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エンパイアウォー⑰~水晶の陰陽師

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #安倍晴明

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●水晶の陰陽師
 人を喰らい、人に喰らわれ、餓えと哀しみと恨みを抱いた怨霊が渦巻いている鳥取城。
 その一角で稀代の陰陽師と称された安倍晴明は、熱を感じさせぬ眼差しでそこにいた。
「エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか」
 つと呟く言葉にも熱意はなく。
 山陰を屍で埋めようか、神の偽物拵えて信長の後釜に添えようか。
 それら全て行ったとしても。
「猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……」
 不死となり、繁殖もでき、生きる糧も必要とせず。
 多くを得た陰陽師は、水晶の身と同じく熱を持たず、世界を弄ぶ。


「お手伝い、願えますかー……」
 グリモアベースにて、寧宮・澪(澪標・f04690)が猟兵達に声をかける。
「サムライエンパイアにて、安倍晴明の居場所が判明しましたー……」
 山陰道の防御指揮官である安倍晴明は、鳥取城を拠点として、猟兵と幕府軍を壊滅させる準備を行っている。
 農民を鳥取城へ追い立てて、その恨みの念を利用して山陰を水晶屍人で埋め尽くそうと企んでいるのだ。
「これを防ぐ為にもー…鳥取城で、晴明を攻めてください、なー」
 安倍晴明は強敵である。
 たった一人で何人もの猟兵を相手取り、必ず先じて猟兵達のユーベルコードと同じ攻撃をしてくる。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となる。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、戦線から離脱することになる。
 用意しても準備が不十分であれば、苦戦や攻撃できないこともあり得るのだ。
「どうか、十分な対策を、考えてくださいー……よろしく、お願いします、ねー」
 そう、澪は一音謳って。
 鳥取城へと道を紡ぐのだった。


霧野
 =============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 =============================

 どうぞ安倍晴明の戦力を削いでください。
 よろしくお願いします。霧野です。

●シナリオについて
 ====================
 陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
 ====================
 一章:鳥取城で安倍晴明と戦い、戦力を削いでください。
 ボス戦です。

●複数人で参加される方へ
 どなたかとご一緒に参加される場合、プレイングに「お相手の呼び名(ID)」を。
 グループ参加を希望の場合は【グループ名】をご記入いただけると、助かります。

●アドリブ・絡みの有無について
 勝手に連携していただいたり、アドリブを加えさせていただくことがあります。
 以下の記号はプレイングの文字数削減としてプレイングの頭にご利用下さい。
 ◎ アドリブ歓迎・絡み歓迎。
 △ アドリブ歓迎・絡みNG。
 × アドリブNG・絡みNG。
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第1章 ボス戦 『陰陽師『安倍晴明』』

POW   :    双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:草彦

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

六道銭・千里
【千天花】
あの陰陽師…安倍晴明と手合わせできるなんてな…
ほんなら、胸借りさせてもらおうか

澪がUCの相殺、零が囮として前出るから
俺は中衛、護符の霊力で脚を集中しての強化、避けることに意識をしながら
牽制程度に霊符を投げて、清明が全力でUCを使えんように
当たりそうなら結界で受け流し【呪詛耐性・盾受け】

零が当たったら
大声で名前を…分身を本物と思わせ夕夜が見つからんよう援護

晴明UCを澪が相殺しきれんかったら一反木綿を使って地形の上に立つのを足止めして邪魔&牽制する立ち回り
地形を【破魔】の霊符で除霊、効果の無効化を狙ってみるわ

夕夜のUCと連携して、移動させた先にUCを発動
移動してきたところをガブッとな!


栗花落・澪
【千天花】

敵の先制攻撃に対して即座に【オーラ防御、呪詛耐性】
同時に【指定UC】発動
【破魔】の炎を操り五芒符の相殺を狙いつつ残りの炎で晴明への追撃

翼と、風魔法を宿した★Venti Alaによる【空中戦、空中浮遊】
宙からの遠距離攻撃を基本とし敵の動作や戦況を【見切り】

連携時は零さんと六道銭さんの名前を極力呼ぶようにしつつ
破魔+【祈りの催眠歌唱による範囲攻撃】を奏で
晴明本体および怨霊達の動きの無効化、弱体化を狙いながら
★爪紅の【投擲】でダメージ+注意力を削ぐ

更に攻撃・回避行動の合間に時折地に足を付け★花園の複数生成
風の【高速詠唱、属性攻撃、全力魔法】で破魔の花弁を一斉に操り
斬撃の範囲攻撃


天星・零
千天花



常に【戦闘知識+情報収集+追跡+第六感】で戦況や敵の弱点や死角を把握、敵を追跡し不足がないよう


事前に装備enigmaで実体を持つ分身の零と夕夜に別れ、夕夜は地形や死角を利用して【暗殺】技能により気配を消し隠れる



Øやグレイヴ・ロウで対抗し
『壊れた時計塔の死合わせ帽子屋』を発動しようとし、敵を引きつけ
被攻撃時も分身なので無問題


夕夜
敵が引き付けられたら、指定UCで敵を常に塗り潰されていない場所に叩きつけて攻撃したり、強制的に移動させたりして踏ませないように
Punishment BlasterとØの近接攻撃
狙えるならゼロ距離

攻撃範囲外なら指定UCで強制的に範囲内に入れる
味方の支援もそれで行う




 【千天花】の三人が鳥取城の城主の部屋に飛び込めば、そこには水晶の体の男性が立っていた。
 辺りの重苦しい空気も我関せずと、どこか熱意に乏しい様で佇んでいる。
 両の手にチェーンソー剣を携えて、陰陽師『安倍晴明』はただそこにいた。
「ようこそいらっしゃいました」
 慇懃無礼なほど丁寧に晴明は礼をして猟兵を迎え入れる。
 けれどその目には興味も何もない。路端の石を見るような目であった。
 けれどもその存在が強い力を持つことは、三人にも容易く感じ取れるだろう。
「あの陰陽師……安倍晴明と手合わせできるなんてな……」
「貴方方と私では、さて……束ねても手合わせになりますでしょうか」
「ほんなら、胸借りさせてもらおうか」
 六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)は御縁玉を握り、己を強化しながら嘯き。
「これ以上、不幸な目に合う人を生み出したりさせないよ」
「怨霊達や農民が不幸か、決めつけるのも無粋でありましょうや」
「苦しみを増やすのは、不幸だよ」
 翼を広げ、風の魔力を宿したVenti Alaで栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は飛び上がる。
「貴方を放ってはおけないんです。おとなしくしてください」
「貴方方に、そうさせることができるとでも?」
「はい」
天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)も静かに微笑み、神経を澄ませて戦闘体制を整える。

「では、参りましょうか」
 羽虫を払う程度の気負いで、晴明が五芒星──セーマン印の描かれた護符を幾つも浮かべ、澪へと飛ばしてくる。
 見ただけでも怨霊の念や、呪力の込められた五芒符が一枚でもふれれば、多くのダメージを受けるだろう。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて!」
 澪は即座に呪詛耐性を持つオーラを防御として展開する。身を守りつつも自在に飛び回り、撒かれる五芒符をかわし、生み出した破魔の炎の鳥で符を相殺していく。
「くらいや!」
「おや、これはこれは」
 澪が相殺しきれなかった分の符は、中衛の千里が御縁玉で怨霊を少しでも祓い、一反木綿でその上に立たぬよう行動を阻害する。
 同時に牽制で符を投げて、晴明が五芒符を投げても、多少は軽減できるように。
「ふむ、少しは……」
 ほんの少し、眉を動かして、晴明は護符を今度は千里へと飛ばす。
 千里は御縁玉の霊力で足に力を込め、幾枚も飛んでくる五芒星を回避していく。
 五芒符がかすっただけでも重たい攻撃ではあるが、結界で受け流す。
「こちらですよ」
 晴明が千里に視線を向けている間に接敵した零が、Øやグレイヴ・ロウを手に切りかかり、攻撃用のユーベルコードを発動しようとした瞬間、晴明の手から飛んだ五芒星の書かれた符が零を襲う。
 けれども、ただ手にした片手剣や十字架の墓石でいなすだけでは不十分で、零に当たった符は彼の体を怨霊の恨みの念で蝕んみ、戦う力を奪っていく。
「零さん!」
「零!」
 澪や千里が大きな声で零の名を呼んで、仲間が攻撃されたことに動揺したと印象づける。
 晴明に、指を伸ばそうとする影を気づかせぬように。
 零が晴明に攻撃する際に援護がないのも、ただ武器で払おうとするだけなのも作戦だった。
 この部屋に入ったのは三人ではなく、四人いたのだ。
 零の本命の攻撃は、影に隠れた零の分身の夕夜だった。
 ずっと部屋の調度で死角になる部分に潜んで息を殺し、零が囮となってその時が訪れるのを待つ。
 そして零に晴明が向き直り、五芒符の攻撃が放たれた瞬間、後ろの死角からKarmic Retributionを発動させ、晴明を床に叩きつけようと指を、伸ばし──。
「無駄でございましょう」
「! くそっ!」
 その瞬間、五芒星が夕夜の目の前に踊る。
 新たなユーベルコードの発動に先じて、晴明が放った五芒符が夕夜を蝕んでいた。
 晴明はかなりの格上の存在である。複数ユーベルコードを使おうとするのであれば、同じように複数回先制攻撃することが可能であった。
「夕夜さん!」
 咄嗟に地に降りた澪が歌い、everywhere gardenで生み出した花びらを破魔の歌と花びらで五芒符や業の怨霊を弱め、夕夜を少しでも晴明の攻撃から守る。
 援護により辛うじて倒れなかった夕夜は、弱々しく伸ばした指で晴明を床へと動かした。
「喰らえ、影鰐!」
「鳥よ!」
 動いたその先に合わせて千里が影鰐を、澪が炎の鳥を向かわせる。地面から影の鰐が湧きいでて、晴明の足を齧り、炎の鳥が腕を喋んだ。
「ああ……何のこともないでしょう」
 攻撃によって服が破れ、多少は晴明の水晶の体に傷が付く。
 まだ晴明は余裕の風情であれど、三人は確かに傷を追わせることに成功したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

神元・眞白
【SPD/◎】
昔の人って聞いたけどそんな様には見えないみたい。クリスタリアン?
オブリビオンってやっぱり面白い存在。推しのポイントを聞いておかないと。

先に攻撃されるって聞いてるし準備は大事。いつでも動ける様に。
転送してもらって相手が動いたらこっちも動き始め。初動に意識を。
符雨、煙幕弾で相手視界の遮断を。間を空けて炸裂弾を放って音の対応も。
その上で相手に接敵。離れるそぶりの演技を一旦見せてから。
屍人の群れを越えて相手の出方を再度見据えて対応。閃光弾は最後に。

符雨にサポートしてもらいつつ、私自身が囮に。
負担かかる事になるけど相手が相手だからリターンを取るにはリスクも取らないと。




(昔の人って聞いたけどそんな様には見えないみたい。クリスタリアン?)
 転送した直後、神元・眞白(真白のキャンパス・f00949)が見た城主の部屋に佇む晴明の装いは、敢えて裂いたかのようなシャツにズボン、ブーツ。水晶の手に携えるはチェーンソー剣。
 腰布の作りや衣類の染め、文様は伝統の柄であれど、平安の頃の人間と言うにはあまりに似つかわしくなく。
(オブリビオンってやっぱり面白い存在)
 興味深げに見やる眞白とは裏腹に、晴明の目は熱がない。
 新たに来た猟兵か、と風で飛ばされた石が増えた位の感情の動きしかないようで。
「そのファッションの推しのポイント、ある?」
「何を仰っておられるのか存じませぬ」
 全く戦いと関係ない事柄を喋ったところで、驚きも憤りも、興味もないようで。
 晴明は肩の水晶に数字の浮かんだ水晶屍人を幾人も呼び出した。
 喰い喰われ、恨みを抱いた屍人達が眞白へと群がりゆく。
「符雨」
 眞白の指の動き一つに応え、彼女の人形たる戦術器「符雨」が動く。
 押し寄せる屍人達の視界を煙幕弾で覆い、十分に間を空けて煙が充満したら、炸裂弾を放って聴覚を潰す。
 その上で眞白は水晶屍人の群れへと接敵した。
 屍人達は感覚を奪われ、側に来た存在に蠢き手を伸ばすが、眞白はつい、と離れる素振りを見せて、より屍人の群れを引きつける。
 そして符雨の銃撃の援護をもらい、一気に群れを超えて晴明の出方を見据える。
 眞白の狙いは自信を囮として晴明のユーベルコードを跳ね返すこと。
(負担かかる事になるけど……相手が相手だからリターンを取るにはリスクも取らないと)
 故に晴明の動きを見据えて、対応できるように動いていた。
「この程度でしかないのですか」
 けれど、受け身のそれは晴明の心を動かすには足りず、相手をするのも飽いたとばかりにただの攻撃としてチェーンソー剣を振るう。
 まるで道端の石を蹴って退けるくらいの気安さで。
「っきゃ……!」
 咄嗟に閃光弾を撃って視界を阻害し、晴明に微かな傷を追わせたが、眞白の体は吹き飛ばされたのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ペイン・フィン
ファン(f07547)と

セイメイ、か……
……戯れに死をまき散らし、死者を増やす
しかも理由が、ただの退屈故とは、ね
……怨念の、酷い匂いがする
ああ、嫌いな存在がいるよ

ファンの支援、もらった後に、技能使用
情報収集、見切り、残像、目立たない、第六感、追跡、迷彩、聞き耳、世界知識、暗視、忍び足、視力、時間稼ぎ
情報系技能で、敵の動きを予測
隠密系技能で、攻撃を避ける
といっても、コードを使う分、あればいい

コードを使用
拷問具全てを錬成、展開
雑魚払いと合体の阻止さえできれば良い
その間に、隠密系技能でセイメイに接近
……コードも技能も、無いけど
ファンと、自分と、怨念に至った魂の、祈りを込めて
一発、殴らせてもらうよ


ファン・ティンタン
【SPD】私達を、見ろ
ペイン(f04450)と

正直な所、私もあなたに興味は無いんだけれど
ペインが、疎んでいる
私にはそれだけで、倒すに値するんだよ

戦闘開始前に、セイメイに隠してペインの手に【破魔】の魔力を付与する
この属性はペインにはキツイかもだけど…一発、頑張ってね

【天羽々斬】
【破魔】を宿した複製刀身を最大数展開
屍人を召喚される端から【早業】で地に【串刺し】縫い付ける
倒すことが主目的じゃない、動けなくして合体を阻止出来ればいい
ペインの一撃を通せばいいのだから
足止めはオーバーな【パフォーマンス】で、セイメイのペインへの意識を少しでも逸らす為に
【念動力】で宙を乱舞する【破魔】の刃、あたったら痛いよ?




「セイメイ、か……」
 ペイン・フィン(“指潰し”のヤドリガミ・f04450)にとって、晴明の在り方はあまりに腹に据えかねる。
(……戯れに死をまき散らし、死者を増やす。しかも理由が、ただの退屈故とは、ね)
 ここに渦巻く怨念も酷いものだ。飢えて人同士で喰いあい、苦しみ、恨みを募らせた怨念を、安らかな眠りから遠い場所に呼び起こし、より増やそうとする。
 晴明の退屈を紛らわすためだけに。
 それを、痛みを終わらせたいペインは許せない。
「……怨念の、酷い匂いがする」
 ──ああ、嫌いな存在がいるよ。
 小さく歯を軋ませながら、小さくつぶやいたペインの言葉は、すぐ隣にいたファン・ティンタン(天津華・f07547)にしか届かない。
 ファンは一歩だけ、晴明の方へと歩を進める。すい、とその白い手を後ろのペインへと伸ばしながら。
「正直な所、私もあなたに興味は無いんだけれど」
 晴明が猟兵に興味が薄いように、ファンも晴明に興味はない。
 けれど、ペインが疎むから。
「ペインが、疎んでいる。私にはそれだけで、倒すに値するんだよ」
「それはそれは。麗しい縁のあり方で、尊い形なのでございましょうや」
 晴明はそう言いながらも、声にも目にもそんな思いは浮かんでおらず、ただ二人を見下している。
 その水晶の体と同じように、固まった瞳の色は動かない。
 手を繋いだ二人の姿に心動くこともなく、晴明は水晶屍人を呼び出した。
「ファン」
「行こう、ペイン」
 手を離して、二人はそれぞれの獲物を複製する。
 ペインは兄弟の拷問具全てを。
 ファンは本体の天華を。
 念力で自在に操って、屍人へと向かわせる。
 派手に暴れる拷問具達は、苦しみ生まれた屍人に、より苦しみを与えゆく。
 潰して刻んで砕いて痛めて割いて圧して焼いて溶かして。
 喚ばれた屍人達を払い除け、合体するのを防いでいた。
 怨嗟に溢れる戦場の中、ペインは気配を殺し潜み、晴明の側へと進みゆく。
 一方、五十を超える天華を生み出したファンは、白い刃に宙を舞わせて水晶屍人へ向かわせる。
(水晶屍人を倒すことが主目的じゃない、動けなくして合体を阻止出来ればいい)
 くるりひらりとファンは破魔の力を宿した天華を操って、大立ち回り。
 波のように押し寄せる屍人を、喚ばれた側から畳に縫いとめる。
(──私達を、見ろ)
 退屈を揺るがせ。私を、天華を、見ろ。
 少しでもいい、ペインから意識を逸らせばいい。
 大きな動きで舞い踊り、晴明の視界を服の裾で覆うように。
「破魔の刃、あたったら痛いよ?」
 故に彼女は天華と踊った。
 勢いに乗って一本、隙間を抜けた刃が晴明の目元目掛けて飛んでゆく。
 晴明は羽虫を払うような仕草でうるさげに首を振り、剣を回避するが、その時一瞬視線がペインから離れる。
 相対してすぐ、ファンがペインと繋いでいた手より渡したは、護刀としての破魔の力。
(これはペインにはキツイかもだけど……一発、頑張ってね)
 想いと共に託された輝きは、ペインのぐっと握った拳に宿っている。
(ファンと、自分と、怨念に至った魂の、祈りを込めて)
「──一発、殴らせてもらうよ
 屍人と舞の間隙、掠めた一本の剣でできた隙をつき。
 ペインは一発、ただの拳で晴明の顔を殴った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月16日


挿絵イラスト