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エンパイアウォー⑥～覇者に愛でられし姫

作者：相良☆無意味

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●しあわせになりましょう
　農民達には、長槍と大盾が与えられていた。１６人を１部隊とし、左手に持つ大盾で左の仲間を守る１つの人垣をなしていた。世に言う『ファランクス』である。
　戦国を平定したサムライエンパイアに古代ヨーロッパのこの戦法を持ち込んだのは大帝剣『弥助アレキサンダー』。そしてこの１６部隊を指揮するのは。
「未来は第六天魔王であらせられるお館様と大帝閣下の側にあります」
　赤い着物をまとい顔を包帯で隠した、明らかに現地系の少女であった。黒い大きな袋はともかく、手を持ってぶら下げている市松人形が一層不気味さを醸し出す。
「少しでもお館様のお役にたち、共にしあわせな未来へ生き延びましょう」

●幸福はここにあります
「マケドニアの大王が信長配下の弥助とか、その部下が日本の姫とか、相変わらず訳が分からんのやけど」
　いや、アレキサンドロス３世とは誰も言ってはいないのだが。
「予知がそんな感じやから、どうやらそう言う事らしい……問題はや（わや、とお読み下さい）、例によってこのファランクス部隊、一般人……それも洗脳された農民兵ちゅーとこや。信長軍の正規兵とかならまぁ仕方ない面もあったけど……彼らに犠牲が出るんは流石に寝覚めが悪いわな」
　洗脳の中継役である『行く末の予祝者『縁姫』』を倒せば部隊は崩壊し、降伏する。と言う事で、幕府軍に遭遇する前に倒すことが今回の任務である。

●私を守る優しい人達
「とはいえ、当然ながら『縁姫』はファランクスの中心に位置取っとる。ファランクス部隊に犠牲を出さずにこいつに近づけるかどうか、これも考え所やけど……まぁ猟兵やからなんとかなるやろ」
　自分も猟兵なんだから具体例は出せないのか。
「相手は洗脳能力を持つオブリビオンや。接敵に気を使いすぎて、そこの対策をおろそかにせんように気ぃつけてな。じゃあ、頼んだで」

第1章 ボス戦 『行く末の予祝者『縁姫』』

POW   :    しあわせになりましょう 【過去を否定し悩みを消し去る舞扇】【現在を捨てる覚悟をさせる市松人形】【未来を定める幸福の手鞠】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。 SPD   :    幸福はここにあります 無敵の【それぞれが思う思考停止を誘う幸福な風景】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。 WIZ   :    私を守る優しい人達 【縁姫を愛した親類縁者】の霊を召喚する。これは【全ての苦痛を遠ざける優しい手】や【全ての敵を退ける力強い刀】で攻撃する能力を持つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●接敵
　黒天・夜久（ふらり漂う黒海月・f16951）は後ろに女性を載せた宇宙バイク「アトラタス」のフルスロットルで跳び上がり、回り込む。着地の衝撃波を加減して農民兵を退かせ、戦場を作り出す。
「私は『守りたい』から戦ってるんだもの。被害なんて、出させないわ。力を貸して、ライオンさん！」
　ヒメル・ヴィーゼ（草原と空の夢を見る・f04279）が呼び出した３メートル超のライオンは、機械仕掛けのぬいぐるみ。そのままファランクスに突撃……したかと思うとこちらも跳躍する。その尾からエネルギー弾を放つ。軌道を曲げて農民兵たちに命中し、マヒさせる。
「荒っぽくなってごめんなさい」
「まったくです。しかし、未来をお館様と大帝閣下に託すのであれば許しましょう」
「ブレないお姫様ですね」

●衝突
　洗脳能力、どうも対策が思いつかねェんだよな。クラリッサ・クルツリンガー（人間の戦場傭兵・f06117）はファランクスを『非殺傷フルコース』で無力化して仲間を助けることにした。
　「ダッシュ」で敵をかく乱しながら、まずは発煙手榴弾をお見舞いだ。煙幕で見通しを悪くして、ファランクスの足を止める。煙に紛れて催涙ガス弾を投入。自慢の大盾でもガスは防げねェし、その密集陣形じゃ逃げ場もねェだろ？
「この時点で武器持ってるのも辛ェよなァオイ」
　煙が晴れたところに、閃光発音筒を投げると……農民兵たちを包み込む炎の結界！
「出来るだけ人を傷つけないようにしたいのに！　なんて乱暴な！」
　フィロメーラ・アステール（SSR妖精：流れ星フィロ・f07828）がその小さな体でクラリッサに食ってかかる。
「殺傷能力のないモノしか使ってねぇだろ？　突破しなきゃいけないんだから」
「なんということでしょう……敵同士が醜くいがみ合うとは」
　勘違いをした縁姫がつぶやく。

●混乱
「ふむふむ。陣形が厄介ならば崩してしまえばよろしい。解決ですね！」
　セレナリア・アーチボルト（アリス適合者の力持ち・f19515）がガラスの迷宮を生成。結界の加護と洗脳でかろうじて進んでいる農民兵達を飲み込んでいく。
「ああっ！　なんて事を」
「えっ、何かマズイことしましたか？」
「やるなら早くしてくれよ。非殺傷兵器を無駄撃ちした……経費で落ちるかな……」
　それをみた縁姫、さらに嘆く。
「ああっ、とうとう三つ巴に。やはりお館様と大帝閣下に未来を掴んでいただかなくては」
「そんな未来は嫌だ」
「そうだな……ちょっと待て」
　フィロメーラと意見が合いかけたクラリッサが何かに気づく。
「なんでしょうか？」
「この迷宮……オレ達も抜けなきゃいけないんじゃねぇの？」

●激戦
　縁姫にライオンに騎乗したヒメルが対峙し、その脇から……夜久の後ろに載っていた女性が迫っていた。
「黒猫さん、幸福はここにあります」
　縁姫が手を伸ばすと、ヒメルの目が虚ろになる。故郷の草原、爽やかな風。
「お姉さんも、しあわせになりましょう」
　その手が女性を向くが、歩みは止まらない。縁姫の……表情こそ包帯に遮られて読み取れないが、時間が止まったその瞬間。
　女性の影から飛び出した夜久が急接近。外套が一瞬変形し、そこからの疾風が縁姫を裂く。女性は倒れ、明らかに作り物とわかる、『もう一対の腕』が広がっている。
「なんと、謀られていたとは……」
　そこで、ライオンが咆哮する。ヒメルの目に輝きが戻ると、鬣を撫でる。
「……はっ！　ライオンさんありがとう……さて」
　正面に向き直る。
「『縁姫』、私は、故郷で本物の草原を見たいのよ。キレイな光景だけど、偽物はいらないわ」
　その尾が獲物を薙ぎ払い、吹き飛ばす。

●到着
「お、出口じゃないか」
「思ったより早く着いたな」
「私が作ったラビリンスですから」
　言いながら３人の猟兵が縁姫達の前に現れた。
　炎の結界に守られた農民兵達に囲まれて。
「えっと……」
「……その」
「どうなっているのですか？」
　あっけにとられるオブリビオンとその相手達。
「洗脳が解けないなら、こっちから洗脳してもいいか、って」
　事もなげにいうフィロメーラ。
「でも、ここは戦場ですよ？！」
「だからだよ？　中途半端に放置するより防御魔法固めて近場に置いといたほうが」
「しかし……」
　しつこく食い下がるヒメルだったが。
「……そう、戦場です。口論している余裕はなさそうですよ」
「本当にいがみ合って嘆かわしい……」
「すべての原因はアンタだ！」

●決着
「あ、結局洗脳対策できてないんだった。あとは頼んだぜ！」
　隅に座り込んでしまう傭兵クラリッサ。
「えっ？」
「洗脳だけの一芸で戦場に出ると思いましたか。私を守る優しい人達よ」
　無数の霊が現れる。多くは刀を構えている。しかしフィロメーラの余裕は崩れない。
「対策していない、とでも？」
「あいにくと私には大切な方との記憶がありません。ですが記憶は身体が覚えてます！　どれだけあなたが愛されていても、私も私を待っている人のためにも負けられません！」
　私に振るえるのはこの身ひとつ！　セレナリアのドロップキックが炸裂する。
「な……優しい人達……は……」
　霊達はフィロメーラが空中浮遊させた農民兵達が接触する事で、その聖なる結界に触れて消滅していっていた。あたかも、信仰と修業を極めたモンクのごとき。
「必殺のフライングファイヤーファランクス返し！」
「そ……そんなぁ……お館様……大帝様……」
　蓄積されたダメージと、味方を失ったショックから縁姫の気力はつき、意識を失った。

　あれ……シリアスな戦闘シナリオかと思ったのにどうしてこうなった。
　ともあれ、勝利である。徳川方の兵力と、何より洗脳されていた２５６人の農民兵の命を救うことができた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月18日 宿敵 『行く末の予祝者『縁姫』』 を撃破！