エンパイアウォー⑰~冷淡なる陰陽師
●陰陽師『安倍晴明』
「エンパイアの戦も、佳境の趣でありましょうか」
陰陽師『安倍晴明』は静かに鳥取城を歩いた。
「不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない」
驕ることなく、荒ぶることもなく、ただ事実だけを指折り数える。このような存在に成り果てた自分自身を考えるかのように晴明は言った。
山陰を屍人で埋めてみようか。
それとも、コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えるか。
ふと、晴明が立ち止まり、少しだけ首を傾げた。
「猟兵とやらの怒りは、果たして、どれほど私の心を動かすものやら……」
ここは鳥取城。戦国時代に餓死した人々の怨念が渦巻く城である。
●冷淡なる陰陽師
「陰陽師『安倍晴明』の居場所が判明したんだよ」
いつになく険しい表情でルビナ・ベイビーブルー(スペースノイドの電脳魔術士・f01646)は緊張の面持ちで説明を始めた。
その場所は、鳥取城だという。
安倍晴明の所在を掴んだことにより、決戦を挑むことができるようになったのだ。
「さっそく、みんなに安倍晴明との決戦をお願いしたいんだ。いくつか注意点があるからよく聞いてね」
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行ってくる。
猟兵が使うユーベルコードと同じ能力のユーベルコードによる攻撃だ。
双神殺、水晶屍人の召喚、五芒業蝕符などその攻撃は強大。何の対策もしていなければ、敵にダメージを与えることはできない。
「敵の先制攻撃をどうやって防ぐのか、そして、どうやって反撃するのか。しっかり作戦を練って戦いに挑んでほしいんだよ」
対抗策が不十分な場合も、苦戦は免れないだろう。
「強敵だと思う。みんな、どうか気を付けて。無事帰ってきてね」
そう言って、ルビナは説明を終えた。
陵かなめ
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
⑰安倍晴明決戦シナリオです。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
オープニングが公開された時点からプレイングを受け付けますので、よろしくお願いします。
それでは、プレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナミル・タグイール
キラキラにゃ!
でもナミルが欲しいのは水晶じゃなくて金ぴかにゃ!
金ぴかになれデスにゃ!(勝手に怒る猫
両手で武器を持つなんて欲張りにゃ。両手で斧持ってるナミルのほうが絶対強いにゃ!
【野生の勘】で双神殺の軌道を予測
最初のは【怪力】で弾き飛ばすにゃ!無理でも弾くくらいは頑張る
呪詛纏ったのはナミルの斧も【呪詛】纏わせて対抗
UC相手は流石にうち勝てないと思うから頑張って耐えるにゃ
呪詛と怪力で少しでも軌道がずらせたら斧を捨てて突撃
斧と同じくらい呪詛が籠もった呪いの爪にゃ
本命はこっちデスにゃ!金ぴかに傷つけられた恨みを喰らえにゃー!
抵抗されるだろうけどちょっとでも当たれば発動できるにゃ【捨て身の一撃】にゃー!
パフィン・ネクロニア
のう、水晶……じゃなくて晴明よ。
陰陽師ってそんな物騒な武器持ってるもんじゃったっけ?
とまれ、対策が必要なのはあのチェーンソーでの攻撃じゃな。
厄介な連撃じゃがこの攻撃は何かに命中すれば途中で止められないとみた。
ならばダッシュと残像、フェイントを駆使して攻撃を誘い、奴がチェーンソーを出してきたところで、カウンターでこんな事もあろうかと用意しておいたこの秘密兵器をぶつけて空振りさせて、その隙に剣刃一閃を叩き込んでくれよう。あとはひよこファイブの盗み攻撃で水晶を回収してさっさと撤収。
名付けて、肉を斬らせず骨を断って水晶を奪う作戦。
うむ、完璧じゃな。こんな感じで行こう。
●駆動するチェーンソー剣
鳥取城に到着した猟兵たちは、ただ静かな表情を浮かべる陰陽師『安倍晴明』を見た。
「キラキラにゃ!」
ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)は水晶のように輝く敵を見て言う。
「でもナミルが欲しいのは水晶じゃなくて金ぴかにゃ! 金ぴかになれデスにゃ!」
水晶は金ぴかではないとナミルは怒ったけれど、晴明は感情のない視線を向けて来るだけだった。
「のう、水晶……じゃなくて晴明よ」
パフィン・ネクロニア(ダンジョン商人・f08423)は敵が手にしている武器を指さす。
「陰陽師ってそんな物騒な武器持ってるもんじゃったっけ?」
「さて、そちらの認識と私の認識の差、所詮は些細なものでありましょう」
瞬間、敵がチェーンソー剣を持って走り出した。もはや言葉を交わすこともないと言う事だろうか。
ナミルとパフィンは突進してくる敵に備え構えた。
「両手で武器を持つなんて欲張りにゃ」
ナミルはそう言いながら敵を見る。その足運びはとても軽やかで、チェーンソー剣を二つも手にしているとは思えないほどだ。それに、こちらへ踏み込んでくる速さもある。
敵のチェーンソー剣が揺れた。
「ここにゃ!」
野生の勘を駆使して、双神殺の軌道を読む。
下方から敵のチェーンソーが伸びてくることを信じ、腕を思い切り振り下げた。
敵が目を細める。
回転するチェーンソーの刃とナミルの斧がぶつかり合った。
「両手で武器を持つなんて欲張りにゃ!」
敵の刃を弾き飛ばそうと両腕に一層力を込める。しかし、敵の刃は止まらず、それどころか回転する勢いを増してナミルに迫ってきた。斧と刃が火花を散らす。
「両手で斧持ってるナミルのほうが絶対強いにゃ!」
ナミルはそう言うと、更に斧に力を乗せた。
腕が震える。
それを抑えるようにして、何とか斧の向きを強引に変えた。
チェーンソー剣の軌道が反れ、敵が次の一手を繰り出す。もう片方のチェーンソー剣に呪詛を籠めナミルの胴を狙ってきたのだ。
「それなら、これにゃ」
ナミルは急いで斧に呪詛を纏わせた。敵の攻撃が自身の肉体を削る寸前に、体を回転させ受け止める。斧が敵のチェーンソーを弾いた。敵の身体が一瞬開く。
それを見て、一歩敵との距離を詰めた。
「本命はこっちデスにゃ! 金ぴかに傷つけられた恨みを喰らえにゃー!」
斧を投げ捨て、ユーベルコード・幸運を呼ぶ黄金の爪を発動させる。呪詛が染み付いた黄金の爪を力任せに敵の体に突き立てた。狙っていた捨て身の一撃だ。
「そちらが勝手に怒りを覚えただけでしょうに」
敵がチェーンソー剣で爪を受け止めた。爪と剣の刃のぶつかり合った個所から、呪いが噴き出る。
少しでも敵に当たれば、この呪いは発動できるのだ。
安倍晴明は冷静に自身にまとわりつく呪いを見てからチェーンソー剣を振り抜く。
ナミルの身体が勢いで吹き飛ばされた。
だが――。
「小さくても一撃にゃ」
その言葉通り、敵に攻撃を浴びせることができた。
ナミルがその場を退き、代わりにパフィンが敵の眼前へ躍り出た。
対策が必要なのは、あのチェーンソー剣だろう。考えながらパフィンは敵の武器をちらりと見て床を蹴る。
「さて、次はどのような動きで私の心を動かすのでしょうか」
晴明はパフィンの動きにあわせるように走り出した。
二人、勢いを増して城の中を右へ左へと駆け抜ける。
パフィンがダッシュで加速すれば、敵がすぐに追いつきチェーンソー剣を構えた。それを残像でしのぎながら、進む方向を巧みに変更しフェイントをかける。
晴明は表情を崩さず、涼しい顔でパフィンを追いかけてきた。
「そろそろ追いかけっこも終いにしましょうか」
悠然とチェーンソー剣を構え、敵がぐんと加速した。
パフィンの鼻の先に敵の刃が煌めく。
この間合いで回避するなど不可能だ。
そう思った瞬間、パフィンは懐からガジェット秘密兵器を取り出して敵に叩きつけた。こんな事もあろうかと思って用意しておいたとっておきの秘密兵器だ。
敵は口元にかすかな笑みを浮かべて秘密兵器を斬りつける。
さらに続けて呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣を繰り出し、秘密兵器に攻撃を加えた。
「やはりのう。厄介な連撃じゃが、その攻撃は何かに命中すれば途中で止められないとみた」
パフィンが刀を構える。
敵の攻撃は強力だが、あれは初撃を命中させた対象に次の一撃が入るとの考え。事実、清明のチェーンソーはパフィンの投げつけた秘密兵器を追撃したのだから。
敵の刃が秘密兵器を攻撃しているその間に、ユーベルコード・剣刃一閃を放った。
鋭い斬撃が、敵の腕を斬り裂く。
「これは……考えましたと褒めてしかるべきでしょうか」
敵が感心したように自身の腕を眺め、飛び退いていった。
「名付けて、肉を斬らせず骨を断って水晶を奪う作戦じゃ」
そう言ってひよこファイブで盗み攻撃も仕掛けるパフィン。
しかし飛び退いた敵には届かなかった。
とは言え、敵の攻撃に対処し一撃喰らわせた作戦は見事と言える。
パフィンはこれ以上長居は無用と、その場を撤収した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
月夜・玲
これだけ悪趣味な事やっておきながら、まるで他人事みたいだね
全く持って気分が悪いよ
陰陽師・安倍晴明といえば、正義の陰陽師ってイメージなのにね
名前変えたら?
●戦闘
Key of ChaosとBlue Birdを抜剣
先に召喚された水晶屍人を両剣で『なぎ払い』、『串刺し』にして少し時間を稼ぐ
直接的な攻撃は『武器受け』『オーラ防御』でガード
稼いだその時間で【神器複製】を使用
Blue Birdの複製神器を50本精製し『念動力』で操る
半分の25本で水晶屍人達の足止めをして残りの25本と共に晴明に攻撃を仕掛けるよ
自身の周囲の複製は全て別軌道を取らせる
こちらの射程に入ったら攻撃出来る複製で一斉攻撃!
アドリブ等歓迎
●多数の屍人
「これだけ悪趣味な事やっておきながら、まるで他人事みたいだね」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は腕を斬られても表情の変わらない安倍晴明を見据える。
全くもって、気分が悪い。
「陰陽師・安倍晴明といえば、正義の陰陽師ってイメージなのにね。名前変えたら?」
その言葉を、敵は静かに受け流した。
「はてさて、猟兵の怒りとはどの程度のものか。それを知るためにもまだ戦いを続けましょうか」
清明の指が何かを描く。
途端に、多くの水晶屍人が現れ玲を取り囲んだ。
交わす言葉などないと言うように、水晶屍人たちが一斉に飛び掛かって来る。
玲はすぐさまルーンソードKey of ChaosとフォースセイバーBlue Birdを引き抜いた。そして、最も近い位置から飛び掛かってきた水晶屍人の身体を真っ二つに斬り裂いて捨てる。
「おや、それがいつまで続くやら」
敵の静かな声。
それほどに、水晶屍人の数は多かった。
玲は自分に群がって来る屍人を一気になぎ払う。
「自分は高みの見物ってわけ? 本当に――」
気分が悪い。
玲は言葉を飲み込み、代わりに左からの敵を数体串刺しにした。
水晶屍人が体を保てなくなり消えていく。更に新たな水晶屍人が玲へ突撃してきた。その勢いを殺すように、武器で受け流し斬り捨てる。
最初の波を捌いた玲は、わずかな時間を作り出しユーベルコード・神器複製を発動させた。
「さあ、私の研究成果のお披露目だよ!」
複製するのはBlue Birdの複製神器。50本もの複製神器を全てバラバラに操り攻勢へ転じる。
半分は水晶屍人達の足止めに飛ばした。軌道を全て変え、あらゆる方向から敵に攻撃を仕掛ける。それは多数の屍人を足止めし、あるいは穿ち砕いて消し去った。
「ほう、これはなかなか」
「涼しい顔をしていられるのも今のうちだよ」
屍人を足止めしている間に、残り半分の複製神器で清明の周辺を取り囲ませる。
玲は迷わず一斉攻撃を仕掛けた。
敵が防御の構えを取るが、さすがに25本の複製神器を全て防ぎきるのは難しい。敵の防御を掻い潜ったBlue Birdの複製神器が数本、敵の体を斬った。
「なるほど、私に痛みを与えると言うのですか」
「確実にね」
ダメージを与えたことを見て取り、玲はいったんその場を退いた。
大成功
🔵🔵🔵
レナ・ヴァレンタイン
よう優男、ひとっ走り付き合うかね?
対処法は以下の通り
初手宇宙バイクで接敵後、銃撃で応戦しつつ一時逃走
敵集団を引きつける。数は多ければ多いほどいい
横合いや上からの奇襲を警戒し、襲撃を喰らった時はリボルバーやマスケットを構え【スナイパー】【二回攻撃】技能を駆使して屍人の水晶を狙い打ち払い、真正面に立ったやつはアームドフォートでぶち抜き、広場か、庭か、追い詰められたように見せかけてなるべく開けた屋外へ
ユーベルコードで増やした銃器を多重展開
私自身は複製した銃器を足場にして上空へ
230挺の銃火器の一斉射撃を放つ
必死になれそうかね、セイメイ
何時までも腑抜けたままだというなら、そのまま死ね
※アドリブ歓迎
ニコ・ベルクシュタイン
…お前もまた、先の戦争に於いて「持ち帰る」役を担った存在なのか
思惑は今は知れぬが、早々好きにはさせぬと知れ
おおよそ真っ当な倫理観から外れてしまっている輩を捨て置けはしない
水晶屍人の召喚に備えて、精霊銃を構えて「クイックドロウ」で
敵の召喚に即迎撃出来るようにしておき
込めた精霊弾を散弾仕様にして「範囲攻撃」「一斉発射」で
先手を取られようと一方的に蹂躙されぬよう迎撃を試みよう
反撃の機が巡ってきたら「スナイパー」で狙いを定め
晴明本体を「誘導弾」で執拗なまでに狙ってみせよう
其の水晶の身体は我が炎では焼き尽くせぬやも知れぬが
煉獄の炎で焼かれる痛み位は知っておいても損は無いのではないか?
●一斉発射の弾丸は
少しずつだが確実に敵への攻撃が通っている。
レナ・ヴァレンタイン(ブラッドワンダラー・f00996)は宇宙バイクに跨り、敵の目の前に躍り出た。
「よう優男、ひとっ走り付き合うかね?」
対する安倍晴明は静かに指を持ち上げる。
敵の指の動きにあわせるように水晶屍人たちが湧き出てきた。
「さて、いかようにいたしましょう」
清明の指示を受け、屍人達が一斉にレナへと向かってくる。
「そんな集団だけで追いつけるかな?」
レナは敵集団を前にして宇宙バイクを旋回させ、速力を上げて後方へと逃げた。当然、バイクを追ってくる屍人達。追いすがる屍人を見て、ホルダーから短銃身リボルバーを抜き、レナは何発か弾丸を飛ばした。
体を貫かれた屍人が一体崩れ落ちる。
その屍を乗り越えるように、次から次へと屍人が襲い掛かってきた。
「数の暴力、諦めることを知らない集団のようだな」
バイクを繰り、レナは敵集団の間を縫って走りながら射撃で応戦する。気づけば戦いの場所は城の中庭まで後退していた。マスケット銃が火を噴く。また数体、屍人を倒した。
「その手数では屍人を一掃するには足りますまい」
安倍晴明は静かに指を動かして屍人に命令を下す。
城内よりも開けた場所に出たことで、一度に襲い来る屍人の数も段違いに跳ね上がった。屍人達が文字通り一斉に襲い掛かってきたのだ。
そう、中庭の広さは十分。
レナはこのタイミングでユーベルコード・軍隊個人を発動させた。
「さあ、戦争をしよう」
自身が装備する銃火器類を全て定数複製し多重展開、配置につかせる。
その数230梃。
レナは銃火器を器用に足場にして上空へと昇り詰めた。
「必死になれそうかね、セイメイ」
「さあそれは、分かりませぬ」
清明は屍人を押しとどめ、それぞれを合体させ始める。
だが、今から組み上げたところで、とてもレナのスピードには追い付けないだろう。
「遅い。何時までも腑抜けたままだというなら、そのまま死ね」
レナの号令で銃火器が一斉に火を噴いた。
弾丸は、合体しかけの屍人や飛び掛かろうとしていた敵の身体を貫き破壊していく。
その勢いは後方で屍人を操っていた清明にも届いた。すぐに一歩引く清明。
「もちろん逃がすつもりは無いがね」
鋭い弾丸が清明の身体も貫いてみせた。レナはしっかりと手ごたえを感じる。
「これほどとは……」
貫かれた個所を見て、清明がぽつりとつぶやいた。
●炎の弾丸
傷を負った敵の前に、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)は立った。
「……お前もまた、先の戦争に於いて『持ち帰る』役を担った存在なのか」
「さて、それを今語ったところで、どうなるものでもないでしょう」
清明がすすと指先を伸ばす。
すると再び大勢の水晶屍人が召喚された。
「思惑は今は知れぬが、早々好きにはさせぬと知れ」
ニコも構える。
目の前に立つあれは、おおよそ真っ当な倫理観から外れてしまっている輩だ。そんなものを捨て置けはしない。
屍人達はニコを取り囲み、一斉に飛び掛かってきた。
対するニコの手には精霊銃。向かってくる敵に、早撃ちで弾丸を叩き込んだ。
「数は多いようだが、これならば」
精霊銃に込めた精霊弾は散弾仕様にしてある。弾丸が複数一斉に飛び散り、飛び掛かってきた屍人達を一掃した。
だが、控えていた後続の屍人が重なるように襲い来る。
先手を取ってくる相手に、ニコは精霊銃を取り迎撃して耐えた。弾丸が飛び、その度屍人の身体が弾け飛ぶ。敵の腕がニコの身体を殴りつけた。腕を引き、すぐに散弾を発射する。決して一方的に蹂躙されぬよう、細心の注意を払いながら立ち位置を取った。
「なるほど、猟兵と言うものは存外しぶといものでありますね」
清明が残った屍人をけしかける。
ニコは目に見える範囲の屍人に向けて精霊弾を放った。複数の弾丸で屍人達の身体が砕かれ、群れに穴が生じる。
「見えたぞ」
ニコの瞳に、清明の姿が映った。
「契約の下に疾く来たれ――」
狙いを定めユーベルコード・疾走する炎の精霊を発動する。
敵との距離、良し。角度、確認。敵の中に出来た一瞬の穴を通すように、微調整して精霊銃を構えた。
「我が炎の愛し子よ」
ニコは早撃ち50分の1秒で、精霊銃に込められた炎の弾丸を発射する。
弾丸は清明目掛けて飛んだ。当然清明は弾を避けるように足を運ぶ。しかしニコの発射した弾丸は、誘導されて執拗に清明を追った。
ついに弾丸が清明の足に着弾し、炎を飛ばしてその場を焼いていく。
「これは――」
飛び移ってくる炎を見て、清明が眉をひそめた。
「其の水晶の身体は我が炎では焼き尽くせぬやも知れぬが」
炎を挟んでニコは清明と相対する。
「煉獄の炎で焼かれる痛み位は知っておいても損は無いのではないか?」
「この痛みを、猟兵が私に」
目を細めた清明は、焼かれながら猟兵たちを見据えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
メンカル・プルモーサ
【ワンダレイ】で参加。
陰陽師という割にはUDCアース的な格好をしているね…Drオロチの同類かな?
炎や氷の術式で五芒符を撃ち落としていくよ…相殺しきれずに自分に向かってきたものは全力のオーラ防御による障壁で防御…
地形へ落ちたものは【尽きる事なき暴食の大火】を放って白い炎で怨霊を燃料として取り込む…
取り込んでいる間に隙を見て振動術式を水晶屍人の方へ放って脆くしてネージュのフォロー…突破口を開く助けとする…
怨霊を取り込んで勢いを増した炎はそのまま操ってアルフレッド達の援護をしつつ、セイメイへとぶつけるよ…
……セイメイ、『賽の目を振ってる』気にはなったかな…?
アルフレッド・モトロ
心を動かしたいって?…へへっ、俺が手伝ってやろうか!
【ワンダレイ】の皆と参戦。
ネージュ(f01285)と一緒に【地形を利用】し、張り巡らせた【ワンダレイ・チェイン】で双神殺の初撃を受ける。チェンソーは刃の構造上、回転方向に対して垂直な力にはめっぽう弱い。
刃が鎖に触れてる内に【怪力】で引きゃあ、チェンが外れてブッ壊れる筈だ!
双つの剣あって初めて効果のある技だ、一本駄目になっちまえばもう発動できねえだろう?
後は【ワンダレイ・アンカー】にUCを纏わせて【力溜め】、【怪力】で【鎧も砕く】【捨て身の一撃】だ!
メンカル(f08301)の大火も拾って、火力マシマシで行かせてもらう!
これで仕舞いだ!セイメイ!
ネージュ・ローラン
【ワンダレイ】で参加。
この方の目的が見えませんが、オブリビオンを見逃す理由はありません。
全力で討ちましょう。
【SPD】
大量の水晶屍人は合体されると厄介なのでスピード重視で各個撃破していきましょう。
その為には多少の被弾も覚悟の上です。
相手の動きを【見切り】最短ルートで水晶屍人に近付き、触れたら氷精霊の魔力を送り込む【属性攻撃】です。
急激に冷やされた水晶は脆くなるので、すかさず蹴りを叩き込み、次の水晶屍人へと向かいます。
突破口が開けたなら【氷装創出】で武器を創りながら安倍晴明へ突撃です。
アルフレッド艦長のように、チェーンソーを絡め取る鎖鎌なんてどうでしょう。
可能なら艦長のサポートに回ります。
●ワンダレイ
「陰陽師という割にはUDCアース的な格好をしているね……Drオロチの同類かな?」
敵の姿を見てメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が言った。
数々の猟兵たちと戦いを繰り広げ、敵はかなりの体力を失っているようにも見える。
ネージュ・ローラン(氷雪の綺羅星・f01285)は小首を傾げた。目の前の敵の目的が見えない。とはいえ、だ。
「オブリビオンを見逃す理由はありません。全力で討ちましょう」
「そういう事だ!」
アルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)が皆をまとめるようにそう言って飛び出す。
メンカルとネージュは頷いて後に続いた。
「さても、猟兵とはよく喋るもの。それで私の心が動かされるのか、考える余地はありましょうか」
現れた三人を見て、清明が少しだけ瞳を揺らす。
「心を動かしたいって? ……へへっ、俺が手伝ってやろうか!」
アルフレッドはそう言って、颯爽と駆け出した。元より、敵と語らいに来たのではない。
清明も同様にチェーンソー剣を駆動させ床を蹴った。
しかし猟兵は三人。左からネージュが、右からはメンカルが動く。
清明は真っすぐ走りながら水晶屍人を召喚した。水晶屍人達は次々とネージュに襲い掛かる。
更に五芒符が舞い、メンカルの行く手を阻んだ。
「本気で、同時に三人を相手にするつもりかな?」
メンカルは言いながら、炎の術式で五芒符を撃ち落とす。まだまだ舞う五芒符は多い。次は氷の術式、その次は炎と、休むことなく五芒符を仕留めていった。
「水晶屍人は合体されると厄介です」
そう言って、ネージュは自身に向かって来た屍人との距離を詰めた。敵の動きを見切り、最初に触れる。そこで流し込むのは氷精霊の魔力。水晶が急速に冷やされたのを見て取り、鋭い蹴りを叩き込んだ。足元から屍人が砕ける感触。ネージュは最初の敵を砕いたことを確認し、すぐに次の敵へと向かって行った。
さて、清明はアルフレッドへ向かって踏み込んできた。傷を負っているとは思えないほどの豪快な突進だ。いきなりアルフレッドの間合いまで踏み込み、チェーンソー剣を繰り出してくる。
チェーンソーの駆動する音が近い。
アルフレッドは寸でのところでワンダレイ・チェインを展開し、敵の初撃を受け止めた。
ギチギチと刃が鎖の上を滑り、火花が飛ぶ。
「受け止めましたね、我が刃を」
「ただ受け止めたと思うじゃん?」
チェーンソー剣をさらに突き出してくる清明に対し、アルフレッドはチェインを力いっぱい真横に引いた。
チェンソーは刃の構造上、回転方向に対して垂直な力にはめっぽう弱いはず。
途端にチェーンソー剣のチェーンが剣から剥がれ、異常な駆動音が周辺に響く。
「これは、ええ、確かにそうなるのでしょう」
「双つの剣あって初めて効果のある技だ、一本駄目になっちまえばもう発動できねえだろう?」
そう言うアルフレッドに向かって、清明は駆動しなくなったチェーンソー剣の本体を振り上げ殴打してきた。
「っと」
刃で切り刻めないなら、殴打して攻撃する。
その意図を感じ、ワンダレイ・チェインを手繰り寄せて敵の武器を跳ね返した。
「……っ」
清明がバランスを崩したたらを踏む。
「ひょっとして、結構重症なんじゃねぇの?」
今まで積み重なってきた傷が、隠せなくなってきているようだと感じた。
敵は何も言わずに残った一本のチェーンソー剣を構えて一歩引き、指で何かを命令した。
見ると、五芒符の舞いはさらに勢いを増してメンカルに襲い掛かっているようだ。
「メンカル!」
「うん。大丈夫」
返事をしながら炎と氷で五芒符を撃ち続ける。
しかし全ての五芒符に対処はできない。軌道が逸れて地面に落ちた五芒符が、その場を斬り裂き業の怨霊を溢れさせた。
それを見て、メンカルが尽きる事なき暴食の大火を発動させる。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
如何なる存在も燃料にする白色の炎が放たれ、溢れ来た怨霊を燃料として取り込み始めた。
「ネージュ!」
メンカルがネージュを呼ぶ。
「行けます」
短く返事をして、ネージュは近くの屍人を破壊した。まだ周辺には多くの敵の群れ。しかし、進む突破口は開けた。
「集え氷精、其の力を凍てつく刃と成せ」
ユーベルコード・氷装創出を発動させ、安倍晴明目掛けて走り出す。
「何と無謀なことでしょうか。周辺の屍人が見えないとでも?」
清明が困ったような表情を浮かべて、自身に向かってくるネージュを見た。手元で命令を下したのか、屍人もすぐさまネージュを追いかける。
「させないよ」
それを見たメンカルが、屍人へ術式を飛ばした。
ネージュへ仕掛ける屍人の身体を脆くし、助けとしたのだ。
「ありがとうございます」
ネージュは襲い来る敵を蹴りつけながら、真っ直ぐ清明へと突撃する。
氷精霊の魔力によって作られた武器は鎖鎌だ。それを構え、清明へと飛び掛かった。
清明は手にしたチェーンソー剣で応戦する。
突き出されたチェーンソー剣と鎖鎌の鎖がぶつかった。
「これは……」
「ええ、そうです。アルフレッド艦長のように、チェーンソーを絡め取る鎖鎌です」
そう言って、ネージュは鎖を真横に引く。
先程、片方のチェーンソーが駄目になったことを思い出したのか、清明は自らチェーンソー剣を手放した。代わりに指で何かを描き屍人を呼ぶ。
「そうは、いくか」
だが、メンカルがそれを許さなかった。
尽きる事なき暴食の大火で放った白い炎は、怨霊を喰らいつくし轟轟と燃え上がっている。その白い炎たちを、メンカルは清明へと向かわせた。
炎が走り、一瞬にして清明を取り囲む。
「……セイメイ、『賽の目を振ってる』気にはなったかな……?」
今の清明に、この白い炎を防ぐ手段はなかった。
炎たちが清明に襲い掛かり、その身体を燃やしていく。
「なるほど、あの怨霊がかように取り込まれ」
ダメージを受けながら、清明は感心したように白い炎を眺めた。
ともあれ、敵を討つなら今だ。
「アルフレッド艦長」
ネージュが振り向いてアルフレッドを見た。
「ああ、任せろ!」
そう言って、アルフレッドは自身の体を引き裂き、地獄の炎をワンダレイ・アンカーに纏わせる。
ユーベルコード・ブレイズフレイムの発動。力を溜めながら、大きくジャンプして敵の懐へと飛び込んでいった。
途中、メンカルの白い炎までもアンカーに拾い、鎧をも砕く捨て身の一撃を繰り出す。
「これで仕舞いだ! セイメイ!」
力の限り腕を振りアンカーで敵の体を撃ち砕いた。
「ぐ……これが、猟兵の……」
清明の口から小さく息が漏れる。
アルフレッドが敵の身体から武器を引き抜いた。
その場所から、敵の身体が崩れ去る。
鳥取城に風が吹き抜けた。
「ふう、やったな」
アルフレッドが仲間を見る。
メンカルは頷き、ネージュが静かに笑顔を浮かべた。
今この場に、敵の影はない。
猟兵たちは見事安倍晴明を撃破した。
大成功
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