エンパイアウォー⑰~死屍舞踊り
●鳥取城の陰陽師
「来てくれて有難う。皆が頑張った成果で水晶屍人を放っていた陰陽師『安倍晴明』の居場所が分かったよ。どうやら鳥取城に陣取ってるみたいだ」
集まった猟兵達に感謝を述べつつ、クーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)はそう告げた。
噛みつく事で同類を増やし、爆発的にその戦力を増やす水晶屍人。それらを作り出す安倍晴明を逃せば後々どんな災厄が引き起こされるか分からない。
「月頭から戦い続きで疲れも出て来てる頃だとは思うけれども、どうか力を貸してほしい」
そしてクーナは戦場についての説明を始める。
「場所は鳥取城……酷い兵糧攻めがあったらしいね。その怨念が好みなのか安倍晴明は城内に一人籠っている。戦いとなれば水晶屍人を召喚したりもしてくるみたいだけど、それ以外は気にしなくて問題ないよ。他には二刀の呪詛を込めたチェーンソーと、陰陽道の符で陣を作ったりして攻撃してくる」
強敵であるため、此方が先手を取る事は難しいだろう、とケットシーは残念そうに付け加える。
「安倍晴明はとても強い。だけれども攻撃を凌げば必ず隙ができる。そこを上手くついてどうにか撃破してきて欲しい」
それじゃ、転送を始めるよ。そういってクーナはグリモアに意識を集中し転送の準備を開始した。
●業を蒐集する存在
薄暗い鳥取城内に白い青年がいた。
闇の中に一人在る姿は光のよう。けれどこの場の何よりも邪悪な存在であった。
その肉体は顔以外の全てが水晶、端正な顔に浮かぶ憂いを帯びた表情は退屈によるもの。
「不死で、繁殖もできて、生存の為のエナジーも必要としない。それは、賽も振らずに勝つようなもの」
そう成り果てた自分自身に飽いているのだと青年、安倍晴明は呟く。
――戯れに山陰を屍人で埋めてみましょうか。
――コルテスが崇める神の偽物でもこしらえて、信長の後釜に据えましょうか。
そんな邪悪な行為すら、献立を決めるような気軽さで口にする晴明だが、ほんの少しだけ猟兵には興味があった。
彼らの怒りならば、もしかすれば晴明の心を動かす程のものなのかもしれない。
微かな期待を胸に、水晶の陰陽師は猟兵の到来を待っていた。
寅杜柳
オープニングをお読み頂き有難うございます。
謎のチェーンソー二刀流陰陽師。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
陰陽師『安倍晴明』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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このシナリオは怨念渦巻く鳥取城に陣取る謎の陰陽師『安倍晴明』を襲撃するシナリオとなっております。
オープニングにもあります通り、相手は必ず先制攻撃を仕掛けてきます。
それに上手く対抗し、反撃する方法の記載がなければ攻撃する間もなく倒されてしまうでしょう。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 ボス戦
『陰陽師『安倍晴明』』
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POW : 双神殺
【どちらか片方のチェーンソー剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【呪詛を籠めたもう一方のチェーンソー剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 水晶屍人の召喚
レベル×1体の、【両肩の水晶】に1と刻印された戦闘用【水晶屍人】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 五芒業蝕符
【五芒符(セーマン印)】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を斬り裂き業(カルマ)の怨霊を溢れさせ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:草彦
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カタリナ・エスペランサ
「ごきげんよう陰陽師。どうせなら犠牲者の冥福でも祈ってやったらどうだい?」
この地を満たす怨念には顔をしかめつつ、慈悲の類とは縁の無さそうな晴明を前に双翼を広げて。
水晶屍人には《空中浮遊》で上空に逃れて有利を取り、《第六感》《情報収集》で知覚を研ぎ澄ませ《スナイパー》で翼から羽弾と《衝撃波》を狙い撃つ事で合体の阻止を最優先。《空中戦》技能を活かし極力敵の攻撃を受けないよう立ち回ります。
攻め手は【失楽の呪姫】で自己強化、黒雷の《鎧無視攻撃》・劫火の《破魔》の嵐を巻き起こす《範囲攻撃》で水晶屍人ごと晴明を攻撃。
接近されればダガーの斬撃とシューズの蹴技で《だまし討ち》を狙います。
※アドリブ・共闘歓迎
シリン・カービン
【SPD】
彼の者は相当悪行を積んで来たようですね。
いずれにしろ、生命を軽んじる者は許しません。
水晶屍人が召喚されたら攻撃を躱して飛び退り、
【ピクシー・シューター】で47本の精霊猟刀を召喚します。
自分を囲む数体の屍人の四肢に複製猟刀を突き立て、
床上スレスレに浮かせて他の屍人への盾とします。
「くっ…!」
セイメイには屍人に群がられて苦戦しているように
見せながらジリジリと接近。
気づかれたら盾にした屍人達をセイメイに突っ込ませ、
再召喚した精霊猟銃47挺の斉射を浴びせます。
斉射を目くらましに私はセイメイの急所を狙撃。
(ダメージを受けている部位。無ければ眉間)
「過去を抱いて沈め、セイメイ」
アドリブ・連携可。
赤星・緋色
電子の海から引き継いだ私のデータがね、確実に仕留めなきゃダメだって言ってるんだよ
完全に消滅させなきゃダメなんだって
戦場は鳥取城の中ってことは白の構造を利用できるね
呼び出すのが戦闘用水晶屍人ってことは戦闘以外の行動には特化されてないはずだし
ならこっちは反撃の時間が稼げるまで逃げ回るよ
ダッシュ、ジャンプ、クライミングの技能を駆使
鳥取城の窓、外壁、屋根を利用して高低差、階層さを利用して相手の攻撃を回避
そして反撃はガジェットショータイム!
今回ご紹介するのは魔導蒸気で駆動するハンマードリル
水晶は固いけどその代わり結晶方位に合わせて衝撃を与えれば大きく砕けるからね
その背中についてるのとか沢山砕いちゃうよ
●闇の中の白い邪悪
暗い城内であった。窓があるにも関わらず、それによる光も殆ど影響していないように思える程に淀んだ空気。
静かに歩く安倍晴明の前に、三人の猟兵がまず現れる。
「ごきげんよう陰陽師。どうせなら犠牲者の冥福でも祈ってやったらどうだい?」
人狼のカタリナ・エスペランサ(閃風の舞手(ナフティ・フェザー)・f21100)は顔を顰め、安倍晴明に相対する。
(「……彼の者は相当悪行を積んで来たようですね」)
城内に淀む怨念、少なくともその一部はこの陰陽師の仕業によるものなのだろうとシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)は思う。
この地に宿る怨念、それを悼まぬどころか利用すらしようとする晴明には何を言っても無駄だろうが。
「電子の海から引き継いだ私のデータがね、確実に仕留めなきゃダメだって言ってるんだよ」
完全に消滅させなきゃダメなんだ、赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)はそう繰り返す。
そのデータが何に由来し、何故そう言ってるのかは分からない。けれどもここで取り逃してしまえば恐ろしい災厄が訪れる事を、相対した印象でも彼は理解していた。
「生憎、冥福を祈る放は私の仕事ではありませんので」
ふう、と陰陽師が気怠く息を吐けば、畳を破り大量の水晶屍人が姿を現す。 見渡す限りに広がる屍人の数は晴明の力の片鱗か。
行きなさい、と無感動に晴明が呟けば水晶屍人は猟兵達へと殺到する。
最初にカタリナが動く。彼女は双翼を広げ天井付近へと浮遊、限界はあるがそれでも地上で囲まれるよりは遥かにましだ。
「いずれにしろ、生命を軽んじる者は許しません」
飛び掛かって来た水晶屍人を躱して跳躍、その肩の水晶を蹴ってシリンは晴明から距離を取り、緋色は即座に隣の部屋、壁に開いた窓から外へと飛び出した。水晶屍人は戦闘には特化しているが追跡はそれほど得意ではない、そう判断したバーチャルキャラクターの少年の推測だったが、
(「結構早い……!」)
術者の力量のせいか、かなりの速度で緋色を追いかけて来る。
いずれも数字は一桁、合体で数字を増やした場合はどうなるかは分からない。一先ず準備が整うまで逃げようと、緋色は城の屋根瓦を蹴った。
城内、カタリナが双翼を羽搏かせれば羽弾と衝撃波が放たれる。狙うは合体を狙う水晶屍人、強化されればそれだけ厄介になる。
狙撃に徹する彼女の背後から一体の水晶屍人――肩の水晶に5という数字が描かれている強化個体が飛び掛かる。柱を登り距離を詰め跳躍したのだ。
しかしそれをカタリナは研ぎ澄まされた知覚で察知、金のポニーテールにも触れさせる事無くひらりと回避する。
準備はもう、十分だ。
「羽根妖精よ、私に続け」
最初にユーベルコードを起動したのはシリン。彼女の言葉と共に彼女の持つ精霊の力を宿す猟刀が彼女の周囲に47本複製される。そしてその数本を水晶屍人の手足に突き立て念力で床すれすれに持ち上げ、続いて飛び掛かって来た水晶屍人への盾とする。
足掻く水晶屍人だが、その四肢に刺さった刃は抜けない。手足を千切り拘束から逃れようとしても四肢をふさがれていればそれは困難。
「ふ、ふふ、あはははははっ! さぁ、最っ高のパフォーマンスで魅せてあげるよ!」
蒼雷を纏ったカタリナが大きく羽搏けば、蒼雷の衝撃波と劫火を帯びた羽根の弾丸が邪悪なる陰陽師へと放たれる。
守りを貫く雷に続く破魔の炎は晴明との間の水晶屍人を焼き焦がしていくが、魔軍将たる晴明は水晶屍人達を合体させ強化、雷炎を防ぐ壁とする。
一方城外。
屋根を軽やかに走り、壁を飛び降り登り、緋色は鳥取城の外壁を自在に駆け巡る。その後ろには水晶を肩に生やした屍人が数体追いかけてきている。
「しっつこいなあ!」
大気を圧縮して駆動力に変える真っ赤なインラインスケートで加速する緋色は、城の構造を利用して高低差を活かして逃げ回る。けれども水晶屍人は時に合体し能力を上げつつ執拗に追跡する。
直接攻撃自体は受けていないが、それでも中々の重圧。
「くっ……!」
水晶屍人を盾にしているにも関わらず、シリンは水晶屍人に群がられていた。むしろ積極的に突き放さないようにし苦戦している様子を見せる。
だけれども、徐々にシリンは前へと進んでいる。苦戦していれば晴明が他へ、カタリナへ意識を向ける瞬間もあるかもしれない。十分接近出来ているならその隙に攻撃を叩き込むというのがシリンの作戦だ。
「いい加減、演技は止めたら如何でしょう」
ばれた、と察したシリンは即座に切り替える。猟刀を突き立てた水晶屍人達を晴明に突っ込ませ、同時にユーベルコードを再起動し再複製を行おうとする。
だがその一瞬の間に安倍晴明は水晶屍人を再召喚、数を一時減らしていた水晶屍人は再び部屋から溢れる程の数を取り戻した。
いつの間にか、緋色は晴明と接触したあの広間の窓へと戻っていた。随分と時間はかかったが、水晶屍人達が屋根を踏み抜き城内へと落ち、その隙に振り切る事が出来た。そこから覗いて見れば、安倍晴明はその向こうにいる猟兵二人に意識を向けているようだ。窓が晴明の背後に在るからか、恐らく緋色には気付いていない。
チャンスは今、緋色がユーベルコードを発動させ、奇妙な形をしたドリル――ガジェットを召喚する。
水晶は確かに固い。けれどもある方向からの衝撃には大きく砕けてないが、このガジェットは衝撃による破壊を目的とした武器である、そう緋色は瞬時理解した。
振り向く前に緋色がそのハンマードリルを叩きつける。
「今回ご紹介するのは魔導蒸気で駆動するハンマードリル!」
その状態で明るく緋色が口上をあげれば、晴明の背中の水晶からぴしりと音がし、根本部分まで入ったひびから大部分が砕け落ちた。
それがオブリビオンの力に関わる部位なのかは分からない。けれども背後からの奇襲に、一瞬陰陽師の表情が険しくなる。
「これはこれは……少々本気を出さねば参りますまい」
晴明が召喚した水晶屍人が緋色へと喰らい付こうとする。追撃は難しいと判断しとっさに後退。
そして入れ替わりに距離を詰めていたカタリナが横合いから不意討ちで突撃、ダガーをその水晶質の肉体に突き立てる。背後からの奇襲に意識が逸れた、その一瞬を狙ったのだ。
血は流れない、ただ眉を寄せた晴明が水晶屍人をカタリナにけしかけ引きはがそうとする。
それに捕らわれることなくカタリナは再び翼を羽搏かせ後方へと跳躍。追撃せんとした晴明だが、ダガーの突き刺さった部位、脇腹に一発の銃弾が突き刺さる。
複製でない、シリン自身の猟銃の弾丸。精霊の力を宿したそれが晴明の体を撃ち抜いたのだ。
「過去を抱いて沈め、セイメイ」
「沈むには、些か足りませぬ」
静かなシリンの言葉、晴明は変わらず平静に返した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
桜井・夕月
○WIZ
【スナイパー】として動く
【第六感】で回避を試みる
蝕符が複数なら【激痛耐性】と【呪詛耐性】であえて喰らって怨霊の数を減らす
即【カウンター】の要領で【クイックドロウ】と【高速詠唱】
撃ち出すのは【破魔】【範囲攻撃】の魔弾
【2回攻撃】で晴明と怨霊(蝕符)を両方狙います
地形を裂く前に撃てたらそれで良し、無理でも溢れた怨霊を強化する前に浄化する狙い
その後は【情報収集、戦闘知識】で【地形の利用】し、戦況を把握できるように位置取り
【医術】で仲間を回復する魔弾を撃ったり【援護射撃】で味方の攻撃の隙を作ったり逆に敵の攻撃を阻害したり
撃つ弾は全てスチームエンジンで威力を底上げ
アドリブ・共闘歓迎
アルトリウス・セレスタイト
飽いたなら帰っておけ
避け得ぬ先制含む自身へ届く攻撃は纏う原理――顕理輝光を最大限働かせ対処
『励起』『解放』で一個体の持ち得る極限まで個体能力を引き上げ、残る全てを行使して迫る
攻撃は破天にて
魔力を溜めた体内に魔弾を生成・装填
全力の魔力を注いだ高速詠唱での装填を『再帰』で無限に循環させ、それら全てを統合
溢れる分もオーラで押し留めて保持し、自身と周囲の球形空間を、触れれば万物一切死に絶える死の魔弾と化す
必要な魔力は『超克』で“外”から汲み上げ供給
そのまま目標へ近接し、一瞬でも捕らえ離脱を封じ、
集積した魔弾の全てを解放
周囲一切を城とそれに宿る怨念諸共消し飛ばす
猟兵が残っていれば警告はする
「飽いていたのですがこれはこれで――」
「飽いたなら帰っておけ」
邪悪なる陰陽師が叩こうとする軽口を、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は取り付く島もなくばっさり切り捨てる。
(「倒さないと」)
桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・f00358)の心にあるのはそれ一つ。スナイパーライフル型のガジェット『月牙』を握る手にも力が籠る。
「さて、次は陰陽師としての本領で相手をさせて頂きましょうか」
晴明が指に挟んだ数枚の五芒符をやかな所作で放り投げれば、猟兵達に吸い込まれるように一直線に飛んでいく。
第六感に従いすぐさま夕月は横に跳び跳ね数枚を回避、けれど全てを躱し切れたわけではなく、一枚の符が夕月の右肩に触れる。
生命を侵食されるような悪寒と虚無感、少し遅れて激痛が右肩から一気に広がった。
痛みは堪えられる。だが、呪詛のダメージが大きく意識が飛ばされそうになった夕月は、月牙を自身の肩に向け破魔の魔力の弾を撃ち込み、呪いに抵抗する。
そして遅れ、夕月が回避した符が城の床へと落ちる。すると城の床が裂け、業の怨霊が溢れだし、城内の陰鬱な空気が実体を持ったかのように重さを増す。
その重みを意に介さず、寧ろ調子が上がったような晴明は優雅に次の符をアルトリウスへと投擲。だが、蝕符の軌道を見切った淡青の光を纏う青年はそれを回避。漂う淡青の光――そのうちの二つ、創造と自由の原理により自身の能力を限界まで引き上げた彼であってもギリギリではあった。
だがその境界は越えた。
アルトリウスの体内に二百を超える青く輝く魔弾が生成される。それを高速で装填し、礎となる原理で循環させようとする。当然無理な量の力は体から溢れるが、それすらもオーラで保持、循環が進めば彼自身とその周囲の空間が魔弾となっただろう。
「ですが、それを放っておくとでも?」
余裕の笑みを浮かべた晴明が一気に距離を詰め、水晶の拳をアルトリウスへ突き込む。循環が十分であったならそれすら阻止できたかもしれないが、今回はそれを阻止できなかった。怨霊により能力を底上げされている事も影響していただろう。
吹き飛ばされ城の壁に叩きつけられたアルトリウスに晴明が追撃の符を放る。
「そうはさせません」
銃声が、二発。
斬り裂かれた地形の影に隠れ二人の様子を窺っていた夕月が、蒸気エンジンを搭載した月牙から魔弾を放ったのだ。破魔の力を宿した魔力の弾は晴明、そして放たれようとしていた符を撃ち抜く。
再び怨霊を溢れさせるわけにはいかない。そう判断した夕月の精密射撃はその目的通りに晴明の攻撃を妨害。その援護射撃により生まれた一瞬の隙を見逃さず、アルトリウスは一息に陰陽師との距離を詰めると伸ばされていた腕を掴み、
「行き止まりだ」
一言、同時に青年の体内に装填されていた青く輝く魔弾が放たれた。至近から放たれるそれは存在根源に直にダメージを与え、砕く弾丸。晴明の強固な存在を砕き切る事は出来なかったが、それでも与えられたダメージは大きい。
周囲に残っていた符が、そして付近に宿っていた重々しい空気が消失する。夕月の破魔の魔弾、そしてアルトリウスの魔弾により、周囲に漂う怨念を消し飛ばしたのだ。
アルトリウスの腕を振り払い、後退する晴明。その表情からはすっかり余裕が抜け落ちていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
霧島・絶奈
◆心情
音に字を宛て、字に音を宛てる
そうして多重な拡がりを得るのは東洋魔術の特権ですね
其を支えに戦えるならば、存外言葉遊びと莫迦に出来ないものです
◆行動
先制攻撃対策にオーラ防御を展開し回避優先
二刀流の怖さは予測の困難さ故、自然に見える範囲で意図的な癖を作り回避の布石とします
負傷は【生命力吸収】で回復
ハルアキラ、貴方のセイメイを蒐集致しましょう
文字通り、総てを…
『二つの三日月』を召喚
生命を弄ぶ者に死の根源を相対させるも一興でしょう
私は【目立たない】事を活用
巨人の影に隠れつつ【罠使い】の力を活かして罠を設置
ある程度設置が進んだら接近
【二回攻撃】する【範囲攻撃】で【マヒ攻撃】を行いつつ、徐々に罠に誘導
ブイバル・ブランドー
陰陽師と聞いて正直どんな武器を持っているのか想像がつかなかったが…中々通好みが得物を持っているじゃあないか。チェーンソーは浪漫がある
pow
先制対策
直接チェーンソー剣を受けるのは危険そうだ。遠隔操縦が可能なビット兵器【ローレンツ】を使う。弾き飛ばすとまでは行かなくても剣の軌道を逸らせば十分避けれるはず。
こちらの攻撃の際にもなるべく直接敵に触れない遠距離系UCを使いたいが…何分城内では距離を取るのも限度がある。
いざとなれば、巻き添え覚悟で零距離射撃を敢行せざるを得ない。機体を呪詛まみれにされるよりマシだ。そんなことされてしまっては、どう修理すれば良いのか我にはとても分からないので…
バルディート・ラーガ
フウム。あっしは生憎と覚えがねエお方ですが
何やら殺気立った猟兵の皆様方が大勢居る様子。
あっしもひとつ、助太刀と参りやしょうかねエ。
戦場に出ましたらば、即座に飛んでくるであろうチェーンソーを警戒。
固く長い尻尾を前へ出して胴を「かばう」、そして即座に自切。
次弾の狙いを切り離した尻尾の方へ差し向けつつ
あっし自身は切断ダメージをかばって後方へ。
ヒヒッ。ありがとうございやす。
尻尾の肉を細切れにして頂いて、喰わせやすくなりやした。
あっしの血管へ流れてンのは、ブレイズキャリバーの地獄の炎。
尻尾へ留まらせた炎が、UCで蛇の形へ転じやす。
その肉はてめエらへくれてやンので
敵サンへ絡みついて燃しちまってくださいな。
琶咲・真琴
【POW】
もう、これ以上
ここに彷徨う人達を利用なんてさせません!
お祖父ちゃん、お祖母ちゃん(familia pupa)
行きましょう!
チェンソーは迷彩で姿を目立たなくした上で
逃げ足・ダッシュ・残像・第六感・野生の勘で撹乱
お祖母ちゃんの光線で目潰しもしちゃえ
ボクの姿を形取った誘導弾による援護射撃で攻撃を誤発させますよ
嵐薙刃
攻撃を避けている時に力を溜め
避け切ったら
高速詠唱・早業で全力の2回攻撃魔法を放つ
属性は呪詛を浄化する破魔
スナイパー・部位破壊・追跡・衝撃波で確実に仕留めさせてもらいます!
骸の海に還るまで
何度だって殴りに来ますよ!(勇気・覚悟・気合い・鼓舞
アドリブ・連携大歓迎
音に字を宛て、字に音を宛てる。
「そうして多重な拡がりを得るのは東洋魔術の特権ですね」
霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は相対する陰陽師の名の音を繰り返し、呟く。
晴明、セイメイ、生命。
眼前の陰陽師はその名とは真逆、晴明を冒涜する類の化生。
「もう、これ以上ここに彷徨う人達を利用なんてさせません!」
悪辣な陰陽師に対し真っ向から言い切る桜色メイド服の少年の名は琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)。
「フウム。あっしは生憎と覚えがねエお方ですが」
バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)は特に因縁とか何かがあるわけではない。けれども、この安倍晴明とか言うオブリビオンに対し、猟兵達が矢鱈と殺気立っている事は分かる。その残酷な所業、そして後に残しかねない禍根を考えればそれも分からなくはない。
「あっしもひとつ、助太刀と参りやしょうかねエ」
そんな猟兵達に助太刀しようと、蛇のようなドラゴニアンはヒヒっと嗤う。
「陰陽師と聞いて正直どんな武器を持っているのか想像がつかなかったが……」
一方晴明の武器に注意を向けているのはブイバル・ブランドー(の中身//自由すぎるアーマー・f05082)。一般的な陰陽師に似つかわしくない双刃を彼は通好みの得物だと思っていた。チェーンソーは浪漫。
そのチェーンソー剣が唸りを上げ、気配が変わる。
――来る。
静かに足を踏み出した晴明は急加速。二刀のチェーンソー剣が演舞の様に優雅に、けれども鋭く振るわれる。
向かう先は絶奈。オーラで防ごうとするが、その刃は二連撃。一つの刃を防ぎ切り、薄くなった守りへと次の呪詛を纏った刃が襲い掛かる。辛うじて刑の裁定と執行を司る黒剣で直撃を抑えるが、がりがりと回転するチェーンソーの刃を抑えきれず弾き飛ばされてしまう。
二刀流の恐ろしさはその変幻自在、予測困難な刃にある。意図的な癖を布石にできる程戦い続ける事は難しそうだ。
さらに晴明は、そのすぐ近くにいたバルディートへとその双刃を振るう。
彼我の距離と刃の速度に、回避は叶わぬとバルディートはその固く長い緑鱗の尾を即座にぐるりと回し前へ出すと、刃を防ぐ盾とした。
その固い尻尾でも、流石に魔軍将の一撃を防ぎ切れるものではない。胴を狙った鎖刃を防いだが、それと引き換えに半分以上がぱっくりと避けてしまう。
けれども痛みに呻いている場合ではない。即座にバルディートは斬撃を受けた位置からやや胴体側で尾を自切、晴明へと蹴り飛ばし次の刃を其方へと向けさせた。
蹴った反動で後退していたこともあり、呪詛の刃は彼の切断された尾を細切れに切り刻んだが蛇自身には追撃は及ばない。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、行きましょう!」
真琴が手元の二体の片翼の人形達に語り掛ければ、少年少女の人形は片翼を広げきりきりと動き出すと、少年の人形は晴明へと跳ね、その頭を蹴り飛ばそうとするが、晴明はチェーンソー剣を巧みに操りその軌道を逸らし別の方向へと弾き飛ばす。そして弾き飛ばしたままに真琴を斬りつけようとその刃を振るう。
髪の端が薄暗い空間に舞った、が、真琴に傷はない。勘をフルに活かし力を溜める為に逃げに徹していた為、ギリギリの所で回避できたのだ。
そして少女の人形から光線が放たれる。晴明の顔を目掛けて放たれたそれを晴明はバックステップで一旦回避、流れるような動作でその先に居たブイバルへと躍りかかる晴明に彼は近くに転がっていた刀を電磁機爪で掴み上げ、それを超音速まで加速させて晴明へと射出する
その反撃に眉も動かすこともなく陰陽師は片方のチェーンソー剣で切り払い、返す刃でブイバルを斬り裂こうとするが、発射の反動を利用し飛び退がったブイバルを捉えきれず空を切る。
そしてその空振りの隙を狙い気配を消していた絶奈が黒剣で斬りかかる。吹き飛ばされた負傷を晴明の生命力を奪おうというのだ。
「ハルアキラ、貴方のセイメイを蒐集致しましょう」
文字通り、総てを。
言葉遊びではあるが、それを支えにできるのならば馬鹿にしたものではないだろう。
「本歌取りとは感心しませぬ」
苛立たしげに晴明がチェーンソー剣を振るい、絶奈をその身体ごと弾木とバス。
(「……いざとなれば、巻き添え覚悟で零距離射撃を敢行せざるを得ないか」)
城外に引きずり出せるならまだしも、障害物のある城内で晴明自身も接近戦を仕掛けて来る今は距離を取るにも限度がある。
機体が呪詛塗れにされるよりかはまだ修理の方法が分かる分マシだから、最悪の場合はその作戦を取る事も考慮しつつウォーマシンであった。
だけれども、この戦場に彼一人でいる訳ではない。
「風は、どんなものにだって一緒になれる。行くよっ!―――神羅畏楼・嵐薙刃」
真琴が嵐のような晴明の勢いに負けじと高速詠唱からのユーベルコードを発動。途端に彼の周囲に風が吹き荒れる。その陰陽五行思想属性の風は恐ろしい密度の突風となり晴明を吹き飛ばす。
「其は宇宙開闢の理、無限の宇宙を抱擁する者。永遠の停滞にして久遠の静謐。死の根源にして宇宙新生の福音……」
真琴を狙おうと向きを変える晴明だが、駆け出す前に絶奈のユーベルコードが発動する。
晴明より奪った生命力、そしてそれ以外に彼女の未来と可能性を代償に、一つの存在がこの場に召喚されようとする。
「顕現せよ、『二つの三日月』」
その言葉と共に、二つの三日月の如き光の巨人が召喚される。
それは死の根源、生命を弄ぶ者に相対させるに相応しい存在かもしれないと、遠のきそうな意識を繋ぎ止める絶奈の頭にそんな考えが過る。
生命力を活動限界ギリギリまで代償にし召喚された光の巨人が足を延ばせば、打ち合った晴明のチェーンソー剣と拮抗する程の質量。もう一振りの呪詛の刃もその足を切断するには至らない。
さらに巨人が叩きつけるように腕を振るい、それを横へと跳躍して晴明は回避したが、その先の床に足が触れたとたん、足が地面に沈み込んだ。
絶奈が隠れながら設置していた罠の一つ、ここに追い込む事も巨人を召喚した狙いの一つだった。
むろんこれだけで動きを封じられるわけではない。ただほんの一瞬、注意が逸れる。
距離は十分、勢いを殺されている晴明の今の状態はブイベルにとっての絶好。
「お前に逃場は無い」
彼の纏う兵装の幻像が39基召喚され、晴明へと一斉攻撃を仕掛ける。電磁力により加速された磁性体と荷電粒子砲の嵐をすり抜け、けれどそこにプラズマを纏うチェーンソー式破砕ブレードと荷電粒子を纏った双剣が挟み込むように迫る。舌打ちをしつつ晴明が二刀でそれらを薙ぎ払う。幻像とはいえそれは質量を持つ特殊な幻像、全てを払いきる前に刃が鈍り、ついには双剣がチェーンソーを潜り抜け晴明の胴へと突き刺さる。
それでも晴明を倒すには至らない、胴に突き刺さった剣を引き抜き雑に放り捨て、
「――ヒヒッ。ありがとうございやす」
ブイベルへと飛び込もうとする晴明に突然響いたバルディートの声。まるで尾を細切れにされた事を逆に喜ぶようなその言葉に一瞬晴明が訝し気な表情をし、そして細切れにした尾を見てああ、と納得したような表情へと変わる。
尾から噴き出すのは血だけではなく、地獄の炎。ブレイズキャリバーである彼の裡を流れる――当然尻尾へも流れていたそれは、切断された尾を焼き尽くすと八匹の蛇の形を取る。
「……生身ッてもよオ、あとどンくらい残ってンのかなア……ヘヘヘッ……」
自虐にもとれるドラゴニアンの言葉と共に、尾を焼き尽くした蛇は晴明へと振り返る。
「その肉はてめエらへくれてやンので、敵サンへ絡みついて燃しちまってくださいな」
彼の言葉を合図に、八匹の蛇が晴明へと襲い掛かる。そしてそれと同時、絶奈の召喚した光の巨人から無数の小さな光の存在が放たれる。よく見ればそれは光の巨人をそのまま小さく複製したような存在。群がるそれらの質量は巨人に比べれば小さいが、八匹の蛇と合わせ数に任せた攻撃は二刀流でも全てを捉え辛い。
小型の光の存在達から逃れようとすれば、光の巨人がその光の腕を横薙ぎに振るう。吹き飛ばされた晴明が床に手をつけば、目立たぬようにしていた絶奈が飛び込みうメイスで頭を殴りつける。
衝撃に一瞬ふらついた晴明だがそれで終わりではない。
さらに真琴の引き起こす風が晴明の真上から叩きつけるように吹き荒れる。呪詛を浄化する破魔の力を宿したその圧は、巨人や蛇達に群がられるその状態から逃さない。
「何度だって殴りに来ますよ!」
真琴がグローブを握り込めば白炎が発生。勇気と気合を振り絞り、鈍りそうになる足を踏み出し陰陽師の懐に飛び込んで、少年は真上に見える顎に炎の拳を突き上げた。
真上に打ち上げられた晴明に、ブイベルの砲撃と光の巨人の拳、そして蛇の黒煙が同時に殺到。水晶質の体を貫き、砕き、そして焼き尽くし――後には何も残らなかった。
復活の気配もない。
疲労困憊の猟兵達は、巨人の召喚で破壊された屋根の向こうに見える空を見る。
やがて、勝利を実感した猟兵達は歓声を上げた。
大成功
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