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エンパイアウォー⑰~玻璃のデザイア

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #安倍晴明

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●それは急激に
「陰陽師『安倍晴明』の居所が判った」
 グリモアベースの片隅に集まった猟兵達を前に、黒髪を一つに結った青年――飛藍は口を開くやいなやそう言う。
「晴明は『鳥取城』に居る。お前達を……待ち構えている」

 待ち構えているということは、猟兵達が来るということを理解しているということ。
 つまり、その場に訪れた直後に。いきなり攻撃を仕掛けてくると飛藍は説明する。
 其処へと何の対策もせず足を踏み入れることは、蟻地獄に自ら歩を進める蟻のようなものだ。
「晴明はどこか熱意に乏しいように見えたが……それでも強敵であることに変わりない。甘く見たら痛い目を見ることになるぞ」
 使用してくる攻撃は三つ。チェーンソーを使用するもの。水晶屍人を多量に召喚するもの。五芒符を放つもの。
 それらに対し、どの様に対策して反撃の烽火を上げるかが重要な鍵となる。

「奴に問うことは無意味だ。問いを投げる暇は無いし、それは自身の隙となるからやめておけ」
 問いを考える時間があるなら、どうやって状況を切り抜けるかを考えてほしいと飛藍は言いたいのだろう。
「……溜まりに溜まったカタルシスを、開放する時間だ」
 飛藍は最後にそう言って。猟兵達を送り出した。

●それは緩慢な
『エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか』
 冷たく暗い一室で、ヒトならざる白き男は独り言ちる。
 己の目的は、ただ、『持ち帰る』のみ。
 しかしこの世界はよく『似て』いる。『業(カルマ)』の蒐集も興が乗らない。
『……いえ、そうではありませぬな』
 それはただの言い訳だと、自嘲して。
 不死で、繁殖も出来、生存の為のエナジーも必要としない。
 それは、賽も振らずに勝負に勝つようなものだ。
 その様な存在に成り果てた己に、己自身が飽いているのだろう。

 戯れに、山陰を屍人で埋めてみようか。
 それとも、コルテスが崇める神の偽物でも拵え、信長の後釜に据えようか。
 そう、戯れだ。

 ――だが、それらを全て行ったとして。
『猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……』


雪月キリカ
 はじめまして、もしくはまたお会いしました。雪月です。
 マスコメをよく読んで、ご参加くださるようお願いします。特に先制攻撃の説明の部分。

 頂いた内容によっては、プレイングが流れます。
 対策。どう行動し、どう戦うか。それ、大事です。

 尚、この晴明と過去作のセイメイは似て非なるモノ。
『問う』ことは無粋です。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 ※陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。

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第1章 ボス戦 『陰陽師『安倍晴明』』

POW   :    双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:草彦

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 何もかもが己の内を通り過ぎるだけ。それは向こう側を映し出す透き通った玻璃の様に。
 禍々しき怨嗟に囲まれ、畏怖され佇むその玻璃は美しく、邪悪だった。
サギリ・スズノネ
サギリの故郷で好き勝手やってんじゃねーですよ
やる気がないようなー、その澄ました横っ面、サギリがぶっ飛ばしてやるから覚悟しやがれです!

【火ノ神楽】でたくさんの火の鈴を出し、その一部を『小鈴鳴丸』を振るった【衝撃波】に乗せて、敵の攻撃の相殺を試みます
相殺できなかった分は【第六感】と【見切り】で避け【呪詛耐性】で出来る限りダメージを抑えるのです!

敵の攻撃を何とかしのげたらーサギリも反撃するのです
火の鈴に【破魔】の力を込めバラバラに操り【残像】で惑わせながらぶつけます

攻撃に乗じて【目立たない】ように相手の視界から外れつつ
残りの火の鈴を合体させて『小鈴鳴丸』から放った【衝撃波】に乗せて、ぶっ放すのです!


ヘンペル・トリックボックス
……下界の屍人は軒並み片づけましたとも。戯れですらあれ程の災厄を撒き散らすのであれば、いい加減輪廻の輪から外れるべきだろう、晴明。あれだけの生命を踏みにじって得た感情が退屈なら尚更だ。

五芒符は直撃した場合の被害以上に、地形効果による超強化こそが脅威。で、あれば『外させない』ことこそ肝要……!
手持ちの五行符に【破魔】の気を籠めてUCを発動、無数の桜吹雪に変えた五行符を個別操作して、放たれた五芒符に対する障壁とします。

万一地形を侵食した場合は、金行符の効果を発現させた花弁で起点ごと抉り取るとしましょう。

晴明が大きな隙を見せた時のみ、火行符の効果を発現させた桜吹雪による炎【属性攻撃】を叩き込みます。



「やる気がないようなー、その澄ました横っ面。サギリがぶっ飛ばしてやるから覚悟しやがれです!」
 いの一番に、怨嗟渦巻くその領域へと足を踏み入れて。サギリ(鈴を鳴らして願いましょう。・f14676)は晴明へ、びしりと人差し指を突き付ける。
 熱意の感じられぬ顔でエンパイアに混乱を撒く晴明は、盤を見ずに賽を投げているようにも見えて。それが非常に気に入らない。
「……下界の屍人は軒並み片づけましたとも」
 僅かに遅れて現れたのはヘンペル(仰天紳士・f00441)で。静かな怒りを湛えたヘンペルの瞳は、真直ぐに晴明を射抜く。
 ヘンペルはこれまでの晴明の所業を見てきていた。
 あれだけの数の生命を踏み躙り、それで得た感情が退屈などとは、到底許せるものではない。
『然様でございますか』
 対し、玻璃――晴明は、二人を何の感情も映らぬ瞳で見やる。

『あなた方は……私の虚を、満たすことが出来るのでございましょうか』
 ふわり、と。晴明は紙飛行機を飛ばすような調子で五芒符を放った。それは意志を持った隼の様に二人へと向かう。
 迫り来る五芒符に、サギリとヘンペルはその場を動かなかった。
 動けなかったのか。
 いや、違う。二人とも五芒符を避ける心算は無かったのだ。
 五芒符による攻撃は、猟兵に命中したならばダメージを与え、外れたならば地を裂き晴明自身を強化する業の怨霊を溢れさせる。
 魔将軍の一柱である晴明の強化を許すことが如何に恐ろしいか、想像に難くない。
 符を避けた場合のデメリットを考えたからこそ。敢えて避けず自身の攻撃で威力を殺がせ、身に受けるダメージを軽減させることを選んだのだ。

「鈴を鳴らして舞いましょう」
 しゃん、と。魔を祓う音を伴わせサギリが火ノ神楽を舞えば、その周囲には数多の黄金色の炎の鈴が現れて。
 指示する様に、手に握る小鈴鳴丸を振るえば。炎の鈴たちは小鈴鳴丸から放たれる波に乗った。
 それらは流星群の様に流れると、五芒符へ衝突し威力を殺ぐ。だが……。
「きゃあっ……!」
 それでも殺ぎきれぬ勢いを纏った符はサギリの身を裂き、じわり蝕んだ。しかしまだ立っていることが出来たのは、直感で符を見切り急所は外したことと、呪詛への耐性があったことで、ダメージを軽減することが出来たからだった。
『……ほう』
 それを見た晴明は、そう一言だけ発する。
「戯れですらあれ程の災厄を撒き散らすのであれば、いい加減輪廻の輪から外れるべきだろう、晴明」
 毅然と、ヘンペルは言い放って。その手にある五行符に、魔を打ち破る気を籠める。それらは、風に流されるように無数の桜吹雪へとカタチを変えた。
 舞う桜吹雪は瞬く間に虚空に陣を描くと、盾となってヘンペルを五芒符から護る。ばち、ばちり、と。桜吹雪と符の間に火花が散った。
『輪廻の輪、で御座いますか。それを心に描いたことはありませぬ』
 渇き切った心に、何かを思う種が芽を出すことはない。
 淡々と、晴明が答えたその瞬間。音を立てて五芒符と桜吹雪の盾が破裂した。
 それを見た晴明は、瞳に幽かな驚きの色を映す。しかしそれを邪魔する様に、強かな意思を含んだ声が晴明の耳に届いた。

「サギリの故郷で……好き勝手やってんじゃねーですよ!!」
 晴明を睨みつけるサギリ。まだ、まだ炎は全て消えていないのだ。
 サギリは残る炎の鈴に破魔の力を籠め。ばらばらに操り、放つ。
 ゆらゆら。蜃気楼を纏う炎は晴明を惑わせて。
 いけ好かない面の男の意識がゆらめく炎の鈴へと向いている内に。その視界から外れて。
 そしてもう一度、小鈴鳴丸を振るう。放たれた衝撃波は残る炎の鈴たちを集め、一つになりながら晴明へと疾る。
 流星の様に疾る炎の鈴は、晴明の身体を吹き飛ばすと。ぴしり、罅を入れた。

 晴明は、今身体に走る感覚は何であったかと、思惟を巡らせていた。
 そうしてそれを痛みだと自認する。けれどその感覚の余韻に浸る暇は無かった。
 ざぁ、と。音が聞こえたからだ。
 それはヘンペルが改めて、桜吹雪を晴明へと放ったから。こちらもまだ、全て散ってはいなかった。
「呆けている暇は無いぞ。晴明」
 火行符の効果を発現させた桜花の花弁は、熱を纏いながら煌めき、ゆらめいて。
 叩き付ける暴風よりも強く強く、晴明を撲ると。その身体にぱきりと、新たに罅を入れる。

 ――誰も。
 今まで誰も、此処までは来なかった。
 けれども、今は。
『……虚が満たされる時が、来たのかもしれませぬな』
 晴明は己の傷を撫で、割れたその一部を手に取り眺むると。
 僅かに、唇の端を持ち上げた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月夜・玲
虚ろが満たされる時…か
自分自身にすら興味が無いんだね
可哀相に

召喚された水晶屍人は『なぎ払い』って対処
直接的な攻撃は『武器受け』『オーラ防御』でガード
そして【神器複製】を使用
自身の持つ全ての神器…《RE》Incarnation・空の記憶・Blue Bird・Key of Chaosの4振りを複製して『念動力』で操作するよ
合計208本のうち半分で水晶屍人達の足止めをして残りの半分と共に晴明に攻撃を仕掛けるよ

大量の複製達、私の道を切り開け!

射程に入ったら攻撃出来る複製で一斉攻撃して『串刺し』にしてあげる

さあさあ大盤振る舞いの大サービス!
これだけの数に刺されれば、虚ろも満たされるでしょ!

アドリブ等歓迎



「虚ろが満たされる時……か。自分自身にすら興味が無いんだね」
 可哀そうに、と。玲(頂の探究者・f01605)は晴明へと、憐憫の視線を晴明へと投げかけた。
『哀れに思われる謂れはありませぬが……己にすら興味がないというのは、言い得て妙でしょう』
 晴明はそう言いながら、人差し指をすい、と。横に滑らせる。
 すると、何も無かったその部屋には冥き光が現れ、直ぐには数えきれない程の水晶屍人達が召喚されて。
 それに雲隠れする様に、晴明の姿は見えなくなる。
 水晶屍人達は玲を光なき瞳に捉えると。明確に、玲へと歩みを進めた。
 迫る屍人を近寄らせぬ様にと、その手に握る剣で薙ぎ払うのだが、如何せんキリが無い。このままでは、数に圧されてしまう。
 部屋一杯に犇めく水晶屍人を一体一体を相手にしていては、いたずらに体力と時間を消耗するだけだ。
 ――ならば。数の暴力には、同じく数の暴力をぶつければ良い。

 玲は携えた四振りの剣達へ『神器複製』を発動させると。己の能力の限界数まで複製する。
 そうして。宙に現れたその剣達の数、二百八。
「大量の複製達、私の道を切り開け!」
 それらの半数を念動力で操ると、行く手を遮る水晶屍人達へ矢の様に放つ。放たれた剣は水晶屍人達の身を裂き、頸を刎ねて。玲へと反撃の道を切り開かんとする。
 水晶屍人達が剣に倒れ行く様は。宛ら、いにしえの指導者が起こした葦の海の奇跡の様にも見えた。
 海が全て割れるまで、もう少し。あと少し。その先にはあの晴明が居るのだ。
 そう思えば、操る心に力が入った。

 そして時はやって来る。玲の瞳が、屍人の海の向こうの晴明を捉えたのだ。
 道の拓かれている今が好機だ。一気に攻めようじゃないかと、玲は不敵に笑う。
「さあさあ大盤振る舞いの大サービス!」
 それは号令だった。
 玲はこの時の為にと待機させていた、残りの半数の剣達を放った。それは篠突く雨の様に、晴明へと向かう。
 主の危険を感じた水晶屍人が盾とならんと割り込むも、剣達は容易く貫いて。その向こうの晴明の玻璃の身を、ざりざりと削ぐ。
『……っ!』
 その痛みは、晴明の顔を歪ませるには充分だった。
「これだけの数に刺されれば、虚ろも満たされるでしょ!」
 晴明の纏う衣の間隙から、小さな玻璃の欠片がぱらぱらと零れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

龍泉寺・雷華
どうやら強敵が現れたようですね……!
ここは猟兵の切り札たる我の出番でしょう!

小癪にも先制して攻撃してくる様ですが、我が剣技は守勢の技にも通じています
魔術詠唱を行いつつ、壁を背にして戦いを展開!
正面の敵には雷冥剣による受けの剣技で対応し、左右より襲い来る敵は魔術障壁(オーラ防御)を用いた鉄壁の防御態勢で魔術発動までの時間を稼ぎます!

くっくっく……詠唱さえ完了してしまえば、その刻よりここは我の舞台
受けた傷を生命の水で覆い癒し、体勢を立て直してから反撃開始です!
古くより、ゾンビ系の弱点は火属性と相場が決まっています!
我が操る原初の炎により水晶屍人を焼き払い、破滅の雷にて清明を撃ち抜いてあげましょう!



「どうやら強敵が現れたようですね……! ここは猟兵の切り札たる我の出番でしょう!」
 自信満々に、雷華(覇天超級の究極魔術師・f21050)は晴明と対峙する。
 晴明は雷華を興味など無さそうに見やると。何も言わずに冥き光と共に数多の水晶屍人を召喚し、その向こうへと雲隠れする。
 召喚された水晶屍人達は羨む様に、生者たる雷華へと手を伸ばし、足を進めて。
 それを見た雷華は我に恐れをなし手下にすべてを任せ引き下がったかと、くつくつと笑った。
 
 部屋一杯に犇めく水晶屍人に対し、雷華は壁を背にして魔術師期の詠唱を始める。
 壁を背にしたことで、水晶屍人の迫る方向を百八十度に絞れたは良い。
 しかし。その分屍人の密度が増してしまうことを考慮すべきだったのだ。
 前方から迫る冷たい手を、握る雷冥剣で斬れども、斬れども。次々沸いて。
 左右に展開している障壁は数の暴力で圧され、軋む音が今にも聞こえてきそうで。
 ――集中が、出来ない。
 不完全な詠唱では、望む力を上手く引き出す事は出来ない。その焦りが、隙を生んだ。
 ほんの一瞬。ほんの一瞬の隙だった。
 水晶屍人の一体はその隙へと潜り込んで。雷華の足にしがみついたのだ。
「っ!!」
 驚愕のあまり詠唱は中断される。その間にも、爛れた手がわらわらと手が雷華へと迫っていた。

 何とか雷冥剣で水晶屍人達を貫き、払い、状況を切り抜けることは出来た。
 雷華は引き続き詠唱を開始すると、それを唱えきる。
 その力の代償として、毒が雷華の身を蝕む。だが、一発でもくれてやらないと気が済まないのだ。
「古くより、ゾンビ系の弱点は火属性と相場が決まっています!」
 雷華の手から原初の炎が放たれる。その劫火は、次々と水晶屍人を浄化し骸の海へと還す。
 開かれたその先には、あの晴明の顔が見えて。それを目がけて破滅の雷を槍の様に、放った。
 鋭く飛んだ雷は晴明の身を掠り、玻璃にぱき、と。小さな罅を入れる
 けれども晴明は、涼しい顔をしていて。
『その程度』
 とだけ、零した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

水心子・真峰
派手な羽飾り(水晶製)を背負った妙な男が現れたぞ……
さっさと南国か歌劇団に帰るが良い

ちぇーんそー剣が命中した対象を追うというのなら
こちらから適当なものを当ててしまえば良いのではないか?
残像にフェイントを加えた動きで相手の狙いを定め難くしつつ
斬って来るのに合わせて結びのグリモアを投げつける
紐が絡まって剣の回転が止まるか、対象になってしまえば儲けものよ

その隙に自分で死角を作っている背後に回り込み一撃
……と行きたいところだがな
もう片方の剣が来るだろうからそちらには
鈍器並みの超硬質鞘を誇る水心子静柄を当てる

ガラ空きになった胴に回り込み
茶室刀で剣刃一閃
その体、砕いてやろう



 目の前に。派手な羽飾りを背負った妙な男が、居た。
 しかしよく目を凝らせば。羽飾りに見えたそれは、玻璃で出来ていた。
 一体何なのだ。明らかに自然形成ではない。それにどう見ても、南国の祭りで踊る美女や、絡繰箱に映る歌劇団の役者が身に着ける装飾に似ている。
「……さっさと南国か歌劇団に帰るが良い」
 それが、真峰(ヤドリガミの剣豪・f05970)の口から零れた感想だった。
『何を申し上げているのか、さっぱり理解できませぬな』
 首を傾げる晴明の両の手には。陰陽師という肩書にはそぐわぬ赤き鎖鋸が握られ、唸りをあげていた。

 真峰を斬り刻まんと、晴明は瞬時に距離を詰めると。大きく鎖鋸を振り下ろした。
 その予想外の速さに、咄嗟に真峰は『水心子静柄』で身を庇う。唸る刃に押されて、真峰は鞠のように弾かれた。
 鎖鋸は確かに当たった。しかし対象とした真峰は弾かれてしまったのだ。空振りとなってしまったことに、晴明は眉を顰める。
 勢いのまま、鎖鋸は地へと向かって。破砕音と共に、無残に床が刻まれる。
 その様を見て、真峰は肝を冷やした。あんなものを真面に喰らっていたら、重傷は免れなかっただろう。
 ふと晴明の方へと視線を移すと。晴明は焦りの表情を薄らと浮かべていた。
 それは床に喰い込む鎖鋸が唸りをあげていなかったからだ。どうやら、鎖鋸は床を喰ってしまったようだった。
 天が味方をした瞬間だった。それに報いる為に、真峰は晴明へと駆け出した。

 晴明はもう片方の鎖鋸で、近付く真峰を薙ごうとするも。真峰はそれを防ぐようにもう一度、静柄を当てる。
 唸る鎖鋸と、静柄との間に激しく火花が散った。
 静柄を握る手には激しい振動が響き、思わず手放してしまいそうになる。
 けれど。手放してしまったら、刻まれた床の二の舞で。それに、静柄の護りをふいにしてしまうことになる。それは御免だ。
「その身体、砕いてやろう」
 真峰は空いている手で茶室刀を抜くと。それを力の限りを篭めて、晴明の胴へと叩き付ける。
 ばきり、と。鈍い音がした。何かが砕ける手応えもあった。
『ぐっ……!!』
 晴明は鎖鋸から手を放すと、後方へと飛び退いた。

 飛び退きざまに、大きな玻璃の欠片がぼろぼろと衣の間隙から零れ落ちるのを目にして。
 己の身体の限界が近いことを、晴明は察した。

成功 🔵​🔵​🔴​

加賀宮・識
今の「生」に飽いている?
そんな理由で死者を冒涜するな

間髪入れずに『オーラ防御』を展開。『野性の勘』『第六感』『見切り』で初撃を『怪力』でおこした『衝撃波』で『なぎ払う』

避けられず傷を負ったなら好都合、反撃に出る
流れた血は焔に変わり『ブレイズフレイム』発動、敵を逃がさない。
焔と同時に撃ってでる
暗月鎖で焔を絡めた『2回攻撃』『鎧砕き』『鎧無視攻撃』

『激痛耐性』で痛みは耐えられるが流れている血を補う為、敵から『生命力吸収』

私の半身がこんな時に役に立つとは、な
皮肉なものだ



「今の『生』に飽いている? そんな理由で死者を冒涜するな」
 識(焔術師・f10999)は晴明を瞳に認めると、そう吐き捨てる。
 生者を戯れで屍人にし、駒のように利用して。しかしそれすら飽いていて何も感じぬというのは、外道以外の何物でもない。
『何もかもが、ただ通り過ぎてゆくだけなのです。すべて、意味を失っているので御座います』
 そう言って、晴明は鎖鋸をその両手に握ると。識へと、跳ねた。

 識は鎖鋸の攻撃を相殺せんと、身を護るオーラを展開させ暗月鎖を振るう。
 細腕からは想像できないような膂力を以て振るわれた剣は、衝撃波を発生させ晴明を薙ごうとした。
 けれども衝撃波を斬り裂きながら鎖鋸は識へと迫る。咄嗟に暗月鎖を盾代わりにしたことで、初撃は何とか凌ぐことは出来た。
 しかし、直ぐに二撃目が降りかかる。火花飛び散る鍔迫り合いの末、暗月鎖を握る腕は鎖鋸の圧に弾かれてしまった。
 そうして識は袈裟懸けに、唸る刃に刻まれて。
 まるで赤い絵の具が滴る筆を振ったように、鮮血を飛び散らせると。がくり、地に膝をつく。
 散った赤は晴明の頬や身体に付着し、新たな色彩を与えていた。

 この程度だったかと、晴明は頬の血を拭おうとした。
 その時、頬が燃え上がったのだ。正確には、晴明の頬に付着した血液が燃え上がったといったほうが正しい。
 僅かに間を置き、衣に掛かった血液も燃え上がって。それに驚いた晴明は、身を炙る焔を掃おうとする。
 小娘の血が火種かと、識を見やれば。ゆらりと識は立ち上がっていた。
 識は傷口に手を当て、未だ流れ出る己の血液を掬う。それを暗月鎖の刀身に塗布すれば、暗月鎖は焔を纏う剣となる。
 そして力を振り絞り、晴明へと駆けると。その腹に一閃を浴びせた。
『っは……!』
 すると拳大ほどもあろう、玻璃の欠片をごとりと落とし、晴明は退く。
 それを見、もう少しで終わらせることが出来ると見込んだ識は。斬ったと同時に奪った生命力を糧とし更に踏み込むと、暗月鎖を振り上げる。
 仮に。生命力を奪っていなかったら、もう一度振り上げることは出来なかっただろう。
「私の半身がこんな時に役に立つとは、な」
 皮肉なものだと識は自嘲すると、腕を振り下ろす。
 焔を纏った漆黒の刀身はがりがりと晴明を砕き、傷を焼くと。玻璃の全身にぴしりぴしりと罅を走らせた。

 ――ごとり、ばきり。
 晴明の腕が落ち、割れる。
『狂おしいくらいに……私に殺意の感情を向ける存在を、待ち侘びていたのでしょう』
 ぽつ、と零すその顔にも罅が入っていた。
 どう抗おうと自身の崩壊を止めることは出来ないと、晴明は理解していた。
 故に。抗うのをやめていた。

 ぱきぱきと、晴明の玻璃の身体は音を立て崩れゆく。
 対して。どこまでも抗ったからこそ、最後に識は立っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月23日


挿絵イラスト