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エンパイアウォー⑨~絡繰る死熱の数え唄

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●非道の熱波、秒読み前
 紙束を纏めて留めて、丸まった地図は机の上。ベースの一画を会議スペースとして確保し、待っていたのはグリモア猟兵の輝夜・星灯(迷子の星宙・f07903)。
 まばらに数人つどったところで、彼女はマスクの下の口を開いた。
「連日の戦争、お疲れ様。てんてこ舞いだとは思うけど、こちらもひとつ宜しく頼むよ」
 さて、と地図を広げて切り出された話は、こうだ。

 先日関ヶ原に集合した、無傷のままの兵力が十万。
 これを未だ討ち滅ぼさんと、その一部が欠けてなお魔軍将たちが躍起になっている。
 此度予知された戦場は、魔軍将がひとり、『侵略渡来人』のコルテスが策巡らす地点。
 山陽道一帯を灼熱と化し、およそ普通の人間が生き抜けない環境にしてしまうという。
 非常に――非情なまでに、理に適った悪逆非道だ。
 気温は、異常が発見された当時の夜間ですら既に参拾伍度を超えているらしい。
 このままコルテスの策通りに儀式を進められれば、瞬く間に伍拾度を超えるという見通しもある。
「夏だからって何もそんなことしなくても、というより。戦と別ベクトルの殺意が沸きそうだ」
 やれやれ、と溜息をついたグリモア猟兵。
 一般人はともかくとして、簡単には死なない猟兵であっても堪える暑さに辟易しているようだった。

 さて、何も熱さだけであるならば、直接首魁を叩かずとも攻略出来ようものだが――今回、そうも行かない理由があった。
「かの魔軍将は大変迷惑なことに、熱波だけでなく――高温下で蔓延する『南米由来の風土病』も持ち込んでいてね」
 迷惑の極みである。
 とはいえ、この風土病の原因であるウィルスは『極度の高温環境でなければ死滅する』種だそうで。
 つまり、問題解決を避けて通れない、ということだけが確定した。

「それで問題の儀式なんだけれど、まぁ例によって武力で解決できるんだ。そこは安心して欲しい」
 曰く、とあるモノを持ったオブリビオンの軍勢が存在することによって、予知地点周囲の気温を上げているとのこと。
 そんな集団が山陽道に幾つもあるものだから、ひとつずつ潰していくしかない。
 つまりは、武力だ。
 オブリビオンを骸の海に還しては、儀式の媒介になっているモノを砕いて回るだけ。
「シンプルだろう?」
 私に向いている。だからこそ予知したのかもしれないな。茹るアタマでそんな冗談を言っていた。
 閑話休題。

 対処するにあたって、予知からある程度解析した情報を提示される。
 資料には、『長州藩士を殺して奪った霊力を燃料に、富士噴火の精気へ変換して熱を発する』霊玉だと記載されていた。
 そして、それを有する敵は『からくり忍者』の軍団。霊玉は、彼らが動く為の核にもなっているようす。
「オブリビオンを滅するのと、目的を達成するの。勿論両方を一辺にやってもいい。君たちのやりやすいようにね」

 持てるだけの情報は調べ尽した。あとは――
「――宜しく頼むよ、親愛なるヒトビト。私の代わりに、故郷の一端を救っておくれ」
 手元で撫ぜた望遠鏡型グリモアのレンズから、星空いろの煙雲が溢れる。
 霧の晴れる頃には、倭国の地に靴底をつけていることだろう――。


軒星
 おはようございます、こんにちは、こんばんは。
 初めましての方は初めまして。マスターの軒星です。
 肆度執りました筆は、これまたサムライエンパイアにて行われる戦争のシナリオです。
●シナリオ概要
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●敵概要
 種別:集団戦
 名称:からくり忍者軍団
 難易度:通常
 推奨攻略方法:機械人形に敵うであろう全て
●シナリオ運営に関して
 MS個別ページにて随時補足致しますので、お手数ですが送信前にある程度ご確認いただけますよう宜しくお願い致します。
 また今回、判定に関しては上記難易度ですので通常のものと致します。
 ただし、シナリオ完結数が戦況に直接影響されますので、早期完結のために🔵達成(シナリオクリア)+α程度の採用数になる予定です。大変申し訳ありませんが、ご容赦ください。
 採用基準は判定後の結果が良いものを優先し、その他は抽選に近い形式となります。

 長々と書きましたが、以上ご留意のほど宜しくお願い致します。
 それでは、宵居のままに。
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第1章 集団戦 『からくり忍者軍団』

POW   :    からくり・自己犠牲術
【死角から超高速で接近し、忍刀】による素早い一撃を放つ。また、【壊れたパーツを破棄する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD   :    からくり・自己複製術
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【からくり忍者】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    からくり・麻痺拘束術
【麻痺毒の煙幕爆弾】が命中した対象を爆破し、更に互いを【鎖】で繋ぐ。

イラスト:なかみね

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

桜屋敷・いろは
貴女のお願いだもの
わたし、行ってきます
…おまかせ、くださいね!

ふわりとサムライエンパイアに降り立つと
熱波に襲われる
じわり、冷却水が額を濡らす
機械人形のわたしですらこうなるんだもの
他の方々が心配です
いち早く、というやつですね

敵の姿を認識すると、胸に手をあて、唄をうたいます
あなたも、機械人形なんですね
……意思があれば、尊重したいですが
操られるだけの方々の様ですね
主人に尽くしている
それは至上の喜びだわ
…でも、ごめんなさい
わたしの正義で、送る事をお許しください
わたしは彼女の為に尽くしたいと思ったの
だから……
せめて、安らかに、痛みを感じることなく

全てが終わった後も歌い続けます
これが、わたしにできること



 常よりずっとかなしげに下がった眉を見た。
 だから、目配せをした。こくりと小さく頷いた。
 なんてことはない。
 日頃共に過ごす、他ならぬ貴女の願いのために。
 おまかせくださいね。嵌った藍色の視線に、一文だけを乗せて送った。

 星空の霧靄に身を委ね、夜空色の眸を閉じる。
 ふわりと、このごろは随分と慣れた浮遊感のち……さり、さわ、やさしく鳴る土草の音で瞼を上げる。
 視界いっぱいに、慣れても大きなままの丸眼鏡。そのレンズ越しに見る世界は、ゆらめく陽炎で埋め尽くされていた。
 額には珠のような汗――もとい、冷却水。
 機械人形とて放熱機構は必要だからと、つけられた能。それが彼女自身の白肌に、雫を垂らしてゆく。
 つらりと頬へ撫ぜる水分に、己の容の元となった『人間』を想った。
「……わたしですら、こうなるんだもの」
 人も、それ以外も。生きているものが、心配でならない。
 なれば、いち早くこの問題を解決せねばならない。

 かた、と。この人少ない街道に不似合いな音が聞こえた気がした。耳が捉えられたのは、音を扱うモノ故だろうか。
 音源へ向かうと、霊玉を核に駆動するらしい『絡繰人形』をみとめる。じいと、観察してみれば。
 片膝を付いて待機状態であろう彼ら、陸つほどの数のそれ。
 揺らぐ蜃気楼は確かに人形に近いほど強い。おそらく目標の敵だろう。
 だというのに、甘い桜を纏うドールは……躊躇を、した。
「(わたしは、しっている)」
 人形にとっての、至上の喜びを。
 主人へと尽くすこと――プログラムされた忠義に従うことの、幸福を。
 だから、尊重したかった。
 同族としての慈悲だったのかもしれない。もしかしたら、あわれみだったのかもしれない。
 それでも良かった。
 それでも良いから――その意思を尊重し、知った上で、討ち果たすべきだと思っていた。

 けれども、それは叶わない。叶えられないことだと、分かる。
 彼らは文字通りの操り人形で、それ以上でも、以下でもなかった。
 ならば、こちらの意思を――義を、通すことしか出来ない。
「――お許しください」
 誰に乞うたものかも分からない言葉が、くちびるから零れ落ちた。
 その聲を飲み込むように、息を吸う。
 造られた胸の中いっぱいに吸い込んで、うたう。

 何処からか聞こえる聲が、絡繰どもの作りものの聴覚を打った。
 待機を解いて、駆動する。
 音の方へと煙幕爆弾を次々投げていく――が、あろうことか、爆発せずに燃え尽きた。
 不発か、不調か。機構が予測を済ませる前に、白菫色の焔が拡がる。木造りの人形を包んでゆく。
 ――わたしが送る、葬送唄。
 ――あなたへ贈る、葬送歌。
「さよなら、さよなら。愛し……きみ、よ」
 ああ、何だか今日は喉が詰まるわ。暑さのあまり、何処かの機構が狂ったかしら。
 うたごえが広がるのに呼応して、浄化の炎が燃え盛る。
 麻痺毒入りの爆弾投げる、彼らの抵抗も空しいままに。
 蜃気楼が掻き消えるよう、虚影が解けては消えてゆく。
 うたごえが響く。謡う、詠う、謳う。
 彼らの心臓が――熱持つ珠が、ぱきりと割れて、融けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

絆・ゆい
戦ごとにはうんざり
これ、いつまで続くのでしょう

温度はよくわからんの
暑いも寒いもご勝手にどうぞ
と、言えたならよいのだけど
生憎そうとはいかないよう
草花も、ひとびとも
枯れ果てた世界はつまらないでしょ

ふうん、からくりとね
生身でないあなたたち
暑いも寒いも疫病も、関係ないものね
壊しがいがありそ
お相手、願えるかしら

ぼくは春がすきだけど
夏のはげしさも、嫌いではないの
邪なからくりも病も、まとめて払おか
燃ゆる思いを唄にのせて
この世のため、きみのため、唄ってみせよう
『夏烈』

喚び起こすのは炎の竜巻
まどうからくりは念動力で捕まえよ
毒も鎖もまとめてさらってあげる
操るのには慣れていないの
他のものをこわす前に、おわらせましょ



「これ、いつまで続くのでしょう」
 何処までも続くあおいろ、陽炎の揺らめく空の下。
 戦ごとには嫌気がさしたと言いたげなまなざしで――絆・ゆい(ひらく歳華・f17917)は、吐息をこぼす。
 大きな大きな溜息は、うんざりとした声音をそのまま表したよう。
 その雪白の柔肌には、雫のひとつも浮かんでいない。
「暑いも寒いも、よくわからんの。ぼくにとっては、変わらぬよ」
 その身はひとがたをとっていても、元はと言えば紙歌留多。
 文字通りに燃える温度ならまだしも、ひとの身如きが燃えるようと比喩する程度は、露知らず。
「……けれど。ご勝手に、とは言えないよう」
 己は良くとも、我が身を愛したひとの子が。
 きみのあいした土地が、草花が、ひとびとが。
 おまえの買うてくる菓子を茶を嗜むこの場所が。
 ――枯れ果てては、この上なく、つまらないもの。

 結露知らずの身をたよりに、熱のこいところへ向かって進む。
 そうして歩めば、――ほぅら、みぃつけた。
「ふうん。からくり、とね」
 細められた菫色の瞳。長い袖を繰り口元を隠したうつくしいかんばせ。
 蛋白蛍石の矢がさしたのは、ななつほどのひとがた。
 生身でない彼らに、生身でない自分。
 暑さ寒さも疫病も、われらの身には縁無きこと哉。
 それならば。
「壊しがいがありそ」
 ――お相手、願えるかしら
 にんまり笑んだそのくちびるは、隠して尚も、おそろしさが溢れて止まぬものだった。

 絡繰る木どもが、たまを投げる。
 ひょいと念じて逸らしてやれば、軌道をくるわせ、在らぬところで割れ爆ぜる。
 これまた分かりやすい、古典的な痺れのにおい。
 なるほど、弾と一緒に手の内も割れた。
 それなら、これでよいでしょう――煙管をすいと爪弾いて、蜃気楼を揺らがせる。
「ぼくは春がすきだけど。夏のはげしさも、嫌いではないよ」
 あなたたちは?なんて、聞こえて来そうなその問いに。
 応える能を持たぬ木偶は、続けてえいやと弾投げて。
 うすく弧を描くくちびるが、唄うは熱結う言ノ葉いつつ。
『かくとだに、えやは伊吹の、さしも草――』
 すらりと通ったその鼻を、鳴らしてやらんとせし面ては、いずこかへ。
 まるでその舌が綴ったものではないかのように、しずかな聲が陽に融ける。
『――さしも知らじな、燃ゆる思ひを』
 詠みおえれば、途端にひとつ、火柱が上がる。
 ごうごう、音を立てて。弾もつづく鎖も――木の身さえも、飲み込んでゆく。
 いくら木偶でも、自ら壊れるように出来てはいないらしい。
 残ったいくらかが、その場を脱しようと逃げ惑う。
 しのびのおもても影無き哉。楽しそうにからころわらって、念で新たに薪をくべる。
「わるいけれど、操るのには慣れていないの」
 だから、おまえたちを繰るねと言わんばかり。
 ひょいひょい、つまむように、くべてゆく。
 ぱきり、ぱきりと音がすれば、火の勢いは増し――嗚呼、皮肉にも。
 心ノ臓たる緋にすら焦がされた身は、灰ほども遺らなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雨宮・いつき
さんじゅうごど
…暑いのはあまり好きではないのです
避けて通る事ができない戦場なのは理解していますが、少し気が重くなりますね…

周囲の気温を下げる冷気を放つ冷撃符を幾つか持って赴きます
完全に氷結させる出力ではないですから、そこそこ長持ちするはず
敵は忍者由来の絡繰…となれば、隠密行動が得意なのでしょう
八咫烏達を放って周辺を監視する目を少しでも増やし、なるべく先手を打たれる事を防ぎましょう
敵が麻痺毒を使ってくる事も分かっていますし、九頭龍様をお呼びして神酒の霧を散布しておく事で毒の浄化を狙います
逆に雷撃符の【マヒ攻撃】で痺れさせて、霊玉諸共水の刃で真っ二つにしてしまいましょう!



「さんじゅうごど」
 目が点になる、とはこういうことを言うんだろうと、誰かが見れば信じて疑わない顔をしている。
 ぽかんとした顔で会議に参加していた雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は、告げられたその温度に呆然とした。
 しかも、観測初期の、夜である。絶対におかしい。いや、おかしいからこそ猟兵が出向くのだが。
 分かってはいても、少し……大分、気が重い。
「暑いのは、あまり好きではないのです……」
 実際、現地へ赴く直前に零れた言葉は、それは大層しょんぼりしていたととあるグリモア猟兵は記憶していた。

 結果として、そういった心境から出立前に仕込んでおいたものが役に立った。
 出力を控えめにして、心地いい程度にした冷撃符を数枚。それから、もう少し出力をあげたものを数枚。
 前者を袴に仕込んでみたり、後者で周囲の気温を多少やわらげたり。
 猟兵とはいえ、生物としてはやはり苦手意識のあるほどの気温下だ。無防備にいたらと思うと、炎天下でも身震いする。
 それほどまでに、この地は熱かった。

 先行した猟兵たちの後を追って、道なりに街道を進んでいく。
 ひらりと散らした護符から八咫烏を喚んで、先ほど周囲の偵察に向かわせたところだ。
 道中いくつも転がる割れた緋宝を見て、元凶の在り方も確認した。
 冷撃符と、それから先達の功績によって多少下がった気温。十分いつも通りに動ける範囲だ。
 本腰を入れてゆかねばなるまい。

 追い詰められたこともあってか、中々に見つからないところで待機状態になっている絡繰どもを、八咫烏が見つける。
 鳴くまでもなく、主へ情報を届けて――紙へ戻る。風に流されたそれは、在るべき主の手に収まった。
 ありがとう、一声かけて、涼やかな袂へと仕舞い直せば。
 さあ――ここからは、己の番だ。

 未だ発見されずに済んでいることを良しとして、先に手を打つべし、と祈りを捧げる。
「水神の逆鱗に触れし者に、清き怒りを与え給え――参りませ、九頭龍大明神」
 静かに、謐かに、穏やかな川の水面のように。流麗な詠唱を経て、現れたのは白き水神。
 耀う雪白の鱗をうねらせ、神々しくうつくしい九頭竜が、そこに顕現した。
 願いを受けて召し上げられたその御身は、願いのままに霧を吐く。
 まるで一帯だけが冬にでもなったような、淡い月白の霧靄に包まれてゆき――それに紛れて、符が舞った。

 待機状態の絡繰人形、壱小隊ほどの木偶は、周囲を警戒していたにも関わらず現れた異常気象に惑う。
 意思持たぬ機械なれど、プログラムの間に合わない対応には演算処理の時間がかかる。
 その間に手持ちの毒を浄化されたことにも気付かぬまま――霆に打たれたように、その身を止める。
 減った仲間、障害物にすらなるそれを、乗り越えて範囲から逃れようとする個体が出始めた。
 が、もう遅い。
「――お願いします、九頭竜様!帰ったら、今日は大盤振る舞いですよ!」
 宙を穿つように、腹を裂くように、脳を劈くように――刃となった水柱が、全てを襲い砕いては、流していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マディソン・マクナマス
ヨセミテ通信基地聞こえるか、前線に動きあり。敵はどうやら絡繰りで忍者だ。訳が分からんが判断を乞う……え、何も対策しなくていい、いや敵のユーベルコードの対策を……しなくていい? あ、はい……はい……通信終了。(ノイズしか聞こえない通信機に向かって)

回避UC:【ヨセミテ通信基地応答セヨ】を使う事によって、敵のUC発動条件を満たさない。
山道の開けた所に対UDC軽機関銃を二脚で設置し、遠距離から機銃掃射による【先制攻撃】を行う。
敵の密集地帯には蒸気爆発手榴弾を投げ込み、尚も肉薄してきた敵は至近まで【おびき寄せ】てUC効果で回避。10mmサブマシンガンによる【零距離射撃】を【早業】で叩きこむ。


シャルロット・クリスティア
……暑いですね。
手袋つけてなければ、手汗で狙いをつけるのも一苦労だったかもしれません。
長時間は滞在したくないですね……。

山陽道……街道と言えど、周囲に木々くらいはあるでしょう。
【目立たない】よう【地形を利用】しながら敵の配置を把握。
物陰からの【スナイプ】で敵の核を撃ち抜く。

麻痺毒の煙玉……成分は違うでしょうが、私も扱う身です。扱うための【戦闘知識】は持っている。
狙われる前に倒すのが一番ですが、反撃に備えて風上を陣取るべきでしょうね。
遮蔽もあります。そう簡単には届かせませんし、地形と視界を考えればある程度の移動経路も絞り込める。
狙い撃てるだけ撃ったら、追い込まれる前にさっさと撤収と行きましょう。


ベスティア・クローヴェル
※アドリブ歓迎

たかだか50度程度で「灼熱」とは、温いにも程がある
とはいえ、生身だと厳しいのもまた事実
だからこそ、本当の「灼熱」というものを教えに行こうか

戦闘開始と同時に「ダッシュ」で敵のど真ん中に突っ込みながら、
『Huginn & Muninn』を飛ばし、死角に潜り込まれないように敵の位置を監視

死角に入り込もうとする敵には、盾を「投擲」して牽制
攻撃を「見切り」、回避しながらUC【終末を告げる炎剣】を使用し、
『Skoll』に炎を纏わせ巨大な炎剣を創り上げる

敵がこちらを包囲するように動けば、炎剣を横に「なぎ払い」それを封じ、
一か所に固まるのであれば、炎剣を叩きつけて焼き尽くす



「ヨセミテ通信基地聞こえるか、前線に動きあり」
 街道。ひらけた場所の中、樹々や岩などが点在する中継地点。
 そんな岩陰で無線を操作する壱匹の老猫――もとい、ケットシー。
 マディソン・マクナマス(アイリッシュソルジャー・f05244)は、ざあざあと雑じり音しか拾わない機械からの聲を、しかし聞き取っていた。
 それが本当に聞こえているのか、狂気による幻聴か、或いはまた別の要因による幻聴か。
 彼すらそれを知る由もないが、確かに存在する土地の、確かに有り得ざる基地からの通信は届いていて、確かに有用な情報をもたらしてくれる。
 それならそれでいいじゃないか。……とは、思うのだが。
「敵はどうやら絡繰りで忍者だ。訳が分からんが判断を乞う……え、何もしなくていい?何で?あ、はい……通信終了。……クソッ」
 今回ばかりは、頼る先を間違えたかもしれない。
 己が突拍子のないことを言っている自覚はあるが、実際敵の情報はきちんと確認したはずだ。
 そこまで耄碌もしていないはずだし、何なら今日はまだ酒も何もキメてない。だのに何故、マトモな時に限って指示が正確でないのやら。
 小さく――種族特有の、その体躯よりもっと小さく――悪態をついて、ぶつくさ言いながら移動を開始する。
 少なくともまだ気付かれてはいないはず。ならば先に陣取るまでだ。
 岩陰からこそこそと這い出で、視界が良い場所へと愛用の軽機関銃を設置し出すのであった。

「……暑いですね」
 同刻、愚痴を吐く老猫の遥か遠く。戦場予測地、対角線から少々ずれたところ。敵影を中心として、彼よりも遠い地点の樹木。
 はあ、と熱気こもった息をつく少女――シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は、そこにいた。
 じっとりとかく汗を払って、樹上の木陰で照準を合わせる彼女は、その確かな遠視能力と視界を以て、敵を瑠璃の瞳に収めていた。
 風向きも確認し戦場の上を取っているとはいえ、相手はシノビの者。遮蔽物が存在し、移動経路が発覚しているこの環境でも不利は十分に有り得る。
「流石に、追い込まれる前には撤収したいところですね」
 もひとつ、熱を含んだ吐息を溢して。
 あついあついと零しながらも、好機を待ち続ける。
 同志の影を視ていたから。援護の時を、待ちわびている。

「たかだか50度で『灼熱』とは、生温いにも程がある」
 慣れたように武装を整え、倭国の街道、その中心――彼と彼女の見張る戦場、その中心に歩を進めるのは、ベスティア・クローヴェル(諦観の獣・f05323)。
 短いはずの命を焼べ続け、燃やし続け――罅割れた腕に蒼炎を宿した彼女にとって、『灼熱』というのは、命の温度だ。
 それが、その程度で。心すら燃やせないような温度で留まって良いわけもないし、その通りに思う理由もない。
「とは言っても、生身で活動する気温ではないのも、事実」
 慣れているためか雫の流れない額でも、土地柄である湿度と相まって不快指数は高い。
 粒にもならない汗が、じわ、と肌を覆う。それでもこの程度、己が身を焦がす決意に比すれば涼しいもの。
「――だからこそ」
 本物の『灼熱』を教えにいかねば、なるまい。

 街道一帯で最も大きな小隊……否、中隊程度の規模はあるかもしれない。
 それだけの絡繰人形が、熱を発しながら地を埋めつくしている。
 片膝を付いて待っている。この地が熱に沈む刻を。
 妨げに出でる猟兵を、屠らんと動くその刻を。
 ざり、と足音を鳴らす。
 呼応して一斉に起動する木偶人形。
 戦いの火蓋は、切って落とされていた。

 僅かでも敵が動いたその刹那、ベスティアが敵中央へと駆ける。
 同時に飛び立つ弐羽壱対の鴉が、鳴き方だけで彼女を支える。
 忍ならではの速度で背後を取る人形を躱し、往なし、出来た隙間で――命を、燃やす。
「太陽を超えて耀け――炎の剣よ」
 酷暑の陽光すら切り裂いて輝る蒼炎は、狼を核とし熾りゆく。
 業火に牢籠ぐ木形になど目もくれず――最初から全力で、燃やす。
 敵中央への侵入を許された段階で包囲網だ、それならば利用してやる。
 壱箇所狙って叩きつけたのち、円を描くように薙ぎ払う。
 上へと跳んで回避した個体への対処を続けようと、投擲の構えを右腕だけで取れば。
 その瞬間に、どさりと堕ちて共に焼けた。
 ぱちりと呆気にとられて瞠目すれば、飛び上がった他の個体も地に堕ちてゆく。
 鴉が鋭く啼く。死角からの攻撃が来る合図。
 バッと振り向けば、十で余りある刀が迫っていた。
 投擲せず済んだ盾を構えれば、今度は一斉に堕ちて燃える。
 己の盾にも、軽い音と痕。
 ――嗚呼、ひとりではなかったのだ。そう、最初から。

「よし、ヒット。次」
 坦々と、敵を視界に留めたままにライフルへ弾を込めなおす。
 ここなら牽制の麻痺毒も投げれまい、ならば援護に徹するのみと、全神経を手元と網膜へ注ぎ込んだ。
 銃身は、ひやりと冷たいまま。――まだ、行ける。まだ、撃てる。
 彼女を囲んで跳んだ人形を、正確無比に撃ち落として、炎の海へと沈めていく。
 視神経が焼き切れる前に、己の出来る範囲の対処は終わった。

 対してこちら、少々目測を誤った猫。
 軽機関銃でベスティアのフォローへ回っていただけなのに。
 そう、きちんとすべきことはこなした。彼女の死角に跳んだ卑怯なニンジャを、こちらは物量で押しつぶす形で応戦し、銀狼少女へ向かうこれを全て撃墜することに成功、したのだが――
「なぁーんでわざわざこっち来るかね!!」
 幾体かが、素早い判断と身のこなしでこちらへの対応に切り替えて来たのだった。
 流石機械忍者、演算処理に時間がかかることはあろうが、情に絆された判断ミスもしない。などと感心している間もない。
 大きな大きな溜息と愚痴を吐きながら、慌てた演技を挟んでいく。
 ――そう、『演技』だ。
 肉薄してきた参つの影へ、にやりと口角を上げる。
 次の瞬間、マットな輝きを放つ銃身を、その影ひとつへ突きつけて――Fire!
 ばららら、と派手な音で撃ち抜いて、慌てず騒がず、ふたつ、参つ。
 どさりと木偶を落としたら、一丁上がり。

 緋色が燃えて、灰になる音がした。
 緋色が貫かれ、割れる音がした。
 緋色が穿たれ、壊れる音がした。
 ――戦場での、束の間。
 老猫が、ふたつの影へ手を挙げた。
 真っ直ぐな射手が、敬礼を返す。
 ふたりの間で銀狼が、小さくひらりと手を振った。
 各々が、各々の健闘を称えるようなそれだ。

 もうそろそろ、幾分か冷めた炎天が、夕暮れ刻をさしはじめるころ。
 穏やかな眠りに向かう空が、何かを労うように夕陽を沈めていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月16日


挿絵イラスト