エンパイアウォー⑰~冷めたる待ち人
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「エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか」
男は城の外の様子を眺めながら静かに思案していた。
戦もいよいよ、というところだというのにまったく興が乗らない。
なぜ、興が乗らないのか。
如何にすれば心が動くのか。
どれほど思案を巡らせようとも。
自分が自分に飽きたという事実は変わらないのであった――。
●
「皆おつかれ。エンパイアウォーで進展があった」
グリモアベースに集まった猟兵を前にグリモア猟兵、ダスク・ドーン(f13904)は静かに切り出した。
現在、サムライエンパイアの世界ではオブリビオン・フォーミュラ『織田信長』との戦争状態となっている。
猟兵のサポートを受けた江戸幕府軍は、信長の待つ島原にの『魔空安土城』を目指して進軍している。
「信長に仕える『魔軍将』の1人、陰陽師『安倍晴明』の居場所が判明した。今回はこいつを倒すために出撃してもらう」
ダスクは広げた地図の1点、島根城を指さす。
「安倍晴明についてだが、一言で言うなら食えない男だな」
ダスクは自らの髪に隠れた瞳の下で予知に見えた男の顔を思い出す。
魔軍将という立場ゆえ信長には従っているようだが、あまり積極的ではないらしい。
「間合いに入った途端先制攻撃を仕掛けてくることを除けば、戦闘となった際に警戒しなきゃならんような特殊な能力はない――」
一拍おいて、
「ただ、強い」
念を押すように付け加えた。
戦闘になる場所は島根城の中。
戦国時代に鳥取城で餓死した人々の怨念が渦巻いているという。
怨念が渦巻いていると言っても特別影響があるわけではない、戦場については対策を立てる必要はない。
「相手は先制攻撃を仕掛けてくる。ここに関しては十分準備をしていってくれ」
対策したとしても強力なオブリビオン相手だ。
簡単に勝利、というわけにはいかないだろう。
「確認しておくぞ。戦争の目的はオブリビオン・フォーミュラ『織田信長』の討伐だ」
安倍晴明の討伐そのものは戦争の勝敗には直接の影響はない。
「だが、有力なオブリビオンを放置すれば戦争後に何を始めるかわからない。こいつには信長とは別の思惑もあるようだしな」
戦争後の憂いを断つため、安倍晴明を討つ。
ダスクは作戦の目的を再確認する。
「そういうわけだ。よろしく頼むぜ」
グリモア猟兵は転送に向けて準備を始めた。
背腹かえる
●このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●特殊ルール『先制攻撃』
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
●ご挨拶
セイメイのことは詳しくない。
背腹かえるです。よろしくお願いします。
戦争シナリオ、ボス戦フラグメント1つで完結、安倍晴明となります。
相手はこちらのユーベルコードに対して先制攻撃を行います。
対策が全くない場合はプレイングを採用できない場合もありますのでご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鬼灯原・孤檻
【SPD】
魔将軍…、自分の本能が疼くほどの罪を感じる。一体どれほどの悪行を積めばそうなるのか。
冷静に、けれど強い意思を持って戦おう。
「戯れに人々を苦しめる、その性根。死んでも治らぬようならば、せめてこの一刀にて懲罰してくれる」
【アイテム:まつろわぬ者の影】を周囲に漂わせ、晴明に対しこちらの姿を認識されづらくしよう。戦闘の最中、【アイテム:天秤の神の御鎖】を城の梁等に罠として仕掛ける。
水晶屍人が召喚されれば、愛刀を持って斬り伏せよう。
水晶屍人が合体するようならUCで拘束。
清明が隙を見せるようなら、【アイテム:天秤の神の御鎖】を清明に絡ませ、水晶屍人ごと愛刀で斬りたい。
<アドリブ連携歓迎>
鬼灯原・孤檻(刀振るう神・f18243)は黒い影を纏い、薄暗い城の中を進んでいた。
いくつかの襖を越えた先、その男はいた。
孤檻は襖の影から様子を伺う。
敵、安倍晴明は猟兵の接近に気付いてはいないようだ。
部屋の広さは戦闘に十分。頭上の梁も変わったところはない。
水晶屍人は確認できない。
いけるな、しかし――。
空間を埋め尽くすのは敵の纏う幾重もの死の気配。
孤檻が持つ天秤の神の御鎖、相手の罪の重さに応じて強度を増すその御鎖から計り知れぬ業(カルマ)が染み出している。
(魔将軍……、自分の本能が疼くほどの罪を感じる。一体どれほどの悪行を積めばそうなるのか)
冷静に、けれど強い意思と共に晴明へと斬りかかった。
風を斬る音もなく、駆ける。その刹那、板の割れる乾いた音が響き渡った。
孤檻の足は部屋の中ほどで不意に止まる。
「なに!?」
孤檻の足は床下から突如生えてきた水晶屍人の手に掴まれていた。
「ご挨拶しやすいようにと待っていたのですが。これはこれは」
晴明は足を止めた孤檻に向き直る。
「挨拶がないどころか罠も気づいていただけないとは」
晴明が小さく囁くと、周囲の怨念が集い新たな水晶屍人が現れる。
「罠、だったか」
足を封じられつつも、孤檻は冷静にユーベルコードを解き放つ。
「是より審理を執り行う。嘘偽りは無始暗界に至るものと知れ!」
【権能・強制告解】。
第一の力が目の前の屍人を結界へと封じ込める。
続く屍人を呪縛の力で拘束する。
最後に、足元の屍人に黒縄を絡ませる。
動きを封じられた屍人たちが苦悶の声をあげる。
彼らから発せられる罪の気配は軽い。飢え、死に、利用される人々。
一方、罪を重ねるその男は相も変わらず冷めた声を紡ぐ。
「防がれましたか。まあ、見えていた攻撃でしたからね」
「戯れに人々を苦しめる、その性根。死んでも治らぬようならば――」
「おや、殺してくださいますか。不死の身である私を」
孤檻の言葉を遮る晴明。
孤檻の足には未だ屍人の手が絡みついている。
「どのように殺されるのか興味があります。それと、それを貴方が見届けてくれるのかも」
その言葉の意味するところ。自らの優位を疑っていない証。
チェーンソー剣から歪な機械音を響かせ、男はゆっくりと孤檻に歩を進める。
余裕を持った男に、頭上から御鎖が降り注ぐ。
罪の重さに反応する御鎖が晴明の身体に絡みつく。
「罠にかかるのはお互い様、だな」
「おやおや、これはなかなか気の利いた演出ではないでしょうか」
冷めた態度の男から発せられた感情の色。
互い獲物の間合いで、互いの罠に嵌った男2人。
「死んでも治らぬその性根、せめてこの一刀にて懲罰してくれる!」
孤檻の霊刀と駆動式の刃がぶつかり合う。初撃は互角。
次の一撃。互いの身体に刃が食い込む。
肩を斬られるも涼しい顔の晴明に、機械の刃に抉られる孤檻。
「ぐ……」
血を吐きながらも愛刀を握る孤檻。
「さて、この賽の目はどう出るでしょう」
まるで、自分の戦いの結果すら興味のなさそうな晴明。
舞台はまだ始まったばかり――。
成功
🔵🔵🔴
リヴェンティア・モーヴェマーレ
ジノーヴィーさん(f17484)と一緒
※ジノさん呼び
▼アドリブ大歓迎
▼w
晴明さん…随分とイケメンさんですネ
そしてお強いとは…
ですが目を奪われている場合ではありませんネ!
ジノさん頑張りまショウ!
(グッと拳を握り相手を見
攻撃
五芒符が飛んで来たらUCの機械兵器さんを出来るだけ迅速に五芒符にわざとにぶつけて破壊させ戦闘力U Pを回避
残っている機械兵器さん達が居れば、そのまま晴明さんに突撃でス!
二回攻撃が出来れば追撃をして相手に傷を負わせる事に集中しまス
援護射撃が出来ればジノさんへ応戦
防御
身を守る場合はオーラ防御を展開し、2人のダメージを最小限になるようにはかります
怪我させたくないなはお互い様なのですヨ
ジノーヴィー・マルス
リヴェンティア(f00299)と
呼び方:センパイ
アドリブ歓迎
【SPD】
イケメンねー。まぁ分かるけど、俺にはどーも胡散臭く見えるっていうか。
でも確かに強いのは間違いなさそうだし、センパイも油断しないでくださいよ。
なるべく、傷は負って欲しくねーっす。
先制攻撃で水晶屍人を召喚されたら、こっちは「分身使って楽する」としますか。数には数で。
その上でVendettaの弾幕で、なるべく合体されちまう前に撃破を狙う。
もし合体されても撃つ手は緩めずに。
ヤバイと思ったらセンパイのオーラ防御の内側に入ってやり過ごすとしよう。
1つの攻防が収束し静かに身なりを整える男。
その男を新たな猟兵が囲む。
「晴明さん……随分とイケメンさんですネ。そしてお強いとは……」
「イケメンねー。まぁ分かるけど、俺にはどーも胡散臭く見えるっていうか」
リヴェンティア・モーヴェマーレ(ポン子2 Ver.4・f00299)とジノーヴィー・マルス(ポケットの中は空虚と紙切れ・f17484)は男の印象を口にする。
「おや、新しいお客さんでしょうか」
晴明は新たな客人へと視線を投げる。
「ですが目を奪われている場合ではありませんネ!ジノさん頑張りまショウ!」
この中でただ1人、気合十分なリヴェンティアは隣の相方を見る。
「でも確かに強いのは間違いなさそうだし、センパイも油断しないでくださいよ」
なるべく、傷は負って欲しくねーっすから。
「今度のお客さんは私への品評ですか、いやはや」
晴明はやや不満気な声をあげ、何事か囁く。
その呼びかけに、次々と水晶屍人が現れる。
敵のユーベルコードに、ジノーヴィーがすぐさま反応する。
「数には数で」
2人に増えたジノーヴィーが、2つの『Vendetta』で水晶屍人たちを抑え込む。
屍人は銃弾の前に成す術なく、崩れ、倒れる。
だが、屍人は次から次へと現れ2人のジノーヴィーへと迫る。
「このくらいなら余裕すね」
銃声と低い呻きが暗い城の中で拮抗する。
「余裕、ですか。何ということでしょう。退屈させてしまって申し訳ありません」
晴明は屍人を呼ぶ手を止め、頭上に1つの五芒符を浮かべる。
新たな攻撃の予告にリヴェンティアがユーベルコードを解き放つ。
「さて、この1つで最大の成果を得るにはどうしたらよいでしょうか」
誰へ、となく問いかける晴明。
リヴェンティアは考える。
男を囲むよう200を超える機械兵器を呼び出した。
少々の攻撃ならば機械兵器をぶつけて相殺できるだろう。
でも。
全ての機械兵器と2人、いや3人の猟兵を一度に攻撃することが出来るとしたら――。
全てを結ぶ線が1つ。それを見つけ、リヴェンティアの叫ぶ。
「ジノさんッ!伏せテッ!」
直後に五芒符からの攻撃。その光は水平方向へと一気に広がった。
「おお!?」
寸でのところで身を屈めた2人のジノーヴィーの上を光の輪が走る。
それは水晶屍人を巻き込み、リヴェンティアの機械兵器を一斉に吹き飛ばす。
五芒符の輝きが消え、3人の猟兵は素早く態勢を立て直す。
「地形への攻撃は防げたみたいデス!」
「自分で手下壊してくれて楽できる感じすね。センパイ、チャンスっすよ」
「ハイ!機械兵器さん、そのまま晴明さんに突撃でス!」
僅かに残った機械兵器がジノーヴィーと共に攻撃後の晴明に十字砲火を浴びせ掛ける。
無数の銃弾を水晶の身体で受け止め、目を細める晴明。
「効いてナイ!?」
「――わけじゃないみたいすよ」
晴明は目を閉じ、小さく囁く。
「少し鬱陶しいですね、やめていただきましょうか」
水晶屍人だった破片が蠢く。
それは1つの塊へ、肉片と水晶とを混ぜ合わせた不気味な蛇のような姿をとり、吠えた。
「あ、ヤバイ」
「ジノさん!コッチヘ!」
異形の肉塊が戦場を薙ぎ払う。
リヴェンティアが力の限り守りのオーラを広げ、ジノーヴィーがオーラの中へ飛び込む。
ジノさんに怪我させたくない、その思いで異形の攻撃を受け止める。
難を逃れたその瞬間、ジノーヴィーはその異形と目が合った。
その一瞬を、グールドライバーの引き金は逃さない。
二重に響く最後の銃声、そして戦場を埋め尽くす轟音。
水晶屍人だったモノが再び戦場の瓦礫と化し。
辺りに散らばる水晶には、薄ら笑いを浮かべる男の顔が浮かんでいた――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
オート・チューン
リリーちゃん(f00101)と一緒に戦うよ!
エンパイアの人達をいっぱい悲しませたな!
どんなに強くってもお仕置きゲンコツなんだから!
強敵だから命を差し出す覚悟で戦わないと勝てないと思うんだ
リリーちゃんと連携で先制攻撃に対抗するよ
絶望の福音で召喚された屍人はわたいの【虎鶫】を範囲攻撃で安倍晴明ともども動きを止めてやるんだから!
五芒業蝕符は避けない!激痛耐性でなんとしても踏ん張る!
安倍晴明がもっと強くなっちゃったらリリーちゃん達がもっと危険になっちゃうから
だから頼んだよフランソワーズ!!
絶望の福音の効果で双神殺の初撃は避けれるはず!
うんと重いゲンコツを入れてやって!
アドリブ歓迎!
一人称「わたい」
リリー・ベネット
オートさん(f04855)と戦います。
エンパイアにも私の友人は居ます。
……あまりふざけたことをしないで下さい。
先制攻撃で召喚された屍人はオートさんに足止めをお願いします。
アントワネットとフランソワーズを安倍晴明の元へ向かわせます。
目的は、まず一撃。
フランソワーズの愛を喰らっていただきます。
アントワネット、フランソワーズを助けてあげてくださいね。
フランソワーズ、貴女の重い愛を、教えてあげてください。
安倍晴明の攻撃は【絶望の福音】で回避。
【空色の恋心】で攻撃です。
……フランソワーズの思いは、貴方に伝わるのでしょうか。
伝わらなくて良いですけどね。
アドリブ歓迎
ヘンペル・トリックボックス
……嗚呼、そうとも。お前を滅ぼしたとて戦争は終わらない。
しかしお前を野放しにすれば、屍人の増殖以上に悲惨な事件を起こす。お前は私の知っているお前ではないし、お前は私なぞ知りもしないだろうが──断言できる。お前は此処で滅ぼさなければならないと。
かの安倍晴明が放つ呪符である以上、直撃すれば致命傷は必至。しかして厄介なのは、外れた際の地形効果による戦闘力の増強、であれば──『外させなければいい』。
五芒符の射出に対して【早業】でUCを発動。放たれる呪符の迎撃に式神の半数を回し、残りの半数を妨害に差し向け、手持ちの五行符を用いて威力をフルに相乗させた【破魔】【属性攻撃】による【全力魔法】を叩きつけます。
戦闘の傷跡が広がる戦場。
オート・チューン(太陽のバースデイ・f04855)とリリー・ベネット(人形技師・f00101)が怒りの声を上げた。
「エンパイアの人達をいっぱい悲しませたな!どんなに強くってもお仕置きゲンコツなんだから!」
「エンパイアにも私の友人は居ます。……あまりふざけたことをしないで下さい」
「悲しませ……。ふむ」
2人の言葉を聞き、不吉な思考を巡らせる晴明。
「ならば誰も悲しまぬよう、等しく消してしまうのが正解でしょうか」
「晴明。あなたはどこまで……!」
リリーが声を上げる。
「それはもうどこまでも――」
それはどこまでも虚しく。どうあっても覚めぬ夢の如く――。
「……嗚呼、そうとも。お前を滅ぼしたとて戦争は終わらない」
2人からやや遅れ。ヘンペル・トリックボックス(仰天紳士・f00441)が現れる。
3人の中では最も落ち着いて見えるが、その内にある思いは最も強いものだろう。
「しかしお前を野放しにすれば、屍人の増殖以上に悲惨な事件を起こす」
「ええ、このように回りくどいことは何度もやるようなものではないでしょう」
ヘンペルに答えたようでいて、どこかズレた言葉が返ってくる。
「エンパイアの人達をいっぱい悲しませておいて!」
オートの叫びを意に介すことなく自分の言葉を続ける晴明。
「それに、『持ち帰る』ことさえ出来ればこのような興に応じる必要もありません」
『持ち帰る』。その言葉の意味するところは――。
年季の入ったシルクハットに手をかけ、より一層落ち着いた声で語りかけるヘンペル。
「──断言できる。お前は此処で滅ぼさなければならないと」
まず2人。晴明への怒りに肩を押され、オートとリリーが飛び出した。
「さて――」
無骨なチェーンソーを手にしたまま、晴明は五芒符の波を放つ。
「くるぞ!」
後方に控えていたヘンペルが手早く式神の群れを飛ばす。
直撃すれば致命傷、外れても戦闘力の増強。その攻撃を1つ1つを正確に狙う。
陰陽の札がぶつかり合い、次々と閃光が巻き起こる。
閃光の隙間を駆け抜け憎むべき敵へと肉薄する2人。
軽薄な笑みを浮かべた男から、最後の2枚の符が零距離で放たれる。
1つはリリーの人形、アントワネットを吹き飛ばし。もう1つはオートの身体に業(カルマ)を刻み込む。
「くっ……」
その衝撃にオートは顔を歪める。でもこれで五芒符は凌ぎきったはず、だから――。
晴明の元へ無事辿りついたリリーがそのユーベルコードを解き放つ。
「これは、フランソワーズのほんの気持ちです」
リリーの人形による強烈な一撃。
「おっと、お気持ちを受け取るには。今両手が塞がっておりまして――」
晴明は僅かに身を屈め、その気持ちを両肩の水晶で受け流す。
砕け散る水晶をその場に残し、チェーンソーが迫る。
予想していた攻撃。リリーは躱せる、はずだった。
男は口元を緩め、1歩踏み込んだ。
その足で、先ほど攻撃を受け止めたアントワネットを、業の怨霊を踏みつけて。
急加速した駆動式の刃がリリーを血の色に染め上げる。
「リリーちゃん!?」
叫ぶオート。
リリーの怪我を心配する間もなく、次の獲物へと晴明が迫る。
そのにやけた顔から敵の狙いを察する。
オートの身体にもアントワネットと同じく五芒符の――。
オートの身体に刻まれた業に向け、晴明の鋭い蹴りが放たれる。
覚悟は十分、オートは蹴りを身体で受け止め、その脚に掴みかかる。
「捕まえた!」
「おお?」
追撃のチェーンソーより早く。オートのクランケヴァッフェは強力な超音波を放つ。
片脚を掴まれたまま平行感覚を失い倒れ込む晴明。
「これは、これはこれは――」
体勢を崩されてなお余裕を浮かべる男。
その耳に届いたのは呪詛の祝詞か、あるいはわらべ歌か。
『集いて唸れや獣の式。散れや羽ばたけ禽の式。囲め囲め、いついつ出遣る──』
ヘンペルの全力をのせた式神が晴明へ殺到する。
「――なかなか戯れが過ぎますねぇ!」
チェーンソーを突き立て身体を捻り、オートを蹴り飛ばし、式神の猛攻は水晶で受け流し。
驚くべき軽業で包囲を抜け、宙を舞う晴明。
「まったく器用な奴だ、だが――」
「頼んだよフランソワーズ!!うんと重いゲンコツを入れてやって!」
「……フランソワーズの思いは、貴方に伝わるのでしょうか」
今度こそ身動き取れぬ空中。晴明は、再びその人形と顔を合わせる。
「ああ、そういえば――」
せっかくお近づきになったというのに、貴女だけきちんとお相手しておりませんでしたね。
男はその身で思いを受け止め。
水晶の破片と共なって消え失せた――。
成功
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