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霧に隠されし贄の祭儀

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ――一年に一度、一つの村につき一人。
 それが、この辺りを治める"領主様"の御触れだった。

 毎年決まった時期がやって来ると、この村では"領主様"に捧げる生贄を決める。
 死体がお好きな"領主様"のために、自分たちの手で生贄を殺し、死体を捧げることで忠誠を示す。
 それが"領主様"の御触れなのだ。
 逆らった村がどんな酷い最期を迎えるのかは、村のみんなが知っていた。

 三年前の生贄は姉さんだった。
 一昨年の生贄は母さんだった。
 去年の生贄は父さんだった。

 そして今年、村が深い霧に包まれたのを見て、わたしは「その日」が来たのを知る。
 年に一度、"領主様"への生贄を捧げる約束の日。
 井戸の水汲みをしていたわたしは、すぐに村長さんのおうちに呼ばれて、告げられる。

「サラ。今年の生贄は君に決まった」

 ――一年に一度、一つの村につき一人。
 それで村が救われるなら、これは必要な犠牲だから。

 はい、と言ったわたしの目から、涙はとうに枯れていた。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、リミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーのとある村で、一人の少女がオブリビオンの生贄に捧げられようとしています。他ならぬ同じ村の人間たちによって」
 "領主様"と呼ばれるそのオブリビオンは、村人たちを恐怖によって支配し、年に一度、村から生贄を要求している。
 それも、村人自身の手で生贄を処刑し、その死体を捧げよという残酷極まる形で。
「"領主様"は死体を欲しているわけではありません。自らの手で生贄を選定し処刑しなくてはならない村人たちの苦悩、そして無惨に殺される生贄の怨みや絶望といった感情を糧にしているのです」
 言わばこの村は、オブリビオンが自らを強化するための儀式場なのだ。
 これを放置し続ければ、年々"領主様"とやらは力を増していくだろう。

「これ以上、村から生贄を出させるわけにはいきません。ですが警戒心の強い"領主様"は、外部から儀式を妨害されないように対策を取っています」
 年に一度、生贄の日がやってくる度に、村の周囲は深い霧に包まれる。
 この霧はオブリビオンの作り出した結界であり、外部から村に侵入しようとする者を拒んでいるのだ。
「霧の中ではほとんど視界は利かず、方向感覚も狂わされます。突破には何らかの対策が必要となるでしょう」
 魔法や科学の力を利用したり、村へと続く痕跡を探したり、猟兵であれば取れる手段は多様だろう。

「霧の結界を突破できれば、生贄が殺される直前に間に合うはずです」
 今回の儀式場となる村で、生贄に選ばれた少女の名はサラ。
 彼女の家族は、村の中でも「弱い立場」だった。
 ことさら迫害や恨みを受けていたわけではない。ただちょっと友人が少なかったとか、隣人との折り合いが悪かったとか、その程度のこと。
 だが、オブリビオンの支配が始まり、誰かの犠牲が必要になった時、「その程度」が彼女たち一家の運命を決めた。
「苦渋の決断を迫られる中、少しでも村民全員の負担が軽くなる選択をした、ということでしょう。リムは彼らの善悪を問いません」
 普段以上に感情を表に出すことなく、淡々とリミティアは話を続ける。

「既に家族を生贄にされ、残されたサラさんの心は絶望に沈みつつあります。その絶望こそオブリビオンの求める供物。故にこそ、止めなければなりません」
 生贄の儀式を止めさせる手段は、実力行使でも説得でも構わない。
 村人とて望んで生贄を殺している訳ではない。彼らを支配するオブリビオンへの恐怖、それが説得の糸口となるかもしれない。
「ただ、必要以上に村人に暴行を働くことは推奨しません。村人たちの苦痛や負の感情もオブリビオンの糧となりますから」
 生贄にされたサラだけでなく、この村のすべてがオブリビオンの餌なのだ。
 ならば当然、"領主様"は餌場が失われるのを黙って見てはいないだろう。
「儀式が阻止されたのを悟れば、"領主様"はすぐさま村に現れます。ここで取り逃せば、また別の村で同じ悲劇が繰り返されるでしょう。必ず仕留めてください」
 静かな、しかし熱の籠もった眼差しで猟兵たちを見つめながらリミティアは告げ、手のひらにグリモアを浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオはダークセイヴァーにて、オブリビオンの陰謀による生贄の儀式の阻止。及びオブリビオンの撃破が目標となります。
 儀式の舞台となる村の周辺はオブリビオンによって霧の結界が張られているため、まずはこれを突破してください。

 生贄に選ばれた少女や村人に対してどんなスタンスで接するかは自由です。
 明るく後味の良いシナリオとは言い難いかもしれませんが、どうか彼女たちをオブリビオンの支配から救ってあげてください。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『五里霧中』

POW   :    大胆に行動する

SPD   :    慎重に行動する

WIZ   :    冷静に行動する

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


グリモア猟兵の力でテレポートした猟兵たちの前に広がっていたのは、まるで大気にミルクをぶちまけたような、濃密な霧の空間だった。
 中の様子は一寸先も見通せないその空間から、猟兵は何者かの邪悪な意思を感じ取る。
 恐らくは、この霧の結界を張ったオブリビオンの。

 今まさに、凄惨な生贄の儀式が行われている村は、この先にあるはずだ。
 儀式の阻止のためには、まずこの霧を突破しなくてはならない。

 覚悟と決意を胸に、猟兵たちは霧を突破すべく一歩踏み出す――。
ドロンゴン・コーフィー
自分たちの手で、ねえ。
生贄とかなんとかはドラゴンっぽさもあるけど、僕の趣味じゃ無いな。

●POW
さあて、まずは霧の結界の突破だね。
今はどうかわからないけど、昔は他の村とを繋ぐ道があった筈だよね。そういうものを見つけられればそれを辿って村までいけるんじゃ無いかな?
とりあえず僕は屠龍刀で地面に跡を付けながら、テクテク探してみるよ。自分の歩いたところが分かるようにしとけば、同じとこを何度も歩きはしない…と思う。

この村の人たちはみんな、そうしないと滅んだんだ。正直、彼らがどんな結末を迎えても僕には関係ない。責めやしないさ。
ただ、嵐の日々を終わらせようよ。


シホ・イオア
【POW】
村の上空から霧の範囲を偵察
その中心部へ空からダイブ!
感覚を惑わす結界みたいだから下手な動きはしないでおくね
外れた場合は街道の痕跡を探したり周囲の音を聞いて探索するしかないかな

シホ達は領主を倒しに来たよ!
今まで諦めてきたのは領主に抗う力が無かったからでしょう?
いつかは自分が、なんておびえて暮らし続けることはない。
力は、希望はここにあるよ!

……たとえみんながあきらめても、シホ達は戦うけどね。

ねえ、怖かったらこの壺の中に隠れておく?
説得に難航するなら
生贄の子だけでも隠しちゃいたいな。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。贄を差し出すことで安寧を得る
人が生きていくだけで大変なこの世界で、それ自体が間違っているとは思わない
彼らは彼らで精一杯なだけ…

…それでも、私は切り捨てられる側に肩入れするけど、ね
死体好きの領主様がヴァンパイアかもしれない以上、見逃すつもりはない

…どの道こちらの存在を気取られるなら、隠れ潜む必要は薄い
ここは時間優先で、大胆に行動する

霧が出て道に迷ったら【限定解放・血の波濤】で半径20mの霧だけを指定して吹き飛ばし、
見えた景色から進むべき道を第六感を総動員して探し出す

人が移動した痕跡を発見したら見失わないように夜目を光らせて追跡し村を目指す

「…ん。結局、これが一番手っ取り早い」


アーレイラ・モンクスフード
村に着いた次のフェイズ用に事前準備します。
負の感情を糧にする領主とやらに嫌がらせするために、別世界の美味しい食べ物買って村人に振る舞う用意します。

現地で水と調理器具さえあれば
大量に持ち運べる
スパゲティー乾麺と混ぜる粉のソース、インスタントコーヒー、スイーツにしるこサンド。

「案外美味しいんですよね」

ユーベルコードで、召喚を行い全周囲に展開し、索敵モードにして進みます。

進行方向扇形に厚めに配置し、後方は念のため、予測外の物だったときの保険に。

可能そうなら近くの召喚した精霊も荷物持たせて積載量あげていきます。

等間隔に配置して、座標がずれるようならズレから、結界の効果や形を推測して対策わを練ります。


須藤・莉亜
「ご飯の時間ではないけど、ちょっと来てくれる?」
眷属の蝙蝠たちを召喚して、霧の中の探索を頼む。
蝙蝠なら霧の中でも周囲を把握できるだろうし、戻ってきた蝙蝠に【動物と話す】で情報を聞き、村まで案内してもらう。

生贄の場面に間に合えば、生贄の人を蝙蝠で囲ってとりあえず確保。
「もう少しで僕の同業たちが領主様?殺しに来てくれるからちょっと待ってくれない?」
こんな感じで他の人たちが来るまで粘っとこう。
あ、生贄の人は大丈夫かな?咄嗟にやっちゃったけど、これはこれでショッキングだったかな。…あとで謝らないと…。


シホ・エーデルワイス
※宵と連携希望

冷静に行動します。

凄い霧ですね。はぐれない様に【手をつなぐ】のも良いでしょうか?
宵が一緒でとても心強いです。

【暗視、聞き耳、第六感】で周囲の状況を把握しつつ、
方位磁石で方角を確認しながら進みます。
足元が見えなければ棒で地面を探ります。

もし動物さんと会えたら用意しておいた餌をあげて【動物と話す】で道を尋ねます。

道中は定期的にケミカルライト(蛍光を発光)のスティックを地面へ突き刺し道標にします。

もちろん他にご一緒して下さる方がいれば協力し合います。

生贄ですか…何故でしょう…私の聖痕がチクチク反応します…。
たぶん…使命を果たせという事なのでしょう…。
(何かを覚悟している眼差しです)


ムルヘルベル・アーキロギア
【使用能力値:WIZ】
ふむ。リミティアの言葉通り、儀式の是非については問うまい
探索はあくまで冷静に、術式を用いて方位を導き出すとしよう

むしろ懸念は、妨害の際村人とどう相対するか
可能ならそれを仲間に問うておきたい
しかし急な問いは礼を失する、まずワガハイの考えを述べる
「村人を裁く、というのは傲慢が過ぎよう。それは何も解決すまい」
「生贄の娘こそ気にかけてやるべきではないかと思っていてな」
「ある医者は言った。"どんな状況でも自分の意志で選択することが、我らにとっての最後の自由だ"とな」
「サラとやらが未来を選べるかどうか、全ては我ら次第。そうは思わぬか?」
【世界知識】を生かし、【賢者の箴言】を使用する


メグレス・ラットマリッジ
【SPD】事件は何年も前から始まっていたのに、今更駆けつける我が身が情けない。
まず村へと続く痕跡を探します。
鍵の為に扉があるのではなく、扉の為に鍵があるのです。外部からの侵入を警戒する行為は、普段は出入りがある事を意味しているのでは?

地面をよく観察し、通行の痕跡を探り【追跡】します。ちょっとはしたないかもですが、霧が隠してくれるから女子力ポイントは減点されません。
この身に絡まる強い呪いが【呪詛耐性】として霧の妨害を弾くなら、看板や地図を参照して村を目指します。


弦月・宵
シホ(f03442)と行動するよ。
うん。手、繋ごう。
シホと一緒だと思うと心強いよ。

WIZ 冷静に行動しよう。
探索に関してオレは一般人とそう変わらないから不安だな。
【野生の勘】を信じて、痕跡が見つかれば【追跡】する。
歩きやすさとか、下草の生え方とかかな。
オレも見えない足下は棒で探る。
時々振り返って、シホの道標通りにまっすぐ歩けているか見るよ。
誰かと行き合ったら情報交換して、お互い行ってない方へ進む。
焦る気持ちはあるけれど、森を越えなきゃ仕方ないんだから、今は我慢。

シホ…何か思い詰めてる?
生贄の女の子を救いたいんだよね。
シホが使命を果たせるようにしたい。
手を握って、一人じゃないことを伝えるよ。



●道標を求めて
 猟兵たちが霧の中に入ると、その内部は外から見えていた以上に視界が悪く、気を抜けば自分の足元さえ分からなくなりそうな錯覚に襲われる。
 孤立しないよう慎重に、猟兵たちは連携して霧の結界の探索を開始する。

「自分たちの手で、ねえ。生贄とかなんとかはドラゴンっぽさもあるけど、僕の趣味じゃ無いな」
 ドラゴンに憧れるブラックタール、ドロンゴン・コーフィー(泥の竜頭・f04487)は今回の件への感想を呟きながら一行の先頭を歩く。
「ともかく、まずはこの霧の結界の突破だね」
 ドロンゴンは愛剣の屠龍刀プルリンを手に、地面に痕跡を刻みながら歩き回る。
 こうすれば既に歩いた場所が分かるようになり、後に続く仲間への道標にもなる。

 ドロンゴンと共に前を歩くのはメグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)。
「事件は何年も前から始まっていたのに、今更駆けつける我が身が情けない……」
 それは彼女の咎ではなかったが、それでも、という気持ちは拭えない。
 せめてこれから先の事件を防ぐために、彼女は懸命に探索を行う。

 二人が探しているのは、村へと続く道や足跡などの痕跡だ。
「鍵の為に扉があるのではなく、扉の為に鍵があるのです」
 とはメグレスの言である。
 外部からの進入を拒むこの霧の結界は、逆説的に平時は村と外界との繋がりがあることを示している。
 ならばその痕跡を見つけられれば、ということだ。

 しかし、霧の結界は予想以上に深く、その範囲も広い。
 地道な探索だけで痕跡を見つけるのは不可能ではないが、時間がかかるだろう。
「……少し、離れてて」
 ふいに、ドロンゴンとメグレスに声をかけたのはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)だった。
 彼女は一行の先頭に立つと、おもむろに自らの血の力を発動させる。
「……限定解放。薙ぎ払え、血の波濤……!」
 血色の波動が吹き荒れ、リーヴァルディの周辺の霧が吹き飛ばされる。
「……ん。結局、これが一番手っ取り早い」

 霧はすぐにまた元通りになってしまうが、一瞬でも視界が晴れれば十分だった。
 何度か場所を変えて同じことを繰り返し、やがて三人は求めていた痕跡を発見する。
 それは、雑草を抜いて土を踏み固めた程度の、簡素な細い間道だった。

●人海戦術
 ドロンゴン、メグレス、リーヴァルディによって、向かうべき進路は定まった。
 しかし、道標となる間道はあまりにも細く、気を抜けば霧に紛れて見失いそうになる。
 また、この霧がオブリビオンの生み出したものである以上、何かが潜んでいる可能性も否定できない。
 そうした不安を和らげたのが、召喚による人海戦術を可能とする猟兵たちだった。

「ご飯の時間ではないけど、ちょっと来てくれる?」
 そう言って、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)が喚び出したのは蝙蝠の群れ。
 光ではなく音の反響で周囲を認識する蝙蝠は、霧の中の探索には適任だろう。
 四方に散った蝙蝠たちは暫らくすると帰還し、召喚主に探索結果を報告する。
 その情報を元に、莉亜は仲間たちに安全な方角を伝えていく。

 同様に、召喚した精霊たちを歩哨として全周囲に展開しているのはアーレイラ・モンクスフード(ダンピールのクレリック・f02061)。
 進行方向の配置を厚く、後方は予想外の奇襲を受けたときの保険にと、何が起きても仲間に警戒を促せる備えになっている。
 そんなアーレイラ自身は、背中に大きな背嚢を担いでいる。
 中身は彼女が別世界から持ち込んだ、即席の食料や飲料、スイーツ等が大量に。
「案外美味しいんですよね」
 "領主様"とやらが負の感情を糧とするなら、美味しい食べ物を村人に振舞い喜ばせれば嫌がらせになるだろう、というのがアーレイラの考えだった。
 案外と効果はあるかもしれない。先ずはこの霧を抜けて、そして食べてもらう機会を得られたなら、だが。

●伝え合うは意志と決意
 シホ・エーデルワイス(オラトリオの聖者・f03442)と弦月・宵(マヨイゴ・f05409)の二人は、共同で探索に当たっていた。
「この霧の中では、暗視は効果が薄いようですが……」
 シホは視覚、聴覚、第六感など、持てる感覚すべてを活用して、進むべき道を見失わないように努める。
 足元を探る棒や方角を確認する磁石、目印となるケミカルライトのスティック等、探索の備えは万全だった。
「探索に関してオレは一般人とそう変わらないから不安だな」
 宵もそう呟きながらも、持ち前の野生の勘を頼りにシホの探索をサポートする。
 棒で叩いた足元の感触から道を逸れていないかどうかを確かめ、他の猟兵たちとも情報を共有する。

 霧の結界は今だ深く、ふと気を抜けば先の見えない恐怖に呑まれそうになる。
 それでも二人は冷静さを失わない。
「宵が一緒でとても心強いです」
「オレも、シホと一緒だと思うと心強いよ」
 繋いだ手から伝わる感触とぬくもりが、互いの支えとなっているから。

 霧の結界の探索がある程度進んだところで、猟兵たちは一度休憩を取ることにする。
 一箇所に集まって火を起こし、消耗した気力と体力を回復する。
 その間の見張りは、莉亜の蝙蝠とアーレイラの精霊が担当だ。

 そこでふと、話を切り出したのはムルヘルベル・アーキロギア(執筆者・f09868)だった。
 彼が気にしていたのは、儀式の妨害の際、村人とどう相対するかだ。
「村人を裁く、というのは傲慢が過ぎよう。それは何も解決すまい。ワガハイは生贄の娘こそ気にかけてやるべきではないかと思っていてな」
 急に答えを求めるのは礼を失するだろうと、ムルヘルベルはまず己の考えを述べていく。
「ある医者は言った。"どんな状況でも自分の意志で選択することが、我らにとっての最後の自由だ"とな。サラとやらが未来を選べるかどうか、全ては我ら次第。そうは思わぬか?」

 この事件に対する、猟兵たちの想いは様々だ。
「この村の人たちはみんな、そうしないと滅んだんだ。正直、彼らがどんな結末を迎えても僕には関係ない。責めやしないさ」
 ただ、嵐の日々を終わらせようよ、と。
 同情することも糾弾することもなく、ドロンゴンはそう語った。

「……ん。贄を差し出すことで安寧を得る。人が生きていくだけで大変なこの世界で、それ自体が間違っているとは思わない」
 リーヴァルディの語る通り、オブリビオンに支配されたこの世界では、無力な者が正道を生きるのは難しい。
「彼らは彼らで精一杯なだけ……それでも、私は切り捨てられる側に肩入れするけど、ね」
 無表情な彼女の言葉には、静かな意志が宿っていた。

(生贄ですか……何故でしょう……私の聖痕がチクチク反応します……)
 仲間たちの話を聞きながら、シホはそっと己の聖痕に手を当てる。
(たぶん……使命を果たせという事なのでしょう……)
 無言で、ただ、眼差しに決意を秘める。
 そんなシホの思い詰めた様子に気付いたのは、宵だけだった。
(生贄の女の子を救いたいんだよね)
 信頼を交わす相棒が、使命を果たせるようにしたい。
 そんな想いと、何より「一人じゃない」と伝えるためにそっと手を握れば、シホははっと気付いてから。
 ありがとう、と。言葉にせずとも、想いは互いに伝わっていた。

 それぞれの意志を確認した猟兵たちは、休憩を終えて再び立ち上がる。
 その体には、休憩前よりも力が漲っているような気がした。
 それはムルヘルベルのユーベルコード……彼の言葉に共感した相手に力を与える【賢者の箴言】の作用もあったのかもしれない。
 心身ともに万全の状態を取り戻した猟兵たちは、再び霧の迷宮を進む。

●役者は集う
 それからの探索は、驚くほどスムーズに進んだ。
 休憩で十分に回復できたのと、霧の中の移動に皆慣れてきたのが大きいだろう。
 警戒してきた霧の中での脅威との遭遇も、幸いなことに回避できたようだ。

 そして遂に、猟兵たちは霧の結界を突破する。
 急に視界が開けた先に見えたのは、木造の家屋が点々と建ち並ぶ、小さな村だった。
 周囲を覆う霧の影響で薄暗いが、何処で儀式が行われているかはすぐに分かった。

 幾つもの篝火が焚かれた村の中心にある広場。
 そこに集まっていたのは、鉈や斧といった粗末な凶器を手にした村人たちの輪。
 その中心に居るのは――荒縄で縛られ、虚ろな眼をした少女。

「"領主様"、今年も貴方様に贄を捧げます」

 長らしき人物が宣言すると、村人たちは一斉に凶器を少女に振り下ろそうとする。
 咄嗟に反応したのは莉亜だった。
 蝙蝠の群れが一斉に飛び立ち、村人と少女の間を黒いヴェールのように遮る。
「うわぁっ?!」
「なんだっ、これっ!?」
 突然の異変に動揺する村人たち。蝙蝠に庇われた少女も、目を丸くしている。

 そこに、天から声が降り注ぐ。
「ちょっと待ったーーーー!!」
 その声の主は、シホ・イオア(フェアリーの聖者・f04634)。
 他の猟兵たちとは別行動を取っていた彼女が霧の結界を突破した方法は、極めてシンプル。
 上空から霧の範囲の中心を見定めて、真っ直ぐそこへダイブする。
 単純かつ大胆だが、少しでも目測を誤れば、あるいは霧の中で下手な動きをすれば、まったく違う場所に落ちていたであろう、危険な策だ。
 しかし結果としてその奇策は功を奏し、彼女はここに現れた。

「シホ達は領主を倒しに来たよ! 今まで諦めてきたのは領主に抗う力が無かったからでしょう? いつかは自分が、なんておびえて暮らし続けることはない」
 困惑する村人たちの前で、シホは一気にまくしたてる。
 村を覆う暗闇にも負けぬよう光り輝いて。
「力は、希望はここにあるよ!」
 それは、霧を抜けてこの場に集った猟兵たちを象徴する言葉だった。

 かくして、絶望の舞台に役者は集う。
 陰惨なるオブリビオンの儀式を阻止するために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『贄の祭』

POW   :    贄となる人間を周りの村民から身を呈して守る

SPD   :    処刑から贄を連れて逃げ回る、背後などを取って気絶させる

WIZ   :    言葉巧みにこの行いをやめるよう説得

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


霧の結界を突破し、生贄の少女が殺される寸前で村に辿り着いた猟兵たち。
 だが、突然現れた「余所者」に村人たちは警戒心も露わに冷たい視線を向ける。

「何なんだ、お前たちは……?」
「この村が生き延びるには、こうするしかないんだ。余所者が邪魔をするな!」
「"領主様"を倒すだって? そんなこと、できるわけがない!」

 村人たちは、こうしなければ生きていけないと信じている――否、そう信じ込まされたのだろう。
 オブリビオンの持つ、圧倒的な力と恐怖によって。

 そして生贄の少女は――何も言わず、絶望に満ちた虚ろな目で猟兵たちを見る。
 彼女はもう、すべてを諦めてしまったのだろうか。それとも――。

 何れにせよ、猟兵たちはこの生贄の儀式を阻止しなければならない。
 この村で巻き起こる苦悩も恐怖も絶望も、すべてがオブリビオンの力になってしまうのだから。
シホ・イオア
この村を包む霧は領主がよそ者を遠ざけるために作ったもの
でも、シホ達には通じない。
領主の力は絶対じゃないんだよ。

シホは信じてるよ。
生贄を出しているのは守りたい人がいるからだって
こんなことは望んでないって。

サラちゃんの手を握ってあげたいけど
サイズ的に無理かなー?

サラちゃん、家族を失って辛かったよね。
この一年、今日という日が来るのが怖かったよね。
こんなギリギリになってごめんね?
シホ達はサラちゃん達のことを知ったから、
生きてほしいと思ったからここに来たんだよ。


避難場所としてフェアリーランドを使用



「そんなことない!」
 "領主様"は倒せないという村人たちの言葉に真っ先に反論したのはシホだった。
「この村を包む霧は領主がよそ者を遠ざけるために作ったもの。でも、シホ達には通じない」
 儀式の日を告げるように現れるこの霧が、"領主様"の力によるものであることは、村人たちも知っている。
 過去に、この霧を超えて誰かが現れたことは無かった。他ならぬ"領主様"と、今日、ここに現れた猟兵たちを除いて。
「領主の力は絶対じゃないんだよ」
 自分たちの存在がそれを証明していると、妖精の少女は告げる。

 シホはさらに続ける。
「シホは信じてるよ。生贄を出しているのは守りたい人がいるからだって、こんなことは望んでないって」
 彼女の言葉に、何人かの村人が動揺らしき反応を見せる。
 みな、これまでに無かった儀式への乱入者をどうすれば良いのか判断できずにいた。

「あっ、おい、お前っ!」
 その当惑の隙を突いて、シホは村人たちの間をするりと抜けて、生贄の少女――サラに近寄った。
 そして、彼女の手……正確には指先をぎゅっと握る。
「サラちゃん、家族を失って辛かったよね。この一年、今日という日が来るのが怖かったよね」
「……どうして、それを」
 なぜ、初対面の相手が自分の名前や家族のことを知っているのか。サラは驚いたようだが、すぐにまた視線を伏せる。
「こんなギリギリになってごめんね?」
 助けにきたよ、というシホの言葉に、サラはゆっくりと首を振る。
「もう、いいんです。これが村のためですから……それに、死ねば、みんなに会えるから」
 深い深い絶望に染まった少女の瞳。
 今の彼女をフェアリーランドで避難させようとしても、恐らくは抵抗されてしまうだろう。

 死んで家族と再会することが唯一の望みだと語る少女の目を、シホは、まっすぐに見た。
「シホたちはサラちゃん達のことを知ったから、生きてほしいと思ったからここに来たんだよ」
「わたしに……生きてほしい……?」
「そう。だから領主とも戦う……たとえあなたがあきらめても、シホたちは戦うよ」
 シホとサラの視線が合う。
 妖精の少女の瞳に宿る、強い決意の光を、生贄の少女は見た。
 力と希望の輝きを前に、サラの絶望が微かに揺らいだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ムルヘルベル・アーキロギア
【使用能力値:WIZ】
ワガハイは「この場で一切の犠牲が出ない」ことを目標とする
一歩引いた場所から、村人は勿論仲間にも目を配るのだ
こういった状況では何が亀裂になるかわからぬ
冷静さを失った者がおれば言葉で穏やかに宥めるとしよう
仲間のことは信頼している、ゆえに万が一に備えるのだ

状況が激化しないようであればワガハイも口を開く
「オヌシらの諦観と絶望、そして慚愧。それこそ彼奴の目当て。生贄の命などその理由付けに過ぎんのだ」
「だがある国には"夕焼けと朝の霧は晴天の印"という諺がある」
「この深き霧を払い、朝日を得るか否か。選ぶはオヌシらの意志次第よ」
村人を、そしてサラを見て言おう

※アドリブ、他PCとの絡み歓迎


メグレス・ラットマリッジ
恐怖や絶望が領主の力となるなら、強引な手法は避けねばならない
言葉で解決できる機会は既に過去な気がしますが、心情的に力の誇示は最後までしたくありません。まずは彼らを安心させたい。

人死にが出てからの到着を謝り、以下の内容を伝えます。
・自分たちの立場
・領主を討つには領主への恐怖ではなく私達への信頼が必要だということ

暴力が振るわれるのなら死なない範囲で受けましょう。
領主への恐れと、殺人の忌避感のどちらが勝つか、彼らの善性を信じます。



「突然の来訪をお許しください。私たちは猟兵と申します」
 戸惑う村人たちを前に、穏やかな調子で語りだしたのはメグレスだった。
 暴力や力の誇示を忌避する彼女がまず選んだのは、対話による説得である。

 メグレスはまず、自分たちがどういった立場の者なのか、この場に来た理由などを説明する。
 この世界の住人は猟兵の存在を知らず、どこまで理解できたかは怪しいが、村人たちの敵ではなく、そして"領主様"と敵対している事は伝わったようだ。
「死者が出る前に駆けつけることができず、申し訳ありません」
 メグレスの謝罪が真剣であることは、村人たちにも伝わる。
 彼らはまだ凶器を手放さないが、警戒心は若干和らいだように感じられた。

 そして次にメグレスは、この村を支配するオブリビオンの真意を語る。
 死体を欲するという理由はただの方便。"領主様"の目的は儀式によって生まれる村人の苦悩や絶望なのだと。
「そんな馬鹿な!!」
 信じられない、否、信じたくないといった様子の反応が次々と上がる。
 無理もないだろう。村を守るためにと悩んだ末の決断が、すべて"領主様"の仕組んだ茶番劇だと言われたに等しいのだから。

「彼女の言うことは事実だ」
 状況が激化せぬようにと静観していたムルヘルベルもメグレスの言葉に同調する。
「オヌシらの諦観と絶望、そして慚愧。それこそ彼奴の目当て。生贄の命などその理由付けに過ぎんのだ」
「そんな……」
「嘘だ! 俺は信じないぞ!」
 驚愕のあまり膝を突く者、頑なに否定しようとする者、反応は様々だが具体的な反論を口にできる者は一人もいない。
 長年"領主様"に支配されてきた彼らは、オブリビオンの恐ろしさと同じくらい、その悪辣な本性も知っているのだ。

「領主を討つには領主への恐怖ではなく、私たちへの信頼が必要なのです」
 動揺する村人たちの前で、メグレスは切々と訴える。
 恐怖に屈している限り、この惨劇の連鎖は永遠に終わらないのだと。
「ある国には"夕焼けと朝の霧は晴天の印"という諺がある」
 ムルヘルベルもまた、得意の書物からの引用を用いて語りかける。
 この場から一切の犠牲を出さない。その決意を胸に秘めながら。
「この深き霧を払い、朝日を得るか否か。選ぶはオヌシらの意志次第よ」
 その言葉は、霧に覆われてきた村人たちの心を、強く強く打った。

 すぐに受け止めきれる事実ではないが、村人たちの意識は徐々に変わり始める。
 そしてサラも……生贄の存在理由を揺らがされた彼女も、動揺を隠せずにいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アーレイラ・モンクスフード
持ってきた食料の調理します。

水が貴重、調理に適さないようならユーベルコードで聖水出して調理に使います。

「はーい、そこまででーす。ご飯できましたよ。」

大人も子供もみんなに、持ってきたスパゲティーと、珈琲、紅茶振る舞います。

余裕が無いから人は人を気遣えないと聞きました。
「美味しいって幸せなんですよ。今まで幸せでしたか?皆さんには食べる権利がありますよ。」

お腹いっぱい食べて、落ちついてからお話を聞いて貰います。

生贄の少女の食が進んでないなら、紅茶もって菓子を口元に差し出し。

「甘いもまた幸せですよ。」
「助けてって、生きたいって、言って良いんです。希望を夢を持っていいんです。今まで許されなかった分ね。」



「俺たちの苦悩や絶望を、力に変える……?」
「なら、私たちが今までしてきたことって……」
 告げられた真実の重さに戸惑う村人たち。
 混乱と後悔に包まれた場の雰囲気を変えたのは、ふわり、と漂う食欲を誘う香りだった。

「はーい、そこまででーす。ご飯できましたよ」

 場違いなほどに明るい少女の声。
 仲間たちが説得や説明をしている最中、こっそりと調理に励んでいたアーレイラが披露したのは、皿に盛り付けられたスパゲティー、そして湯気を上げる珈琲と紅茶のカップ。
 すべて、村人たちに振舞うために彼女が持ち込んだものだ。

「こ、こんな時にメシだって……?」
 当惑する村人たちを前に、アーレイラはにこりと。
「こんな時だからこそです。余裕が無いから人は人を気遣えないと聞きました」
 そう言って、スパゲティーの皿を差し出すのだ。

 オブリビオンの支配下にあることを差し引いても、元より小さな村のことである。
 貧しい食事しか知らない彼らにとって、その暖かな香りは強烈だった。
「う……ひ、一口くらいなら……」
「お、おいお前、本気かよ?」
「わ、私も……ちょっとだけ」
 誘惑に負けた何人かの村人が、用意された食器と皿に手を伸ばす。
 慣れない手つきで麺をからめ、一口。そして叫ぶ。
「美味い!!」
「なにこれ?!」
 異世界由来の食文化の味は、あまりに強烈だった。

 その反応に満足そうにしながら、アーレイラはサラに近寄る。
 その身を縛る縄を解くと、紅茶のカップとお菓子を差し出す。
「はい。あなたもどうぞ」
「わ……わたしは、いらないです」
 戸惑いながらそれを拒もうとするサラに、アーレイラはいいんです、と言って。
「甘いもまた幸せですよ」
「しあわ、せ……?」
 その単語が、まるで遠い異国の言葉のような反応をする少女の口元に、アーレイラはもう一度菓子を寄せる。
「助けてって、生きたいって、言って良いんです。希望を夢を持っていいんです。今まで許されなかった分ね」

「……」
 沈黙したサラは、やがておずおずと菓子を口に運ぶ。
「……………おいしい」
 その瞳から、ぽろりと一粒、涙が零れ落ちた。

 苦悩と絶望に支配された村の雰囲気は、徐々に変わりつつある。
 だが、今だそれを受け入れられず、食事にも手をつけない村人もいる。
「ダメだ……確かに、あんたたちは無力な俺たちとは違うのかもしれない」
「だが、もしあんたたちが"領主様"に負けたら、この村はどうなる?」
「村の確実な存続のために、サラには死んでもらうしかない。そうするしか……ないんだ」
 頑ななその言葉を聞いたサラは、おずおずと口を開き。
「わ……わたしは……」
 ――どうしても、その先の言葉が出てこない。

 彼女たちの心を霧から解き放つには、もう一押しが必要だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

弦月・宵
シホ(f03442)と参加する

①村人達が儀式を行わなくなるよう説得
・シホの作戦がうまくいくように、
「奇跡は起きるよ。そして今後も繰り返さなくていいように、オレ達は領主を討ちに来た」
「領主の言いなりになんてならなくてもいいよ。オレは、誰にも死なずに生きてほしい」と説得を重ねる

②サラが贄にならないように配慮
「あなた達は自ら望んで村民を殺したいの?」と庇う
無防備なままなら仲間に託す

③シホの役目を見届ける。不足にはサポートを。
村民が納得する前にシホの【無敵城塞】が切れる等不足の時は、【生まれながらの光】を使って死者がでないように対処
村人にも使用して、奇跡の証明にもなればいいんだけど。
シホ、信じてる


シホ・エーデルワイス
※宵と連携希望

【生贄が死なない】という奇跡を演出
儀式を行う必要は無いと説得


①私がサラさんの代わりに、生贄となる事を交渉

胸元をはだけて【聖痕】を村人に見せ
聖痕の意味と私が犠牲になって人々を救う使命を負った聖者である事を説明

交渉が成立したら最後の願いとして【もし奇跡が起きたら私達を信じて欲しい】と願う


②処刑中、私は拘束され無抵抗の振りをしますが
【無敵城塞】と【オーラ防御、激痛耐性、覚悟】で耐える
手元でも狂いましたか?何度でも別の手段でもどうぞ

内心本当は殺意を浴びて怖いです
宵見守って
私に【勇気】を


③村人が狼狽えだしたら再度説得

もうお気づきではないでしょうか?
新しい選択肢「生贄を捧げない」が増えた事に


リーヴァルディ・カーライル
…ん。もう一押し、ね
だったら私は村人達に、これからどうしたいかを聞いてみる
生贄の儀式を続けるか否か…じゃない
…このまま目を閉じ、耳を塞いでいても“優しい誰か”があなた達を助けてくれる

…でも、猟兵だけが動いても、きっと駄目
彼ら自身が、彼ら自身の意志を発しない限り…何も変わらない
こんな幸運は二度と無いんだから…

領主が討たれた後、何をするの?
作物を育て、壊れた家屋を修理して、周囲の村々と協力して…
また皆でこうして菓子を食べるのも良いかも、ね?
次の日は何をする?一週間後は?一年後は?十年後は?

…明日を望む気持ちが生まれたら、後はその未来を得る為に動くだけ
サラ…あなたはどうしたい?


ドロンゴン・コーフィー
僕も、関係ないなんて言ったけどさ、せっかくならハッピーエンド見たいよ?

●POW
キミたちは、不幸だった。これまでの傷も癒えないのかもしれないね。
でもね、今この時、幸運が目の前にあるんだって、ちゃんと見て欲しいな。
そんな物騒なものは手放して、幸運と未来を掴んで欲しいんだ。
暗雲は晴れる。僕らが、そして、僕(ドラゴン)が来たのだから!
【この身は夢幻、我が名は竜】の力強さを見せてあげよう。
出来れば、彼らの持つ武器を吸ってしまいたいけど、無理やり奪いはしない。置いてるもの、手放した物だけだ。
未来を掴めるかは、結局彼ら次第だもんね。……頼むぜ。



猟兵たちの説得によって、村人たちの多くは儀式を続ける意志を失った。
 それでも一握りの頑なな村人は、処刑を強行しようと生贄の少女に迫る。
「すまないサラ……すまない……」
 まるで呪縛のようにそう呟きながら。

 そんな彼らの前に真っ先に立ちはだかったのは、宵だった。
「あなたたたちは自ら望んで村民を殺したいの?」
「そんなわけないだろう!」
 宵の制止に、村人は叫び。
「だけど、俺たちはもう、何人も殺してるんだ……村の仲間を、その子の家族も、何人も、この手で!」
 握り締めた凶器を手放させない鎖は、彼ら自身の罪悪感。
「ずっと、俺たちはこの方法で村を守ってきたんだ……今さら、奇跡みたいな選択に縋れるかよ!!」

「奇跡は起きるよ。そして今後も繰り返さなくていいように、オレ達は領主を討ちに来た」
「分かるもんかよ! 奇跡なんて――」
「では、私がそれを証明します」
 強硬派の村人と宵の会話に割って入ったのは、シホだった。
「私がサラさんの代わりに、生贄となります」
「な……っ!?」
 突然の申し出に、村人だけでなく猟兵の中にも驚く者はいた。
 止めようとする者を制するのは宵。それはシホを信じているからこその行動だった。

「私には使命があります。この身が犠牲になって人々を救うという使命が」
 シホは胸元をはだけると、そこに刻まれた聖痕を村人たちに見せる。
 この世界の住人なら、その存在は噂に聞いたこともあるだろう。闇に包まれたこの世界に残された聖なる存在――聖者の証を。
「ですから、生贄が必要なら私が引き受けます。代わりにもし奇跡が起きたなら、私たちを信じて欲しいのです」
 凛とした言葉と、覚悟を決めた眼差しが、村人たちを射抜く。

「っ……何を、バカなことを! そんなに死にたいって言うなら、まずお前から……!」
 激昂した村人が、衝動に任せて凶器を振り下ろす。
 普段は薪割りに使う斧でも、無防備なままその刃を受ければ、重傷は免れない――はずだった。
 だが、凶器を振るった村人は、予想外の結果に驚愕する。
「な……傷が、付かない?」
「手元でも狂いましたか? 何度でも、別の手段でもどうぞ」
 目を閉じて、無抵抗の姿勢を取るシホの声は落ち着いていたが、内心ではヒトから向けられる殺意を恐れてもいた。
 それでも彼女が平静を保てるのは、信じて見守ってくれる宵の存在が、勇気を与えてくれるから。
「このっ!!」
 村人が何度、どの角度から凶器を浴びせても、シホの体には傷ひとつ付かない。
 それは守護のユーベルコード、無敵城塞の力。猟兵とオブリビオンのみが扱える世界法則さえも覆す超常能力は、常人からすればまさしく奇跡だろう。

「もうお気づきではないでしょうか? 『生贄を捧げない』という新しい選択肢が増えたことに」
 奇跡を証明したシホは静かに語りかける。
 ふらつきそうになるその体をそっと宵が支え、力強い言葉で続けた。
「領主の言いなりになんてならなくてもいいよ。オレは、誰にも死なずに生きてほしい」
 狼狽える村人たちの手から、凶器が落ちた。

「キミたちは、不幸だった。これまでの傷も癒えないのかもしれないね」
 殺意を失っていく村人たちを見て、これまで静観していたドロンゴンも口を開く。
 生贄だけではなく、この村に住む誰もが心に深い傷を負い、未来を見失っていることを、彼は見て取った。
「でもね、今この時、幸運が目の前にあるんだって、ちゃんと見て欲しいな。そんな物騒なものは手放して、幸運と未来を掴んで欲しいんだ」
 すべての村人にはっきりと見えるよう、ドロンゴンは広場の中心に立ち、そして。
「暗雲は晴れる。僕らが、そして、僕(ドラゴン)が来たのだから!」
 咆哮と共に一陣の風が吹き、村人の手放した凶器がドロンゴンの体に吸い込まれ――風が止んだとき、そこにには一頭のドラゴンが悠然と佇んでいた。
 その"力"に溢れた威風堂々たる姿に、村人たちは思わず息を呑む。
 この力強さならば"領主様"にも……村人たちにそう思わせるだけの存在感が、その威容にはあった。

 そこに最後の一押しを加えるべく、語りかけたのはリーヴァルディだった。
「……ねえ。あなたたちはこれからどうしたい?」
 それは生贄の儀式を続けるか否か、という問いかけではない。
「……このまま目を閉じ、耳を塞いでいても"優しい誰か"があなた達を助けてくれる……でも、猟兵だけが動いても、きっと駄目」
 彼ら自身が、自らの意志で望まない限り、何も変わることはない。こんな幸運はもう二度とないのだから。
「未来を掴めるかは、結局キミたち次第だ」
 頼むぜ。と、ドラゴン体を維持したドロンゴンも告げる。

「領主が討たれた後、何をするの? 作物を育て、壊れた家屋を修理して、周囲の村々と協力して……」
 リーヴァルディが語るのは、未来の話。
 これはでは夢にも見なかった……今は、手を伸ばせばそこにあるかもしれない、未来の。
「また皆でこうして菓子を食べるのも良いかも、ね? 次の日は何をする? 一週間後は? 一年後は? 十年後は?」
 その問いかけに促され、ぽつりぽつりと声が上がる。
 安心して夜を眠りたい、またこんな美味いものを食いたい、死んだ者たちをきちんと弔ってやりたい……そんな望みを口にする声が。

「……明日を望む気持ちが生まれたら、後はその未来を得る為に動くだけ」
 リーヴァルディは頷き、そして生贄の少女に視線を移す。
「サラ……あなたはどうしたい?」
「わ……わたしは……」
 リーヴァルディの、そして猟兵たちの優しい眼差しに促され、少女はおずおずと口を開く。

「わたし……どうしたいかなんて、わかりません」
 家族が生贄にされてから、少女の心はずっと暗闇の中にあった。
 恐怖も、孤独も、やがて深い深い絶望の中に呑まれて消え、そのまま自分も闇に消えるのだと思っていた。
 だけど今日、少女は希望に出会った。
 生きていて欲しいと、希望を持っていいのだと言われた。身代わりになろうとする者さえいた。
 だから、少女は。

「未来のことなんてわからない……だけど、わからないまま死ぬのは、いやだ!!」

 死を受け容れていた少女からの、はっきりとした死を拒絶する言葉。
 その瞬間、村を包んでいた"絶望"という見えない霧が晴れていくのを猟兵たちは感じた。
 誰が言い出すまでもない。これ以上の儀式は不要だと、村人の誰もがそう決意したのだ。

「うん。関係ないなんて言ったけどさ、せっかくならハッピーエンドが見たいよね」
 村の雰囲気が変わったことに、ドロンゴンは満足げに頷き。
「さあ、ここからが僕らの本領だ。嵐の日々を終わらせよう」
 彼の耳は、ばさり、と村に迫る羽ばたきの音を捉えていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『不服従の賢王』

POW   :    贄の叫び
自身が戦闘で瀕死になると【墓場の亡者 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    闇の嘆き
自身の装備武器を無数の【黒百合 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    葬られる孤独
【死の恐怖 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【有象無象の蛇のかたまり】から、高命中力の【恐れを喰らう蛇】を飛ばす。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠揺歌語・なびきです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「儀式が滞っているので様子を見に来てみれば。成程、猟兵の介入か」

 霧に覆われた空を割き、村の上空に姿を現した「それ」は、人の形をしていなかった。
 王侯を思わせる冠とマントを身につけ、仮面を被った巨大な一羽の鳥。
 流暢な口調で人語を語るそれを見た村人の誰かが言う。
「"領主様"……!!」
 長年に渡りこの村を支配してきたオブリビオン。それは真正、ヒトとはかけ離れた存在であった。

「我が民よ、一度だけ汝らに慈悲を与える。儀式を再開し、我に生贄の死肉を捧げよ。さすれば汝らに叛意なしと見做し、今回の遅延は特別に許そう」
 傲慢と不遜に満ちた怪鳥の言葉が、村人たちに降り注ぐ。
 眼下の矮小なる者たちが、自分の言葉に逆らうとは露ほども思っていない態度だ。
 しかし――。

「うるさい!!」

 叫んだのはサラだった。
「もうわたしたちは、おまえの言うことなんか聞かない!」
 恐怖にその身を震わせながらも、ありったけの声を振り絞って、彼女は叫ぶ。
「姉さんを、母さんを、父さんを! 村のみんなを苦しめたおまえに、わたしは、わたしたちは従わない!!」
 村人たちもそれに呼応して、おお!! と怒りの雄叫びを上げた。

「不服従。これは異なことだ、家畜共が我に逆らうとは」
 思わぬ反抗に怪鳥のオブリビオンは驚いたようだが、その態度には余裕がある。
「汝らの絶望を払いのけた、その元凶は猟兵か。よかろう、ならばその希望を断ってくれる」
 大翼を広げ、爪と嘴を怪しく輝かせながら、猟兵たちに向かって"領主様"は降下してくる。

 この元凶を逃せば、例えこの村が救われても、別の場所で同じ事が起こるだろう。
 悲劇に終止符を打つために、猟兵たちは決意と共に戦闘態勢を取った。
リコリス・シュピーゲル
あら、王様が直々に動いてくださるなんて。
これはご自身の政がどのような結果になるのかを、懇切丁寧に教えて差し上げなくては。
どうぞ冥途の土産にしてくださいませ、鶏肉様。

【ドラゴニック・エンド】でまずは村人たちと同じ目線になっていただきましょうか。
技を使わせないよう、瀕死状態にならない程度に加減しておくわ。
「誘導弾」でしっかりと当てることを優先致します。
あとで皆様と一緒に丸焼きにした方がいいと思うの。
もちろん狙い通りに行けそうなら他の技能も惜しみませんわ。

絡みアドリブ等大歓迎


ドロンゴン・コーフィー
ふふ、サラさん、みんなも言ってくれたね。
さて、僕もここからが本番だ。


この場の最悪は、村人に犠牲が出ることだ。みんなが後悔させられる。
【この身は夢幻、我が名は竜】を再発動、「攻撃強化」だ。
領主気取りくんの意識を、僕ら猟兵に向ける。いつでも好きに出来る人々を見てる余裕を与えない!
「空中戦」も知らないわけじゃないけど、容易い敵じゃない。まず脅威の1つとして、「存在感」を出していくよ。
「僕はキミに感謝してるんだよ。僕らの活躍と人々の復活の物語の、イケニエ役くん?

星々が集った。風が吹いた。何よりもドラゴンが、来た。
月が出るよ。太陽が昇るよ。キミ以外が、それを目にするのさ。


メグレス・ラットマリッジ
僭越ですが、そんなにも恐怖がお好きならば私からもプレゼントしますよ。
お礼は結構!怖気だけは余るほどに抱えていますので!

村民をカバーしつつ、他の皆さんが攻撃を当てやすいように補佐したいです。
敵の攻撃の瞬間に合わせて雷杖から電撃を放ち翼を狙います。【援護射撃】や【スナイパー】、各行動阻害技能を合わせて機動力を奪えないでしょうか。体力を消耗するので乱発は厳禁。

天敵がいない動物程、警戒心は緩く余裕を削りやすい。ある程度動きが鈍くなったらUCで地面に引き摺り下ろしますが
もしこちらに近づいてくるようであれば、直接UCにより捕縛を試みます。


リーヴァルディ・カーライル
…ん、良い啖呵
全てを諦めていた村人はもういないみたい
ならば後は、私も彼らに負けないよう、相応しい言葉を送ろう

「…次の生贄はあなた自身よ、“領主様”?」

…まずは敵の行動や攻撃パターンを見切る必要がある
私は前に出て存在感を放ちつつ、明らかに危険そうな爪や嘴を警戒
敵の攻撃は可能な限り回避し、第六感が危険を察知したら
力を溜めた大鎌を薙ぎ払い武器で受け少しでも被害を軽減する

…ある程度行動を見切ったら、敵の隙を突いて【限定解放・血の聖槍】を発動
一瞬だけ吸血鬼化した怪力で空中の敵を掴み地面に叩き付け、
掌から生命力を吸収する魔杭を撃ち傷口を抉る2回攻撃を仕掛ける

「…逃さない、あなたはここで果てなさい」


シホ・イオア
サラちゃんや村人さんたちから勇気を貰っちゃったね。
絶望を払いのける姿、格好良かったなー。
今度はシホ達が魅せる番だね。

他の猟兵と協力して攻撃をあてていくよ
まずは逃げられないようにしないとね
炎を操作して翼を狙っていきます
素早く動いているときは分散した炎で面攻撃
動きが止まっているなら集中した炎で点攻撃

輝石解放、ルビー!愛の炎よ、邪悪を焼き尽くせ!


須藤・莉亜
「僕、上から見下ろされるのって好きじゃないんだよね。」

大鎌を複製し、4本を防御にまわして、残りの15本で翼を狙おう。
翼を切れれば空に逃げられることもないだろうしね。
味方の攻撃に合わして、大鎌を操って追撃を狙うのも忘れずに。

「喋る鳥の血の味、僕に味あわせて?」
バラバラに出来るように頑張ろう。



「ふふ、サラさん、みんなも言ってくれたね」
「勇気を貰っちゃったね。絶望を払いのける姿、格好良かったなー」
「……ん、良い啖呵」
 サラと村人たちの叫びに笑みを浮かべ語り合うのは、ドラゴン体のドロンゴン、妖精のシホ、そしてリーヴァルディ。
 絶望に囚われ、全てを諦めていた村人はもういない。
 ならば、ここからは自分たちが彼らに負けないよう、全力を尽くすまで。

「さて、僕もここからが本番だ」
 この身は夢幻、我が名は竜。
 ドロンゴンのユーベルコードが再発動し、その姿がより攻撃的に変化していく。

「今度はシホたちが魅せる番だね」
 シホが呼び出すのは紅に輝く炎弾の群れ。
 それは彼女の尽きえぬ愛の具現。

 リーヴァルディの手には過去を刻む大鎌【グリムリーパー】。
 その刃をオブリビオンに向け、それに相応しい言葉を彼女は告げる。
「……次の生贄はあなた自身よ、"領主様"?」
 それが、開戦の号令となった。

「無粋な乱入者共よ。我が力をその身に刻むがよい」
 怪鳥のオブリビオンが翼を大きく羽ばたかせると、無数の黒百合の花弁が舞い踊り、周囲の空間を切り裂いていく。
 それは猟兵たちを狙ったものだが、範囲内には多数の村人も含まれている。
 この"領主様"が、戦闘に巻き込まれる民の安否をいちいち気遣う筈もない。

 真っ先に村人のカバーに動いたのはメグレスだった。
 彼らの前に立つと、手にした雷杖から電撃を放ち、花弁を撃ち落していく。
「体力を消耗するので、乱発はできませんが……」
「十分さ」
 落としきれなかった花弁は、ドロンゴンがその巨体を以ってして防ぐ。
 表面を切り裂かれ体液が散るが、まだ大きなダメージではない。
 他の猟兵たちも、各々に回避行動を取り、負傷を避けている。

 この場の最悪は、村人に犠牲者が出ること。
 後悔なき結末のために、ドロンゴンは"領主様"の注意を引き付けるべく叫ぶ。
「僕はキミに感謝してるんだよ。僕らの活躍と人々の復活の物語の、イケニエ役くん?」
「笑止。泥塊如きが竜の物真似で、我を生贄と挑発するか」
「ただの物真似じゃないさ」
 その姿を誇るようにドロンゴンが翼を広げると、生じた突風が花弁を吹き散らす。
「星々が集った。風が吹いた。何よりもドラゴンが、来た」
 その双眸は、霧と怪鳥に隠された天を見据え。
「月が出るよ。太陽が昇るよ。キミ以外が、それを目にするのさ」

「笑止――! 汝らが見るもの、それは圧倒的な力と恐怖である!」
 怒りでカチカチと嘴を鳴らし、怪鳥のオブリビオンは猟兵たちに狙いを定め急降下する。
 花弁が駄目ならば、自らの爪で引き裂くまで。

 だが、その機会を狙い済ます者がいた。
「あら、王様が直々に動いてくださるなんて」
 リコリス・シュピーゲル(月華の誓い・f01271)。暗殺を生業としてきた機械人形の少女が、手にした竜騎士の槍を投擲する。
「ぬ……っ!」
 咄嗟に攻撃から回避機動に移ろうとした"領主様"だが、メグレスが再度放った雷撃がそれを阻害する。
 避け切れなかった槍の穂先が"領主様"の体を掠める。その次の瞬間、槍は鮮やかなスカーレットの翼竜へと変じ、"領主様"に襲い掛かった。
「フラム。ご自身の政がどのような結果になるのかを、懇切丁寧に教えて差し上げて?」
「小癪な……!」
 翼竜の爪牙にその身を切り裂かれながらも、怪鳥は嘴に死のオーラを纏わせると、翼竜の胸を突いた。
 小さく悲鳴を上げて翼竜は槍へと戻り、リコリスの手元に帰る。
「この程度か?」
 負傷しながらも勝ち誇る"領主様"だったが、リコリスは涼しい表情のまま。
 今の攻撃は敵を仕留めるためではなく、追い込みすぎず、油断と隙を作るための布石なのだから。

 そして、リコリスの作った隙を突いて襲い掛かったのは、十五の大鎌の刃だった。
「これは、っ?」
「僕、上から見下ろされるのって好きじゃないんだよね」
 莉亜が複製した白い大鎌【血飲み子】の群れは、彼の念じるまま致死舞曲を舞う。
 その刃が狙うものは、"領主様"の機動力の源である翼だった。
「喋る鳥の血の味、僕に味あわせて?」
「下賎が。王の血は貴様のような者が触れて良いものではない……!」
 自身を包囲する大鎌を吹き飛ばそうと、"領主様"は再び黒百合の花弁を放つ。
 だが、そこに割り込むようにシホが叫んだ。
「愛の炎よ、優雅に舞い踊れ!」
 分散放出された炎の弾幕が、花弁の渦と衝突し、焼き払う。
「ク……ッ!」
「隙あり」
 炎に視界を眩まされ、"領主様"の動きが止まった瞬間、追撃の大鎌が怪鳥の翼を切り刻んだ。
 血飛沫が舞い、白の刃が紅に染まる。
「……不味いな」
 血飲み子から伝わってきた血の味の感想を呟き、莉亜はぺろりと唇を舐めた。

「我の翼が……! 地を這うしか能の無い、下賎の者共に!!」
 翼を血に染めた"領主様"は、怒りに身体を震わせながら叫ぶ。が、その動きは今までと比べて明らかに鈍っている。
 その好機を見逃さず、メグレスは咎力封じの拘束具を放つ。
「僭越ですが、そんなにも恐怖がお好きならば私からもプレゼントしますよ」
「グガッ……?!」
 手枷が翼を縛り、猿轡が嘴を縛り、拘束ロープが脚を縛る。
「お礼は結構! 怖気だけは余るほどに抱えていますので!」
 高らかに宣言するメグレスの見上げる先で、"領主様"の動きが完全に停止した。

 またとない勝機が生まれた瞬間、銀髪をなびかせて地を蹴る影があった。
「……限定解放」
 その少女、リーヴァルディは自らのヴァンパイアの力を解き放ち、驚異的な跳躍でオブリビオンの頭上を取る。
 "領主様"からすれば初めての事だろう。地を這う下賎と見下していた者に見下ろされる経験は。
 仮面の下で目を見開く"領主様"を、がしり、とリーヴァルディが掴む。
「――!!」
 意図を察し、逃れようともがく"領主様"の体を、さらにもう二つ、黒竜と翼竜の爪が抑え込む。
「空中戦も知らないわけじゃないからね」
「村人たちと同じ目線になっていただきましょうか」
「……逃さない、あなたはここで果てなさい」
 ドラゴン体のドロンゴンと、リコリスの翼竜と、吸血鬼化したリーヴァルディ、三つの膂力に抗う術は無く。
 まるで流星が墜ちるように、"領主様"の巨体が大地に叩き付けられた。

「馬鹿、な……この我が、土に塗れるだと……?!」
 仮面越しにも、"領主様"の驚愕はありありと伝わってくる。
 落下の衝撃によって緩んだ拘束から脱した彼は、よろめきながらも再び天に舞い上がろうと汚れた翼を広げる。
 だが――。
「……逃がさない、と言った」
 空中より落ちてきたリーヴァルディは、その落下の勢いを乗せた掌打を叩き込み。
「……刺し貫け、血の聖槍……!」
 掌より放たれるのは、ヴァンパイアの魔力を圧縮した血色の魔杭。
 それはオブリビオンの肉体を深々と貫き、その身を大地に縫い止めた。
「ガアアアアアアアアアアアアッ?!?!」
 霧に包まれた村に、暴君の絶叫が響き渡る。

 もはや"領主様"から当初の威厳と呼べるものはない。
 地に墜ちた暴君に引導を渡さんと、シホは宝石剣エリクシアを掲げる。
「輝石解放、ルビー!」
 紅い輝石が生み出され、それを核として炎が収束していく。
 そして完成するのは、太陽のごとく煌々と燃え盛る巨大な火球。
「愛の炎よ、邪悪を焼き尽くせ!」
 吸血鬼化を解除したリーヴァルディが飛び退いた瞬間、シホは火球を解き放った。

「ギィヤァアアアアアアアアアアッ!!!!!?」
 炎に包まれ、喉も嗄れるような絶叫と共にのた打ち回るオブリビオン。
「オノレッ、オノレェェェェェェェェェッ!!!」
 猟兵への憤怒と苦痛のままに叫ぶ、それは断末魔のようにも聞こえた。
 だが――それは違う、ということを猟兵たちはすぐに理解する。

「来い!!!!」
 "領主様"が号令を発すると、黒い突風が巻き起こり、愛の炎を吹き飛ばす。
 その風は、むせ返るような血臭と、腐臭と――墓場の臭いに満ちている。
「これまでの儀式で蓄えた力……まさか貴様ら如きのために消費せねばならぬとはな……!!」
 黒い風が収束し、"領主様"の傍らで漆黒のヒトガタを形作る。
 そのシルエットは絶えず変化し、老若男女どれにも似て、どれとも違う。
 だが、そのヒトガタを見た村人の幾人かが、悲鳴にも似た声を上げる。

「うそ……いまの、父さんの顔に似てた……」

 呆然としたサラの呟きで、猟兵たちは理解する。
 あのヒトガタは、このオブリビオンが儀式によって集めた力の集合体――言うなれば"絶望の化身"なのだと。
 既に生贄たちの意思も魂もそこには無く、ただ主である"領主様"の命に従うだけの、亡者を模した怪物。

「この力を使わせた代償は重いぞ……貴様らには、たっぷりと絶望してもらわんとなぁ……?」
 勝ち誇りながらも"領主様"に余裕はなく、既に瀕死の重症であることは明らかだ。
 だが、その前に立ちはだかるのは絶望の化身。これを打倒しなければ、"領主様"に引導を渡すこともできない。

 猟兵とオブリビオンの戦いは、最終局面に突入するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

アーレイラ・モンクスフード
「これ以上の絶望など必要ないのです。」
ユーベルコードで呼び出した聖水の杭を亡者に打ち込み、宣言します。


思い出の家族はあんな表情していなかったでしょう?サラさん
「今一度言います。希望を、夢を持って、叫んでいいんです。その気持ちを、意志を」

聖水の杭を集め束ね、槍のように集め、領主に狙いを定め。

「そして…村の皆さん。共に叫んで下さい!領主を倒せと!」

彼女とその両親の行いに報いる切っ掛けを、最初の一歩を。
ここで歩み寄れるならきっとこれからも彼女を助けていけると思うから。

「叫べ!叫べ!叫べ!意志が、希望が、仇の毒となる!」

「力はここに用意した!滅ぼす意志を束ねよ、希望を掴み取るために!」

解き放ち、穿つ!


弦月・宵
シホ(f03442)と参加する。
防御は考えない。攻撃あるのみ

優先する行動は、
①敵を引き付けて村人から距離を取る。
万が一にも戦闘に巻き込まれてほしくない。
「姿に騙されないで。」
死人が本物かどうかは関係ない。オレには敵を倒して解放してやるしかできない。
【UC:ゆるゆら】は針上の水晶を召喚。王様気取りなんて笑わせる。腐った血肉を少しでも浄化しなよ。
『おびき寄せ』て『力を溜めて』『串刺し』。
『鎧砕き』で羽根の一つも残さないから。

②『救助活動』
酷いこと聞いたから。怪我したヒトは皆、【生まれながらの光】で治す。
生きて死者を弔う事が何よりの供養だ。体は資本、大事にね。

全部終わったら、シホとサラを抱きしめたい


ドロンゴン・コーフィー

ここまで来たらやり通す!【この身は夢幻、我が名は竜】防御特化型に切り替えて味方を『かばう』よ。
キツイけどさ、まだ寝られないよ!

それが来るか。皆の心を傷つけたいか。攻撃したら断末魔の再現か?
けどさ。
「その気になってくれて嬉しいよ、イケニエくん!絶望の化身、最高じゃないか!」
僕らは躊躇ってられないだろ。
叶わないはずの、役者が揃った。さあ始まりの時だ!
影は光を受けて生まれる…無理くり言えば!
あれはみんなを守る為の先駆け、希望の化身と表裏一体!絶望?いいや。
「キミたちにも見える筈。わかる筈。彼らはあんなにも、眩く暖かなのだから!」

キミたちの力強さの物語を、どうか僕の宝として持ち帰らせておくれ。


シホ・エーデルワイス
※宵と連携希望

肌蹴た胸元の服を整えつつ

!村人さん達に被害が!
大丈夫ですか!?早く攻撃の範囲外へ避難を!
動ける人は動けない人を連れて逃げて!

狼狽えるな!立ち止まるな!過去に囚われるな!
今迄生贄になって皆さんの命を繋いでくれた人の為にも生きて!

と言いつつ【鼓舞しつつ救助活動】

避難完了後は宵の盾

【かばう】で割込み【オーラ防御、武器受け、激痛耐性】で防御
隙を見て【生まれながらの光】で回復

宵、今度は私があなたを守ります
だから思いっきりね

死の恐怖は宵を想い【勇気】で振切る


決着後
負傷者を【生まれながらの光と医術】を駆使して手当

お願い死なないで!

宵に抱きつき返し少し涙し、村人を励ますために弔いの歌を【歌唱】


シホ・イオア
化身を盾にして戦うつもりかな?
それとも化身に戦わせている間に逃げるつもりとか?
そんなことはさせないよ!

猟兵たちと連携重視
炎で黒百合を迎撃したり牽制したりですね。
余裕があれば18個の炎をすべて違う軌道で領主を狙っていきましょう。
化身がカバーに入るかもしれませんが
それならそれで敵の手数を減らせますしね。
化身が盾になったら領主をあおっていきましょう。
死におびえてこそこそ隠れてる奴がいるってね。

絶望を払いのけたサラちゃんと村人たちの希望の力、祈りの力。
その希望を託されたシホ達が絶望に屈したりはしないよ!
愛の炎よ、すべての絶望を焼き尽くせ!


リーヴァルディ・カーライル
…言ったはず
次の生け贄はあなた自身だと…
今、その言葉の意味を教えてあげる

絶望の化身の行動パターンは領主と変わらないと予想して動きを見切り、
あえて攻撃を武器で受け止め、UCの発動条件を満たす

その後【魔弾装填・超過駆動】を発動
大鎌を弾丸に変化させて銃に装填、
第六感に従って絶望の化身に向けて銃を撃つ
この弾丸は絶望の化身が強ければ強いほど、その呪詛と生命力を吸って力を溜め、術者に強力な反動を与える応報の魔弾…
…私はあなたに慈悲なんて与えない。
彼らの無念と絶望を味わいながら消えなさい


…ん。戦闘が終わったら、最後に村人たちに挨拶を
もう生け贄を捧げる必要はない。長い夜は終わったのだから…


ムルヘルベル・アーキロギア
戦いの間後方支援に徹し、村人らに呼びかけよう
「見よ、あれがオヌシらを圧制し、絶望の甘露を啜っていた輩の有様だ!」
「もはや恐れる必要はなし。オヌシらの覚悟が勝利を呼んでくれたのだ」
この世界の未来を勝ち取るにはワガハイ達だけでなく、そこに生きる人々の意志も欠かせぬゆえな
そして敵にも言葉を投げかけよう
「憎いか? 苛立たしいか? 賢王が聞いてあきれるわ!」
「真の智慧というものを教えてやろう。ワガハイの魔力に服従するがいい!」
【封印文法】を〈高速詠唱〉し奴にぶつける
仲間の攻撃が通りやすいように拘束に全力を注ぐ
「その名の如く、忘却されるがいい。オヌシの愚行は、何一つ語り継がれはせんのだからな」



『ガアアアアアアアアアアアアッ!!!!』
 幾重にも重なって響く叫び声を上げながら、絶望の化身が動き出す。
 その両手には斧と鉈。生贄の儀式を象徴する凶器を振るえば、無数の黒百合の花弁が再び戦場に吹き荒れる。

「……行動パターンは領主と変わらないみたい、だけど」
 花弁の乱舞を大鎌で受け止めながら、リーヴァルディが呟く。
 確かに、絶望の化身が使用する能力は"領主様"と同一のものだ。しかしその威力・規模は主君のそれを上回っている。
 "領主様"が最後の切り札とするだけはあるということか。

「! 村人さんたちに被害が!」
 気付き、叫びを上げたのはオラトリオのシホ。
 絶望の化身が巻き起こした黒百合の嵐は、村全体を呑み込まんばかりに広がり、村人たちにも迫っていた。

「ここまで来たらやり通す!」
 ドロンゴンは再びその巨体を盾にして、仲間と村人をかばう。
 ドラゴン体のポテンシャルを防御へと再配分するが、それでも尚、黒百合の花弁はドロンゴンのボディを削り取っていく。
「キツイけどさ、まだ寝られないよ……!」

「大丈夫ですか!? 早く攻撃の範囲外へ避難を! 動ける人は動けない人を連れて逃げて!」
 ドロンゴンが盾となっている間に、シホが村人たちの避難誘導を行う。
 だが、彼らの動きは鈍かった。
 絶望の化身の姿に……自分たちの儀式が生み出してしまった怪物の姿に、ショックを受けているのだ。

「狼狽えるな! 立ち止まるな! 過去に囚われるな!」
 竦む彼らを鼓舞するように、シホは叫ぶ。
 もうこれ以上、誰一人として犠牲にさせないために、そして、
「今迄生贄になって、皆さんの命を繋いでくれた人の為にも生きて!」
 これまでに重ねられた犠牲を無駄にしないために。

「姿に騙されないで」
 宵はそう呟くと、相棒に村人の救助を任せ、自らは前線へと飛び出した。
 これ以上、あの絶望を村人に近付けさせないために。
「死人が本物かどうかは関係ない。オレには敵を倒して解放してやるしかできない」
 振り下ろされた宵の太刀を、絶望の化身は斧と鉈を交差させ受け止めた。

「父さんが……母さん……姉さん……」
「違います。思い出の家族はあんな表情していなかったでしょう? サラさん」
 呆然とするサラを支えながら、アーレイラは絶望の化身に向けて聖水の杭を放つ。
「これ以上の絶望など必要ないのです」
 この距離ではまだ、その威力は牽制程度。それでも彼女は力強くそう宣言し、村人を鼓舞する。

『ガアアアアアアアアアアッ!!!!!』
 絶望の化身は尚も咆哮する。斧と鉈で宵と切り結びながら、戦場を吹き荒れる黒百合の花弁も止まらない。
 身を呈して村人たちをかばうドロンゴンの負担は大きい。その身体は徐々に小さくなっていく。
 それでも――。
「その気になってくれて嬉しいよ、イケニエくん! 絶望の化身、最高じゃないか!」
 竜は退かない。躊躇わない。この窮地をむしろ好機だと、無理くりに変換する。
「叶わないはずの、役者が揃った。さあ始まりの時だ!」
 光から影が生まれるならば、絶望と希望もまた表裏一体。あの絶望の化身も、希望の先駆けとなるはず。
 それは儚い夢想だろうか? 否――。

「この身に夢現の境なし! 見ろ、聞け、覚えて刻め、僕の名は――!!!」

 "ドラゴン"が咆哮する。
 崩れかけた体を、周囲の物質を取り込んで再構築する。その物質の中には、絶望の化身が撒き散らした黒百合の花弁も含まれている。
 彼の体内に取り込まれた絶望の断片は、光り輝く竜の鱗へと再構成され、未来を守護する力と成る。
「キミたちにも見える筈。わかる筈。彼らはこんなにも、眩く暖かなのだから!」
 犠牲となった者たちが残したものは、絶望ではなく、希望なのだと。
 そう村人たちに呼びかけるドラゴンの光鱗が、絶望の黒百合を弾き返していく。

 その眩い輝きと、猟兵たちの鼓舞を受けて、サラと村人たちの瞳に希望が戻る。
 ありがとう、助かった、と口々に叫びながら、彼らは戦闘の邪魔にならないよう戦場から離れていく。
 負傷者はゼロではないが、死者は出ていない。猟兵は彼らを守りきったのだ。

「おのれ、何をしておるか!!」
 切り札を出しながら敵を仕留め切れない現状に"領主様"が絶望の化身を叱責する。
 その見苦しい様に、もはや支配者としての威厳は欠片も残っていない。

「化身を盾にして戦うつもりかな? それとも化身に戦わせている間に逃げるつもりとか?」
 そんなことはさせないと、妖精のシホが"領主様"目掛け愛の炎を撃ち放つ。
 その数は18、すべて異なる軌道。翼が万全だった時ならばまだしも、今の彼に避け切ることは不可能。
「クカッ……?!」
 悲鳴を上げた"領主様"に炎が着弾する――その直前、飛び込んだ絶望の化身が主君をかばった。
 愛の炎で焼かれた化身の部位が、ボロボロと崩れた。
 絶望の化身の影に隠れて身を守る"領主様"を、シホは指差しクスクスと笑う。
「どうしたの? 死におびえてこそこそ隠れてる奴がいるよ!」
「黙れ! 臣下が身を挺して王を守るのは当然であろうが!!」
 妖精の挑発に乗って激昂する"領主様"の姿は、ただただ、無様だった。

 そして、絶望の化身がダメージを負った隙を見逃さなかったのはリーヴァルディ。
「……言ったはず。次の生け贄はあなた自身だと……」
 彼女の武装の封印が解除され、大鎌が一発の弾丸へと変化する。
 淀みない手つきでリーヴァルディは弾丸をマスケット銃に装填。
 そして、その照準を絶望の化身へと定め。
「今、その言葉の意味を教えてあげる」
 放たれた魔弾は狙い過たず、化身の胸の中心に突き刺さった。

 絶望の化身は強大だ。それは主である"領主様"の力を上回る程に。
 だが、リーヴァルディの魔弾はその化身の力を利用して威力を増す。
 絶望の化身を構成する膨大な呪詛と生命力、それを魔弾は吸って力に換え、化身の内部で炸裂させる。
『ガ、ガガガガガガガガガアッ?!?!?!?』
 自分自身の力をその身に受けて、断末魔の絶叫と共に絶望の化身が崩壊していく。

「ば、馬鹿な、我が最強の臣下が……ゴ、ガハッ?!」
 化身の消滅に愕然とするオブリビオンだったが、即座にその身にも異変が起こる。
 リーヴァルディの魔弾は絶望の化身を破壊するだけでなく、その術者にも強烈な反動をもたらす、応報の魔弾。
「な、何だコレは……我の身体に、傷が、傷が、傷がぁぁぁぁっ!!!?」
 彼の全身に浮かび上がるのは、切れ味の鈍い刃物で抉ったような、無数の傷跡。
 激痛に悶え苦しむオブリビオンに、リーヴァルディは冷徹な眼差しで告げる。
「……私はあなたに慈悲なんて与えない。彼らの無念と絶望を味わいながら消えなさい」

「き、消える……我が……? 嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だァァァァァァッ!!」
 悲鳴を上げてのた打ち回る怪鳥のオブリビオン。
 その様を指差し、朗々と語るのはムルヘルベル。
「見よ、あれがオヌシらを圧制し、絶望の甘露を啜っていた輩の有様だ!」
 その言葉は、今も離れてこの戦いを見守っている村人たちに向けられたもの。
「もはや恐れる必要はなし。オヌシらの覚悟が勝利を呼んでくれたのだ」
 世界の未来を勝ち取るには、猟兵だけでなく、そこに生きる人々の意志も必要不可欠だと、そう信じるムルヘルベルは心からの感謝を村人たちに送る。

「グ、グヌゥ……もう勝ったつもりか、猟兵ども……!」
「憎いか? 苛立たしいか? 賢王が聞いてあきれるわ!」
 猟兵への怒りで苦痛を凌駕し立ち上がったオブリビオンに、ムルヘルベルは嘲笑を投げかける。
「黙れ! まだ僅かだが絶望の力は残っている、これを利用して……!」
 新たな呪詛を紡ごうとするオブリビオン。だが、ムルヘルベルの詠唱速度が勝る。
「真の智慧というものを教えてやろう。ワガハイの魔力に服従するがいい!」
 魔力を有する原初文字、失われた音韻、伝播し感染する情報の災い。
 その三つから構成されたムルヘルベルの封印文法がオブリビオンを襲い、その呪詛を封じた。
「な、く、あ……?」
 呪詛の言葉を忘却した怪鳥は、カチカチと無様に嘴を鳴らす。

 戦いの終幕は近い。
 アーレイラは生成した聖水の杭を束ねながら、サラと村人たちに呼びかける。
「今一度言います。希望を、夢を持って、叫んでいいんです。その気持ちを、意志を」
 何十という聖水の杭を一つにして作り出されたのは、星光の力を宿した一本の槍。
「そして……村の皆さん。共に叫んで下さい! 領主を倒せと!」
 絶望を払いのけた彼らに、新たな一歩を踏み出す契機を。
 ここで心を一つにできれば、サラと村人たちは再び共に歩んでいける。

「ああ……頼む! そいつを倒してくれ!」
 アーレイラの呼びかけに、村人たちは答えた。
「俺たちの想いを」
「私たちの明日を」
「「「あなたたちに託す!!」」」

「そうです、叫べ! 叫べ! 叫べ! 意志が、希望が、仇の毒となる!」
 束ねた聖水の槍の矛先をオブリビオンに向けて構えながら。
「力はここに用意した! 滅ぼす意志を束ねよ、希望を掴み取るために!」
 人々の想いが聖槍に束ねられていく。

「絶望を払いのけたサラちゃんと村人たちの希望の力、祈りの力」
 妖精のシホもまた、村人たちの声援を受けながら、力を溜めていく。
「その希望を託されたシホ達が絶望に屈したりはしないよ!」
 生み出される火球の数は十八。先に放ったものよりも遥かに眩く、熱く、力強い。

「ク、ソ……やめろ、それを向けるな……!」
 ボロボロになった翼の力を振り絞って、怪鳥のオブリビオンは再び空に逃れようとする。
 だが、それを許すまいと接近する影がある。
「そんな様で王様気取りなんて笑わせる」
 神速の足運びで間合いに踏み込んだ宵は、その太刀を大上段から振り下ろす。
 青玄い刃が怪鳥の片翼を断ち切り、血飛沫が散る。
「ギィィヤアアアァァァァァァァ?!」
 金切り声を上げるオブリビオンからもう片翼も奪い取らんと、宵が返し太刀を放とうとした時――
「し、死ねるかァァァァァッ!!!!!」
 死に瀕したオブリビオンの、全身全霊を賭けたユーベルコードが発動した。

 宵の至近距離で巻き起こる、黒百合の嵐。
 恐らくは最後の力を振り絞り――窮地に陥った彼自身の"恐怖"と"絶望"が込められたそれは、皮肉にもこれまで彼が集めた絶望にも迫る力を有していた。
 避けられないと悟った宵は思わず身を強張らせるが、予想された衝撃と苦痛は来なかった。
「シホ!」
 間一髪で駆けつけた相棒が、身を挺して彼女を守っていたから。

 手にした聖剣と光のオーラで嵐を受け止め、それでも防ぎ切れなかった絶望の黒百合がシホの体を切り裂いていく。
 だが、シホは苦痛の悲鳴を上げはしない。絶対に。
「宵、今度は私があなたを守ります。だから思いっきりね」
 死の恐怖を勇気で振り切って微笑むシホに、宵は無言で力強く頷いた。
 守りは彼女が担ってくれる。ならば己は只、攻撃のみに全力を。

「太古より結集し大地の結晶よ」
 ゆるりらゆらりやと、詠うような宵の呼びかけに応じて現れるは針上の水晶の山。
 片翼で尚も空に逃れようともがいていたオブリビオンの体を串刺しにする。
「グゲェッ!?」
 そこにムルヘルベルが再度の封印文法を放ち、肉体と術理の両面からオブリビオンの拘束を完成させる。
「オヌシの死を阻むことは、誰にも出来ぬ。ワガハイらが、オヌシを阻むゆえに!」

 黒百合の嵐が止んだ。
 宵は駆ける。地を蹴る両脚から大地の力を受け止めて。
「羽根の一つも残さない」
 一呼吸。その小柄な体全体で溜め込んだ力を、刀へと伝え。
「腐った血肉を少しでも浄化しなよ」
 放たれた斬撃は、音を置き去りにした。

「星界の力よ、睥睨する世界を回天せよ。祈り束ねし槍となれ!」
 同時、放たれた聖水の槍が怪鳥を貫き。

「愛の炎よ、すべての絶望を焼き尽くせ!」
 十八の炎弾が怪鳥を焼却し。

「終わりだ」
 そして宵の斬撃が、怪鳥を微塵に斬り捨てた。

 断末魔の絶叫を上げる間すらない。
 それが、長年に渡り多くの民の絶望を収集した"領主様"の最期だった。


 村を覆っていた霧が晴れていく。
 それは、オブリビオンの支配から村が解き放たれた報せ。

「その名の如く、忘却されるがいい。オヌシの愚行は、何一つ語り継がれはせんのだからな」
 消失した"領主様"にそう告げると、ムルヘルベルは魔道書をぱたんと閉じた。
 他の猟兵たちも、各々戦闘態勢を解いていく。

「霧が晴れた……!」
「やった、やったぞ!」
 喜びに沸くのは村人たち。その顔には笑顔と、涙。
「あ……おい、見ろ!」
 村人の一人が空を指差す。そこには、分厚い暗雲の隙間から太陽の光が一条、村に向けて差し込んでいた。
 まるで、猟兵と村人たちを祝福するように。

「もう生け贄を捧げる必要はない。長い夜は終わったのだから……」
「キミたちの力強さの物語は、僕の宝として持ち帰らせてもらうよ」
 そう告げるリーヴァルディとドロンゴンに、ありがとう、ありがとうと村人たちは何度も感謝を捧げる。
 もちろん、この場に集ったすべての猟兵たちにも。

「もう、怪我をしてる人はいませんか?」
 オラトリオのシホは癒しのユーベルコードと医術を用いて、負傷した村人たちを治療していく。
「サラさん、あなたも大丈夫でしたか?」
「わ、わたしは大丈夫です。それより、お姉さんのほうがケガを……」
「このくらい平気です。村人さん達を優先しないと」
 痛みを堪えて治療にあたるシホを、心配そうに見つめるサラ。
 そこに、同じように村人の治療にあたっていた宵がやってくる。

「シホ、こっちの治療は終わったよ」
「あ、ありがとう、宵……?」
 シホは思わず目を丸くした。
 宵が不意に手を伸ばして、自分とサラをぎゅっと抱きしめたから。
 宵は何も言わずにただ二人を抱きしめ、その身から溢れる光で二人を癒す。
 戦いの傷を癒されたシホは、少しだけ涙を流し、そっと宵に抱きつき返した。

「……こんな風に誰かとふれあうのって、久しぶりです」
 サラは抱きしめられる感触を心地よさそうに目を細め、そして笑った。
「ありがとうございます、みなさん。この村とわたしを救ってくれて、ありがとう」
 失われた者たちは戻らず、これから先の未来も決して平坦ではないだろう。
「それでも、わたしたちはもう大丈夫。みなさんに希望と勇気をもらいましたから」
 希望に満ちた力強い眼差しで、少女は微笑んだ。


 霧の晴れた村に、歌が流れる。
 それは失われた命への弔いの歌であり、未来へ向けた希望の歌。

 ――霧に隠された悲劇の物語は、かくして終幕を迎えたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月06日
宿敵 『不服従の賢王』 を撃破!


挿絵イラスト