エンパイアウォー⑥~鋼の中の悪意をぶち抜けっ!
「天下分け目の関ヶ原っ! そこでとんでもない予知をあたいは見ちゃったんだよっ!」
開口一番、蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)は叫んだ。
「このまま放置したら徳川軍の戦力は半減しちゃうから、いち早く対処しないとっ!」
レモンは16×16個……つまり合わせて256個の丸印が描かれた紙を、集まってくれた猟兵たちへ突きつけながら解説を始めた。
「今回の敵の首謀者は大帝剣『弥助アレキサンダー』! その『大帝の剣』には、広範囲の洗脳能力があってね? 許せないことに、無関係な農民たちを洗脳して自分の兵隊に仕立て上げちゃったんだよっ!」
普段は農園で農作業に携わるレモンの怒りは激しい。
だがこの非道な行い、まだまだ先があった。
「農民たちはね、この紙に書かれた陣形を組んでいるよ。とっても強固で強力な陣形でね? 更に日野富子から徴収した金銭によって整えられた『長槍』と『大盾』を装備しているよっ! 右手で長槍を構え、左手の盾で自分の左隣の仲間を守る陣形『ファランクス』は、一般の幕府軍では突破は不可能! これのおかげで、予知では軍の半数の5万人が死んじゃうんだよ……っ!」
集まった猟兵たちがざわつく。
つまり、今回の任務はファランクスの一部隊を壊滅すればいいってわけだ。
だが、それほどの陣形をどうやって崩せばいいのか?
「実はね、陣形の中央には、『大帝の剣』の洗脳能力を中継して部隊に伝播させてるオブリビオン、つまり指揮官がいるよっ! みんなはアイテムや頭を使って、陣形を何とか突破した上で、オブリビオンへ強襲を仕掛けて撃破してほしいんだよっ! オブリビオンを倒せば、洗脳が弱まって部隊は瓦解、徳川側に降伏を申し出てくるから、真っ先にやっつけちゃってっ!」
指揮官を叩けば部隊は崩壊する。単純な話である。
「指揮官オブリビオンの名前は憑坐絡繰『白花』だよっ! 怨霊、怨念を溜め込みすぎちゃった中性的な絡繰人形で、鳥獣の力や禍花のちからで攻撃してくるから気を付けてほしいんだよっ!」
だったら、陣形の真正面からユーベルコードをぶっ飛ばして掻き分ければいいのでは?
そんな猟兵の声にレモンがすかさず噛み付いた。
「それは本っ当に最終手段だからねっ! 無関係な人たちは操られているのも同然、つまり、助けられるんだよッ! だから極力殺さないであげてっ!! 猟兵のみんななら、もっとスマートな方法で突破できるって信じてるよっ! 文献なんかを調べれば、ファランクスの弱点は出てくるはずだから転送の前にちょっと考えてほしいな……っ?」
無辜の農民の命を極力傷付けずに、鋼で守られたたった1つの悪意だけをぶち抜く。
これが今回の猟兵たちの任務なのだ。
「殺さないで、っていうのはあたいのわがままだけど、現場の判断はみんなに任せる。……最善の結果を掴み取ってほしいなっ! みんな、出発するよっ!」
レモンの懇願に、猟兵たちの多くが頷いた。
今、鋼の中の悪意に猟兵たちが挑みかかる!
七転 十五起
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
七転十五起、なぎてんはねおきです。
卑怯な手口にレモンも激昂しております。
実のところ、正面突破して農民を殺害してもシナリオ成否に影響ありません。
ですが、うんとシナリオの後味は悪くなります。
ファランクス部隊はオブリビオンではない一般人で構成されているので、その攻撃は猟兵に届く事はほぼありませんが、突破方法などを工夫しないと、ボスとの戦闘が不利になる可能性があります。
可能な限り殺さずに、部隊の中央に居る指揮官オブリビオンを撃破してください。
みんな、備えよう。
それでは、皆様の挑戦をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『憑坐絡繰『白花』』
|
POW : 鳥獣偽牙
戦闘用の、自身と同じ強さの【怨霊獣】と【怨霊鳥】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : 禍鳥降霊
【取り憑かれた獣の力を解放】事で【巨大な禍鳥】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 禍神虚戯
自身の装備武器を無数の【瘴気を纏ったウツギ】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:まっちょす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠薄荷・千夜子」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ラヴ・フェイタリティ
【アドリブ歓迎】
つまりよぉ、あの真ん中のやつだけぶっとばせばいいってことだろ?まぁ見てな、メインヒロインの格の違いを見せてやるぜ。
早速ユーベルコードを発動。何せ相手は250人以上の観客だ、ラヴ様も相応のドレスを着るさ。
次に破壊力を下げる代わりに音量を上げたラヴポミをいくつかファランクスに向かってぶん投げる。これだけなら数人気絶させるだけだが、今のラヴ様は音を自在に操るヒロイン。ちょちょいと弄ってやりゃ一塊に纏まってる奴らなんざいちころよ。気絶か眩暈か平衡感覚消失か、まぁ役にゃ立たねぇ。
あとは人形だが、呪詛にゃ耐性がある。捨て身の一撃で相打ち覚悟で初手ブッパぶち刺しに行くぜ!死ねやオラーッ!
関ヶ原で猟兵たちが目にしたのは、巨盾の壁と長大な槍衾であった。
幾重にも重なる動く戦略的集団行動たるファランクスは、徳川軍ならば見ているだけでも威圧感で逃げたくなるだろう。
だが、そんなファランクスの前で敢然と仁王立ちするのは、制服めいたセーラー服とミニスカート姿のラヴ・フェイタリティ(怪奇!地下世界の落ちものメインヒロイン!・f17338)だった。
彼女の口元は愉悦でにわかに歪み、ラヴファーバー(正式名称:デッサン用鉛筆に金槌を括り付けたもの)をヤクザに肩に担いで言い放った。
「つまりよぉ、あの真ん中のやつだけぶっとばせばいいってことだろ? まぁ見てな、メインヒロインの格の違いを見せてやるぜ」
ラヴが空いた手の先を伸ばすと、関ヶ原を疾走してきたラヴお供改めヒメアルマジロのメア子(正式名称:愛の精霊メアル)がラブの掌に跳び乗った!
「何せ本日は250人以上の観客動員のスペシャルライヴだ、ラヴ様も相応のドレスを着るさ! いくぜ! ラヴ様のソウル込めた一曲だ、全身で堪能しやがれ!! ミュージック、スタートォッ!!」
ラヴミュージック(正式名称:携帯用空間振動式音楽プレーヤー)が関ヶ原に重低音バリバリのアイドルロックサウンドのイントロ部分を拡散すると、唐突にメア子の身体が帯状の光へ変化! 同時にラヴの衣装が破け散ると光の帯が彼女の身体に巻き付く!
ま さ か の 変 身 バ ン ク !!
纏う音楽が五線譜と音符へと可視化して光の帯と同化すると、途端にロリータめいたコルセットと付け長袖、桃色の花弁めいたドラァグスカートへと変化!
ラヴファーバーはメア子の光を浴びて、音を操る能力と超振動し超音波を放つ音叉槍へとクラスアップ!
仕上げに足元から光の輪が頭の頂点まで通過していく過程で、脚はスラリと伸び、胸元は豊満になり、目はエメラルドグリーンに、髪はスカートと同じ桃色へと変貌!
これが音を纏う、楽士属性の真の姿モードのユーベルコード!
「ミンストレルバラッドオブラヴ! 飛ばしてゆくぜスッゾコラー!」
音叉槍がラヴの歌を共鳴させて超音波としてファランクスに発射!
その大爆音と超高音域は、洗脳する農民たちの耳にダイレクトアタック!
「分からない! アーッ!!」
「歌が聞こえているのか!?」
「尊み……」
農民たちは苦痛を訴える、当惑する、感動するなど様々な反応を示した。
つまり、進軍が思わず止まる事を意味する!
ラヴはすかさず次の一手――ラヴポミ(正式名称:爆薬)をファランクスの中へ投擲!
「破壊力を抑えた音響爆弾だぜ! おかわり自由だ、喰らっとけコラー!」
数個の音響爆弾が爆発する度、耳をつんざくような高音域が関ヶ原に轟けば、農民たちは聴覚を麻痺してその場に次々と卒倒してゆく。
「今のラヴ様は音を自在に操るヒロイン! 音を束ねて、圧縮して、叩き付けてやれば……!」
音叉槍をマジカルステッキめいて空中で振るってファランクスを穂先を向けた瞬間、音響爆弾の炸裂音が一箇所へ集約!
ピンポイントのラウド・エクスプロージョン!
農民たちは白目を剥いて地面へ崩れ落ちた。
「ざっとこんなもんだぜ! ちょちょいと弄ってやりゃ一塊に纏まってる奴らなんざいちころよ。気絶か眩暈か平衡感覚消失か、まぁしばらく再起不能だ、役にゃ立たねぇ」
ファランクスの一部が機能停止した瞬間、指揮官である憑坐絡繰『白花』までの道が開けた。
「そこか、指揮官! 死ねやオラーッ!」
切り拓いた陣形の中、ラヴが音叉槍を構えて突撃開始!
「戦場に騒音を撒き散らすのは貴女ですか?」
待ち構える白花の周りに無数の瘴気を纏ったウツギの花びらが舞う。
それが全て、意思を持ったかのようにそれぞれ規則正しい動きを見せると、刃となってラヴの身体に降り注ぐ!
「うるさいので、黙っててくれますか?」
「ザッケンナコラー! ラヴ様は呪詛にゃ耐性があるぜ!? 相打ち覚悟で捨て身の一撃! 花びら怖くてメインヒロインやってられっか! 初手ブッパぶち刺しこんだらぁ!!」
ラヴは花びらに刻まれ、全身から血液が滴り落ちようがお構い無しで突貫!
迫りくる猟兵に白花は唖然とする。
「嘘……!? なんで止まらないのですか!?」
驚愕する人形の眼前5mまで迫ったラヴが、目を見開いたままにっかり破顔した。
「これからお前をヤリで刺すからだ! イヤーッ!!」
ラヴの音叉槍が白花の腹を穿ち、彼女の歌で増幅した超音波が穂先で炸裂!
両者は双反発、互いに花びらごと吹き飛んでいった!
「ケッ! やってやったぜクソ人形! ざまぁみろっ!!」
陣形の外まで吹き飛ばされたラヴは、事後を仲間の猟兵に託して戦線離脱していった。
大成功
🔵🔵🔵
桜雨・カイ
アドリブ連携歓迎
わかりました、できるだけ農民達を怪我させないようにしないと。
【武器落とし】や【気絶攻撃】で農民達の戦力をすこしづつでも削っている間に、彼らの足元に【念動力】で【念糸】を走らせ、手足を絡め取りまとめて動きを止める
指揮官へ攻撃する猟兵がいたら、その間にいる農民達を糸で引っ張り、周辺から避けさせ道を作る
どうか行ってください!
禍鳥降霊が来たら【柳桜】で受ける(他の人の場合は【かばう】使用)
強力な攻撃こそ望むところです。
受けた攻撃力を回復へ変換し、周囲の人(農民も含めて)を回復させます。
田中・香織
ファランクス部隊に催涙ガスを撃ち込んだあと、それでも抵抗する相手には暴徒鎮圧用のゴム弾をショットガン(アサルトウェポン)で撃ち込んで片付けるわ。(マヒ攻撃)
催涙ガスやゴム弾だったら当たっても痛いだけで死なないから。
ボス相手には実弾(呪殺弾)を装填したアームズフォートでの砲撃で対抗するわ。
『近代兵器には相手を殺さずに制圧する方法なんていくらでもあるのよ』
ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
うっわあ、洗脳能力とかまた凶悪なのが…
方向を誘導されてるだけでちゃんと「自分で考えた結果の行動」だから最悪にタチ悪いのよねぇ…
調べてみたら、一口にファランクスって言っても色々あるのねぇ。
ボスがアレキサンダー名乗ってるからには、おそらくはマケドニア式として…弱点は、と。…んー、機動力の無さと側面…?
なら、○ダッシュで側面に回り込みつつスタン・スモークグレネードの〇投擲で○精神・気絶攻撃をバラまくわぁ。
指揮官に射線が通り次第○破魔〇属性攻撃の●封殺ぶっ放すわねぇ。
刻むルーンはラグ・アンサズ・エイワズ。
「浄化」の「言葉」で「輪廻」に還りなさいな?
この身は、人のためにある。
自らが操るからくり人形「カイ」のヤドリガミである桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は常にそう考えて行動してきた。
故に、彼はグリモアベースで即答したのだ。
「わかりました、できるだけ農民達を怪我させないようにしないと」
そして今、ファランクスを目の前にして、えも言えぬ感情が胸を突く。
「その敵意は、本来、私達に向けるものではありません。今、助けてみせます」
そして洗脳能力を中継している指揮官への道を開くべく尽力しようと改めて桜雨は心に誓う。
偶然、その場に居合わせた田中・香織(ヒーローに憧れた人形・f14804)もヤドリガミだ。
彼女は女児向けの玩具の人形のヤドリガミ。
魂を宿す前から彼女はヒーローに憧れており、これまでも幾多の猟兵活動に携わってきた。
「なんて分厚い守りの陣形なのかしら。でも、近代兵器には相手を殺さずに制圧する方法なんていくらでもあるのよ。それを今から証明してあげるわ」
「あらぁ? スタン・スモークグレネード、あたしもその手で行くつもりだったわぁ?」
トレードマークのギャルソン服に身を包んだ、アックス&ウィザーズの裏路地に店を構えるBar『黒曜宮』のマスターにしてバーテンダー、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は今日もぽえぽえと見た目詐欺なスイートボイスでツッコミを入れた。
それに田中が慌てて弁解した。
「か、被った? ま、まぁ、奇遇ね! よろしくね、ティオレンジさん!」
「ティオレンシアよぉ?」
「か、噛んだだけよ!」
田中は少しおっちょこちょいな性格のようだ。
ティオレンシアは迫りくるファランクスを前に、思わず顔をしかめてしまう。
「うっわあ、洗脳能力とかまた凶悪なのが……。農民たちの方向を誘導されてるだけでちゃんと『自分で考えた結果の行動』だから最悪にタチ悪いのよねぇ……」
これに桜雨が静かに頷く。
「戦う意志を此方が奪わない限り、此方へ攻めかかってくるでしょう。私は盾や武器を農民から奪い取ります。おふたりは?」
「催涙弾とゴム弾でまかり通るわ!」
「カイさんを巻き込まないようにねぇ?」
意気込む田中の横で苦笑いを浮かべるティオレンシア。
かくして方針は出された。
いよいよ作戦実行のときだ。
真っ先に飛び出たのは桜雨だ。
ティオレンシア曰く――。
『調べてみたら、一口にファランクスって言っても色々あるのねぇ。ボスがアレキサンダー名乗ってるからには、おそらくはマケドニア式として……弱点は……んー、機動力の無さと側面……?』
桜雨は陣形の右側面から突入を開始。
からくり人形「カイ」を操り、自身もなぎなたで槍衾を捌いて集団の中へ埋没してゆく!
「申し訳ありません、今はしばらく眠ってて下さい……!」
人形の素早い手刀の一撃が農民の側頭部を強打、脳を揺さぶられてその場に崩れ落ちた。
密集陣形であるがゆえに、農民たちは旋回がうまく出来ない。
しかも盾を持っていない側から攻撃されれば、防御が間に合わずに半身を無防備にさらけ出す羽目になる。
当然、反撃も行ってくるが、なぎなたで槍の穂先を外で逸してしまえば、からくり人形を懐に潜らせるのはいとも容易かった。
「さぁ、私は此処ですよ」
農民たちの注目を桜雨へ向かわせながら、彼は一策を講じている真っ最中だった。
「――今です! お願いします!」
陣外で待機していた田中とティオレンシアが此処で動く。
「行くわよ、ティオレンシアさん! 催涙弾で動きを止めてみせるわ! これでも笑っていられるかしら?」
田中はユーベルコードを使用!
アームズフォートから催涙弾を発射する『催涙ガス(クロロアセトフェノン)』を容赦なく撃ち込んでゆく。
「あたしはスタン・スモークグレネードだけどねぇ?」
2人がスタン・スモークグレネードを桜雨に当たらないようにファランクスの中へ放り込んだ。
陣中で真っ白な煙とともに刺激臭が広域発散!
たちまり農民たちは目鼻を潰されて立ち往生!
この瞬間を桜雨は待っていた!
「おふたりとも、どうか行ってください!」
桜雨は念動力で陣の足元に自在に動かすことが可能な念糸を張り巡らしていたのだ。
今、この瞬間に念糸は農民たちの足元に絡みつき、彼らの動きを封殺!
そのまま桜雨が意図を引っ張れば、地引網漁めいて農民たちは総倒れを起こして、一本の道が陣中に浮かび上がった。
「指揮官までの道です! はやく……っ!」
向かって下さい、と口に出そうとした次の瞬間、桜雨の頭上に影が落ちる。
「――はっ!」
巨大な禍鳥が白花が急降下、桜雨に痛烈な体当たりをぶちかます!
地面に叩き付けられた桜雨は、数度大きくバウンドしてファランクスの中で崩れ落ちた!
「まずはひとり……」
白花は素早く羽ばたいて人の中央へ戻ってゆく。
そこへ田中とティオレンシアが駆け寄ってくる。
「カイさん、大丈夫っ!?」
「直撃だったわよぉ……!?」
慌てる2人をよそに、桜雨はボロボロの身体を人形の介助で立ちあがる。
「強力な攻撃こそ望むところです……。受けた攻撃力を回復へ変換して……みんなを癒やす力とさせてもらいます」
桜雨の直撃は、敢えての行動であった。
ユーベルコード『柳桜』は、完全な脱力状態でユーベルコードを受け止める必要があるからだ。
そして、それを無効化して自分含む周囲への回復力に変換、念糸で編んだ護符『糸編符』から発散させてゆく!
あっという間に桜雨の傷が癒え、周囲の農民たちも全快してゆく。
これで無傷で無力化するという桜雨の目論見が達成された。
「指揮官は猟兵を倒したと思って油断しているはずです。今が反撃の好機です」
「よーし、突撃よ!」
田中はショットガンに装填したゴム弾で押し寄せる農民たちの盾に向かって乱射!
衝撃で農民はドミノ倒し!
更に跳弾で四方八方にゴム弾が炸裂しててんやわんやの大混乱を引き起こす。
「催涙ガスやゴム弾だったら当たっても痛いだけで死なないから!」
その横をティオレンシアがスタン・スモークグレネードを連発して陣形を見出してゆく。
遂にティオレンシアは指揮官の姿を見定める。
「みぃつけた♪」
愛銃オブシディアンにルーン弾を6発装填!
だが照準をあわせる前に、白花の姿は巨大な禍鳥へと変化して空を翔ける!
「今度はシビレ薬ですか。ですが、それに逃げれば……!」
更に白い無数の瘴気を纏ったウツギの花びらを辺り一面にばらまき始めた!
「あたしに任せて! アームズフォート、実弾装填! ファイアッ!!」
砲身が爆炎とともに榴弾を発射!
催涙ガスで動きが鈍っていた白花の身体に命中!
白い花びらは爆風で吹き飛んだ!
落下する白花へ、ティオレンシアの銃口が向けられる。
「刻むルーンはラグ・アンサズ・エイワズ。『浄化』の『言葉』で『輪廻』に還りなさいな?」
必殺の一射、封殺(シールド)!
約0.02秒で放たれるルーン弾!
正直、白花のユーベルコードとの相性はお世辞にもあまり良くない。
高速移動で直撃を回避できてしまうからだ。
だが、人形といえど催涙ガスを浴びて動きが鈍っているのか、回避行動までの反応が遅い!
白花の胸に、破邪のルーン弾が突き刺さった!
砕け散る部品の数々!
「……っ! 速いですね……!? ですが、これでどうです?」
白花が2人へ農民を仕掛けようとしたその時、別の方向から猟兵が陣形を揺さぶりにかけてきた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ルパート・ブラックスミス
青く燃える鉛の翼で【空中浮遊】。陣の中央、オブリビオンの真上へ飛翔。
まずは爆槍フェニックスを【誘導弾】として【投擲】攻撃。農民に当たるなよ、ニクス。
こちらを認識した敵を【挑発】し、農民たちを巻き込まない上空へ【おびき寄せ】る。
飛べるのだろう?かかってこい、鉄屑人形。
ここが我々のランデブーポイントだ。
【空中戦】では敵がこちらに接近する瞬間を【見切り】大剣で【武器受け】。
同時に【カウンター】として短剣にUC【命を虚ろにせし亡撃】を込めて撃ち込む。
敵を変身解除と行動不能に追い込んだら【グラップル】。
農民を巻き込まないように元の位置、陣の中央に急降下。【怪力】任せに叩きつける。
【共闘・アドリブ歓迎】
ヴィクティム・ウィンターミュート
オーケー、オーダーはきっちり聞いた
出来るだけ死人は出さないさ──任せろよ
ファランクスを崩す、いい一手がある
起動『VenomDancer』
あの陣形は密集することで真価を発揮する
なら崩してやりゃいいのさ──目の前に是が非でも殺したいような相手がいたら、果たして陣形を保って突撃なんかできるかな?
いいぞついてこいパンピーども
装備の取り回しの劣悪さを考えれば、左右に振ったり後ろに回れば追いつけねえ
頃合いを見て方向転換、敵首魁と接敵
猛毒と鈍化のパルスを連打して、弱らせにかかる
スピードを上げようとも関係ねえ、足を止めるタイミングは必ずある
そこにさらにパルスをぶち込めばいいだけだ
道化と踊った代償を、払いな
既にかなりの損害がファランクスに出ている。
完全な幕引きを果たすべく、ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)とヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)が陣形の前に立ちはだかった。
「また会ったな、鎧の人。富士の樹海ぶりだったか? よろしく頼むぜ?」
ヴィクティムがルパートに声をかけた。
ルパートは流動鉛で出来た蒼炎の翼を鎧の背から広げてヴィクティムに告げた。
「グリモア猟兵は不殺を望んでいる。確かに、此処で猟兵が農民を虐殺すれば、のちの幕府の威信に関わるだろう。出来るか?」
「オーケー、オーダーはきっちり聞いた。出来るだけ死人は出さないさ──任せろよ」
ヴィクティムはルパートに右拳を突き出した。
これに何事かとルパートは首を傾げた。
「知らないのかよ。仲間同士、拳をぶつけあって武運を祈り合うんだぜ?」
「そうなのか。そういうのもあるのだな」
ルパートは見様見真似で右拳を突き出す。
それにヴィクティムがコツッとルパートの拳に自分の拳をぶつけた。
「共闘成立だ。頼んだぜ? あー……」
「ルパート・ブラックスミス。黒騎士の鎧のヤドリガミだ。貴殿は……?」
「ヴィクティム・ウィンターミュート。ヴィクティムでいい。そんじゃ、締まってこうぜ、ルパート」
「ああ……ヴィクティム殿」
2人の猟兵の連携が始まる。
まず動いたのはヴィクティムだ。
「ファランクスを崩す、いい一手がある。起動、Extend Code『VenomDancer(オマエガシヌマデドウケハオドル)』……」
ヴィクティムの周囲に01データのAR演算ウォールが出現。
超汎用型プログラムライブラリ『ティルミンヴォークスVer.2』の中から、ヴィクティム自身に強烈に敵からのヘイトを集めるプログラムを纏う。
すると、ファランクスの農民たちの敵愾心がヴィクティムへ注がれ始めた。
「あの陣形は密集することで真価を発揮する。なら崩してやりゃいいのさ──目の前に是が非でも殺したいような相手がいたら、果たして陣形を保って突撃なんかできるかな?」
ヴィクティムの狙い通り、農民たちの一部は持ち場を離れて猟兵たちに突っ込んできた。
それに合わせて陣形が形を保とうを急旋回を始め、ところどころで将棋倒しが発生している!
「いいぞ、ついてこいパンピーども。だが、俺のスピードについてこれるかよ?」
プログラムを纏ったことで、ヴィクティムは高速移動を獲得!
韋駄天の如き神速をファランクスの前で見せ付け、陣形を左右に大きく振り回す!
「装備の取り回しの劣悪さを考えれば、左右に振ったり後ろに回れば追いつけねえ。ちゃんと俺を見てなきゃダメだろ?」
陣形の中の農民たちは、ヴィクティムの動きについてこれずに大混乱!
完全に隊列の足が止まってしまい、ヘイトの矛先であるヴィクティムをぐるぐると目で追うばかりである。
「よし、動きが止まったな? ルパート!」
「感謝する、ヴィクティム殿。万にひとつ、農民たちを傷付けたくはない。陣形全体が止まれば、敵の指揮官の足も止まる」
流動鉛の蒼炎の翼を羽ばたかせ、天空へ舞い上がるルパート。
その肩に乗る蒼いヨタカに彼は言い付けた。
「出番だ、農民に当たるなよ、ニクス」
ひと鳴きしたヨタカは蒼炎を吹き上げると、みるみるうちに蒼炎の魔槍へと変身した。爆槍フェニックス。それがこの蒼いヨタカの正体だ。この魔槍は意思を持ち、蒼炎を纏いながら自在に飛び回る。
ルパートは魔槍を握り込むと、指揮官の真上まで飛翔して、一気に真下へ槍を投擲した!
蒼い炎が雷鳴がごとく一瞬で大地へ突き刺されば、指揮官の憑坐絡繰『白花』の右腕を削ぎ落としてしまった!
「なんですって……!? 上から!?」
一瞬で焼き尽くされた右腕が地面に転がったのを目で追った白花は、すかさず上空を見上げる。
そこには、手元に戻ってくる爆槍をキャッチして、威風堂々と上空へ誘うルパートの姿があった。
「飛べるのだろう? かかってこい、鉄屑人形。ここが我々のランデブーポイントだ」
挑発された白花、奥歯をぎりりと噛み締めてルパートを睨みつける。そして腰元の両翼を肥大化させ、取り憑かれた獣の力を解放! 巨大な禍鳥へと変身して飛翔せんと試みる!
「どっちが鉄屑ですか!? 今すぐ地面に叩きつけてあげましょう!」
だが、白花の背後から放たれた速度鈍化と猛毒のパルスに全身が痙攣する!
「だから、ちゃんと俺を見てなきゃダメだろ? 目を離したらブスリといくぜ?」
ヴィクティムの改造型攻撃専門サイバーデッキ『フェアライト・チャリオット』が搭載された右腕からのパルス放射が白花を射抜いたのだ。
「ぐぎ、ぎ。殺す! お前たち、絶対に殺してみせます!」
ヘイト集積効果で、ルパートの挑発を無視して巨大な禍鳥と化した白花が弾丸のようにヴィクティムへ突っ込んでくる!
「何処を見ている? 自分は此処だ」
急降下したルパート、大剣で巨大な禍鳥の体当たりを受け止め、ヴィクティムを庇った!
すかさずカウンターを放つべく、詠唱を始める。
「我望むは命満ちる未来。されど我示すは命尽きる末路」
ルパートは鎧の中に格納しているブラックスミスの短剣を引き抜くと、ユーベルコードを放った。
「命を虚ろにせし亡撃(バイタルヴェイカントバイオレンス)……! この三連撃、受けてみろ!」
一撃目で肉体・霊体の自由を封じる呪いを与え、二撃目で生命力・魔力を封じる呪いを与え、三撃目で思考・精神活動を封じる呪いを与える。全てが白花に刻まれた時、ユーベルコードは封印される!
だが、一撃目と二撃目がなんと回避されてしまった!
苦し紛れに放った三撃目が巨大な禍鳥の身を切り裂くことで、思考・精神活動を封じる呪いは発動。
「……思っていた以上に、疾い……!」
ルパートは動きと活力を封じられなかった事に不覚に思った。
しかし、ヴィクティムは愉悦で口元を釣り上げさせた。
「ルパート、よくやった。人形のやつ、自我が崩壊して錯乱してやがるぜ。もはやありゃ、空を飛ぶだけの馬鹿だ」
思考・精神活動を封じられたおかげで、本来の目的を忘却したのか、猛スピードで天空で円を描いて飛び回る白花。
ヴィクティムは右手を天へと掲げて言い放つ。
「スピードを上げようとも関係ねえ。そのまま馬鹿の一つ覚えでぐるぐるお空を回ってな? 俺が落ち落としてやるぜ。ルパート! やれるか!?」
「揺きを止めればいいか? ならば心得た」
ルパートが再び天空へ飛翔する。
狂ったように旋回し続ける白花の上空まで飛び上がると、蒼炎を吹き上がらせて高速急降下!
「さっきの貴様の言葉、そのまま返そう。地面に叩き付けてやる、終わりだ」
白花の鳥頭をガントレットで強引に掴み取る!
そこへヴィクティムのパルスが白花を打ち抜き、動きが更に鈍った!
「堕ちろ」
そのままルパートもろとも地面に急降下、激突して土埃が高々と舞い上がる!
ルパートは激突の瞬間に素早く反動で上空へ舞い上がったのでダメージはゼロだ。
一方、白花は顔面から激突したため、顔のみならず右半分が潰れてしまった。それでも尚も立ち上がり、空へと飛ぼうとするのはヴィクティムの纏うプログラムのヘイト誘引効果のせいなのだろう。
「コ……ロ、ス!」
「いい加減にしやがれ、粗大ゴミ。まだ動くなら、動かなくなるまで俺はパルスを撃ち込むだけだ」
右手を突き出し、最大エネルギーのパルスを放たんとヴィクティムは身構えた。
警告を無視した白花は、左半身を鳥に変化させて襲いかかってくる!
「道化と踊った代償を、払いな」
ヴィクティムの右手から高出力のパルスが放たれると、白花はまるで操り糸が切れたかのようにプツンと動作を停止させ、そのまま仁王立ちのまま動かなくなったのだった。
「道化の踊りに魅入られたのなら、もはや破滅以外に道は無い。朽ち果てろ、地獄の底でな」
白花の軀は、関ヶ原の景色に溶け込むように消失していった。
大帝の剣の催眠術の中継の役割を果たしていた指揮官が打破されたことで、農民たちは我に返って自分の犯したことを嘆き悔やんだ。
すぐさま徳川軍に投降を申し込み、その身柄を確保された。
「お疲れさん。ぶっつけ本番とはいえ、いい連携だったぜ? ルパート?」
「ヴィクティム殿が陣形を崩してくれたおかげだ。恩に着る」
ルパートが右拳を差し出す。
それにヴィクティムは笑いながら首を横に振った。
「ちげぇよ。勝った時は、こうすんだよ」
ヴィクティムは右手を掲げた。ルパートもこれに倣う。鋼の手をヴィクティムのサイバネハンドが叩けば、がしゃりと重厚な音が関ヶ原に響いた。
「ハイタッチって言うんだ。覚えておけよ?」
「……ふむ。悪くないな」
ルパートは自分の右手をじっと見詰めながら呟いた。
ヴィクティムはまたも笑った。
「だろ? んじゃ、俺は行くぜ。またな、ルパート?」
「ああ、また何処かで会えるだろう、ヴィクティム殿」
こうして、ファランクスの部隊をまたひとつ打ち破った猟兵たち。
この一歩が、徳川軍壊滅の未来を阻止できると信じて、彼らはこれからもサムライエンパイアを駆け巡る。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴