エンパイアウォー⑨~熱に浮かれて
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山陽は長州。徳川が天下を取ったその日から未だ禍根は残り、幕府の支配を良しとしない者が多くいる土地『であった』。
なぜ過去を示す形であるかはその毛利の一族は既にこの世にいないからだ。嘗て藩士達がいた館にではだた多くの鞠が跳ねるだけ。ぽーんぽーんと、何を考えているのかあるいは考えることさえ出来ないのか勝手に跳ねている。
その鞠のひしめく館の奥に、これと同じ球体であれども跳ねない別のものがある。それはひたすらに熱を発し、この地にあらざる空気をもたらしている。市井の人々はこのただならぬ熱に倒れ、或いは何処からかの流行り病によって床に付く。
幕府に反目する者たちが力を望むために招いた来訪者。それがコルテスであり、彼奴はただ生贄を求めていただけに過ぎない。その果てが怪しげな手毬であり、この地の危機であった。
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「さて、暑いところは好きかい?」
アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)がエンパイア・ウォーの映像を出して問う。
「アンタ達に行ってもらいたいのはこのサムライエンパイアでも山陽って呼ばれる場所さ。今ここが猛烈に暑い、それこそ人死が出るくらいにはね」
それが自然なことではないと彼女は言う。
「仕込んだのは侵略渡来人・コルテス。こいつはこの辺りに熱波を呼ぶ宝玉と病気をばらまていった。もちろん護衛のオマケも付けてな」
その護衛も現地調達の生贄を使って生み出したらしい。
「熱も病も宝玉を壊せば収まる。って事はとっととそれをやっちまえば良いんだけど、邪魔な護衛、……遊び用のボールみたいなのがそれなりの数、館の中で守ってる。こいつを撃破しておかないと色々邪魔でね。そっちも頼みたい」
生き残った鞠が人を襲うかも知れないと彼女は言う。
「ああ、こいつは人食いだ。都合の良い夢を見せて食っちまう。あとは増えたり嫌がらせしてきたり……。まあそんな感じだ」
心を強く持てば大した敵ではない相手らしい。
「それじゃ行っといで、猟兵(イェーガー)!」
西灰三
いつもお世話になっています。
西灰三です。
エンパイア・ウォーの依頼をお送りします。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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詳しい状況はオープニングの通り。
それでは皆様のプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『蒐集者の手毬』
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POW : あなたと共に在るために
【自身がよく知る死者】の霊を召喚する。これは【生前掛けてくれた優しい言葉】や【死後自分に言うであろう厳しい言葉】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 理想郷にはまだ遠い
【自身と同じ能力を持つ手毬】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : いつか来る未来のために
小さな【手毬】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【全ての望みを再現した理想郷】で、いつでも外に出られる。
イラスト:にこなす
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィクティム・ウィンターミュート
まーたコルテスの野郎の狡い計略か
征服者気取ってる割には、案外陰湿な策がお好みらしい
──何を仕掛けようが関係無い
全部潰して、猟兵が勝つ。結末はそれだけだ
さーて、愉快なゾーニーズはボールか…
纏めて溶かし殺して、終いだ
『Acid Disaster』展開、散布完了
一度感染すれば無数に増殖するぜ…徐々に酸で埋め尽くされるのを、ゆっくり待つといいさ
理想郷だの未来だの、それがどうした?
"今"勝利する。それ以外に興味は無い
勝利の邪魔をするなら、たとえ理想が目の前にあろうが何だろうが、ぶっ殺す
時間の無駄だ…全部消えちまえ
宝玉もさっさと破壊して──状況終了だ
次の戦場に向かう
止まってる余裕は、俺には無い。
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存外に広い武家屋敷にブーツのまま踏み込むのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)だ。
(「まーたコルテスの野郎の狡い計略か。征服者気取ってる割には、案外陰湿な策がお好みらしい」)
実際に交戦した猟兵からの情報によれば、戦い方すら忘れてしまっているらしい。謀略にかまけているからこんな手段なのか、はたまたその逆なのか。
(「──何を仕掛けようが関係無い。全部潰して、猟兵が勝つ。結末はそれだけだ」)
それはシンプルなルール。勝利条件をクリアしていくだけだ。周りをうかがいながら進むヴィクティムが襖を開けると鞠が上下に跳ねていた。
「さーてこれが噂のゾーニーズか」
何やら昔どこかで聞いたようなドレックを聞いた気がするが、そんな事はどうでもいい。
「纏めて溶かし殺して、……終いだ」
ヴィクティムは跳ねる鞠にナノマシンを叩き込む、それで終わりだ。鞠の内側から糸は解けナノマシンに食われていく。その内の糸の一端が触れた時、願いのメッセージだけが聞こえる。しかしそれも彼に言い捨てられる。
「理想郷だの未来だの、それがどうした? "今"勝利する。それ以外に興味は無え」
ヴィクティムは消失していく手毬を後に、次の部屋へと続く襖を開ける。彼に止まっている余裕など、無い。
大成功
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ゼン・トキサカ
現状への不満から力を求めた結果がこれとは皮肉だねぇ
馬鹿なことをと思わないでもなけれど
別に願ってなかった者には同情の余地があるし
敵の狙いは潰しておかないと
館にそっと侵入して鞠の位置を確認したら
撥条式無限迷宮にご招待しようか
悪いが俺はまだ駆け出しでね
正面からやり合うのは不安があるし性にも合わない
迷いこんだまま果てればよし
例え脱出できても出口はひとつ
待ち構えてひとつずつ剣で潰していけばいいだろう
時間がかかる戦い方だから
この暑さが最大の敵かもねぇ
鞠が片付いたら
一応念入りに鞠が残っていないか確認してから宝玉を壊そう
他に壊す人がいるなら任せてしまうけどね
ほんの僅かでも何かの力になれたならいいんだけど
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「現状への不満から力を求めた結果がこれとは皮肉だねぇ」
恐らく迷宮の案内役であるはずのゼン・トキサカ(メイソウラビリントス・f19411)は、人々を惑わせた鞠の様子を見て呟いた。しかし、これらを同時に相手にするのはなりたての猟兵である彼にとってやや難儀なものだ。ついでに不安もあれば性にも合わない。そこで彼は鞠を歯車とゼンマイ仕掛けの迷宮へと閉じ込める。
「この中で迷い惑って彷徨い果てる……かな?」
彼が作った迷宮は可動部の多いものである。衝撃でダメージを受けないとは言い難いが、それだけで倒せるかは少々不安がある。
「……仕方ない、か。こっちが茹だる前に片付けてしまおう」
ゼンはサーベルを引き抜いて迷宮の中へと足を踏み入れる。彼が迷宮の中を進んでいくと、早速鞠を一つ見つける。
(「もしかしたらコルテスの言葉に耳を貸さなかった人も犠牲になったのかも、ね」)
もしそうなら同情の余地はある。しかしやることは変わらない。彼は剣を振り下ろし鞠を真っ二つにする。
「これで少しは力になれていればいいけれど」
ゼンは次の相手を探しに迷宮の探索を続けていく。
大成功
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夜暮・白
わ。キレイ。これが敵じゃなかったらなぁ。ぶつかったら痛そうだし、[野生の勘]も使って[ジャンプ]しながら避けるよ。
それと団長さんに借りた艦からミュージック・スタート! 【飛空戦艦ワンダレイからの激励】で気分を上げるよ。さあ。白昼夢を見るより目の前を変えてかなきゃ。
乱鐘機杖を銃として使い、毬を撃ちます。接近されたら杖で跳ね上げてから撃ち落としたり、ダガーに替えて切り裂いたりしてテンポよく倒そう。固い敵がいたら時間を稼いでから【集め縒る見抜きの一射】を使うよ。
現実を見て指揮をとってる将軍さんがいるなら、僕はその現実を良くするために戦わなくちゃね。そのために来たんだから。
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「わ。キレイ……」
目の間でひとりでに跳ねるその鞠の様子は、表面に映し出された花畑と合わさって美しく見える。夜暮・白(燈導師見習・f05471)の感想はそれであった。
「……これが敵じゃなかったらなぁ」
ひょいとその場でジャンプして飛んできた鞠を避ける白。戦いの調子を上げるために、彼の母艦から借りてきた音響端末のスイッチを入れる。
「ミュージック・スタート!」
流れる音楽は勇ましく彼の戦意を向上させる。目の前の手毬もその節に合わせて跳ねる拍子を変えたような気もしなくもないが、まあそれだけだろう。特に感情とか無さそうな相手だし。
「よし、発射!」
杖状の銃器からエネルギー弾を発射して、襲いかかってくる鞠を次から次へと撃ち抜いていく。音楽に合わせて行うそれは、戦闘というよりはどこかのゲームのようでもあった。
「よっと……危ない」
不意に直前にまで飛んできた鞠を打ち上げ、そのまま撃ち抜く。こんな所で夢を見ている時間はない、
(「現実を見て指揮をとってる将軍さんがいるなら、僕はその現実を良くするために戦わなくちゃね。そのために来たんだから」)
今必要なのは、勝利すると言う現実を掴むため。白は少しでもそれに近づくために戦うのであった。
大成功
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ
『地形を利用』を使い死角になる場所を選び進む
敵を見つけた際は【罪告げの黒霧】にて『マヒ攻撃』後メイスにて『なぎ払い』進む
敵の攻撃を受けた際はきっと
肉を得てから共に過ごした赤毛の女所有者を見るのだろう
共に過ごした日々と…そして想い合いつつも俺が『物』であるが故に口に乗せなかった言葉や感情を今は認め過ごしている様を寂し気に…だが、喜ばしい事であると告げられればきっと、隙は生まれてしまうだろう
お前が居た故、今の俺がある
感情は変われど大事に思う気持ちは変わらぬのだろう
故に、今は別れをと元の蹴鞠に攻撃を
死後の世界があるならば、共に朽ちた相手を紹介しよう
お前ならばなんだ、きっと笑って聞いてくれるだろう?
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ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)はふと見知った場所に立っていた。ついさっき迄は武家屋敷の中を慎重に敵を撃破しながら進んでいたはずだ。しかしここはどうだ。
「ここは……」
懐かしい草木の香りが鼻をくすぐっていく。彼が振り返れば赤毛の女性が立っていた。
「―――」
「……私はあの時言えなかった事を、今なら言える」
「―――」
「懐かしいな、その顔。良く覚えている」
ザッフィーロは赤毛の女と向かい合い、言葉を交わす。ここは夢の中、後悔すらも取り戻せる優しき処。あの時『物』であった彼が見ることの出来なかった夢の中。
「―――」
「ああ。お前が居た故、今の俺がある」
そして夢は覚めるものである。
「感情は変われど大事に思う気持ちは変わらぬのだろう」
彼の世界は輪郭のはっきりした物へと書き換わり、目の前には鞠が転がっている。その表面には先程まで彼がいた場所と赤毛の女が朧気に写っている。
(「死後の世界があるならば、共に朽ちた相手を紹介しよう。……お前ならばなんだ、きっと笑って聞いてくれるだろう?」)
一炊の夢は終わる。彼の記憶の彼女は夢が終わっていても微笑んでいた。
大成功
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樫倉・巽
理想などない
ただ剣を振る先に辿り着く場所があるだけだ
刀を極めるために生きる
それが全てだ
果ては無い
理想とは幻のように立ち現れ
そして消えていくもの
心を研ぎ澄まし
覚悟を決めている
刀を抜いていなくとも
いつでも斬ることはできる
館の中に入り
扉を開けながら進む
蹴鞠を見つければ即、刀を抜き撃ち両断しようとする
数は多い
傷つくことを覚悟でできるだけたくさんの蹴鞠を斬りに行く
斬り合いに、殺し合いに
無力なものを巻き込むのは道義に反する
殺し合うならその覚悟があるものと、人の道に外れた者達で行えばいい
部屋の中で動くものが無くなれば次の部屋に行き宝玉と蹴鞠を探す
「全て斬る
戦わざるものを生かすため
悪意の全てを葬り去るため」
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白い、白い世界。樫倉・巽(雪下の志・f04347)はその中心に立っていた。その中で現れたのは竜だ。鋭き牙を持ち輝く鱗、そして全てを焼き尽くす炎の吐息。
「………」
巽は刃を抜かず、それを切り捨てる。望めば牙も鱗も吐息も手に入ったというのに。そして彼の頭上では大きな鳥が鳴き声を上げながら旋回している。あれ程の翼があれば海を渡ることも、頭上から相手を引き裂くことも可能だろう。
「………」
しかしそれもまた切り伏せられる。そして三度現れたのは、竜と鳥の力を持った己自身。
「……果ては無い」
ただの理想など刀を抜かずとも切れる。現の鞠は抜けば切れる。巽はそうして無数の鞠を切り捨てて館の最奥ににまで至ったのだ。その彼に精神の緩みは無く、貫くのは道理。
『斬り合いに、殺し合いに無力なものを巻き込むのは道義に反する。殺し合うならその覚悟があるものと、人の道に外れた者達で行えばいい』
ただそれだけの事だ。巽は全ての鞠を切り捨てると宝玉も切り捨てる。すると辺りを熱していた空気がやや晴れたように感じられる。巽は直様に踵を返すと館を後にする。
(「全て斬る。戦わざるものを生かすため、悪意の全てを葬り去るため」)
大成功
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