10
エンパイアウォー⑨~流汗淋漓、鬼の業火

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0




 侵略渡来人・コルテス。長州藩は毛利一族を籠絡す!
 かねてから幕府に叛意を抱いていたとはいえ、愚かなことこの上なし。
 愚行の代償は、長州藩士の命によって贖われてしまったのだから……!

「地図でいうと、ちょうどこのあたりが山陽道ね。
 ここが、ちょっと……いえ、かなりまずいことになりそうなのよ」
 グリモア猟兵、白鐘・耀は、深刻そうな面持ちで頭を振る。
 全てはコルテスの儀式だ。現在、山陽道は2つの脅威に見舞われようとしている。

 ひとつ! 人間が生存可能な気温を遥かに超えた、儀式による灼熱地獄!
 ふたつ! 高温環境下でのみ生存可能な、南米由来の邪悪な風土病ウィルス!!
 まさに無慈悲な征服者に相応しい、非道なる作戦と言えよう……!
 今はまだ策略の段階で留まっているとはいえ、放っておけばじきに実行に移される。
 幕府軍三万人が、山陽道周辺の多くの民が犠牲になってしまうのだ!!

「この間の富士噴火作戦と同じで、儀式の中核を担っているのはオブリビオンどもよ。
 ……もともと、こいつらも長州藩の人たちを犠牲に召喚されたモノなんだけどね……」
 もはや犠牲になってしまった藩士たちに思いを馳せても、時既に遅し。
 その生命を無駄にしないためにも、かの敵を抹殺することが肝要だろう。
 放っておけば、幕府軍に甚大な被害が出ることは必定ゆえに。
「敵は『鬼百足』。まあこのクソ暑い作戦に相応しい、炎を扱う1つ目の怪物どもよ。
 こいつらを蹴散らして、儀式に使われてる霊玉を破壊すれば、作戦は未然に防げるわ」
 そこで耀は、メガネを掛け直しつつ言った。
「敵の居所は、小豆島・銚子渓。播磨灘の名所よ! ガツンとかましてきなさい!」
 暑気とともに邪悪な敵の瘴気を祓うかのように、火打ち石が力強く鳴り響く。
 それが、転移の合図となった。


唐揚げ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 扇風機です。以下は本シナリオのまとめ。

●目的
 敵戦力を撃破し、コルテス軍の非道儀式を妨害する。

●敵戦力
『鬼百足』(集団戦。数は不明)

●備考
 儀式は瀬戸内海にある小豆島・銚子渓で準備が進められている。
(ロケーション的な設定であり、特に戦略的なあれこれはありません)

 以上です。特に奇を衒わず真正面から殴り飛ばせるシナリオではないかと。
 なお本作は完結を最優先するため、普段よりも採用数が少なめになると思われます。
 プレイング採用も早めに始めるつもりなので、ご参加をお考えの方はお早めに。

 では前置きはこのあたりにして。
 皆さん、絶景をバックに大立ち回りをしていきましょう!
533




第1章 集団戦 『鬼百足』

POW   :    懊悩の苦鳴
【激しい苦鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蟲尾
【百足の尾】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    火炎鎖
【自身が繰り出した炎】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎が変化した溶岩色の鎖】で繋ぐ。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●播磨国:小豆島、銚子渓
 瀬戸内海東部、播磨灘に浮かぶ小豆島。
 東に淡路島を望むこの地には、銚子渓(ちょうしけい)と呼ばれる景勝渓谷がある。
 高さ20メートルを超える銚子の滝は涼やかな水しぶきをあげ、
 高台から一望できる美しの原高原と、瀬戸内海の景色はまさに名勝地である。

 だが今、この島は、無数の『鬼百足』なる邪悪なオブリビオンに支配されていた。
 長州藩士の命を生贄に、骸の海より呼ばわれし、恨み骨髄に達した羅刹の成れの果て。
 単眼の鬼どもが撒き散らす炎は、まさに憎悪と怨恨に燃え上がる業火である……!

 わけても異常なのは、儀式の進行によって加速度的に高まりつつあるその気温!
 このまま放っておけば、霊峰富士のエネルギーを集めた霊玉が、
 この島はおろか山陽道をまるごと灼熱地獄に変えてしまうだろう!
 美しき風景と、そこに住まう無辜の人々を護るため――猟兵よ、播磨に躍れ!
●プレイング受付期間
 早ければ8/15夜、どれだけ遅くとも8/16夕方には締め切ります。ご参加はお早めに。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

サムライエンパイアならではの景観だよね
たくさんの人に愛されてる場所なんだろうなぁ
うん。行こう、ヨハン
灼熱地獄にウィルス……
行動に移されたら取り返しがつかなくなっちゃう

やっぱりヨハンは凄いな
氷に水、私にも扱えればもっと彼の力になれるのに
……、だめ
戦いに集中しなきゃ

ヨハンのフォローが届く範囲でのみ行動
炎は氷の壁が防いでくれると信じて、尾の動きをよく見る
予備動作を見極めて、【早業】を活かして【見切り】
守りは任せて攻撃のみに専念しよう
最も近くに位置する敵を各個撃破
密接しているようなら【範囲攻撃】で複数体を巻き込む

……無理してないかな
あんまり時間をかけないようにしなきゃ


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

成程、美しい景色とは思いますね
こんな時でも無ければ足を運ぶ機会もないでしょうけど
景観を守るなどと殊勝な心掛けがある訳でもありませんが、
暑苦しい百足どもは目障りだ
行きましょうか、オルハさん

『凍鳴蒼』を<呪詛>と<全力魔法>で強化し氷を用いる
炎を寄せぬよう氷の防壁を作り、地面にも水を這わせよう
敵が水の範囲に入れば凍らせ動きを封じる
脱皮などさせる前に【蠢く混沌】で刺し貫こう

攻撃はオルハさんにお任せしますよ
彼女の手の届かぬ範囲のみ俺が
防御と足止めに最も力を割きます

あまり広く長く攻撃を続けると魔力がもたない
最低限の働きは出来るよう尽力しよう
……心配させる訳にもいきませんしね



●近いはずの心、されど想いは
 普段ならば海を、方角によっては高原を見下ろせる風景は、陽炎が揺らめいていた。
 どこかにあるはずの、霊峰富士の火山エネルギーを溜め込んだ霊玉。
 これを媒介にした、非道渡来人コルテス傘下の儀式による気温上昇だ……!
「……景観を護るなどという、殊勝な心がけがあるわけでもありませんが……」
 己まで茹で殺そうとする熱波を、魔術の冷気によって散らしながら、
 それでも抑えきれぬ汗を拭い、ヨハン・グレインは静かに呟く。
「なるほど、名勝地に選ばれるだけはあります。暑苦しいムカデどもは目障りだ」
 行きましょう、と言って、ヨハンはオルハ・オランシュのほうを見た。
 そんな少女は、ドライなヨハンと違って、この景色に思うところがあるのか、
 陽炎がゆらめく風景を見つめたまま、彼の言葉に反応を示さない。
「……オルハさん?」
「えっ? あ、ごめんヨハンっ、ちょっと考え事してたっていうか」
 わたわたと手を振って弁明する彼女を、ヨハンはため息をついてなだめる。
 心優しい彼女のことだ、自分と違って敵の所業に物悲しさを感じていたのだろう。
「……たくさんのヒトに愛されてる場所なんだろうな、って思ってさ」
 そんなヨハンの考えを察したのか、苦笑しながらもオルハは言う。
「今でさえこんなに暑いのに、これ以上気温が上がったら誰も生きられないよ。
 それにウィルスまでばらまくなんて……どこまで念入りな作戦なんだろう」
「相手もそれだけ本気ということです。だからこそ、潰すことに意味がある」
「……そうだね! うん、ごめんね、気合入ったよ。さあ、行こう!」
 ふたりは視線を交えて頷きあい、銚子渓を目指して駆け出した。
 敵の気配は近い。それも無数……これは、苦しい戦いになるだろう!

 ……そして、岩肌がむき出しとなった銚子渓の山麓!
 駆けつけた二人の気配を察知し、五体の鬼百足がぎょろりと単眼で振り返る!
 けえっ、と怪鳥音じみた雄叫びを上げるさまは、鬼というよりは猛禽のようだ。
 おそらくは、その正気を奪うほどに、何か強烈な怨念を抱くに至ったのだろう。
 大元となった存在の歩んだであろう道程に、思いを馳せる余裕はなし!
『カァアアアアアッ!!』
 鬼百足の纏う炎がざわざわとゆらめき、鎖を形作ってふたりへ襲いかかる!
 勢いそのままに飛び出したヨハンは、氷の防壁を展開しこれを防御した!
 ジュウウ――! 鬼の業火は、しかし分厚い氷壁を即座に融解していく!
「敵の攻撃はこちらで防ぎます。オルハさんはいつものように」
「――……」
「オルハさん? 敵が来ます」
「あ……っ、ご、ごめんっ! わかった、私が攻撃だねっ!」
 ばさり、と暑気を払うように翼を拡げ、オルハは空を舞った。
 これを絡め取ろうとする炎は、ヨハンが闇の刃を以て切断し破壊。
 融解した氷壁も、水となって地面に広がることで魔法の効果範囲を広げる。
 敵の攻撃を無駄にはしない、卓越した魔術師の戦略眼と言えよう。
(一体何を呆けて――いや、俺まで悩んでも仕方がないな)
 様子のおかしいオルハを訝しみながらも、ヨハンは意識を切り替える。
 氷壁を常時展開強化しながら、敵の影から黒闇を針めいて生み出し串刺しにするのだ!

 ……縦横無尽に活躍する少年の戦いぶりに、オルハは見入っていた。
 いまさらな話だが、やはりヨハンの腕前は並ではない。一流の域に達する。
 彼はそれを言ったところで卑下するだろうけど、それでもすごいのだ。
 ただ、オルハの心を乱していたのは、そんな彼の腕前に対する感嘆ではない。
 ……"自分も、あんなふうに魔力を操ることができれば"。
 "もっとうまく魔法をコントロールできれば、彼の力になれるのに"。
 それは、もうとっくの昔に、捨て去ったはずの思いだった。
 あんな惨事を引き起こした自分が、願ってはいけないはずのものだった。
 脳裏によぎる惨劇の記憶。泣き叫ぶ弟の姿。そして、血に塗れた自分の――。
(……、だめっ)
 ぶんぶんと頭を振り、過去の追憶を脳裏から必死で払う。
 いまは戦いの真っ最中だ。集中しなければ……そら見たことか、敵の尾が!
「しまッ」
「オルハさん!」
 間一髪! ヨハンの生み出した闇の一撃が、オルハめがけた尾を貫く!
「――あ、ありがと、ヨハン!」
 きっと叱咤されるだろう。でも今は、助けてもらえた喜びを胸にしまって。
 猛禽のように真下へ急滑空し、尾を貫かれた鬼百足の喉元を切り裂く!
『ギィイイイ!!』
「これはお返しだよ――もう、見切ってるんだからっ!」
 さらに背後からの不意打ち! これを宙返りで回避し、真上からの刺突!
 遠くで嘆息する少年の姿を瞳の端に捉え、オルハは風のように戦場を舞う。
 自分が油断して、彼に無理をさせてはそれこそ意味がないというものだ。
 雑念を洗い流すように、速度を求めて羽ばたく。駆ける。地を蹴る。
 思い上がった己の、分不相応な望みをも、切り裂くように矛を振るう。
 今はそうしたかった。誰のためでもなく、彼のために。そして、己のために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

桜・結都
グィーさん/f00789 と

灼熱地獄に風土病……どちらも放ってはおけませんね
炎を扱う百足たち、その脅威を取り除きましょう
今回も頼りにしていますね、グィーさん

『桜咲』を錫杖へと変じ構えます
<全力魔法>で雷霆を放ちましょう
無数の百足たちでしたら、範囲攻撃が有効でしょうか
グィーさんと合わせて効率よく敵を倒せるよう、
足止めとなる一撃で感電させ、その隙にトドメを刺していきます

炎には『桜霊符』を用いて<破魔>による結界を
悪しき炎は寄せ付けさせません

敵の場所を雷霆により誘導し、ひとところに集めていきます
一網打尽を狙いたいのです
【桜花の宴】でその身、切り裂いてみせましょう


グィー・フォーサイス
結都(f01056)と

百足が居なければ良い景色なんだけどなぁ
人々の命をなんとも思っていない非道な作戦だ
見過ごせる訳がない
僕も君を頼りにしているよ、結都

まずは『配達区分』
僕の管轄となる場所は広い方がいい
結都の攻撃に合わせ、風を纏わせ
沢山の切手たちを範囲を広げてばら撒こう
攻撃が当たらなくとも
外れた分と時間が経過すればする程僕は有利になれるだろう

炎には結都が結界を張ってくれるけれど
僕はもしもの備えに僕と結都に水の膜を、水精霊に張ってもらおう
…毛が焦げたら嫌だしね

結都が百足を誘導している間に
僕はジェイドと風を練り練り
百足の弱点なら、やはり頭だろう?
鋭利な風の刃を作って
全ての首を切り落としてしまおうか!



●紙桜/咲かし荒ぶは/風刃
 鬼将・上杉謙信を討ったとて、それだけで戦いは終わらない。
 なぜならば、信長傘下の魔軍将はいまだ多数あり!
 ここ山陽道を襲うのは、邪悪渡来人コルテスの軍勢なのだから!
「グィ―さん、下がってくださいっ」
「大丈夫だよ結都、僕が合わせる。君は存分にやってくれ」
 錫杖を構えた桜・結都は、グィー・フォーサイスの言葉に頷く。
 そして、己の霊力を雷霆へと変換せしめ、目の前の鬼百足どもに解き放った!
 ZZZZZZTTTTTTT……!! 常識外の高気温を切り裂く紫電、嵐の兆し!
『『『ガァアアアアアッ!!』』』
 固まってふたりを真正面から圧殺しようとしていた鬼百足どもは、
 この荒れ狂う電撃を恐れて四方八方に飛び散る。虫めいたおぞましい速度。
 結都はこの一撃で彼奴らを感電せしめ、続くグィ―の攻撃で屠る算段だった。
 だが、彼奴らの鋼じみた百足の外皮と、驚異的速度がそれをさせぬ!
「山賊相手とは、やはり勝手が違いますね……っ」
「落ち着いて。君はあの鬼将に立ち向かったんだ。それに、ほら――」
 グィ―はあくまでも余裕。掌から離れていくのは風に舞う無数の切手。
 まるで桜吹雪のように渦巻くそれらが、鬼百足どもを害することはない。
 しかしペタペタと地面に、あるいは周囲の岩肌に切手が張り付くと、
 その範囲はまるで絵手紙めいて変質し、邪悪な暑気すらも払ってしまった!
「ここはもう"配達区分(僕のテリトリー)"だ。次は逃さない」
「なるほど、こうして範囲を拡げていけば……!」
 鬼百足どものユーベルコードでは、この範囲形成を害することは出来ない。
 転んでもただでは起きない。したたかな配達士らしい二段構えの戦術!
『ギィイイイァアアアアア!』
 だが見よ! 鬼百足どもは並列接続された電池のように互いの魔力を励起させ、
 溶岩じみて燃え上がる超高熱の大火球を形成、ふたりめがけ放ってきた!
(これは――桜霊符では、止められない……)
 防御すれば、あまりに高すぎる熱量に押し潰されてしまうだろう。
 結都は即座に状況判断し、雷霆を目眩ましに放って横っ飛びに回避!
(無茶をしない。それでこそ猟兵というものだ)
 その判断を心のなかで称賛しながら、グィ―も軽やかに宙返りを決める。
 直後……KA-BOOOOM!! 火球が着弾し、大地をガラス状に融解させた……!

 敵の数は6。二人で挑んだ、あの恐るべき十二魔剣の魔将に比べれば雑魚だ。
 しかし、だからといって、この戦いが易く終わるわけでは決してない。
「……疾い、ですね。それに、あの炎がとても厄介です……」
 人じみた上半身でありながら、生理的嫌悪感を催させる蠕動を以て蠢く鬼どもに、
 さしもの結都ですら、顔を顰めずにはいられなかった。
 周囲の高温も相まって、少年の白い柔肌を、冷や汗めいたものが伝う。
「……あえて、一か八かで、あの攻撃を防いでみるという手もあるかもね」
 危険であることを承知の上で、グィ―は静かに囁いた。
 結都は……大丈夫です、と無思考に言いかけ、頭を振る。
「私ひとりでは難しいですが、でも」
「僕の力があれば、あるいは、か。いいだろう、一蓮托生だ」
 覚悟の時だ。二人は交わす言葉なく頷きあい、あえて足を止めて敵を睨む。
 来た! 狡猾にも、敵はふたりを包囲し焦熱圧殺を目論んでいたのだ!
「……悪しき炎は、絶対に寄せ付けさせませんっ」
 かすかな桜の香りを漂わせ、結都の懐から無数の霊符がざらざらと現れる。
 ひょうひょうとなびくグィ―のそよ風が、霊符たちを空へと巻き上げる!
「毛が焦げたら厭だしね。これで……あとは、出たとこ勝負だ」
 とぷん、と、涼やかな水の膜がドーム状に二人を覆う。
 さらに水精霊の魔力が、飛沫となって霊符の内側に霧めいて漂う。
「……来ますっ」
『『『アァアアアアア……ギィイイギギギッ!!』』』
 ゾゾゾゾゾゾ……ふたりの頭上に収束される熱波、強烈な火炎!
 さながら鉄槌の如く……数千度の鬼の業火が、落ちた! KRAAAAASH!!
「……ッ!!」
「まったく、サウナみたいな暑さだ……!」
 結都は歯を食いしばり、霊符にありったけの霊力を込めて結界を維持する。
 バチバチとぶつかり合う熱量、そして……おお。炎が、爆ぜた!
「今ですっ」
 ZZZZZTTTTTT!! 結都は、結界構築に回していた霊力を錫杖へ収束!
 萎んだ霊符の結界は、そのまま地面を蜘蛛の巣めいて走る雷の帳となる!
『『『ギャアアアアアアッ!?』』』
「逃さないよ。ジェイド!」
 結都が錫杖を桜の花びらに変え、グィーが魔力を風の刃に変えて解き放つ。
 ふたりを中心に8方向へ桜と風が散る様は、真上から見れば花弁の如し!
 狙い過たず、鋭い刃は鬼百足どもの頭部を貫き、一網打尽にせしめた!
「……や、やりました、グィ―さん!」
「ああ……賭けは成功だね。でも、味をしめてはいけないよ?」
「ふふっ、グィ―さんがいたこそですから。……少しだけ、涼しくなりましたね」
 ひょう、と、静けさに包まれた戦場に風が吹く。
 そこにはもはや、鬼どもの業火は残滓すら存在しない――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ロク・ザイオン
※ジャックと

……炎は。
自ら朽ちぬものを。生を歪めた病を。
巡らせるものだ。

いつしか消える為のものだ。
……病の為にあるものじゃない!!

(【地形利用】しながら【ダッシュ】で突っ込む
【野生の勘】で炎を躱しながら
ジャックが動きを止めたものを【早業】の「烙禍」で【なぎ払い】
炎も、溶岩も、病どもも
灰と炭に変われ)

ひとつも。
残すつもりはない。
……おーば!


ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)

病を撒き散らす蟲か――。
君が捨て置けるものでもないだろう。
援護は本機に任せろ。
君は己が職務を存分に為すといい。(ザザッ)

SPDを選択。
UC:"Palalyze Laser"を使用。

敵の動きは行動予測で見切り、デコイによる撹乱なども交え回避。(学習力+情報収集+見切り+フェイント+迷彩)

回避のち、レーザーを敵に複数照射。(スナイパー+二回攻撃+一斉射撃+援護射撃)

ユーベルコードを封じる――迄は行かずとも、敵の動きをある程度阻害できればいい。
その苦鳴も幾許かは鳴りを潜めるだろう。

あとは君に任せる、ロク。
オーヴァ。(ザザッ)



●何も萌え出ることなき炎
 自然のサイクルは輪廻する。
 草木は虫の滋養となり、虫は土を耕しあるいは獣の餌となる。
 草食動物は肉食の狩猟獣に食われ、されど獅子すらやがて死して朽ちる。
 腐り果てた肉は虫を、草木を育てるための大地の新たな滋養となり、
 そしてまた満ち満ちる土壌から、次の森を育てる草木が芽吹くだろう。
 それが自然というものだ。冒してはならぬ厳粛な輪廻である。
 ――されど、それをたやすく歪めるのが、ヒトという生き物だ。
 であれば、この炎を生み出したコルテスこそが、ヒトらしいヒトなのか。
 それこそが人間の所業であり、手を貸してしまって生贄となった藩士たちも、
 人間の愚行と諦めて、その後悔すらも無に還らねばならぬのか。
「ちがう」
 ロク・ザイオンは云う。軋むような、唸るような、ひっかくような声で言う。
「おまえたちの炎は、あってはいけない。病のためにあるものじゃない!!」
 ごぉう――怒りに擦り切れた声は、さながら百獣の王の轟きの如く。
 醜くひしゃげた声音は、ざりざりと岩肌を削り、草花を慄かせる。
 炎は救いである。自ら朽ちぬものを朽ちさせ、次の生へと繋ぐもの。
 生を歪めた病を清め、その犠牲者たちを骸とし大地へと還し巡らせるもの。
 そして、いつしか、露と消えていくもの。永遠に在りてはならぬもの。
「きえろ。――消えろ、消えろッ!!」
 身を沈め、四肢にて疾走。ひっかいた地面がばかりと裂けて砕けた。
 迎え撃つは鬼ども。百足の脚をわななかせ、炎を以てロクを灼こうとする!
《――そうするのは"わかっていた"。それ以上の行動を、本気は許可しない》
 いくつも戦場にばらけていた、鋼の豹のうちの一つがそう言った。
 デコイ群である。そして電磁レーザーを放つジャガーノート・ジャックの本体!
『ギィイィッィィイイイ!』
 バチバチバチバチ!! 光線に撃たれた鬼百足は痙攣しながら悶え苦しむ!
 バチン!! バチバチィッ!! さらに二つ、三つ! なんたる早業!
《――お前たちは狩られねばならない。ゆえに動くな》
 そして烙禍が来る。燃え盛る神の獣の牙が、麻痺した獲物を引き裂く。
 飛び散る臓物。それすらも、彼奴らが抱いた恨みの炎にしゅうしゅうと燃える。
 薙ぎ払うような円弧。大気に焼け付くが如き剣閃こそがロクの怒りの証左。
 切り裂く。燃やす。生命を、その残滓すらも許さぬ。すべて灰と炭に変えるべし。
 それは狩りではなく――害虫を滅殺するような蹂躙であった。

 されど、この島を支配した鬼百足どもは10や20で効くような数ではない。
『ガァアアアアァァ!!』
 耳障りな雄叫びを上げ、さらに5。現れるなり炎の飛礫を放つ。数が多い。
《――ロク、敵の攻撃は本機が抑える。君は己の職務を存分に為すといい》
「おーば!!」
 苛立つ子供の癇癪めいた声。たてがみを燃やして女は獣となり地を巡る。
 BRATATATATATATA……狙いすました機関銃斉射。火炎弾が空中で爆発四散。
 うんざりするほどの熱波が鋼を叩く。生身ならば意識を失い倒れていただろう。
《――病を撒き散らす蟲。そのようなものを、本機の相棒はけして捨て置かない》
 BRATATATATATATA……銃口は鬼百足どもを狙い斉射にてこれを薙ぎ払う。
 敵は弾丸で穿たれた外皮を犠牲に、ずるりと脱皮して地を這う! 醜悪!!
「相手は、おれだッ!!」
 ZANK!! 待ち構えたような烙印の刃、首元を狙った横薙ぎ一閃!
 だが敵はこれを読んでいた。蛇めいてのたうつ尾がロクを縛りにかかる!
「ぐ、ぅうゔぅうぁ゛アァアアあああ!!」
 みちみちと筋肉を軋ませながら、ロクは雄叫びとその筋力で以て、
 半ば物理法則と人体構造を無視しかかった反転跳躍でこれを一斉回避。
 続けざまの尾による刺突を、ジャガーノートの機関銃が見事に遮る。
《――本機はその行動を見過ごさない。だが、仕事は、ロク。君のものだ》
 BRATATATATATATA。BRATATATATATATATA!!
《――君が狩るがいい。病を灼くことが君の本分なのだから》
 それは相棒に対する信念からの敬意。侵さざる聖域への敬礼。
 違えてはならぬ約束。
 捨ててはならぬ役目。
 どちらも同じだ。これはロクの戦いだ。己はただそれを助くのみ。
「――ありがとう、ジャック」
 刃を手に、一瞬だけ女は――人間の顔で、ふっと微笑んだ。
 ぎしり。目を見開き、醜声を撒き散らし、落ち行く閃光は獣に変わる。
「ひとつ、残らず!! 燃えろッ!!!」
 怒号である。鬼どもは――鬼を僭称する蚊か蝿じみた妖虫どもは、
 空から来る狩人を畏れた。己らの業火すらも飲み込む炎を畏れた。
 遅いのだ。これは神の獣と呪(いわ)われしモノ。病を灼くモノ。
 病ませ、苦しめ、痛めつけ、痩せ細らえさせるモノどもの天敵。
「――燃え、落ちろ」
 処刑宣告である。一瞬あと、烙印の刃がそれを断罪した。
 屍が燃える。骸の海に還ることすら許さぬと、揺らめく炎は猛っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

火守・かこ
いいねぇ、燃えるじゃねぇか鬼退治!
民草を害する悪い鬼は、御伽噺の桃太郎よろしく撫で斬りにしてやるってな!

多勢相手に小細工なしの真っ向勝負ならお手の物さ!
【侵略せよ赤狐隊】で狐霊の軍勢を召喚したら、後は各々が目の前の鬼に切り掛かって片っ端から鬼退治だ!
敵も黙ってやられやしないだろうが、奴らが炎を軸に攻撃するってんなら《火天の加護》でどうとでもなるはず。たとえ防げずに食らって炎の鎖で繋がれたとしても、こっちから引っ張って殴り飛ばしてやるぜ!


ツムギ・オーギュスト
暑い!!アツがアツくてアツすぎるっっ!!
でもあっつーい中幕府の人達と山陽の人達は頑張ってるんだよね!
なら、ツムギちゃんもがんばるっきゃない!いくぞぉ!

着いたらUC使ってでーんっ!と舞台を作っちゃうね!暑さにはやっぱり水!想像する今回のステージはウォータースプラッシュステージ!
あちこちからバシャーッ!と水を撒き散らすステキステージだよ!

暑い中でもこの涼しいステージで<ダンス>を踊ればツムギちゃんのテンションもアガるってもんですよ!
アガるテンションと一緒にステージもどんどん広くしてどんどんここを涼しくして!<武器改造>で水流噴き出す[ル・ソレイユ]で敵を押し流しちゃおう!

(アドリブ・連携歓迎)



●炎と水のオンステージ!
 民草を害する悪い鬼を、猟兵がばったばったとなぎ倒す!
 おとぎ話の桃太郎めいた、まさに快刀乱麻を断つ大立ち回りだ。
「いいねぇ、燃えるじゃねえか! 多勢に無勢どんとこい、やってやらぁ!」
 火守・かこはこのクソ暑い中でもめげることなく、いやむしろ余計に燃え上がり、
 熱血テンションをさらに昂ぶらせて拳を打ち合わせた。
「暑い!! この気温もそのノリも、アツがアツくてアツすぎるっっ!!」
「うおっ!?!?」
 びびくぅ。いきなり声をかけられたのでかこは割と素の声で驚いた。
 見れば、そこにはうんざりした表情の、赤い髪の少女が立っていたではないか!
「でも、このあっつーい中、幕府と山陽の人たちは頑張ってるんだよね!」
「…………」
「(かこに)ねっ!?」
「お、おう! そうだぁ! だからさっさとやっつけなきゃよ!」
「そういうこと! なら、ツムギちゃんもがんばるっきゃない!!」
 うおおー、と暑気を振り払うように、ツムギ・オーギュストが雄叫びを上げた。
 鬼百足どもが、その大音声に反応してぎょろりと単眼で睨みつけてくる!
「あれ? ひょっとしてツムギちゃんのせいで敵に気づかれた?」
「そうだよ! どうすんだよ!! いや戦うけどよ!」
「うーん失敗失敗、こうなりゃ共闘するしかないね!」
「俺これ巻き込まれてるだけじゃねえか……!?」
 かこは、ツムギのテンションと明るさにだいぶ面食らっている!!

 しかし、それにしてもこの暑さは頂けない。これでは戦うどころではない。
「暑さにはやっぱり水! てなわけで、開演のベルよ、高らかに!!」
 パチン! ツムギのフィンガースナップが、いやに軽やかに鳴り響き――。
「お? お? うおおおおおっ!?」
 驚くかことツムギの足元がずもももとせり上がり、ステージが完成した!
 さらにステージのあちこちから、ばっしゃー! と高く水柱がせり上がる!
「そして、踊る舞台は華やかに――これがツムギちゃんのユーベルコード!
 想像から創造した、ウォータースプラッシュ―ステージ! ステキでしょ!?」
「ははっ、面食らったがこりゃいいや! 暑気払いにゃ最高だなぁ!」
 派手なのは実にいい。かこは呵々大笑して上機嫌な様子だ。
「ようし、侵略せよ赤狐隊! 出番だぜぇ、侵略すること火のごとくってなぁ!」
 ツムギを真似するようにぱちんと指を鳴らすと、ずらりと集まる狐霊たち。
 可愛らしい見た目なりに、甲冑を装備して口には刀を銜えている!
「わお、プリティー! これでバックダンサーも揃ったね!」
 あっけに取られる鬼百足どもに見せつけるように、ツムギは軽やかにダンス!
 そのテンション……情熱こそが、想像のエネルギーを高める原動力なのだ。
「さすがに踊りは素人だが、めいんだんさぁがいるなら賑やかしで十分だろ。
 赤狐隊、並べ! なんかこう……うまいこと盛り上げてやれ! うまく!!」
 そんなアバウトな。だが赤狐隊はめげない。そんなの割といつもだし。
 狐の見た目というキュートなアドバンテージを使い、いい感じに踊っている!
「オッケー、ナイスナーイス! テンションアガってきたー!」
 ざぱーん! ばしゃーん! あちこちから水柱が上がり暑気を払う!
 ステージも拡大していく。あっけに取られていた鬼百足どもも戦闘態勢だ!

「おいツムギ、向こうさんは見惚れてくれないみたいだぜ! どうすんだ!?」
「それでこそテンションもアガるってもんですよ! バトルもダンスの一種!」
 ツムギは踊りながら、カッカッカッと3回かかとを打ち鳴らす。
 オズの魔女よろしく、シューズの形が変化した!
『『『キャァアアアアアアッァァァアアアア!!』』』
「うっ!! すんげえ耳障りな悲鳴だぜ……!」
「なんのその! ツムギちゃんのダンスサウンドで打ち消しちゃうよー!」
 軽やかに踊るたび、シューズから水の流れが飛び出し鬼百足どもを打つ!
 いかに業火を集めてステージを燃やそうとしても、あっというまに消火されてしまう!
「へっ! そんなマッチみてえな火なんざ、ちゃんちゃらおかしいぜ!」
 水にかき消された残滓は、不敵に笑うかこの両手足に吸い込まれていく。
 これぞ火天の加護。たちまち聖なる炎が燃え上がり、悪しき暑気を飲み込むのだ!
「そらそらどうした? てめぇらは鎖で敵を縛るんだろう? かかってきな!」
 投げ縄めいて放たれたマグマの鎖を燃える拳がつかみ、逆に引き寄せる!
『ギギッ!?』
「おらぁっ!!」
 SMASH!! 少女の見た目にそぐわぬ剛拳が、百足めいた鬼を叩き潰した!
「いいねいいね! ド派手にノリノリでやっていこー!」
 踊り、戦うふたりのこめかみを汗が流れるが、しかし爽やかな気分だ。
 悪しき鬼どもをなで斬りにする炎と水のステージ、ここに開幕――!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花邨・八千代
鬼ィ?お前が、鬼?
ちっとばかし迫力が足りねーなァ。
一つ目だろうがムカデ足だろうが火ィ纏ってようが…なんもかんも、役不足だ。

本物の鬼ってのを見せてやるよ。

◆戦闘
南天を金棒に変えるぜ、【ブラッドガイスト】だ。
「恫喝」に「殺気」と「挑発」を混ぜてご挨拶と行くかね。

角の生えた虫ごときが鬼の名ァ騙ってんじゃねェよ!
俺を燃やしたきゃガソリンをタンカーで持ってこい!

「怪力」乗っけた「なぎ払い」で「2回攻撃」、「捨て身の一撃」だ。
思いっきり「傷口をえぐる」ぜ、敵の攻撃は「第六感」で回避。
攻撃食らっちまったら「カウンター」でお返しだ!

そのいっこしかねー目玉で括目しなァ!
これが本当の鬼ってヤツだ!


多々羅・赤銅
熱い熱いと言ったとて
玉鋼溶かす炉にゃあ及ばぬ。
かんかん照りの真夏の太陽程度、テンションぶち上げ要素に過ぎねえのよ!

刀一振り、次から次、瞬く間
斬って斬って斬り捨てる。
苦鳴がなー、仲間巻き込んだらアレだし口喉狙って斬るけども
万物を斬る刀鬼の、ちょっといいとこ見てみたーい?
苦鳴さえも斬ってご覧入れてやる。
どうやって?なーにシンプル、こんなん結局は「空気の震え」。
音は真空では伝わらぬーーなれば。
空気を一切斬り裂いて、真空の分け目を一瞬作るのよ。
音なんざ、これで止まる。
ついでに百足同士の悲鳴で攻撃しあってくれたら万々歳。

ははは。
炎の単眼羅刹かぁ。
あと何百年早く私が生きてたら、同類として仲良くやれたかね?



●まことの"鬼"と云ふもの
 ざん。ざくり。ごとり。ばしゃり。
 刀が振るわれるたび、面白いようにあっさりと鬼百足どもが断ち切られる。
 ずんばらり、というやつだ。まるで紙くずのように、木偶のように。
「熱い熱いといったとて、玉鋼溶かす炉にゃあ及びもつかぬ――」
 朗々と謳いながら、女がひとり。刀を振るい、雑魚どもを斬り散らす。
 その女、名を多々羅・赤銅。あるいは"赤銅鬼"と呼ばれしモノである。
「カンカン照りの真夏の太陽程度、テンションぶち上げ要素に過ぎねえのよ!
 おらおらどうした、鬼って名前がつくんなら、もうちと根性見せてみなぁ!」
 呵々と大笑しながら、銘なき剣――なにせこの女、己が振るう剣の銘に大して凝らない。ここは名無しとしておくがよい――で邪悪をなます斬りにする姿、
 人の姿をしていながらいかさま人らしからぬ。まさに鬼のそれである。
 鬼が、鬼を狩る。まるでそれは、下賤ななまくら刀を手折るようでもあった。

 しかして――敵にとって――不幸なことに、此度の鬼はひとりきりではない。
 否、鬼ならば、ひとりと言わず"ひとつ"というべきか。ともあれ、"ふたつ"。
「よぉ、やってるねぇ。さすがに数じゃ俺の負けかぁ」
 けらけらと笑いながら、両手で引き裂いた鬼百足の残骸を投げ捨てて、
 花邨・八千代はそう言った。……素手である。素手で、敵を引き裂いたのだ。
「鬼、鬼、鬼。あァあ、情けなくて悲しくて可哀想になってくるなァ。
 一つ目だろうがムカデ足だろうが火ィ纏ってようが、なんもかんも役不足だ」
 然り。赤銅がそうであるように、八千代もまた羅刹という名の鬼である。
 記憶があろうがなかろうが、大して意に介さず、悩んで苦しむこともなく、
 紫煙を吸いながら日々を生き、食うように殺し眠るように引きちぎる。
 だからこその鬼なのだ。鬼とは、これがあればいいというものではない。
 ましてや、犬や猫や牛のように、学術的に何かを指すものでもない。
 "そうである"ということが、鬼を鬼たらしめる証左となる。
 ――たとえばこのように、笑いながら鬼の僭称者をひいてちぎるような。
 そういう暴威。やりたいようにやるものこそが、鬼なのだ。

 そして、この銚子渓に、斯様に鬼らしい鬼が、ふたり。あるいは、ふたつ。
 かたや刀を振るい、あくび混じりに百足を切り裂く刀鍛冶。
 かたや笑いながら、南天の印籠を"らしい"金棒に変えて担ぐ女。
 うだるような暑さである。だが鬼どもはいずれもかけらも気にしない。
 さもありなん。鬼とは地獄の獄吏とも云う。燃え盛るそこを切り盛りするという。
 たとえ山が噴火して溶岩が流れ出ても、ふたつは気にしないのではないか。
「なぁ、どう思う赤銅"ちゃん"。アレさぁ、ムカつかねぇ?」
「あーん? まあねぇ、鬼って言われちゃプライド傷つくしなあ」
 大して気にしてなさそうな顔をしておいて、赤銅もよく云うものである。
 だがまあ、斬るのになんら面倒を考えなくていい敵というのは、それはそれでいい。
「数でも競うか」
「買ったほうは?」
「メシ奢り」
「ファミレスでいい?」
「えー? 焼き肉がいいんだけど」
「ないわー。八千代破産しちゃうよ?」
 へらっと笑いながら、こちらが勝つのになという顔で赤銅は云う。
 そんな鬼の戯言を鼻で笑い、八千代は中指を立てて挑発してみせた。
「ま、どっちでいいわ。とりあえずアイツら、潰してェからさ」
「そこはさんせー。ンじゃまぁ、やりますかぁ」
 向こうに回す敵はおよそ11。どうあがいても勝敗は分かれるだろう。
 ふたりはかけっこめいて腰を落とす――百足どもの苦鳴の雄叫び!
「角の生えた虫ごときが、鬼の名ァ騙ってんじゃねェー、よッ!!」
 ドウッ! 大地を削って八千代が先んじた。その声もろとも百足を叩き潰す!
 ぐしゃん!! と大地のシミと化したそれを一瞥すらもせず、
 膂力に任せて担いだ金棒をぐるんぐるんと台風めいて振り回すのだ!
「俺を燃やしたきゃア、ガソリンをタンカーで持ってこい!
 ……ああ、アンタらにゃわかんねェか? じゃあ油でいいぞ油でェ!!」
 多少の怪我は意に介さぬ。それはもはや人のカタチをした歩く暴威。
 だからこその鬼なのだ。ゆえにこそ鬼なのだ!
「炎生み出して、鎖で縛って? んであと何できんだっけ、あー脱皮?
 まあだいたい斬ったけどさぁ……あとはさっきの、あれか。その、声」
 あえて己から斬ることもせず、赤銅はふらりと居合めいた構えをした。
 心得など無い。我流である。ようは、見様見真似というやつだ。
「アッハ! 刀鬼のォ、ちょっといいとこ見てみたァーい!」
「ナイス合いの手ェー。じゃー、音も斬ってやろうじゃんよ」
 八千代のからかいにも不敵に笑い返し、赤銅はちょいちょいと指で手招きした。
 百足どもが、一気に肺を満たし、おぞましい苦鳴の音波を放つ――!
「ほい」
 かちん。扉を開けて閉めるかのような、シンプルすぎる抜刀、納刀。
 見えなかった。だがそれだけで、音が――消えた。バカな。
『『『……!?!?』』』
「真空ってわかる? わかんねーか。んじゃまぁ死んどこっか」
 かちん。二度目の納刀、並んでいた鬼百足どもがばっさり断たれて死んだ。

 ――がつん/ざしゅんッ!!
「「ちぇっ」」
 ふたつの鬼は同時に唇を尖らせた。最後の鬼百足がどちゃりと倒れる。
 半分はずたずたに切り裂かれ、半分はぐちゃぐちゃに潰れていた。
 最後の一体。金棒と刀が、ほぼ同時に台無しにしてしまったのである。
「引き分けって締まらねーなァ」
「まあいいじゃん! 同類になれなかった哀れなヤツへの追悼ってことで」
「ワリカンとか俺なんだけど! まいいか。んじゃ、行こうぜ」
 かくして鬼どもは、惨状をあとにしてその場を去る。
 あとの連中は、あとの猟兵どもの仕事。
 鬼とは、気楽で気安く、気まぐれだから鬼というのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

黒川・闇慈
「小豆島ですか……どうせなら観光で来たかった所ですねえ。クックック」

【行動】
wizで対抗です。
さて、分かりやすく暑苦しい相手ですねえ。となればこちらの戦術は決まったようなものです。
高速詠唱、属性攻撃、全力魔法、範囲攻撃の技能を活用し氷獄槍軍を使用します。
火炎鎖の迎撃用に氷槍を50ほど残し、残りは相手集団に向けて広範囲に一斉射出します。
相手の炎は残しておいた氷槍で適宜迎撃しましょうか。

「暑い時にはかき氷と相場が決まっています。氷は私のおごりですので、砕くのとシロップはセルフサービスでどうぞ?クックック」

【アドリブ歓迎】


真守・有栖
こんっっっなに暑くて熱い夏をめらめらでもわもわのぼうぼうにしようだなんて……!
温狼な私でもぷんぷんのすこすこだわ!ぷんすこだわ!!!
えぇ、此処は麗狼にて冷狼たる私にお任せあれっ

がつん!と。わふん!と。ずばっと!かましてくるわっ

と、ゆーわけで。
あーづーいーのーだーけーれーどーもー!?
ほんっっっとにあっついじゃないの!茹で狼になってしまうわ!?
そーしーてー!悲鳴がわおんわおんだわ!!?わぅう……!?
おみみをぺたり。あつさとだめーじでゆらり、ふらり。

けーれーどーもー?
それでぱたりな狼じゃないわ!

――月喰

刃に込めるは“爽”の決意

さわやかきらり、と
熱波も怨嗟も颯爽と断ち斬るわ!成敗、成敗、成敗よ……!


雨宮・いつき
斯様な環境、人間どころか他の生物すら住めなくなってしまいます
最早人の世どころか生きとし生ける者全てに仇成す所業…断じて許すわけにはいきません

高温の中でも動けるよう、冷撃符を懐に忍ばせて周辺の気温を下げる術を展開して行動します
敵は炎を操る鬼百足…ならばこちらは水の力で御相手致しましょう
お呼びした九頭龍様の水の刃で敵の炎を打ち消し、
その勢いで以って百足達を斬り裂きます
逃げようとする者や遮蔽に隠れて難を逃れようとする者がいれば、
魂縛符を飛ばして射線上へ吸い寄せ、引き摺り出し攻撃を
犠牲となった藩の方達の無念を晴らす為に、そしてこの地に住まう者達を護る為に
霊玉共々、一人たりとも逃しはしません



●氷雪、暑気を切り裂いて
「………………あついわ」
 みーんみーん。じーわじーわじーわ。……という蝉の声すら、ない。
 じりじり照りつける太陽。サムライエンパイア特有の蒸し暑さ。
 じりじり。じりじりじりじり。じわじわじわじわじわ……。
「あっっっっっっっつい、わーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
 耐えきれねえ! 真守・有栖は渓谷に響き渡る大声で叫んだ!
 あっついわー、ついわー、わー、わー……(山彦)
「こんっっっなに! 暑くて! 熱い夏を!! ただでさえ暑いのに!!
 めらめらでもわもわのぼうぼうにしようだなんて……!!!」
 ぐぐぐぐぐ、あらん限りの怒りを込めて、拳を握りしめて震わせる!
「温狼な私でも、ぷんぷんのすこすこだわ!! つまりぷんすこ、だわっ!!」
 ド許せぬ!! かくなる上は鬼百足ども、まとめてたたっ斬るべし!!
「でもあついわー! あーづーいーのーだーけーれーどーもー!!」
 このままでは茹で狼である。戦うどころの話ではない。獣耳がへたりでぺたり。
 はたして有栖は倒れてしまうのか? 戦わずしてばたり狼なのか!?

 だがその時である! 突然、カカカカカッ! と、つららが降り注いだ!
「わふっ!?」
 いや、違う。それは魔術によって形成された、たくましい氷の槍だ!
「わかりやすい暑苦しい相手にこの気温、うだるのも無理はないですねぇ。
 クックック……涼むためというわけではないですが、多少はマシでしょう」
 ふわり。と、頭上から降りてきたのは、陰気に笑う黒髪の男であった。
 さらに黒衣と来れば暑苦しそうで見ている方も嫌になるが、表情は涼やか。
 なにせ彼――黒川・闇慈は魔術師である。この程度の暑さはどうということない。
 そして残る150本以上の氷槍が、鬼百足どもめがけて飛んでいく!
『ギィイイギッギィイイイ!!』
 ごぉうっ!! 鬼の業火が襲いかかるが、氷槍の結界がこれを防ぐのだ。
「……とまあこのように、敵の手の内がわかっていればやりようはあります。
 我が"氷獄槍軍(コキュートス・ファランクス)"は、この程度では破れません」
 自信げに言いながらも、とはいえ……と闇慈。
「氷はいずれ融けるもの。どうせならもう少々気温を下げたいところですねぇ?」
 そして意味深に視線を向ければ……そこには、おお!
「そのような氷の槍を数多も降らせる、とまでは参りませんが――」
 ひゅう、と、周囲の気温がさらにもう1段階下がったのは、気の所為ではない。
 眼鏡をかけた少年、雨宮・いつきの冷撃符を媒介とした陰陽術である。
 さらにいつきは、人差し指と中指をまっすぐ立てて剣指を作って鬼百足に向け、
 なんらかの真言を唱えながら素早く方陣を描く。神々しい霊力の高まり……!
「参りませ、九頭竜大明神! 悪しき炎の使いに清き怒りを与えたまえ!」
 見よ! いつきの背後、大気中の水素が渦を巻いてより集まる!
 あちまち円錐状の渦潮となったそれは、さらに九つの流れに分かれると、
 やがて雄叫びを上げる神々しくも巨大な、白い九頭竜の霊に変じたのである!
「わふっ!? 蛇だわ! 首がうねうねしてる蛇よ!」
「ほほう。神霊の召喚ですか。これは興味深いですねぇ、クックック」
 鬼百足どもは恐れおののきながらも、吠え返しながら炎を生み出そうとする。
 だが、遅い。九頭竜は九つの顎を開き、凄まじい切れ味の水の息吹を吐き出した!
 SPLAAAAAAAASH!! ウォーターカッターめいた水が鬼百足どもを両断だ!

「……と、このように九頭竜様のお力を借りるのが精一杯です」
 お役に立てましたか? とおどけて笑ういつき。ふたりはうなずいた。
 あっという間に周囲の鬼百足は一掃され、多少は気温が下がり過ごしやすい状態だ。
「とはいえ、この程度で数が終わるわけはありませんねぇ」
 ちらり。闇慈が見た先には、なるほどたしかに新手の鬼百足どもだ。
「炎に対する策はこの通り万全ですが、例の雄叫びは厄介ですね……」
 敵を一網打尽とするため、魂縛符を用意しながら、いつきが顔を顰める。
 水の息吹と、闇慈の氷槍。業火への対策はこれで完璧と言っていいだろう。
 しかし苦鳴! 音の波である雄叫びは水や氷で防ぐのは難しい……!
「……ふふ、ふふふふふ!」
 ゆらり、ふらり。暑さでやられかけていた有栖がついに再起動した!
「こーんなに涼しくてひんやりにしてもらったなら、恩返しするのが狼よね!
 雄叫び? そんなの刃狼には問題なしなし! わおんわおんしても無駄よー!」
 ふんす! 鼻息荒く、構えるは愛剣・光刃『月喰』!
 鬼百足どもは、大きく息を吸って苦鳴の音叉を放つ――!
 刃に込めるは"爽"の決意。並び立つように氷槍が、そして九頭竜の息吹が!

 ――月喰、一閃。
 太刀筋はひとつ。されどその光、那由多の彼方まで届かんほどに。
 万物万象ことごとくを切り裂く光閃、水氷を従えて天地をも斬る!
「成敗、成敗、成敗よ。――熱波も怨嗟も、関係ないわっ!」
 かちん。鍔鳴りの音と同時、立ちはだかる鬼百足どもはばっさりと切り裂かれ、
 氷槍と水の息吹が、遺された炎すらも貫き洗い流していく――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フランチェスカ・ヴァレンタイン
さて、景勝地に蔓延る害虫の駆除と参りましょうか?

上空を旋回飛行しながら、鬼百足の集団へ範囲攻撃で砲撃を雨霰と
迎撃に対してはおびき寄せで引き付けた攻撃を見切り、残像と迷彩を織り交ぜたマニューバで切り抜けつつ

集団が密集陣形を取るように上手く誘導できたところで、降下してUCの仮想砲身の展開を――
…とはいえせっかくの名勝ですし、地形へのダメージは最小限に留めたいですねえ
射角を傾斜に合わせて地表を舐めるように、空へと撃ち抜く感じで位置取りを調整してみますかねー…?

「さあ、ご遠慮なく召しあがれ? グラビトン――ブラスタァァーッ!」
密集させた敵集団へと重力砲を見舞い、射線で纏めてなぎ払ってしまいましょう…!



●美景に躍りしは美しき戦乙女
 かくも美しき景勝地に、斯様な害虫どもの蔓延ることまかりならぬ。
 空を舞うフランチェスカ・ヴァレンタインの胸には、そういう義憤があった。
 いや、蟲どもを見下す、人が持って当然の嫌悪感というのが近いだろう。
 然り。鬼だなんだと言われようが、眼下にひしめくあれらは、蟲だ。
 百足めいた体を持つ、少しばかり炎を吐いて喚くだけの、蟲である。
 ではどうする? ――決まっている。害虫は、駆除するものであろう。
「次々と、うじゃうじゃと……まったく、嫌気が差してきますわね」
 額を流れ落ちる汗を拭うさまも、いっそ美しく輝かんばかりである。
 しかしてこの女、鎧装騎兵としても一流なれば、空を流れる様は星の如く。
 九天華めき舞い穿つもの。その二つ名にそぐうだけの華麗な舞いようだ。

 では攻撃についてはどうなのか。それは今の状況を見れば明らかだろう。
 鬼百足どもめがけ、頭上から降り注がれる砲撃はまさに雨あられという言葉のまま。
 不用意な個体はこれで仕留め、小賢しい連中は巧妙に逃げ場を潰していく。
 時折飛礫めいた鬼の業火を投げ放たれるが、何ほどのものか。
 空という、絶対的なアドバンテージを得たフランチェスカに、遠距離攻撃?
 蟷螂の斧とはこのことである。幻惑的なマニューバは傷一つ残さない。
(敵の戦力はおおよそ見えましたわね、おびき出しも上々――)
 敵は密集陣形を取り、個々の攻撃を束ねてフランチェスカに放つつもりか。
 機先を制したフランチェスカは、ほぼ垂直に急降下し地上へ降り立つ。
 仮想砲身、展開。対艦砲撃級の一撃が鬼百足どもを捉える――が。
(地形へのダメージは最小限、射角を計測、傾斜角度は――ええ、ばっちり)
 ゴシュウ! と背部バーニアが蒸気を噴き出し、フランチェスカは地を滑る。
 すぐ頭上を苦鳴の音波が駆け抜け、女の金髪を一房さらっていった。
 さながら、西部劇で向かい合い決闘を繰り広げるガンマンのようだ!
「浅知恵ですわね! さあ、次はこちらの番。遠慮なく召し上がれ!」
 キィイイイイ――重力子が仮想砲身の砲口に収束していく!
「アウトレイジ……グラビトンッ、ブラスタァアーッ!!」
 カッ――! と、虚空を拉ぐ光煌が、つかの間熱帯じみた空気を切り裂く。
 そして万物を圧潰せしめる重力波が、害虫どもを飲み込み、消滅させるのだ……!
 景観に一縷の被害も与えぬ見事な射角。空へとつんざく光は雲をも呑んだ!
「……虫の分際でヒトを苦しめようとするから、そうなるのです」
 まとめていた髪を広げ、頭を振りながら、フランチェスカは云う。
 もはやそこに苦悶の雄叫びはない。いわんや、害虫どもの残骸など――。

成功 🔵​🔵​🔴​

杼糸・絡新婦
暑いところがこれ以上暑くなるとか勘弁やわ。
ほな、いこうか。
カラクリ人形・サイギョウと共に行動。

【パフォーマンス】や【フェイント】
を入れ行動し、こちらへあえて攻撃を誘う。
【見切り】でタイミングを図りつつ、
他の猟兵への攻撃を【かばう】うことで利用し、
敵の攻撃を脱力し受け止め、
オペラツィオン・マカブル発動。
お返ししようか、サイギョウ。
また【敵を盾にする】ことで
防御につかいつつ、囲まれないよう行動。


非在・究子
あ、暑い、な……『現実』って、やつは、ちょっとの、温度変化で、デバフ、かけてくるから、理不尽だよな。よ、溶岩ステージ、とかなら、分からなくも、ないけど。く、クソゲーめ……
さ、さっさと、片付けて、暑さを、静めると、しよう。

け、結構、素早い動きで、攻めてくるみたい、だけど、
TASさんの、助けを、得た、アタシには、届きは、しない。
スローと、ポーズで、動きも、見切って、
急に、加速、されたら、瞬間的に、速度のパラメータを、強化して、追従、する……け、結構、シビアな、動きを、強要されるのは、きついけど、な。

だ、脱皮して、すぐは、防御力とか、落ちてるんじゃ、ないか?
そ、そこを、狙って、反撃さて、もらう、ぞ。


リア・ファル
POW
アドリブ・共闘歓迎

やれやれ、熱い戦いになりそうだ
ゆっくりロケーションを楽しむ余裕も無いね

『イルダーナ』で周辺を踏破しつつ、鬼百足の位置を探索
できる限り「情報収集」し、攻撃開始

反撃対策は『セブンカラーズ』、攻撃は『ヌァザ』で行う
『コードライブラリ・デッキ』の魔術データから、
風属性、真空の力、「破魔」の力をロードしておく。

イルダーナで一気に接敵したら、ヌァザで一閃、
UC【銀閃・次元斬】で攻撃
「鎧無視攻撃」の一撃離脱を繰り返す

苦鳴が来たら、呪いを打ち消す破魔弾と
真空を生み出す弾丸を「範囲攻撃」で撃ち込み、
攻撃の減退・無効化を狙おう

「この涼やかな光景を、灼熱で歪めてしまうのは忍びないしね」



●切り裂き、応報し、そしてバグる
「……んん?」
 銚子渓の上空。
 愛機・イルダーナにまたがり空を駆っていたリア・ファルは、計器類を睨む。
 彼女はいま、銚子渓だけでなく小豆島全体を東奔西走している真っ最中。
 そうすることで地形を踏破しつつ、鬼百足の位置や、具体的な数、
 さらには儀式が行われている敵の中枢といった情報を集めていたのだ。
 敵を知り己を知れば百戦危うからず。さすがはバーチャルキャラクターか。
「……やっぱりだ。これ、センサーの異常じゃないよね……」
 そんなリアの、超高精度な機器がそう簡単に故障するはずはない。
 だが、いま計器類がキャッチしたデータは、そんな疑いをかけざるを得ないもの。
 速度を初めとしたあらゆる計測値が、なんというか……バグってるのだ。
「誰かの電脳魔術の影響かな……? 敵の搦め手、ってことはないだろうけど」
 ここがスペースシップワールドならともかく、サムライエンパイアで、
 電脳魔術によるハッキングの可能性を疑うのは無駄骨というものだろう。
 となるとこの計器類の異常は、おそらく同じ猟兵によるもの。それは間違いない。
 ……問題は、それがピンチを意味するのがどうか、である。
「ちょっと気になるな。よし、イルダーナ。全速前進だよ!」
 リアは己の直感に従うことにした。問題の地点へ愛機を走らせる――。

 ……そして、問題となっている異常測定値地点!
「ふ、ふふふ、ふふ、ふ! ど、どうだ、ま、まいった、か!」
 特徴的などもり声の少女――非在・究子が、鬼百足どもを前に勝ち誇っていた。
 彼女を取り巻く5体の鬼百足は、忌々しげにうなりながら百足の尾を放つ、が!
「そ、そのぐらい、TASさんの助けを得たアタシには、と、届かないぞっ!」
 シュンッ。非現実的なまでの超加速で、究子は攻撃をあっさりと回避したのだ!
 同時に4方向から尾が襲いかかるが、結果は同じ。とてつもない超スピードだ!
 ……しかし何かおかしい。はて、彼女はさっきなんと言ったか。
「げ、現実とかいうクソゲーは、こ、こうやってクラックするに、か、限る。
 た、TASさんのスピードなら、お、お前たちに攻撃される心配も、な、ない!」
 TAS! Tool-Assisted Speedrunという英単語の略称である!
 知る人は知っているであろう、いわゆるエミュレータなどを利用して、
 ゲームを理論上の最短速度で攻略する行為、あるいはその集まりを指す。
 ゲーム世界から現実に現れた究子は、電脳魔術を用いてこうしたことが出来るのだ。
 つまり今の彼女は、現実そのものを電脳魔術によってハッキング……いや、
 クラッキングし、理論上最速のチートみたいなスピードを手に入れたということか!!
「で、でも、あ、暑さまでは、い、いじれない……く、クソゲー、め」
 ぐったり。速く動けるのはいいがそのせいで消費カロリーもバリ高である。
 このクソ暑い中で全力疾走すればどうなるか? そらもうバテるのは当然だ!
 これ幸いとばかりに、集中が乱れた一瞬に鬼百足どもが襲いかかる……!

 しかしその時。究子と敵の間に、するりと割って入る影があった!
 はたしてそれは、涼やかな狩衣を纏う狐人……の、姿をしたからくり人形。
 がぎん!! と勇ましい音を立てて、振るわれた尾を鋼の腕で打ち返す。
 くるくると踊るように舞いながら、狩衣をはためかせるさまは生きているも同然だ。
「まったく厭やわぁ、人の不意打ちするなんて。これやから鬼っちゅうんは」
 雅やかな言葉でちくりと毒舌を突き刺す、この男の声の正体は?
 ……それは、狩衣の狐人からつながる、十の鋼糸の終着点でもある。
 すなわち、からくり人形――サイギョウという――を操る人形遣いだ。
「しかも小さな女の子を囲んでいたぶるなんて、優雅さの欠片もあらへんなぁ。
 ま、その女の子に手玉に取られとった連中に、今さら言えたことでもあらへんか」
 ぎょろり。鬼百足どもの単眼が、怒りを以てその男を睨みつける!
 されど、白い着物を涼やかに着こなす男――杼糸・絡新婦は、
 常人であれば痴れ狂いそうな鬼どもの凝視すら、柳に風と受け流している。
「ああ、もし横入りが無粋やったら、すまへんね。まあ許しとくれや。
 こっちも考えあってことなんでなぁ、仕事手伝うっちゅうことで、ええやろ?」
「……はっ。も、問題ない、ぞ。あ、ありが、とう」
 陰キャオタクらしく、見慣れぬ人間相手には全力でキョドる究子だったが、
 絡新婦のほうはにこりと人のいい笑みを浮かべて、そしてまた視線を鬼百足へ。
「それで? いまの不意打ちで終わりかいな? ほな、サイギョウ――」
 がしゃり。まるで生きているかのように狐人が構える。
「"その攻撃、お返ししようか、サイギョウ"」
 直後、狐人の人形は弾かれたように地を蹴り、先の攻撃のスピードそのままに、
 鋼の爪を振るって鬼百足を切り裂いた! ……オペラツィオン・マカブル!!
 反撃を織り交ぜての防御行為。まさに敵の攻撃を見切った戦士の技である……!

「お! やってるやってる!」
 そしてややあと、上空にイルダーナに乗ったリアが駆けつけた。
 やはり電脳魔術師がいることを確認すると、リアはにやりと笑って頷き、
 イルダーナのバーニアを全開、そして急降下。多元干渉魔剣ヌァザを振るう!
「その戦い、助太刀いたす! ――なぁんてねっ!」
 銀閃一条! 次元をも断ち切る銀の腕めいた煌めきが、鬼百足を同時切断だ!
『ギィイイィイキィイイイイ!!』
「っととと! 離脱離脱~!」
「う、動きを止めた、な! 逃さない、ぞっ!」
 苦鳴の雄叫びをあげた鬼百足の攻撃範囲内からV字軌道を描いて逃れるリア、
 入れ替わりに飛び込んだ究子が、超絶的スピードで鬼百足を一撃粉砕した!
「おやまぁ、こりゃまた派手で騒がしいことになりよってからに」
 大して動じてない風に言いながら、絡新婦はサイギョウの爪で敵を追い詰める。
 敵の速度までクラッキングし干渉する究子と、絡新婦とサイギョウの白兵戦。
 さらに上空からヒットアンドアウェイで攻めるリアの斬撃と援護射撃は、
 即興で出会った三人にしては意外なほどにうまく噛み合っている!
「真空弾を打ち込むよ! 敵の雄叫びを遮るから、止めをおねがいっ!」
「な、なら、あ、アタシが、に、逃げ場を潰す、ぞ!」
「ほな、サイギョウ。――とどめ、任されようか」
 BLAMBLAM! リアの放った弾丸が空中で破裂し、局所的真空空間を形成!
 苦鳴の雄叫びを阻み、さらに究子のクラッキングが敵の回避行動を阻害する!
 そして急速に吸い込まれる空気圧に乗り、サイギョウが――仕掛けた!
『『『ガァァアアアッ!?』』』
「あ、暑さなんてで、デバフ、げ、現実でまでごめん、だ!」
「この涼やかな光景を、灼熱で歪めてしまうのは忍びないからね!」
「そういうことや。暑さもろとも消えるがええで」
 狐人の一撃が、脱皮直後の防御の薄い鬼百足どもを……一気に、引き裂く!!
 その屍すらも業火に灼かれて消えた時、ようやく涼風が一同の頬を撫ぜた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ロカジ・ミナイ
あづいっつってんだろクソ渡来人がぁ!!
温厚で冷静な僕も流石に吠えずにはいられない暑さ
暑さは罪
褒められるのは暑いと美女が薄着になるとこくらいだよ
いつもお世話になってます

…それよりも
風土病ウィルスってのが捨て置けない
そりゃあ流行れば商売にはなるけども
あいにく僕は守銭奴の薬師じゃなくってね
目の前の功績に弱いのよ

それでは仕合を始めようか
さてさて気色悪い体の何処を斬ったもんだか…
近寄るのも暑苦しいんでね、纏めて火の粉と散らしてやろう
帯電した長妖刀を横に薙ぎ、縦に薙ぎ

道が拓けたら
霊玉目指して振り上げ…柄のケツでトンカチよろしくブン殴る

僕は別に侍じゃないけども
サムエンキッズとして戦に踊るのが粋ってもんでしょ


六六六・たかし
【アドリブ歓迎】

ふん…超高温の外気温にその気温で活性化するウイルスか…
俺ならばそんな状況歯牙にもかけないが、一般人なら一瞬で死に至るレベルだな。
だったらガツンと終わらせてくるしか無いようだな。

【SPD】

初手の素早い尾による攻撃は《第六感》《武器受け》で防ぐ。
背後からの攻撃は「かかし」に防がせる(技能《かばう》)
ムカデたちが脱皮を始めた瞬間を狙う。

UC『六零零悪魔の運命(デビルざしきわらしフォーチュン)』

このUCは相手の運勢を最悪にする。
そんな状態で脱皮が成功すると思うか?いいやしない
そしてそんな隙を俺が許すと思うか?いいや許さん

終わりだ…煌めけ俺の「たかしブレード」!
デビル!たかし!ブレイク!



●治せる病もやれば、けして治せぬ病もあり
「あづいっつってんだろ、クソ渡来人がぁ!!」
 ざしゅっ!!
 怒号とともに振るわれた長妖刀の一撃が、鬼百足を真っ二つに切り裂く。
 180cmを超える偉丈夫、ロカジ・ミナイは妖狐であり流しの用心棒である。
 自称・温厚で冷静な男だが、この暑さではさしもの堪忍袋の緒が切れるというもの。
 暑さは罪である。暑くていいことなんぞ、男やもめにはさっぱりない。
「ったく……それにしても、風土病ねぇ」
 呟いて顔をしかめる様子は、まるで病を憂う医者のようにも見える。
 当たらずとも遠からじ、ロカジの本業は、実のところ薬屋なのだ。
 軒先はボロボロ、店内はろくに手入れもされていないあばら家ではあるが、
 まあそこには相応の事情というものがある。その点には、ひとまずさておこう。
「……いや、やーめやめ。流行ったあとのことを考えるのは職業病だなあ」
 頭を振り、脳裏によぎった最悪の事態のヴィジョンを払う。ネガティブな考えだ。
 もちろん薬師としては、病はあってこその商売繁盛のチャンスと言える。
 だからといって、それで苦しむ人々の不幸を見逃してはなるまい。
 ろくでもない男だが、それでも最低限の倫理観というものは存在しているのだ。
 さっさとこの気色の悪い連中を蹴散らして、霊玉とやらを砕けばよい。
 長妖刀にばちりと電光を纏わせ、刃を担ぎ、いなせな薬師は次の敵を求めて歩く。

 ……ところで、このクソ暑い中、フードを目深に被るパワーファイターがいた。
 その名は六六六・たかし。六六六、と書いて「デビルズナンバー」と読む。
 同じ名を持つUDCどもと戦い続ける少年だが……ここはサムライエンパイアなので、
 その話もやはりひとまず、さておこう。とりあえずその外見はものすごく暑苦しい。
「…………」
 そのたかしが、腕組をして、数体の鬼百足どもと相対していた。
 じりじりと太陽光が照りつける。だが、たかしはそんなものを歯牙にもかけない。
 仮にこの場で風土病のウィルスとやらがばらまかれても、同じことだ。
 ほんとに歯牙にもかけないの科は甚だ疑問だが、まあ彼はそういう少年であり、
 聞かれたら言い張る。そういうお年頃なのだ。もう17歳だけどね!
「俺はともかく、一般人ならば一瞬で死に至る灼熱地獄……起こさせはせん。
 ガツンと! 貴様らを殲滅し、その野望を終わらせてやる。なぜなら俺は!!」
 くわわっ。フードの下で、鋭い四白眼が見開かれた!
「――たかしだから」
 これ、彼の決め台詞である。鬼百足ども? ぽかんとしている。
「さあどうしたムカデども。貴様らのスピードとやらを見せてみろ。
 言っておくが、貴様らののろまな攻撃など――俺には、決して届かない。」
 なぜなら? そう……たかしだから!! ……根拠になっていない!
 まあさておき、たかしはどうやら後の先を突いて敵を倒すつもりらしい。
 じりじりと鬼百足どもが彼を包囲する……そして、飛びかかった!
『『『キイィイイイギャアアアアアッ!!』』』
「言ったはずだ――遅い。俺には通用しないとなッ!」
 ガギンッ! 愛剣で尾を切り払う。だが攻撃は背後からも襲いかかる!
『オラにまで仕事させておいて言う台詞だべかぁ、それ』
 すると、ぬうっと巨大なかかしが現れ、背後めがけた尾を受け止めた。
 これぞ"デビルズナンバー"のうちの一体にして、たかしの相棒である人形。
 麦わら帽子にへのへの文字の顔。名前はそのまんま――"かかし"、だ!
「お前たちは俺の仲間。であれば、俺の力であると言っても問題ないッ!」
『ありありでしょうが! まったく、これだから厭なのよ……』
 そして、たかしが従えるデビルズナンバーは一体きりではない。
 和装の童女の姿をしたデビルズナンバー、"ざしきわらし"が呆れた顔をする。
「そんなことを言いつつ、お前は俺を助けてくれる。ふっ、わかっているさ」
『べ、別に、あ、あんたのためじゃないんだからねっ!』
 ツンデレだ。このご時世逆に珍しいツンデレロリである。天然記念物だ!

「おっとぉ? 助太刀は……んー、ありゃいらないかなぁ?」
 そんな彼らの戦いぶりを遠巻きに見ていたロカジは、やや思案した。
 とはいえ、こうして目撃した以上、はいさよならと去るのは男がすたる。
 ましてやこれは鉄火場。敵と見れば挑み、踊ってこそのエンパイアキッズか!
「はい、てなわけで失礼! 余計なお節介かもだけど手伝うよ!」
 にかっと好青年めいた笑みを浮かべ、うだつのあがらぬ浪人が割って入る。
 担いだ長妖刀、ばちばちと帯電するさまは、敵にとっては不穏そのものだ。
「何? 助太刀だと? 頼んだ覚えはないぞ」
「まあまあそう言わず。同じ猟兵なんだからさ、ねえ?」
「フッ、活躍の場がなくとも恨むなよ。なぜなら俺は――たかしだからな!」
 シャキーン! たかしは誇らしげに己の愛剣を構えた!
 なんかこう……ガンモードと剣モードがある、ごてごてしてかっこいいやつ!
「え、なにそれ?」
「知らないのか? これが俺の超魔銃剣――たかしブレードだッ!!」
「…………あー」
 なにやら納得した様子で、掌をぽんと叩くロカジ。
「ごめん、その病気はちょっと治せる薬持ってないなぁ、僕」
「人を病人扱いするな!!」
「いやまぁ、そのぐらいの歳だとだいたい誰でも罹患するよねえ」
「生暖かい目で! 俺を!! 見るな!!!!!」
 うんうんわかるわかるーって頷くロカジに全力でキレるたかし。
 そういうんじゃない。そういうなんか、中学二年生のやつじゃなーいの!
 真面目なの! たかしくんは真面目なんです! ロカジくん謝ってくださーい。
 イマジナリ学級会はさておき、見よ! 鬼百足どもが脱皮していく!
「ふ――愚かな。貴様らの運勢は! ……ざしきわらし!」
『言わずもがな、大凶よ! ご愁傷さまねっ!!』
 びしぃ! 童女が指を突きつけると……おお、これは一体!?
 身軽になるための脱皮が途中で停止し、鬼百足どもは無防備な状態に!
「へぇ、運勢操作か。こりゃ面白いユーベルコードだ」
 感心した様子で顎をさすりつつ、ロカジもまた長妖刀をぎらりと構えた。
「つまり、こいつらは僕らが斬り放題ってわけだね!」
「そういうことだ! さあ、行くぞたかしブレード!」
「……それ毎回やってるの?」
「放っておけ!!!!!! デビルたかし、ブレェーイクッ!」
 ザックーン! 決めポーズつきのかっこいい斬撃(ただの斬撃)が敵を切断!
 誰もが罹患するアレにどっぷりかかってるたかしの様子を生暖かい目で見つつ、
 ロカジもまた風のように――否、走らない。遠間なれどこれで十分ならば。
「さて、そのごわごわ燃えてる気色の悪い体、近寄るのも暑苦しいんでね。
 ――まとめて火の粉と散らしてやろう。僕は派手派手しいのは苦手なんだよ」
 涼やかに言い、長妖刀一閃。ばちばち、ばちり――バチバチバチッ!!
 帯電した雷光が、円弧の軌跡をなぞるように走り、そしてほとばしった!
 バチィッ!! 稲妻じみた雷の蛇、あるいは鞭が、鬼百足を打ち据える!
 暑気を払いて走る電光、さながらこのあとに来るであろう雨の恵みの先触れか!
「見えているなら僕には届く。その位置、いつから遠いと思ってた? なんてねぇ」
「…………」
「えっ、何?」
「…………負けないからな!!」
「えっ、何が!?」
 そのかっこいいとこだよ! と言いたげにずびしぃと指差すたかし。
 励め少年、真のヒーローとしての道のりはまだまだ遠いのだ……!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エル・クーゴー
●POW



躯体番号L-95、作戦地域に現着
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します

【嵐の王・空中行軍】、発動
マニピュレーターより展開する【メカニック】にて、強化パーツ群を「高高度に於ける航行性能」を重視し配置
当機は上空より交戦地帯へ突入します(空中戦)

高度を航行しつつ、敵群を偵察
呼吸や口腔の挙動等「苦鳴」の予備動作を捕捉次第、敵攻撃射程外への退避ないし射程限界地点での威力減衰を見込み、更なる高高度へピッチアップ

マニューバ後は即座に急降下反転
敵の退避方向を絞るように機関砲より【範囲攻撃】掃射
頭数を程度固めた所で続き爆装を投下する【2回攻撃】
敵集合を【吹き飛ばし】ての殲滅を図ります


皐月・灯
……ったく、ただでさえクソあちーってのによ。
碌でもねーこと考える連中は、その考えごとブチ砕くに限るぜ。

数は多いが、炎の鎖は初手の炎さえ避けちまえば問題ねー。
……むしろ、【フェイント】込みで上手く【見切って】引き付ければ、敵同士を鎖で繋いでやれんじゃねーか?
元々ヤツらの使う技だ、ヤツら自身に大したダメージはねーかもしれねーが……オレの狙いはそこじゃねー。
そりゃあヤツらの動きが阻害されれば願ってもねーが、
一瞬の動揺でも構わねーんだ。
その一瞬に、ヤツらの連携が崩れた刹那に、《猛ル一角》を叩き込む。

どうしたよ、さっきまでの勢いはどこへやった?
――かかって来いよ。次に消えてーのは、どいつだ?


御鏡・十兵衛
【連携自由・アドリブ歓迎】

熱と風土病とは……うむ、人を効率的に殺すに有効な手段でござる。実に悪辣な手でござるなぁ。
しかし、守護者がこれでは片手落ちというものよ。

名所を屍で埋め尽くすのは忍びないゆえ、それなりに真面目に行くでござるよ。

近づけばおぶりびおんらは苦鳴を上げてくるでござろう。それは些か面倒ゆえ、基本は各個撃破を。百足の身体を駆けのぼり、急所を狙い一刀にて仕留めるでござる。
奴の操る炎には【水破】を繰り出し、灼熱ごと水流で貫くと共に、水蒸気を発生させ、次の獲物へ近づく隠れ蓑として利用するでござるよ。



●嵐、来たる
 高熱。そして高熱環境でのみ生存する風土病。病と熱。
 古来より、多くの人の命を奪ったのは、剣でも銃でも天変地異でもない。
 病だ。そして神々の気まぐれめいた異常気象、日照り、そういったもの。
 であれば、これを利用し民を、兵士を殺そうとする策は、実に効率的と言える。
 ……効率的に、過ぎる。一般的感性の持ち主ならば、嫌悪し義憤するのが必然。

 だが、今まさに鬼百足どもの攻撃を、その尾を軽やかに躱す女に、それはない。
 剣豪めいた――事実そうではあるが――装いの隻眼の女、名を御鏡・十兵衛。
「いやはや! 遠ければ炎、近づけば尾! 実に厄介でござるなあ!」
 能天気そうな顔であっはっはと笑いながら、やはり呑気なことを言う。
 その一方で、手足は別人のように動き、致命的攻撃は神速の抜き打ちで切り払う。
 一挙一投足、その眼差し、意気、何もかもが斬るため、剣のためにあるかのよう。
 人懐っこく見える羅刹の正体は、その実"そういうもの"である。
「斯様な名所を屍で埋め尽くすは忍びない。さてどうしたものか!」
 剣を究める。ただそのためだけに全てを構築された生物であり、存在であり、人格。
 ゆえに、此度の戦場に降り立った十兵衛に、およそ感慨はほとんどなかった。

 一方で、そんな彼女の軽口にうんざりとした様子で、キリキリ舞いに踊る少年もいる。
 この暑い中でもフードを外そうとしないあたり、相当のこだわりがあるのだろう。
 あるいは、理由か。目深に被ったフードの下には、異色の双眸がちらりと煌めく。
「……わかったから、もう少し黙って戦えよ。うるせーんだよ」
 かんらかんらと笑う十兵衛に、ぶっきらぼうかつやや粗暴に言い返して、
 己めがけて降り注ぐ炎の業火を、鋭いワンツーパンチで"かき消して"いく。
 しかしてその動きは上半身のみにとどまらず、体幹の駆動はしなやかなものだ。
 レッグスウィープめいて振るわれる尾をショートジャンプで躱せば、
 回避行動を次の攻撃に繋げ、鋭いソバットで間近の鬼百足を吹き飛ばす。
 皐月・灯。小柄な体躯に、有り余る魔力を以て全身を駆動させる魔術拳士。
 その身が振るう幻釈顕理(アザレア・プロトコル)は、格闘であり魔術である。
 本来不一致とされるこれらを、同じレイヤに重ねてひとつの技術とする。
 異形とも言える格闘術を、灯は文字通り手足のように操り、攻防を繰り広げる。
「ったく、ただでさえクソあちーのに、うじゃうじゃ碌でもね―ヤツらが」 
 目の前に踊りかかってきた鬼百足の頭部に、針の如きストレートが刺さった。
 KBAM!! 拳を起爆点として魔力が爆ぜ、害虫の頭部をまるごと吹き飛ばす!
「……そういうのは、その考えごとブチ砕くに限るぜ」
 十兵衛とは対称的に、少年の声音には、悪党どもへの義憤が満ちていた。

 この両名、偶然から斯様な大立ち回りをするに至ったふたりである。
 敵の数は十……いや、さらに五。個体ごとの戦闘力は並に毛が生えた程度だが、
 厄介なのはその連携能力。数の利を狡猾に利用してふたりを追い詰めている。
「拳士殿! この状況、いわゆるジリ貧というものではござらぬかなあ!」
「わーってんなら手を動かせよ、手を! 世間話してる場合か、っつーの!」
 SMASH!! 狙いすました裏拳が、背後から不意打ちしようとした鬼百足を一蹴!
 その一方、お見事! などと茶化していた十兵衛はと言えば、
 飄々とした態度を崩さぬまま、神速の居合で手近な一体の腕を斬り飛ばしている。
 だが、埒が明かぬ。ある程度数を削ぎ落としても、また次が来るのだ。
 対処は出来る。だが膠着状態を切り開くための起爆剤が足りない!
「こう、うまいこと誰某が駆けつけてくれればよいのでござるがなあ!」
「……オレのほうを見ながら言うんじゃねー。んなアテ、いねーよ」
「あいや、これはしたり! はてさて、となると少しばかり怪我を覚悟せねばならぬか」
 じわり。背中合わせに立つ十兵衛の威圧感が、一瞬にして増した。
 灯は、そのプレッシャーにフードの下で目を細める。この女、相当の使い手だ。
「……捨て身の攻撃か? オレは別にいーけどよ」
「若々しいでござるなあ。しかし本当にアテはござらぬので?」
「ねーよ。……ああ、ただ、そうだな」
 思案するように言って、灯はふと、空を見た。
「――こういう時に、喜び勇んで飛び込んで来そうな連中は、知ってるぜ」
 十兵衛も視線を追った。そして、ふたりはそれを見た。空から来るものを。
「"オブリビオンをブチ殺せ"なんて、おっかねータスクで動いてるヤツらが、な」
 ふたりは見ていた。空から降り来たる、嵐の先触れを。
 その者らの名は、嵐の王とそのしもべたちになぞらえて、こう呼ばれる――。

 ワイルドハント。
 数多に存在する猟兵たちの集い、すなわち"旅団"の中にありて、
 己らを"猟団"と称する、一風変わった連中の集いである。
 年齢、種族、職業、得意武器、魔術体系、技術体系、etc,etc――。
 猟兵としてのそれらに、所属する面々の間の共通点は一切ない。
 しかして彼らは、やはり変わった団長のもと、たったひとつを基本原理とする。

 敵(オブリビオン)を、殺す。

 過去の亡霊恐るるに足らず。我ら大挙し征く百鬼夜行の空中行進などと謳い、
 全ての大敵どもを狩り尽くすことを標榜する、血の気の多い連中だ。
 この荒唐無稽な団の中に――言うまでもないが、灯もそのひとりだ――ひとり、
 いや……正しくは一体、あるいは一基。そのタスクを絶対とする人形が在る。
 躯体番号L-95(エル・クーゴー)。過去の記憶なき寡黙なる電脳騎兵。
 少女の姿をした完全鏖殺機械。過去の残骸を破砕し滅却するこの人型兵器は、
 まさに今、戦場となった銚子渓の上空――地上5000メートル付近にいた。
 訂正しよう、すでに4000メートル。兵器は超速度で垂直降下の真っ最中である!
『敵軍偵察完了』『交戦中の猟兵二名確認』『照合』『>猟団員』
 遠距離戦闘・兼・IT担当。皐月・灯。データ一致。ではあちらの女は。
 地上3000メートル。超スピードのなか、はためく銀髪が陽光にきらめく。
『データ未登録』『_羅刹』『猟兵と確定』『当機は援護を開始します』
 地上2000メートル。1500。1000。750。500。250――!!
 カシャ、カシャ、カシャ! 躯体のカメラアイが再フォーカス。目標は敵性体。
『呼吸行動を捕捉』『"苦鳴"予備動作と認識』『敵性体同時行動>』『予測_威力増大』
 敵は、己らのそれを一つに束ね、躯体を撃ち落とそうというわけか。
 地上のふたりはその隙を逃すまい。であれば囮になるだけでも十分ではある。
 ……否。おそらくは足らぬ。敵完全撃滅にはあと一手が必要。
 地上150メートル。125。120。躯体はスピードを緩めない。
『交戦領域――到達』
 間合いに入った。鬼百足どもが――音波を、放つ!!

 その瞬間に起きたことは、刹那でありながら情報の怒涛のようである。
 完全に敵の狙いが上空のエルに逸れたことは、灯と十兵衛にとって僥倖。
 しかし不用意に打ち込めば、それは逆にすべての機会を逸することになる。
 そして灯が読んだ通り、エルは――躯体は、"間合いに入った瞬間急上昇した"。
『『『!?!?!?!』』』
 キィイイイイ――!! 強烈な音波が上方向に放たれ渓谷に響き渡る!
 だがその範囲内に躯体はない! 着弾限界を見極めた神業的高高度ピッチアップ!
「まんまと外しやがったな。オマエらには捉えられねーよ」
 灯の声は挑発だ。鬼百足どもの注意がそちらに向いたことが命取りである。
 疾い。十兵衛がすでに動いている! 手近な鬼百足の尾を足で踏みしめて潰し、
 さらに体を駆け上る。斬撃。上昇速度すら乗せた螺旋じみた回転一閃――斬首!
「来るでござるぞ!」
「わかってら――!」
 ふたりの読み通り、鬼百足は一網打尽を狙って業火を形成、収束!
 そこへ十兵衛の二の太刀。なんたる速度! 納刀・抜刀いずれも目視不可!
「生半な防御は悪手と心得よ。いわんや連携戦術など――これ、この通り」
 かちん。鍔鳴りの音の直後、円弧の軌跡を描いて超高圧水流が大気を遮った!
 "水破(みずは)"。悪魔的斬撃は、狙い過たず灼熱を無造作に打ち払う!
 だが見よ。爆ぜた水蒸気を切り裂き、盲撃ちじみた溶岩鎖の群れである!
「当たるかよッ!」
 灯が駆けた! 鎖は意思を持つ蛇めいてこれを追う……だが、遅い!
 そして灯は、敵めがけて真っ直ぐに駆けると思わせ、水蒸気に紛れ跳躍。
 がしゃがしゃと音を立て、哀れ、鎖は鬼百足どもを絡め取る最悪の状況に!
 二撃目? 放たせぬ。十兵衛の水破が、今度は百足どもを縛る波となる。
 上空。再々降下に挑んだ躯体と、フードがはだけた灯の視線が絡み合う。
 刹那の交錯。ふたりの視線は眼下――すなわちがんじがらめの獲物どもへ。
『敵集合』『機関砲斉射』『ワイルドハントを開始します』
 BRATATATATATATATA!! ダメ押しの弾幕波状攻撃である!
「美味しいとこはもらってくぜ――アザレア・プロトコルッ!」
 ドウッ! 魔力で空中を蹴り、灯がエルの弾丸に遅れて再加速した!
 握りしめた両拳、術式展開は十分。魔力収束、これなるは一番式の変則打法!
「《猛ル一角》――いいや、《猛ル双角(バイコーン・ドライブ)》だッ!!」
 ――KRAAAAAAAAASHッ!!
 両拳による時間差打突。破滅的魔力が水破のそれと混じり、業火をも吹き飛ばす!
 隕石が堕ちたような衝撃とともに、鬼百足どもは微塵に砕けて消えていく……!!

 ……そして、静寂が訪れた。
 もうもうと土煙と水蒸気が混じり合って、霧めいた風景を作る。
 靄のなか立ち上がるのは、少年とそれを知る少女の躯体。
 薄らぐシルエットを見、十兵衛は愉快げに隻眼を細めた。
「――嵐の王(ワイルドハント)。なるほど、このような」
 それは、まごうことなき修羅のそれ。求道者だけが見せるもの。
 強者の臭いを嗅ぎつけた、獣じみた笑みと高揚である――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

矢来・夕立
【怪雨】赤ずきんさん/f17810
※共通方針:脱皮の阻害→トドメ

え。いりません。
もしかして赤ずきんさん、アレ欲しいんですか?
虫ピン代わりになるものは作ってあげますけど…ええ…センス疑うわ…

【紙技・彩宝】。
ハサミを作る。刃渡りは打刀程度。
千代紙一枚で折れるのは片刃だけですけど、
二本合わせれば普通の(大きい)ハサミですよ。
刺すだけなら一本だけで足りますけどね。

赤ずきんさんがお医者さんごっこしてる間に《忍び足》で別の個体を《串刺し》。
押し切れるならそのまま《暗殺》。

標本はいりませんけど、どっちが器用に作れたか競争しましょうよ。
ほらコレ、ほとんど抵抗されてないんで超綺麗ですよ。これは勝ちましたね。


レイニィ・レッド
【怪雨】坊ちゃんと/f14904

坊ちゃん
昆虫標本って作ったことあります?
自分はねーんですけど

いや、デカブツなら作りやすいかなと
記念にどうです?
…自分は要らねェですけどね

坊ちゃんの用意してくれた大量の片刃
有難く使わせて貰いましょ

『赤ずきんの縫製』を載せ
ムカデの胸か腰を串刺し
地面に縫い留めます

次いで尾、首辺りもブッ刺し
串刺して動けねぇ標本にしてやります
自力で抜けないように手もやっときましょ

脱皮で速くなるなら
動けないように串刺し
最低限脱げないようにしてやりゃイイ

標本作って満足したら
いつもの鋏でバラしてやりましょ

…別に構わねーですが
自分の標本に勝てますかね
脚も伸ばして留めてましたからね
標本っぽいでしょ



●蟲
 幼い頃の時分、戯れに虫を弄んで殺した経験は多くの人が経ているだろう。
 蟻の巣に水を流し込むなり、羽をもぎ取って地面を這わせるなり、
 あるいは石の下にうじゃうじゃ蠢く虫どもを意味もなく殺したり……。
 別に何か、大それた理由だとか心の傷だとかがあるわけでもない。
 命の意味と価値を、まだほんとうの意味で理解できていない幼少のみぎり、
 どれだけ残酷であろうと、それこそ"無邪気"という言葉そのままであろう。

 そいつらの表情は、まさに無邪気そのものだった。
 なにせそのふたり――レイニィ・レッドと矢来・夕立――は、
 敵にこれっぽっちの憎悪も憤りも、侮蔑も嘲りも抱いてはいなかった。
 元よりふたりは"そういうもの"だ。殺す技量があり、殺すべき敵があり、
 それを仕事として請け負ったから殺す。いわば、仕事に過ぎぬ。
 まあこのクソ暑い灼熱地獄が実現したらいろいろ面倒が増えそうだし、
 そもそも戦争が敗北されては困る。そういう程度の義務感めいたものは、ある。
 だがそれだけだ。ゆえに、呵責や憐憫のようなものは一切存在せず、
 鬼百足どもを貫き殺す手際は、まるで工場に務める作業員めいてすらいた。
「ねえ坊ちゃん、昆虫標本って作ったことあります?」
「は? なんでですか」
「いえ……自分はねーんですけど、デカブツなら作りやすいかなと」
 ちょいちょい。レイニィが、足元に倒れる鬼百足の死骸をつま先でつつく。
「え……これで?」
「記念にどうです?」
「え。いりません」
 素の反応であった。
「もしかして赤ずきんさん、コレ欲しいんですか? ええ……」
「いやいや。まだ欲しいって言ってないでしょ。要らねェですよ」
「センス疑うわ……いやほしいなら虫ピン代わりになんか作りますけど……」
「話聞けよ」
 素の反応であった。

 ……まあとにかく、ふたりの"殺り方"は恐ろしく無機質であったのだ。
 感慨も、達成感も、溜飲も、次なる敵への執念も、何もない。
 ただまあ、このクソ暑さをもたらそうとしていることへの怒りはあるが。
 それは別にどうでもいい。テレビに映るムカつくタレント相手の罵倒と同じだ。
 つまりふたりにとって、戦場とはそのぐらい"当たり前の場所"であり、
 ここ播磨国の危機にあろうとも、その精神に一切の変化はなかった。
「結局作ってもらっちまいましたけど、自分の話聞いてました?」
「いや、オレは別に赤ずきんさんの趣味はとやかく言いませんよ」
「聞いた上で無視してんなこれ」
「まあ、いいんじゃないですか。"いつもみたい"に使っても」
 などという夕立の言葉に肩をすくめつつ、レイニィは片刃のハサミを無造作に投げた。
 物陰で脱皮し、回避不可能な速度の不意打ちを仕掛けようとした鬼百足が悲鳴を上げる。
「おお、こりゃなるほど」
 レイニィは無造作にそれに近寄り、さらに腰部を別の片刃で串刺しに。
 次いで尾、さらに首を突き刺し、踏みにじった手を"ピン刺し"した。
「やっぱ手慣れてますね。なるほど……」
「いちいち自分のことサイコパスみたいにするのやめてもらえます?」
 つーか、と、レイニィは振り返って言った。
「――坊ちゃんのほうが、よほど"慣れてる"でしょうが」
 夕立の足元には、さらに三。話してる間の片手間に殺した虫どもだ。
「向こうから寄ってくるんですよ」
「虫ですからねぇ」
「ああ、じゃあ、せっかくだし競争でもしましょうか」
「ええ……センス疑いますわ……」
「うっわ言われると腹立ちますね。ウソですけど」
 ケロッとした顔。
「どっちが多く……いや、"器用に作れるか"ですかね。どうです?」
「ま、いいでしょ。飽きるまではお付き合いしますよ、坊ちゃん」
 まるで子供のように。無邪気な、幼い、善悪すらも識らぬ子供のように。
 ……それはひどく残酷で、恐ろしく、それでいて空虚で、なにより。
「じゃあ、始めましょうか」
「坊ちゃんのやりたいようにどーぞ」
 悲しくなるぐらいに、何の意味もない野放図な癇癪めいていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

千桜・エリシャ
こんなに美しい景色を燃やそうだなんて
それに
鬼なのか百足なのかどちらなのかしら
ふぅん…分類的には鬼ですのね
羅刹の成れの果て、ね
ここは同胞の引導を渡すのが道理というものかしら
そう、ならば
戦い抜いた闘争の涯に御首を貰い受けますわね
きっとそれが本望でしょう

この攻撃は当たると面倒ですわね
空中戦と見切りでくるりふわりと避けましょう
そうして躱しつつも
こちらも斬撃を放って更に二回攻撃
その身を斬り刻んで差し上げますわ
鎖で繋がれたら呪詛籠めた刃で断ち切りましょう

あなた方の恨みごと魂を
この刃が美味しくいただきますの
首をすっぱり斬り落として
嗚呼…刃が燃えるように熱い…
これがあなた方の想いの丈ですのね
ごちそうさまでした



●鬼の炎の根源
 羅刹というものが皆そうとは言わない。ただ、己の中には"炎"がある。
 消そうとしても、鎮めようとしても、けっして消えず鎮まらない炎。
 首を――いのちを、闘争を、死合を、どうしようもないものを求める炎が。
 だから敵が己らの成れの果てだというのなら、なんとなくわかる。
 きっと彼女たち――あるいは彼ら――は、同じものを宿していたのだろうと。

 炎が降る。それはまごうことなき、鬼の業火だ。
 溶岩めいて熱く、強く燃え上がる炎を、花びらのようにふわりと避ける女。
 千桜・エリシャ。舞う姿は、まさに一本の見事な枝垂れ桜のよう。
 胡蝶たちがひらひらと飛び交うなか、それを飲み込もうとふたつめの飛礫。
「滾っていますのね、いいえ、あるいは――乾いているのかしら」
 ぱちん。抜刀と納刀、音はほぼ同時。遅れて火がぱつんと真っ二つに裂けた。
 左右に散っていく熱波を超えて、微笑む羅刹がふんわりと軽やかに降り立つ。
 単眼の鬼どもが――あるいはその姿を模倣する百足ども――雄叫びを上げた。
 耳に障る声に少しを柳眉を顰めることもなく、エリシャはごく自然に抜刀。
 一撃に見えた。だが、ガガ、ガガガガガッ!! と二百近い剣閃が遅れて走る。
 真っ二つ、というレベルではない。もはや微塵切りだ。
 もとの面影すらも思い出せぬほどに斬って裂かれた残骸が、燃える。
 内側に炉のごとく燃えていた炎が、屍すらも灼き尽くしてしまう。
「ごめんなさい。首を、落としてさしあげるべきでしたわね」
 二体目が来る。エリシャは振り向きざまに桜混じりの斬撃を放った。
 今度はいい。遥かに良い――火炎が来るよりも先に首を落とせたからだ。
 ごとり。堕ちてなお、単眼はぎょろぎょろとエリシャをにらみつける。
「そのような異形に堕ちて、どれほどの恨みを抱いたのでしょう」
 三体目。首無しの屍を斬撃余波で吹き飛ばし、飛来した火炎の盾とする。
 敵が囀る。同族を盾とされたことに、鬼ながら怒りがあるのか、あるいは。
「もはや問うたところでわかりもせず、察することも出来ず――」
 しゃなりと女が舞う。ふわりと広がった髪が、一房火花に燃えた。
 くるくると咲き誇るように回転しながら、エリシャは抜身の刃を振る。
 ああ、いい手応えだ。骨の隙間をすらりと断ち切るこの感触。
 ごとり。己が死んだ瞬間すら気づかぬまま、鬼百足は絶命した。
「……けれど、その恨みを、恨みがこもった魂を、私の刃は頂きましょう。
 噫。この燃えるような刃の熱さ。これが、あなたがたの裡に燃える炎なのね」
 拾い上げた首に手を被せ、単眼を閉じさせてやれば、女はそれを掻き抱く。
 幼子のように。あるいは、大事な大事な宝物のように。亡骸のように。
「美味しい――」
 ちろり。口元を、艶やかな舌が撫ぜた。
「ごちそうさま。哀れで醜く――他人とは思えない、同胞たち」
 闘争の涯ての死は、残骸たるそれらに満ちた死を与えられただろうか。
 ……正直なところ、どうでもいい。ただ、この甘露を今は味わおう。

 己は羅刹。いずれはこうなるかもしれない、同じ人でなし。
 ただ、もしも成り果てるなら、桜のように美しい鬼に成りたい。
 なにせ桜は――死体を苗床に、綺麗に咲き誇るというのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

真馳・ちぎり
【WIZ】

何とまぁ暑苦しい
いえ、私、暑さには疎く御座います故、然程驚異には無いのですが……
然しながら放っては置けません
貴方がたに、神の御慈悲が有りますよう

【冤罪符】を用いて正面から殴りに参ります
とは云え私は後衛向きです故、余り近付き過ぎぬよう
戦場の【情報収集】を行い的確な布陣を取りましょう
【2回攻撃】の余裕が御座いましたら
【第零玄義】を放ち敵の攻撃を阻害したく御座います
嗚呼、嗚呼
神は此処に在り
私こそが神の愛
為ればこそ、貴方がたに祝福を



●愛の在り方
 きっと、彼ら(あるいは彼女ら)は、愛されずに死んだのだろう。
 でなくば、斯様に醜く、鬼とも虫ともつかぬ姿には成り果てまい。
 ああ。神よ。もはやここに在りしは、かつての彼らと異なる残骸なれど。
 どうか御慈悲を。私はただ祈り、そして葬(いの)りましょう――。

 うだるような暑さのなか、女は汗ひとつかかずに黒衣の修道服を纏っていた。
 これっぽっちのシワもありはしない着こなしぶりは、もはや不気味ですらある。
 しばし、両手を胸の前で握りしめて祈る様は、しかし神秘的で敬虔だ。
 彼女は何を祈るのだろうか。哀れなオブリビオンどもへの手向けだろうか。
 だとすればなんと慈悲深く、心優しく、そして美しい聖女であろうか。
 ――しかして、その内面は、ともすれば鬼百足のそれに近いやもしれぬ。
「嘆かわしいことです。神の御慈悲を届けることがこんなに難しいとは。
 救われぬ者のなんと多きこと。ああ、あなたがたに安らぎがありますよう……」
 ここが戦場でなければ、膝をついて祈りだしそうなほどにか弱い。
 しかしキィキィと虫めいて鳴いて蠢くそれらが目の前に現れれば、
 真馳・ちぎりはたしかな意思の光を双眸に輝かせ、決然と歩みだす。
「人々を蒸し殺そうとするには飽き足らず、病を放ち苦しめようとは。
 偽りの神を使役し、己らこそ絶対と嘯く渡来人の配下に相応しい罪業」
 ちぎりは神の敬虔な信徒である。神の愛を一心に信じる清らかな女である。
 ……そうとも、ちぎりは信じている。神は見てくださっていると。
「神に代わり、私がその罪を濯ぎ、清めましょう。どうか心安らかならんこと」
 業火が頭上に渦巻く。ちぎりはそれを見上げすらしない。
 仮にそれが降って落ちてきたとして、神に愛されし己が灼かれるはずもなし。
 己を灼く炎があるとしたら、それは神が下す裁きの業火以外にはありえまい。
「我は正義を執行する者。愚かなる罪を裁き、赦しをもたらす者なり」
 聖句を口にしながら、ちぎりはその手に三本の木釘を生み出した。
 炎が来る。避けぬ。するとどうだ……おお、奇跡か! 炎が四散して消えた!
『『『!?!?』』』
「わかりませんか? これは神の愛の賜物。私の祈りが通じた証なのです」
 ならばと、鬼百足どもは溶岩で紡いだ煮え立つ熱鎖を投げ放つ。
 だがそれもまた、ちぎりに触れることなく、ふわりとあちらこちらへねじ曲がった。
「哀れな……理解できないのですね。それもまた罪。ならば正義を執行しましょう」
 不思議な光景だ。鬼が女ひとりを恐れ、慄いている。
 ちぎりは悲しげな表情のまま、機械めいた手際で天秤付きのメイスを振り下ろす。
 ぐしゃり。神の慈悲、正義の裁きとやらは、汚らしく脳漿をぶちまけた。
 別の鬼が横から襲いかかろうとする。その手を、まずは天秤が砕いた。
 痛みに悶える罪人の頭部がひしゃげる。ちぎりに付着した血は煙に変わる。
「神は此処に在り。なぜならば、私こそが神の愛。我が身は神の恩寵なり」
 ちぎりは神を信じる。神の愛があると信じている。
 ――その愛は、己にだけ向けられていると盲信(しん)じている。
「なればこそ、あなたがたに祝福を。罪の裁きと赦しを、救済を」
 脳漿が飛び散る。目玉が砕けて爆ぜる。悲鳴と苦悶がこだまする。
「――神よ、この者らにどうか安らぎを与えたまえ」
 その祈りは、天を仰ごうときっとどこへも届かない。
 業火すらも退けるもの、それは狂いなき狂気の盲信に他ならぬのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

柊・明日真
【アドリブ歓迎】
数は正義とはいうがな、雑兵がいくら固まったって大した意味はねえよ。
下らん策略ごと叩き潰してやる!

加減なんぞ要らん、初っ端から敵陣へ突っ込んで《烈震の刻印》で攻撃だ。
一匹たりとも逃がさないよう足を止めずに【なぎ払い】【捨て身の一撃】で根こそぎぶっ潰してやる

連中の攻撃にわざわざ対応すんのも面倒だ、ダメージは【激痛耐性】と【気合い】で無視していくぜ。
隣で何を喚こうが、聴く気が無けりゃ聴こえてないのと同じようなもんだしな。

人様の命使ってまで蘇ってくるなんざ往生際が悪いぜ。
まとめてあの世へ送り還して
やるよ!



●灼熱よりもなお熱きもの
 別に知恵がないわけではない。彼にだって相応の知性はある。
 猪突猛進……という割には、突っ込んだあとの動きは的確だし、
 実際致命傷については最小限に留めている。本能ではなく理性の動きだ。
 柊・明日真という男を測る時、こうした思い込みはありがちな罠である。
 彼はたしかにどんなときでも力押しで解決する。
 ただそれは、それが最適だと確信できるだけの力と技術があるからだ。
 ……もっともそれはそれとして、やはり直情的に過ぎるのは事実なのだが。

 さて、そんな男がこんな戦場に飛び込むと、どうなるのか?
 大方の予想通り、明日真は策もへったくれもなくいきなり敵陣に突っ込んだ。
『ギィイ――』
「やかましい! まとめてぶっ飛ばすッ!!」
 その苦鳴の雄叫びが響くより先に、明日真の戦斧が鬼百足を叩き割った。
 頭蓋を砕き、目玉をひしゃげさせ、骨を割って総身を断とうが勢いは止まらぬ。

 ――ズシンッ!!

 勢い余った威力は地面をすら砕き、さらに局所的な地震を引き起こすほど。
 やや遅れて、着弾地点を中心に十メートルほどの蜘蛛の巣めいたヒビが走る。
 メギャンッ!! と盛大な音を立てて、一気に地面があべこべに浮いて沈んだ。
『ギィイイッ!?』
「人様の命まで使って、わざわざ蘇ってくるとはよォ!」
 ザシュン! 土くれを吹き飛ばしながらの斧の斬り上げが敵を滅殺。
 生き延びた鬼百足が炎の飛礫を放つが、明日真はこれを無造作に腕で薙いだ。
 当然、肉が焼ける。さらに溶岩の鎖ががらがらと片腕に巻き付いて燃えるが、
 意に介さぬ。むしろそれを綱引きめいて思い切り引っ張る始末。
「オォラッ!!」
『!?!?』
 げんこつ一発! 単眼が頭蓋骨にめり込んで後頭部から脳漿ごと飛び出した!
 キィイイイ――! と音叉する苦鳴の雄叫び。頭を振って痛みを無視する!
「くだらん策略に、ふざけた犠牲! おまけに女々しい戦術か!
 この暑さ以上にてめぇらが鬱陶しいぜ。まとめてあの世に送り返してやるよ!!」
 暴威だ。攻撃を物ともせずに、血を流しながらも敵を燼滅する様はまさに暴威だ。
 鬼神もかくや。否、それは鬼神を調伏する仁王明王の如しというべきか!
「次は誰だ、あぁ!? かかってこい! 全員遺らずなァ!!」
 血と汗を流しながら、些かも手足を衰えさせることなく明日真は荒れ狂う。
 熱い。この灼熱よりも、その意気と根性は暑苦しいに過ぎる。
 ――ただそれは、鬼どもよりずっと爽やかで心地よい、義憤の炎であった。 

成功 🔵​🔵​🔴​

鎧坂・灯理
【落暉】
暑いと苛つくな。皆殺しにしよう
ああ、あれが目標(ターゲット)か
なるほど景観を損ねる外見だ
さっさと片付けようか

Arsene殿の攻撃は味方には当たらないので気にせず
穂結さんの刀は一応気をつけておくが、彼女ならば大丈夫だろうよ
ミスタ・鳴宮も心配する必要はないだろう
ミスタ・ギュネスは……派手だな。念動力でガード。ついでに浮いておこう
であれば、私も景気付けと行こう

UC発動、ミサイル射出
属性は爆発でいいだろ、複数を巻き込みたい
味方に当たらないようにはするさ
近くの奴らには『朱雀』で目を撃つ
大きくて柔らかいからちょうどいい

さて、こちらは片付いた
皆は終わったかな?


穂結・神楽耶
【落暉】

ただでさえ今年の夏は暑いというのに。
これ以上熱くしてどうしようというんですか。
骸の海で頭を冷やしてきなさい!
…でも水滴はやめてくださいギュネス様。錆びます。

【神遊銀朱】。
敵の数は多そうですが、それより味方の頼りがいもあることです。
微力ですが力添えということで、援護射撃を主体にしましょう。

手状器官を貫いて地面に縫い留めたり。
尾を切り飛ばしたり。
視認範囲外の攻撃を庇わせたり。
味方が動きやすくなるよう、小器用に立ち回らせて頂きます。
派手な攻撃が多いですからね。
太刀程度ならちょっとしただまし討ちになるんじゃないでしょうか。

わたくしの手の届くところで、もう二度と。
ひとを焼かせてなるものですか。


ネグル・ギュネス
【落暉】
百足がわらわらと鬱陶しい
ただでさえ暑いんだ、さっさと始末する
というわけで、皆、お先に失礼


行くぞ、ファントム!
疾走しながら勢いをつけ、ウィリーから飛翔
そして空から勢い良く、【天から来る一撃】を地面や敵に叩き付けて粉砕してやる

地層が少しばかり歪むが誤差だ誤差!
砂や水ごとぶっ飛ばして、遠くの敵にもぶちまけてやりながら、さらに走る!


残った奴等は、バイクで走り周り、攻撃を【残像】で回避しながら、刀から放つ【衝撃波】の斬閃で細切れにしてやる
砂場や段差、波打ち際は【騎乗】の腕と特性タイヤがあればなんてことはない


暑いのは、夏の太陽だけで十分なんだよ
そんなに熱いのが欲しければ、地獄で焼かれて来るがいい!


鳴宮・匡
【落暉】


灼熱に風土病とは、また面倒な手を使うもんだ
……まあ、殺せば解決なんだ
シンプルでいいけどさ

準備はできてるよ、問題ない
それじゃ――始めようか

足を取られそうな地形だな
出来るだけ足場に気を付けて動きながら
【千篇万禍】で狙撃していくよ
回りが派手に暴れるみたいだからな、こっちはサポートに徹するさ

基本は目を潰して、敵の視界を奪っていく
万が一はないと思うが、味方の死角にいるやつから優先
暴れ出すようだったら足も何本か吹き飛ばせばいいか
視界と機動力を奪えば、あとはあいつらに任せていいだろ
……勿論、浮いた駒は積極的に殺りにいくけど

うわ、ヴィクティム思いっきり砂被ってんじゃん
やっぱ近づかなくて正解だったな……


ヴィクティム・ウィンターミュート
【落暉】

クソッタレコルテスの計略を阻止する
侵略面した奴が悔しそうに震える姿を拝んでやろうや
各員、戦闘準備は?よろしい
では──ランだ

やるこたぁシンプルで、火力で殲滅だ
思い思いの火力を叩きこんでやれ
俺も──うわっぷ、お前砂かけんなネグル!!
ったく…気を取り直して
尾による素早い一撃ってことは、予備動作は読み易い
【早業】でUC起動、セット『Dainslaif』
完全脱力、真正面から受けてやる

エネルギー奪取完了、変換──終了
血刃展開、範囲設定
テメェから貰った魔剣だ──礼にきっちり返してやるよ
纏めて薙ぎ払って、終いだ

こっちは終わった、そっちは?
チル。実にクリーンな戦場だ
では、状況終了だ
帰って補給すんぞ



●流汗淋漓、鬼の業火
 死闘が始まってどれほど経っただろうか。
 中天に昇っていたはずの太陽は、いまや西の空に沈みつつある。
 瀬戸内海の雄大な海原を、燃えるような夕暮れが照らし出していた。
 落暉の時。橙色に染まる空を――猛々しく唸る一台の鋼が、斬り裂くように跳ぶ。
『『『ギィイイイッ!?』』』
「行くぞ、ファントム! 我が一撃は、沈みゆく夕日の如くッ!!」
 ギャルルルル――KRAAAAAAASHッ!!
 超スピードを落下速度に乗算した大型バイクが、眼下の鬼百足ごと地面を破砕!
 ベコンッ!! と轟音を立てて、銚子渓の岩肌が砕けてがらがらと飛び散った。
「うわっぷ! おいネグル、お前砂かけんな! もっとスマートにやれスマートに!」
 ギャリリリリ! と派手にスピンしたネグル・ギュネスに、
 その土の飛沫をもろに食らったヴィクティム・ウィンターミュートは地団駄を踏む。
 一方、そんな彼の隣りにいた鳴宮・匡は、ちゃっかり砂埃を避けていた。
 当然だ。彼の動体視力なら朝飯前だし――そもそも、わかってたし。
「あのバカはほっといていいだろ、敵の足並みも乱れてくれるだろうしな」
「い、いいのでしょうか……あの調子で滝に突っ込んだりしなければいいのですが」
 あはは、と、匡の物言いに苦笑する穂結・神楽耶。だが異論はない。
 あの鋼の男は、冷静なようでいて誰よりも熱い直情家なのだ。
 さすがの神楽耶でも、そのへんはだいたいわかってきたらしい。
「私としては景観を損ねないかが気になりますが、まあ誤差でしょう。
 それとも、とっととあの目標(ターゲット)を片付けたいところだ」
 儀式は完遂していないとはいえ、この暑さはやはり精密作業の脳に障るのか、
 普段よりも苛立った様子で、鎧坂・灯理がカツコツとブーツを鳴らしている。
 すでに周囲には数十以上の鬼百足。これがおそらくは小豆島の最後の戦力だ。
「各自、戦闘準備は? なんて聞くまでもねえか。オーライ、なら――」
 顔にかかった砂を拭いつつ、不敵に笑うカウボーイが電脳ゴーグルを装着。
「ビズの時間だ。スロット・アンド・ランで片付けるぜ!」
 作戦開始。どのようにやるかって? そんなことは決まってる。
 思い思いが、好きなように、各々の最大火力をぶちまける。
 それで十分。倒すことなど前提。"いかに早くやるか"が重要なのだ。

 グォオオオオオンッ!! ガンッ、ギャリギャリギャリ!!
 渓谷の悪路を幻影のマシンは難なく走破し、むしろ完全に味方につけている。
「百足ごときがわらわらと鬱陶しい、ただでさえ暑いというのに!」
 グォオン、ギャガガガガガガッ!! 竜巻じみた猛烈なスピン!
 一瞬でも制御を誤れば即座にクラッシュする危険なスピン状態のまま、
 砂と水を撒き散らしながら、鋼の竜巻が並み居る鬼百足を轢殺粉砕する!
「――だがこのオフロードはいいな。誰もいないから走りがいがある!」
「ミスタ・ギュネス。お言葉ですが我々のことをお忘れでは?」
 ちらり。声のした方向――すなわち頭上を見上げるネグル。そこに灯理の姿。
 念動力で浮かび上がる女探偵は、鞄を無造作に開けてその口を敵に向けた。
 すると……おお、なんたることか。飛び出してきたのは小型のミサイルである!
 バシュウッ!! となんらかの噴射剤を放ちながら、ミサイルは亜音速で飛行!
 鬼百足どもの業火など意に介さず着弾し……KRA-TOOOOOOM!!
「あまり縦横無尽に動かれると、この通り巻き込んでしまうかもしれないので」
「フッ、要らん心配です。鎧坂さんならばその程度コントロール出来るでしょう」
「"出来る"と"手間ではない"は別ですよ、ミスタ」
 SPLAAAAAASH……新たなミサイルが次の着弾点めがけて飛んでいく。
「だがまあ、暑気払いの景気づけには派手な方が好ましい」
 ――KRA-TOOOOOM。
「派手なほうが、あなたの相棒も動きやすいでしょうから」
 ネグルは苦笑めいて笑った。なにもかもお見通しか、という面持ちで。

『ギッ!? ギィイイ!!』
『ガガッ!?』
 ぷちゅん、ぱちゅん、と、単眼が風船のように爆ぜて潰れていく。
 まるで射的だ。事実、ネグルと灯理の派手な攻撃はいい陽動になっている。
 ごくごく自然に匡は物陰に滑り込み、淡々と獲物の"目"を潰していた。
 命を取ることまではしない。それは他の連中が十分にやってくれるからだ。
 そらみろ――目を潰されて足掻く個体の手足と尾が、刃に切り飛ばされた。
(穂結だな。裏方仕事は台所でも戦場でも変わらない、か)
 最近入り浸るようになった、どこぞの探偵社での姿が脳裏をよぎる。
 割烹着姿でぱたぱたせわしなく動き回る様は、戦場での苛烈さと大違いだが。
(手間を省いてくれるならそれでいいさ。俺も楽が出来る)
 次の獲物に銃口をマウントしながら、次に脳裏によぎったのはグリモアベースの風景。
 灼熱地獄による蒸し殺し。そして、高熱環境下でのみ生存できる風土病。
 熱と病。これはたしかに効率的だ。戦場で一番厄介な敵と言ってもいい。
 悪環境下では、敵の弾丸よりも水の残量と衛生状態のほうがよほど面倒だし、
 逆にそれを利用して生き延びてきたことも、数知れず。
 ……そういえば、あの人にも腐るほどのサバイバル技術を教えられて――。
(殺せば解決なんだ)
 思考をシャットアウトし、匡は再び淡々と獲物の目を潰す作業に没頭した。
 ……独りで生き残ることは、難しいように見えて実は簡単なのだ。
 拠点や陣地の設営も最低限で済むし、当然物資も切り詰め放題。
 運ぶ際の問題はあるが、こと"生き残る"だけならば、独りのほうがよほどいい。
 煩わされることがない。……効率的ではある。ただ――いや、やめておこう。
(これも、悪い病気みたいなもんなのかな)
 だとすれば、やはり病とは厄介なものだ。短く、嘆息らしき吐息を漏らした。

 銃声もなしに飛んでくる援護射撃を、正直最初は怖いと思っていた。
 なにせ知らない間にもう(どこぞの忍びめいて)隠密行動しているし、
 こっちで位置を把握したと思った時には、別のところから弾が飛んでくるのだ。
 彼は人間……の、はずだ。いやあの忍びもそうなんだが、どうやって鍛えたんだか。
 その怖さが頼もしさに代わり、やがて当たり前のものになるまでは少しかかった。
 今はどうだろう。多分、そこそこ役には立てているんじゃないだろうか。
 神遊銀朱の"太刀さばき"についても、仲間たちから学んだところは多い。
 一撃で仕留めようとはせず、味方の攻撃が通りやすいようにお膳立てをする。
 ようは料理と同じだ。そう考えるとひどくすとんと落ちた覚えがある。
(――こうして淡々とこなせていることも、少し怖いですけれど)
 ただ、それに慄いて手を抜くようなことだけはしたくない。
 こうして仲間と認められているからには、その想いに全力で応えたいのだ。
 そうすることが、おそらくは己に出来る唯一最大の行為なのであり……。
(……こんなことを考えているうちは、まだまだなのでしょうね)
 きっと彼らはもっと冷静に、沈着に、それでいてスマートに仕事をこなす。
 自分はそこまでは辿り着けまい。なにせ不肖のヤドリガミなのだ。
 けれども。
(わたくしの手の届くところで、もう二度と。ひとを焼かせてなるものですか)
 力みすぎる肩から意識して力を抜き、けれども腹にはしっかりと力を入れて。
 視界にオーバーラップする過去の陰を斬り裂くように、新たな刃を飛ばす。
 弾丸をもたらす死神も、同じような病にかかっているとは知らずに。

「よぉーし、よし、こいつは実に順調だ」
 敵に囲まれた状態で、ヴィクティムはまったく真反対のことをいう。
 そして今頃思い出したように電脳ゴーグルを外し、きょろきょろと周りを見た。
「なんだオマエら――"まだ仕掛けてきてなかった"のかよ」
 鼻で笑う声。都合八体の鬼百足どもが、ざわざわと殺意に髪をざわつかせた。
 ぶるぶるとその躰が蠕動する。おぞましい。脱皮をしているのだ。
「そうだよ。さっさとかかってこい。俺だけサボってると思われるだろ」
 ちょいちょい指で手招きし――八方向からの同時攻撃!
『『『ギィイイイイッ!!』』』
 ヴィクティムは、まるで群衆に抱えられた聖者のように両手を広げた。
 尾が殺到する。それは救世主を貫き殺す無慈悲な槍のようでもある。
 そして過たず、臓腑が骨ごと貫かれた――否。貫かれて、"いない"。
「なァ、お前ら勘違いしてないか?」
 端役は云う。
「お前らみたいな雑魚がかまうべきは、もっと派手派手しい主役だろうが」
 疾走速度から斬撃を放ち、鬼どもを薙ぎ払う鋼の男。
 空を飛びながら破滅を撒き散らし、炎の華を咲かせて回る死神。
 陰から影へと飛び渡り、狂い無き弾丸で十二段目の階段を登らせる傭兵。
 虫を縫い止めるピンのように刃を走らせ、絞首台の縄をくくりつける女。
「お前らは雑魚以下だ。舞台に上がる上での度量と理解度が足りやしねぇ。
 だったらせめて――派手に散って、バラして、主役どもを彩ってくれや」
 エネルギー奪取完了。ヴィクティムは芝居がかった動作で両手を交差させる。
 じくじくち両手から血が滴る。それは呪いの魔剣めいて。
「覚えときな――こいつが、正しい"悪役の散り方"ってもんだぜ」
 ザウ――ズガガガガガガガッ!!
 合計八振り。鮮血の魔剣は、食人族じみて鬼どもの口から尾を串刺しにした。

 ……夕日が、沈んでいる。
 ヴィクティムがやってきた時には、すでに四人が揃っており、
 ネグルが鋼の腕で何かの宝玉らしきものを握りつぶしたところだった。
「おいおい、それもしかして噂の霊玉ってやつか?」
「そうだが?」
「ダムシット! ネグルぅ、お前そういうのはクライマックスにだなぁ」
「また始まった……別にいいだろ、そういうの。これで仕事完了なんだぜ」
「Arsene殿の凝り性は今に始まったことでもないでしょう」
「そうでございますね。ああ、それにほら、盛り上げどころのお話をなさるなら」
 神楽耶が西の空を仰ぐ。一同を、蝋燭の最後めいて輝く夕陽が照らし出した。
 長く伸びゆく影法師。……一同、言葉もなく、照らされる海の輝きに魅入る。
「……この光景は、大団円の証としては悪くないのではないでしょうか?」
「ハ! チルだな。お、ちょうど涼しい風も吹いてきたじゃねえか。んじゃ」
「次の作戦に行くぜ――とか云うなよ。まず帰って飯だろ」
「相棒の云うとおりだ。ヴィクティム、今日はおとなしく付き合え」
 喚くヴィクティムをネグルががっちり捕まえる様子に、神楽耶は吹き出す。
「今日の献立はなんでしたかね? 穂結さん」
「実はまだ考え中でして。せっかく海に来たんですし海産物ですとか……」
「待った、タコだけは勘弁してくれ。デビルフィッシュ、ノー!」
「タコで決まりだな」
「ノー! デビルフィッシュ、ノー!!」
「??? なんだ、タコがどうしたんだ。なあ相棒、おいヴィクティム!」
 今度は探偵のほうが頭を振る番である。
「……帰りましょうか」
 最後に一度、空を仰いだ。太陽はもう、水平線の彼方に沈んでいた。
 吹きゆく風に乗って、気の早い鈴虫の鳴き声が聞こえてきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月19日


挿絵イラスト