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エンパイアウォー⑧～餓えの怨念は屍人となりて

作者：夢幻

●農村への襲撃
　本来はのどかな農村であったであろう山陰の集落に、いくつもの悲鳴が聞こえる。
「うわああーー！　屍人だーー！」
「逃げろーーー！！」
　水晶屍人による襲撃だ。しかし、奥羽の時とは異なり、屍人は噛み付いてその数を増やすよりも、農民を連れ去ることを重視している様子だ。そして、連れ去れなかった村人も、追い立てるようにどこかへ集めようとしている意思が感じられた。

●強化された屍人
「皆、山陰に水晶屍人が出たぞ」
　グリモア猟兵の天御鏡・百々（その身に映すは真実と未来・f01640）は集まった猟兵を見渡すと、新たな魔軍将の脅威の説明を始めた。
「山陰の水晶屍人だが、どうやら奥羽に出たものと比べ、大幅に強化されているらしいのだ」
　その戦闘力は10倍以上にもなると言う。なぜそれほどの戦闘力を持つに至ったかといえば、
「これらの水晶屍人は、餓えによる苦しみで死んだ怨念を利用してつくられたものらしい」
　有名な『鳥取城餓え殺し』が行われた場所である鳥取城には、呪いの念が強く残っている。そこに集めた近隣住民を餓え死にさせるさせることで、強力な屍人を造り出したのだ。

「そして、この強力な屍人を更に増やすため、屍人たちは山陰の農村から農民を攫い鳥取城へ集めようといている。貴殿らには、これを阻止して貰いたい」
　屍人が村を襲おうとしているとしているところに駆けつけ、屍人を撃破、農民を救出するのが今回の目的だ。
「屍人は10体程度だが、先ほども伝えた通り奥羽で戦った時に比べ格段に強くなっている。油断は禁物だ」
　屍人は牙や爪、手に持った農具での近接戦闘がメインだ。しかし、それ以外にも肩の水晶から放つ閃光で目潰しをしてくることもあるため注意が必要だ。
「奥羽に山陰と、既にかなりの民が被害に遭っている。どうか、これ以上民へ被害が出ることを防いでくれ」
　百々の懇願を受けた猟兵たちは、山陰の農村へと転移していくのであった。

第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙 【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。 SPD   :    屍人乱撃 【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。 WIZ   :    水晶閃光 【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。 イラスト：小日向　マキナ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「きゃああああ！！！」

　水晶屍人の襲撃に、農民達はパニックになって逃げ惑う。そんな中、脚をもつれさせ、一人の少女が逃げ遅れてしまう。その少女へと、屍人は腐乱し囓られた跡のある腕を伸ばし、彼女を拘束しようとする。

　絶体絶命かと思われたところで、少女をかばって大型トライクを駆る黒い鎧の棋士がその間に入り、大剣を振るって死人を吹き飛ばした！

「大丈夫か？」
「屍人は僕達が倒します。あなたは村の奥へ逃げて下さい！」
「あっ、ありがとうございます！」

　ルパート・ブラックスミス（独り歩きする黒騎士の鎧・f10937）に助けられた少女は、続いて現れた石上・麻琴（虹の彼方の空の星・f01420）の誘導に従い、村の奥へと避難していった。

「さて、大群だろうが一体だろうがやることは変わらん。行くぞ、愛機よ」

　屍人の注意は、先ほど邪魔をしたルパートへと向いている。それを利用して、ルパートは敵を引きつけ、農民達が避難した方向とは別方向の、少し開けた場所へと敵をおびき寄せていく。

「この辺りならいいだろう。死に損なわされた哀れな者よ。今は、亡霊騎士として貴殿を黄泉路へと送り届けてやる！」

　ルパートは敵集団といったん距離を取ると、彼の体に詰まった燃える鉛でトライクを強化、変形させる。

「我らが駆ける前には勝利の未来。しかし駆けた後には屍と瓦礫のみ！」

　ルパートは強化されたトライクによる加速突進で、屍人の集団を轢き潰す。駆け抜けた地面すら崩壊させるそれは、『荒狂い破滅齎す戦車』のユーベルコードだ！　しかし、ルーパーとの攻撃は屍人たちに多大なるダメージを与えたものの、屍人はまだ動いていた。どうやら耐久力も通常の屍人に比べると、かなり強化されているようだ。

「これが強化された屍人ですか……面倒な。ですが、これ以上の犠牲はださせません！」

　麻琴はルパートの攻撃を受けた屍人を逃がさないように、破魔の霊符で敵の周囲を囲むと、ユーベルコードの詠唱を始める。

「名就けしは十二天将が一つ、前五青竜木神家在寅主銭財慶賀吉将！」

　麻琴が『青龍招来式・雷轟一閃』で召喚した青龍型の式神は、蠢く屍人達を雷撃結界に捉えた。拘束した屍人に、麻琴はトドメの一閃を放つ。

「お覚悟を……と言っても、理解できないのでしょうね、もう」

　麻琴の放った雷光を纏った斬撃を受けて、屍人達は完全に動かなくなった。可能であれば屍人達も弔ってやりたいところだが、村に迫る屍人はまだ残っている。二人は村人達を護衛するため、彼らの避難場所へと向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「す、水晶屍人共を、これ以上、増やされるのも、面倒、極まりない、から、な。か、確実に、片付けて、行くと、しよう」

　非在・究子（非実在少女Ｑ・f14901）は農村へと迫る水晶屍人にへと、単身で立ち向かう。

「あ、相手は、ぞ、ゾンビの、くせして、早く動ける、タイプ、みたいだ、けど、小回りは、効かない、みたい、だな」

　ゲームでは人型のゾンビはゆっくりと動くのが定番だが、この強化された水晶屍人はこと戦闘に限れば、なかなか高速の連撃も使用してくると言う情報だ。

「それなら、ＴＡＳさんの、力を、借りて、うまく、立ち回らせて、貰うと、する、か」

　ユーベルコード『Tool-Assisted Superplay』を発動した究子は、屍人へと挑みかかる。

「ＴＡＳさんの、力を、借りれば、見てから、回避も、余裕だ」

　屍人は近づいてきた究子に噛み付こうとするが、究子は尋常ではない速度で動いてそれを回避した。彼女は現実をクラッキングし改変する仮想ツールに自分を操らせることで、身体能力を増強して回避したのだ。

　まともな知恵も持たない屍人にそんなことは理解出来るはずもなく、今度は手に持った鍬を振りかざし、究子へ向けて『屍人乱撃』で攻撃してくる。

「パ、パターンの、決まった、攻撃なら、ＴＡＳさんで、余裕、だ」

　屍人乱撃は攻撃速度こそ速いものの、その攻撃は単調だ。究子はツールによるアシストを受けて、敵の攻撃を完全に回避する。途中で当り判定が小さい攻撃ポーズをとったり、乱数調整のためのアイテム使用動作が混じるが、そのあたりはご愛敬と言ったところか。

「その、乱舞技は、キャンセル、できない。い、今が、チャンス、だ」

　屍人乱撃を回避されて大きな隙を晒した屍人に、究子はゲームウェポンを取り出して攻撃を仕掛ける。ゾンビゲーなら銃が定番ではあるが、近接戦闘にはあまり向かない。ということで、今回はＲＰＧからアンデッド特攻の聖剣だ。実際にはゲームのような効果は発揮されないが、そこは気分の問題だ。ツールアシストを受けた究子は幾度も屍人を切り裂き、一気に屍人を撃破したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「新たな死者を求める憐れな死者…すぐに楽にして魂を解放させてあげたいのだけど……」
「集団を攻撃することも出来るが、確実にトドメを刺して討ち取るなら、やはり得物は槍だ。そうすると、一対一の戦いに持ち込む必要があるな」

　イル・ラース（堕天の翼の娘・f16345）とマレーク・グランシャール（黒曜飢竜・f09171）は、水晶屍人相手の戦い方を相談する。ポイントとなるのは、どうやって確実に倒すかと言うところだ。

「わかったわ。じゃあ、今回は私は彼らを閉ざす檻を創りましょう。悲しい魂達を、どうかマレークさんの槍で静かにしてあげて？」
「檻……？　なるほどな、ユーベルコードの迷路による敵の分断か。ならば、その策に乗らせて貰おう」

　二人の戦術はこうだ。イルがユーベルコードで造り出した迷路に敵に敵を閉じ込めてしまえば、その出口から出てくるのは一体ずつとなる。それをマレークが各個撃破するというわけだ。

「私には、彼らをどうにかする力はないのだけど、少しでもマレークさんが前だけを向いて戦えるようにするわね？　『終わりの世界はここに閉ざされる（ネバーエンディング・クローズドゥームワールド）』！」
　
　イルの発動したユーベルコードによって、残る水晶屍人の全てを巻き込み、迷路が生み出された。赤い花の絡み合う蕀でできたその迷路の出口は、イルの目の前に作られている。マレークは敵を倒すため、そしてイルを守るために彼女の前に立ち、水晶屍人が迷路を抜けてくるのを待ち受ける。

　しばらく待っていると、迷路の出口から一体の水晶屍人が現れた。屍人はマレークを視界に捉えると、彼に向かって突っ込んで来た。

「近づかせはしない！」

　マレークは『碧血竜槍』を屍人の水晶目掛けて投擲、水晶を打ち砕くと、さらにユーベルコードによる追撃を加える。

「星を穿て、蒼き稲妻を纏いし碧眼の双頭竜！　『流星蒼槍（メテオ・ストライカー）』！！」

　マレークが召喚した双頭竜は、蒼い稲妻を纏って屍人へと突撃する。如何に強化された屍人といえど、水晶を砕かれた上にこれほどの高威力の攻撃を受けてはひとたまりも無い。攻撃を受けた屍人はそのまま倒れて動かなくなった。

「マレークさん。持久戦になるでしょうけど、無理はしないでね？」
「大丈夫だ。敵の技は水晶の閃光以外は近接戦、この戦い方ならダメージを喰らわずに倒すことが出来る」

　投げた槍を回収するマレークに、イルは声を掛ける。だが心配は無用だ。イルのおかげで、必勝のパターンは構築された。マレークは同じことを数度繰り返し、無傷で水晶屍人の殲滅に成功したのだ。

　猟兵たちによって水晶屍人は討伐され、これ以上の屍人の増加は止められた。この調子であれば、幕府軍も被害無く山陰を進めるであろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月15日