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エンパイアウォー⑰~屍みちて

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー #魔軍将 #安倍晴明

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●昏きもの
「もう話を聞きましたか。安倍晴明の所在を掴み、決戦を挑むことが出来るようになったみたいですよ」
 猟兵たちを前にしたシルヴェスター・トラッシュ(月の動脈を噛む・f19453)は神妙な顔で眉根を寄せている。
 先般から展開されているエンパイアウォー。今になって新たな局面を迎えようとしている。
 信長に仕える『魔軍将』の一角。サバイバルという形でエンパイアの各地を巡ってオブリビオンを討伐し続けていたため、今回安倍晴明の居所を掴むことに成功したのだ。
「といっても簡単な話じゃないですよ。安倍晴明は文句なしに強敵です。舐めてかかったら痛い目見るどころじゃないですからね」
 シルヴェスターの声に冗談の色は皆無だ。眼光も、常以上に鋭いものになっている。
 事実強敵である。高威力高命中のチェーンソー剣、無数の水晶屍人の召喚、そして業の怨霊を溢れさせる五芒符。どれもが必ず猟兵たちに先んじて攻撃してくる。
 そう簡単に攻略出来る攻撃ではない。ではないが、対策もなしに向かうのは愚策としか言いようがない。耐えるなり避けるなり他の何かを考えるなり、ともあれ十分に頭を捻らなければ、そもそも自分たちの手順に辿り着くことすら出来ないだろう。
 その上で渾身の一撃を叩き込む必要がある。抜かりなく、強烈に。
「今の自分に飽いてるんだか知りませんが、勝手な真似されちゃたまらないですからね。いい戦果の報告、期待して構わないでしょう?」
 シルヴェスターは端的に説明を終える。
 眼差しに確かな、猟兵たちへの信頼の色を湛えて。


中川沙智
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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 中川です。
 気が付いたらオープニングを書いていました。おかしいな。

●プレイング受付期間について
 今回はオープニング公開時より随時プレイング受付を開始します。
 導入文の追記はありません。

●シナリオ構成について
 第1章:ボス戦『陰陽師『安倍晴明』』
 以上の流れになっています。
 詳しくは下記概要にお目通しください。対策がなければ苦戦必至です。ガチ判定で参ります。基本的には成功出来そうなプレイングを優先的に採用しますが、苦戦・失敗でも採用し、シナリオ失敗となる可能性もありますのでくれぐれもご注意ください。

●プレイング採用について
 今回はシナリオの性質上全部のプレイングを採用出来るとは限りません。
 プレイングお返しする可能性も十分あります。ご理解の上ご参加くださいませ。
 採用は先着順ではありません。

●プレイングについて
 技能を明記する場合は『どう使うか』を記載してください。技能だけを記載・羅列した場合は苦戦及び失敗する可能性が高くなります。

●同行者について
 ご一緒する参加者様がいる場合、必ず「プレイング冒頭」に【相手のお名前】と【相手のID】を明記してくださいますようお願いします。

 では、皆様のご参加を心からお待ちしております。

====================
 陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
 これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
 彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
 対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
 対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
====================
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第1章 ボス戦 『陰陽師『安倍晴明』』

POW   :    双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:草彦

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アンリエット・トレーズ
刻印から触手を最大数出して束ね、盾にしましょう
今回の戦闘中使えなくなっても、後で修理しますから
けれどこれはアンリエットの大事なものです
知っていましたがちょっぴりおこですよ

野生の勘でタイミングをはかり、スライディングなど活用しつつ接近です
こんにちは、せいめい
退屈らしいと聞いたので、遊びにきましたよ
《薔薇城の晩餐》お姫様のために用意したナイフとフォーク
きらきら光るあなたの身体と、どちらが硬いでしょうか
勿論、アンリエットのカトラリーです
だって、お姫様のためなのですよ?
何にだって負けません

本当は怒りにきました
自分の為に他人を苦しめるのは悪いことだと
教わらなかったのですか?
悪い子は蹴っ飛ばしてしまいます



●降り立つは、陰陽の
 怨念渦巻く鳥取城は薄暗く、こびり付くような血錆の匂いがする。
 不穏な気配の中アンリエット・トレーズ(ガラスの靴・f11616)は淑やかに歩を進める。
 その視線の先には安倍晴明がいる。水晶を迸らせた白髪の男。その痩身には如何にも不釣り合いな、対のチェーンソー剣。
「成程、猟兵とやらがお出ましになったということでございますね」
 アンリエットを一瞥して晴明は目を眇める。
 そこには興味の色はない。ただ戯れに時間を費やそうとしている、その程度の認識に思える。
「なれば、少しは退屈凌ぎにでもなりましょうか」
 駆動音が響く。アンリエットは身構える。油断はない。驕りもない。故にただ相対するのみ。
 いざ。
「――――!!」
 晴明の長躯が掻き消える。
 一気に肉薄してきたと知れ、息を呑む。
 アンリエットは咄嗟に刻印を稼働させる。動力は鮮血。瞬く間に現出するは竜の舌に似た数多の触手。最大数を振り絞り束ね、一転に集中させて盾と成す。
 片刃が抉ればまた片刃。肉の千切れる嫌な音と匂い。斬られて次々と落ちていく。娘は眉根を寄せるも目を逸らさない。
 今回の戦闘中使えなくなっても良い、後で修理すればいいだけの話。
「けれどこれはアンリエットの大事なものです」
 垂れた犬耳が不機嫌を示すようにぴくりと動いた。
「知っていましたがちょっぴりおこですよ」
 だから強く床を蹴る。
 勘でしかないが、彼奴は如何にも頭が切れそうな相手だ。時間を費やせばそれだけ不利になるだろう。であれば臆せず攻めるしかない。
「改めまして。――こんにちは、せいめい」
 挨拶は丁重に。
 一足飛びで懐へ滑り込む。低い体勢から、細い指先を振るう。
「退屈らしいと聞いたので、遊びにきましたよ」
 顕現するはお姫様のために用意したナイフとフォーク。
 玻璃はきらめく。無数にかがやく。宙を夥しく埋める切っ先が一斉に晴明へ向かう。
「きらきら光るあなたの身体と、どちらが硬いでしょうか」
 問いかけのくせ、ふと笑みを零した後にアンリエットは薄く微笑む。
 返事なんて必要がない。
「勿論、アンリエットのカトラリーです。だって、お姫様のためなのですよ?」
 何にだって負けません――その言葉の終わりに、硬質で甲高い音が響き渡る。
 眩く飛び散る透明は果たしてどちらか。
 而して破片が飛ぶ最中、晴明が微笑んだのをアンリエットは見た。幾らかは届いたのだろうが、大きな傷を与えるに至っていない。
 初撃を凌ぐ対策としては十分であったが、単純に技と技の相性が悪いのだろう。しかし視線を落とすことなく、アンリエットは前を見据える。
 硝子が砕け、舞い散る様は、昏き鳥取城にあって寒気がするほど美しい。そこに凛と立つ娘は、尚の事。
「本当は怒りにきました」
 決然と宣う。
「自分の為に他人を苦しめるのは悪いことだと、教わらなかったのですか?」
 折れたりしてやるものか。
 そう、悪い子は蹴っ飛ばしてしまいます――生憎こちらは、少々足癖が悪いものでして。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

御形・菘
なるほど厭世系インテリというヤツか、キャラが立っていて素晴らしいのう!

邪神オーラを全身を纏う防御へと回し、可能な限りダメージを減らそう
その上で頭や首、心臓など攻撃を受けたらマズい急所は左腕で確実に防御よ
避ける技量は妾には無い! 故に、痛みも呪詛も覚悟を決めて耐えるのみ!

攻撃を受けた瞬間に、尻尾で身体なり腕なりに巻き付いて拘束してくれよう
そして! 右腕を高く上げ、指を鳴らし、さあ降り注げ流星よ!
はーっはっはっは! 呪詛がどのような効果かは知らんが、命中率を高めて妾(の少し隣)を標的に召喚すれば、何も問題なく当たるであろう!
さあ、どちらが先にブッ倒れるかの我慢比べ、仲良く存分に愉しもうではないか!





「なるほど厭世系インテリというヤツか、キャラが立っていて素晴らしいのう!」
 御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が豪放に笑えば、晴明もくつりと喉を震わせる。
「個性が際立つ、そう解釈して宜しいか。しかし褒められている気は全く致しませぬな」
 菘も口の端を上げた。互いの視線が交錯する。その温度は、零下。
 先に腕を振るったのは晴明だ。
 チェーンソー剣の稼働音が鳥取城に響く。しなやかな長躯が駆ける。両手の刃は何もかもを捩じ斬らんと迫って来る。
 菘が眼前に右腕を翳す。真黒い何かが顕現する。彼女が言うところの『邪神オーラ』が全身を覆う盾を成す。
 加えて頭や首、心臓など急所となる箇所を庇うように左腕を突き出した。
「避ける技量は妾には無い! 故に、痛みも呪詛も覚悟を決めて耐えるのみ!」
「愉快なことを宣いますな」
 晴明があえかに笑み、片刃を振り下ろす。それが抉り斬るその前に、もう片方の刃が呪詛を伴い追従する。
 重く、鋭く、深く深く深く。
 黒を削り左腕を蹂躙するその間に、それでも菘は金の双眸を爛々と輝かせた。想定通りだと言わんばかりに。
「ほう」
 晴明が視線を流したのは自らの右腕へ。そこに絡みついていたのは菘の長い尻尾であった。長時間の拘束は出来まい、恐らくすぐに振り払われる。
 けれどそれが『今』でないならそれでいい。
 菘は散った血に塗れた右腕を高く上げる。指を鳴らす。
 鳥取城の天井を埋めるは天の星。無尽の煌きは世界を覆い尽くす勢いで、その落下点をただ一人の陰陽師に特定する。
「さあ降り注げ流星よ!」
 それはひとつ。ふたつ。数え切れぬほどに流れ落ちる。
 これだけ流れれば願い事だって幾らでも叶えてしまえる。そう、強欲なくらいでちょうどいい。
「はーっはっはっは! 呪詛がどのような効果かは知らんが、命中率を高めて妾を標的に召喚すれば、何も問題なく当たるであろう!」
 正確に言うと『妾の少し隣』だ。力づくで押さえた上で狙い撃てば、流石の晴明も避けることは叶うまい。当然自分も一定ダメージを喰らうことは織り込み済みだ。
 そんな菘の覚悟を汲み取ったのかどうか。
 何故か晴明は少し面白そうに眦を緩めた。
「なかなか珍妙な策を弄しなさる」
「さあ、どちらが先にブッ倒れるかの我慢比べ、仲良く存分に愉しもうではないか!」
 何せ星はまだ幾らでもある。
 どんなに飽いたって離してやるつもりなんか毛頭ないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

雅楽代・真珠
綾華(f01194)と行動
如月の腕から降りて宙に浮かぶ

お前…
庇おうとする綾華を見上げる
けれどそれは少しだけ
知らないの?
僕は怪我をしても可愛いんだよ
庇うお前に微笑おうか

如月が綾華ごと僕を庇う
綾華の怪我が軽く済むのなら
如月は動けなくなってもいい

ひどい、ね…
人形の状況を悲しむように
声とともに溢れるは『人魚の涙』
罪悪感がなくても関係ない
僕がお前の魂を絡め取ってあげる
お前の心を動かしてあげる
誘惑して足止め
僕だけを見て
ずっと見ていてもいいからね

さあ、行っておいで綾華
綾華が駆け出すと同時に後ろに控えていた皐月が姿を消し
綾華の衝撃波に合わせ忍び寄り
小刀で首狙い暗殺を仕掛ける

エンパイアの子等はみんな、僕が護るよ


浮世・綾華
真珠さん(f12752)を庇い盾になる

五芒符は敢えて受け後で戦闘力が高まることを防ぐ
きれーな顔が傷ついたら、大変でしょ?
ふ。成程、そりゃあ失礼しマシタ

美しいものには惹かれるのだ
彼の涙に奪われぬよう前だけを見据え
その隙に上乗せする目眩まし
滴る紅を鳥籠に垂らして吹雪かせる花片

任せろとばかりに神霊体になり駆ける
防げない攻撃があったなら
動ける範囲で腕や足を犠牲にするように食い止める
声は上げない、静かに耐えて
俺はヤドリガミ
主に言われ続けた“唯のモノ”ではねーが
こんなもん、なくたって生きてられる

反動さえ威力に変えて放つ衝撃波
この世界の未来を拓く一手となるように

これ以上、無意味に苦しむ奴らを増やさせねーよ





 雅楽代・真珠(水中花・f12752)が絡繰り人形たる如月の腕から降り、ふわりと宙に浮かぶ。
 その前に毅然と立つは浮世・綾華(千日紅・f01194)だ。ふたりは晴明と相対する。
 涼しげな面差しの晴明の前へ進み出たのは綾華だった。真珠の盾となろうとするのが自然と知れる立ち位置だ。
 恐らく晴明が差し向けてくるは五芒業蝕符。直接セーマン印が結ばれることで喰らう衝撃は勿論だが、その後業の怨霊を生じさせ強化されるほうが厄介だ。
 故に――綾華のかんばせに迷いはない。その怜悧な横顔を見上げ、真珠は僅かに吐息を噛んだ。
「お前……」
「きれーな顔が傷ついたら、大変でしょ?」
 軽妙に嘯く綾華へ、一拍置いて真珠は笑みを転がした。
「知らないの? 僕は怪我をしても可愛いんだよ」
 そうして嫣然と微笑む真珠に、「ふ。成程、そりゃあ失礼しマシタ」と綾華はひらり手を翳す。
「庇い合う、麗しき友愛というものでございますか」
 薄い笑みを刷き、晴明は印を結び始める。真珠はそれを見遣って、前に立った綾華の更に前に、如月を進み出させる。
 結び終わったと同時、五芒符が不穏な光を帯び始めた。
 符が疾駆する。真珠より綾華より先に如月へ到達する。怨念が鋭き刃となり如月を無残なまでに幾重にも斬り刻む。真珠は眉根を寄せる。綾華の怪我が軽く済むなら如月は動けなくなってもいいと思っていた。思っていたが、何とも思わないわけではない。
 如月を越えて尚も抉ろうとする刃が届く前に、真珠は長い睫毛を伏せた。
「ひどい、ね……」
 絡繰り人形の今を悲しむように、嘆くように。憂いを帯びた声と共に零したのはひとしずく。宝石の涙ははらはらと落ち、煌く。それが地に着く前に馨しき魅了の誘いが陰陽師へと迸る。
 狡猾な輩だ。罪悪感は生じないかもしれない。しかし心惑わし魂を絡め取ろうとすることは出来よう。細い指先を翻し、足を止めんと精神の根を微睡みに誘おう。
「僕だけを見て。ずっと見ていてもいいからね」
「ふふ。斯様な傲慢、嫌いではございませぬよ」
 剣呑な応酬の末、促すように掌を向ける。
 ――さあ、行っておいで綾華。
 真珠の視線がそう告げている。美しいものには惹かれる性分だ、その涙にこちらこそが囚われぬよう、綾華は凛然と前を向く。
 同時に晴明も綾華を認識したようだ。次はそちらか、と言わんばかりに。
 再び五芒符が妖しく明滅する。届く前、一瞬の隙を突いて指先に滴る紅を鳥籠に垂らす。さすれば白い花弁が花吹雪く。攻撃を防ぐことは叶わずとも、せめて目眩ましになればいい。
 覚悟はとうに決めている。
 ――任せろ。
 己が身体を神霊体と成し、綾華は地を蹴った。如月が堪えてくれて尚押し迫る攻撃。五芒符の直撃を受けぬよう両腕を顔の前で交差させ、刃の怨念を食い止める。
 斬撃は深く重い。しかし綾華は声どころか呻きさえも上げなかった。静かに、ただ静かに前を見据える。
「俺はヤドリガミ。主に言われ続けた“唯のモノ”ではねーが、こんなもん、なくたって生きてられる」
 声もひたむきで揺るぎない。手にした鍵刀を構え、威力の強さを発条にして弾こうとした。反動さえ黒き波動と、衝撃波と成し放ってみせよう。この世界の未来を拓く一手となるように。
 見届けていた真珠は袖口で口許を覆う。笑みが綻んでしまったから。
 気付けば真珠の背で控えていたはずの皐月の姿がない。
 そう、綾華が馳せる間に、衝撃波と合わせ晴明に肉薄しようとしていたのだ。掌に滑らせた小刀を晴明の喉元に突き立てんと、絡繰り人形の娘は粛々と狙いを定める。
「エンパイアの子等はみんな、僕が護るよ」
「これ以上、無意味に苦しむ奴らを増やさせねーよ」
 ふたりの決意こそが何より強靭な武器となる。
 迫る攻撃の波濤に、晴明が――薄く笑みを浮かべていたとか、いないとか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴォルフラム・ヴンダー
双剣にて神を殺す、か
いいだろう

敵の一撃を「激痛耐性」で受けながら、「生命力吸収」で回復を試み
二撃目は黒剣を掲げ刃で受けとめる
……貴様の呪詛は、その程度か
多少のまじないは「呪詛耐性」で耐えきるとしよう

攻撃後の隙をつき「カウンター」
「残像+見切り」を駆使し、あえて敵の間合いの内へ踏みこみながら
敵の眼をひくよう派手に立ちまわり、渾身の力で斬りかかる

敵が俺に狙い定めたなら重畳
顕現させた黒竜をドラゴンランスに変化させ
攻撃の瞬間に『血統覚醒』を発動
敵背面か側面の至近距離から「串刺し」にする

飽くような生ならば
――その魂、俺が喰らおう


他猟兵で重傷の者あらば「かばう」
共闘で、より行動効果があがるならば手助けする





「双剣にて神を殺す、か。いいだろう」
 ――こちらも神殺しには覚えがある。
 向き直る。
 ヴォルフラム・ヴンダー(ダンピールの黒騎士・f01774)は灰の眼差しを陰陽師へ向ける。そこには気負いはなく、焦りもなく、ただ静かな決意だけが湛えられている。
 その実直な在り様は晴明と真逆に位置しているだろう。故にか、晴明は珍妙なものを見るように笑みで喉を震わせた。
 同じ刃でも相容れぬ。互いの得物を構え間合いを測る。鳥取城の一角に暫しの静寂が落ちた。
 拮抗が崩れるのはほんの一瞬。
 黒剣の切っ先が僅かに下がる。
 地を蹴ったのは晴明だ。チェーンソー剣の稼働音がけたたましく響く。その太刀筋は鋭く、下手に避けようものならその影ごと斬り刻んでしまうだろう。
 しかしヴォルフラムは目を逸らさない。
 黒曜の籠手を突き立てる。それを砕く勢いで晴明はソーチェンを叩き込む。ヴォルフラムの眉根が寄る。奥歯を噛み身体の重心を落とし、ただ痛みを愚直に耐える。削られて終わりになるまいと手に力を籠め、淡い生命力を手繰り奪おうとする。
 その間に二撃目が続いた。晴明が呪詛を帯びたもう一振りのチェーンソー剣を振り下ろした。
 されど初撃を受け止めたヴォルフラムは、続く動線を確かに見極めていた。翳すは黒剣。鍔で受け止めれば金属特有の高い音が鳴る。
 晴明の斬撃は痩躯によるものとは思えぬ重さだ。だが。
「……貴様の呪詛は、その程度か」
 まじないを受け流しながらヴォルフラムが呟いた。対のチェーンソー剣を振るった後だからこそ生まれた硬直時間を見過ごすわけがない。
「!」
 晴明が僅かに息を呑む。
 一旦退くのかと思いきや、敢えてヴォルフラムが肉薄してきたからだ。残像だけを置き土産に、チェーンソー剣を弾いた黒剣で横薙ぎにする。
 その一閃は髪一本の差で晴明に届かない。しかし得物が大きい分身を翻さざるを得ない晴明へ、ヴォルフラムは尚も渾身の力を籠めて斬り上げようとした。
 確かにその時、晴明の注意はヴォルフラム自身に向けられている。
 それこそが見出すべき活路。
「……! 成程、剣だけではないと申されますか」
 晴明はいっそ新しい玩具を見つけたように楽しげに目を細めた。そこに映し出されていたのは、ヴォルフラムが顕現させていた黒竜がドラゴンランスへと変化を遂げたその瞬間。
 そして灰燼であったヴォルフラムの眼が、真紅のそれに染まる様子であった。
 黒騎士の残像が掻き消える。
 反応速度が先程と桁違いだ。低い体勢から側面へ一歩踏み込んだなら、至近距離から逆手で晴明の腹を串刺しにする。
 確かな手応えが、そこにはあった。
「飽くような生ならば――その魂、俺が喰らおう」
「……クク、それはそれは。随分愉快なことを仰るものです」
 血で血を洗う戦場であれば、こうした泥臭い戦いこそが相応しい。

成功 🔵​🔵​🔴​

月夜・玲
何故だろうねこの嫌な感じは
心の奥底から、此奴は倒せって誰かが言ってる……気がする
まあいいや、あんな屍人を作る奴碌な人間じゃないものね
ここで倒して、決着をつけてあげよう

●戦闘
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜剣
迫り来る水晶屍人を『なぎ払い』したり『串刺し』して対処していくよ
その間に両剣にエネルギーをチャージし、水晶屍人が周囲に集まって来たら片方の剣で【エナジー解放】を使用
周囲の敵を殲滅しよう

そのままの勢いで晴明まで駆け抜けて攻撃開始
取っておいたもう片方の剣で【エナジー解放】
1回だけじゃないよ、『2回攻撃』だよ!

さあ、山陰の人たちの苦痛のツケ払ってもらうよ

●アドリブ等歓迎





「何故だろうねこの嫌な感じは」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は眉根を寄せる。あくまで感覚の問題でしかない、そうとしか言えないのだが。
 心の奥底に湧き上がる声がある。
 此奴は倒せと誰かが言っている。そんな気がする。玲は僅かに吐息を噛んで、意識を切り替え視線を上げる。
「まあいいや、あんな屍人を作る奴碌な人間じゃないものね」
 先に倒した水晶屍人の姿を思い出す。抉る感触が蘇る。既に人としての理性を失った存在。
 それを生み出し、そのことにひとかけらの感慨も持たぬような輩だ。
「ここで倒して、決着をつけてあげよう」
 玲の決然とした声に、晴明は薄く微笑んでみせた。やれるのであればなさればよろしい、そんな風情だ。
 構えるは再誕の為の詩、そして還りつく為の力。双剣を手に水晶屍人を迎え撃とう。
 晴明が印を結ぶ度に水晶の破片が散り、そこから水晶屍人が生み出されてくる。凄まじい数だ。何十、下手をすればそれ以上――それは晴明の力量の程を如実に知らしめている。
「でもね、退かないよ」
 群がる水晶屍人へ、一閃を見舞う。そこから横薙ぎに剣を振るえばまず一体が倒れ伏す。続いた個体には一段低く踏み込んで刃で突き刺す。逆手に持ち替え、振り向く反動で背に迫る個体を叩き斬る。
 そうして各個撃破を重ねていく間、双剣に淡い光の粒子が集っている。蓄える。光が収縮し、煌き。
 今だ。
 詩の剣を軸にエネルギーを開放する。そうすれば周囲に押し寄せてきた水晶屍人が真正面から衝撃波を喰らい、呻きを上げて倒れていった。
 さすれば道筋が出来る――そう、奥まった位置で悠然と畳んでいる陰陽師のところまで。
 床を蹴る。晴明の懐に滑り込み、睨む。力の剣を閃かせ光の奔流乗せたままで斬り払う。
 が、晴明は水晶の翼で受け止めた。硬い。刃が軋む、均衡が崩れれば剣のほうが折れる。その寸前まで力を籠め。
「一回だけじゃないよ!」
 手首を返す。勢いそのままに剣を晴明の顎へ突き上げた。人としての貌でありながらやはり水晶の手応え。
 玲は真直ぐに視線を投げかけながら言い切った。
「さあ、山陰の人たちの苦痛のツケ払ってもらうよ」
「なれば、試してみればよろしいでしょう。出来るものであれば、でございますが」
 戦場にあって秘め事を語る距離感で、期せずして互いに不敵に笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

相楽・銀之介
戦場で知り合った櫛橋(f00747)と共に

あれが安倍晴明…?
業を宿した気配はどこか記憶にあるような…
貴方の企み、ここで潰させもらおう
『八頭一式』は八頭の犬神として顕現させ共に戦うよ

先制攻撃対策
こちらの人数には限界がある。効率よく行こう
スピード重視で各個撃破
1のままで倒すのではなく、数体を合体させ撃破する
合体させることで分母を減らす作戦
数字の大きさには注意し、合体させ過ぎないよう注意

錬成ヤドリガミで増やした護符で敵を各結界へ捕縛
犬神たちは全力魔法相当の動きで戦う

多少の破壊は覚悟の上さ
ありがとう。
櫛橋が作ってくれた隙、無駄にはしないよ
オーラ防御でダメージ軽減しつつ
神薙で急所を狙った鎧無視の薙ぎ払い


櫛橋・綴
◆戦場で出会った相楽(f02575)と一緒に行動

…安倍晴明。平安時代の陰陽師だよね
「なんだろう。ここの世界のヒトじゃないみたいだ」
チラリと相楽と晴明の恰好を見比べて

フック付きワイヤーを石垣や…城内ならば屋根等に
引っ掛けて回避を試みる
避けられないのならしょうがない
杖を振るう利き腕さえ動かせるなら何とかなるさ
あいにくこちら【呪詛耐性】もってるもので
負の念に折れないくらいの度胸はある

エレメンタル・ファンタジア
「光属性の雷」の【属性攻撃】

相楽の相手する水晶屍人、数字の大きいやつ優先に
強い光で目くらましを、動きを封じさせる
「相楽、あとはよろしくー」
当たっても当たらなくてもいい
邪魔できればいいんだから





 戦場でまみえた相手と、今は肩を並べて鳥取城を往く。
 その一角で戦闘を展開している陰陽師を見遣り、相楽・銀之介(八頭一神・f02575)は愁眉を顰めた。
「あれが安倍晴明……?」
 胸の奥が変に波打った。業を宿した気配に覚えがあるような気もする。ないような気もする。
 曇った表情を隣で眺め、櫛橋・綴(真鍮撥条・f00747)は首を傾げる。安倍晴明。確かUDCアースでいうところの、平安時代の陰陽師の名前。
 綴も晴明の居住まいに視線を留める。水晶と融合しているような見目というだけではなく、その佇まい自体が。
「なんだろう。ここの世界のヒトじゃないみたいだ」
 つい晴明と銀之介の格好を見比べてしまう。ここで思い馳せても詮無き事だろうが。
 銀之介はふと吐息を零し、淡緑の眼で敵を見据えた。
「貴方の企み、ここで潰させもらおう」
「ええ。さようなことが出来ますものなら、ご随意に」
 晴明は手早く印を結ぶ。
 不穏な光が迸れば、瞬く間に何体もの水晶屍人が出現した。同時にセーマン印が怨念を喚び、鋭い斬撃の波濤となって襲い掛かった。
 銀之介と綴が視線を交錯させ、前を向く。
「こちらの人数には限界がある。効率よく行こう」
 端的に告げれば短い頷きが返る。
 機を計る。水晶屍人が徐々に合体していく様を、慎重に見定めていく。合体させることで数の分母を減らし、効率よく各個撃破を試みる作戦だ。
「今だ」
 あまり合体させ過ぎては力負けする。銀之介は己が本体である八枚一式の護符揃えに霊力を籠める。次の瞬間にはしなやかな体躯の犬神が八頭、その傍らに身構えている。
 合体し図体が大きくなった水晶屍人へ、銀之介が放ったのはユーベルコードで増やした護符だ。それは速やかに疾走し結界を展開する。結界へ水晶屍人を閉じ込めてしまう。
 捕縛した間に、銀之介は犬神たちへと視線を流した。
 高く吠え、犬神らは地を蹴る。足止めを喰らった水晶屍人に深く噛みつき、そのまま千切り倒す。
 だが如何せん水晶屍人は数か多い、合体して尚数十体を超えている。スピードを重視して迅速にいきたいのはやまやまだが、下手に焦れば総崩れになるのは自分たちのほうだ、そう理解した銀之介は奥歯を噛む。
 一方の綴も思わず眉根を寄せた。
 フック付きワイヤーを梁に括り、反動を利用することで怨念で斬り裂く五芒符を避けようとしたが、思いのほか符が齎す衝撃が大きい。
 脚に一筋切り傷が奔る。まだ耐える。直撃は免れた。杖を振るう利き腕さえ動かせるなら何とかなる。何とかしてみせる。
 反動をつけてワイヤーから手を離し、床に着地してから綴はあることに気付く。
「そうか、避けたら――」
 床が斬り裂かれ業の怨霊がわらわらと群がっていたのだ。晴明を見遣る。このまま彼奴にこの場に足を踏み入らせては強化の術を与えてしまう。
 ならば近寄らせぬよう努めるしかない。怨霊の負の霊力に呑まれそうになりながらも、綴は耐性を以て弾き飛ばす。折れないだけの度胸はある。そう、折れたりはしない。
 だから――綴は立ち位置を変えぬまま、紅い瞳を眇めた。指先から迸るは天の光思わす輝き持つ雷。指先で示すのは、銀之介が相対する水晶屍人だ。
 閃光が奔る。
 結界で足止めしていた水晶屍人の、特に数字の大きい個体を優先する。光で目潰しを、そして動きを強張らせたいという狙いだ。
 果たしてその試みは叶う。屍人らが戴く水晶に光が乱反射し、戦場において視界が白く塗り潰されたのだ。
 そう、邪魔出来ればいい。一人で戦っているわけではないのだから、死角を埋め合って戦い抜こう。
「相楽、あとはよろしくー」
 綴は柔和に笑ってひらりと手を振った。銀之介はふと笑みを零す。まるで、以前からの旧知の仲の相手へ向けたように。
「ありがとう。櫛橋が作ってくれた隙、無駄にはしないよ」
 水晶屍人の間をすり抜け、銀之介は戦場を馳せる。晴明が次手に移る前に、一足飛びで肉薄する。阻む怨念は纏った霊光で払い飛ばす。ただ走る。走る。
「ほう」
 晴明が少し愉快そうに眦を緩めた気がした。
 それを見届けることなく、銀之介は神薙を横薙ぎに振るった。急所を抉れという、その覚悟をこそ刃と成して。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

花剣・耀子
そう、……そう。おまえが、それを。そのひとたちをつくったの。
直接手を下したわけではないのでしょうね。
戯れに、只、その手で糸を引いただけだと言うのかしら。

――気に食わない。有り体に言えば、嫌いよ。

召喚された水晶屍人を前に、剣に手を掛けて一閃。
どれだけ周囲が埋め尽くされようと、あたしの体へと届く空間は限られる。
致命傷を狙う攻撃だけは咄嗟に祓うわ。
今死ななければ、其れで良い。
痛みよりも呪詛よりも、怒りの方が強いのよ。

水晶屍人へ、その奥の晴明へと【《花嵐》】
何もかもを巻き込んで斬り果たしましょう。
集まったものを砕いて、砕けたものを砕いて、砕いて。
塵になるまで、何度でも。

おまえは飽いたまま、消えなさい。





「ああ。愉快、愉快。猟兵たるもの、なかなかに私を楽しませてくださいますな」
 上機嫌に喉を震わせる晴明が負う水晶に罅と歪みが生じていることに、猟兵たちは気付いていた。
 少なくとも目の前の晴明を打倒するなら今だと、誰もが本能的に理解している。
 チェーンソー剣の刃で削られた柱、怨念で穢された床。そういったものを順に視線で追っていき、砕け倒れる水晶屍人へと辿り着く。
「そう、……そう。おまえが、それを。そのひとたちをつくったの」
 花剣・耀子(Tempest・f12822)の声は小さくはあれど、決して陰に呑まれない。
 あくまで冷静さを保ったままで耀子は続ける。
「直接手を下したわけではないのでしょうね。戯れに、只、その手で糸を引いただけだと言うのかしら」
「賢しい人間は嫌いではございませぬ。ええ、ええ。……であれば、如何いたしましょうや」
 皮肉気な笑み。
 挑発めいた口吻。
 耀子は眉をぴくりと跳ねさせた。
「――気に食わない。有り体に言えば、嫌いよ」
 期せずして耀子の得物も、晴明と同じチェーンソーの刃だ。咲く花とトリコロールの帯で飾られし機械剣。
 その柄に手をかける。
 逃してなどやらない、絶対に。
「奇遇ですね。私も猟兵は理解し難いと、そう感じていたところにございます」
 晴明が掌を翻す。瞬間、瞬く間に新たな水晶屍人が召喚される。単純な数だけ言えば百はいる。合体すれば数こそ減るが、手強くなるのは間違いない。
 眼鏡の硝子の向こう側を、冷えた青眼で確りと見据える。
 まずは一閃。
 耀子は刃で敵を横薙ぎにする。砕ける水晶には目もくれず、次に襲い来る個体を袈裟懸けに叩き斬る。
 壁に背を預けた状態で、敢えて大きく立ち位置は変えない。どれだけ周囲が埋め尽くされようと、直接と耀子に敵の攻撃が届く空間は限られるのだ。故に眼前の敵を只管屠り、致命傷になりかねない攻撃だけは慎重に避け、祓った。
「今死ななければ、其れで良い。痛みよりも呪詛よりも、怒りの方が強いのよ」
 力を籠めて刃を振り下ろせば、一瞬、視界が開けた。
 水晶屍人が阻んでいたその奥、晴明の姿をその眼差しが捉えたのだ。
 視えている。
 なれば斬れる。
 花も嵐も越えた先、その細い首を掻き斬ってやろう。
 何もかもを巻き込んで斬り果たしてやろう。
 耀子は機械剣を真直ぐに振り抜いた。白刃が奔る。それは合体した水晶屍人を砕き、砕けた破片を砕き、粉塵すら砕き。
 その向こう側の陰陽師をも、塵になるまで何度でも。
「おまえは飽いたまま、消えなさい」
 毅然とした声は、剣筋が確かに晴明を裂いたことを示す。
 晴明はその時薄ら微笑んですらいたようだ。果たして今際の際に飽きは僅かにでも和らいだのか。誰も知らない。少なくとも耀子は、知るつもりなどない。

 水晶がもう一度床に弾け飛ぶ頃、晴明は消滅の時を迎えていた。
 チェーンソーの駆動音がゆっくりと止まり、世界は再び巡りだす。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月16日


挿絵イラスト