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エンパイアウォー⑰~冷めた瞳に映るもの~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #安倍晴明

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●グリモアベースにて
「……さて、と。此度こうして皆さんに集まってもらったのはですね」
 こほん。信楽・黒鴉(刀賊鴉・f14026)はわざとらしい咳払いをひとつすると、普段は細めているその眼を右側だけ薄く開いてその場の猟兵たちを静かに見回した。
 失敬、そんな一言と共に信楽は腰に下げた一振りのグリモア刀をすらりと鞘より抜き放つ。鞘の内から解き放たれ、翳す白刃の根本から切っ先にかけて迸る煌めきが虚空に一人の男の虚像を浮かばせた。
「……魔軍将の一人にして、陰陽師『安倍晴明』。彼の居場所が分かったのです。……これもひとえに、毎日信長軍を迎撃して下さる皆さんの奮闘のお陰ですね」
「……ところでこのファッション、陰陽師ってマジかよって感じですよね?……なんだかめっちゃパリピっぽいですよこの人。あとなんですか、両手にチェーンソーとか持ってますよ。めっちゃめちゃフィジカルタイプじゃないですかこの人……?」
 一部の猟兵は、信楽と同様に胡乱げな表情を浮かべながら虚空の青年の姿を見上げたかも知れない。その他の猟兵に「良いから続きを」とせっつかれた信楽は後頭部を掻きつつ、刀を翳す角度を変えて、浮かび上がる幻像を切り替えた。
 続いて浮かび上がるのは、緑の木々に包まれた山が後ろに控える高い石垣に聳えた城だ。

「場所は……因幡国にある鳥取城です。UDCアース風に言えば鳥取県の鳥取市にあるお城ですよ。戦国時代の城攻めで餓死した数多の人々の怨念が巣食う忌まわしい場所ですね。嘗ては豊臣……いえ、当時は羽柴秀吉でしたか。彼がこの城を攻めた際にそれはもう過酷な兵糧攻めを仕掛けまして。余りの飢えに、終いには場内で飢えて死んだ者の、或いは殺した相手の肉を食らう者まで現れたそうですね。……おっと、本筋から少々逸れました。……それに気持ちのいい話でもない。まあ、こんな事があった場所……くらいの雰囲気で頭の片隅にでも入れておいてくださいね。もしかしたら、上手く何かに使えるかも知れませんし」

「……安倍晴明は言うまでもなく一筋縄では行かない相手です。どう頑張っても、彼は我らの先手を取って強力な攻撃を仕掛けて来るでしょうね。……左右それぞれ手にした二振りのチェーンソーによる連続攻撃。……或いはもう戦った人も居ることでしょう。……あの不気味な水晶屍人を手駒として呼び出し使役する術。そして漸く陰陽師らしくなってきましたね、符術による攻撃と怨霊の使役による自己強化……遠近共にバランスが取れていて、実に隙がない」

「しかし、どういう訳か……あの晴明、余り熱意を感じさせない雰囲気です。……決してこちらを舐めている訳ではないと思うのですが、上手く付け入る隙はあるかも知れませんね。鳥取城自体に特に変わった仕掛けはない筈です。まず、晴明の攻撃への対処を頑張ってください。ただ、凌ぐので精一杯になっていては本末転倒ですよ。……奴を倒さない限り、織田信長にこちらの刃が届くことはないのですから……」
 そんな言葉と共に、信楽の振るう刀が円の軌跡を描き、虚空を大きく切り裂いた。
 剣の奔ったその軌跡に沿って、火花のように微かな光が生まれ、やがては弾けるように溢れ出す。空間を歪めて開かれた門(ゲート)。まるで燃えるように鮮やかな輝きの輪の向こうに、聳える城山の景色が今やはっきりと浮かび上がった。

「さあ、おまたせしました。門が開きましたよ。覚悟が出来たらどんどん行っちゃってください」
 信楽・黒鴉はそんな呟きと共に、静かに微笑を浮かべた。
「……それではどうぞご武運を。手強い相手ではありますが、皆さんの戦いぶりに全てが懸かって居ます」


毒島やすみ
 はじめまして。或いは何時もありがとうございます、毒島やすみです。
 いよいよ現れました、陰陽師安倍晴明!……お恥ずかしながら、TW6から参加のわたしには、今ひとつイメージを掴みかねる部分がありまして。……という訳で、当シナリオの安倍晴明は、毒島なりのver.TW6の安倍晴明として描写させて頂きます。
 ですので、過去作での知識を絡めたプレイングに関しては、今回スルーとさせて頂きます。申し訳御座いませんが、予めご承知置きの上でのご参加を宜しくお願い致します。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 ボス戦 『陰陽師『安倍晴明』』

POW   :    双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:草彦

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●死闘の幕開け
 陰陽師『安倍晴明』は一人、熱を感じさせぬ眼差しで静かに空を見上げる。
 鳥取城、天守閣。その屋根の頂にて佇む、異装に身を包んだ陰陽師はただただ虚しさを覚えていた。

「……私の目的はただ『持ち帰る』事のみ……。それは容易い……余りにも、容易い仕事です。ああ、つまらない事この上なし……」
 その身と心に深く染み込んだ空虚さを憂うように呟きながらも、その左右の手には何時の間にやら握るには余りにも物騒な二本一対のチェーンソー剣がぶら下がる。
「……不死であり、繁殖も行える。生きるための糧を得ることもない……それは言葉だけ聞けばなんとも魅力的でしょうが、実際こうも成り果ててしまえば、余りに味気ないもの……」
 戯れで作ってみた水晶屍人。実際は然程面白くはなかったが、あの屍人どものお陰で猟兵たちはさぞや怒りを覚えたことだろう。……それはとても良いことだ。願ってもない。いっそどんどん怒り狂ってしまえば良い。
 その激情が演出するであろう、ただ退屈なだけのこの命を脅かす危機。それならば或いは……永らく続く退屈に飽いて鈍麻し凍て付いた己の心を震わせてくれるかも知れない。
 そうでなければ、次は何をして永遠の退屈を紛らわせよう。山陰どころか、サムライエンパイアすべてを屍人で覆い尽くしてみようか。幸い、怨念にも死体にも困らない。材料も時間も不死者たる自分には文字通り、腐るほどあるのだから。

 ゲートが開くとほぼ同時、晴明の手にしたチェーンソーが低い駆動音の唸りを左右それぞれ重ねて響かせる。
 サムライエンパイアには余りにも不釣り合いな異音と共に、縦横無尽に唸り奔る刃が天守の屋根を一瞬の内に無惨に解体――
 天井も壁も崩れ去り、広大な戦場を作り上げながら、奥の間の畳上へと優雅にふわりと降り立つ陰陽師。ゆっくりと顔を上げながら、ゲートより次々と姿を表す猟兵たちを熱のない瞳で静かに一瞥する。

「……すべてはこの場を片付けてからのこと、か。……或いは今、貴公らがどれほど私の心を揺り動かしてくれるのか……期待させて貰っても――」

 宜しいのでしょうか、と。そう続けて問う彼の声は、チェーンソーの二重に奏でる禍々しい咆哮によって掻き消されるのだった。
峰谷・恵
「あの悪趣味なことをどんな愉悦顔でやってるかと思ったら、興味をそそられるテーマが見つからない研究者みたいにつまらなそうだね」

一撃受け止めたらダークミストシールドが外れるように発振器装着を緩めておく。
血統覚醒を発動できるようになるまで、追撃回避は不可と予想し敵の双神殺初撃回避に集中、ひたすら回避に専念して耐える。
かわしきれない場合はオーラ防御と呪詛耐性を総動員したダークミストシールドで防御、敵の追撃を外れた盾に誘導する(それを見抜かれないためにオーラ防御と呪詛耐性で初撃全力防御)
血統覚醒発動次第、遅すぎた収穫期で突き刺し(怪力+串刺し)至近距離からヴァンパイアの力を乗せた全射撃武器一斉発射


トリテレイア・ゼロナイン
無聊を慰めるのに忙しい様子ですが、その為に水晶屍人と言う代物を生み出す所業を放置しておくわけには参りません
格上とは重々承知しておりますが、人々の命と魂魄を弄んだ対価、払って頂きます

振られるチェーンソーの刃ではなく「刃の腹」を払うように●武器受け
その後の呪詛剣を振られる前に頭部格納銃器の発砲で振るう腕を●だまし討ち
少しでも振るう腕を鈍らせ、動きを●見切り、呪詛を防ぐように剣腹を払うように●盾受け。盾を犠牲に呪詛も防御

攻撃を凌いだらUCを発動、向上した機動力とスラスターでの●スライディングで続く攻撃を回避
儀礼剣の刀身を持って戦槌として●怪力で振るい、鍔を叩きつけ●鎧砕き
水晶の身体を砕きます



●双刃狂乱
 ふたつのチェーンソー剣による滅多斬りであっという間に解体され、次々と崩れ落ちていく屋根や壁の残骸が地響きを立てて地上へと降り注ぐ。巻き起こる砂埃の勢いは三階の高さにまで届く程だった。
「あの悪趣味なことをどんな愉悦顔でやってるかと思ったら、興味をそそられるテーマが見つからない研究者みたいにつまらなそうだね」
 峰谷・恵(神葬騎・f03180)はゲートより転移するなりに、即席の戦場を拵えて見せた陰陽師を見据えてそう告げた。
「……然り。そのテーマというものの模索に永らく没頭しているのですが、この私には全く愉悦が見つかりませぬ」
 貴女たちが、或いはそれを齎してくれれば良いのですが―― そんな言葉と共に、熱のない晴明の眼差しは彼女の隣に降り立つ機構仕掛けの甲冑騎士へも向けられた。
「無聊を慰めるのに忙しい様子ですが、その為に水晶屍人と言う代物を生み出す所業を放置しておくわけには参りません。格上とは重々承知しておりますが、人々の命と魂魄を弄んだ対価、払って頂きます」
 そう慇懃に告げるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)を静かに見据えながら、晴明はだらりと垂らした両腕を持ち上げながら、優雅に身体を翻す。再び響き渡る左右の回転鋸刃がそれぞれ空気を噛み裂き唸る音。

「ならば……」
 持ち上げた両腕を交差するようにして二振りのチェーンソーを振りかぶりながら、静かに晴明は一歩踏み出す。
 ただ単純な筋力のみに頼る訳でなく成立する異形の構えから漂う気配に、恵とトリテレイアは瞬時に意識を切り替えた。
「……その対価、支払うと致しましょう。貴公らが最後まで立ち続ける事が出来るのならば」

「来るッ……!!」
交差した両腕から放たれる左右同時の一太刀目、それぞれ袈裟懸けに叩き付けられる禍々しいチェーンソーの駆動兇刃を、恵はダークミストシールド――手袋に仕込んだ菱形の発生機より瞬時に吐き出された霧状の防御障壁にて真っ向より受け止め、トリテレイアは咄嗟に翳す儀礼用長剣にて唸るチェーンソーの腹を叩き、逸らすようにして往なしてみせる。共に触れる防護を激しく揺さぶる超振動を伴う轟音と共に夥しい火花を散らし、巻き起こる衝撃は三者の身を大きく揺るがせた。

「……っ、ぐゥ……!!」
大きく蹈鞴を踏みながらも、それぞれ一太刀目をやり過ごす事に成功した恵とトリテレイア。
 ほう、と微かに晴明の片眉が持ち上がる―― 続けて逆袈裟に振るう返しの二太刀目、一太刀目によって本来生み出されるべき追撃の好機を逃したそれは、最早攻撃としての体を為す事はない。それを回避することは両者にとって容易く、恵は予め緩めておいたシールド発生機を打ち捨てながら余裕をとって大きく飛び退り、トリテレイアは自身の騎士兜に内蔵・隠匿された機銃を展開―― 至近距離よりこれを容赦なく掃射する!

「……成る程。――……あたかも騎士然とするその見てくれは、こちらの油断を誘う策でありましたか」
トリテレイアの奇襲によって撃ち込まれる無数の機銃弾を、チェーンソーの連刃にて弾き散らしつつ、晴明が呟く。
然し、その刹那の隙を恵は見逃さない。彼女の双眸が鮮やかな真紅に染まり、普段彼女が抑え込んでいた忌々しいもうひとつの姿―― ヴァンパイアとしての側面が大きく表に現出する。その身に刻まれた血統が覚醒する事により、彼女は一時的にその存在をヴァンパイアへと限りなく近付け、その戦闘力を爆発的に引き上げるのだ。……寿命という代価と引き換えに。
巻き起こる強大な魔力と殺気に当てられ、背筋をびりびりと震わせる感覚に、憂いを帯びていた熱のない瞳に微かに宿る真剣味。
「そして、こちらも並々ならぬ闘争心……」

「……すかしている余裕はあるのかなッ!! ぼくは加減なんかしないよ!!」
 底無しに湧き上がる人外の怪力から突き出されるのは、神殺しの力を行使する為、神への殺意と共に鋳造された恵の剣型兵装。その名も『遅すぎた収穫期』と言う。
「……これ、はっ……!!」
 突き出される神殺しの剣を、咄嗟に交差させたチェーンソーにて剣刃を受け止める晴明。その踏み込みの強烈さに床は大きく抉れ、十数メートルにも及ぶ轍を刻み、その摩擦により白煙を立ち昇らせる。衝撃を往なし切った、そう判断して構えを解こうとする晴明を前に、恵はありったけの殺意を漲らせた表情で笑った。
「この距離なら、避けられないよねぇ……ッ!!」
剣を手放す恵が入れ替わりに展開させる、二門のアームドフォート。大口径砲と、その片割れは機関砲。更に突きつけた熱線銃、合わせて三つの銃口がそれぞれ一斉にゼロ距離より火を噴いた。轟音と共に巻き起こる爆風―― 発射の衝撃に吹き飛んだ愛剣を飛び退りながら抜け目なく回収する恵と入れ替わりに―― トリテレイアが前へ出る。

「……騎士道など模倣に過ぎません、所詮私はウォーマシン……」
 彼の内燃機関が静かに駆動加速を開始する。背部のスラスター口が眩い光の粒子を放ち、その輝きが膨れ上がるように収束し――
『格納銃器強制排除、リミット解除、超過駆動開始……』
 彼の体の各所に仕込まれた銃器が、その格納部品ごと次々と強制排除され、そのフォルムをより鋭角に高機動戦闘へと適したものに改める。
『されど護るべきものの為ならば、詭道も甘んじて進みましょう。……これが私の騎士道ですッ!!』

 それこそが彼の抱く『鋼の騎士道(マシンナイツ・シベルリィ)』なのである。揺るぎない鋼鉄の決意に後押しされ、弾丸の如く前に突っ切る甲冑騎士。打ち捨てられた外装が転がり落ちるよりも尚早く、疾風の如く未だ消えぬ爆炎の中に斬り込む彼は、チェーンソーを杖代わりに立ち上がろうとしていた晴明に肉薄する!
「……なんと、この速さは……」
「おぉぉぉぉォォォォォッ!!!!」

 咄嗟に床板から引き抜いたチェーンソーにて迎撃せんと晴明の振るう横薙ぎの一閃を、スラスター最大出力の行使により、寸前で大きく身を翻して往なし、そのまま身体を回転させた勢いをトリテレイアは己の剣に乗せる。唸りを上げて横水平に振り払われたその一撃はまさしく鉄槌のようだった。
「……ぐ、ぅああァァァァァッ!!!!」

 その激痛に吠える晴明。渾身の力を込めて叩き付けられた衝撃に、彼の背を覆うように絡みついた異形の水晶に大きく亀裂が走り、幾つもの破片が飛び散った。大きく吹き飛び、床上を幾度か跳ねながらも、晴明はチェーンソーを床に突き立ててガリガリと無惨に引き裂きながら、強引に踏みとどまってゆっくりと立ち上がる。

「……ッ……! 成る程、その騎士道……異形なれども見事であると申しましょう……。ただの上辺の形ではなく、本質こそが物事の要点でありますゆえに」
 慇懃で冷静な調子はそのままに、安倍晴明はそう呟いた。けれどもその声音には、何時しか真剣味らしきものが微かに滲み出している。ただ退屈を憂うだけだったその男は、ほんの少しではあるが、熱を帯び始めていたのかも知れない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

水元・芙実
この顔だけはいいヴィランがあの水晶屍人の製作者ね
あなたの理由なんて知らない、とっとと骸の海に還るといいわ!

相手はペンタグラム…か、物理的性質も持った術ね
当たるわけにはいかないから全力で避けるしかないけど…階段へ飛び降りて避けよう、多分相手は避けられても良いつもりで攻撃してくるでしょうし。逃げながら戦うことになりそうね

相手が怨霊のポイントに立った時こそチャンスね
幻炎転換術の火種をその床を中心にばら撒いて、地形ごとセイメイを焼き払うわ
死体を操るあなたにはクリメイションが丁度いいでしょう?
骨も肉も水晶も、物質の有り様すら残さない熱で焼却してあげるわ

…死体にされて操られたものの痛み、少しは知りなさい!


幽草・くらら


姿形まではなんとか許容出来ても、陰陽道的にそのチェーンソーはアリなんでしょうか……?
……まぁオブリビオンが理解の範疇の斜め上をカッ飛んで行くなんていつもの事ですしね、猟兵にだってそのケはありますし。

気を取り直して戦闘です。
五芒符に対しては【スナイパー】活かして氷属性の塗料で狙い撃つ事で迎撃と凍結による無力化を試みつつ、イケそうでもダメそうでもすぐさまブラシに【騎乗】して【空中戦】に移行します。
【ダッシュ】で高速移動しつつ【クイックドロウ】と【早業】で氷塊を描いて射出します。
地味ですが続けていけば相手のUCによる怨霊の出てくる地形ごと【属性攻撃】での凍結が狙えるんじゃあないかと。



●地へ堕ちる氷柱、天を衝く火柱
「この顔だけはいいヴィランがあの水晶屍人の製作者ね」
「……姿形まではなんとか許容出来ても、陰陽道的にそのチェーンソーはアリなんでしょうか……?」
 爆炎が晴れて、再び姿を表す安倍晴明を前に、水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)と幽草・くらら(現代のウィッチ・クラフター・f18256)は二人並んで口々にそう呟いた。

「如何にも。この私が丹精込めてこの城にて水晶屍人を製作致しました。その品質には些か自信も御座います……。果たしてお気に召して頂けましたでしょうか……?」
「なんかこのヴィラン、スーパーの野菜売り場にある農家のおじさんの写真みたいな事言ってるし! あと別にお気に召してなんかいないからね!」
 平静の調子を崩す事なく芙実に向けて慇懃に告げる晴明。続けて意味ありげに手にしたチェーンソーを緩く掲げて見せれば、その視線はくららの方を静かに見遣り。
「ちなみにチェーンソーにつきましては……」
「……つきましては?」
「黙秘致します」
「……まぁオブリビオンが理解の範疇の斜め上をカッ飛んで行くなんていつもの事ですしね、猟兵にだってそのケはありますし」
 ご理解頂けて何よりでございます……。そんな言葉を紡ぎながら、晴明は緩やかな仕草で会釈をひとつして見せるのであった。
 何はともあれ、彼が陰陽師の身でありながらも二刀流でチェーンソーを操る理由を深く気にしてはいけない。……いいね?
「ともかくあなたの理由や都合なんて知らない、とっとと骸の海に還るといいわ!」
 気を取り直すように、力強い宣言と共に芙実は晴明へ向けて『びしっ!』と人差し指を突きつけて見せた。隣のくららもまた、晴明の姿を油断なく注視する。相手の一挙動すらをも見逃すまいと。僅かでも気を抜けば、何時飛んでくるのか分からない晴明の攻撃がその僅かな暇に容赦なく突き刺さるであろう事は、簡単に予想できる事なのだから。

 低い唸りと共に、晴明の振るう右のチェーンソーが虚空を大きく斬り裂き、術式を刻みつけていく。
 軌跡を追うように、虚空に奔る光条が、五芒の星を形作る。浮かび上がった光の星を囲うように、左のチェーンソーが弧を描き、縁を結ぶと同時に炎の輪が星をくるりと包囲して―― その中心へと目掛けて、一枚の札を無造作に投げ付ける。

「いけない! 避けて!」
「うわあん、ホントはもう帰りたい!!」

 咄嗟に崩れず残っていた二階へ続く階段に飛び込む芙実に、天井が崩れている事をこれ幸いとばかりに手にしていた巨大な絵筆に抱きつくようにして地を蹴り、跳躍様に直前まで収束させていた魔力を込めた青い塗料を撃ち込みつつ、空へと舞い逃れるくらら。
 晴明の放った符は五芒星を象る禍々しい炎を纏い、周囲を薙ぎ払った。符のコース上に立ちはだかるようにして放たれた塗料に宿る凍結の魔力での阻害に一瞬その勢いを大きく弱められつつも、それを振り払うようにして膨れ上がり、辺りを引き裂くその威力は、もはや床と崩れかけの壁面を残すばかりであった天守の三階全体を吹き飛ばし、其処からこの城全体に強く染み付いた怨霊たちの存在を励起させていく。
 次々と地面から湧き上がる地獄の焔めいた妖気に、怨念の上げるおぞましい怨嗟の声―― 三階という蓋を消し飛ばされ、剥き出しになった二階床へと静かに降り立とうとする晴明。
 しかし、上空へと退避していたくららは見逃さない。まさしく魔女の箒宜しく腰を降ろした絵筆によって、上空を流れ星のように滑りながら、絵筆の先から矢継ぎ早に虚空へと描き出す氷の塊。それらは次々と唸りを上げて眼下の晴明目掛けて降り注ぎ、次々と床板を破砕、凍結していきながら、じわじわと晴明の足場を狭めていく。
「……これはまた厄介な。然し、怨霊たちに触れさえすれば、彼らはより私の力を高めてくれるのですよ……」
「いいえ、私の方が……速い!!」

 己の撃ち込んだ怨霊によって塗りつぶされたその一角。そこへ踏み込もうとする彼を留めるように、くららはありったけの塗料と魔力を込めた一筆を虚空に向けて叩きつける。
『冷たく描き上げます!』
 惜しげもなくたっぷりと使われた青い塗料に注がれる強大な魔力がその氷を本物へと、或いはそれ以上に絶対の冷気を掻き集めて凍て付いた巨大な氷柱へと昇華させる。
生み出された巨大柱柱が隕石の如く頭上より晴明を襲い―― 
「……これは見事。かの雪舟等楊でさえ、こう即座には描けぬことでしょう……!」
 柱は飛び退る晴明の眼前に着弾し、床板を豪快に叩き割りつつ氷の礫として砕け散る。四方八方目掛けて飛び散るそれはまるで散弾の如く晴明を撃ち抜き、その肉体の彼方此方からは飛び散る端から凍りついた血液が迸り、背負う水晶の破片と共に地に落ちては粉々に砕けて散った。
 よろめく彼が、一歩後退る―― 同時に二階へと予め退避しつつ、五芒星の破壊を柱や調度品などの影に潜り込んでやり過ごしていた芙実が顔を出し、追いすがる。
「――……死体を操るあなたには、クリメイション(火葬)が丁度いいでしょう? 骨も肉も水晶も、物質の有り様すら残さない熱で焼却してあげるわ」
「……む」
 満を持して芙実が繰り出すユーベルコード『幻炎転換術(イー・イコール・エム・シーニジョウ)』。
 質量とエネルギーの境を曖昧に揺らぐ幻の焔が作り上げる火種が芙実の頭上に次々と生み出され、それらは晴明を取り巻くように虚空を踊り幻惑しながら、次々とその足元へと撃ち込まれていく。その総数、実に170にも及ぶ。じわじわと蓄積されていくエネルギーが膨れ上がり、まるで真夏の陽光の下で生み出される陽炎のように周囲の像をおぼろに揺らめかせていく。
「………死体にされて操られたものの痛み、少しは知りなさい!」
「そうか、これは――」
 物体と火種が接触する事により、火種の特性によって曖昧にされた床材の質量はそこで蠢く怨霊ども毎纏めて一気に熱エネルギーへと転換される。晴明の足元で火種が小さく爆ぜると同時、彼が紡ぎかけた言葉を言い終えるよりも先に、その身体を丸ごと飲み込むように巨大な火柱を生み出した。二階全体を焼き砕き、吹き散らしていく火竜の息吹が如き業火が激しく荒れ狂う中、咄嗟にくららは芙実の腕を掴み、上空へと救い上げていた。
 上空より、その焔が弱まっていく様を見守る。焔の中から浮かび上がる影。
 安倍晴明はその身を無惨に焼き焦がされて尚、その白い面立ちをニタリとした笑みの形に歪めながら、手にしたチェーンソーを振り払い、焔を散らす。身に纏った装束の一部は黒く炭化し、次々と崩れ去っていく。その背に負う、半壊した水晶は痛々しい有様だ。しかし、砕けた破片が時折星屑の如く散って風に流れていくその様は何処か儚げで美しくも見えたかも知れない。

「……ああ、この感覚は歓喜……或いは恐怖……?余りに懐しすぎて、どう言い表せば良いものでありましょう。今はこの身を焼き続ける、まるで地獄のような炎熱の責め苦もまこと心地良い程……」
 持ち主同様に彼方此方が無惨に焼け焦げたチェーンソー。しかしながら、動作には微塵の問題もないらしく、彼の内心の高ぶりを表すような獰猛な駆動音が低く唸り続けている。高速回転する禍々しい刃をふたつ同時に振り上げながら、陰陽師『安倍晴明』は此処に至り、自分の前に立ち塞がった宿敵たちを初めて強く注視する。
「心より礼を言わせて頂きましょう、猟兵たちよ。……貴公らを仕留めればきっと、私は……愉悦というものを思い出せる様な気がするのです。私の長きに渡る退屈を、よくも……よくぞ、掻き乱して下さいましたね……」

 その姿を油断なく睨み据えながら、上空よりゆっくりと舞い降りるくららと芙実。それに続けて他の猟兵たちも次々と崩壊しかけた城の床上へと着地していく。

 決戦の終わりのときも近付いてきたようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

才堂・紅葉
「清々しい位に一発ぶち込みたくなる顔ね」

戦場の片隅から光学【迷彩】で自動小銃を構えて呟く。
まぁ距離は無意味な相手だ。
「クソでたらめね!?」
【野生の勘】に従い、絶対先制攻撃を銃身で【気合】受け。
焦る【パフォーマンス】と裏腹に、【戦闘知識、情報収集】で読んだ流れだ。銃身に仕込んだ指向性炸薬で【カウンター、爆破工作、吹き飛ばし】。初撃を重く弾いて崩しを狙う。
すかさずガジェット【ジャンプ】。頭上から【呪詛耐性】の鎖を巻いた右掌で【怪力、属性攻撃、封印を解く】にUCで、二撃目を根元で押え込み凌ぎたい。不足分は【激痛耐性】だ。

「左もあるのよ!」

UCの【二回攻撃】分。反動で空中回転し左の拳を叩き込みたい。



●すかしたその横っ面に
「清々しいくらいに一発ぶち込みたくなる顔ね」
 光学迷彩によって、その姿をカメレオン宜しく風景に溶け込ませていた才堂・紅葉(お嬢・f08859)は自動小銃を構えながら小さく呟く。遠近共に隙のないこのいけ好かない陰陽術士には、距離によるアドバンテージという概念は全く通用しないと見て良さそうだ。
「よく言われるものです」
「……っ!?」

 耳聡い。いや、それ以上に居場所がとうに露見しているらしい。光学迷彩による偽装を気に留めた様子もなく紅葉の立ち位置にちらりと視線を向ける晴明。
 そして次の刹那には紅葉の眼前にまで既に迫っている。流石と己を称えさせる暇すら与えずに晴明が両腕を交差させて振り被った一対のチェーンソーが描こうとするのは、左右ほぼ同時に紅葉目掛けて袈裟懸けで振り下ろされるXの軌跡だ。
「クソでたらめね!?」
 毒づきながらも、ほぼ本能に突き動かされるようにして紅葉は構えていた小銃を身体の前に盾の如く掲げ、振り下ろされるチェーンソーの交差を食い止める。焦った素振りは半分本物ではあるが、多少大仰に誇張してはいる。相手の動きは戦闘開始からずっと観察し続けていた。そこからの分析への答え合わせは今のところ、外れては居ない。
(この流れ……だいたい読んでいた通りね!)
 斬撃の勢いを留める事が出来たのはほぼ一瞬のみ。けれども、彼女にはその一瞬で十分だった。細かく切り分けられた小銃を見捨てて飛び退りながら、紅葉は隠し持った爆破スイッチを押し込み、銃に予め仕込んでいた指向性炸薬を起動させる。大気震わす轟音と共に爆裂する小銃は、その爆風を叩き付けてチェーンソーの刃ごと、晴明の身体を大きく仰け反らせる。
「……っ、……これは……いとおかし。小技であれど、なかなかに侮り難いものでございますね」
 咄嗟に強引に軸足を大地に打ち込むようにして、崩れた身体を支えようと踏ん張りつつ、二太刀目を見舞わんとする晴明を尻目に紅葉は床を蹴りつけ、ガジェットブーツによって強化された脚力によって空高く舞い上がっていた。
 頭上より強襲する紅葉の振り上げる右の掌には、銃を打ち捨てると同時に引き抜いた鎖が絡みついている。
「……このォォォォッ!!」
 落下の勢いを載せて突き出した紅葉の右手の甲に浮かび上がる紋章が、青く激しく明滅し―― 今この時繰り出さんと力を込めた晴明のチェーンソーをその手元から抑え込み、攻撃を許さない。力と力の拮抗に、紅葉の腕の筋骨は悲鳴を上げるも、その激痛に歯を食いしばって耐えていく。
「……これはなんと。全く動かせませぬ……」
 彼我の腕力の拮抗に思わず驚愕に漏らした声。それすらも何処か涼やかではあったものの、紅葉はそんな言葉は全く聞いていなかった。
「……左もあるのよ!」

 チェーンソーを抑え込む右手の甲を基点に、紅葉は渾身の力を込めて強引に未だ空中にある自身の身体を捻り、無理矢理に軌道修正。そのまま生まれた遠心力にて竜巻の如く大きく一回転、加速させた勢いを落下途中の慣性に割り込み、その勢いを殺すことなく増幅させれば、そのありったけの力を載せた左の拳をいけ好かないその男の顔面に思い切り叩き付けてやった。
 左拳に返ってくる確かな手応えと共に吹き飛ぶ陰陽師の身体。それを見送る紅葉は、そこから一拍遅れてなんとか体勢を整え、地に膝を突くような格好で少し危うげに着地、そのままゆっくりと立ち上がりながら、再び身構える。表面上はそうでもないが、全身の筋肉は既にズタボロだ。早く帰ってゆっくり湯船に浸かりたい気持ちだが、まだまだそれは望めぬ話だろう。

 低く唸る駆動音の二重奏と共に、大地に突き立てられた二振りのチェーンソーが床板を咬み削り、荒々しく引き裂き吹き飛ぶ最中の陰陽師の身体を地に縫い付ける。距離にして十数メートルほどはあろうかという禍々しい轍を刻みつけて、ゆっくりと陰陽師は立ち上がり、床板に噛み付きながら唸り続けるチェーンソーから手を離すと、静かに赤く腫れ熱を疼かせる頬を確かめ手で撫で―― そして血の濃く混じった唾と共に、足元へと何かを吐き捨てた。
「賽を振らずしてどのような敵にも容易く勝てる。……そんなつまらぬ生き物に成り果てたとこの身を嘆いてばかりおりましたが……いやはやどうして」
 小さく乾いた固い音を立てて、床板に転がり落ちたそれは、一本の白い奥歯だった。それに見向きをすることもなく、唇の端を汚す血を拳の甲で拭いながら、安倍晴明は微かに笑った。
「そんなこの身をこうも追い詰めてくれるとは、猟兵……まさに見事。やはり貴公らこそが、私の永らく待ち望んでいたもの……」
そして今ひとたび、地という鞘より抜き放たれるチェーンソーの兇刃。否が応でも高まる緊迫は、安倍晴明の中に巣食う長きに渡る虚しさを跡形もなく吹き飛ばしていた。彼の構えた低く唸る異形の刀剣による兇悪な二刀流は、いよいよ最大の殺意という歓喜と共に、対峙する猟兵たちへと振るわれようとしていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴァシリッサ・フロレスク

全く、卦体な趣味してやがる。色男が台無しだよ。

刺違える【覚悟】で【捨身の一撃】を狙う。
本命は奴の片腕、若しくは得物の【部位破壊】だ。

「ディア―ヴォル」掃射で遠距離が得手だと思わせ、
白兵戦へと【おびき寄せ】る。

奴のチェーンソー初撃は【怪力】を以て「スヴァローグ」で【武器受け】。
その瞬間を【見切り】【早業】で「スコル」を抜き、【カウンター】で【零距離射撃】――

此処までが本命だと思わせる。
が、初撃を貰った時点で2発目が来ることは織り込み済みだ。
【激痛耐性】で凌ぎ、【だまし討ち】のUCで背後から本命を狙う。

――あばよ色男?名残惜しいケド、続きはオアズケだ。
“猟兵(アタシたち)”は、一人じゃねぇのさ。


ウィルバー・グリーズマン
陰陽師がチェーンソーだとか、水晶だとか
さて、突っ込むべきか否か……

まずは先制攻撃ですね
[全力魔法]で『マッドネスソーン』を使用して、チェーンソー剣の刃を粘着化させてしまいましょう
続けて『タイムクリエイト』を使用。安倍晴明とチェーンソーの動きを遅くして、粘着化をよりさせ易くします……そうだ、折角ですし『ブラスト』で水の弾を作り出して、それも粘着化させて放ちましょう

近付いてきたら『シャドウプラン』で影の中に逃げたり、『フラッシュボール』で目を晦ませて、とにかく逃げましょう

もう十分でしょう、【マッドハッター】発動ですよ
ルールは武器を持つな

とにかく妨害妨害のオンパレードで行きますよ
せいぜい怒って下さい


ゲンジロウ・ヨハンソン
○アドリブ歓迎
○連携ご自由に

この世界にチェーンソウって…いやまぁ、わしが言えた義理もないが…。

○先制対策
できるだけ【オーラ防御】で威力を殺し【盾受け】で反らし、こちらも【カウンター】で武器を振るうなどしてできるだけダメージを抑えよう。
が、このダメージが次の一手への布石なんでな、【激痛耐性】で耐えられるだけは受けさせて貰うぞ。
ちと危険じゃが【覚悟】は十分よ。

○攻撃
【激痛耐性】の限界を感じたら、全力の【怪力】で清明を弾き飛ばし距離をとる。
距離をとったら【早業】で【選択したUC】を発動。
もう後戻りはできん、頼むぜ怨嗟ども…書いて字の如く【捨て身の一撃】喰らってくれや男前さんよ!



●水晶の砕け散るとき
「陰陽師がチェーンソーだとか、水晶だとか……さて、突っ込むべきか否か……」
「この世界にチェーンソウって……いやまぁ、わしが言えた義理もないが……」
「禁則事項でございますので」
 ウィルバー・グリーズマン(入れ替わった者・f18719)とゲンジロウ・ヨハンソン(腕白青二才・f06844)の漏らす呟きを耳ざとく聞きつけた安倍晴明は、にべもなくそれ以上の追求を封じ込めた。
「全く、卦体な趣味してやがる。色男が台無しだよ」
 ウィルバーとゲンジロウに続いて前に出るヴァシリッサ・フロレスク(浄火の血胤(自称)・f09894)はそんな言葉とは裏腹に、何処か堅い意志をその眼差しに湛えながら、それまで担いでいた自身の身長よりも長大な『ディヤーヴォル』。悪魔の名を冠する重機関銃を無造作に振るい、その銃口を安倍晴明へと突きつける。が、それよりも尚早くチェーンソーの陰陽師は颶風の如き速度で駆け出し、ヴァシリッサへと肉薄する。

「お褒めに預かり恐悦至極」
「……チ、ィッ!!」

 放つ暇もなかったディヤーヴォルを打ち捨て、咄嗟に引き抜くは巨大な刺突杭『スヴァローグ』。スラヴの太陽神の名を与えられたそれは、本来はヴァシリッサの血液を相手の体内に直接撃ち込む事により、敵を爆発四散せしめ、『輝き清める』必殺の武装である。
 上段よりギロチンの歯宜しく振るわれる巨大鋸刃の前に巨大杭を掲げ、その剛力を持って盾とする。金属の衝突音と共に、その衝撃に焼け焦げた床板へと刻まれた亀裂は一層に深く走り、所々が砕け始めた。いよいよ鳥取城は限界に大きく近付き、静かに崩れ出していく。超高速振動する鋸刃に噛みつかれ、耳障りな異音と共に杭が夥しい火花を散らす。

「……大したパワーだよ、全く。……けれどこいつはどうかな!」

 互いの膂力が真っ向よりぶつかり合う事により生まれた僅かな拮抗。その最中に、思い切りよくスヴァローグを構えた片手を捻り、勢いを流すヴァシリッサ。遊ばせたもう片手がその一連の動作に繋げた腰後ろより引き抜いたのは、取り回しを重視して切り詰めたソウドオフ仕様のリボルバーショットガン『スコル』。まともな相手であれば、回避など望める筈もない超至近、晴明目掛けて真っ直ぐに突き付けたショットガンの銃口が鈍く煌めき、回転弾倉ががちりと廻る。
 ――――ばすん、ばすん。
 轟音響かせ、至近より撃ち込まれる散弾。然し、恐るべきは安倍晴明、その膂力と技量。
まるで十字を象るように、瞬時に己を護る盾として交差し重ねた鋸刃の腹が撃ち込まれた散弾の塊を弾き、防ぎ損ねた幾つかに肉を削がれ、抉られながらも、続けて舞うように繰り出す左右からのコンビネーションにて、ヴァシリッサの胴が無惨に引き裂かれ、血の噴水が飛沫を上げる。

「……くそっ、たれ……!」
「どうやら此処までのご様子。トドメは後ほどゆっくりと……。無作法はどうぞお許しくださいますよう……」

 足元に広がる血溜まりにゆっくりと崩れ落ちるヴァシリッサ。倒れる事は辛うじて堪えて意識こそ保ってはいるものの、これ以上激しく動き続ける事は暫く困難であろう。最早脅威には非ず。そう判断したか視線を残る二人に向ける晴明。
(その余裕もせいぜい今のうちだよ、色男……)
 自分から目を離し、そのまま離れていく陰陽師の背を睨むヴァシリッサは、そう胸中で呟きながら瞳を閉ざした。

 ほぼ同時に、ウィルバーは抱えた魔本『アルゴ・スタリオン』を無造作に捲り、開かれた頁に記された魔術をちらりと覗く。頁に記された文字が眩く光輝き、ウィルバーが咄嗟に注ぎ込んだありったけの魔力が本より溢れて渦を巻き、晴明の携えるチェーンソーの刃に絡みつく。

「……これは、なんとも面妖な……どのような術で御座いましょうか」
 ふと、興味を引かれたようにその歩みを止める晴明。その隙に、ウィルバーの発動させた魔術『マッドネスソーン』は彼の狙い通り、チェーンソーの回転する鋸刃を粘着化させ、その回転を阻害させる。
「……おわかりですか? こういう魔術ですよ」

 矢継ぎ早に発動される『タイムクリエイト』、更に『ブラスト』。魔本を捲る度に記された術式が発動し、時間の流れを歪めた事で、一層にチェーンソーの回転、そして晴明自身の動作も大きく阻害され、其処を狙って撃ち込まれる水で構成された弾丸が直撃した晴明の身体を大きく濡らし、マッドネスソーンによって弾丸に付与された粘着性によって彼の靴裏は床板へと張り付いてしまった。

「得心が行きました。貴公は、直接的な戦いは不得手とお見受けする」
「それはどうでしょう。とにかく妨害妨害のオンパレードで行かせてもらいますよ。せいぜい怒ってください」

 妨害に比重を置いたウィルバーの戦い方は直接的なそれより脅威度は低い。然しながら、放置を続ける事は得策とは呼べないだろう。そう判断したらしい晴明は床から引き剥がした靴裏より、べったりと粘つく糸を引きながら、ゆっくりとウィルバーへと歩き出す。
 其処に立ち塞がったゲンジロウ。これ幸いとウィルバーは、その巌の如き筋肉の鎧を纏うゲンジロウの肉体が作る影へとその身を潜らせ退避する。

「直接殴り合うのはお任せしますよ」
「……あいよぉ、任されたわい」

 影より響くウィルバーの言葉に頷きながら、ゲンジロウは拳をきつく握りしめ、眼前の陰陽師をまっすぐ見据える。
「お次は貴公…… 宜しいですか、参りますよ」
 そんな言葉と共に、晴明は再び二本のチェーンソーを振り上げる。先にウィルバーの放った魔術による粘着化での妨害を受け、回転速度は大幅に抑えられた鋸刃。そしてそれを操る晴明自身もまた、時間制御と身体に纏わり付く粘着化した水によってその身動きを抑え付けられている。それでも其処に込められた殺気は、まともにその一撃を受け止めれば無事では居られない事を確信させる。傭兵としての勘が、なんとしてでも初太刀を外せと頭の中で喧しくがなり立てている。
(わざわざ騒がんでもわぁっとるわい、ンな事ァなぁ……)

「……おっしゃ、来い!」
 スローモーションのようにゆっくりと振り上がるチェーンソーを静かに見上げながら、ゲンジロウは丹田に力を込め、大きく息を吸い込めば腰を大きく落として身構える。
 直後、振り下ろされるチェーンソーの一撃を、ゲンジロウの左腕のガントレットが強引に食い止める。
 ――――がぎぃんっ……!!
「ぬぅ、おぉぉぉぉッ!?」
 激しい金属音の連なる唸りを上げて噛み付いた装甲表面。自身の練り上げたオーラを纏い補強された装甲で受けても尚、がりがりとその表面をチェーンソーの回転刃が少しずつ削り取っていく衝撃にちりちりとしたものが背筋を這いずっていく。気にするべきはガントレットの耐久性のみならず、相手の攻撃を受け止めた全身そのものがじりじりと押し込まれ、後退していく。
 抑え込んでいたガントレットの装甲がとうとう限界を迎え、腕を覆っていた装甲の裂け目から噴き上がる鮮血。更には駆動する刃がフルフェイスのヘルメットにまで食い込み、耳障りな異音と共に火花を散らしては無惨な向こう傷を斜に走らせる。
踏ん張っていた全身彼方此方の筋肉が悲鳴を上げ、衝突の余波は容赦なくゲンジロウの全身彼方此方を浅く引き裂いていく。
「……ぐ、ぬぅぅぅ!!!」
このままでは押し負ける―― そう判断したゲンジロウは、ガントレットに仕込んだ機関より勢い良く噴き上がる熱を帯びた蒸気の霧を晴明目掛けて浴びせかけつつ、咄嗟に腰後ろに差していた大鉈を引き抜き、渾身の力で相手を蹴りつけ飛び退きながらも離れ際に横払いの一撃を見舞う。
「……なん、のっ!!」
 勢い良く数メートルは吹き飛んだ晴明は、空中で左右のチェーンソーごと両腕を振り回し、駒のように、或いは竜巻のように周囲を抉り切り刻みながら器用にそのバランスを取り、ゆっくりと着地し、ゲンジロウへと向き直る。
 掠めたナタの切っ先によって両断された晴明のヘアバンドがからんころんと転がり落ちる。解き放たれた青みがかった白と紫のグラデーションが織り成す不可思議な色合いの長髪が吹き抜けていく風の中、まるで炎が揺らめくように虚空で踊りはためいていく。
「……おいおい。妨害、マジで入っとるんかこれ……! めちゃめちゃパワフルなんじゃけど!」
「まったく、猟兵の方々は本当に多様でいらっしゃる。次々手を変え品を変え……よくも此処まで私を楽しませてくれるものです……」
「そんなら、次も退屈はさせんわい……。よぉく見とれや!」

 そう吠えるゲンジロウの叫びに答えるが如く、大気が震え―― 足元より巻き起こる熱波がゲンジロウを取り囲むように渦を巻く。
「ぐ、ぅゥゥ……おおぉぉぉあ゛ァァァァァッッ!!!!!!」
 文字通りにゲンジロウの肉体が燃え上がり、それは傷を焼き肉を焼き血を沸騰させ、激痛に耐え忍ぶ術を知るゲンジロウさえ堪らずに喚き叫ぶほどの、想像を絶する激痛を呼び起こす。その焼けただれた傷口からは紫苑色のマグマが次々と絶え間なく溢れ出し、滴り落ちた床の上で周囲を焼き焦がしながら、のたうち回るように藻掻き暴れ狂い、ゆっくりとその質量を増していく。それはやがて、ゲンジロウ自身をも追い越すような巨躯を為し、聞く者全てに陰鬱さを掻き立てるような低い怨嗟の声を絶え間なく上げ続ける溶岩の巨人の姿を形成した。

「……代償は、こんだけでええんか……? 優しいのう……」
「……いやいや、十分すごいことになってるじゃないですか……!」
それまでゲンジロウの影に潜り込んでいたウィルバーが、苦痛と疲労に思わずふらつく彼の身体を慌てて支える。

『怨嗟の鑪(ヒトヨヲコエテナオフミツケラレルフイゴ)』
 ゲンジロウの身体を容赦なく焼き、その傷の内より肉を引き裂き生まれる怨嗟の溶岩で形作られた巨人。
 自身をも苛む熱への恨み言か、或いはこの世に産み落とされた事への呪詛なのか。低い声で延々と終わらぬ怨嗟の言葉を繰り返しながら、足元に位置した晴明を見下ろすその巨躯の背後より、ゲンジロウが吠える。

「もう後戻りはできん、頼むぜ怨嗟ども……!」
巨人が唸り声と共に両腕を振り上げ、頭上で左右の拳を握り組む。その両拳をひとつの鉄槌へと結び、眼前の晴明目掛けて振り下ろす瞬間に、ゲンジロウに肩を貸したウィルバーが、空いた片手で抱えたアルゴ・スタリオンを翳して静かに宣言する。

『―――………はい、一方的なゲームを始めましょう』
粘着化した水を浴び、粘着化させられたチェーンソーを振り回しながら戦い続けた晴明の動き回った後には、蛞蝓の這った後のように粘着いた水の描いた軌跡がくっきりと刻み込まれている。既にウィルバーのユーベルコード『マッドハッター』の発動条件を満たしていた。
 そしてウィルバーによって晴明へと宣告されるたったひとつのシンプルなルール、それ即ち。
「―――― 武器を持つな」

「……何をバカな」
 宣告されたルールを守る必要などない。何故この状況でわざわざ武器を手放すというのだ。
 当然、安倍晴明は指定されたそのルールには従わない。より高まった戦意を確かめるかの如く、手にしたチェーンソー剣の柄をよりキツく握り締める。
「……がっ、は……ぁ……!? こ、これは一体……」
 刹那、彼の全身から次々と血液の噴水が飛び散った。ルールを破ったことによるペナルティが発動したのだ。それは彼の全身彼方此方を内側より容赦なく引き裂き、食い破る。迸る血液が足元を真っ赤に染めて、血の池のように広がっていく。
 武器を手放せというそのルールは余りにも単純だ。だからこそにこれを破れば、そのペナルティの威力は想像を絶する程にまで増幅されてしまう。
 この期に及んで、晴明の表情からは余裕というものが完全に消え去った。
 決して猟兵たちを侮っていた訳ではない。だが、それでもこちらの想定が甘かった事は素直に認めざるを得まい。
「だが、まだ……ッ」
「……いや、終わりだね」

遠くで声が聞こえる。
視線は、遙か先―― 最初に自分が切り倒した女が、血溜まりの中から己を見て笑っている。

直後、50口径機関銃の咆哮が右腕ごとチェーンソーを吹き飛ばしていた。
振り返ったその先には、影がいる。最初にヴァシリッサが打ち捨てたのと全く同じ機関銃を抱えた、亡霊が。
「……ようやく、絶望顔してくれたじゃないか。すっきりしたね」
「此処まで、札を伏せていましたか……」
重々しい音を立ててチェーンソーが床板に噛み付き、そして回転を止めた。
其処には柄を握りしめたまま引きちぎられた晴明の未練たらしくぶら下がり、ゆらゆらと揺れていた。
(……認めよう。やはり私はどこかで軽く侮っていたのだ。……猟兵という存在のことを)

「――あばよ色男? 名残惜しいケド、続きはオアズケだ。“猟兵(アタシたち)”は、一人じゃねぇのさ」
「書いて字の如く【捨て身の一撃】だ! 喰らってくれや男前さんよ!」

 振り下ろされる巨人の鉄槌。最早片腕のみとなった晴明にそれを凌ぐ術はなく。
 ダメ押しの如くヴァシリッサの呼び出した『戦場の亡霊』が叩き込む50口径弾の嵐のような洗礼に、糸の切れた人形の如く嬲られ、僅かな身動きすらも叶わぬ安倍晴明は、灼熱の剛拳によって真っ向より打ち据えられ、熱風巻き起こる衝撃の中、大地へと叩き込まれる。
 その半身は、背に負っていた水晶同様に幾つもの破片となりながら、それでも尚砕け残った上半身が爆ぜてクレーター状に抉れた大地に減り込み―― そんな彼の胴体を遅れて空より降ってきたもう一振りのチェーンソーが無造作に貫いた。

「……本当に、お名残惜しいものですが」
 びしり、とチェーンソーの刃をめり込ませた胴体から走る亀裂が首筋を通り、晴明の頬にまで広がっていく。
「猟兵の可能性、しかと確認させていただきました……。実にお見事……」
 少しずつ身体の末端より細かく砕け散りながら、異装の陰陽師は微かに笑った。
「それになかなか、楽しい一時でありました。……ええ、本当ですとも」
「この私が、もう皆様にお会い出来ぬのはまこと、残念ではございますが……願わくば、次の私ともどうぞ宜しくお付き合いを……」
 そんな言葉と共に彼は眼を閉ざした。風に乱れた髪を整える腕は最早ないが、それももうじき気にならなくなる事だろう。

 ―――――ああ、快なり。

 そんな言葉ひとつを残し、陰陽師『安倍晴明』は跡形もなく砕け散っては風に散り消えていく。後に残ったものは墓標の如く床に突き立った二本のチェーンソーと、激闘に最早石垣と僅かな残骸を残して崩落しきった鳥取城。
 それだけが、此処にあった悪夢のような所業の証人だった。

「…………この城に巣食う怨念とやらは、少しは晴れたかのう」
「さあて……どうでしょうね。寧ろもっと増えたかも知れませんよ」

 口々に言い合うゲンジロウとウィルバーを血溜まりから眺めつつ、ヴァシリッサは独り言ちた。
「次も宜しくだァ……? 当分顔のいい男は見たくないねえ……」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月15日


挿絵イラスト