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エンパイアウォー⑦~円陣破壊作戦

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 サムライエンパイアの未来をかけた大一番、エンパイアウォー。
 敵首魁・オブリビオン・フォーミュラたる『織田信長』は島原の地に『魔空安土城』を築き上げ、何らかの陰謀を成就させようとしている。
 猟兵でも破壊できないとされる魔空安土城の防護を突破し、陰謀を阻止するためには『首塚の一族』を最低一万の兵と共に島原へと送り届ければならないのだ。
 江戸幕府将軍・徳川家光の要請を受け、猟兵達は幕府軍と共に進軍。
 グリモアに予知された、織田信長に『魔軍将』達による妨害を悉く退けて大きな損害を出すことなく関ヶ原へと到着する。
 しかし関ヶ原の地は魔軍将、軍神『上杉謙信』と大帝剣『弥助アレキサンダー』が陣を敷いて待ち受けている、この遠征で最大とも言える難所。
 関ヶ原での大損害を避けるべく、猟兵達の奮闘は続く。

「みなさん、いつもお疲れさまです!」

 グリモア猟兵、ティアラ・パリュール(黄金と蒼の宝冠・f00015)は、手の上にフクロウ型ガジェットのフクちゃんを乗せ、いつものように笑顔で猟兵達を出迎えた。

「今回お願いしたいのは、上杉謙信への対処です。えと、でも上杉謙信自体は他の突入部隊の方が向かう事になっているので、皆さんには上杉謙信が指揮し、それを護っている上杉軍精鋭部隊と戦って欲しいんです」

 しかし、それも簡単な事ではない。
 軍神車懸かりの陣は、上杉謙信を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入、まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるという、上杉謙信のずば抜けた統率力が可能にした「超防御型攻撃陣形」。敵は常に万全の上杉軍と戦わねばならないにも関わらず、上杉軍側は充分な回復&バフの時間を得ることができないのだ。

「それでも、この陣を破らないといけない理由があるんです。上杉謙信はこの陣形を、自身が復活するための時間稼ぎにも利用します。車懸かりの陣が健在である以上、とどめを刺すことはできません」

 この強固な陣を崩すには工夫が必要。
 そこでティアラは提示した作戦は、個別撃破。複数の猟兵部隊が、外縁部の敵を確実に仕留めて数を減らしていけば、いずれ陣を保てなくなるだろう。

「みなさんには、魔神兵鬼『シュラ』の集団と戦っていただく事になります。数は多くないですけど、シュラは機械みたいに素早く精密に刀を振るう危険な相手です。それから、何度もいいますけど、敵は車懸かりの陣により防御力がすごく高くなっています。一撃で倒すか、敵に回復されて攻撃が無駄になっちゃう前に連携して止めを刺すような工夫ができるといいんですけど……」

 ティアラは説明を終えると、帽子をとってぺこりを頭を下げる。

「具体的な作戦はみなさんにお願いします。きっと、敵を倒して無事に帰ってきてくださいね!」


第六封筒
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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●特殊ルール
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 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
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 こんにちは。あるいは、はじめまして。第六封筒と申します。
 今回は時間が取れそうな事もあり、比較的早めにお返しできると思います。

 本シナリオはOPにある通り、魔神兵鬼『シュラ』と戦う敵集団です。
 敵戦力は多く、無傷で関ヶ原を抜けるのは厳しい状況かもしれません。みなさんの頑張りに期待しています。

 それでは、皆様のプレイングお待ちしています!
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第1章 集団戦 『魔神兵鬼『シュラ』』

POW   :    剣刃一閃・奪命
【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    剣刃一矢・報復
敵を【近接斬撃武器による突き】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ   :    剣刃一弾・止水
対象のユーベルコードに対し【近接斬撃武器による弾き】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


注記:OPにおいて軍神車懸かりの陣の説明が一部おかしくなっています。
『軍神車懸かりの陣は、上杉謙信を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入、まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるという、上杉謙信のずば抜けた統率力が可能にした「超防御型攻撃陣形」。猟兵達は常に万全の上杉軍と戦わねばならないにも関わらず、上杉軍側は充分な回復&バフの時間を得ることができるのだ』
が正しい表記となります。ご迷惑をおかけしました。
峰谷・恵
「球じゃなくて円なら上から並走すれば追跡し続けられる」

空在渾で飛行状態になり、敵に並走しながら敵のうち一体をロックオン、空在渾で強化したMCフォートの連射(2回攻撃+鎧砕き+誘導弾)を撃ち込み続ける。
他の敵が狙った敵を庇おうとしたら熱線銃とアームドフォートでの射撃を当て(牽制目的なので連携分断できればこちらでの攻撃は回復されても問題ない)、敵連携を妨害し各個撃破し易い状況を作る。
敵の攻撃は狙った敵への攻撃が途切れない範囲で回避、避けきれなければダークミストシールドで防御。
狙った敵がMCフォートの射撃を弾いて回復の時間稼ぎを狙うなら、アームドフォートの砲撃を至近距離に撃ち込み爆発で敵の態勢を崩す



 数名の猟兵達が転送されてくる中、先陣を切ったのはユーベルコード【空在渾(ソラハカミノモノニアラズ)】により飛行能力を得た峰谷・恵(神葬騎・f03180)だった。
 関ヶ原に布陣する味方の頭上を飛び越えて、その美貌を、その豊満な肢体を、下から見上げる者達の期待の、そして時には好奇のまなざしを受けつつ敵陣へと迫る。
 前方に見えてきたのは、ゆったりと回転する上杉謙信指揮下、上杉軍精鋭部隊が展開する、軍神車懸かりの陣。
 否。
 この大きさに関わらず回転が見えるのだ。ここからではゆっくりに見えても、近寄れば近寄りがたい速度での機動を行っているはずだ。
 中央には上杉謙信が待ち構えている。しかし、今回の作戦の直接的な目標はかの軍神ではない。

 恵は外縁部付近に今回目的とする敵の姿を見つけると、わずかに方向転換をしてそちらへと向かった。
 見た目は白い金属のヘルメットを被り、武士の装束を着、血に染まる刀を携えた侍。
 ただ命を奪う為に作られた、強奪の為の呪術兵器。これまで頭の戦で数多の血と魂を強奪してきたそれは、魔神兵鬼『シュラ』と呼ばれるモノ。
 シュラの一体が、飛来する恵の姿を見てとり機械的に刀を構えた。
 その一体を、恵は即座にマシンキャノン仕様のアームドフォート、MCフォートでロックオン。
 ゆっくりと狙いをつけている暇はない。つかず離れずを意識し、敵の射程ギリギリにまで接近、並んで移動しつつ、MCフォートを続けざまに叩き込んでいく。
 ガガガガ!! ガガガガガガガ!!!
 空在渾により強化されたMCフォートから放たれる高速の弾丸が、シュラの身体を文字通り削り取る。
 いくらかは避けられて、いくらかは刀に弾かれもしている。しかしその程度の軽減をものともせず、あっというまにシュラの装束に穴を、身体には傷を穿った。
 苛烈な攻撃。左右から援護がなければ、すでにシュラは倒れていたに違いない。
 しかし陣の高い防御力は、いまだシュラを戦場に立たせ続けている。そして、常であれば、シュラは移動していき、新たなシュラが目の前に立ち塞がるのだろう。
 だが、そうはならない。

「球じゃなくて円なら上から並走すれば追跡し続けられる」

 恵は一気に止めを刺さんと気を吐く。
 言葉通り、恵は件のシュラに並走して空中を移動し続けている。
 左右からはMCフォートに晒され続けるシュラを援護し、あわよくば入れ替わろうと別のシュラが圧力をかけてきた。
 敵後方からは無数の矢も、恵を狙って放たれ続けている。

「邪魔はさせない!」

 その悉くを熱線銃で、アームドフォートで牽制し退け、最小限の動きで回避し、MCフォートの攻撃を目標へと叩き込み続けるのだ。
 そしてシュラの苦し紛れの大ぶりの一撃を、その手袋から発生した黒い霧状のシールドで受け流した時、MCフォートの射撃音が止まる。
 弾切れ――――ではない。
 もはや原型を留めないほどの姿になりその場に崩れ落ちるシュラを、飛び続ける恵は視界の彼方へと見送ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨宮・いつき
一糸乱れぬ堅牢な陣…なるほど、確かにこれは強敵です
ならばこそ、ここで敵の数を減らす事に大きな意味がある
一気呵成に行きますよ!

敵は白兵戦に長けた者
ならば距離を取り雷撃符の【マヒ攻撃】で動きを鈍らせ、
逃げられないように冷撃符で足ごと地面を凍てつかせてその場に釘付けにします!
如何に強力な陣といえど、采配に応える為の足を奪えばそれまで
そうしてから【力溜め】て【全力魔法】での狐火を放ちます
弾かれぬように全方位を取り囲んでからの一斉攻撃
確実に敵を仕留めて、すぐさま狙いを次の敵へ
休んでいる暇はありません
他の方々のお力になるためにも、多少の無理は押し通します!



 先陣を切った者とは対照的に、雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)はゆるりと軍神車懸かりの陣の前に立った。

「一糸乱れぬ堅牢な陣……なるほど、確かにこれは強敵です」

 生真面目に引き締まった表情ではあるが、優し気な顔立ちとその小柄な身体はいかにもたよりなく、陣に巻き込まれればひとたまりもなさそうに見える。
 しかし、いつきもまた、一人の経験を積んだ猟兵だった。

「ならばこそ、ここで敵の数を減らす事に大きな意味がある。一気呵成に行きますよ!」

 いつきは動き続ける陣から刀を手にやや突出してきたシュラを見て、距離を取った。
 白兵戦の得意な敵を相手に、素直に白兵戦で応じる必要は、無い。
 懐から取り出した護符を手に、術式を練る。
 その間にも車懸かりの陣は動き続けており、刀を振り上げたシュラが眼前に迫っていた。

「まずは……ひとつ!」

 迫るシュラを目の前にしつつも、いつきは冷静に手にした符から雷撃を放つ。数体のシュラが巻き込まれ、神経を焼かれてその動きが鈍った。いつきはひらりとシュラを避け、改めて大きく距離を取る。
 懐から次の護符を取り出す。最初の物とは意匠が異なるそれ……冷撃符に霊力を込めると、周囲に冷たい空気が漂った。

「ふたつ!」

 迸った冷気がビシビシと音を立てつつ一直線にシュラへと向かうと、その足を周囲の地面ごと凍らせる。

「陣が如何に強力といえど、采配に応える為の足を封じてしまえばそれまでですからね!」

 しかし、完全に足を止められたシュラは一体のみ。他の数体のシュラも足を凍てつかせ、動きは大幅に制限されてはいるものの、完全に足止めをするまでには至っていない。
 広い戦場でそれぞれに距離を取り、高速で移動し続けている相手全てに、万全に効果を発揮させるのはやはり難しいようだ。
 それでも、好機には違いない。

『集い爆ぜるは幽幻の炎……』

 練り上げた霊力が、手にした稲荷符によってさらに増幅され、膨大な霊力を秘めた青白い狐火へと変化してシュラの周囲に展開していく。
 いつきのユーベルコード【火行・狐妖蒼火(フォックス・ブレイズ)】!

「……みっつ。これで!」

 掛け声に合わせて、シュラを取り囲んだ狐火がその中心部へと殺到していく。
 シュラもただ黙ってそれを受けたわけではない。【剣刃一弾・止水】を用い、正面からの狐火の幾つかは弾き、相殺した。
 だが、焼け石に水だ。
 圧倒的な火力の前に、標的となったシュラの身体は一瞬で燃え尽き、チリと化す。

「まずは一体……ですが、まだ」

 ふぅっと大きく息を吐きつつ、いつきはすぐさま次のシュラへと狙いを変える。
 休んでいる暇はない。
 戦況を有利にするには。
 後に続く猟兵や、命をかけてこの戦いに挑んでいる幕府軍の皆の為には。

「多少の無理は押し通します!」

 戦場に、再び青白い華が咲き誇った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

チトセ・シロガネ
刀での勝負は一瞬が命。
でも地面を舐めるのはユーだヨ!

ボクは【ジャンプ】で後ろに下がって、
フォースセイバーを【早業】で抜き、
アンダースローで【投擲】。
まず相手の意識をこちらから逸らさせるのが目的ネ。

相手がセイバーに反応したタイミングで一気に【ダッシュ】!
UC【霹靂閃電】を発動、クローアームを飛ばして相手を【グラップル】でキャッチするネ。
キャッチしたら【怪力・念動力】をフルに使って振り回すヨ。
振り回す際は【地形の利用・第六感】で頑丈な岩や木にぶつけるネ!

ボクに刃を向けたヤツはノー・マーシーがボクのスタンスなんだヨネ。



 やや乱れが生じた陣周辺部に、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)が切り込んだ。
 銀髪に真っ白な肌、緑の瞳。異質な程に眩いばかりのその姿は、オブリビオンの集団の中にあってさえよく目立つ。
 チトセは目的の魔神兵鬼の一体に目星を付けると、その目前へと堂々と姿を晒す。
 シュラは反射的に刀を振り上げ、チトセへと振り下ろした。
 だが、その場にはすでにチトセは居ない。
 大きく後方へと跳躍し、その一撃を軽々と躱している。

「いい判断ネ。刀での勝負は一瞬が命」

 チトセは着地するやいなや、フォースセイバーを引き抜く。溢れる光が美しい刃を形成し、チトセとシュラの顔を照らした。
 刀を構え直すシュラ。

「でも地面を舐めるのはユーだヨ!」

 しかし、あろうことかチトセは引き抜いたフォースセイバーを、そのままアンダースローでシュラへと投げつけたのだ。

「!?」

 常は機械であるかのような挙動のシュラが、一瞬だけ動揺したように見えたのは気のせいか。
 シュラが半歩下がり、投げつけられた武器を叩き落さんとして、フォースセイバーを注視した瞬間。
 チトセが閃光の速さで、距離を詰める。
 ――フォースセイバーを投げつけたのは、囮。意識を逸らすのが目的だった。
 今回選んだ本命の武装は、刀では無い。

『ダンスの時間ネ! クローアーム、シュートヨ!』

 ユーベルコード【霹靂閃電(サンダークラップビート)】が発動する。
 腰部に取り付けられたクローアームが飛び、がっちりとシュラを掴み、固定。
 そうして、シュラの身体を易々と持ち上げたのだ。

「そーれ!」

 そのままシュラをガン、と脳天から地面に叩きつける。
 ――大きめの石と激突した頭部からは火花が散った。
 再びシュラの身体を振り上げて、今度はチトセの身体を挟んで反対側の地面へと、足から叩きつける。
 ――今度は、足先が本来曲がらない方向へと折れ曲がった。
 ガン、ガン、ガン、ガン。
 持ち上げ、振り回しながらも、その重量と遠心力を支えるチトセの身体はいささかも揺るぐことは無い。
 恐るべき膂力、恐るべき暴威。

「ボクに刃を向けたヤツはノー・マーシーがボクのスタンスなんだヨネ」

 その言葉通り一切の容赦はなく、シュラの身体は振り回され続け、形を変えていく。
 シュラは途中、何度かその手の刃を地面に突き立て衝撃を軽減したりもした。
 時には刃がチトセに向けられもしたが、チトセは構わずシュラを振り回し、叩き付け続ける。

「……オー、ちょっとやりすぎたかも?」

 そう言いつつも、気にした様子も無く動かなくなったシュラを投げ捨て、次の敵へと向かうのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──邪魔だ
勝つのは俺達だ。その筋書きは変わらねえ
何を用意してこようが、叩き潰して前に進む
謙信が作ったくだらねえ陣形の横っ腹、ぶち抜いてやる

セット『Balmung』
来てみろよ、謙信のイヌども
強い陣形組んでねえと、まともに俺の相手すらできねえのか?ん?
刀は飾りってオチか?オイオイ、つまんねえな?

って具合に【挑発】をかまして、攻撃を誘発
突きのモーションは見やすい…【覚悟】を決めて、完全脱力
受け切って──エネルギーを奪い、無効化

強烈な一撃は持ち合わせてないんでね、代わりにお前から貰うことにした
エネルギー53倍、53発分のお前の突き、耐えられると思うか?
ではさようならだ…約束通り、横っ腹をブチ空けてやる



 ──邪魔だ。
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は混沌とした戦場で、オブリビオンをいなし時には蹴りつけて道を開き、目的の地点へと進む。
 目標は軍神車懸かりの陣の一端を構成する、魔神兵鬼『シュラ』の一団。

「謙信が作ったくだらねえ陣形の横っ腹、ぶち抜いてやる」

 例えシュラを全て倒しても、それだけでは軍神により完全に統率された陣は崩れないだろう。しかし、そこには確実に風穴が開く。強固な堤とて、蟻の穴から崩れるのだ。
 ならば、確実に己の仕事を遂行するのみ。

 居た。
 陣の回転に合わせて右斜め前方より斬り込んでくる、刀を手にした一団。これまでの交戦により、数は減じている。装束は汚れ、刀も一部損傷していた。それでも、陣の効果により十分な回復を行っているシュラ達の動きはいささかも鈍っていない。
(結構。弱ってようが万全だろうが、勝つのは俺達だ。その筋書きは変わらねえ。何を用意してこようが、叩き潰して前に進む)
 ヴィクティムはひとり、シュラの行く手に立ち塞がる。

「セット『Balmung』」

 すでに覚悟は決めた。

「来てみろよ、謙信のイヌども。強い陣形組んでねえと、まともに俺の相手すらできねえのか? ん?」

 芝居がかって大袈裟に両手を広げ、待ち受ける。

「ほら、ここだ。ここ。よく狙えよ?」

 トントンと親指で心臓の位置すらも示し、挑発した。
 その挑発に乗ったのか、そうでないのか。シュラは陣による移動の速度に、強い踏み込み、さらに一旦大きく引いた剣を突き出す動作の勢いを乗せて、ヴィクティムとの距離を一気に詰める。
 シュラのユーベルコード【剣刃一矢・報復】。
 刀による精密な狙いと、オブリビオンの恐るべき膂力により裏打ちされた必殺の突きは、常であれば対する相手の命を容易く刈り取る必殺の一撃。それを受ければいかに重武装の猟兵といえど大ダメージを受けるし、一歩間違えれば致命傷だ。
 ヴィクティムはその必殺技を、完全に脱力し、両手をだらりと下げた状態で胸で受け止める。
 正確無比な一撃は、正確にヴィクティムの心臓を貫いた。
 ……いや、貫くはずだった。
 その血塗れの刃の先端は、ピタリとヴィクティムの心臓の上で静止している。まるで、映画のフィルムをそこで止めたかのように。

「強烈な一撃は持ち合わせてないんでね、代わりにお前から貰うことにした」

 作戦が首尾良く成功したことに、ニヤリとヴィクティムは口の端を上げて嗤う。
 ユーベルコード【Reuse Program『Balmung』(モタザルモノノリュウゴロシ)】。
 完全に脱力して敵ユーベルコードを受けることで、それを無効化した上でそのエネルギーを奪う。さらに、何十倍にも増幅して相手に返すことが出来るのだ。
 陣の効果を受け強化されたシュラを確実に一撃で倒す術は、ヴィクティムには無い。ならば、敵のエネルギーを利用する。
 シンプルな答えだ。
 シュラは戸惑ったように、しかし相対するヴィクティムの命を刈り取らんと、再びその刃を振り上げる。

「ではさようならだ…約束通り、横っ腹をブチ空けてやる」

 シュラの刀が振り下ろされる前に、ヴィクティムが動く。
 幾つものUDC由来の兵装によって強化された、サイボーグ化された身体は尋常ならざる速度で右腕を突き出して。
 ドボッ。
 そんな音と同時、シュラの身体に大穴が空く。横っ腹どころではく、その上半身は下半身と泣き別れ、ドサリと地面に落ちたのだった。

「エネルギー53倍、53発分のお前の突き。耐えられるわけねえよな?」

 斯くして、魔神兵鬼『シュラ』の一団は壊滅する。
 それでも円陣はその機能を失っておらず、中央に位置する上杉謙信もいまだ健在。
 未だ、勝利は遠く。各所で激しい戦いは続いている。
 しかし、猟兵達がそこに一片の楔を打ち込んだ事は間違いの無い事であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト