

 ――ここから先は、オウガの領域でもある欲望の園。
 人によっては、願いを叶えてくれる楽園みたいな夢の世界。
 だがこの箱庭に囚われた者は皆、醒めない夢を視ながら人喰い悪鬼の餌として、無残な最期を待つだけだ。
 『死』は誰の許にも平等で、遅かれ早かれ、その運命から逃れる事など出来はしない。
 ――それでも絲は希う。
 生まれたその瞬間、絲の名が与えられたその日から、彼女の全ては定められていた。
 その身に背負う、呪いによって命の先を縛られてしまっているが為、少しでも長く生を全うしたいと望む――『生きたがり』。
「知られるつもりはなかったんだけどねー、……仕方ないか」
 彼女はそうした自身の宿命に、ただ流されるまま今日までずっと生きてきた。
 絲の周囲には、視えない無数の糸が張り廻らされ、蜘蛛の巣状に広がる世界を形成し、頭上に浮かんだ黒雲は、巨大な蜘蛛の姿となって、彼女が逃げないように監視する。
 もしも彼女が望むなら、このままずっと生き続ける『だけ』は出来るだろう。
 しかし果たしてそれが本当に、幸福なのだと言えるだろうか――。

 少女の『世界』を横目で一瞥しながら、灰色は自分自身に意識を向けて、心の中で問い掛ける。
 彼の生命は人の手により、造られた。
 とある魔術組織が生み出した、戦闘用のホムンクルス――『魔剣』と呼ばれる人造人間こそが、灰色である。
 人為的に錬成された存在故に、心は希薄で感情乏しく、しかし唯一強く抱くのは、戦闘兵器としての潜在的な破壊衝動だ。
「――ああ、なるほどね。自分に関しては、納得したけど」
 感情を伴わない声色で、表情を変えることなく、この領域で起こる事象を受け入れる。
「あとで少しだけ話しようか。いと。もう、知ってしまったからね」
 そう言って、少女に視線を送って合図して。裡から溢れる欲望を、どれだけ満たせるものかと自身の力を発動させる。
「壊鍵、起動――」
 意識の底から込み上げてくる、『魔剣』としての闘争本能。灰色の胸に刻まれた、魔術回路がまばゆい銀の光を帯びて浮かび上がる。
 循環された魔力が拳に集中。繰り出す拳の衝撃が、絲の世界に蔓延る不可視の糸を吹き飛ばす。
 だがそれでも灰色の、破壊衝動は心に燻り続けて、満たされることは決してない。
 何故なら彼は、オウガを殺しにやってきたから。そしてアリスを助けに来たのだから。

「さあ、行こう、いと。おれたちの助けを待っている人の元へ」
 こんなところでいつまでも、無駄に命の時間を潰すわけにはいかない、と。
 促す彼の言葉に、少女はハッと我に返って、照れ臭そうに苦笑する。
「折角『はい、長生きできますよー』って言われたってさ。ここじゃ結局檻の中ってワケでしょ?」
 ここに留まり続けなければいけないのなら――今と何一つ変わらないそんなモノ、何の意味もありやしない。
 何よりも、この命だけは誰のものでもない、私だけのものなのだから。
「そんな微睡で満足できる程、飢えてないと思った? 残念だね」
 グローブを嵌めた人差し指を、天に向かって突き刺して。指を伝って放たれる、一筋の糸が監視の蜘蛛を貫き、穿つ。
 そうして雲が消えると同時に、世界が晴れて光が射し込み――絲は微笑み携えながら、小さくコクリと頷いた。
「行こうか、かいちゃん。くだらない檻もオウガの筋書きも、ぶち壊しに」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナギ・ヌドゥー
SPD
ぼくの欲望はたった一つしかありません。
抑えても抑えても湧き上がってくるこの殺戮衝動……。
人としての理性を捨て、こいつを開放してやればどんな悦楽を味わえるのか……。

――だけどオウガの見せる悪夢じゃ到底満足できなさそうですねぇ。
所詮、夢は幻に過ぎません、虫でも殺す方がマシですよ。

それに殺す敵を決めるのはいつだって己自身だ、オウガの指図など受けん。
こんな茶番ではない本物の殺戮劇を味わいたい。だから早く姿を現せオウガ共!



 幼少時代を奴隷として虐げられたナギ・ヌドゥー(殺戮の狂刃・f21507)は、強制的に人体改造された身で、当時の記憶は消されているが、心の傷は今も尚、深く彼の深層意識に蔓延っている。
「ぼくの欲望はたった一つしかありません」
 普段は柔和な少年を装っているナギではあるが、改造によって引き起こされた『病』が蝕み、闇が心を呑み込んでいく。
「抑えても抑えても湧き上がってくるこの殺戮衝動……。人としての理性を捨て、こいつを開放してやればどんな悦楽を味わえるのか……」
 ナギの残酷無比な本性が、目覚めて露わになった時。その快楽に溺れそうになる自分を自覚する。だから残った理性を保とうと、殺しの対象だけは『暴力を厭わない者』のみとして、縛りを掛けて己を維持している状況だ。
 けれども、欲を叶えてくれるこの世界なら――衝動に流されるが儘に、善悪問わず力を揮えることができるだろう。

 ――彼の前には、罪なき無辜の民たちがいる。
 武器すら持たない彼らを、手にしたナイフで斬り裂いたなら――嗚呼、どれほどまでの快楽に、酔い痴れ、愉悦できようか。
 か弱き民を惨殺しようと、ナギがその一歩を踏み出した時――何かが服を引っ張って、彼は一瞬足を止める。
 そこにいたのは、幼い頃の自分の幻影。殺戮衝動に侵されていく日々の中、人の心を失う恐怖に怯えていた少年が、訴えるような目でナギを見る。
「……こんなオウガの見せる悪夢じゃ、到底満足できなさそうですねぇ。所詮、夢は幻に過ぎません、虫でも殺す方がマシですよ」
 衝動の儘に命を殺めることを、思い留めてくれたのは、過去の自分自身の心の声だ。
「それに殺す敵を決めるのはいつだって己自身だ、オウガの指図など受けん」
 この場所はまやかしでしかなくて、オウガの檻に閉じ込められた世界など、決して望むことなど出来はしない。
「こんな茶番ではない、本物の殺戮劇を味わいたい。だから早く姿を現せ、オウガ共!」
 抑え切れない殺意が波動となって、裂帛の気合と共に幻の世界を掻き消していく。
 ナギの銀光帯びた瞳が見つめる先は、ただ一点。
 その奥にいる、人喰い悪鬼をただ殺したい――ナギは祈りを捧げるよう、ナイフを持つ手に力を込めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『影縫い・シャッテンドルヒ』

POW   :    これは君を飲み込む影の群れ
【紐付きのナイフ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【レベル×1の自身の影】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    僕らは影、君の命を刈り取る影
【漆黒の影】に変形し、自身の【意思や心情】を代償に、自身の【攻撃力と影に溶け込み影伝に移動する能力】を強化する。
WIZ   :    僕らの狩場、君の墓場
戦場全体に、【影に覆われた暗い街】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:朱夏和

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――おや、アリス。どこへ行こうとするんだい? まさかここから出られるとでも?

 一人の小さな少女が、息を切らせながら全速力で走って逃げる。
 こんな場所、わたしは全然、望んでなんかいない。
 この世界は、楽しい夢の国なんかじゃ決してない。
 だからわたしは夢から醒めて、現実の、自分の故郷に帰るんだ。

 アリスが必死に、悪夢の霧の外へ出ようと駆け抜ける。しかし彼女の後を追うように、背後から、男の影が音を立てずに忍び寄る。

 ――このネバーランドから、誰も生きては帰さない。

 どれだけ引き離そうと走っても、男は離れることなくアリスの後を付いてくる。
 何故なら彼らは、少女の影と一体化しているのだから。
 そうやって、アリスを苦しめるだけ苦しめて、諦めたところを捕まえて、後はオウガの女王に引き渡す。
 影の男の凶刃が、やがてアリスに伸びようとしたその直後――。
 彼女を救出すべくやってきた、猟兵たちがアリスに追いつき、彼女の身柄を確保した。

 さあ――これから先は、アリスと一緒に猟兵たちが反撃する番だ。
 まずは追跡してくる影の殺し屋たちを迎え撃ち、狂った悪夢の世界を断ち切ろう。
白斑・物九郎
●POW



●アリスへ
鬼に追われてばっかの獲物の役も、いい加減飽きたんじゃニャーですか?

おたくもいっぺん狩人になってみなさいや
特別に世話してやりまさァ

おうガキ、名前は?
おたくは今から、おたくも今から、ワイルドハントの猟師の一員ですわ


・アリスへ『自身は安全な奥に陣取る』ことを意識した上で、全力で『ガラスのラビリンス』を展開するよう依頼

・迷宮は複雑でも構わない
・迷宮の構造、敵の位置と襲来方角、それら全てを【野生の勘】で把握せん

・敵襲来は、投げナイフの軌跡も読み易い一本道で逐次待ち受け迎え撃つ(地形の利用)
・ナイフは【ヒートドライブ(炎の[属性攻撃])】の左手で掴み止め、紐に炎を伝え遡らせ、影縫いを焼く


花園・スピカ
共闘〇

い、いや私も多少は楽しませて頂きましたがっ!(スマホを慌ててポケットにしまう)
それでも貴殿方の身勝手な欲望に付き合わされる道理はありませんので…!

アリスに同行し保護優先
【高速詠唱・先制攻撃】で相手より先にUC発動し封印

【学習力】で相手の動きを観察しつつ【第六感・見切り・地形の利用】で相手の攻撃を回避
避けきれない分やアリスへの被弾は【咄嗟の一撃・オーラ防御・激痛耐性】で致命的な被弾を抑える

自身や仲間に負傷が蓄積した場合は【優しさ・コミュ力】でアリスに協力を求める
「慣れない力の発動は少々疲れるかもしれませんが、どうか力を貸してはもらえませんか…?」

余裕あれば【破魔・属性攻撃・二回攻撃】で攻撃



「何だいアンタらは……? 『アサイラム』から来た、ってワケじゃなさそうだ」
 猟兵たちの姿を見るなり、殺し屋たちは怪訝そうに顔をしかめて彼らを睨む。
 しかしこの世界に来ている以上、きっと彼らも女王に招待された『客人』なのだと。
「すぐにお帰り願うわけにはいかないのでね。もう少し、楽しんでいってもらおうか」
 ならばアリスの少女と同様に、一緒に女王の元に連行しようと襲い掛かってくる。
「い、いや……確かに私も多少は楽しませて頂きましたがっ!」
 スピカは夢の世界で列車の写真を撮ったスマホを、ポケットの中に慌てて仕舞い、敵を迎え撃つべく身構える。
「ふえぇ……お姉ちゃんたちは、誰……?」
 どこからともなく現れた、猟兵たちにアリスの少女は、事態が分からず目を丸くする。
 そんな少女にスピカは微笑みかけながら、一緒にここから逃げましょう、と優しく声を掛けつつ、アリスを庇うように前に立つ。
「慣れない力の発動は少々疲れるかもしれませんが、ここは一つ、どうか力を貸してはもらえませんか……?」
 協力を求めるように呼び掛ける、スピカの言葉にアリスはキョトンと不思議そうな顔をして。そこへ白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が言葉を続け、一緒に戦うように少女を説く。
「鬼に追われてばっかの獲物の役も、いい加減飽きたんじゃニャーですか?」
 甘い夢から目覚めたその先で、少女を待っていたのは過酷な現実(リアル)。
 このまま黙って飼い馴らされた儘、オウガの餌にされる運命を、アリスは望んでなんていないだろう。
「おたくもいっぺん狩人になってみなさいや。特別に世話してやりまさァ」
 自分の道は己の力で切り拓くもの。物九郎の言葉にアリスは心を動かされ、大きく頷きながら猟兵たちと共に戦う決意を強く抱く。

「おうガキ、ところで名前は? おたくも今から、ワイルドハントの猟師の一員ですわ」
 少女の覚悟に、ニヤリと笑う物九郎。一緒に戦う以上、名前の方が呼びやすい、と訊ねる彼に――『レム』、とたった一言呟くように、少女が答える。
「それではレムさん、お願いしますね。大丈夫です、私たちも付いていますから」
 スピカも少女を励ますように声を掛け、微笑み浮かべる表情を、引き締め直して魔力を高め、迫る殺し屋たちに向かって狙いを定める。
「貴殿方の身勝手な欲望に付き合わされる道理はありませんので……!」
 高速詠唱しながら、黄金色の魔鍵を空に突き刺すように掲げると。蒼石が輝き放って光を編んで、しなやかな魔法の絹紐が、影の殺し屋たちの手足に巻き付き、動きを封じる。
「見た目は軟弱でも私の命がかかっていますので……簡単に抜け出せるなどとは思わないことです!」
 魔力を注ぎ続けることで、スピカの生命力も削られてしまう。それでも止めるわけにはいかないと、スピカは意識を集中させて、戒めの枷(グレイプニル)で殺し屋たちの罪を裁くが如く四肢を断つ。
「ッ……!? 小癪な真似を!」
 仲間が討たれ、影縫いたちは猟兵たちの力に脅威を覚える。
 これ以上、この連中に好き勝手な真似をさせてはいけない。男は紐で括ったナイフを、アリス目掛けて投げつける。しかしその前に、立ち塞がった物九郎が刃の軌道を読んで、素手でナイフを掴み取る。
 物九郎の掌に、刃が食い込み、血が落ちる。レムが祈りを捧げると、聖なる光が溢れて物九郎の左手の傷を瞬時に癒す。
 影縫いたちは更に息も吐かせぬ攻撃で、自身の影を分身させて物九郎たちを襲う。
「ザ・レフトハンド――【属性攻撃・炎】ON」
 ナイフを握る物九郎の左手に、白い虎縞模様が浮かび上がって炎を宿す。
 滾る炎はナイフに結んだ紐を伝い、遡っていく炎の波が、影縫いの身体をあっという間に呑み込んで――灼かれた体躯は灰と化し、分身諸共、跡形残らず消え散った。
「わぁっ、お兄ちゃんたち、すっごく強いのね!」
 物九郎たちの活躍に、レムが瞳をキラキラさせて大はしゃぎする。
 この人たちと一緒なら、元の世界に戻れることも夢ではない、と。
 どれだけ追手が来ようと振り切って、必ず帰ると――少女の新たな希望がまた一歩、現実世界に近付いてゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

赭嶺・澪(サポート)
基本部分はプロフィール参照

戦闘行動する時は『アサルトブラスター』を使用。モードはその状況に応じて切替。
近くにいる敵を暗殺、至近距離での攻撃の際は『ナイフエッジ』
遠くにいる敵を暗殺、攻撃する際は『スナイプソルジャー』
潜入・隠密工作する際は『ステルスソルジャー』
探索・攪乱する際は『ドッペルゲンガー』
やむを得ない場合は『SOM Mk-25』での非殺傷弾によるマヒ・気絶行動。
後は状況に応じて臨機応変。

専門は主に潜入・捜査・破壊工作。
他の猟兵に迷惑をかける行為は無し。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。(目的である敵に対してはその限りではないが、常識の範囲内で)

アドリブ歓迎。


サラ・メリータティ(サポート)
「はわわ」「献身的」「友好的」「前向き」「サポート気質」
NG項目なし、回復、補助タイプです
これにより同行者が酷い目に合うのは申し訳ないので気軽に流して大丈夫です

回復の事や補助、精神的ケアなら任せてくださいな妖狐です
困っている人のお役に立ちたいです
力仕事や走ることは苦手ですが、細かいことは結構得意
頼まれたら断れないタイプ

とりあえず「はわわ~」や「はわわっ」をよく言います
はわわですが「ドジっ子ではない」
真面目な時はちゃんとやり、楽しむ時はしっかり楽しみます
人を助けるという覚悟が決まっていてたとえ捨て身であろうとも救助にあたります

不思議な鞄にはお菓子や冒険に役立つ素敵なものが沢山詰まっています



「はわわ~! 怖い殺し屋さんが襲ってくるのです!」
 アリスラビリンスに駆け付けるなり、女王の配下の襲撃を受けたサラ・メリータティ(はわわヒーラー・f00184)は、急いで武器を取り出し、身構える。
 戦闘では主に後方支援で回復役を担うサラではあるが、アリスの少女を助ける為なら、例え我が身を犠牲にしてでも――戦いに臨む以上は覚悟を決めて、影縫いたちの攻撃を、迎え撃とうと手にしたメイスに力を込める、その直後――。
「悪いけど、思い通りになんてさせないわ」
 どこからともなく颯爽と、赭嶺・澪(バレットレイヴン・f03071)が間に割り込み、影縫いたちと対峙する。
「生憎と、暗殺は私も得意分野なの。だからそっちの手の内も、全てお見通しってわけ」
 影縫いたちをサラに近付けさせないよう、澪は短機関銃のトリガーを引いて、威嚇射撃する。
 澪の奇襲によって、影縫いたちは一旦後ろに下がって距離を置き、両社とも互いの出方を窺いながら、戦いは一進一退の攻防が繰り広げられていく。

「……貴様、どうやら只者ではないな」
 影に潜んで猟兵たちの隙を衝こうとする影縫いたちだが、澪は相手の動きを先読みし、地面に仕掛けた爆薬が、見事に嵌って、回避できない影縫いたちを吹き飛ばす。
「こう見えても、小さい頃から戦場を渡り歩いてきたからね。貴方たちとは、踏んできた場数が違うわよ」
 左手に銃を、右手にナイフを握り締め、澪は殺し屋たちを相手に一歩も引かず、怯むことなく立ち回る。
「はわわ~がんばってください!」
 片や、支援に徹するサラは自身の生命力を代償に、力を澪に注入させて、彼女の戦闘力を増幅させる。
 それは神に仕えるサラが用いる、眠りし力を覚醒させる秘奥。運命の加護を得た澪は、真紅と翡翠の、異なる彩の瞳を光らせながら、ナイフに全ての力を集中させて、迷うことなく疾駆する。
「くっ……! これでも喰らえ!」
 男が投じた紐付きナイフを、身体を捻って躱す澪。そうして一気に距離を詰め、渾身の力を込めて、手にしたナイフを振り抜いた。
「――斬る!」
 奔る刃の一閃が、男の喉を切り裂いて。吹き出す真っ赤な血飛沫が、地面に広がり――力尽き、斃れる男の身体が血溜まりの中に沈み込む。
「はわわっ、やりましたね! 残りもさっさと片付けましょう!」
 敵を一体倒したことで、サラも一層やる気が漲ってくる。
 悪夢の世界に蔓延る鬼を、一体残らず仕留めて平和な夢を取り戻す為――二人は互いに協力し合い、女王の配下の殺し屋たちを退けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァルハイト・グレイ(サポート)
 ドラゴニアンの竜騎士×パラディン、23歳の男です。
 普段の口調は「男性的(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)」、仲間には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「やれやれ、どうやら間一髪ってところだな」
 オウガの女王の配下に狙われる、アリスの少女の窮地に出くわすヴァルハイト・グレイ(ドラゴニアンの竜騎士・f22964)。
 逃げる少女の背中を追う、殺し屋たちの前に立ちはだかって、槍を片手に迎え撃つ。
「俺が時間を稼ぐから、お嬢ちゃんは早く遠くにでも逃げな」
 後は自分に任せろと、少女に目配せをするドラゴニアンの青年に、少女は否定するかのように首を大きく横に振る。
「やだ、わたしも残って戦うの!」
 少女の力強い意気込みに、ヴァルハイトは苦笑しながら、頼もしそうに目を細め。
 だったら一緒にやっつけようぜ、と気合を奮い立たせてアリスと共闘するのであった。
「我々の邪魔をするな!」
 影縫いたちが投じるナイフの狙いは、容赦なく、アリスの少女に向けられる。
 ヴァルハイトは咄嗟に割り込む形で少女を庇い、槍を回転させてナイフを受け止め、刃の軌道を逸らして弾く。
「そう簡単にはやらせない。コイツはお返しだ」
 ナイフを弾き飛ばしたその槍を、今度はヴァルハイトが影縫い目掛けて投げつける。
 一直線に投擲された一撃は、見事に男の肩を刺し貫いて。槍を必死に引き抜こうとする影縫いに、ヴァルハイトがドラゴンを召喚させて畳み掛ける。
「炎に灼かれ、跡形残らず消えるがいい」
 竜の口から噴き出す炎の嵐が、男をあっという間に呑み込んで――劫火に燃える影縫いの、身体は黒く焦げ落ち、崩れた骸は灰と化す――。

成功 🔵​🔵​🔴​

シーヴァルド・リンドブロム
悪夢の国から逃げ出す少女を、生きては帰すまいと忍び寄る影
ああ、まるで黄泉比良坂の神話をなぞるようだ
アリス……否、レムと言うのか
微力ながら、俺も助太刀するぞ
(まだ妄想に浸って、くっと片目を押さえながら)

レムを守るように前に出て、血統覚醒を発動
能力を上げつつ、迫る影のナイフを黒剣でなぎ払う
影と一体化し、逃げても追って来るのならば倒すまでだ

そう……迫る影の正体が分からぬからこそ、恐怖する
しかし夢から醒め、現実に帰ると決意したのならば
その想いこそが光となって、影の正体を暴くのだろう

それこそがレム、お前の強さなのだ
生まれながらの光で傷を癒して貰いつつ
彼女の帰還を阻む影を、串刺しにしていこう

※ネタ歓迎です


ナギ・ヌドゥー
奴らの狙いはこのアリスか、なら今はこの娘を守る事が優先される。
……子供を守りながら戦うなんて似合ってない、かな……。
オレの本性は全てを捨てて殺しの快楽に溺れたがっているというのに。
血に酔い己を見失わなければいいが……。

敵の紐付きナイフには武器・邪絞帯で対抗、
ナイフを絡め捕り攻めを防ぎつつ斬り込んでいく。
アリスへの攻撃は【かばう】と同時にUC発動。
この娘への攻撃は全て反射する、お前らでは一生触れる事すら出来ん!
と【呪詛】を込めた【精神攻撃】。
攻め手を失わせ【誘導弾】で撃ち殺す。



 ――悪夢の国から逃げ出す少女を、生きては帰すまいと忍び寄る影。
 オウガの王女が支配する、ネバーランドからは誰一人として戻った者はいない。
「嗚呼……まるで黄泉比良坂の神話をなぞるようだ」
 ここは生者と死者との境界線。夢の世界に閉じ込められた哀れなアリスは、今はただ、死を待つだけの生ける屍のような存在なのだと、憐憫の眼差しを向けるシーヴァルド。
「アリス……否、レムと言うのか。微力ながら、俺も助太刀するぞ」
 先程まで視ていた自身の夢に、未だ浸っているだろうのか。シーヴァルドはクッと片目を押さえて、芝居がかったように大袈裟に振る舞ってみせる。
 そんなダンピールの青年に、アリスの少女は屈託のない笑顔で『よろしくねっ!』と、明るい調子で言葉を返し。シーヴァルドも釣られるように薄ら笑みを漏らしつつ、少女を守るように、マントを靡かせながら前に出る。
「奴らの狙いはこのアリスか。なら今は、この娘を守る事が優先される」
 少女に迫る殺し屋たちを視界に捉え、戦闘に備えるナギだが、抱く思いは複雑だ。
「……子供を守りながら戦うなんて似合ってない、かな……」
 強制的に改造された肉体は、殺戮による血を求め、殺しの快楽に溺れたがっている。
 抑え切れないこの衝動に、一体どこまで抗うことができるのか……。
 せめて己を見失わないようにと、ナギはケースの中から薬を取り出し、口に含んで逸る心を落ち着かせるのであった。

「ここは女王の領域、僕らの狩場――そして、君たちにとっての墓場になるのさ」
 影縫いたちが力を発動させると、周囲を影で覆い尽くして建物の形を作り上げていく。
 それは影で形成された昏き街。複雑に入り組んだ道は迷路の如く、猟兵たちの行く手を阻み、動きを制限させてしまう。
「いちいち壊していたら、骨が折れそうだ。ならばこの呪われた血を……禁忌の力を解放せざるを得ないということか」
 唇から紡ぐ言葉を震わせながら、シーヴァルドは顔を歪めて身悶えし――腕に巻かれた包帯が、意思を持つかのように解けて眠れる力を覚醒させる。
「そう……迫る影の正体が分からぬからこそ、恐怖する」
 シーヴァルドが言ったその意味は、単なる敵に対してだけでなく、自身を苛む血の宿命も含まれているのだろうか。
 身体に流れる吸血鬼の血、忌むべき力に怯えながらも、運命と向き合いながら彼は今日まで生きてきた。
「しかし夢から醒め、現実に帰ると決意したのならば――その想いこそが光となって、影の正体を暴くのだろう」
 悪夢の迷路に囚われた、アリスの少女に、シーヴァルドは嘗ての自分を重ねて見ているのかもしれない。
 彼の赤い瞳は更に妖しく輝いて、真紅に染まった双眸は、闇の血族の力に目覚めた証。
 半魔としての本性を、少女の前で曝け出そうと、シーヴァルドは血の欲望に流されることなく、仰々しい立ち振る舞いも却って威厳を感じさせる程である。
「それこそがレム、お前の強さなのだ。生まれながらの聖なる光で、往くべき道を照らすが良い!」
 闘志を滾らせながら黒剣を振るい、迫る影のナイフを薙ぎ払う。と同時に刀身が、影と一体化して相手を逃さず追尾する。
 描く刃の軌跡は円環の蛇――伸縮自在の黒剣が、心臓を喰らうが如く貫き穿ち、少女の帰還を阻む影を串刺しにする。

 同胞が何体倒れようとも、影縫いたちは最後の一体になるまで猟兵たちに襲い掛かる。
 レムを狙って撃ち込まれるナイフの雨に、ナギが身を挺して盾となって彼女を庇う。
 刃が四肢を掠めて血が滲む。しかしナギは眉一つすら動かさず、手に巻き付けていた包帯に、血が染まって吸収されると、呪いの紋様が浮かび上がって自在に操ることのできる武器と化す。
「この娘への攻撃は、オレが全て受け止め、反射する。お前ら如きでは一生触れる事すら出来ん!」
 影縫いたちに向かって、気炎を上げて吼えるナギ。
 ナイフに括った紐を掴んで、引っ張り、手繰り寄せ。血染めの帯に呪詛を込め、伸ばした帯を相手の首に絡めて、絞め付ける。
「悪いけど、手加減なんてしてあげられない。だから……ひと思いに殺してあげる」
 敵は自分と同じくらいの少年だろうか……だが戦いの中では余計な感傷など必要ない。
 暗殺者の喉を絞め上げる、帯を持つ手に一層力を込めながら。ナギは表情を崩さず、苦しむ相手の姿を冷たい瞳にただ映すのみ。
 ――そうしてまた一体、敵は動かなくなり、息絶えた。
 影の迷宮から抜け出せるまで、後一歩。出口はすぐ近くまで見えている――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
絲(f00433)と

――殺し屋か

ハッ、と失笑めいて息を漏らし

――教えてやる。殺しとは、どういうものか
おれは破壊するために生まれた『魔剣』
最凶最悪の六番器

両腕に圧倒的な量の魔力が籠もる
両肘から余剰魔力が牙めいて突出
両腕が蒼白く輝き、帯電したようにスパークを散らす


討ち漏らしを殺せ。一匹残らずに

傍らの少女に言うなり、獣の如く跳ねる
迷路に閉じられようとも構わない。追い詰める狩り場として迷路を展開したつもりだろうが、むしろお前らの逃げ場を減らしてくれて好都合
魔力を満たした両腕より、最高速の葬送歌、瀑布のごとき拳の嵐を放つ
一打一打が大岩を撃砕するほどの威力を備えた『衝撃』の拳

抗って見せろ
踏み潰してやる


赫・絲
かいちゃん(f00067)と

あっ、ちょっとかいちゃん!
もーしょうがないなー

アリスのことは他の猟兵達が対応してくれてるみたいだし、
言われなくても後片付けはするよ
醒めない夢は、夢なんかじゃないからね

迷路に閉じ込められようと、お前達がこっちを狙いに来るには変わりないでしょ?
相手の動きはしっかりと【見切り】隙は少しだって逃さない

かいちゃんの死角にあたる部分を中心に鋼糸を展開
彼の拳から逃れた標敵を鋼糸の檻に閉じ込める

捕らえた糸から離しはしない
【属性攻撃・全力魔法】で糸を伝う雷を最大出力に

こっちの方が殺りやすそうとか思った?
残念だったね、見縊られるのは心底嫌いなの



 猟兵たちの前に立ち塞がるのは、影縫いたちの手により生成された、影の街。
 高く聳える壁はそう容易く乗り越えられそうになく、狭い通路は行く手を阻むが如く、複雑なまでに入り組んでいる。
 そこを進んだ先にある、たった一つの出口を探そうと、灰色は絲と一緒に街の路地裏を駆け抜ける。
 ところが影の迷路に足止めされる、その背後から、残った殺し屋たちが逃亡者を抹殺すべく襲い掛かってくる。
「――殺し屋か」
 灰色の褪せた瞳に敵の姿が映り込む。彼は出口に向かう足を止め、ハッ、と失笑めいて息を漏らし、焦ることなく魔術回路を発動させて戦闘態勢に移行する。
 灰色たちはただ逃げていたわけではない。いつでも敵を迎え撃つべく備えていたのだ。
「――教えてやる。殺しとは、どういうものか」
 彼は破壊を齎す為に生まれた『魔剣』――その中でも最凶にして最悪たる『六番器』。
 ここなら持てる力を存分に、揮えることが可能であると。神経回路と同調させた魔力が全身中を循環し、脈打つ鼓動が高まるにつれ、魔力も呼応するかのように更に強さを増してゆく。
 ――両腕に圧倒的な量の魔力が籠もる。
 ――両肘からは、余剰魔力が牙めくように鋭く突き出す。
 その両腕が、蒼白く輝き放って、帯電したかのように火花を散らす。
「絲。討ち漏らしを殺せ。一匹残らずに」
 それだけ言って、灰色は振り向くことなく、敵に向かって真っ正面から飛び掛かる。
「あっ、ちょっとかいちゃん! もーしょうがないなー」
 呼び止める間もなく突撃していく灰色に、絲は肩を竦めて、半ば諦め気味に息を吐く。
「言われなくても後片付けはするよ。醒めない夢は、夢なんかじゃないからね」
 彼の行動は分かっていた。だから自分は、灰色が戦い易いように援護するだけだ。
 絲の淡紫の双眸が、相手の動きを捉えて、僅かな隙も見逃さない。
 後は仕掛けるタイミングを図るだけ、と。指先から伸びた鋼糸が、影に熔け込みながら迷路の中に広がっていく。

 ――影の迷路に反り立つ壁を、足場代わりに跳ねる姿は、戦いに餓えた獣の如く。
「追い詰める狩り場として迷路を展開したつもりだろうが、むしろお前らの逃げ場を減らしてくれて好都合」
 相手の領域すらも利用して、飛び交う敵のナイフを摺り抜けながら、戦場におけるイニシアチブを奪う。
 この灰色という存在は、正に戦うことに特化され、破壊を求めて生きている。
 『魔剣』の名を持つその本性が、影の殺し屋相手に牙を剥く――。
「今からおまえを、死ぬまで殴る」
 魔力を満たした両腕が、まばゆく光って狙いを定め、一体の影縫い目掛けて拳を放つ。
 繰り出される拳打の嵐は、瀑布の如く。
 一打一打が大岩を撃砕するほど、重い威力を備えた『衝撃』の拳。
 大気を震わせ、奏でる音は――最高速の葬送歌。
「抗って見せろ。踏み潰してやる」
 烈しい拳の雨に打たれる影縫いの、身体が宙に吹き飛ばされて、迷路の壁に叩きつけられる。更にその勢いで、迷路の一部が崩れ落ち、斃れた影の殺し屋は――二度と起き上がることなく、息絶えた。
 ――これで残るは後一体。
 灰色の拳を逃れた影縫いは、彼の強さに警戒心を抱いたか、ならばと絲を狙ってナイフを飛ばす。
 だが少女には、相手のそうした姑息な手など、全てお見通しで想定内の範疇だ。
 鋼糸を伸ばした指先が、嫋やかに弧を描きながら、糸で絡めるように捕縛する。
「こっちの方が殺りやすそうと思った? 残念だったね、見縊られるのは心底嫌いなの」
 相手に向けたその眼差しは、小さな怒りの色を帯び――絶対離してなんかあげないと、最大出力させた雷が、糸を伝播し、そのまま敵を感電させる。
「びりびり、する?」
 小悪魔的な笑みを浮かべつつ、全力で魔法を展開させる絲。
 糸を伝って紫電が奔り、鋼糸の檻に閉じ込められた影縫いは、全方向から迫る雷撃に、抗うことすらできなくて――恐怖に怯えた断末魔を響かせながら、のた打ち回って最期は動かなくなり、尽き果てる。

 ――斯くして全ての配下を倒し終え、影の迷路も同時に消滅。
 猟兵たちとアリスの少女の前には、出口に通じる大きな扉があるのみだ。
 後はこの扉を開けば、悪夢のようなこの世界ともおさらばだ。
 そうしてアリスが扉に手をかけ、開いて中に入ったその先で、待っていたのは――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『拷問王妃エリザベート』

POW   :    さあ、調教の時間だよ!
【死角から突如として出現する拷問磔台】が命中した対象に対し、高威力高命中の【拷問器具(形状は毎回変わる)による攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    足掻け、足掻け! もがき苦しみ屈服するがいい!
【締め付けにより骨を砕く拘束ベルト】【目隠しと猿轡】【焼けた鉄の靴】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    お前の痛みと苦しみが、全て私の糧となるのよ!
【痛みや苦痛、恐怖といった負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【有刺鉄線のような鋼の茨の塊】から、高命中力の【苦痛を快楽に変え、生命力を吸収する鋼の茨】を飛ばす。

イラスト:淑

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠パトリシア・パープルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 元の世界に戻れる扉を開いた、その瞬間――そこには黒衣を纏い、妖艶な雰囲気を醸す女性が猟兵たちを待っていた。
「私の国から脱走するなんて、どれほど大きな罪を犯しているのか、お分かりかしら?」
 彼女こそ、この悪夢の国の支配者たるオウガ――『拷問王妃エリザベート』だ。
 無垢なアリスを捕まえて、夢の国から一生抜け出せないよう飼い馴らし、逆らう者には仕置きと称して痛めつけ、このネバーランドを支配している残虐非道なオウガの女王。
 彼女の拷問から受ける苦痛も、やがて快楽となり、調教されたアリスは供物とされて、そうして女王は若いアリスの生命を摘み取っていく。
 全ては永遠の若さと美貌を保つ為、それには快楽に堕ちたアリスの血と肉こそが、一番なのだと――。

 ――彼女が創った夢の世界、それは彼女の欲望そのものだと言えよう。
 そしてそんな自分勝手な煩悩の為に、アリスが犠牲にされてしまうのだ。
「どうやら余計なネズミ共も混ざっているようね。だったら纏めて、私の美貌の為の糧になるが良い!」
 エリザベートは手にした鞭を撓らせながら、パシンと床を叩いて猟兵たちを威嚇する。
 しかしどれだけ容姿に拘ったとしても、その醜い本性だけは隠せない。

 ――この欲望塗れの楽園に、終焉を齎す為に。
 オウガの女王と猟兵たちの、決戦の火蓋が切られて、幕が開く――。
白斑・物九郎
【エル(f04770)と】
●POW


時に生かす余地を残さにゃならねえ拷問術
獲物を狩場で屠る為の狩猟術

拷問吏と狩猟団の猟師、どっちが上か白黒付けようじゃニャーですか
ワイルドハントの始まりっスよ!


・敵の初撃は「常に死角から来る磔台」と認識
・なら逆に視界内からの脅威は無いと踏み、視覚の死角に【野生の勘】を傾注し【ダッシュ&ジャンプ】で機動、命中を避けつつ敵へ迫る

・モザイク空間展開時の捕捉圏内と見次第【ワイルドドライブ】発動
・モザイク空間に【精神攻撃&生命力吸収】を含ませ、空間内の他者の「生きる為の想像力」を吸収する地形効果を敷設、敵に不利を強いると共、魔鍵による【串刺し】で敵の「美への執着心」を狙う


エル・クーゴー
●WIZ
【物九郎(f04631)と】


最終撃破目標を目視圏内で捕捉
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します

先の夢の世界に於いて逆説的に指摘された通りです
当機は現在、表情すらままならない人形の躯体

しかし_この『感情及び感受性の欠如』は、今この瞬間だけは、貴女を狩る為のこの上無い猟師の銃足り得ます

痛みも
苦痛も
恐怖も
当機はそれらを感受しません


・【マルチプルミサイル(誘導弾)】270発を、物九郎のコード発動までは

「物九郎に迫る磔台の迎撃>自身へ向かって来る敵攻撃に対する迎撃・噴煙による目くらまし」
の優先度で

物九郎コード発動後は
「物九郎への【援護射撃】>敵への直接攻撃」
の優先度で順次発射



 もう少しで悪夢の国から抜け出せる、しかし猟兵たちとアリスの少女の行く手を塞ぐ、最後の難関――この世界の主たるオウガの女王が、彼らの前に立ちはだかった。
「残念だったねぇ、ここは私の領域さ。そう易々と、餌を逃すと思ったかい?」
 エリザベートは勝ち誇ったように嘲笑い、猟兵たちを奥へは行かせぬよう、一歩ずつ、靴音を響かせながらにじり寄る。
「ハッ、笑わせなさんな。拷問吏と狩猟団の猟師、どっちが上か白黒付けようじゃニャーですか」
 傲慢なまでのオウガの女王の言動を、物九郎は歯牙にもかけず、挑戦的な態度を取って相手の意識を自分の方に引き付けようとする。
 時には相手を死なせぬ程度に、生かす余地を残しておくのがエリザベートの拷問術だ。
 一方、敵を獲物と称し、戦場という名の狩場で完膚なきまで屠るのが、物九郎の得意とする狩猟術である。
「――ワイルドハントの始まりっスよ!」
 猫のキマイラでもある物九郎の目が、鋭い光を帯び始め、狩りの『獲物』を睨視する。
「最終撃破目標を目視圏内で捕捉。これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
 物九郎と行動を共にするエルもまた、狩猟団の一員として作戦を決行すべく、直ちに戦闘モードに移行する。

「――来ます」
 エルの瞳を覆うゴーグルが、敵の姿を逃さず追跡。ゴーグル越しに映る電脳世界はあらゆる事象を数値化し、相手の動作を解析後、予測の結果を伝えて注意を促す。
 直後に物九郎の足元の地面が迫り上がり、中から出現したのは拷問用の磔台だ。
「やっぱり死角狙いと来やしたか」
 しかし野生の勘でその攻撃を察した物九郎。磔台に捕まらないよう真上に高く跳躍し、今度は磔台を踏み台に、勢いを乗せて加速しながらオウガの女王に飛び掛かる。
「援護します――ターゲット、ロック」
 エルがすかさず物九郎への支援役として、アームドフォートを構えて照準合わせ、合計270発もの誘導弾をエリザベート目掛けて一斉発射。
「ッ!? 目くらましのつもりかい!」
 迫る小型ミサイルの集中砲火にも、オウガの女王は怯むことなく、鞭に力を注ぎ込む。
 すると鞭が鋼化し、棘が生え、有刺鉄線の如き茨の鞭を振るう度、誘導弾が次から次へと撃ち落とされて、爆ぜた煙が巻き上がる。
「お前の痛みと苦しみが、全て私の糧となるのよ!」
 更にエリザベートはエルを狙って、鋼の茨を飛ばそうとする。だがエルは、一歩も動かず飛来してくる茨を正面から受け止めようと――。
「先の夢の世界に於いて逆説的に指摘された通りです。当機は現在、表情すらままならない人形の躯体――」
 発する声は機械のようにシステム的で、彼女の言葉通り、表情にも感情が表れることは一切ない。
「しかし――この『感情及び感受性の欠如』は、今この瞬間だけは、貴女を狩る為のこの上無い猟師の銃足り得ます」
 肉体的な痛みや精神的な苦痛、ましてや恐怖といった負の感情も。
「――当機はそれらの全てを、感受しません」
 感情を支配しようとするエリザベートの攻撃も、自我の希薄な機械仕掛けの少女には、通じることなく無力化されてしまう。
 そこへ突撃してくる物九郎の、纏う空気の輪郭が、歪んで捩れ、周囲の景色がモザイク状に変化する。
「俺めのモザイクは、晴れませんでしたけども――」
 展開されるモザイク空間が、エリザベートの生への欲を吸収し、その精神力を糧に空間内から物九郎が取り出したのは――朱玉が輝く巨大な魔法の鍵だった。
「お前さんの飽くなき美への執着心、その欲望を、俺めが抉ってやりまさァ!」
 エリザベートの心臓目掛けて、物九郎が巨大な魔鍵を突き立てる。
 刺さった鍵は、女王の肌に傷を負わせることなく入り込み――彼女の心に痛みを齎し、苦痛に自慢の美貌が醜く歪む。
「クッ……たかだか餌の分際で、一体この私を誰だと思っているのさ!」
 怒りに満ちた表情で、肩を震わせながら猟兵たちを睨むオウガの女王。
 対する物九郎はしたり顔でニヤリと笑い、鍵を肩に担いで挑発気味に威勢を誇示する。
「そっちが誰であろうと、俺めは猟兵。狙った獲物は、全て狩り尽くすまでッスよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

テラ・ウィンディア(サポート)
「我が武を以て挑ませて貰うぞ!」



一人称
おれ

二人称
あんた(敵でも尊敬できる人
お前(敵
貴様(激怒した時

エルフの女の子だが突撃志向で戦闘を好む

基本戦術
【戦闘知識】で敵の動きや陣形等の捕捉と把握
闘いながら敵の性質や心の在り方の把握に努める

その後は敵陣に突撃して暴れまわる

【空中戦】を好んで空間全てを利用した闘い方を好む

敵の攻撃に対しては
【見切り・第六感・残像】を駆使して回避

ユベコで主に使うのは
グラビティブラスト(敵が多数の時
【一斉放射】で破壊力増強
メテオブラスト(敵が単体の時
【踏み付け】で破壊力増強

基本フォローが目的なんだろうが
おれはやっぱり之が一番得意だからな

全霊を以て暴れまわるぞーーーー!!!


藍原・蒼夜(サポート)
 人間の學徒兵×力持ち、18歳の女です。
 普段の口調は「おっとり系(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」
 偉い人には「敬語(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。

のんびり、おっとりした性格で、多少天然ボケな面もあります。
武器は主に退魔刀を使用して戦います。
好きな物は、可愛いぬいぐるみ、綺麗な花、静かな場所。
趣味は小説等の読書。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 無垢なアリスを贄として、己の若さと美貌を保とうとするオウガの女王。
 傲慢で欲に塗れた悪夢の国の支配者に、果敢に二人の少女が立ち向かう。
「我が武を以て挑ませて貰うぞ!」
 威勢よく、気炎を上げる小柄なエルフの少女、テラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)。
「ふふっ、私も一緒に助太刀させてもらうわよ」
 テラの隣に並ぶのは、藍原・蒼夜(蒼き宝刀・f23131)。おっとりとしたお姉さん的雰囲気を醸しながらも、蒼夜の敵を見据える青い瞳は、鋭い光を帯びている。
「随分と可愛らしい娘たちじゃない。お前たちの血肉なら、良いエキスが摂れそうね」
 二人を見るなり、エリザベートは舌舐めずりしながら、鞭を持つ手に力を込める。
「大人しく私の糧とおなり! 足掻け、足掻け! もがき苦しみ屈服するがいい!」
 エリザベートの黒衣の中から、多数の拷問器具が飛び出して、二人の若き少女を狙って襲い掛かってくる。
 拷問王妃の名は伊達ではない。もしもこれらの器具に捕まれば、骨を砕かれ、肉を灼かれて、瞳は光を閉ざされて、苦痛に喘ぐ声すら塞がれてしまう。
「呆れるくらい、趣味の悪い攻撃ね。少し静かにしてもらおうかしら」
 蒼夜が退魔刀を腰に当て、身体を低く屈めて、抜刀術の構えを取って迎え撃つ。
 刀身に破魔の霊力籠めながら、迷わず振り抜く刃の一閃――。
「そこ……っ!」
 蒼夜の気合いと共に放った一太刀。それは衝撃波となって、目には見えない斬撃が、拷問王妃の器具を断ち、彼女の邪悪な心を斬り裂いた。
「クハァッ……!?」
 一瞬、よろめくオウガの女王に、テラがすかさず駆け寄り、追い討ちを掛ける。
「ここからは、全霊を以て暴れまわるぞーーーー!!!」
 元より攻撃的な性格で、強気に突撃するのがテラの得意な攻撃スタイルだ。
 全力疾走しながら地面を強く踏み込んで、空中高く跳ね上がる。
「星よ……世界よ……流星の力を我が身に宿せ……!」
 一度頂点まで達した直後、今度はエリザベートに向かって一直線に加速し、落下する。その姿はまるで流れ星の如く煌いて、次第にその勢いを増していく。
「今こそ我が身、一筋の流星とならん……メテオ・ブラスト……受けろぉ!!!」
 テラがポニーテールを靡かせながら、エリザベートの頭上でくるりと回転。超重力を纏った渾身の踵落としを、見事にオウガの女王に炸裂させる。
 その凄まじい破壊力により、エリザベートの立つ地面までもが烈しく窪み、罅割れる。
「お前が今まで痛めつけてきた、他人の痛みを少しは思い知ったか!」
 衝撃から伝わってくる手応えに、テラは得意げに笑って、大きく吼えた――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花園・スピカ
美しいものは人を感動させると聞きました
でも貴女の称する『美しさ』と私の知っている『美しさ』は何か違う

私の感情はまだまだ未熟だけれど…それでもこれだけは分かる気がします
誰かの犠牲を対価に得た美しさには人を感動させる力なんてないのだと…!


【先制攻撃・高速詠唱】でUCを発動し先制攻撃を試みる
女神と共に【破魔の属性攻撃】による【二回攻撃】

相手の攻撃は【学習力・地形の利用・見切り】で回避
避けきれない分は【オーラ防御・激痛耐性】で致命的被弾を避ける
茨の塊や茨は可能なら【衝撃波】で破壊

先制攻撃失敗時もUC発動チャンスを逃さぬよう慌てず行動


貴女の身勝手な『罪』で裁かれるべきはアリスさんじゃない…貴女自身です!



「美しいものは人を感動させると聞きました。でも貴女の称する『美しさ』と私の知っている『美しさ』は何か違う」
 何を以て『美』と見なすのか。『美』に対する感覚は、人それぞれであろう。
 永遠の美貌を願うオウガの女王に、得体の知れない違和感を、スピカは肌で感じ取る。
「私の感情はまだまだ未熟だけれど……それでもこれだけは分かる気がします。誰かの犠牲を対価に得た美しさには、人を感動させる力なんてないのだと……!」
 アリスの無垢な心を堕落させ、その生命を搾取することで得ようとする美しさなど……醜い欲望にしか過ぎない、と。
 普段は少し気弱なスピカであるが、エリザベートの所業に怒りを覚え、表情険しく気合いを露わに、オウガの女王を睨め付ける。
「小娘如きが、生意気な口を聞くんじゃないよ。お前の若い血と肉も、やがて私のモノになるのさ」
 エリザベートはスピカに狙いを定めると、手にした鞭が、有刺鉄線の如く鋼鉄化する。そして鋼の鞭を揮おうと、動作に入ったその瞬間――。
 スピカの方が速く動いて先手を奪い、美麗な星の意匠の杖型獣奏器に魔力を注ぐ。
 奏でる音色に合わせて詠唱し、その声に、応じるように空に魔力が集まっていく。
「星と正義の女神よ、罪深く穢れし哀れな者達に魂の審判を……!!」
 するとまばゆい光が周囲に溢れ、そこに出現したのは白翼の女神の霊だった。
 女神は翼を羽搏かせ、輝く剣を携えながら、オウガの女王に向かって突撃。
 咎人の罪を断ち切る剣を抜き、裁きを下すが如く、真一文字に斬り祓う。
「くっ……どうやらよっぽど痛い目に遭いたいようね!」
 痛みを堪えるように踏み止まって、エリザベートが鋼の茨をスピカに飛ばす。
 しかしスピカは冷静に、茨の軌道を読んでオーラを展開。左腰には星の形の痕が浮かんで、星の光が彼女を包み、加護の力を齎していく。
 そして飛来してくる鋼の茨も、女神の力によって光の雨が降り注ぎ。罪の穢れを浄化して、被弾を逃れたスピカは、恐怖に臆することなく凛と構え、燻る怒りを吐き捨てる。
「貴女の身勝手な『罪』で裁かれるべきはアリスさんじゃない……貴女自身です!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーヴァルド・リンドブロム
行く手を阻むのは、お伽噺の悪い魔女と言った所か
若さと美貌……その欲望も、魔女に相応しいもの
だが、レムの生命を供物とさせる訳にはいかん
咎人殺しの力、存分に振るってみせよう

ネズミを侮ってはならぬ
マグスに引き起こされしハーメルンの災禍のように
偽りのネバーランドから、アリス達を連れ去る先触れとなろう
その先に待つのは、彼らの自由と――魔女の死だ
(厨二っぽく、格好つけて)

鋼の茨には、ニグレドの円環蛇で召喚した悪魔で対抗
崩壊の力を借りて茨を消滅させつつ、処刑具でオウガを狙う
傷口をえぐり、呪詛を染み込まて
執心する美貌を損なわせ、注意を俺に逸らす

負の感情には、精一杯の虚勢を張りつつ
レムの光を、希望に変えて戦うぜ


ナギ・ヌドゥー
レム……この子が元の世界に戻ったとして幸せになれるんだろうか。
以前アサイラムで見たアリスの卵達は皆、悲惨な境遇に晒されていた。
ならばこのレムも……
こんな事考えても無意味か、今は目の前の敵だけを見よう。
この拷問王妃にレムを渡してはいけない事だけは確かなのだから。

糧になるのはアンタの方だ。
我が拷問具ソウルトーチャーの血肉になるがいい!
【ドーピング】【先制攻撃】UC発動。
同時に【オーラ防御】を纏い斬り込む。
敵も同質のUCか、ならば先に当てた者が有利になる。
【第六感・野生の勘】で躱しながらUCと斬撃の同時攻撃を続ける。

負けた方が拷問で苦しみ抜いて死ぬ
当然の報いだな……アンタもオレも



 アリスの少女の無垢な生命を糧として、己の欲を満たそうとするオウガの女王。
 彼女が創った夢の国とは名ばかりの、偽りの悪夢の檻に囚われた、不幸な少女を救出すべく、猟兵たちは追っ手を振り切り、後は出口に立ち塞がる女王を倒すのみである。
「行く手を阻むのは、お伽噺の悪い魔女と言った所か。若さと美貌……その欲望も、魔女に相応しいもの」
 威圧的な空気を纏ったオウガの長を前にしても尚、シーヴァルドは落ち着き払った態度で凛々しく立ち振る舞い、ふと傍らのアリスの少女を一瞬だけ見遣る。
「……だが、レムの生命を供物とさせる訳にはいかん。咎人殺しの力、存分に振るってみせよう」
 少女を必ずこの呪われた世界から助け出す。そうした思いを抱くのは、シーヴァルドだけではない。ナギもまた、少女の身を案じる一人であった。
「レム……この子が元の世界に戻ったとして幸せになれるんだろうか。以前アサイラムで見たアリスの卵達は皆、悲惨な境遇に晒されていた。ならばこのレムも……」
 ナギの脳裏に浮かぶのは、この少女とは別のアサイラムで暮らすアリスたち。
 彼らの故郷における生活が、全て幸せだとは言い難い。しかしオウガの夢の世界にいたとして、結局は惨い最期を遂げるだけ。
「いや……こんな事考えても無意味か、今は目の前の敵だけを見よう」
 ここから脱出し、そこから先はどうなるか、全ては運命のみしか解らない。
 とにかく一つだけ言える確かなことは、この拷問王妃にレムを絶対手渡してはいけないことだ――。

「薄汚いネズミのくせに歯向かう身の程知らずが、身を以て思い知るが良い!」
 大事な贄たるアリスの少女を逃すものかと、オウガの女王が怒れる鬼の形相で、鋼と化した茨の鞭を振り回す。
「ネズミを侮ってはならぬ。マグスに引き起こされしハーメルンの災禍のように、偽りのネバーランドから、アリス達を連れ去る先触れとなろう」
 だがシーヴァルドは表情を変えることなく、迫る鋼の茨に対しても、立ち止まったまま一歩も動かず――オーラを纏った黒外套を優雅に華麗に翻し、茨はシーヴァルドに掠り傷一つ負わせることなく、薙ぎ払われて闇に熔け込むように散って消ゆ。
「そしてその先に待つのは、彼らの自由と――魔女の死だ」
 スタイリッシュに仰け反りながら右目を押さえ、赤い光を灯す左目に、映した女王の姿に向けて死の宣告をするシーヴァルド。
 ポーズも台詞も決まって、自己陶酔に耽るダンピールの青年に、オウガの女王は怒りに震え、二度と大きな口を叩けぬよう、黒衣の中から拷問器具を取り出し始める。
「そうはさせん、糧になるのはアンタの方だ」
 エリザベートが拷問器具を放とうとする、その時ナギも同時に動き、薬の増強効果も相俟って、敵より先にユーベルコードを発動させる。
「我が血を喰らい禍つ力を示せ――我が拷問具ソウルトーチャーの血肉になるがいい!」
 其れはナギが今まで殺めた咎人たちの、肉と骨で造った拷問具。
 手首に刃を這わせて血を流し、その血を啜った拷問具から、屍肉の触手が伸びてオウガの女王に絡み付き、撃ち放たれる骨の矢は、突き刺す相手を呪詛の力で蝕んで、敵の動きを封じ込む。
「負けた方が拷問で苦しみ抜いて死ぬ。当然の報いだな……アンタもオレも」
 己の身体を傷付けてでも、敵の苦しむ姿が見られるのなら――その手に伝わる感触に、ナギの心は昂揚し、抑え続けてきた本性が、次第に露わになっていく。
 何はともあれ、相手の動きが止まった隙をシーヴァルドは逃さない。
「一は全、全は一……行うは、創造の為の破壊なり」
 赤い瞳が輝き放ち、尾を喰らう蛇を模る刻印が、浮かび上がって魔術を展開。
 集束される魔力が渦を巻き、シーヴァルドの前に顕れたるは――崩壊を齎す円環の蛇、その名は悪魔【ウロボロス】。
 悪魔が操る【存在崩壊】の波動によって、エリザベートの美貌の殻が、崩れて剥がれ、肌は渇いた大地のように罅割れてしまう。
「嗚呼……美しかった私の身体が、こんな姿に変わってしまって……おのれ、よくも!」
 自慢の美貌を奪われて、醜く顔を歪ませながら、オウガの女王が猛り狂う。

 ――追い詰められた悪夢の国の支配者の、驕れる心に最後の裁きを。
 アリスの少女の生まれながらの聖なる光を、猟兵達の手で、希望の光に変える為――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

壥・灰色
絲(f00433)と

永遠にあると知ったら、生はきっと味気ないものだ
限りがあるからこそ懸命に生きるし、その懸命さが美しいんだ

おまえは美しくないよ。女王
ここで終わらせてやる。絲にも、おれにも、疵をつけられると思わないことだ

大丈夫
絲のやることなら、魔力の揺らぎでよく分かる

絲の範囲攻撃に巻き込まれぬよう中間距離から『侵徹撃杭』を連射
絲が展開した無数の鋼糸に炎が伝い、茨ごと女王を焼く段となったら、張った鋼糸を蹴りつけジグザグに反射
炎が苛烈に燃える空間を縫うように抜けて、右拳に全ての衝撃を集束/装填

砕けろ

手向けの言葉はただ一つ
壊鍵――巨人(ギガース)の鉄槌が、眩いばかりの蒼光を伴い振り下ろされる


赫・絲
かいちゃん(f00067)とー

永遠なんてありやしないって、その年になってもわかんないの?
バカなおばさん

表向きの美しさばっかり取り繕って
醜さにはこれっぽっちも気づいてないなんて哀れだね

血も肉も、啜れるものなら啜って御覧よ
お前の思い通りになど何一つならないと教えてあげる

お出で、さくら
力を貸して

鬣一撫で、契り交わした精霊の字を呼んで
借り受けるのは灰に還すための焔

結構熱いからね?
ちゃーんと避けてよかいちゃん!

茨の鞭を絡めとるように鋼糸を四方八方へ展開
それを指針に、茨ごと王妃を燃やし尽くす

彼がちゃんと避けるのはわかってるから、一切の容赦はしない
全てが灰に還るまで、全力最大を叩き込む



「永遠なんてありやしないって、その年になってもわかんないの? バカなおばさん」
 生命あるモノは皆、何れは死ぬのが運命だ。
 絲という名を与えられ、その日から、未来の歩みの全てを定められてきた――そんな少女が言った一言は、何よりも重い意味を持つ。
「表向きの美しさばっかり取り繕って、醜さにはこれっぽっちも気づいてないなんて――哀れだね」
 オウガの女王が抱く欲望の、穢れた心を隠す為。それが美貌を求める本質なのだと、絲は愁いを帯びた淡紫の瞳で、憐憫の眼差しを女王に向ける。
「永遠にあると知ったら、生はきっと味気ないものだ。限りがあるからこそ懸命に生きるし、その懸命さが美しいんだ」
 定められた生命の時間の中で、希望を求めて精一杯に生きる姿こそ、美しく輝くものがある。
 灰色の生命は作り物であり、感情自体も希薄な存在でしかないのだが。
 定めと向き合い、生命を全うしようとする者を、ずっと間近で見てきたせいか――彼もいつしか無意識的に、そうした想いを抱くようになっていた。
「おまえは美しくないよ。女王。ここで終わらせてやる。絲にも、おれにも、疵をつけられると思わないことだ」
 この手で悪夢の世界を終わらせる。強い決意を秘めながら、灰色がその身に刻み込まれた魔術回路を始動させ、オウガの女王を迎え撃つ。
「血も肉も、啜れるものなら啜って御覧よ。お前の思い通りになど何一つならないと教えてあげる」
 そして絲もまた、この戦いで全てに決着を付けるべく、最後の勝負と覚悟を決めて、一歩も引かない気構えだ。

「ハッ、虚勢を張るのもいい加減にしな。ここは私の創った夢の国、誰も逃しやしないのさ!」
 猟兵たちの度重なる攻撃を受け、エリザベートはもはや手負いの状態だ。
 それでも女王の高いプライドが、現状を素直に受け入れず、残った執念だけが彼女の心を動かしている。
「――お出で、さくら。力を貸して」
 杖を揮い、絲が名を呼び、顕れたのは。契りを交わした精霊の、焔の鬣誇る小さな狼。
 ダンピールの少女が鬣一撫でしながら借り受ける、焔は世界を灰に還す為。
「さあ、お仕置きの時間よ。痛みに苦しみもがいて、私の生命の糧とおなり!」
 エリザベートが最後の力を振り絞り、全てを巻き込むように茨の鞭を乱舞する。
 しかし女王の死に物狂いの攻撃も、灰色と絲の二人は冷静に、落ち着き払って見極めながら、対抗するかのように同時に仕掛ける。
「結構熱いからね? ちゃーんと避けてよかいちゃん!」
「大丈夫。絲のやることなら、魔力の揺らぎでよく分かる」
 敢えて言葉で言わずとも、互いの行動くらいは予測ができる。
 最初に絲が鋼糸を伸ばし、茨の鞭を絡めるように四方八方へと展開させて。そうして鞭を封じ込め、糸を指針に焔を発し、焚べる劫火は糸を伝って茨ごと、エリザベートを灼き尽くす。
 その間、灰色は炎の渦に巻き込まれぬよう、離れた位置から超音速の蹴りを繰り出し、援護しながら機を窺う。
 紅蓮に呑まれる瀕死の女王に止めを刺すべく、炎が苛烈に燃える空間を、縫うかのように駆け抜けながら、一気に間合いを詰めて急接近。
 右の拳に持てる全ての衝撃を、過剰なまでに集束させて、最大限まで威力を強化。
 眼光鋭く狙いを定め、弓を張るかのように右手を引いて、溜めた力を一気に放出――。
 死に逝く女王に捧げる、手向けの言葉は、唯一つ。

 ――砕けろ。

 眩いばかりの蒼光を放ち、壊鍵――巨人(ギガース)の鉄槌が、悪夢の世界に終焉を、告げるが如く振り下ろされる。
 空間を砕かんばかりの最高火力の衝撃が、烈しい嵐のように吹き荒れて。
 オウガの女王の身体は、衝撃に耐え切れなくて砕け散り、灼かれた骸は灰燼と化して消滅していった――。

 ――やがて嵐は収まって、偽りのネバーランドはこの世界から無くなった。
 後はアリスの少女が扉を開き、故郷の居場所に帰るだけ。
 その先は、彼女だけしか入れない、少女だけの特別な場所。
 レムが胸をドキドキさせながら、扉にそっと手を掛けて、開こうとするその前に――。
 彼女はもう一度だけ、猟兵たちに顔を向け、にっこりと、心の底から明るい笑顔で、助けてもらったお礼を言った。
「おねーちゃんたち、ありがとー! それじゃ、バイバイね!」
 そう言って、レムは元気に手を振りながら、扉の向こうの世界に戻っていった。
 願わくば、彼女の歩む未来の行く先が、どうか幸せなものでありますように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月02日


挿絵イラスト