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エンパイアウォー⑥～天下分け目の槍衾

作者：ヨーシャ

●関ヶ原
「徳川軍は関ヶ原まで無傷で到着したか。だが、この槍衾に立ち向かえるかな？」
　畿内の農民たちをかり出して作られた重装歩兵軍団を指揮する黒幕の助言者が、やってきた徳川軍の兵を前に語り出した。長槍と大盾に身を固めたファランクスが幕府軍に対して前進を始めると、たちまちに幕府軍はなすすべもなく潰走していく。
「やはりファランクスは無敵であったか。よし、そのまま進むのだ！」
　黒幕の助言者はにやりと笑うと、重装歩兵軍団に全身の指示を出した。

●グリモアベース
「関ヶ原の戦いで幕府軍が苦戦しそうな敵の情報をつかみました」
　マリア・テミルカーノヴァ（電子の海を彷徨う光・f00043）が心配そうにホワイトボードに戦況を書き込んでいる。ここでこの重装歩兵軍団を倒せなければ幕府軍は五万人の兵を失ってしまうだろう、とのことだ。他の軍団との戦いによっては、幕府軍は関ヶ原で全滅してしまうかもしれないのだ。
「さて、この戦いでは重装歩兵軍団の中心にいる敵将オブリビオンを倒す事が目的になります。なお、重装歩兵軍団は右手に持った長槍で攻撃し、左手に持った大盾で味方を守るという鉄壁の構えです」
　鉄砲などでなぎ倒してしまえば早いかもしれないのだが、彼らは洗脳された一般人なのだ。殺してしまっては後味の悪い結果になってしまうだろう。だが、重装歩兵軍団の中に踏み込まなければ敵将のオブリビオンに攻撃は届かないのだ。このため、重装歩兵軍団の一般兵をなるべく殺さずに中心にいる敵将のみを倒すことが求められるのである。
「さて、敵将ですが、権力者の影で助言者として立ち回る黒幕オブリビオンの僧侶のようですね。武者の霊を呼びだしたり無数の影の刃を放ったり激しい雷光を放ったりとかなり強力な攻撃を仕掛けてくるみたいです。とにかく、無事に戻ってきてくださいね……」
　マリアはそう伝えると、十字を描いて猟兵たちを送り出すのであった。

第1章 ボス戦 『黒幕の助言者』

POW   :    死灰復然（しかいふくねん） 【Ｌｖ体の武者】の霊を召喚する。これは【刀】や【弓矢】で攻撃する能力を持つ。 SPD   :    含沙射影（がんしゃせきえい） 【無数の影の刃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。 WIZ   :    電光雷轟（でんこうらいごう） 【錫杖】を向けた対象に、【激しい雷光】でダメージを与える。命中率が高い。 イラスト：かな 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　視点の定まらない目に、無理矢理作られた徳川軍への憎しみの表情。戦場に並んだファランクス兵の姿は、さながら異様であった。テルシオのように火器を持っている兵がいたとしたら勝ち目はないのだが、長槍と大盾でも刀が主装備の徳川軍にとっては十分近づくことはできないのである。
　攻撃しがたい理由は他にもあった。それは、この軍団がオブリビオンによって指揮され、洗脳を施された一般人によって構成される部隊だからだ。民草を攻撃できないという制約は徳川軍にとってかなり難しい戦いになる。ましてや、敵の指揮官はオブリビオンゆえ、一般の徳川軍の兵では太刀打ちできないのだ。
　ただ、猟兵がいるとなると話は変わってくる。猟兵ならオブリビオンだけを倒し、一般人を洗脳から解いて救出するのが可能なのだ。さあ、猟兵、どう出るか？




　立ちはだかるファランクスの陣形を前に、現れた二人の猟兵は己の魔力以て対応策を考え出したようだ。
「……一般人を洗脳して盾にするとかわかりやすく悪役のすることだねぇ。真っ当な生き方をしているお侍さん達には確かに効果覿面だろうけど」
　純真な少女、レイ・キャスケット（一家に一台便利なレイちゃん・f09183）が陣容を眺めながら心情を吐露すると、元来の生真面目さがにじみ出るようにハロ・シエラ（ソード&ダガー・f13966）も語り出す。
「中々上手いですね。非常に戦い辛いですが、やるだけやってみましょう」

　奇しくも、二人の作戦は一致していた。レイは、二重可変の三稜鏡で効果を高めた電撃を纏った魔力弾を放ち、ハロもまた手のひらから赤い冷気を放っていく。そう、どちらも一般兵に関しては殺さず動きを封じるという作戦だったのだ。
「さあ、いきましょう！」
　ハロの一声に、レイも同調して目の前のファランクス軍団に魔力を放つ。
「こういう状況を打破するのは魔法の十八番だよ♪」
　二人はファランクス陣の正面から魔力で動きを封じつつ、敵将である黒幕の助言者のもとへと駆けだしていった。
　作戦は大成功。まさに「預言者」が海を割ったように陣形は二つに分かれていく。そうこうしている間に敵将の姿を二人の目は捉えていたのである。
「やはり猟兵だったか……我が眼前に現れるとはなかなかの度胸。さあ、この雷光を喰らうがよい！」
　黒幕の助言者は錫杖をハロに向ける。だが、ハロは第六感で攻撃を感知すると手に持っていたレイピアを避雷針代わりに上空へ投げたのである。雷は虚空を舞うレイピアに吸収されていって、ハロは無傷で済んだのである。
「ぬぬっ、簡単に防がれたか。ならばこうだ！！」
　今度は黒幕の助言者の錫杖はレイを指していた。だが、レイの方も準備は万端。身につけていた付与の羽衣に魔力は吸い込まれてしまう。黒幕の助言者の攻撃は猟兵に見抜かれていたのだ。
　ならばとレイとハロは息を合わせた攻撃を始めるのである。
「喰らえ！　雷神の拘束！」
　レイはひときわ大きく叫ぶとためていた魔力を黒幕の助言者に向けて放つ。その直後に、ハロの鎧を無視したチャージアタックが黒幕の助言者に命中する。
「こ、こんなはずでは……」
　黒幕の助言者は、二人の猟兵の息の合った攻撃を痛そうにこらえるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　関ヶ原に突如現れた農民のファランクスは、猟兵の攻撃を受けた今でも前進を止める気配がない。前進を止めるには指揮官たるオブリビオンの排除しかないが、傷ついてもなお黒幕の助言者は動きを止めようとしなかった。だが、その動きは突如現れた三人の猟兵によって止められることになる。
「今度は槍衾ねぇ……信長軍も次から次へと、飽きさせてくれんなぁ？」
　羽月・姫香（災禍呼ぶ忍・f18571）がファランクスの狙いを定めまいと逃げ回り始めた。そのうちに、リューイン・ランサード（今はまだ何者でもない・f13950）は有翼の騎士ドラグーンを召喚するとドラグーンと共に天高く舞い上がっていった。その一方で緋翠・華乃音（終ノ蝶・f03169）はファランクスの背後に回り込むと気配を消し、襲撃の狙いを定める。
「ま、浸透と奇襲は忍の十八番や。大将首だけ……頂くでっ！」
　突如姫香は煙幕玉に火を付けファランクスの陣内に投げ込むと、ファランクスを構成する農民の兵たちが動きを止めていく。そう、この煙幕玉には痺れ薬が盛られていたのである。姫香も煙に巻かれるが、そこは毒使い、あらかじめ用意した解毒剤と自らの身体で耐えていたのであった。
「ええい、進め、進むのだ。このぐらいの奇襲にたじろいではならぬ！」
　黒幕の助言者が前へ進めと号令を下すも、農民兵たちは前にも後にも進むことができなくなっていたのだ。そんな中、上空からリューインとその守護騎士ドラグーンが黒幕の助言者めがけて降下し一撃を与えたのであった。
「さすがに煙幕玉を焚かれたときはどうしようかと思いましたが、こうして動きを止めるとあっという間に倒せてしまいますね」
　リューインの炎の属性攻撃を纏ったエーテルソードの一撃は黒幕の助言者に手痛い一撃を与えたのであった。
「突破自体は容易いかも知れないが、可能な限り被害を出すなというオーダーなら、俺は背面から奇襲させて貰おう！」
　その一方、華乃音は農民兵たちの動きを見切ると、背後から黒幕の助言者目指して突き進んでいたのだ。最後尾の兵を踏み台に空中に駆け上がると、槍と盾を足場に稲妻のごとく陣中を進む。そして陣中に黒幕の助言者を見つけるとそのまま一撃をたたき込んだのであった。
「見つけたぞ、その首、もらった！」
　黒幕の助言者は武者の霊を召喚するが、もう時は遅し。リューインの破魔の光に消えていく武者の霊。
「な、なぜだ、ここまで攻撃が見切られるとは……」
　慌てふためく黒幕の助言者の視界の外から異様な形をした手裏剣が飛んでくる。その主は忍法・無月で透明になった姫香であった。そのまま姫香は黒幕の助言者に近づくと手にした忍者刀で串刺しにしたのだった。さすがは忍者、暗殺者である。
「おのれ猟兵ども、この恨みは……ぐはっ！！」
　黒幕の助言者が息絶えると農民兵たちの目に光が戻る。
「はっ、俺たちは何を……って、なぜこんな戦場にいるんだ？」
　三人の猟兵たちが状況を伝えると、農民兵はみな戦意を失って徳川方に降伏したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月18日