エンパイアウォー⑨~灼熱を殺して征け~
●からすきの星は燃え
「信長の居城に向かっとる幕府軍は関ヶ原に到着したで。現地の敵軍勢も強敵やけど、俺らはこっから先に待ち構える脅威にも対抗せなあかん」
シャオロン・リー(Reckless Ride Riot・f16759)は手にした槍の石突をカン、と床にぶつけると、集まった猟兵たちに告げた。
関ヶ原を越えた後、幕府軍は山陰道、山陽道、南海道に三等分して出発することになる。
「今回行って欲しいんは山陽道やな。ここは『侵略渡来人・コルテス』の策略の影響で、気温がガンガン上がってもうとる」
長州藩の毛利一族は、かつての戦以来幕府に叛意を抱いている。彼らを手駒としたコルテスは長州藩士を生贄として呼び寄せたオブリビオンたちに儀式を行わせているのだ。
既に山陽道の平均気温は夜間でも35度を越えるほどになっており、このまま儀式が進行すれば平均気温は50度をも越えることとなるだろう。
「そんだけとちゃう、山陽道には熱帯の風土病のウィルスも撒き散らされとって、進軍してくる幕府軍に熱波と病で二重の大打撃を与える作戦や。……せやけどこのウィルスは極度の高温やないと生きてられへん。やから熱波を生み出す儀式をしとるオブリビオンを撃破すれば、気温も低下、ウィルスも死滅して風土病も阻止できんねん」
儀式を行っているオブリビオンは『紫陽衆』という抜け忍たちによって結成された、あらゆる流派の忍術を体得する忍びたちだ。
かれらは『富士の噴火のエネルギーを蓄えた霊玉』を用いて儀式を行っているらしい。
「オブリビオンを倒したあとは霊玉を砕いたったればええ。信長を倒すためにも、幕府軍の奴らをこんなところで倒れさしてもうたらあかんねん。……ほんなら、頼んだで」
シャオロンはそう言うと、八卦のグリモアを光らせ、転移ゲートを開くのだった。
遊津
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
遊津です。
こちらは⑨「山陽道熱波地獄」のシナリオとなっております。
『模擬忍法・紫陽衆』との集団戦となります。
オブリビオンの討伐以前に霊玉を破壊することは不可能となっております。
オブリビオンを全て倒しきる=シナリオ成功時点で霊玉を破壊する描写を入れさせていただきますので、特に破壊のプレイングは不要です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『模擬忍法・紫陽衆』
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POW : 苦無乱舞
【レベル×1の苦無】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 我らに理解できぬ戦術なし
対象のユーベルコードを防御すると、それを【即座に理解し時には秘術で種族や体格を変え】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
WIZ : 我らに唱えられぬ忍術なし
いま戦っている対象に有効な【忍術が書かれた巻物と忍具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
イラスト:倉吉サム
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リーキー・オルコル
技ってのは目的があってこそだ
技だけをものにしてもそれじゃ役に立たないもんさ
早く投げれたって、狙えなけりゃしょうがない
それに、何を投げるかもな
【マジックスナップ】を使い戦う
多人数から狙われないように物陰を移動しながら仲間のサポートを狙い、持っていった目潰しの砂袋、攪乱と攻撃用の手榴弾を投げていく
何かを投げた後は場所を特定されないよう移動する
自分でとどめを刺す必要があるときは体に忍ばせているナイフを抜き撃ち
眉間や目を狙い確実に倒していく
戦争ってのは悲しいもんだ
人が死に、街は壊れる
どうせ死ぬなら生きてるヤツより
元々死んでるヤツの方がいいだろ?
誰かを踏みにじって上に立とうなんてヤツは嫌いだね
アーサー・ツヴァイク
※何でも歓迎、🔵過多なら不採用可
【POW】判定
ドーモ、紫陽衆=サン。ドーンブレイカーです。
コルテスに加担した奴は一人残らずぶっ潰す…。つまり、お前らもだ…!
敵の攻撃は苦無の乱れ打ち、それも集団で来るので数百単位だろうか。だがそんな数で俺は止まらねぇ。【サウザンド・フラッシュエッジ】を発動して、二千を超える剣刃で苦無を撃ち落としつつ、【範囲攻撃】を展開してニンジャをまとめてぶった切るぜ!
テメェらにかける慈悲も情けもねぇ。親分共々、一生骸の海に浸かってろ!
●拮抗する殺意と手数
急激な気温上昇についていけず、枯れて変色した植物もまばらな山陽道の、もはや荒れ野と呼んでいい場所。
忍衆はそこで霊玉を囲み、奇怪な呪文を口々に唱えていた。
その輪の中に投げ入れられたもの。一拍遅れて、爆発が起こる。
『何奴!!』
流石に手練の抜け忍たち、一網打尽とはいかず、爆発から逃れた忍衆の一人が叫んで苦無を放つ。
それを光の刃で打ち落としたのはアーサー・ツヴァイク(ドーンブレイカー・f03446)。その後ろには先ほどの爆発の原因であるのだろう手榴弾を手にしたリーキー・オルコル(ファスト・リー・f05342)が立っている。
「ドーモ、紫陽衆=サン。ドーンブレイカーです」
ニンジャを残らずスレイする気満々の挨拶を終えると、アーサーは更に続ける。
「コルテスに加担した奴は一人残らずぶっ潰す……。つまり、お前らもだ……!」
彼の殺意を違えることなく理解した忍衆たちがアーサーたちを取り巻くと、彼らへ向かって一斉に苦無を投げる。
「その程度の数で俺は止まらねぇぞ!【Select…SLASH ACTION!】」
サウザンド・フラッシュエッジ――その数二千と八百余の光刃が、彼のフラッシュブレードから放たれ、彼らへ向かった苦無を撃ち落し、更に忍衆をも断ち切っていく。
その援護射撃とばかりにリーキーは礫や砂袋の砂を投げ、忍たちの目を潰し、手元を狂わせて撹乱する。
リーキーを狙う忍が彼と同様に手裏剣を打つも、アーサーのサポートに徹して物陰を移動する彼に当たる事はない。
反撃とばかりに落とされた苦無を投げつけられて眉間を貫かれ斃れた忍へと、リーキーは皮肉げに言った。
「……技ってのは目的があってこそだ。技だけをものにしても、それだけじゃ役に立たないもんさ。早く投げれたって、狙えなけりゃしょうがない」
アーサーが苦無を次々と撃ち落していくため、リーキーの投擲武器はそこかしこにあると言ってもいい状態だ。
おまけとばかりに背後の気配へと拾った苦無を打ち放ってやれば、武器を落とした忍びたちが苦悶の呻き声を上げた。
「それに、何を投げるかもな」
肩をすくめた彼の背にアーサーが声をかける。
「良いサポートだ、まだまだ頼むぜ!」
「ああ、任せろ」
そう言うと、忍衆が落とした手裏剣を拾っては打ち、アーサーの後ろの忍衆を倒していく。
「戦争ってのは悲しいもんだ……人が死に、街は壊れる」
零れ落ちる額の汗をぬぐい、手榴弾のピンを抜いて固まっていた一団の中に投げ入れる。爆発の炎が上がった。
(どうせ死ぬなら、生きてるヤツより元々死んでるヤツの方がいいだろ?)
炎の中からまろび出た忍びの目を貫くと、リーキーは呟く。
「誰かを踏みにじって上に立とうなんてヤツは嫌いだね」
その声は誰に届くことも無く、続く爆発音と炎、そして忍びの断末魔に掻き消されていく。
新たに忍衆をまとめて光の刃で両断しながら、アーサーは叫んだ。
「テメェらにかける慈悲も情けもねぇ。親分共々、一生骸の海に浸かってろ!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
向坂・要
忍びは耐え忍ぶもの、っていいますがこの暑さも平気なんですかねぇ
そりゃまた元気なこって
なんて嘯きつつ
油断なく第六感も併用し全体を俯瞰で捉えるよう意識して
UCで呼び出すは熱を打ち消す様な凍てつく冷気と吹雪を内包した鎌鼬達
そして熱と冷気の相反する空気に紛れる様に放つ陽炎とそよ風を纏いし鴆
そして宿した毒のルーン
冷気の刃と見えない毒と
さてどちらがお好みで?
ま、それでも向かってくるってんなら見切りからのカウンターでもてなしでもさせてもらいますかね
あんまし勝手するもんじゃありやせんぜ
特に農作物関連は、ね
絡み
アドリブ歓迎
●“FREEZE”
「忍びは耐え忍ぶもの、って言いますが、この暑さも平気なんですかねぇ」
そりゃぁまた、元気なこって。
飄々と嘯きながら、向坂・要(黄昏通り雨・f08973)は忍衆たちへと向かっていく。
彼の接近に気づいた忍びが散開し、あるものは苦無を、あるものは戦輪を、あるものは鏢刀を投げつけてくる。
焚かれた煙幕に紛れ、寸鉄を構えて要の胸元へと飛び込んできた一人の忍びは、しかしそれを彼に突きつけるより前に泡を吹いて倒れた。
「目くらましなら対策済みでさぁ」
要を狙った飛び道具は全て突風に煽られて地に落ち、その得物の持ち主だった忍びたちは一拍の後、一様に首や体のそこかしこから鮮血を噴出す。
要の右に現れるのは、この熱波をも打ち消すがごとき凍てつく冷気、そして吹きすさぶ吹雪をその身のうちに宿す鎌鼬の群れ。
対して左に現れるのは、鎌鼬の放つ冷気と熱波の相反する空気によって生み出されたかのような揺らめく陽炎、そよ風を纏う絢爛の鴆。そこに宿すは鴆が持つといわれる猛毒を象徴するルーン。
「冷気の刃と見えない毒と、さぁてどちらがお好みで?」
お道化たようにそう言いながらも、忍びたちを見据える要の目は彼が従える鎌鼬がごとくに冷たい。
彼の合図一つで鎌鼬は吹雪を撒きながら鎖分銅を振りかざした忍を、鉄棍を構えた忍を、万力鎖を構えた忍たちを次々に凍りつかせて切り裂いてゆく。
遠距離から飛び道具や縄鏢、火器の砲弾を放とうとしていたものは、鴆の毒にやられて顔中から血を流して息絶えた。
毒には毒で対抗しようとするものもあったが、毒の精度の違い、それよりも吹雪と風によって要にそれを届かせることも適わない。
頭と手の数に頼る忍たちではあったが、それでも要の鎌鼬たちと鴆の前に一人、また一人と立つものの数を減らしていった。
――と、そこへ。
『おのれ、せめて一刺しだけでも……!』
「おっと、」
短槍を構えた忍びが精霊たちの壁を越え、満身創痍で飛び出してくる。
しかしその穂先が届かんとする直前、要は笑って忍びへと踏み込んだ。
「見切ってますぜ」
『ぅ……っ、ぐ……!』
忍びの首元には深々と要の短剣が突き刺さっている。毒のルーンが仕込まれたそれは呼吸を出来なくする慄しい死を与えるものだったが、忍びがそれで死ぬより先に要首元から刃を抜く。忍びは瞬く間に骸の海へと還り、びしゃりと噴出した血が要の顔を濡らした。
冷気の刃と不可視の毒によって制圧されていく忍衆を凄絶な表情で見下しながら、要は言った。
「あんまし勝手するもんじゃあありやせんぜ、特に農作物関連は、ね」
熱波によって枯れかけていた樹木の葉がそよ風にゆれ、冷気が生んだ露が転がった。
大成功
🔵🔵🔵
二天堂・たま
模擬忍者…こちらが使ったUCを防御すると同じUCで反撃してくるわけか…。
しかしUCとは攻撃に使うばかりではあるまい。
基本戦法はケットシーの脚力で攻撃をかいくぐり、ケットシーの肉球で攻撃する。
ユーベルコードでもなければ暗器でもない、純然たる身体能力による戦い方だ。
しかもワタシの肉球は鎧の上から触れるだけでも、負の感情を浄化する。
防御するのではなく、回避しなければ痛手を負うぞ。痛くはないけど。
UC:スカイステッパーは相手が逃げようとする時、追いかけるために使う。
こちらのUCを理解させる前に決着をつけよう。
落浜・語
暑っつ…ここでこの暑さは必要ないってのに…
早いとこ少しでも涼しくしないとな。
こういう儀式をやってるってことは、「あつさ」にも強いってことだよな?
なら、どこまで耐えられるか、試してみようか。
UC『白雪姫の贈り物』を使用。【挑発】し意識を向けさせる。
「いい加減にしろよな、良い迷惑だ。そう言う小細工しかできないのかよ。」
意識を向けてもらえればそれで充分。ガンガンに熱く焼けた靴で踊ってもらいましょうかね……!
アドリブ、連携歓迎
四辻・鏡
熱波か病か、どちらにしても正面じゃねぇってのが気に喰わねェ
ついでに暑いのがもっと気に入らねェ
ヤるなら堂々とってのが好みなんだが…ま、臆病者にケチつけても仕方ねぇか
【錬成カミヤドリ】で複製の匕首【鏡刀影姫】を呼び出し、自身を囲うように展開させ
その中の二刀を手に取り、残像を呼ぶ程の早業で斬りつけて
武器を弾かれる、止められる等をされた場合は即座に手持ちに見切りをつけ、次の匕首を抜き
真似るなら構わねェよ。どうせ我流さ
なら、どちらの刃が先に届くか、より鋭いか死合うまで…!
戦闘知識を用いて、肉体の限界が出せる速さと手数で攻め
仮初の身体故、傷付くことは恐れず捨て身で打ち合いを仕掛け
●灼熱を征する者たち
「暑っつ……ここでこの暑さは必要ないってのに……」
落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は額にじっとりと滲む汗を拭った。
その隣、四辻・鏡(ウツセミ・f15406)は苛立たしげに言う。
「熱波か病か、どちらにしても正面じゃねぇってのが気に喰わねェ……ついでに暑いのがもっと気に入らねェ」
「早いとこ、少しでも涼しくしないとな」
「うむ、ではいざ参らん!」
語の言葉に二天堂・たま(神速の料理人・f14723)が飛び出した。
たまの存在を認め、襲い掛かってくる紫陽衆たち。その攻撃をケットシーの脚力でひらりと難なくかいくぐると、すり抜けた先に居た忍
びの額を肉球でぺたりと叩く。――それだけ、ただそれだけであったはずなのに、肉球を額に受けた忍びはその場に蹲った。
『!?』
周囲の忍びたちがその様子に驚愕した様子を浮かべて防御体制を取る。
それに一切構わず、たまは次々と忍びたちに肉球をお見舞いしてゆき、それを受けた忍びたちはあるものはその場にへたりこみ、あるも
のは刃を落とし、例外なく攻撃の手が緩む。
(おい、どうした、一体何があった!)
忍び頭が口笛のような音をヒュゥ、と立てる。それは矢羽音と呼ばれる忍び特有の暗号だ。
(ま、まずい……奴の、奴の攻撃は……!)
その後、忍び頭はそれまで矢羽音によって一度も発せられたことのないであろう単語を耳にする。
(あまりにも――『ぷにぷに』で!)
(戦う気が失せてしまう!)
(心が……心が洗われるようだ……)
混乱する忍びたちに、忍び頭は指示を飛ばす。
(落ち着け、幻術の類だろう、我らもそれを模倣するのだ……)
(やれるものならやっている!これは……模倣出来ぬ!!)
(何だと……!!)
狼狽える忍びたちに対し、たまは手練れの風格でもって言い放つ。
「模擬忍者……こちらが使ったユーベルコードを防御すると同じユーベルコードで反撃してくる、それも一つの戦法だろう……だが、ワ
タシの戦い方はユーベルコードでもなければ暗器でもない、純然たる身体能力によるものだ」
故に忍び衆たちに軽々しく模倣できるものではない――
と、動きの鈍っていた忍びたちの中から叫び声が上がる。彼らはみな足元から燃える炎に巻かれ、踊るように悶えていた。
「こういう儀式をやってるってことは、「あつさ」にも強いってことだよな? ならどこまで耐えられるか、試してみようか!」
語のユーベルコード【白雪姫の贈り物(フクシュウ)】――白雪姫を殺そうとした魔女が、王子のキスで目を覚ました姫の結婚式で焼けた鉄の靴を履かされ死ぬまで躍り続けさせられたというその物語のごとく、忍び衆たちは熱に耐えられずに跳ね回る。
「いい加減にしろよな、良い迷惑だ。所詮お前らはこんな儀式みたいな小細工くらいしかできないのかよ?」
たまの攻撃の届かない場所に居た忍び衆も、語の言葉に挑発されては一巻の終わり。意識を向けたその瞬間には、その足にはガンガンに焼けた鉄の靴が履かされている。
苦悶に身をよじり、炎と共に断末魔を吐き出して忍び衆らが息絶える。
『奴の言葉を聞くな!我らは忍び、なれば何事にも心を動かされるな――』
その叫びに応えて機械のように心を閉ざし、たまの肉球にも語の言葉にも動じなくなった忍びたちに向かっていくのは鏡の匕首だった。
「ヤるなら堂々とってのが好みなんだが……ま、臆病者にケチつけても仕方ねぇか」
二十余程に複製された『鏡刀影姫』、そのうちの二振りを手にとって鏡は忍び衆らに斬りかかっていく。
彼女の周りを囲う複製によって近づくことも儘ならぬ忍びは首を掻き切られる。
長槍で鏡が手にした刃を弾き落とし、ニヤリと笑った忍びは、次の瞬間に持ち替えられた新たな匕首が突き刺さっていた。
彼女の技を模倣して匕首で飛び掛った忍びに、鏡は言い放つ。
「構わねェよ、どうせ我流さ。……なら、どちらの刃が先に届くか、より鋭いかを死合うまで……!」
きんきんと刃がぶつかり合う甲高い音が続く。忍びが放つ複製匕首の群れに身を切られども――
四辻鏡はヤドリガミ。その身体は仮初のものと割り切るが故に、彼女が怯むことはない。
幾合かの鍔迫り合いの末、敵の懐に飛び込んだ鏡は、その心の臓を貫いた。
『が……ッ……、見事……!』
最期に忍びの矜持を思い出したかのように、その忍び――忍び頭は鏡を賞賛して果てる。
それが最後の一人だった。いつの間にやら集っていた忍びたちは全て地に伏し、立っているものは猟兵たちしか居ない。
近づいた語が忍び頭の懐から転がり落ちた艶やかな玉を拾い上げた。
「これが件の霊玉ってやつだな、それじゃあ、砕いちまおうか」
鏡の匕首が霊玉に突き刺さる。かなりの硬度を持つように見えた霊玉があっさりと砕け、ひび割れ、そして粉々になって地に落ちた。
――此れにて無事、紫陽衆によるこの場の儀式は止められた。
まだ熱の残る戦場に、しかし僅かに涼しげな風が猟兵たちの火照った体を覚ますように吹いたのだった。
大成功
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