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街中の狂想曲

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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 雨の降りしきる住宅街――。
 暗く景色へ溶け込むカーキ色のレインジャケットを着た青年が歩いている。耳にイヤホンを嵌め気だるげに歩くその姿は一般人そのものだ。一見すると大学生風の青年。
 その後ろを一人の男が尾行している。トレンチコートを着た会社員風の男は、滴の滴る前髪の隙間から青年を憎悪の眼差しで見つめていた。
 やがて、青年が走り出す。道の途中で曲がった青年を、男も必死に追いかける。だが、小路へ入り込んだ青年の姿は消えていた。男はギリギリと唇を噛み、けれどもすぐに怒りを冷静な灯へ変え小路から出た。
 男が青年を追う理由。それは青年がヴィランであり、男はその被害者だからだ。正確には男の娘が被害に遭った。殺害されたのだ、あのヴィランに。
 ヴィランは歪んだ正義感を持っていた。社会を効率的に稼動させるためには、もっと子供の数を減らして、仕事のオートメーション化を普及しなければならない。
 では、何から始めるべきか。ヴィランの意識は、将来子供を生む可能性のある女児へ向けられた。厄介事の芽を今から摘んでおくのが必然。
 そしてヴィランは雨の日を実行日とし、学校帰りの女児を誘拐して殺すようになった。
 男はかき集めた情報からそれを知った。頼りにならない警察やヒーローに愛想を尽かした、男の執念だった。
「いやっ!」
 悲痛な叫び声を聞き、男は弾かれたように走った。古臭いカーブミラーが佇む分かれ道で、男とヴィランは再びあいまみえる。
 ヴィランの手には失神した女児が。男の手にはサバイバルナイフが。男の側にだけ緊迫した空気が流れた。ヴィランは今の状況をせせら笑っている。男が声を引き絞る。
「ようやく……ようやくこの日を迎えた……!」
 悪しき者に制裁を、天誅を、娘の敵を――。最後に娘の名を呼んだ男は、雄叫びを上げながら水に濡れる地面を蹴った。
「うおああああっ!!!」
 刹那。
「ぐあっ!?」
 天から光線が降り注ぐ。雨を裂いた光線は男とヴィランの中間を穿ち、コンクリートに亀裂と十字の焼印を残した。雨水はコンクリートに残る熱で蒸発し、もうもうと白煙を立ち昇らせる。
『邪魔ハ、サセヌ』
 抑揚のない声が煙の向こうから響いてくる。微かに見える姿、角を生やした白い異形。
 異様な事態に危機感を覚えたのか、ヴィランは足を負傷しへたりこむ男を尻目に逃走を図った。雨飛沫と共に女児はその場に捨て置かれる。異形たちも住宅街の屋根へ飛び移り姿を消した。
「くそっ、くそっ!」
 雨の中、男は拳を地面へ打ちつける。諦めてなるものか。再び憎悪の火を灯した男は、負傷した足を引き摺りながらも、小さくなる背中を懸命に追いかけた。


 グリモアベース内部。アーリィ・レイン(オラトリオの精霊術士・f13223)は、予知した事件の内容に思い切り顔を顰めていた。
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。今回の事件は、ヴィランによるとても……とても不愉快な誘拐事件を一般人が追いかけ、オブビリオンによる妨害を受けるというものです」
 確認されたオブビリオンは、ジャスティスクルセイダーズという集団だ。狂信的な正義に準じるオブビリオンとされている。
「彼らは離れた場所でヴィランと併走し、護衛を行っています。オブビリオンがヴィランを護衛していることから、このヴィランは何者かに操られている可能性もあります。非常に不愉快な事件を起こしているヴィランですが、洗脳が解ければヒーローになる可能性もあるので、殺さずに制圧して下さい」
 オブビリオンたちは護衛を優先しているらしい。そのため、一般人が殺される可能性は低いが、追跡が長引けば負傷の危険は増すだろう。
「男性をその場に留め置くか、護衛をしながらヴィランを追いかけるかは、皆さんにお任せします。次にヴィランの逃走ルートですが」
 アーリィは電子マップを提示する。現場となる住宅街を中心に三キロメートル四方。その中に予知した逃走ルートが赤い点線で表示されている。
 逃げるというよりは、一般人の反応を面白がっているようなルートだ。狭い範囲で何度も右折や左折を繰り返し、悪戯に弄んでいる。
 それでも大通りを目指しているらしく、赤い点線は徐々に大通りへ近付いていた。おそらく、車を奪って逃走する気なのだろう。
「ヴィランを制圧し、オブビリオンを引き摺り出すことができれば、被害の拡大を防ぐことが出来ます。皆様にはどうかお力添えいただきたく思います」
 話を締め括ったアーリィはゆっくりと瞼を伏せた。


ユキ双葉
 何者かがヴィランを操り事件を起こしています。
 被害の拡大を防ぐため、黒幕を見つけ撃破してください。

●第一章
 ヴィラン事件の解決を目指すため、ヴィランを追いかけ制圧します。
 一般人と共にヴィランを追いかけるか、一般人と女児の安全を優先し一度形勢を整えるか、判断はお任せします。
 ヴィランは最初、住宅街を走り回っていますが、最終的には駅前へ通じる大通りへ出ようとします。大通りへ出た場合は適当な車を奪って逃走します。

●第二章
 ヴィランを制圧すると、ジャスティスクルセイダーズが襲ってきます。
 戦いが始まった場合、猟兵とオブビリオンの戦闘を見た住民は自主的に避難します。
 ジャスティスクルセイダーズの数は三体ほどです。

●第三章
 ジャスティスクルセイダーズを倒すと、強大な気配が出現します。
 この気配こそが事件の黒幕です。この黒幕を倒し事件を解決してください。
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第1章 冒険 『ただひたすら加速せよ』

POW   :    怒気を滲ませながら障害物をはね退け一直線に市街を駆ける。

SPD   :    自分の速度を信じ障害物を避けながら市街を駆ける。

WIZ   :    敵の行動を予測し市街をショートカットする。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

メルディー・マカロン
『ヴィランを追いかける』

んもう、ヴィランちゃんは昔からそうなんだから!

おねぇちゃん、そんな風に育てた覚え無いわよ!

いつもの素直な貴方に戻って!(初対面)

貴方を私の『プリンセスハート』で包み込んであげる!(物理的に頭部を執拗に狙う)

鳥さん!リスさん!私に力を貸して!(エレクトロレギオンで攻撃/ディズニ◯ヒロインが如く)

さぁ大人しく…きゃっ!眼鏡…(どじっ子&眼鏡属性)

駄目よヴィランちゃん
逃げようとしてるのよね?
おねぇちゃん、ヴィランちゃんの事だからすぐ分かっちゃうのよ?

そんな事させないんだから!
【時間稼ぎ】はおねぇちゃんの十八番だって、ヴィランちゃんも知ってるわよね?(何度も言うが初対面)




 ヴィランは男の事情など顧みず、男を嘲笑うように走り回っていた。自分は正義の神に愛されている。だからさっきだって何者かが自分を助けてくれた。そう思いながら。
「ヴィランちゃん、どこ行くの?」
 場違いな明るい声。ぎょっとしたヴィランの足が止まる。一人悦に浸っていた思考はあっという間に雨降りの路地へ引き戻された。
 眼前にはほんわかした雰囲気の女性。別の道から追いかけてきたのだろう女性――メルディー・マカロン(バーチャルキャラクターのプリンセス・f20345)は、雨水を跳ね上げ軽い足取りでヴィランへ近付いてきた。
 警戒したヴィランは敵意をむき出しにする。
「ちっ! 誰だお前!? 邪魔するなら殺すぞ!」
「んもう、ヴィランちゃんは昔からそうなんだから! おねぇちゃん、そんな風に育てた覚え無いわよ! いつもの素直な貴方に戻って!」
 邪険にされても凹まないメルディーは、周囲に幾つものハートを乱舞させる。くるくると回転するハートは、雨水を弾きながらヴィランの頭部を目指し飛んでいった。
「まさか、猟兵か!? くそっ!」
 は雨の中、ヴィランは不恰好なダンスを踊るようにハートをかわす。だが、メルディーも諦めない。
「なかなか素直になってくれないのね。それなら、鳥さん! リスさん! 私に力を貸して!」
 数歩後ろへ下がったメルディーは、可憐な仕草で両手を揃えて相手へ向け差し出した。上を向いた手の平から、五十対ほどの機械兵器が召喚される。鳥とリス。機械ではあるが、細かな体のディティールや仕草はよく再現されている。
「お願い!」
 メルディーの声を合図に鳥たちは上空から、リスは足元から一斉にヴィランへ襲い掛かった。一体では心許ない威力だが、集団で襲い掛かられればひとたまりもない。
 鳥は執拗にヴィランを目掛けて滑空し、リスたちは強靭な前歯でヴィランを噛み砕こうとする。
「初対面の相手に何だってこんなっ! 邪魔だっ、どけよ!」
 ヴィランは乱暴に腕を振り回し、纏わりつく機械兵器を払った。小動物たちは次々と雨に濡れた地面へ叩きつけられる。
「やってられるか、こんなこと!」
 背を向けたヴィランに、メルディーは眼鏡の奥で目を光らせた。
「駄目よヴィランちゃん。逃げようとしてるのよね? おねぇちゃん、ヴィランちゃんの事だからすぐ分かっちゃうのよ?」
 ヴィランは今来た道を引き返し、別の曲がり角へ入ろうとする。
「そんな事させないんだから! 時間稼ぎはおねぇちゃんの十八番だって、ヴィランちゃんも知ってるわよね? さぁ大人しく……きゃっ!」
 雨に足を取られたメルディーはその場ですっ転んだ。ついでに、眼鏡も地面へ落としてしまった。
「あっ、眼鏡……」
「何だ? 何だか分からないが助かったぜ……!」
 一瞬の隙を逃さずヴィランは逃走する。一般人と鉢合わせることもなく、大通りを目指すヴィラン。だが、ヴィランの頭上には新たな追跡者が迫っていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルネ・プロスト
ねぇ、このヴィラン頭大丈夫?
脳みその代わりにカステラ詰まってない?
これ将来的に高齢化からの衰退コースじゃないの?

ルネ的には至極どうでもいい相手だけど
死霊達(お友達)のお手伝いもたまにはしないと、ね

このヴィランを怨んでる死霊達を集めてルネに憑依・精神同調させるよ
同調によって得られた憎悪を元にUC発動、悪霊化
わざわざ地上で追いかけっこなんて馬鹿みたい
逃走経路割れてるなら上空から直接襲撃すればいいよね

……死ななければいいんだよね?
じゃ、襲撃ついでに『悪意』を媒介に呪詛による精神攻撃
護衛の反撃は武器受け&カウンター
逃げそうなら死霊飛ばして呪詛で拘束

絶対に逃がさない
被害者(死霊達)の怨嗟、その身に受けろ




 一人の猟兵がヴィランと対峙した頃、現場へ到着したルネ・プロスト(人形王国・f21741)は、八階建てアパートの屋上から、事前に教えられた逃走ルートを確認していた。
「わざわざ地上で追いかけっこするより、上空から直接襲撃すればいいよね。逃走経路も割れてるんだから。……いた」
 猟兵を振り切るヴィランを見つけたルネは、ヴィランを怨む死霊たちを体へ憑依させる。人の形を失ってなお泣き叫ぶ死霊たちに、ルネは寄り添う言葉を投げかける。
「ルネ的には至極どうでもいい相手だけど、お友達のお手伝いもたまにはしないと、ね」
 同調した死霊達が暗い歓喜に沸いた。ボゥと揺らめく影を纏って悪霊化し、飛翔能力を得たルネは上空へ舞い上がる。
「……絶対に逃さない」
 呟き、そして一気に降下――。
「!? うわああああああっ!」
 130km/hで降下してきたルネの攻撃は砲弾にも等しい。まず、降下の衝撃でヴィランの体は派手に吹っ飛び地面へ縫い付けられた。
 次いでルネの鎌がヴィランの体を捉え、死霊たちの怨憎を心の中にまで注ぎ込む。
「う、ぐっ、くっ……」
「ルネの、わたしの友達を傷つけた報い。被害者の怨嗟、その身に受けろ」
「ふざっ、ふざけるなっ……! 俺はっ、正義を執行、するんだ!」
 顔を青褪めさせながらも悪あくヴィランを、ルネは冷ややかに見つめた。
「ねぇ、頭大丈夫? 脳みその代わりにカステラ詰まってない? というか、その『正義』って、将来的に高齢化からの衰退コースじゃないの?」
 ヴィランは答えない。いや、答えられない。
 浅からぬ傷、汚染される精神。命は奪われずとも、精神を攻撃されたヴィランはのたうち回る。これで制圧完了かと思われたその時。
「! やっぱり来た」
 ジャスティスクルセイダーズの一体が、轟音を響かせルネの背後へ着地し、剣を振りかぶった。予期していたルネは振り返りざま鎌の持ち手部分で剣戟を防ぐ。
 自分の手が剣の重みで沈む前に、持ち手部分を素早く横へスライドし、湾曲した鎌の内側に剣を引っ掛け弾き上げる。と、すかさずもう一体がルネへ迫った。
 ルネはその場を飛び退く。その間にヴィランは何とか立ち上がり、よろよろと逃げ出した。
「逃げるの、ダメ」
 ルネは死霊を飛ばしヴィランを拘束しようとする。が、間へ入ったジャスティスクルセイダーズの一体に、死霊を弾かれた。
 大通りへ逃れ路肩に停車していた車を奪うヴィラン。車が急発進すると同時に、護衛たちも素早く引き上げていく。
「邪魔さえ入らなければ……」
 底冷えする眼差しでヴィランの逃げた方角を見つめるルネ。だが、彼女の容赦ない一撃は、ヴィランに確実なダメージを残していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘆名・臣
「お前は足手纏いだ。大人しく安全な場所で休んでいろ」
俺に子どもはいないがその感情末端くらいは理解しているつもりだ
ヴィランは絶対に許せない
然しこの被害者と少女を危険に曝すわけにはいかない

【WIZ】
少女を安全な場所へ避難
男は待機に納得してくれたのならダッシュでヴィランを追跡
駄目なら溜息を吐きつつそこらに置いてあった鍵付きのバイクを拝借、後ろに乗せながら追跡
レインが示してくれた電子マップの記憶を頼りに行動
もし被害者と共に行動している場合は、有事の際は最優先に庇う
追い付いたらヴィランにグラップルで押さえ込み
車を使って逃走しようものなら、暗殺、スナイパー技能を駆使してタイヤに鉛玉をぶち込む

/アドリブ歓迎


榛・琴莉
「我々の目的はヴィランの確保になります」
なので貴方に彼を殺させるわけにはいきません。
ただの悪党ならまだしも、洗脳されている可能性があるので。
それにこのまま追って、あちらを刺激するのは得策でないかと。
今連れられている子に危険が及ぶかもしれません。
納得出来ない事は重々承知ですが、どうか聞き入れていただきたく。

「仕事です、Ernest」
敵の逃走ルートと、先回り出来るショートカットを演算、予測。
一度その場を離れ、男性が追跡しただろうルートとは別方向から追跡。
子供の安全を考えると、気付かれる前に不意打ちで仕掛けるのが良いかと。
分散して追うなら他の猟兵の方にもデータをお渡しします。
受信できる端末あります?




 雨足が酷くなる中、男は足を引き摺って歩いていた。男の足からは血が溢れ、血溜まりが出きては雨に流されていく。
「奴を、奴を殺さなければ……」
 悪鬼の如き様相で男は進む。その行く手を遮るのは凛と佇む影。
「それはいけません」
「!?」
 しんしんと降り積もる雪を思わせる声に、男は思わず足を止めた。モッズコートで雨を凌ぐ少女――榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は、自身が男の前に出た目的を冷静に告げる。
「我々の目的はヴィランの確保になります。なので、貴方に彼を殺させるわけにはいきません」
「そんなこと知るか! 私の娘は奴にっ……下半身を裂かれて殺されたんだぞ!?」
 男は両手で顔を抑えてその場へ蹲った。琴莉の心はひどく痛む。だが、引けないのは自分とて同じ。相手の衝動を少しでも鎮められるよう、簡潔に且つ抑揚をつけず説明する。
「あのヴィランですが、ただの悪党ならまだしも洗脳されている可能性があります。それに、このまま追いかけてあちらを刺激するのは得策ではないかと」
「だがっ!」
「何より、先程被害に遭った少女が再び危険に晒される可能性もあります。納得できないことは重々承知ですが、どうかお聞き入れいただきたく」
「くっ……!」
 琴莉は頭を下げる。誠実な態度。そして被害に遭った少女への配慮。男の決心は鈍る。けれども男が嘆願を聞き入れるためには、もう一押しが必要だった。
「分からないのなら、はっきり言ってやろうか? お前は足手纏いだ。だから大人しく安全な場所で休んでいろ」
 もう一人、猟兵が現場へ到着する。『鬼のオミ』――仕事熱心な捜査官、蘆名・臣(ムスタング・f22020)だ。
 事件を聞きつけ急いで来たのだろう。僅かに乱れたスーツが雨に濡れるのも厭わず、臣は男へ近付き膝を着いた。琴莉は緊迫した様子を見守っている。
「……あのな、俺に子供はいないが、その感情末端くらいは理解しているつもりだ。これでも一応捜査官だからな」
「……」
「ヴィランは絶対に許せない。然し、お前の命と被害に遭った少女を危険に晒すわけにはいかないんだ。聞き分けてくれ」
「……本当に奴を捕まえてくれるのか?」
「あぁ、誓って。それが俺たちの仕事だからな」
「わかった……」
 男は力なく項垂れた。立ち上がった臣に琴莉が近付く。
「助かりました。私は榛琴莉です。えぇと」
「あぁ、俺は蘆名臣という。捜査官兼猟兵だ。すまないが後は任せていいか? 俺は奴を追いかける」
「分かりました、男性と少女の事はお任せ下さい。あっ、蘆名さん。データを受信できる端末はお持ちですか? ヴィランの逃走ルートと、先回りできるショートカットを予測して、データをお送りできますが」
 琴莉の申し出に臣はバツの悪い表情を浮かべた。
「いや……ちょっと使えそうなものは持ち合わせていない。すまないな」
 その時、間欠泉のような水飛沫が数百メートル離れた場所で上がる。続けて周囲の雨をも蒸発させる閃光が天を貫いた。恐らく、先にヴィランを追っていた猟兵と、ジャスティスクルセイダーズたちの邂逅。
 二人に緊迫した空気が走る。
「あの位置は……大通りに近い場所ですね」
「まずいな、もう車を奪ったかもしれない」
 逃走ルートを示した電子マップの記憶を手繰り寄せた臣は焦りを滲ませる。
「それなら、私にお任せください。……仕事です、Ernest」
 琴莉は手持ちの端末を素早く立ち上げ、戦闘補助AI――Ernestを呼び出した。
 推測されるヴィランの心境、猟兵と邂逅した際のダメージを加味し、逃走ルートと先回りできるショートカットを演算し弾き出す。琴莉はそのデータを臣に見せた。
「ヴィランはおそらく国道を南に抜けようとするでしょう。もし銃をお持ちでしたら、途中に点在する歩道橋から、車の狙撃が可能だと思われます」
「助かった、榛。俺は準備があるから先に行かせてもらう」
「わかりました」
 臣の後ろ姿はあっという間に遠ざかる。琴莉は、少女を抱え上げてから男へ向き直った。
「では、私たちも一度ここを離れましょう」


 臣が危惧した通り、ヴィランは車を奪い逃走していた。だが、猟兵から受けた攻撃が利いているのか、車は蛇行運転を繰り返し周囲の車や通行人を危険に晒している。
「まったく、危ない運転をしてくれる。だが、榛から聞いた通りだな。下手に右折や左折をせず、ほぼ真っ直ぐに進んでいる、か」
 比較的人通りの少ない歩道橋の上、危険運転のまま近付いてくる車を見据えた臣は、ホルスターへ手を伸ばす。撃つのは車が歩道橋を通り過ぎてからだ。
 やがて、車が歩道橋を通過したのを確認した臣は、素早く体を反転し二丁の拳銃をホルスターから引き抜いた。狙うのは後輪二つ。ライフルを用いるより狙いを定めるのは難しい。だから意識を引き金に掛かる指先まで集中させる。
「――っ!」
 激しい雨音が発砲音を掻き消す。弾丸は立て続けにタイヤへ被弾した。ハンドルが重くなったことに焦ったのか、車は急ハンドルの耳障りな音を立て横転した。周囲はにわかに騒がしくなる。
 すぐ追跡を。思うがクルセイダーズが一体、向かってくるのに気がついた。臣は歩道橋を駆け下り、階段の下へ身を潜めて一度やり過ごす。
 その間にヴィランは横転した車から這い出してくる。ざわざわと騒ぐ人々を尻目に、ヴィランは荒い息を零し、血走った眼差しで何かを探した。
「はぁ、はぁっ……そっちへ、行けばいいのか……?」
 マンションが建ち並ぶ一角。先導するように移動する異形の姿を見つけたヴィランは、よろよろと歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宮落・ライア
あっはっはっはっは!初めまして悪党!!
ふーむでも洗脳の可能性もある…か。
じゃあどうするかはオブリビオンを倒してからだね。
場合によっては……。【殺気】

殺気を笑いながら盛大に放ちながら【ダッシュ】で追走。
ジャスティスクルセイダーズが邪魔に来れば、
【野生の艦・見切り・カウンター】で走ったまま相手の顔面を掴んで
力任せに振りそこらに叩きつけて動かなくした後に、
ハンドボールよろしく【怪力】でヴィランに投げ付ける。

ヴィランは場合によっては死なない程度にやってもいいよね。(にっこり
一般人は別に勝手にどうぞ。




 ヴィランが車で逃走を始めた直後、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は現場へ到着した。路地から見える大通りでは、ジャスティスクルセイダーズたちが、雨の中を器用にビルからビルへ飛び移り大通りと併走している。
「なるほどね。あれが護衛で、その近くにヴィランがいると」
 護衛の姿を見たライアはふんふんと頷く。
 ややもせず、大通りから耳障りな音が響いてきた。車が急ハンドルを切ったような音だった。と、護衛たちが進路を変更する。うち一体は大通りの周辺に留まっているようだ。
「ヴィランかぁ。でも、洗脳の可能性もあるから、どうするかはオブビリオンを倒してからだよね。場合によっては……ふふふっ」
 殺気を漲らせたライアは、護衛たちの姿を目印にヴィランが逃げていると思われる方向へ走り出した。
 間もなく、へろへろになりながらも逃げているヴィランを発見した。ちょうどマンションの駐車場にでも身を隠そうとしていたようだ。ライアは高らかに笑い上げる。
「あっはっはっはっは! 初めまして悪党!!」
「ひいいっ!?」
 やたらとテンション高く近付いてきたライアに、ヴィランは悲鳴を上げ逃げ出した。ぼろぼろの体のどこにそんな力が残っていたのか。捕食者から逃げる獲物のように雨の中を走っていく。
「もうやめろぉ! やめてくれぇぇ! 俺が悪かったからぁぁ!!」
 涙交じりの懇願が尾を引く。情けなく醜態を晒すヴィランに、ライアはごく当たり前の言葉を投げた。
「あーのーねー? 今更そんなことを言うなら、最初からやるなってのー!」
「うわああああっ!!」
『オオオオオオッ!』
 ヴィランの危機を察した護衛が、マンションの屋上から降ってきた。ライアは目標を護衛へ切り替える。
「やっぱり来たね!」
 護衛は着地と同時に剣を水平に薙ぎ払う。野生の勘でそれを見切ったライアは、そのまま距離を詰めカウンターへ持ち込んだ。
「そぉれっ!」
『グムッ!?』
 護衛の顔面を力任せに掴んだライアは、護衛の後頭部を地面へ叩きつけ気絶させた。だがそれで終わりではない。放射状に広がる亀裂から護衛を持ち上げ、投球フォーム……もとい投擲体勢を整える。
 狙うはひぃひぃと逃げるヴィラン。一点を狙い定めたライアは、軸足を支えに思い切り護衛を投げつけた。護衛の体は綺麗な弧を描いて飛んでいく。
「うぎゃっ!」
 放物線の着地点でヴィランの声が聞こえた。ライアはすぐさま確認に行く。
「……」
 ヴィランは泡を吹き白目を剥いていた。護衛の下で潰れた体は、もしかしたら骨折しているかもしれない。
「でも、死なない程度には加減したから、いいよね?」
 言い切ったライアの声はどこまでも明るかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ジャスティスクルセイダーズ』

POW   :    ジャスティス・クルセイド
【剣先】を向けた対象に、【天から飛来する十字型の光線】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    ジャスティス・グレートレイジ
【己の正義を妨害する者達への怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    ジャスティス・オーバードライブ
自身に【強大なる聖なる光】をまとい、高速移動と【聖剣からの光線】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:弐壱百

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 高層マンションが軒を連ねる住宅街。猟兵たちの活躍により、ヴィランは無事に制圧された。無論、これで全てが終わったわけではない。
 ヴィランの様子を確認した猟兵は通信端末を取り出し、UDC組織へ連絡を入れた。事件を目撃してしまった民間人へのフォローと、情報の統制を兼ねてのことである。
『オォ……オ』
 猟兵の背後でゆらりと影が立ち上がる。気絶していた護衛の一体だ。護衛の体は闘気に包まれている。護衛対象がいなくなった彼らの目的は、猟兵の排除へシフトしていた。
『ヨウヤク存分ニ暴レルコトガ出来ル!』
 ヴィランを死なせないために力をセーブする必要はなくなった。他の二体も合流し、彼らは臨戦態勢に入る。
『我々ノ邪魔ヲシタ者タチニ正義ノ鉄槌ヲ!』
『アァ、正義ノ神ヨ!』
 ジャスティスクルセイダーズたちは口々に叫び、猟兵たちを葬り去ろうとその身を躍動させた。
ルネ・プロスト
ルネ達の邪魔をした悪い子にもお仕置きしないとね

人形達は死霊憑依させて自律行動

開幕UC
ポーン8体は上空から援護射撃と機動力生かしたフェイントで敵の行動妨害を徹底
でかくても速くても、ルネのポーン達からは逃がさないよ

ルネはナイトに騎乗して機動戦
移動や回避はナイトのダッシュ、ジャンプを使用
攻撃は『悪意』を幽体化させて鎧無視攻撃
ついでに死霊達の呪詛をのせて敵の行動鈍化も狙うよ
必要に応じて武器受けで防御も

ルーク2体は盾受け、かばうで味方の護衛
ビショップ2体は雷撃魔法(属性攻撃、マヒ攻撃)で攻撃

……正義気取りの穀潰し
正義(エゴ)の押し売り程みっともないものはないよ
だからその正義(ゴミ)ごと、粉々にしてあげる


宮落・ライア
はん。正義?大口叩くなよ悪党。
ボクがヒーローだ。ボクが正義だ。
ボクの前に立って、ボクの敵になった時点でお前らは悪だ。

傲慢なまでの宣言

相手が技を出そうとするまで【気合い・怪力】で
斬りあいに付き合う。
そして、相手が技を繰り出そうとするする瞬間の、
その呼吸を【見切り】、【ダッシュ】で瞬時に間合いを詰めて
剣先を刀で上に弾き逸らし、【剣刃一閃】で切り払う。

ねぇ。親玉どこ? わたし今機嫌が悪いから。
ねぇ、ねぇ、ねぇ。
埃に塗れさせて汚しに穢してその胴体ぶち抜けば話す?

倒れようものなら【鎧砕き・二回攻撃・グラップル・殺気】
で破壊しに掛かる。

ああ、あのヴィランを洗脳していたかどうかだけでもいいよ?


テラ・ウィンディア
おいおい…お前らさぁ(天より飛来する声

誘拐とか殺人とか悪い事だから駄目だって習わなかったのか?(【空中戦】で天より見下ろす少女

そういうのを助けるって事はお前らのやってる事は正義じゃなくて悪なんじゃねーのか?

(主張に対し
まぁいいや
何方にせよ…おれは猟兵
お前らはオブビリオン…なら…やる事は一つだろ?

【属性攻撃】で炎を全身と武器に付与
【見切り・第六感・残像】で敵の攻撃は避け乍ら

槍で【串刺し】に

正義ってのはおれはよく解らないけどさ
少なくとも…こうやって殺されそうなら
当然お前らもやられる覚悟は出来てるんだろ?

悪いな
お前らを逃がすわけにはいかないんだ

冷徹に位置を把握
メテオブラスト
【踏み付け】で破壊力増加


バーン・マーディ
ああ…本当に貴様らは何処にでも湧く…
だがいい
貴様らの「正義」はけして通らないと証明しよう(バイクに乗って現れるデュランダルの騎士

【戦闘知識】で敵の動きと周囲の状況を見据え

【オーラ防御】展開

貴様らがヴィランと共にするとは…最早まともな思考回路さえ失っているのか
オブビリオンというのは業が深いな

言っておいてやる
貴様らが庇っていたのはヴィランと断じられた存在だ
つまり貴様らは「悪に肩入れ」していたのだ
認めるがいい

ああ、分かっている
貴様らはそれを認めぬという事はな
まさに死んでも治らぬか

【武器受け】で耐えながらも
ユベコ発動
【カウンター・二回攻撃・怪力・生命力吸収・吸血】で魔剣で何度も切り裂き

これが悪の叛逆よ




『我々ノ邪魔ヲシタ者タチニ正義ノ鉄槌ヲ!』
『アァ、正義ノ神ヨ!』
 高らかな敵の宣言。自分たちが正しいと疑いもしない様子だ。押し付けがましく正義と連呼されるのは癪に障る。苛つきを露にした宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、真っ向から食って掛かる。
「はん。正義? 大口叩くなよ悪党。ボクがヒーローだ。ボクが正義だ。ボクの前に立って、ボクの敵になった時点でお前らは悪だ」
 清々しいほど傲慢なまでの宣言と共に、一体の攻撃を正面から受けきり、そして撥ね退けた。弾き弾かれて噛み合う剣は、硬質な金属音のみならず火花までをも散らす。
 一体と一人が激しく競り合う最中、ライアを狙った一体は駐車場の車を踏みつけ、高く跳躍した。頭上から斬りかかるつもりだったのだろう。しかし、天より飛来する声がその行動を遮った。
「おいおい……お前らさぁ、誘拐とか殺人とか悪い事だから駄目だって習わなかったのか? そういうのを助けるって事はお前らのやってる事は正義じゃなくて悪なんじゃねーのか?」
 驚く敵の頭上に差し込むのは小柄な影。屋上から飛び降りてマンションの壁を大きく蹴り出し、炎を纏わせた槍と共に敵へ突撃するのはテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)
『小癪ナ!』
 空中で体を反転させた敵は、剣を掲げテラを串刺そうとする。
「そんなの当たるわけないだろ!」
 敵の攻撃を見切ったテラは、必要最小限の動作で体を捩り剣先を交わした。顔の横を通り過ぎた切っ先を尻目に、炎の槍は敵の胴体を見事に捉える。
『オオオオオッ!』
 勢いそのまま、テラと敵は駐車場内のアスファルトへ激突した。衝撃はいくつかの車輌を巻き込み吹き飛ばす。同時に新たな援軍が駆けつける。
『マタ猟兵カ!』
 ライアの背後へ回っていた最後の一体。敵の前面へ割り込み挟撃を阻止したのは、バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の駆るトライク型バイクだ。黒をベースとしたバイクは、唸るような排気音と共に暴風を纏っていた。
「ああ……本当に貴様らは何処にでも湧く……。だがいい。貴様らの『正義』はけして通らないと証明しよう」
 バイクから降りたバーンは素早く戦況を把握した。数での劣勢は覆りつつあるが、人数が増えれば建物や通行人への被害も拡大するだろう。
「ぬんっ!」
 バーンは力を高め、味方や視認できる範囲の景観までオーラを広げる。これで戦闘による被害を幾分か軽減できるはずだ。
『次カラ次ヘト面倒ナ連中ダ!』
 兜の下で喚いた敵は聖光を纏い高速移動を開始する。猟兵たちを翻弄するように周囲を跳び回った敵は、一瞬の隙をついてバーンの背後へ接近した。
「……」
『何ダ!?』
 あわや被弾したかと思われた光線は、二体の重装歩兵によって防がれた。ルネ・プロスト(人形王国・f21741)のルーク。
「ルネ達の邪魔をした悪い子にもお仕置きしないとね」
 声を合図に八体のポーンが麗しい姫騎士の姿へと変身する。加えて飛翔能力を得たポーンたちは一斉に上空へと舞い上がり、複雑な軌道を描きながら魔法弾による援護射撃を開始した。雹のように降り注ぐ魔法弾は敵へダメージを蓄積させる。
『クソッ! チョコマカト鬱陶シイ人形メ!!』
 敵がでたらめなステップを踏みながら、ポーンへ向け闇雲に剣を振り回している間に、ルネは半人半馬のナイトへ騎乗したままバーンへ近付いた。
「仲間か。助かった。礼を言う」
 礼を述べるバーンに、ルネは軽く頷いてみせる。
『オオアアッ!!』
「くっ!」
 突如、駐車場から咆哮が響き渡った。テラに突き刺された敵が、反撃とばかりにテラを掴んで駐車場の壁へ叩きつけた。体液の染み出す腹部を庇いながら、敵は自身を鼓舞する。
『笑止! コノ程度ノ傷ナド数ニ入ラヌ。我ラノ行動ヲ止メルニアタワズ!』
『ソウダ同士ヨ! 混乱ヲ引キ起コスコトコソガ、真ノ平和ヘ至ル道。我ラノ正義コソ絶対ナノダ!』
 混乱が平和へ至る道とは。落胆、あるいは失望。バーンは敵に対してそういった感情を滲ませた。
「貴様らがヴィランと共にするとは……最早まともな思考回路さえ失っているのか。オブビリオンというのは業が深いな」
 ルネも嫌悪を露にした。
「……正義気取りの穀潰し。正義(エゴ)の押し売り程みっともないものはないよ。だからその正義(ゴミ)ごと、粉々にしてあげる」
「いたたた……結構タフなんだな? まぁいいや。何方にせよ……おれは猟兵。お前らはオブビリオン。……なら、やる事は一つだろ?」
 痛みを堪えながら体を起こすテラに、猟兵たちは静かに頷いた。


 雨の飛沫を撥ね退ける勢いで、猟兵たちは敵へ攻撃を叩き込んでいく。しかし、敵も負けておらず攻勢の勢いは止まない。
『喰ラエッ!』
 ライアと対峙する敵は力を高める。向けられる剣先。呼吸を吸い込んだ一瞬の溜めを見逃さず、ライアは地面を蹴り勢い良く走り出した。
「甘い」
 十字型の光線が飛来する前に敵との間合いを詰めたライアは、下から刀を振り上げ剣先を弾き逸らし、その場で身を屈めて敵の腹当てを斬り付けた。
『グッ!』
 ガツッと手に強い衝撃が走る。胴体は切断できずとも、鎧を深くゴリゴリと削ぎ取られた敵は痛みに呻く。だが、ライアは容赦なく押し迫った。
『アアアアッ――!』
「ねぇ。親玉どこ? わたし今機嫌が悪いから。ねぇ、ねぇ、ねぇ。埃に塗れさせて汚しに穢してその胴体ぶち抜けば話す?」
 傷口へ刀を押し込みながら、ライアは凄んでみせる。敵は口を開く代わりに頭突きで答えた。
「~~っ!!」
 これはさすがに予想外だった。鐘を落とされたような衝撃と鈍痛に、ライアは思わず蹲る。敵は落とした自分の剣を拾い、離れた場所にいる他の二体へ合流しようとしていた。
「悪いな。お前らを逃がすわけにはいかないんだ」
『!!!』
 敵の行動を予測していたテラは太い街路樹を足場に跳躍する。高さは十分。テラはユーベルコードを発動させ、超重力を纏い敵の脳天を目掛けて一気に降下した。
『グハアッ!』
 鈍く重い音が響き渡り、兜の角が粉々に砕け散る。敵は真後ろへ倒れこんだが、衝撃はそれだけに留まらず、敵を中心に地震のような振動が起こっていた。
 本来なら周辺の地形も破壊されるほどの威力だ。だが、周囲の景観は事前にバーンが保護していたこともあって損壊せずに済んだ。
『オォ……ォ……』
 街中は保護されているが敵は違う。鎧のヒビは全体に広がり、鎧の下にある体はまともな動きを放棄していた。
 ビキビキと全身鎧にヒビが広がる。命のカウントダウンを始めた敵を前に、テラは呼吸を整えながら言った。
「正義ってのはおれはよく解らないけどさ。少なくとも……こうやって殺されそうなら、当然お前らもやられる覚悟は出来てるんだろ?」
 血反吐が兜のヒビから零れ落ちる。敵は兜の下で不敵に笑っていた。答える気はないらしい。
 近付いてきたライアが焦れた様子で敵へ手を伸ばす。頭突きのお返しとばかりに、損壊しかけている鎧の胸当てを鷲掴んだライアは、敵の体を揺激しく揺すった。
「喋る気ない? あのヴィランを洗脳していたかどうかだけでもいいよ?」
 みしみしと嫌な音を立てて胸当てが外れる。剥きだしになったのはかつて心臓があった場所。
『…………』
 急所を晒されても敵は口を閉ざしたままだった。
「……喋る気はゼロか。ならいいや」
 ライアは眼差しに冷めた色を浮かべる。入れ替わる形でテラが一歩前へ進み出た。
「じゃぁな」
 敵の体を炎の槍が貫く。魔力によって燃え上がる炎は、雨の中でも赤々とした勝利の狼煙を上げた。


『オォ、同士ヨ! 何トイウ事ダ……』
『オ前ノ敵ハ必ズ我ラガ取ロウ』
 煌々と燃え上がる炎を見て仲間がやられたことを知った敵は、天を仰いだ。歪んだ正義を妄信する敵にも仲間の死を嘆く心はあるらしい。尤も、それは手心を加える理由にはならない。
「よそ見してる暇ある?」
 ルネの傍ら、ビショップの杖から敵へ向け雷撃が走った。魔力による攻撃は雨の影響を受けず一直線に敵を目指した。
 一体は避け、もう一体は剣を盾の代わりに雷を受け止める。避けた一体がルネへ突っ込んでくるが、ルネの騎乗するナイトは軽やかに前足を跳ね上げ、敵を飛び越えた。ルネはすかさず『悪意』を幽体化させ、背後から鎧の下の肉を斬りつける。
 一方、剣を振り回して雷を霧散した敵は、聖光を纏い一直線上に狙いを定めた。対するは魔剣を携えるバーン。
『死ネッ!』
「ぐっ!」
 ガキィン――と互いの獲物がぶつかり合う。闇夜の如く漆黒を押さえ込む聖光。バーンの踵はじりじりとアスファルトを削り、後ろへ下がっていく。それでもバーンは懸命に耐えた。
「ルーク」
 見かねたルネはルークを護衛に入らせようとするが、バーンはそれを無言で制した。敵は愉快だと言わんばかりに笑い出す。
『アレホドホザイテソノ様カ。猟兵トイウモノハカクモ脆イ!』
「……よく動く口よ。この際だから言っておいてやる」
『ヌッ!?』
 バーンの全身を漆黒の粘液が覆った途端、光は瞬く間に掻き消された。敵はあからさまな動揺を見せる。
『何ダコレハ!? 力ガ奪ワレル!』
「貴様らが庇っていたのはヴィランと断じられた存在だ。つまり貴様らは『悪に肩入れ』していたのだ。認めるがいい」
『グググッ……違ウ! 我ラは悪デハナイ。クソッ、離セ!』
 敵は苦し紛れに剣から光線を放つが、バーンを守る粘液は暗黒の輝きを増し、光を飲み込むように吸収した。敵は如実に焦り出す。対してバーンには余裕すら感じられた。形勢は逆転する。
「……ああ、分かっている。貴様らはそれを認めぬという事はな。まさに死んでも治らぬか」
『ウッ……』
 轟く覇気に威圧され敵が怯む。カッと目を開いたバーンはガントレットで敵の剣を弾き、圧倒的な力で敵を斬り伏せた。一度、二度。敵の鎧にバツ印が刻まれ、そこから生命力が零れ出す。その力すら吸収してバーンは三度剣を振るった。
「これが悪の叛逆よ――」
『――――……』
 敵の手が救いを求めるように天へ伸ばされた。ぴくりとも動かなくなった躯体が崩れ落ちていく。
『!』
 ルネと対峙していた敵は、仲間がやられたのを確認すると、マンションの屋上へ飛び上がり猟兵との距離を取った。
『何トイウコトダ、何トイウコトダ。我々ノ正義ガ敗レルナドアり得ヌ。オォ――神ヨ、我ヲ守リ給ヘ……!』
 残り一体。その怒りに震える声を聞き入れたのは神ではなく、新たな猟兵だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

榛・琴莉
正義、正義と煩い割に、ご自身ではなく神とやらの正義とは。
「ご大層な名前の割に、随分と薄っぺらいですねぇ」
それに、残念ながら。
罪の無い、力の弱い子供を狙って殺すような人間も。
それを守っていた貴方達も。
世間一般では悪であり、ただの犯罪者なんですけれど。

UCで魔弾を召喚します。
次いで、Ernestが蓄積してきた【戦闘知識】から有効打を探しますが…
正に、怒ると周りが見えなくなる、ですね。
的がデカくなった上に隙だらけじゃないですか。
魔弾の軌道は、撃ち上がってから脳天目がけて落ちるもの。
雨に紛れた弾を見切るだけの冷静さ、残ってます?

敵の攻撃はHaroldで【武器受け】、【カウンター】で氷の【属性攻撃】を。




「正義、正義と煩い割に、ご自身ではなく神とやらの正義とは……」
 敵影を見つけマンションの屋上へ辿り着いた榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は、呆れた口調で呟いた。
「ご大層な名前の割に、随分と薄っぺらいですねぇ」
『!?』
 新たな気配を察知した敵が振り返る。
『クッ、貴様モ猟兵カ……』
 琴莉の姿を見た敵は苦々しく洩らす。
 敵は手負いだが、琴莉は気力、体力ともに充実している。戦局が不利だということは敵にも分かるらしい。相手が僅かに後退する様子を見せた。琴莉はすかさず挑発する。
「それに残念ながら、罪の無い力の弱い子供を狙って殺すような人間も、それを守っていた貴方達も、世間一般では悪でありただの犯罪者なんですけれど」
「猟兵風情ガ……我ヲ愚弄スルカ!」
 怒りに満ちた声で敵が叫んだ。爆発した感情は力となって敵の体を肥大化させる。二の腕や上半身、太腿が歪に膨らみ、暴れ牛のような見た目になる。そこに騎士としての荘厳さはない。
『ウルアアアアッ!!!』
 ドシドシと突進してきた敵は、力のまま剣を振り上げ琴莉を叩き潰そうとした。避けてなお風圧が琴莉を襲う。剣の沈み込んだ場所は床材が剥がれ、破片が浮かび上がり飛び散っていた。
「正に怒ると周りが見えなくなる、ですね。的がデカくなった上に隙だらけじゃないですか。おっと」
 二度目の剣戟を、コートの内側から飛び出した『Harold』が、水銀のような翼でいなす。剣の軌道を変えられバランスを崩す敵。琴莉はすぐさま氷の魔弾を打ち込んだ。
 グゥ、と呻く声が聞こえて、攻撃は効いていると判断する。
「氷、効くみたいですね。……Ernest」
 ガスマスクへ住み着いたAIへ呼びかける。レンズの内側で鳥が飛び去り、間髪入れず
いくつかの演算結果が表示された。
 有効的な魔弾の形状。ジャベリン――投槍。あるいは先端を硬く尖らせた氷柱。攻撃方法。上空からの一斉投擲。雨による錯視効果大。
「――OK」
 琴莉は魔弾の生成を開始する。不恰好なままの敵は、やはり攻撃のあとに同じ過ちを繰り返した。重心が崩れたことによる前のめり。無防備になる瞬間を狙い琴莉はユーベルコードを発動させる。
「雨に紛れた弾を見切るだけの冷静さ、残ってます?」
 冷たい気配は一斉に上空へ。ミサイルのように打ち上がった魔弾は、雨に紛れて敵の頭上へ次々と降り注いだ。
『オオオッ! オオオオオオッ!?』
 歪になったせいでひび割れた鎧の隙間に、氷柱は容赦なく突き刺さる。力を大きく消耗した敵の体は元に戻り、雨溜まりにはひび割れから滲み出た血が広がった。
「さて、そろそろ止めを――っ!?」
 琴莉は息を詰める。欠けた角を前面へ押し出した敵が体当たりを仕掛けてきた。かろうじて避けたものの、敵はそのまま逃走を図る。
「待ちなさい!」
 声を張り上げる琴莉。屋上から飛び降りた敵は渾身の力を持って遠ざかる。だが、それは敵にとって悪手であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘆名・臣
それがお前達の正義であるなら、否定する道理はない。
だがな、俺にも譲れないものがある。
これ以上お前らの好き勝手にさせてたまるか!

◆行動
お前らにも正義があるように、俺にも譲れない"正義"ってもンがある。
真っ向勝負だ。かかってきな。

体力の低い者、もしくは側に誰かいれば気合いで庇おう。救助活動の経験も活かす。
…フン、痛くねえ。

対する俺のユーベルコードは『天雷迅剣』。
この剣閃が、黄泉路へ渡るお前への餞だ。




『ハアッ、ハッ――』
 足を引き摺りながら敵はあてどなく進む。敵の機動力は確実に落ちていた。度重なる猟兵との戦闘。雷や氷柱による攻撃。疲労は蓄積していた。
『コンナ場所デ潰エルワケニハ……』
 敵は不意に立ち止まった。前方に一人の男が強張った表情を浮かべ佇んでいる。こいつには見覚えがある。ヴィランを追いかけていた男――。
「お、お前――」
 男の声は震えていた。足には怪我を負っている。自分が邪魔をした時の怪我だ。思い出した敵は闘志を取り戻す。
『……ソウダ、我ハ正義ヲ執行スル。我ガ剣ノ餌食トナレ、名モ無キ人間』
「ひっ……!?」
「危ない!」
 十字型の光線が飛来するのと同時に、立ち竦んだままの男を何者かが庇った。
 蘆名・臣(ムスタング・f22020)。彼は抱えた男の体ごと地面を転がり、すぐさま起き上がった。臣の背に庇われながら、男は戸惑った様子で声を上げた。
「あ、あんた、大丈夫か!?」
「フン、痛くねぇさ、こんなのは。それより、お前こそ何故ここへ来た? 安全な場所に居ろといったはずだが」
 口調にはやや男の行動を責める色が混ざった。男は早口で弁明する。
「邪魔をするつもりはなかったんだ! ただ、事件の終わりを見届けたかった……」
 項垂れた男を見た臣は雑に頭を掻いた。男の背景を考えれば仕方ないかもしれない。
「終わったら報告してやるから、ちょっと離れててくれ」
「あ、あぁ」
 臣の言葉を聞いた男は足を引き摺って離れていく。男の退場と入れ替わる形で、剣を引き摺った敵が近付いてきた。敵は臣の前で足を止める。距離にして約三メートル。
『邪魔者ハ殺ス』
 鬼気迫る言葉に、臣もまた真剣な表情で返す。
「……お前らにも正義があるように、俺にも譲れない『正義』ってもンがある。真っ向勝負だ。かかってきな」
 力と力は真正面からぶつかり合った。競り合う中で敵は声を枯らして叫ぶ。
『危険ヲ知ラナケレバ、安全ヲ実感スルコトハデキナイ! 貴様ラハ何故ソレガ分カラヌ!?』
「それがお前達の正義であるなら、否定する道理はない。だがな、俺にも譲れないものがある。これ以上お前らの好き勝手にさせてたまるか!」
 敵の一撃を避けた臣は、刀を持つ手に力を込めた。一閃。鋭い稲妻のような輝きが敵の脇腹を斬り上げる。
『ガ、ハッ――』
 脆くなっていた敵の鎧は砕け散り、血飛沫が地面へ広がり雨水に流されていった。敵は剣を地面へ突き刺し、膝を着く。立ち上がろうとした足はもつれ、敵は地に伏してそのまま息絶えた。
 はっ、と呼吸を整えた臣は空を見上げる。
「倒したか」
 雨は小降りになり、雲間からは僅かな光が見え始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『正義の敵』

POW   :    悪の薔薇
自身の装備武器を無数の【白い薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    破壊の薔薇
【青い薔薇を纏った十字槍】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ   :    絶望の薔薇
【殺気を放つこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【放った殺気を変換した黒い薔薇の花弁】で攻撃する。

イラスト:桐嶋たすく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は満月・双葉です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 分厚い雲の切れ間から差し込む太陽の光が、カーテンのように揺らめいている。
 雨上がり、濡れたままの地面と光のコントラストは幻想的だ。だが、女は美しい光景に目もくれず一言呟いた。
「愚かね」
 女――正義の敵、と呼ばれる存在は、悪事に失敗したヴィランや、事切れたクルセイダーズたちを見てそう評した。眼差しには憐憫の色が浮かんでいた。
「適当なところで切り上げればよかったのに。やられてしまっては元も子もないわ」
 正義の敵は黒い翼をはためかせた。羽に縋り付いていた僅かな雨水が、放物線を描き落ちていく。マンションの屋上からふわりと舞い上がり、地面へ降り立った敵は猟兵たちを前に宣言した。
「平和であるための必要悪こそ、本当の正義だと思わない? と言っても、貴方たちには受け入れられないでしょうけれど」
 十字架に似た杖が振り上げられ、周囲に薔薇の花びらが舞い上がる。そして、花びらは鋭い気配を伴って猟兵たちへ襲い掛かってきた。
ルネ・プロスト
引き続き人形達に死霊憑依&自律行動
近接戦中心っぽいから基本的に距離とって攻撃

ポーン8体は援護射撃とフェイントで敵を牽制

ルーク2体はナイト2体に其々騎乗
ダッシュ+盾受け+かばうで味方の護衛

ビショップ2体は雷撃魔法(属性攻撃+マヒ攻撃)で攻撃
ルネへの攻撃はオーラ防御で弾く

近寄られたら『悪意』で武器受けしつつ隙を見て距離をとる
敵UCの防御・回避が間に合わない場合UC使用、呪詛を宿した視線で反撃

悪も正義もどうでもいい
ルネはルネの死霊達(お友達)を苦しめた悪い子に報いを与えたいだけ
――君、今回の事件の黒幕なんだってね
じゃあルネの敵だ
懺悔も後悔も必要ない
ただ無残に凄惨に、その身を散らして死霊達の慰みとなれ


蘆名・臣
正義など各々の魂の中にあるもの。
それがお前の正義だというのならそれで構わない。
…だが。
俺はお前の"正義"を受け入れられない。受け入れるわけにはいかない。
それは、俺にとって『人々を護ること』が誇りであり、
──正義、だからだ。

・戦闘
味方を出来うる限り庇おう。気合いと勇気で何とかする。
だがやられっぱなしというのも性に合わねえ。
隙を見て一矢報いてやる。

本命か、いや陽動でも構わねえ。仲間との呼吸を合わせ、しかるべき時に俺が発動するユーベルコードは『紫電神威』。
…だがな、やっぱり、
女に手をあげるのは、気分がいいもんじゃねえな。

(アドリブ歓迎)


榛・琴莉
貴女の正義は世界に望まれなかった。
だから私たちが此処に居て、貴女を殺す。
それだけの話ですよ。
…もっとも、命を尊べない貴女や彼らに、正義を語る資格など無いと思いますけど。

相手がどう出るから分かりませんし…
一般人の方とヴィランをいつでも【かばう】ことが出来るよう、位置取りなどに注意を。
Harold、彼らを優先して防御してください。
敵の攻撃は【武器受け】して、透かさず【カウンター】をお願いします。
【武器改造】で分散すれば、それなりには花びらを防げるでしょう。

あちらがいくつ武器を持っているか分かりませんが…少なくとも一つは花びらになっている今が好機。
氷の【属性攻撃】で心臓を狙い撃ちます。




 白い薔薇の花びらへと姿を変えた敵の武器は、猟兵たちを囲み周囲へ舞い上がる。まるで薔薇の嵐だ。言葉だけを聞けば幻想的な響きだが、花びらは一枚一枚が砥いだ鋼のように鋭利な切れ味を持っていた。
「ルーク、他の人を守って」
 ルネ・プロスト(人形王国・f21741)の言葉を受け、ルークを乗せたナイトが仲間を守るため走り出す。ルネ自身はすでにオーラを薄いドーム状に展開し、花びらのナイフから身を守っていた。
「悪いな、助かるよ」
 蘆名・臣(ムスタング・f22020)の前でルークの盾が掲げられる。ルークは盾を回転させながら花びらを散らしていく。榛・琴莉(ブライニクル・f01205)は『Harold』と連携して攻撃を防いでいる。
(「この花びら、私たちは平気ですが、一般の方々には致命的でしょう」)
 一般人への被害を危惧した琴莉は『Harold』へ呼びかけた。
「Harold、もし一般の方を見かけたらそちらの防御を優先してください」
 ビィィィィ――! と枯れた鳴き声が響き渡る。鳥への模倣はまだ不完全らしい。
「戦いに関係のない余計な人間まで守るの?」
 琴莉と『Harold』のやり取りを見ていた敵がくすりと笑った。小馬鹿にしたような軽薄な笑みまで浮かべている。
「貴方たちって本当に正義感が強いのね。それならなおさら、私の言い分にも耳を傾けて欲しいのだけど」
「お断りします」
 敵の要求を容赦なく突っぱねた琴莉は、ライフルを素早く構え引き金を引いた。氷の属性を乗せた弾丸が、相手の心臓を目掛けて飛び立つ。一撃必殺のカウンター。
「!」
 敵の眼が険しく細まった。身を守ろうにも武器は花びらへ変えている。止む無くドレスの裾を持ち上げた敵は、その場でターンをして銃弾をやり過ごした。が、なびくドレスの先には次の銃口が待ち構えている。ルネのポーンたちだ。
「ルネも嫌。悪も正義もどうでもいい。ルネはルネの死霊達(お友達)を苦しめた悪い子に報いを与えたいだけ」
 ルネの言葉を合図にポーンたちの援護射撃が始まる。一体ずつ射撃の間隔をずらすことによる波状攻撃。命中ではなく撹乱を目的とした攻撃に敵は手を焼く。
 ポーンと連携したビショップの雷撃魔法も加わり、敵は一度花びらを引っ込めざるを得なくなった。わざとらしく溜め息を吐き敵は言う。
「つれないのね」
「貴女の正義は世界に望まれなかった。だから私たちが此処に居て、貴女を殺す。それだけの話ですよ。……もっとも、命を尊べない貴女や彼らに、正義を語る資格など無いと思いますけど――Harold」
 琴莉は上空を旋回していた『Harold』へ呼びかける。
 体全体を硬質化させた『Harold』が、ドリルのように回転しながら降下してきた。敵はその場から素早く飛び退いたが、片方の翼を持っていかれる。痛みに秀麗な顔を顰める敵。穿たれ雨水に横たわる自身の翼を見た敵は、あからさまに舌を打った。
 戦場に再び白い花びらが展開する。内側の花びらは敵の周囲を守り、外側の花びらは猟兵たちを攻撃してくる。
「貴方も他の子たちと同じ意見なのかしら?」
 臣を見た敵は一層優雅に微笑んで見せた。媚を売るのとは違う、力を滾らせた眼差しはまだ余力がある証だ。臣は油断せず銃を構えたまま答える。
「どうかな? 正義ってのは各々の魂の中にあるものだからな」
「そう。なら私の正義にも異論はないわね?」
「……それがお前の正義だと言うのならそれで構わない。だがな」
 臣は銃口を敵へ向けた。
「俺はお前の正義を受け入れられない。いや、受け入れるわけにはいかない。それは俺にとって『人々を護ること』が誇りであり──正義だからだ」
 二つの銃口が立て続けに火を噴いた。同時に、薔薇の花びらたちは敵の手元へ戻り、青薔薇の武器へとその姿を変える。
「……本当につれないわ。ねぇ、そんな遠くにいなくてもいいじゃない?」
 武器を回転させ弾丸を防いだ敵は、言うが早いか猟兵たちの元へ走り寄り、武器を真横に薙ぎ払った。敵の攻撃を『悪意』で防いだルネは後ろへ跳ぼうとする。しかし――。
「駄目よ」
 敵の目が怪しく輝いた。ハッとしたルネが避けるより早く、青い薔薇の武器が振り掲げられる。臣と琴莉は焦ったように声を飛ばした。
「おい!」
「ルネさん!」
「……だいじょうぶ」
 ルネはゆっくりと息を吐き切る。肩、背中、指の先まで完全に脱力したルネは、無防備になった肢体を敵へ晒した。不敵に笑った敵の武器がルネの体を捉える。
「!? 何よコレ……!」
 ズズ……と武器を伝って立ち込めた黒い影に敵は狼狽する。体を貫いたと思った切っ先は、ルネの眼前で止まっていた。武器に絡み付く黒い憎悪と共に。
 次の瞬間、生気を取り戻したルネは敵の武器を乱暴に掴んだ。
「――君、今回の事件の黒幕なんだってね。じゃあルネの敵だ」
「っ!」
「懺悔も後悔も必要ない。ただ無残に凄惨に、その身を散らして死霊達の慰みとなれ」
 ルネの目が暗く輝いて呪詛があふれ出す。ルネの瞳から轟々と溢れる呪詛は、瞬く間に敵を覆いつくし深遠の底へ押し留めようとした。
「くっ、うっ……!」
 もがいて暴れた敵は何とか呪詛を振り切り、すぐさま殺気を漲らせた。殺気は数多の黒い薔薇の花びらへと変わり、猟兵たちをズタズタに引き裂こうと旋回を始める。
 ルネは未だ虚脱状態に近い。臣は素早くルネの元へ駆け寄り、その小さな体を抱え上げナイトへ騎乗したルークの元へ避難した。二人を援護する形で、琴莉は敵へライフルを撃ち込み牽制する。
 他の猟兵たちも敵へ攻撃を加えている。援護射撃を続けるポーンたちに紛れ敵へ近付いた臣は、相手の目がこちらを捉える前に刀を走らせた。
「っ!!?」
 ザッ、と青い布が裂け、黒い花びらたちが弾け飛ぶ。敵の斜め後ろ――臣の手元から放たれた紫電の光は黒い花びらの群れを裂き、敵の脇腹を掠め取った。
「お前、よくもっ……!」
 敵に焦りの色が浮かび始める。
 怒りの篭った目を向けられた臣は、僅かに肩を竦めてみせ「やっぱり、女に手をあげるのは、気分がいいもんじゃねえな」と、ぼやいた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

宮落・ライア
あはははははは!
必要悪は正義?いや、いや…
悪は悪で、正義は正義だけだよ。
平和である為にはね………正義が悪を斬り続ければいいんだよ。
斬って斬って斬って斬って斬って斬り続けて切り捨てればいいんだよ。
ボクの前で敵って名乗ったのなら…わかるよね?

薔薇の花弁で止められる?ボクを止めたいなら…致死攻撃でないと。
【ダッシュ】で花弁が眼中にないように突撃し
【気合い・覚悟・激痛耐性】で強引に突破。
【捨て身の一撃・怪力・剣刃一閃】で切り裂く。

貴女の矜持は?誇りは? 正義の敵を名乗るなら聞かせて欲しい物だね。
敵を名乗るなら、それに殉ずる願いはなんだい?




 敵の体から殺気が溢れ出す。黒い花びらへと転換されたそれは、失った翼の代わりをも務める。黒い花びらたちは、残った翼と対になり敵の背中でざわわざと蠢いていた。
 敵は出し惜しみをせず、全力で当たりにくる。言い換えれば、余裕がなくなってきているということだ。
 他の猟兵たちと共に攻撃を仕掛けながら、ライアは思いつく。敵へ揺さぶりをかけることができれば、戦場はなお優位に傾くだろう。
 ぎゅっと口を引き結んだライアは、気合を入れて飛び出した。花びらの嵐と、雷と、銃撃の音が混ざり合う中、ライアは敵へ向かってダッシュする。
 他には目もくれず、その身が花びらに裂かれても気にせず突撃してくるライアに、敵はぎょっとした面持ちを見せた。
「そぉれっ!」
 花びらの嵐を突破したライアは、両手で剣を持ち渾身の力を篭めて振るった。敵は咄嗟の判断で武器を盾代わりにする。剣と武器がクロスし、ギシギシとせめぎ合う。
「貴女の矜持は? 誇りは? 正義の敵を名乗るなら聞かせて欲しいものだね。敵を名乗るなら、それに殉ずる願いはなんだい?」
 互いに一歩も譲らない中、ライアは挑発めいた言葉を掛けた。敵はキッとライアを見据えながら答える。
「教えたら理解を示すと?」
「さぁね? 内容次第かな」
「……調子に乗らないで欲しいわね。そもそも、私たちのように手を汚す役がいるから、貴方たち猟兵だって活躍できるのだわ!」 
 漫画やドラマで語られるようなチープな台詞。目を丸くしたのも束の間、ライアは「あはははははは!」と笑い出した。ライアが何故笑い出したのか分からない敵は狼狽する。
「な、何よ?」
「それが貴方の正義? それが貴方にとっての必要悪!? いや、いや……悪は悪で、正義は正義だけだよ。平和である為にはね………正義が悪を斬り続ければいいんだよ。斬って斬って斬って斬って斬って斬り続けて切り捨てればいいんだよ!」
「ぐっ……!」
 一瞬の隙を付きライアは敵の体を後方へ蹴り飛ばす。バランスを崩した敵は、翼を広げることで転倒を防いだ。
「ボクの前で敵って名乗ったのなら……わかるよね?」
 ガキンッ――と音が響いて、武器同士が何度もぶつかり合う。
「あっ……!?」
 ライアの攻撃を幾度も凌いでいる間に、敵の武器にはヒビが入り始めていた。武器の損傷を止めようと、敵は焦り気味に武器を白い薔薇の花びらへ変える。
「そんなものでボクを止められる? ボクを止めたいなら……致死攻撃でないと!」
 剣圧で花びらが舞い上がった。加えて血飛沫も舞い上がる。
「あぁ、あぁ……! どこまでもっ、腹の立つ連中……!」
 肩から袈裟状に傷を負った敵は、追い詰められた眼差しで猟兵たちを睨み付けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
「『正義の敵』ですか。立場の違う見方だと『悪の味方』と言われても仕方がないですね。」
【WIZ】で攻撃です。
【先制攻撃】で【高速詠唱】した【属性攻撃】の【全力魔法】の【破魔】属性の【フレイムランス】で『正義の敵』を【フェイント】を掛けつつ【範囲攻撃】でどこに動いても狙えるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「残念ながら、オブリビオンは『骸の海』へ帰ってください。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


ウォーヘッド・ラムダ(サポート)
一人称、二人称、性格等はプロフィールを参照。

■戦闘行動
敵への接近、または敵からの攻撃回避は装備『フライトブースター』『ダッシュブースター』を使用しての回避行動。
防御に関しては装備『アサルトヴェール』>『重厚シールド』>『超重装甲』の優先順位での防御行動。
攻撃に関しては『ASMー7』『LLS-3』をメインにしつつ、他装備も使用。

強襲用ってことで自分への多少の被害が承知済み。

他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は無し。
また、"本目的に関係ない"NPC民間人への攻撃行動は無し。(やむを得ない牽制・威嚇射撃は有り)
あとはおまかせです。
アドリブ歓迎




 深手を負いながらも敵は攻撃を止めなかった。
「お前たちも、道連れにしてやる……!」
 翼を象っていた黒い花びらが、円を描きながら周囲へ広がる。焼け付くような殺意。憎憎しげな眼差しが猟兵たちへ向けられる。
『アサルトヴェール、展開』
 ウォーヘッド・ラムダ(強襲用試作実験機・f18372)は冷静な判断を下す。手数の多い攻撃はまとめて防御した方が早い。
 合図と共にウォーヘッドの体が発光する。装甲の表面からぽつぽつと浮かび上がった光は、透明なバリアとなってウォーヘッドの周囲を覆った。見えない粒子に触れた花びらたちは、ジュッと燃え尽きていく。
「『正義の敵』ですか。立場の違う見方だと『悪の味方』と言われても仕方がないですね」
 火土金水・明(人間のウィザード・f01561)は、自身の体をオーラで防御しつつ、敵の花びら攻撃を回避していた。一度たりとも同じ場所に留まらないのは、敵の接近を避けるためだ。
 他の猟兵たちが攻撃を続ける中、敵の死角へ移動した明は高速詠唱の準備を進める。通常よりは相当早い仕上げになるが、束の間、無防備になるのは仕方ない。と、ウォーヘッドが明の近くへ移動してきた。
『Ms.キナシ、援護する』
「!」
 ブースターを停止するのと同時に、ウォーヘッドは自身と明を囲うようにアサルトヴェールを展開した。詠唱を中断できない明は目配せで感謝を示す。
「……よし」
 呪文を練り上げた明は敵を見据えた。明の状態を確認したウォーヘッドは、アサルトヴェールを解除する。同時に明の呪文が発動した。明の周囲には数多のフレイムランスが浮遊し、雨上がりの道路を鮮やかに照らした。
「残念ながら、オブリビオンは『骸の海』へ帰ってください」
 赤く輝く魔法の槍、その第一陣が敵へ飛来する。迎え撃つかのように黒い花びらが渦を巻いて風を起こすが、全ての槍を吹き飛ばすことは出来ない。続けて第二陣が放たれる。
「ああああああっ!」
 一本の槍が敵の羽を貫通し、続けて二本、三本と羽を貫いていく。羽を焼き尽くされた敵は悶え苦しむが、残り火は敵のドレスと髪を巻き込んで燃え上がった。命の輝きも炎に撒かれ失われていく。
「――っ、ァ」
 最後の力を振り絞った敵が武器を宙へ放り投げた。瞬く間に広がった白い花びらは空を埋め尽くし、猟兵たちへ降り注ぐ。白い花びらとは名ばかりの刃の雨。
『敵影を確認。生命活動の停止を試みる――では行くか』
 脚部のブースターを稼動させたウォーヘッドは、レーザーソードで花びらを焼き払いながら瞬く間に前進した。敵を包む炎に対しては、シールドを盾にしながら突進する。多少の損傷はやむを得ない。
 敵に声はない。しかし、殺意と爛れた体だけは悪霊のように、その場へ留まり続けていた。敵へ本当の終わりをもたらすべく、ウォーヘッドはより大型で高出力のレーザーブレードを生成する。
『ジ・エンドだ』
 シールドの裏から光り輝く粒子の剣を一息に振るい、敵を切り払う。炎の中、敵の体は真っ二つに上下へと分かれた。
 炎は下火になる。文字通り火種は無くなり、敵はその命もろとも燃え上がり、そして消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年10月08日
宿敵 『正義の敵』 を撃破!


挿絵イラスト