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エンパイアウォー⑰~業を蒐集せし屍王

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #安倍晴明

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 サムライエンパイアの西部を伸びる山陰道、その中腹に鎮座する鳥取城。かつては幕府の庇護の元、民を支え、そして民に支えられた名のある指導者達がいたのだろうか。だが、今はどうだろう。常人は気付かぬだろうが、素養のある者からすれば、ここは魑魅魍魎、跳梁跋扈の坩堝。おぞましい事この上ない、魔城と化していた。その最奥にて居を構える、異形の主。
「……エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか。」
 一見、見目の良い優男と評せられるであろう面構え。しかしてその身の大半は水晶と化し、肩や背中からは翼のように巨大な水晶柱が伸びていた。
「此度の私の目的は、ただ『持ち帰る』事のみ。この世界はよく『似て』おりますゆえ、『業(カルマ)』の蒐集も興が乗りませぬ。」
 だが、その様子はどこか、物憂げな心境を感じさせるようであった。
「……いえ、そうではありませぬな。不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない。それは、賽も振らずに勝つようなもの。斯様な存在に成り果てた私に、私自身が飽いているのでありましょう。」
 どこか遠くを見ているかのような眼差し。その先は、最早戻る事叶わぬ過去か、遥か果ての故郷か。
「――戯れに、山陰を屍人で埋めてみましょうか。
 ――それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか。
 はてさて、それらを全て行ったとして。」
 果たして猟兵という未知の存在は、彼の鈍り切った心をどれ程揺り動かすのだろうか……。

「皆、朗報よ。『第六天魔軍将』の一人、安倍晴明の所在が掴めたわ。」
 幕府軍が十全な状態で関ヶ原へと辿り着き、戦争も半ばに差し掛かろうという時、アイリーン・ルプスがグリモアベースに集う猟兵達に一報を伝える。連日連夜の掃討戦により、彼の者の居場所の特定につながる予知が出来るようになったのだ。
「場所はここ。山陰道にある山城、鳥取城よ。」
 グリモアを変形させて作り出した地図を広げながら、アイリーンはその地点を指し示す。
「彼はこの城の最上階、その奥にいるわ。」
 幸い、この城には護衛はおろか、雑兵の一人もいない。向かえば真っ直ぐに晴明と対峙する事が出来る。
「でも、油断は禁物よ。さっきも言ったけど、彼は『第六天魔軍将』の一人。必ず私達の先手を取ってくるわ。」
 どれ程の速さを誇るユーベルコードも、その速度の前には絶対的に無力。何らかの対策を施さなければ、敗北は免れないだろう。
「今回の相手はかなりの強敵。万全な用意をしたうえで、気を付けて戦ってきてね。」
 少なくない不安を抱えつつも、アイリーンは、そして猟兵達は覚悟を決め、彼の戦場へと向かうのだった。


橘田華佗雄
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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 十二度目まして、橘田華佗雄です。TW4からこの世界に入ったものとして、彼の存在は色んな意味で見過ごす事など到底出来ませんですよ。
 以下、ちょっとした補足になります。

●戦場について
 かつての戦国時代で、兵糧攻めにより餓死した人々の怨念が渦巻く鳥取城、その最奥が舞台となります。
 大規模な戦闘行動をしても妨げはありませんが、逆に利用できるようなものもありませんので、皆さんの頑張りにすべてが懸っています。
 また、この城には怨念が蔓延っているため、霊感あるいはそれに準ずる設定をお持ちであれば(仮に無くても直感とかでもOKです)、戦闘に影響はありませんが、演出として感じ取ることは可能です。

●敵について
 基本的にはオープニングにある通り。
 また、本来は慇懃無礼な態度を崩さない筈の彼ですが、今回はなぜかやる気が無いというか、心ここにあらずといった様子が見受けられます。後、過去作関連の質問や話題などは適当にはぐらかされるので非推奨です。ぶっちゃけプレイングの字数の無駄にしかなりません。

●戦闘について
 前述したように、敵は必ずこちらのユーベルコードによる行動より先に攻撃を仕掛けるので、それへの対処を忘れぬよう、お気を付け下さい。

 今回のシナリオは過去作からご存知の方は勿論、そうでない方も全力で挑んでいただきたいようなシナリオとなっております。
 それでは、皆さんの参加を、心よりお待ちしてます!
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第1章 ボス戦 『陰陽師『安倍晴明』』

POW   :    双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:草彦

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

テオドア・サリヴァン
すごく嫌な感じがする。心ここにあらずのようだが、圧が凄まじいな。

先制攻撃を防ぐにはまず「第六感」で攻撃を予知し、「見切り」「残像」で避ける。初撃を避けれればこちらにも攻撃するチャンスが生まれるはずだ。

晴明の先制攻撃を避けることができれば「血統覚醒」を使用しよう。俺自身の戦闘力が上がる。「フェイント」をかけてから攻撃をしよう。「傷口をえぐる」のは忘れずにやろう。

「命を弄ぶ奴は嫌いだ。一発殴らせろ」



 亡者達の怨嗟に溢れ、怨霊渦巻く死者の居城と化した鳥取城。その最奥に座する悪鬼を討伐すべく、いの一番に姿を現したのは、テオドア・サリヴァンであった。
「なるほど、お前があの屍人達の親玉か。」
 近隣の村で発生した、水晶屍人による一般人への襲撃。その討伐から返す刀でここへやって来たテオドアの瞳には、激しい感情が渦巻いていた。
「命を弄ぶような、あのような行い……断じて許してはおけない。」
 親玉――安倍晴明の戯れによって生み出されし存在、水晶屍人。彼のおぞましい企てを目の当たりにしたテオドアの心中には、静かな憤りが巡っていた。だが彼は決して、感情に任せて突っ込むような真似はしなかった。なぜなら。
(……すごく、嫌な感じがする。)
 気怠げに佇む晴明からは、目の前の存在を倒そうという闘志も、滅ぼそうという殺意も感じられない。だが、圧倒的強者から放たれる威圧感。それだけは、確かに存在していた。
「ほう、私を許せないと。では……」
 テオドアの言葉に、力の籠らぬ様子で耳を貸す晴明。気付けば、その両手で力なく握られていたチェーンソーは唸りを上げ始め。
「口だけでなく、行動でも示していただきましょうか。」
 一切の予備動作なく、晴明はテオドアとの距離を瞬時に縮める。一回、二回と続け様に、無気力に振り払われる暴力的な回刃。ギリギリその攻撃に感付いたテオドアはどうにか見切ろうとするも、圧倒的な力量差故か、僅かながらその攻撃を掠め受けてしまう。幸い戦闘に支障が出るほどではないにせよ、服を切り裂かれ、その斬痕から赤い筋を垂らすテオドア。だが、彼の闘志はこの程度で揺らぐようなものではない。
「その程度で終わりか?ならば、今度は此方の番だ。」
 瞬間、テオドアから漏れ出る闘気が一変し、それまでより一層の力強さを増す。己の血の中に眠る、ヴァンパイアとしての力を一時的に解き放ったのだ。その右手に黒剣を握り、左中段からの大振りな横薙ぎで晴明の腹を切り裂こうとするテオドア。見え見えの攻撃に、晴明はつまらなさそうにその攻撃を軽々と避け――。
「そう来るだろうとは思った。」
 振り払った剣をそのまま右の腰溜めに構え、テオドアは払いの反動を利用し、脇腹目掛け一気に突き立てる。そこまで予期していなかったのか、たまらず正面から上kてしまう晴明。その脇腹には、彼の愛剣が深々と突き刺さっていた。
「ほうほう、これはこれは……中々に良い業(カルマ)を溜めこんでいるようだねぇ。」
 その黒剣から僅かに漏れ出す穢れに、晴明はこれまでと違う僅かな笑みを浮かべる。だがそんな事は露知らず、テオドアは剣に捻りを加え、その傷口を大きく抉っていく。思いがけない悶絶と充足に、複雑な表情を浮かべる晴明。そして十分な痛手を与えられたことを確信したテオドアは、利き手ではない左手で剣を引き抜く。なぜならば。
「俺はお前のような奴は嫌いだ。だから……一発殴らせろ。」
 彼は剣士、その手に刃を構え振う者だ。だが、この時ばかりはどうしようもなかった。テオドアはその右手にそれまでため込んでいた感情を爆発させ、痛いほどの力を込めると、彼の者の頬にありったけの想いを込めた拳を叩きつける。それはまるで、彼の戯びの犠牲者達の無念をぶつけているかのようであった……。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

高原・美弥子
白の王セイメイっ!ファイアブラッドとしてお前に弄ばれたイフリートのクロキバに代わって灼滅するよ!
……えっと、あたし今何言ってた?

最初からイグニッションカードをイグニッションして斬馬刀・白陽と妖刀・黒陽を装備しておくよ

先制攻撃の双神殺は予め急所を庇うように白陽と黒陽を構えておいて、チェーンソー剣の軌道に割り込ませるように刀を置いて盾にするよ
それで防ぎ切れるとは思えないけど威力を少しでも削いでダメージは減らせるはず!
それに斬られれば好都合!【ブレイズフレイム】で傷から溢れる血を炎に変えるよ!
あたしの血は燃えるんだよっ。返り血浴びてても、チェーンソー剣が食い込んでても、どっちにしろ回避は困難でしょ!



「白の王セイメイっ!ファイアブラッドとしてお前に弄ばれたイフリートのクロキバに代わって灼滅するよ!」
 続けて元気よく戦場に現れたのは、高原・美弥子であった。彼女は自身でも理解しきれない何かを口走るも、心機一転、懐から二振りの刀が描かれたカードを天にかざすと、高らかに解除の言を叫ぶ。
「イグニッション!」
 眩い光と共に、カードから飛び出す二つの光の筋。それらは美弥子の手に収まると、彼女の二振りの愛刀、斬馬刀・白陽と妖刀・黒陽としての姿を顕現させる。
「そちらも二本、此方も二本……はてさて、打ち負かされるのは、一体どちらでしょうか。」
 晴明は双の手に携えたチェーンソーを唸らせると、間髪入れず美弥子の目前に現れ、その回刃で彼女を引き裂こうと目論む。まず振り下されるは、右の刃。狙うは、心の臓。
「そう思い通りにさせないよ!」
 だがそれを先読みしていた美弥子は愛刀を交差させ、その強烈な一撃をギリギリの所で押し留める。
「おやおや、こちらにはまだもう一撃ありまするというのに。」
 続けて振り下される、左手に構える巨大な刃。轟音響かせるその凶刃に、美弥子は咄嗟に交差を広げ、防御の範囲に強引に入れ込む。どうにか急所への直撃は免れたものの、力の差があり過ぎる故か、徐々に押し込まれていく美弥子。遂にはその連刃は彼女の肩を捉え、毎秒何十という細かい斬撃を刻み込んでいく。
「――――!!」
 制服を切り刻み、華奢な撫で肩も容赦なく引き裂き、鮮血を噴き出させる晴明の呪剣。だが、美弥子は身をバラバラにされそうなその激痛にも懸命に耐えていた。
「ところであなた、知らないでしょ。――あたしの血はね、燃えるんだよっ!」
 その身に眠る第三の刃が、文字通り火を噴くと信じて。そして晴明は、自身の手元が異常なほどの熱を帯びているのに気づく。それは、美弥子の肩に食い込み、傷つけ続けていたチェーンソーの刃から発せられたものだった。その刃に付着した血が燃え上がり、高温に晒される凶刃。その熱はそのまま両の手にも瞬時に伝わり、焦がさんとしていた。
「おやおや、これは流石に参りますねぇ。」
 そんな事態にも動じず、即座に燃え盛る得物を放り捨てる晴明。だが、焔の脅威はそれだけではなかった。顔に、肩に、胸におびただしく残る、美弥子の返り血。それらが一斉に燃え上がり、晴明を炎の中に包み込んでいく。これにはもう観念したのか、彼は茫然としたまま、火達磨になりながらもその場に佇んでいた。
「どんな、もんかな……あたしの炎、に、焼かれるっての、は……」
「そうですな……この心を燃え上がらせは出来ませぬが、この身は十分に焼かれたと言えましょう。」
 炎が失せるのと引き換えに、全身に痛ましい火傷の起こしていく晴明。一方の美弥子もまた、流石にこれ以上の続行は困難といえるような痛手を受けてしまった。だが、それで十分。彼女は、次の者へと託すバトンを作る事が出来たのだから。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ヴィクトリア・アイニッヒ
彼我の実力差は歴然。動くのは敵の方が早いでしょう。
ならばその符は…主への【祈り】を捧げて【勇気】と【覚悟】を以て。
敢えて、この躰で受けましょう。

無論、無謀と嗤うでしょう。ですが、私とて無策ではありません。
【破魔】の力と【呪詛耐性】、躰を覆う聖気(【オーラ防御】)を活かせば…一撃ならば耐えきれるはず。
それに合わせ、UC『陽光よ、祝福を齎せ』を使用。
先に地を斧槍の石突で突き戦闘力を引き上げて、耐え忍んでみせます。

…ダメージを受ければ、躰は満足に動けないでしょう。
ですから、攻撃は一度切り。この場から…斧槍を、【槍投げ】の要領で投擲します。

「…主よ、命を弄ぶ悪意を祓う力を、此処に!」

※アドリブ歓迎です



「悪しき陰陽師よ!その所業の報い、今こそ受けてもらいます!」
 ヴィクトリア・アイニッヒは、毅然とした態度で晴明に強く言い放つ。彼女もまた、晴明の生み出した水晶屍人による被害を目の当たりにした一人であったのだ。あの時の誓いを、今此処で。いかに強大な敵であろうと、彼女は主への祈りと無辜の民への思いを胸に、懸命に立ち向かおうとしていた。
「この私に、報いを?無謀な冗談など、よした方がよいでしょうに。」
 うっすらと、それでいて嘲るかのように嗤う晴明。そんな彼女に現実を突きつけようとでもいうのか、彼は五芒が描かれた符に業(カルマ)を刻み込むと、僅かな動作でヴィクトリアへと突き放つ。
(その符は敢えて、この躰で受けましょう。)
 自身彼の戦力差を鑑みたヴィクトリアは、ためらうことなくこの策に出る。それはそれで、無茶とも言える作戦かもしれない。だが、彼女とて無策という訳ではなかった。護符がヴィクトリアに張り付く寸前、彼女の全身が神々しい光を放ち、その身を包み込んでいく。それは、彼女の信仰心から生まれた、破邪の鎧。生気によって作られた、命ある者故の力だ。
「おやおや、ですが、これで終わりではありませぬゆえ。」
 護符が光に焼かれ消滅すると同時、ヴィクトリアの足元が引き裂かれ、その間から「何か」が噴き出していく。それは、この地に刻まれた怨念。無念の内に息絶えた者達が堕ちた姿である、業(カルマ)の怨霊だ。彼女の脚に、腕にしがみつき、同じ底へと無理矢理誘おうとする妄執達。その虚ろな見た目に違う力強さに抗いながら、ヴィクトリアは聖気を纏った斧槍の石突を大地へと突き刺す。
「主よ……我らを守り導き給え……!悪意を祓う祝福を、此処に!!『陽光よ、祝福を齎せ』(ベネディオーレ・ソーレ)!!」
 瞬間、突き立てられた点から広がり出す、悪意を祓う聖気。だが、妄霊達とてただでは退かぬとばかり、執拗に聖気を抑え込みにかかる。正と邪。聖と魔。二つの相反する存在がせめぎ合い、互いに反発しあう。やがて、双方の拮抗する力は次第にどこまでも膨れ上がりそして。
「「――――!!」」
 はじけ飛ぶ、黒と白の閃光。目もまともに開けられぬほどの光に、ヴィクトリアが、晴明が、鳥取城の最奥が包まれていく。光と闇が入り混じった、混迷とした戦場。やがて混沌が晴れ、視界が良好となりつつあったその時、一筋の「何か」が奔る。
「……主よ、命を弄ぶ悪意を祓う力を、此処に!」
 それは、満身創痍となったヴィクトリアが放った渾身の一撃。せめて一矢無いようと、残った力を振り絞り投げた斧槍だ。その行方は、果たして。
「……どうやら、先程そちらが言った報いとやら、冗談ではなかったようで。」
 見れば、斧槍は晴明の左肩、そこを貫通し、痛ましいほどの大穴を開けていた。彼女の立てた誓いは、ここに果されたのだ。ならば、後は続く者に託すのみ。そう思いながら、彼女は残り僅かな力を振り絞り、一旦その場を後にするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

壬生山・群像
【アドリブなどお任せ】
外道の側に加担するものであれば、防人はこれに相対しましょう。
それが平和を愛する私の役目です。

あのチェーンソー剣は避けるより受けましょう。
その方が私の性分に合いますし、避けられない方がより悲惨になります。

チェーンソー剣は両手の篭手及び内部の武器で【盾受け】【武器受け】。
二回目のチェーンソー剣を受け止めたら一回目のチェーンソーを受け流し、
カウンターで殴る感じで内部の武器を突き刺すように狙います。
攻撃に成功したら【生命力吸収】で体力の確保に努め、次の攻撃に備えます。

仮に失敗しようとも、手足が残っていれば立ち上がり、立ち向かいます。
答えなど唯一つ。私が全うな人であるために。



「なるほど……あなたが安倍晴明ですか。」
 その身を盾たらしめる戦靴でしかと歩を進めながら、壬生山・群像は晴明に問いかける。
「えぇ。安倍晴明、そう名乗っておりますが、それが何か?」
 既に体の各所に痛ましい傷跡を残しながら、それでもなお晴明は飄々とした態度で答え、逆に疑問を投げかける。
「かつては、名のある陰陽師だと聞き及んでいた貴方。もし、正道の側にいるのであれば、一考はありますが……」
 彼の者はオブリビオン。どのみち骸の海へと還さなければならないのだが。
「外道の側に加担するものであれば、防人はこれに相対しましょう。それが、平和を愛する私の役目です。」
 世に仇成すものであるなら、防人として放っておくわけにはいかない。それは、彼が真っ当な人であることを示すためにと決めた志。群像は籠手の嵌められた両の手を構え、戦意を露わにする。
「ほう、防人を名乗りますか。では、護ってみせませ。このような外道から。」
 鎮火を終えた二振りの回転刃を手に取り、絶対的な速度で群像に迫る晴明。これに対し群像は避けるどころか、むしろ真っ向から受けて立とうという体勢に出る。防人たる彼の場合、下手に避けようとして大打撃を受けてしまうよりも、正面から受け止める方が良いと判断したためだ。
「おや、これを受けようと。ですが、そのような脆弱な盾で受けきれますかな?」
 振り下される、晴明の右手に携えられた暴刃。それが群像の左甲に阻まれたのを確認した晴明は、続け様にもう片方の荒刃を叩きつける。籠手の防御を突き抜け、じわりじわりと群像の体力を蝕む晴明の呪詛。勝利を確信する晴明であったが、だがしかし、彼はここて致命的な過失をしてしまう。熱意の乏しさに端を発する、残心の怠り。それが、群像の勝利のための一手になった。
「なら、これでどうですか!」
 二撃目に注力していた晴明の隙を突き、左手に突き立てられたチェーンソーを軽くいなす群像。そして拳を突きだすと同時、左籠手から飛び出すように現れる、『偲花』の名を冠した刺突刀。それは狙いから寸分違わず、晴明の右胸に正確に突き刺さっていた。
「なんと……!」
 僅かに驚嘆を見せる晴明だが、迅速に頭を切り替え、後方に勢いよく退く事でその刃を強引に引き抜く。だが、群像の攻勢は未だ止まず。
「まだ終わりではないですよ!」
 続け様に放たれる、右の拳。僅かながら吸い上げた体力、そしてユーベルコードの制約により攻撃をあえて受ける事で高められた身体能力から拳撃と共に、右の籠手から放出された鉄杭――『懐祈』が、先程空けられた晴明の右胸の傷をさらに穿つ。深々と突き立てられ、背まで貫通する一撃。
「見事……防人としての姿、しかと見させてもらいました。」
 その群像の雄姿に、晴明は慇懃な態度を崩すことなく、本心かどうかは分からぬが、賞賛を送るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ビスマス・テルマール
わたしは通りすがりの……
貴方にはご当地怪人と名乗った方が良さげでしょうか?

戯れに人の命を弄ぶ真似は
ご当地の護人として断じて許す訳には行きませんっ!

●POW
『残像』を『オーラ防御』で覆い

実体のある残像作りをばら蒔き晴明を撹乱

作った実体のある残像を『盾受け』に利用し『地形の利用』もしつつ隙見て『早業』でUCを攻撃力重視で発動

自身に『オーラ防御』と『激痛耐性』で備え

『第六感』で『見切り』チェーンソー剣一撃目と二撃目を

手持ちの武装を『オーラ防御』と『属性攻撃(餅)』で覆い『怪力』を駆使し『武器受け』

蒼鉛式ご当地ビーム砲とウルシさんの属性弾(聖)で『鎧無視攻撃』の『零距離射撃』の『一斉発射』を『早業』で



「セイメイ、いえ晴明!その狼藉もここまでです!」
 鳥取城の最奥へと繋がる扉を勢いよく開け放ち、蒼鉛の少女、ビスマス・テルマールは戦場へと勇んで進み出、前口上を述べようとする。
「わたしは通りすがりの……」
 なめろう猟兵?ご当地ヒーロー?いつもであれば、そのどちらかを名乗っているビスマス。だがふと脳裏をよぎるのは、全く別の肩書。
「そうですね……あえてここは、貴方にはご当地怪人と名乗った方が良さげでしょうか?」
「さぁ?貴方さえよろしければ。」
 それに対し、力のない返事で返す晴明。だが、その様な事は些末事だ。ヒーローの名を背負う彼女のこの胸に今満ちるのは、一つの熱い想い。
「戯れに人の命を弄ぶ真似は、ご当地の護人として断じて許す訳には行きませんっ!」
 瞬間、彼女の周囲に次々と現れる、生気に包まれた『彼女』。晴明を攪乱すべく、ビスマスが生み出した残影達だ。まるでビスマスを護るかのように、彼女と晴明の間に立ち塞がる『彼女』。
「そのような人形如きで、私を仕留められるとでも?」
 なおも気怠気な様子で、両手にチェーンソーを構える晴明。その足が地を離れたかと思えば、次の間には残影達の眼前へと身を乗り出し、鬱陶しき障害である『彼女』達へその凶刃を次々と振るい、ズタズタに引き裂いていく。そしてその隙にと、ビスマスは腰にディメイション・ローカルドライバーを当て、全身鎧装を身に纏おうとするも。
「残念、私の方が早かったようですね。」
 変身が完了しきるまであと少し、ビスマスの目と鼻の先に、悪しき陰陽師が姿を現す。問答無用とばかり、無慈悲に振り下される二振りの回転刃。幸い、その手には貢献が握られていたため、ギリギリでその凶撃を受けきるビスマス。粘性のあるオーラでその刀身を強化していたため連刃による斬撃は防ぎきれはしたものの、十全に装甲を纏いきれなかったその身では、呪詛による蝕みまでは防ぎきれは出来なかった。
「――海と沖膾の鮪の覇者は今此処に、オーマグロ転送!」
 そんな中であっても、自動で進められた装着準備。ビスマスはその呪撃による激痛に耐えながら、声高に変身コードを叫んでいた。
『Namerou Heart Omaguro!』
 やがて一瞬、光がビスマスを覆ったかと思えば、そこには電子音と共にクロマグロ型水陸両用鎧装『オーマグロ』を身に纏った彼女の姿があった。
「ようやっと終わりましたか。ですが、両の手が塞がれたこの状況、覆すのは困難かと。」
 だがそんな状況にも動じず、晴明は未だ全力を以って死刃を押し当て続け、ビスマスの両手を空けさせる隙を一切与えなかった。
「攻撃の手は、両腕だけにあるとは限りませんよ!」
 腰だめの辺りから鈍い駆動音と共に、その先を晴明へと向ける蒼鉛式ご当地ビーム砲。そして懐から飛び出す、漆椀からスッポンへと姿を変える『ウルシ』。その三つの口から鮮やかな蒼鉛色の光が輝くと、やがて至近距離から光は晴明へと放たれ、その身を遥か後方へと押し出す。隙外からの攻撃に構えること能わず、前方からの光弾に吹き飛ばされ、その先の壁へと叩き付けられる。鈍い音と共に、力なくその場に一時倒れ伏す晴明。この隙にと、痛手を負ったビスマスは、その身を癒し後へとこの場を渡すべく、後方へとその姿を下げるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

織部・樒
ザフェルさん(f10233)と行動
連携・アドリブOK

【WIZ】
稀代の陰陽師、我々の大先輩……どのような方かと思っておりましたが
何か、予想と異なりますね

「鳥取の渇え殺し」の舞台……
これ程強い怨念は滅多に無いかもしれません
(陰陽師の端くれなので感じ取れると思います)

敵の言動を注視、攻撃時の仕草等判断出来たら
周りに注意喚起しつつ備えます
先制攻撃には七星七縛符にて対抗
【高速詠唱】併用します
ない筈ですが万一チェーンソーが来たら畳があれば捲るか
後退し回避

相手は稀代の陰陽師ですが、ザフェルさんから気を逸らし
少しでも此方に注意を向けて貰うよう
役不足感は否めませんが
攻撃用の呪符を使用するなどして挑発してみます


ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘
連携・アドリブOK

てめぇの退屈凌ぎに死者の魂を弄ぶなんざ、最悪の野郎だな
そんなに退屈なら俺達が相手してやるぜ

戦闘には【力溜め】をして臨み、敵の動きを感じたら
全神経を集中させて防御の体勢を取り【武器受け】で攻撃を防ぐ
また防御後は【カウンター】からの反撃を試みる

攻撃に転じられたら最も攻撃を当てやすい箇所への【部位破壊】や
【鎧砕き】を狙いつつ、UC【グランドクラッシャー】を撃ち込む
敵が樒のUCに気を取られている時などの隙は見逃さず攻撃を行う
いざという時は【捨て身の一撃】も厭わない

さあ、お遊びの時間は終わりだ
とっとと骸の海にお帰り願おうか!!



「稀代の陰陽師、我々の大先輩……どのような方かと思っておりましたが……」
 人外魔境と化した鳥取城。その最奥へと足を踏み入れた織部・樒は、複雑な心境の中にあった。人の身となってから陰陽師としての修練を欠かさなかった彼にとって、『阿部晴明』とは憧れ、目指すべき存在であった。だが、目の前に立つこの者は、果たしてどうであろうか。億劫であることを隠さず、まるでやる気を感じさせない優面。それでいて、熱意の乏しい姿勢からは隠しきれない、いや隠す気など毛頭ない、邪悪な霊気。
「何か、予想と異なりますね。」
 樒は、少なからず落胆せざるをえなかった。同時に、その背に重く感じる不気味な気配。それは今より以前、この地で餓死した者達の怨念によるものであった。
「『鳥取の渇え殺し』の舞台……これ程強い怨念は、滅多に無いかもしれません……」
 一端の陰陽師である彼だからこそ感じ取れる、地の底に引きずり込まれるかのような怨嗟の念。まるで樒も道連れにしようかというその執念に、樒の意識は囚われかけるも。
「大丈夫か、樒?敵は目の前だぜ。」
 その背を力強く叩き、活を入れる存在がいた。ザフェル・エジェデルハである。これまで幾度も苦難を共に乗り越えてきた、信頼できるパートナーに圧され、意識を戻す樒。
「!-―ありがとう、ザフェル。それでは……やりましょうか!」
「おうともよ!」
 両刃戦斧と長槍。二振りの装備を構え、握りしめるその腕に力を込めながら、ザフェルは晴明に強く言い放つ。
「てめぇの退屈凌ぎに死者の魂を弄ぶなんざ、最悪の野郎だな!そんなに退屈なら……俺達が、相手してやるぜ!」
「それは良きかな。では、お相手願いましょうか……精々、簡単に壊れないで下さいませ。」
 そう返すが否や、晴明は眼前に手を広げ、五芒が刻まれし霊符を周囲に展開し始める。
「ザフェル、攻撃が来ます!備えて下さい!」
 そう注意喚起しながら、樒は自身も霊符で対抗すべく、高速で唱を読むも。
「どうやら、私ほどの領域にはまだ遠いようですね。」
 それよりも早く詠唱を終えた晴明は符を飛ばし、呪詛の込められた護符は隙だらけの樒の首目掛け一斉に放たれる。
「そうはさせるかよ!」
 だが、それが樒に届くことはなかった。隙を見せぬ防御の構えを取っていたザフェルが割り込み、その双刃を持って受け止めると同時、込められた力を少しばかり振るい、向かってくる呪符の数々を悉く切り払っていく。
「なるほど。では、此方にはどう応えますかな!」
 だが晴明は動じる間もなく、今度は両手の回転刃の発動機を轟かせながら、瞬時にザフェルとの距離を縮める。
「危ない、ザフェル!」
 次は相方へと向けられた攻撃を察した樒。すぐさま、今は亡き彼の師が愛用していたという錫杖状の杖をザフェルの前の足元に勢いよく伸ばし、そこに敷かれいてた畳を返す事で、両者の間に、僅かばかりだが隔たりを築き上げる。
「このような薄皮、一体何の役に――。」
 両の手の凶刃を振るい、容易く隔たりを十字に切り裂く晴明。だが、それだけの間があれば十分であった。その斬撃によって生まれた畳の間から飛び出す、長柄の業物。数々の晴明からの攻勢から一転、それからの反撃を起点としたザフェルの連撃により、戦いの流れはこちら側へと引き込まれる。大振りな武器を巧みに扱い、胴などの狙いやすい部位を積極的に攻め立てるザフェル。だが負けじと晴明もその凶刃で防ぎきる事で、中々決定打を与えられずにいた。
「晴明、覚悟!」
 途端、彼方から叫ばれる樒の声。それと同時、破魔の力が込められた護符が何枚か、晴明目掛け舞い飛ぶ。
「やれやれ……その程度の霊力で、私に敵うとでも?」
 そのような紙切れなどと呆れながら、晴明は容易に、樒の攻撃を弾き斬る。確かに、相手は稀代の陰陽師。自分の様な若輩者では、役不足感は否めないかもしれない。
(ならば……私は私なりの戦い方で、一矢報いてみせる!)
 それは、晴明の気を僅かでも他所にずらす事。そしてそれがもたらすのは。
「手元が御留守だぜ、陰陽師さん!」
 その機を逃さず、渾身の一撃を見舞おうとするザフェル。両刃戦斧を大きく引き、後先考えない防御を捨てた構えから放たれる全力の一振りが、晴明の両腕目掛け振り上げられる。
(まだです、この間であれば……!?)
 すぐさま、連刃を降ろして防ごうとする晴明。だが、その腕が振り下される事は能わなかった。まるで、何かに縛られているかのように、ピクリとも動かせなかったのだ。
(……なるほど、そういうことでしたか。)
 晴明が手元を見遣ると、そこには幾枚かの護符が貼り付けられていた。樒による先程の護符の攻勢に紛れ込ませていたのだろう。まさに彼の行いは、晴明に間接的ながら致命的な一撃を与えていたのだ。
「なんと……中々面白いものを見させてもらいましたよ。」
「さあ、お遊びの時間は終わりだ!とっとと骸の海にお帰り願おうか!!」
 そしてザフェルの一撃は晴明の両腕を切り裂き、そこに握られていたチェーンソーと共に、あっけなく斬り飛ばされ宙を舞うのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月夜・玲
賽を振らずに勝つようなもの…か
その余裕、気に食わないね
山陰道の水晶屍人ももう直ぐ駆除されるよ
君は追い詰められていつ筈なんだけど…ね

●戦闘
例え大量の屍人を召喚しようとも、すし詰め状態じゃあ動きは取れない
つまり人が動ける程度の隙間はある筈
それさえあれば私には十分。
私は【雷鳴・解放】を発動するよ
雷の疑似UDCを身に宿し、『第六感』で敵の隙を察知しながら雷の如く高速で屍人の間を進んで行くよ
通り抜けられない場合のみ、勢いで威力を増した『なぎ払い』で道を作る
可能な最短ルートで晴明までの道を進んであげる

晴明まで辿り付けば、雷の力を最大限にチャージした一撃をお見舞いしてあげるんだから!

●アドリブ・共闘等歓迎



「賽を振らずに勝つようなもの……か。その余裕、気に食わないね。」
 外では暗雲立ち込め、雷鳴が轟く中。この戦場の最後の来訪者、月夜・玲が、晴明に冷たく言い放つ。だが、戦局は既に決している。この場だけに限らず、この戦争そのものが、既に幕府、猟兵達の方へと、大きく傾いていようとしているのだ。
「山陰道の水晶屍人も直に駆除される……いや、もうとっくに全滅しているんじゃないかな?君は追い詰められている筈なんだけど……ね。」
 そう、戦局は決しているはずなのだ。だというのに、この男はどうであろうか。全身の各所は穿たれ、焼け跡を残し、両腕に至っては失われてしまっている。これだけ満身創痍の身でありながら、晴明はなお、強い意志が感じられない慇懃無礼な笑みを絶やさずにいた。
「えぇ、そうでしょうとも。最早この身は幾ばくも保たないでしょう。ならば……」
 己の死期を既に悟っていた晴明は先を失った上腕を振るうと、玲との間に広がる空間一面に、水晶屍人を残る力全てを注いで可能な限りの数を顕現させる。
「せめて最後の宴くらいは、楽しませて頂きたく思いますゆえ。」
 最早数えるのも馬鹿らしい程におびただしい数の、水晶を背に抱く亡者達。それらはまるで絶えぬ津波のように、玲の元へ次から次へと押し寄せてくる。
「そう、君達は『動けている』。つまり、少なくとも私が動ける程度の隙間はある筈だよね。」
 もしこれがすし詰めになる程の状態であれば、彼らは一切の身動きが取れない筈。であれば、亡者同士の間には、少なからず空間が開いているはずだ。そう推察した玲は、己の仮説を立証すべく、全身に電光を奔らせる。
「雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!『雷鳴・解放』(ライトニング・リリース)!」
 瞬間、彼女の全身を眩いばかりの稲光が駆け巡り、その身に雷の疑似UDCの力を宿らせる。軽くステップを踏みながら、タイミングを伺う玲。そして己の直感が示した時、残光を後に残しながら、玲は屍人の荒海の中を光速の如き速さで駆け巡る。右、左、右、真ん中、右……考えるより早く、反射的な判断で最適なルートを
導きだし合間を次々すり抜けていく玲。途中、どうしても抜けられない間があろうと。
「邪魔だよ!」
 雷の力を纏った斬撃を撃ち放ち、亡者を切り裂く事で道を切り開いていく。そして気付けば、全ての屍人は彼女の後方で蠢いていた。
「おや、もうお開きですか。」
 その先には、もう対抗する術はないとばかりに、無防備な姿を晒す晴明がいた。
「そうだ、もう終わりの時間だよ……最後に、何か言い遺す事は?」
 その首筋に剣先を突きつける事で、最後の刻を晴明に告げる玲。そしてこの問答の間にも、彼女はその刀身に全ての電雷の力を溜め続けていた。
「そうですねぇ……此度の顕現、存外楽しめましたよ。」
 最期だというのに、ほんの僅かにその口角を上げる晴明。次の瞬間には、その首は雷斬によって切り離され、宙を静かに回っていた。
「では、さよなら、猟兵達。いつかどこかで、また会えることを切に願いましょう……」
 こうして鳥取城を万魔殿へと堕とした邪悪な陰陽師は、呼び出した水晶屍人共に、その身を塵へと変えながら骸の海へと還っていった。ただ、得体の知れない、不気味な予感を猟兵達に残しながら……

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月25日


挿絵イラスト