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エンパイアウォー⑧~糧の屍の糧~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 よいせとテーブルの上に登った小さな動く物体は、ずり落ちかけた帽子を慌てて押えた。
「ちゅうもーく! ご注目よろしくお願いしマス!」
 その身長、実に約34cm。だぼだぼのローブにつばありのとんがり帽子という出で立ちで、暫らくぶりにベッジ・トラッシュ(深淵を覗く瞳・f18666)はお行儀悪く呼び掛ける。
「戦況がいいとは言えないらしい。まだ、悪いとも言い切れナイがな」
 帽子の下、画面に表示された瞳が左右に揺れ動く。
「既に出向いている者は多いだろう。予知を受けたのは戦争勃発中の、サムライエンパイアの戦場だ」
 先を促せば、戦場に関する補足が語られる。

 今回赴いてほしい戦場は、鳥取城周辺の村だ。その歴史を知る者ならば『鳥取城飢え殺し』の行われた場所だと言えば通りがいいだろうか。
 知らぬ者も、その字が示す通りのことが行われた。と捉えて貰えればいい。

 戦国時代でも最も惨いと伝来するほど、酷な戦場であった。
 長く続く飢餓の中……朦朧とする意識の中で、それでも増え続ける物があった。
 しかし、狂わぬ限り手が出せぬ……。
 そして遂に飢え死ねば、その身も転じてそのモノと化す。
 武器を取り、共に戦うはずだった戦友に、喰われるのだ。
「誰も望んで喰う奴はいない。喰った戦友を忌み、喰った自分を呪い、差し向けた奴を恨んで、人じゃなくなるんだ」

 ――ココロが、先に死ぬんだ。

 震える手が、恐れなのか怯えなのか、また別の感情なのかを察する術はない。
「『第六天魔王』織田信長の配下に、陰陽師『安倍晴明』ってのがいる。こいつは、また別の意味で心が先に死んだんだろうな。徳川の幕府軍を足止めするのに、奪った鳥取城を拠点としてるんだ。そこに攫ってきた農民を閉じ込めて、飢え死にさせて……その怨念を利用して『水晶屍人』の強化型を生み出している。こいつらは、強い」
 その前に奥羽の戦いで造られた『水晶屍人』の、十倍以上の戦闘力を持っている。とベッジは言う。

 これがこのまま量産されれば、数日後には、山陰道を通る幕府軍3万人と猟兵を殺し尽してもあまりある戦力にまで膨らむ予兆がある。
「村に出現してるのは10体くらいだ。知性は無いし、全部を一人で相手にするとなるとヤバいが、今なら奴らは住民を連れ去る為に村中に散ってイる!」
 『水晶屍人』は農民たちを食い殺し、恐怖にかられた人間を追い立てるようにして鳥取城に向かわせている。鳥取城が既に乗っ取られていることを知らない農民たちからしてみれば、あの城門はどこに現れるか分からない凶牙を逃れる、最も屈強な砦なのだ。
「なるべく少人数で、相手を複数倒せるように対策を取るのがベストなはずだ。村人を助けてくれ。……準備はいいか? 出たらすぐ村だからな!」
 そう締め括ると同時、ベッジのグリモアが展開する。


サヤエンドウ
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 サヤエンドウです。
 お目にとめて頂きありがとうございます。
 公開直後から受付開始となります。

●概要
 陰陽師『安倍晴明』が、城下の住民を鳥取城へ連れ去ろうとしています。
 住民を食い殺しながら追い立てる、強化型『水晶屍人』を撃破してください。


 微力ながら、精一杯努めさせて頂きます。
 また今回は「戦争シナリオ」であり、早急な解決が求められることから、
 取り掛かりやすい内容のプレイングから順次執筆を行います。

 ※執筆は、プレイングの先着順とはなりません。
 ※内容を100%含むリプレイとならない可能性が高いです。
 ※手探り中であり、これまでや今後の文章傾向を保障しません。
 ※単騎の描写をやや、得意とします。


 諸々の傾向に関してはマスターページをご参照ください。
 ※緊急のお知らせを記載する場合もあります。

 ・アドリブ(A)・絡み(K)はNGの場合のみ。
 【A×、K×、AK×】【絡みNG】など、ご記入ください。
 ・お相手がいらっしゃる場合。
 【相手のお名前(呼称や愛称)と、ID】または、
 【グループ名(【】付きだとより確実です)】を必ず入れてください。
 迷子防止にご協力お願いいたします。

 皆様の冒険譚をより引き立てられるように頑張ります。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

レイブル・クライツァ
人を人として扱わない…
それは確かに、戦略としては簡単に駒として見れるわね。
心を壊せば、人は脆いのは…よく、知っているつもりよ?
普通の暮らしをしたいだけの人々の生活を、過去が脅かすのなら
それは許されないことだわ。
負の連鎖を、終わらせましょうか

一気に相手したくても、探しに散っているから
悲鳴なり視界に入るなりして見付けた村人に近い敵から順に、逃げる方向に向かわないよう
間に入るようにして、足留め&巫覡載霊の舞で撃破に努めるわ。
農具は人を傷つけるために有る訳じゃない。
人の生活の糧になる為の恵みの為に、使われるべきだわ。
複数を陣取る場合は、川や段差等の地形も考慮して
なるべく家等を壊されない様にも気を配るわ




 レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)が降り立った。遠く、しかし視界の端に、うっすらと鳥取城の城壁が見えた。
 村には怒号が響き渡り、重なる悲鳴がレイブルの耳朶を打つ。探すまでもない。城を背にして振り向けば、足を縺れさせた女が一直線に走ってくる。息も絶え絶えに、目前に迫るレイブルですら目に映らぬ様子で。
 その体を、やんわりといなすように受け止めた。
「ひっ!! あ、……助けて! ばあちゃんが、食われて! 城、お城なら!!」
 今にも頽れそうな女を支え、必死の訴えを聞けばそれだけで、その女が何を目にしたのか想像するのは容易かった。
 村の外周に近い土の路上だ。
「鳥取城へ向かってはいけないわ。私が足止めをするから、脇を抜けて村の外へ」
 迷いなく答えるレイブルの言葉に、茫然と女は頷いて見せた。それが本当なのかどうかを考える余裕すら、ないのだ。
 人を人として扱わない……それならば一つきりの命であろうとも、簡単に駒の一つに成り代わる。加えて、人は脆い。心を壊し、その者の意思も人格も失くせば、残された怨念は簡単にヒトの器を越える。
「その年の実りを祈り、畑に鍬を入れる人々の生活を、過去が脅かすのならそれは許されないことだわ」
 スラリと手に収まるなぎなたから衝撃波を放つ。同時に接敵し、逃げる女を目で追った水晶屍人が振り上げた鍬をはじくと、虚ろな瞳が間近からレイブルを捉えた。
「農具は人を傷つけるために有る訳じゃない」
  ぽつりと呟き、日々の営みを思う。大地から得た恵みを糧とし、細やかであれ繰り返される命の連鎖――それを奪うことの惨さ。
 全てを奪われた屍の、肩から突き出した水晶が強く明滅して視界を奪いにかかる。が、神霊体と化したレイブルの舞は、霊体である閃光ごと肩口から胴体を袈裟懸けにし、身を翻しざまにもうひと太刀。
 断末魔を上げた水晶屍人の手が伸びた。動きを止めた直後のレイブルを掴み、そして、崩れ落ちた。
「…………」
 言葉なく、怨嗟の気配の消えた骸を見下ろしたのは一瞬。家々の間にチラと奔った影を視界に捉え、走り出す。
「負の連鎖を、終わらせましょうか」
 まだ見ぬ敵影を、求めて。

成功 🔵​🔵​🔴​

メグレス・ラットマリッジ
餓死はまだ体験したことはありませんが、想像を絶する苦しみを伴うのでしょう。
人を殺すのにそのような方法を取るなんて邪悪も邪悪、何が何でも阻止しなければなりません。

UCで精霊馬を呼び出し村中を駆けます、死者を冥府へ届けると言えばこの選択肢しかない!ハイホー!
食物繊維が多分に含まれていそうと侮るなかれ、三途の川もひとっ飛びの脚力は地上の名馬と比べるまでもありませんし、焼いても漬けても美味しく頂けます。
敵へは速度の乗った大質量による加速・突撃・離脱の繰り返します
シンプル故に迅速、迅速故に処理できる人数も多いでしょう。




 メグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)が降り立った。
 村に着き、その道幅が騎乗を可能とすると分かるや否や、ユーベルコード『幽馬騎乗(テリブル)』を宣言した。呼び出したのは自身の身長の二倍はあろうかという精霊馬だ。
 村中を駆ける。
 途中で農具らしき物を振り回している何かを轢いた気がする。
「人を殺すのにそのような方法を取るなんて邪悪も邪悪、何が何でも阻止しなければなりません」
 死者を冥府へ届けると言えばこの選択しかない! とメグレスは確信していた。
 驚くなかれ、この馬は特別。冥府の主より借用したものなのだから。
 ハイホー!
 村の家屋が集まる地点。悲鳴を上げ、精いっぱい足を動かす老父がいた。道を渡り、物陰へ逃げ込もうとしている。今にも首根っこを掴まれてしまいそうなその現場を、疾風の如く駆け抜けた。
 食物繊維が多分に含まれていそうなどとは侮るなかれ。三途の川もひとっ飛びする圧倒的な脚力と質量を持つ巨馬を駆り、加速した上での突撃は、地上の名馬には並ぶものもなかろう。
 焼いても漬けても美味しく頂けます。冗談ですよ、食べたことは……さてどうだったでしょうか。
 騎乗馬の紹介を(脳内で)している間に、一体の水晶屍人が始末された。
「あ、ありがとうよ」
 一緒に轢いていないか少し心配だったが、老父も無事のようだ。城に行くと言うので、その必要はないことを伝えた。
「餓死はまだ体験したことはありませんが、想像を絶する苦しみを伴うのでしょう」
 実年齢不詳の十四歳お姉さんは、ふらふらとあちこちを放浪する、ボロボロのフェルト帽が特徴のゆる腐わレディ。『まだ』ということは、いつか体験することが視野に入っているように聞こえるが、
「うん?」
 聞き返す老父に、なんでもないです。笑いかけて会話を終える。
「すぐに終わらせますから」
 ほら……あそこにも、一体。
村の平穏は、確実に戻りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シホ・エーデルワイス
餓死…私の知らない死に方はまだ沢山あるでしょうが
恐らくトップクラスに入る苦痛に変わりはないでしょう
早く止めないと…


<第六感と聞き耳で逃げ遅れ隠れている村人にも気を配りつつ救助活動>
村人が狙われていたら<かばう>

見つけた村人に城は落城している事を<コミュ力>で説明し
【救園】に保護

混乱していたら<優しさ、礼儀作法、鼓舞、手をつなぐで落ち着かせ駄目なら催眠術>

怪我をしていれば<医術>か【祝音】で手当て


敵は【華霞】を<スナイパー、誘導弾、部位破壊>
で牙か水晶か腕を狙って撃つ


敵の閃光を受けても<第六感と聞き耳>で位置を把握して攻撃

感覚を晦ませるのは私も心得がある故
対策もあります


戦後
弔いの祈りを捧げて次へ




 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)が降り立った。場所は村の中央にも近いか。他よりも大きな家屋を見るに、有力者の住居なのではと思う。
「おい! 早くしろ!」
 一見して人の姿は見えなかったが、耳を澄ませば家屋の裏手の方からは人の声が聞こえてくることに気づきすぐさまそちらへと走る。
「餓死……私の知らない死に方はまだ沢山あるでしょうが、恐らくトップクラスに入る苦痛に変わりはないでしょう」
彼女の脳裏には思い出した過去、その身に経験した拷問の如き苦痛が嫌でも想起されてしまう。何の罪もなき人々が、ただ弄ばれて落魄する。
早く止めないと……。
駆け付けたシホに一瞬身を固くした様子の村人は、荷車を二人で運び出そうとしていた。
まだ屍人の姿はない。だがそれも時間の問題だろう。
「時間がありません、早く逃げてください」
「ま、待ってくれ! 村人の命がかかっている。登城するのに手ぶらではいかんのだ!」
「あなたは?」
「まとめ役をしとる者だ」
「……城は、既に落城しています」
 コミュ力と礼儀作法を駆使したシホの説得に、愕然と城の方向を仰ぎ見て男は膝を折った。
シホはその男を、荷車と付き人と共に【救園】へと保護してその場を離れる。付き人は男を支え、呼ぶまでは出ないでほしいと言うシホにただ頷いた。
直後にチカリ、何かが瞬いたかと思うと、シホの視界を真っ白に染める。神経を研ぎ澄ませていたシホはすぐさま、それが屍人の水晶閃光であると確信して位置を割り出す。
「え?」
 【華霞】は武器を銀色のエーデルワイスに変えて咲き誇る。対象を包み込み、感覚を晦ませ、凌いだと思った刹那に突き飛ばされるような衝撃を受けた。
「まさかと、思いましたが……二体!」
 村人を気にかけていた際に時間をかけすぎたのだろうか。人の気の無くなった村の一か所に居続けた為、予期せず引き付けてしまった。
 咄嗟に認識したすべての対象へと華霞を向かわせたものの、本来の狙いよりも散漫になった感は否めない。
 だが、何体であろうとやるべきことは同じ。
 体勢を立て直し、今度こそ狙いすました無数の花弁が屍人の頭部を、凶暴な腕を、妖艶な輝きを放つ水晶をバラバラに散らした。
 舞い散る花弁の中でひとり――弔いの祈りを捧げる。

成功 🔵​🔵​🔴​

リアナ・トラヴェリア
まずは上空に飛んで周りに襲われている人がいないか確認するね
見つけたらそこまで飛び降りて攻撃力を上げた炎の剣で切り裂くよ
そんなに時間があるわけじゃない。急ぎつつも確実に

何も思う所のない相手じゃない
フレッシュゴーレムの話は良く聞くし、ネクロマンサーの存在も知ってる
でもだからといってそれを許せる訳じゃないんだ
ましてや負の精神に生きてる人を浸すとか…そんなの止めるしか無いよ

水晶屍人を倒したら、すぐに飛び上がって次の相手を探すよ
ただ戦いに勝つためだけじゃない、勝ってこの世界の命を守るため
そのために私達は頑張っているんだ、人の命も死も道具にしか見てない相手の作戦なんて挫いてみせるよ!




 リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)は降り立ち様、まずはと上空に飛びあがった。黒竜の翼は軽々と陰鬱な村の空気を抜け、夕焼け色の瞳が眼下に全域を捉える。
 村の中心、そこから点在する家屋。家屋を囲むように広がる田畑。村と田畑を貫いて各方へと伸びる主要道……その一本に、多くの人影が見えた。誰もが我先にと息を切らせ、押し合いながら走る。それが城へと向かう人々だと気付いたリアナは、止めに向かおうと空中で踵を返す。だが、
「!」
 軒を連ねる家々の間に、若い女の姿があった。そのすぐ後ろには水晶屍人が迫る。
 襲われている!
 リアナの判断は速かった。
 放たれた弾丸のように宙を滑り、屍人の真上まで滑空したところで翼を畳んだ。推進力を奪われた体は、重力に引かれるままに数メートルを落下し――一刀の下に、地べたへと斬り伏せる。
 手には、トリニティ・エンハンスにより魔力を帯びたエレメンタルエッジ。荼毘にくべるが如く、刃に纏う炎が腐肉を焼き焦した。
 そんなに時間があるわけじゃない。
 城に向かう人達を、あのまま向かわせるわけにはいかない。
 起き上ろうともがき、爪で地を掻く水晶屍人を仕留めるのに、大した労力は必要としなかった。それなのに晴れないこの気持ちは……許せない、と思うから。
「城へは向かわないで。人に会ったら、伝えて!」
 それだけを短く伝え、リアナは再び宙へと舞い上がった。
 何も思うところのない相手じゃない。
 二体目の動く屍もすぐに見つかる。同じように接敵するも、今度は遮蔽物のない畑に面した道端で、派手な初撃は躱されてしまった。避けきれずにカウンターの鋭爪を受ける。
 サムライエンパイアのみならず、フレッシュゴーレムやネクロマンサーは世界線を越えて存在すると知ってる。でも、知識と感情は別物だ。濁った眼、突き出した歪な水晶は、リアナの内面をざわつかせる。
 ましてや無理やり、負の精神に生きている人を浸すとか……そんなの止めるしか無いよ。
 数手取り合い、停止した相手を残し三度空へ。思いが彼女の背を押す。
 戦いに勝利を。勝って、この世界の未来を、命を守るために。
「そのために私達は頑張っているんだ、人の命も死も道具にしか見てない相手の作戦なんて挫いてみせるよ!」
 高々と掲げた刃が煌めいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レッグ・ワート
有効活用と言やそうだが、現役の生体減らされると困るんだよな俺が。

そんじゃ救助活動といこう。先ずドローンで村の有様の情報収集。バイク運転するんで俺は奥へ。とは言え途中で間に合わなさそうな一般いたらついでに浚うけども。城への道近くまで来たら、ざっと状態確認して必要なら応急処置。で、その場で他の村人止めて貰おうかね。今の城は奴らの本拠地だから誰も行かせるなよって。ちゃんと見てるし、危うくなったら最優先するから頼んだぜ。
確か今回敵の数は多くないんだったよな。なら寄ってきた敵は緩く誘うか糸で引っ掛けるかして、人気ないトコで応戦するわ。見切り避けつつ、なるたけ散らかさないように鉄骨で怪力任せにぶん殴るよ。




 レッグ・ワート(脚・f02517)が降り立った。
 人間の認識ほど一方通行のものもない。鳥取城を根城に選んだ陰陽師「安倍晴明」にとって、それは暇つぶし程度の心の機微を求める行いに過ぎなかった。しかしその為に、水晶屍人とならざるを得なかった人々にとっては……。
 奪還支援型3LGの集積回路によるデータ解析結果は、この行いを『有効活用』と結論付けた。過去よりこの地に眠るエネルギーの発掘。霊的融合の倍化による、一戦力の固定値の底上げ。
 実に結構。
 ただしそれは、生命に危機を及ぼさない場合に限る話、である。
「現役の生体減らされると困るんだよな、俺が」
 そう思考が音声化するレッグは、改造後のバグ諸々を自負して困ったように頭部を掻く。
 実に人間くさいウォーマシンは、自身の定める救助活動を始める。
 情報収集の為にドローンを飛ばし視察を行えば、先に訪れた猟兵の活躍もあり、残る敵の生体反応はごく少ないようだ。留まる住民の近くに敵影はない。
ならば、とレッグは宇宙バイクを城の方角へ向けた。
 道端にいた人影とすれ違う瞬間。
 機上へとその人物をかっ浚った。
「う、わぁ?!」
「ヘイ! 兄ちゃん、助けに来たぜ。交換条件付きでな」
 情報開示はある程度、走行中に。
あっという間に二人は城へと向かう人々の先頭に追い付き、注目の的となった。道を塞がれた村人達は怪訝そうにしながらも、足を止めるより無く。
レッグは百面相している青年を含め、その場でどよめく集団に状態確認(スキャニング)を行った。
「右前腕の骨折に、全身の打撲と擦過傷。噛まれちゃいないな」
「あ、ああ……馬をやられて」
 応急処置とするには鮮やかすぎる手腕で治療を施し、他に急を要する者がいないのを確認してバイクへと戻る。
「それじゃ、後は頼んだぜ。今の城は奴らの本拠地だから誰も行かせるなよ」
 まだ顔色は青いながらも、集団の足止めを任された青年は承諾の意を示し、頷いた。
「ちゃんと見てるし、危うくなったら最優先するからな」
 そう。レッグには見えている。集団の最後尾に迫る水晶屍人の存在も。
 怪力を秘めた腕が鳴る。
 腕は鉄骨、外身は外殻フィルム他武装。
 例え強化の程あれ、知性無き単体の屍人兵など木偶も同様。
 射出したカーボン糸で絡め取り、近場の藪へ放り投げた後に接敵し殴打を食らわせる。殴り掛かられようとも、組み付かれようとも構わずに。
 ただ敵が、沈黙するまで――。

成功 🔵​🔵​🔴​

玖篠・迅
怨念を集めるためだけに恐怖で追い立てて、逃げきれても捕まって飢え死にさせて…
…そんなことに誰かがなるのは嫌だな
今の水晶屍人の人たちも同じような事をされたのかな…

式符・朱鳥で鳥たち呼んで、数羽は城のほうに飛んでもらう
足の速い人が城に入ってしまわないように止めてもらうのを頼んどくな
震えてる人がいたらゆっくり温めて安心できるようにも頼むな

残った朱鳥のうち、半分は逃げ遅れた人、隠れてる人を探して水晶屍人に襲われないように守るか、その人たちが逃げれる時間を稼いでくれ
もう半分は俺と一緒に動いて、水晶屍人を止めに行くな
朱鳥に「破魔」を付与して、過剰に苦しまないよう炎で送る
怨念に捕らわれないで眠ってほしいな…




 玖篠・迅(白龍爪花・f03758)が降り立った。
 住居区のどこかであろうという位置のようだが、一見して周囲に人の姿はなく、いっそ不自然なまでに静かだ。
 澄ませた耳に聞こえる喧騒は壁に反響するほど遠い。見れば家屋に残る破壊の痕跡や、点々と落ちた血の痕はどれも新しいものばかりで、その側にはそれぞれの生活を思わせる品々が放り出されたままになっている。
 それらすべてが、怨念を集める為だけに企てられた敵の策の結果なのだ。
 恐怖で追い立てて、城へと誘う周到な罠……逃げきれたと安堵した人々を絡め取る、飢えによる責め苦と絶望。
「……そんなことに誰かがなるのは嫌だな」
 オン――。
 迅は式符・朱鳥(シキフ・シュチョウ)に呼び掛ける。火の呪力を宿した式神は四十と一羽。赤い群れ鳥は迅の指示を待ち上空を飛び交う。
 数羽は真っ先に城の方向へ飛ばせた。罠へ迷い込む人がいないように。どんなに速い人の足よりも速く、飛んでほしいと。
 そちらではない。ぬくもりのある場所はどこか伝えてくれ、と。
「たのむなー」
 やわらかな声で送り出し、残りの朱鳥のうち半分は手元に居てもらう。
 もう半分には未だ追われる村人の捜索と守護を願った。ササリと紙擦れの音を立て、舞い上がった鳥達は千々に飛び去る。
 その飛び方を迅は少しだけ目で追った。村人のほとんどが城に向かっているとはいえ、隠れている者を探して付き添うとなると、その後の合流までに時間がかかる。ああも散開しては、各所の戦力が低めだ。
 なら少しでも早く、水晶屍人を止めないとな。
 幸い、村中に散った朱鳥の働きで水晶屍人の行方特定は容易く、城への道に重点を置いた猟兵から「こちらは問題ない」との情報も入った。「安堵に泣き出した村人が朱鳥を離さない」とも聞いて、苦笑する。
 残るは水晶屍人の撃退のみ。
 迅が駆け付けた農道沿いでは、逃げ遅れた親子が屍人に追われていた。
 周囲を飛び回る鳥影に対し、屍人は我武者羅に掴み上げた農具を振り回す。その軌道に意味など感じられず、式を落とそうが空を切ろうが地面を穿とうが、気にする様子もない。
 この水晶屍人の人たちも、同じような事をされたのかな。
「炎で送る」
 合図ひとつ。
 迅と同行していた朱鳥は一斉に水晶屍人を包み込み、翼は焔の輝きを帯びた。
「怨念に捕らわれないで眠ってほしいんだ……」
 破魔の炎は屍人を浄化し、御霊を正しく彼の岸へと渡す――。

 間もなく水晶屍人の殲滅が確認され、この村は凶牙から解放される。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月19日


挿絵イラスト