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雪下の素足

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ――世界名『ダークセイヴァー』・某所。

 "足枷"をかけられた素足の少女が祈っている。あかぎれだらけの手を組みながら頭を下げ、月の下に膝をつく。あまりの寒さにカチカチと歯が鳴るが、止めることが出来なかった。
 それほどまでにひもじく、ただただ体の芯まで冷たいのだ。

「かみさま…はやく」
 白い息を吐いた。精気の消えた瞳に、満月が映る。

「はやく私を、"天国に連れていってください"」
 少女は、どうか楽に死なせて下さいと神に祈っていた。

 ――グリモアベース。

「皆さま、お集まりくださいまし! 世界名『ダークセイヴァー』にてオブリビオンの兆候を捉えましたの!!」
 ミレナリィドールの破戒僧、千手院・ソワカ(破戒僧ガバ勢・f00994)が険しい顔で皆に呼びかける。ソワカがこういう表情の時は、大抵ロクでもない事件が"見えた"時で‥‥。

「オブリビオンに協力して、人々を売り渡している集団がいますの」
 話を聞いていた猟兵達の纏う空気が変わっただろうか。少しバツが悪そうに頬を掻きながら、ソワカが眉をひそめながら言葉を続ける。

「彼奴らはとある"養豚場"を砦のように改造し、そこで"商品"の管理をしているようですわね。オブリビオンの手に渡った"商品"はその後‥‥。‥‥ああ、失敬。冷静ですわ。私、今、とっっても、"冷静"ですわよ?」
 オブリビオンとそれに組する人身売買集団への怒りが我慢できなくなったのか、口を止めて一呼吸置くソワカ。売り渡された人間がその後どうなるかはソワカは明言しなかったが、少なくとも"楽には死ねない"ものと考えてよいだろう。

「オブリビオンの支配力が大きい地域のですので‥‥。まあ、そのオブリビオンに媚びる連中が出てくるのも仕方のない事なのかもしれません。それはそれで立派な処世術でございましょう」
 努めて冷静に手を合わせるソワカ。が、声が怒りに震えていた。その緑の瞳で猟兵たちに訴える。

「しかし、人が人をモノ扱いして売りさばくとは、いささか悪趣味が過ぎますわ。そろそろキツめのお灸をすえてやる時間ですの。そうでしょう?」
 ぱん、と手を叩き皆を急かすソワカ。

「あっと、くれぐれもご留意くださいまし。我らが討つべきは、人身売買業者の裏にいるオブリビオンの"顧客"ですの」
 そう、敵はあくまでオブリビオンだ。大元を叩かねば、このような事件を根絶する事にはつながらない。猟兵が追跡し、追い詰めなければならないのは、この事件の背後にいるオブリビオンである。

「現地での調査方法は皆さまに一任しますの。その元"養豚場"は一つの砦のような規模にまで膨れ上がっているようですし‥‥。人だけでなく、怪しい薬や盗品などを取り扱う業者の出入りも激しいみたいなので、潜入それ自体は楽かと思いますわ」
 まずはその元"養豚場"に潜入し、人身売買についての手がかりを求めて調査を行わなければならない。猟兵一人一人の表情を確認して、よし、とソワカが大きく頷く。

「オブリビオンどもに御仏の慈悲は無用! 存分にやっちゃってくださいましッ!!」


アサソバ
 あけましておめでとうございます。三度の飯より蕎麦が好き、アサソバです。
 未だ至らぬ身ではございますが、リプレイは熱く、判定は冷静に。どうぞよろしくお願いいたします。

 ――このシナリオは3章構成です。

 1章 調査『「命」を扱う商売』‥‥養豚場を砦化した場所が舞台です。周囲を含めてスラム化しており、一つの犯罪拠点となっているようです。表立ってオブリビオンの影は見当たりません。
 2章 集団戦『???』‥‥1章クリア後に詳細が出ます。
 3章 ボス戦『???』‥‥2章クリア後に詳細が出ます。
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第1章 冒険 『「命」を扱う商売』

POW   :    人身売買業者を痛めつけて、オブリビオンの情報を吐かせる。

SPD   :    人身売買業者のアジトに忍び込み、オブリビオンの情報を入手する。

WIZ   :    人身売買業者の同業者等を装い、オブリビオンの情報を聞き出す。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

寧宮・澪
寒いのは、嫌ですよねー……あったかい、のが、いいですよねー……。

【WIZ】メインで、いきますー……。
【情報収集】、【世界知識】で同業者、装いましてー……オブリビオンの、情報収集をー……。
見つけにくかったら、知ってそうなのがいないか、【第六感】で判断、しましょー……。

見つけたら、そですねー……予め、呼んでおいた、レギオン見せてー……売りつけたい、商品があるんでー、羽振りのいい「顧客」、教えて、ほしいんですよー……って、しましょか。

襲ってくるようなら、襲いかえし、ますよ?



――"養豚場"に人が集まっている。

 灰色の雪がしんしんと降り積もる中、オラトリオのシンフォニア、寧宮・澪(澪標・f04690)は屋台の煙や喧騒が充満する怪しい市場を歩く。
 寧宮のただでさえ不愛想な顔は閉口しているせいか、なお不機嫌そうに見えた。単に眠いだけの寧宮からすれば遺憾な事実かもしれないが、ともあれ、彼女が足を止めた目の前の男は、水パイプから白い煙を吐き出すとどこか焦点のあわない瞳で寧宮を見上げた。

「オメェが‥‥新入りか?」
 何を売っているのかはわからないが、男の背に見える店の奥では皆が何かの煙を吸っている。
「こんばんはー。どうもはじめましてー」
 同業者を装って潜入した寧宮は、様々な店を歩いてこの男にたどり着いた。左腕に入れ墨をいれたその男は、値踏みするようにジロジロと寧宮を観察している。

「商品があるんでー、羽振りのいい『顧客』、教えて、ほしいんですよー」
「あーオメェ、なんだっけ? ほら‥‥」
「寧宮です」
「あー、そうだ。寧宮。オメェにこの界隈の大先輩である俺から一つ忠告をしてやりたいんだが」
 よございますか? と憎たらしい顔でまあ座れやと床を叩いて寧宮に座れと命じる。寧宮は無視した。

 男の声に反応したのか、店の奥から刃物を持った連中がちらちらと得物を見せびらかすように現れる。なるほど、とその意味を理解して独りごちる寧宮。

「ここで商売するのもタダじゃあねえんだよ。紹介手数料、仲介手数料、それからえーと‥‥教育手数料、他諸経費全部込みで、だ。俺がテメーの商品を代わりに売ってや‥‥」
「すみません。言葉、伝わらなかったですかー?」
 ぱちん、と寧宮が指を鳴らし、ユーベルコード"Call:ElectroLegion"を発動する。唐突に現れた90体の人形が、店を一瞬で制圧して。
「お仕事ですよー‥‥れぎおーん‥‥」
「な‥‥」
 男がそれを把握した時には、もはや全てが手遅れであった。ゆるやかに歩くような速度で寧宮がにじり寄ると、居住まいを正して改めて懇切丁寧に"お願い"をする。琥珀金の機械兵器が、一糸乱れぬ統率でじゃぎんと構えた。

「商品が、あるんで、羽振りのいい、『顧客』を、教えて、ほしいんですよ」
 よございますか? と全く表情の消えた瞳で寧宮はその男を見下ろした。
「は‥‥い‥‥」
 冷や汗ですっかり酔いが覚めた男は、彼女とその軍勢に降参し、同業者としての情報を打ち明け始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

宝座・四季
人間、余裕が無くなると倫理を捨てちまうもんだよなあ。
理解はするし、同情も無くはない。が、認めるわけにゃいかねえな。

『顧客』がいなくなりゃ商売は成り立たない。千手院くんの言うとおり、相手を間違えないようにしなきゃ、な。

さて、じゃあオレは体を汚してボロを着て、ガラクタ集めて『小金欲しさにガラクタを売りに来たオジサン』に化けて潜入を試みようか。

敷地内に潜入したら、夜になるのを待って捜査開始。
【忍び足】で気配を殺しながら潜入捜査を行う。
昼間の間に敷地内を商売する振りをしながら歩きまわり、警備の多い箇所をチェック。さらに、その警備員が警備対象を「怖れている」場所があれば、きっとそこがビンゴだ。


アンバー・ホワイト
人身売買の組織…何だかすごく、嫌な予感がする…
ワルイヤツ、許しはしないよ、絶対に
自身を捉えていた闇を倒したい想いと、杞憂であって欲しい願いと混じり合い複雑な気持ち

まずは、情報を
私の頭で細かな作戦なんて考えられない
人身売買組織のものを痛めつけて情報を吐かせる
殺してしまわないよう気をつけるも、その瞳に容赦の影はない
はやく、教えて。その組織はどこで何をしているんだ

情報を手に入れたら次はどう動くか
わたしは、動くことが出来るのだろうか
わたしは人身売買によって、母の温もりも、家族の愛しさも、喜びも、この大きな世界も知ることなく育ったから
同じような組織があるのなら、潰さねばならない。その決意だけは胸に


推葉・リア
★WIZ
(昔を思い出して嫌な顔)
……ここは我慢よ、うん
『バトルキャラクターズ』で呼び出した推しキャラの騎士を護衛役で連れて行くわ勿論合体強化して
【変装】でお忍びでやってきた貴族令嬢でも演じて、【魅力】も使って奴隷商人に話しかけるわ
ここが家にいる奴隷達がいたお店ねどんな感じか来てみたの、なんて世間話しながら父以外だとどの様な方々がお客様なのかしら?とさり気なく名前を聞き出して【第六感】も使って探るわ
聞き出し終えたら、勝手に買ったら怒られてしまいますので今度は父と来ますわなんて言って退散
…(離れた場所で小声で)わかってる…絶対に成功させるわ
(騎士正義感が強いので怒りと軽蔑の表情)


★アドリブ共闘歓迎


リト・クルル
人をモノ扱いしてるとか反吐が出るぜ
痛めつけてお仕置きしてやらねーとな?

おれは【POW】を選択する
回りくどいのはおれの性分に合わねーし、
面と向かってやってやんぜ
まずは【おびき寄せ】で出入りしている人身売買業者を引きつけるぜ
別に大勢で来てもおれは負ける気しねーけど、
一人ずつの方が確実だな

その後は路地とか人目に付かなそうなところに連れて行って、
【恫喝】を使って吐かせるまで脅す
もしそれだけじゃ吐かねー場合は
壁ドンの要領で思いっきり顔面の横に殴りをいれてやるよ
「ただで帰れると思うなよ?
ガキだと思って舐めてもらっても困るからな」

アドリブや絡みは関係だ



――場面は別の店へと移る。

「ダメだな。この額でなきゃ買い取れない」
「オイオイそりゃあ、あんまりじゃないの? 苦労して集めてきたんだぜぇ」

 ガラクタ売りに身を扮した人間の陰陽師、宝座・四季(なんとなく団長・f04244)がわざとらしく両手を広げて目の前の怪しい古物商とすったもんだを繰り返している。体を敢えて汚すという徹底した変装に、肩眼鏡の太った中年の店主は完全に宝座を"こっち側"、つまり同類だと信じ込んでいるようだ。
「いいかい? おっさん、この素敵な商品たちを集めるためにだね、聞くも涙語るも涙の‥‥」
 宝座の芝居がかった語りが続く。むろん、無駄にそんな事をしているわけではなく、会話の端々から敷地内の状況や警備の情報を探っているのだ。
(「警備は意外と緩そうだな‥‥。潜入自体は楽にいけるか?」)
 頭の中で思考を巡らしながら店主と取引の攻防を続ける宝座。いい加減にしろと店主が言いかけたその時。ふと、店の入り口の鈴が鳴った。
「ふぅん、こういう感じのお店なのね」
 貴族のご令嬢に扮した妖狐のバトルゲーマー、推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)は店の中に入ると、敢えて値踏みをするような視線で店内に陳列された商品を眺めている。
 その横には彼女のユーベルコード"バトルキャラクターズ"で呼び出した背の高い騎士が佇んでおり、威圧感を放っていた。

 傍から見れば世間知らずのお嬢様が物見遊山でこの店に迷い込んできたようにしか見えない光景。

 カモが来たぞと店主がほくそ笑む。すぐさま宝座をしっしと手で追い払いながら店の隅に移動させ、店主は手をもみながらニヤニヤと推葉に近づいて来た。
「これはこれは! いらっしゃいませ、お嬢様。本日は何かお探しでしょうか?」
「うん? 別に、ただ家にいる奴隷達がどんな感じのお店にいたのか、知りたくて来てみたのよ」
 わざと興味のなさそうに答える推葉に、店主はへへぇと愛想笑いを続けながら頭の中のそろばんを大急ぎで叩いている。こりゃあ上客かもしれんと気が気でないようだ。
 
「おぉ、おぉ、さようでございますか! いやぁこれは何たる幸運。神の思し召しでしょう、確かに当店では様々な"商品"を取り扱ってございます!」

 ぴくり、と推葉の片方の瞼が動く。

「‥‥いかがなさいました?」
「聞いているわ、続けて」
 不思議そうに目を丸くする店主に、話を続けるよう促す推葉。

(「‥‥ここは我慢よ、うん」)
 呼吸を整え、ぐっと腹に力を籠めて表情を押し殺す。今は情報を集める事が肝心だ。他の客の事なども触れてみたが、他の客の事情は明かせないと首を横に振る店主。

「"信頼"を大切になさっているのね」
「えぇ、えぇ。それはもう。ま、ここだけの話、あの騎士の旦那ももうちょっと金払いが良ければ、‥‥おっと」
 わざとらしく口を塞ぐ店主に、ふむ、と推葉は思考を巡らす。おそらくは一番の上客、オブリビオンの事を示唆しているのだろう。

「ありがとう。とても、参考になったわ」
「いえいえいえ! それで‥‥いかがしょう?」
「勝手に買ったら怒られてしまいますので。今度は父と来ますわ」
 にこりと微笑んで風のように立ち去る推葉に、がっくりと肩を落とす店主。そんな様を眺めながら、宝座も動き始める。

「‥‥人間、余裕が無くなると捨てちまうもんだよなあ」
「あぁ、何だって?」
 不機嫌な店主が怪訝そうな顔をする。宝座は振り返らずにひらひらと手を振って、目星をつけた場所へと移った。

 ――"養豚場"・袋小路。

「ヒヒヒッ!! ほぉ~ら、もう逃げられないねぇ!」
 棍棒を手にした男たちは卑下た笑みを浮かべながら、羅刹のシーフ、リト・クルル(羅刹のシーフ・f06517)にじりじりと近づいてくる。

「お前みたいなやつは、一部の趣味人共に高く売れるんだよ‥‥肌がきれいだからな」
「‥‥」
 どこか下品な男たちの視線に心底あきれ返ったようにリトが眉をひそめる。
「どうしてもわからないことがあるんだ。教えてくれないか?」
「‥‥あぁ?」
 予想外の言葉だったのか、男たちの動きが止まる。こめかみに指をあてながら、ギラリとリトは男たちを睨みつけた。

「教えてくれ。何だってお前らはそんな風に人をモノ扱いするような、"くだらない"仕事に一生懸命になれるんだ? マゾヒスティックな趣味でもあるのか?」
 教えてくれ。と皮肉たっぷりのリトの上目遣いの視線に思考が硬直する男たち。が、徐々に自分たちが心底軽蔑され見下されている事に気が付くと、額に青筋が浮かび口元が怒りでわななき始める。
 
「て‥‥めぇ」
「ああ、皮肉は通じるんだな。安心したよ。もしかして懇切丁寧に解説しないと理解できないのかと‥‥」

「ブッッッッ殺すッッ!!!」
「できるモンならやってみろッッ!!」
 男が棍棒を振りかぶると同時、袋小路の壁を蹴ってリトが跳躍する。身長140cm弱の少年が、男たちの遥か頭上まで跳び上がり。

「うりゃぁッ!!」
「はぎゃぁアッ!!?」
 男の横っ面に拳を叩き込む! カエルが潰れたような悲鳴を上げて地面に崩れ散るその姿に、仲間のゴロツキ達が殺気立つ。

「このガキ! 調子にのりやが‥‥」
 リトを囲もうと駆け出した瞬間、爆発で数人が壁に叩きつけられた。

「がっな‥‥っ!!?」
 ぐらぐらと揺れる視界の中、ゴロツキはドラゴニアンのビーストマスター、アンバー・ホワイト(Snow・f08886)を見た。
 平生であれば、このくらいの歳の少女がこんな所を歩いていようものならば、落ちている財布を拾うが如く喜んで襲い掛かっただろう。

 ――が、今は平生にあらず。

「わたしは、おまえを、はなしはしないよ。‥‥"星屑の鎖(スターリー・チェイン)"」
 男の足に、じゃらりと煌めく硝子の鎖が絡みついていた。見れば、周囲の味方の何人かが既に捕らえれている。

「なんだこの鎖!? いっいつの間に‥‥!!」
「‥‥」
 暴れまわる男たちを鎖でつなぎ留めながら、少しだけ目を伏せてアンバーは考える。己の過去の記憶がよみがえるのか、少し困惑しているようにも見えた。

(「母の温もり、家族の愛しさ、喜び、この大きな世界‥‥」)
 もしも自分が"籠の鳥"でなかったならば。そんな思いさえ去来する。ふぅ、と白い息を吐くと、

「私の頭じゃ細かい事はわからない。だけど‥‥。ワルイヤツ、許しはしないよ、絶対に」

 気が付けば、男たちはリトとアンバーに"挟み撃ち"にされていた。状況を理解したのか、男から大量の冷や汗が流れる。

「残念だったな。おっさん共。"もう逃げられないねぇ"」
 リトとアンバーが一歩前に出るたびに、男たちは狼狽えながら団子のように固まっていく。リトは指をポキポキと鳴らしながら拳を固める、アンバーの琥珀色の瞳には怒りの感情が籠っていた。
 その瞳に射抜かれて男たちは瞬時に理解する。

 ――この二人は、自分たちから情報を聞き出すにあたって、何の容赦もしないだろう。

「はやく、教えて。お前たちの正体を。組織はどこで、何をしているんだ」
「ただで帰れると思うなよ? ガキだと思って舐めてもらっても困るからな」

「うわぁぁぁぁ~~ッッ!!!?」
 袋小路に男たちの悲鳴が響いたのち、殴打音が何発か響いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

アンリエット・シャルパンティエ
POWで行動

砦を訪れた吸血鬼を装い業者に接近。

「そこな従僕、この『養豚場』の者であろう? 聞きたいことがある」
高圧的な存在感、吸血鬼然とした態度で接する

アンリエットの外見を侮る態度であれば怪力で相手を掴んで捻り、
「此処の主人は家畜の教育がなっておらんな…1匹死なねば
理解も出来ぬか」

殺気と吸血鬼の牙を剥き出しにして脅し、オブリビオンの、または
それを知る者の情報を引き出す

それでもまごつくなら【力任せの一発】で近場の施設を殴る

【何故知りたいのか?】という質問に答える気はない
「…ほう、お主は妾に問いかける資格があると申すか?」
「此度に限り無礼は許すが次は無い。 誠心誠意答えるが良い。」

アドリブ歓迎です


春霞・遙
命を救う立場だから、ソレをぞんざいに扱う存在は看過できないな。
新しく集団に加わった医師だ、ということで同業者を装ってみる。どうせ弄ばれる商品に医師が必要なのか怪しまれたら、クライアントに渡すまで活きがいいのが多いほうがいいだろうって言いくるめる。それでうまく囚われてる人たちに会えたら手当してあげたい。
できるだけいろんなところに働きに行きそうな下っ端か、逆に顧客に近いところに行きそうな偉そうな人を見かけたらシャドウチェイサーを憑けて内部を偵察。


シエラ・アルバスティ
【SPD】

少女の人身販売……私の正義的にそれはダメ

アジトに【迷彩】で【目立たない】様に【ダッシュ】を駆使して潜入
怪しい人影があれば【追跡】して、どうしても必要ならばその場で『魔糸』を使い【暗殺】
『雷刃』を使い電流を駆使して一人は拘束する

「喋らなくてもいいよ?」

人身販売業者を捕まえたら【風の声】で強制的に情報を読み取り特別な理由も無ければ【風ノ爪痕】使用

【クレイジー・アトモスフィア】は必要な時に使うよ(天使の様な演出をしたり)
【勇者召喚】で人手を増やし、自由を与え『猟兵バッグ』に入ってる医療、食料、医療品を提供するよ

「私があなたたちに希望を持たせるのには根拠がある。私達猟兵は“強い味方”だよ!」


栗花落・澪
【WIZ】
僕の見た目じゃ同業者は難しいだろうし…
敢えて“商品“のフリをしてみます

姿を隠し
人身売買関係者を見つけたらUC解除
逃亡を図ろうとしてぶつかっちゃった風を装う
怯えたような素振りで【誘惑】し
人気の無い場所か屋内か
他業者の邪魔のない場所に連れ込まれるよう誘導

「さて…そろそろいいかな」

清鎌曼珠沙華を突き付けながら笑顔で
ちょっと聞きたいことがあるんだけど
お兄さん達、または同業者の顧客について
知ってる事洗いざらい教えてもらえるかな

反抗されたら適当に一人鎌で斬りつけ…るフリをして
微かな【歌唱】による【催眠】で眠らせる
聞き出し終わったら一人残らず眠らせて騒ぎ拡大防止

手荒な事してごめんね

アドリブお任せ



――"養豚場"・正門。

「‥‥何か騒がしくねえか?」
「あぁ? この辺りがウルセェのはいつもの事だろ?」
「へへっ、ちげぇねえや。眠れるのは明け方だけってな」
 簡易的なかがり火が建てられた"養豚場"の正門を、二人の男が守っている。
 と、いっても全くやる気がないのか、タバコをふかしながらのんびりと二人でトランプ遊びに興じているという体たらくである。

「なんと嘆かわしい。此処の主人は家畜の教育がなっておらんな‥‥」
 コツコツと足音を響かせながら、ダンピールのブレイズキャリバー、アンリエット・シャルパンティエ(白炎の殲姫・f07812)が現れる。彼女が持つダンピールとしての人並み外れた美貌に、ぽかんと口にくわえていたタバコを落とす二人組。

「な、なんだおい‥‥。あんた一体」
「そこな従僕、この"養豚場"の者であろう? 聞きたいことがある」
 視線を合わせもしようとせずに質問を続けるアンリエットの高圧的な演技に、あれもしかして、と男たちの背中に冷たいものがはしった。

(「ウソだろおいっ。まさかこいつ吸血‥‥」)
「どうした。"鬼"にでも出くわしたような顔をしおって?」
 ニタリ、と口の端を吊り上げて笑うアンリエットの立ち振る舞いに、男たちが気圧されて一歩下がる。

「ここの主人はどこじゃ」
「あんたは何だ!? ここの旦那の事を知ってどうす‥‥」

 ――衝撃の後、砦が、ゆれた。

「お主は妾に問いかける資格があると申すか」
「‥‥」
 アンリエットのユーベルコード"力任せの一発"が炸裂し、大地を抉ったのだ。男二人は抉れた地形の底でへたり込んでいる。アンリエットの事を吸血鬼だと信じ込んでいるのか、ガタガタと震えている。一切表情を変えることなく、彼女はパンパンと手をはたいてこう言った。

「此度に限り無礼は許す。が、次は無い。さあ、誠心誠意答えるが良い」

 ◆◆◆

 ――"養豚場"・内部。

「ひっ‥‥!!」
「大丈夫。ここなら安全だから」
 人間のUDCエージェント、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が捕らえられていた少女を優しくなだめる。

 人身売買業者の集団に医師として潜入した春霞に与えられた仕事は、最低限の治療で売買が完了するまで"商品たち"を生かす事だった。もちろん、そんな命令に従う気など毛頭ない、あらゆる治療の手を尽くすつもりであった。靴すら与えられていない素足の少女に優しく包帯を巻く。

「‥‥」
 無表情のまま、かたかたと震える少女を見て春霞の顔が曇る。この震えは気温のせいというよりは。
(「精神的なストレスが原因‥‥」)
 一体どれほどの恐怖に晒されればここまで子供が無表情になるのか。こみ上げてくる怒りを抑えながら、そっと少女の背中をさすってやった。
「もうちょっとの辛抱だから。頑張ろうね?」
「‥‥」

「おい先生よぉ。商品はまだ別の部屋にもあるんだ。サッサと頼むぜ」
「ええ、わかりました。すぐに行きますよ」
 一応の見張り役が付いているのか、治療を興味なさげに眺めていたゴロツキが春霞を急かす。
 春霞はゆっくりと立ち上がってその男についていく中、ユーベルコード"影の追跡者"を発動させて内部の偵察を始める。

(「動きが慌ただしいな。もしかして‥‥」)
 取引の時が近いのだろうか。そう思いながら廊下の窓から外を眺める。

 ◆◆◆

「はっ‥‥はっ‥‥!!」
「そっちだ! 追えッ!!」
「オラ逃げるんじゃねぇよ!!」
 オラトリオのシンフォニア、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が砦の外で男たちから逃げ回っている。

「‥‥参ったなあ。逃亡した"商品"のフリは上手くいったけど」
 後ろを振り返れば、十数人の男たちが。仕事に真面目というよりは、逃亡しようとした"商品"へのお仕置きが目当てといったところか。
 なんだか目がギラついているものがチラホラと混じっており、控えめに言ってお近づきになりたくない雰囲気である。
(「上手くいきすぎるのも問題だなあ‥‥」)

「っと‥‥」
 人気のない行き止まり、栗花落が足を止めれば、男たちは逃げ道を塞ぐように広がる。
「へへへ、捕まーえーたーぁ‥‥」
 肩で息をする男たちを見て、うわっ、と思わず栗花落の心底嫌そうな声が漏れる。

「安心して泣き叫んでくれ。だぁ~れも助けに来ないからさあ‥‥ヒヒ」
「へえ、泣き叫んでも誰も助けに来てくれないんだ。大変だね」

「あぁ! そうだよ! 大変だねぇ? えぇ、おい? 大変だねぇ~!」
「いや、お兄さん達が」

 ――極めてか細い、光の線のようなものが男たちの視界に入る。

 人狼のシーフ × ガジェッティア、シエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)による魔糸の一撃が空間全体を迸った。悲鳴を上げて倒れる男たち。
「少女の人身販売‥‥私の正義的にそれはダメ」
「うわぁ‥‥これ、大丈夫? まさかお兄さん達、死んじゃってないよね?」
 栗花落がシエラに問いかける。シエラは無言で猟兵バッグから包帯を取り出してみせると、ニヤリと微笑んだ。

「大丈夫。死ぬほど痛い目には合わせたけど、アフターフォローまでばっちりだよ」
「わぁ、完璧」
 薄紅色の鎌、"清鎌曼珠沙華"を手に、ぽんぽんと栗花落が拍手をする。

 ◆◆◆

「チクショォォ!! なんだテメェら!? ただのガキやレジスタンスじゃねえな!?」
 情報を聞き出すため、一人だけ眠らせずに起こしておいた男が悪態をつきながら栗花落とシエラを見上げる。
 逃げようとすれば、シエラの雷刃が絡みついて男を電流で麻痺せしめた。
「私達は猟兵。オブリビオンをやっつける、"強い味方"だよ!」
「いでででででっ! ふざけろクソが‥‥! 何が猟兵だ、あいつにかなう奴なんて‥‥!!」
 言いかけたところで、男が空を見てあっと声をあげる。

「あれは‥‥霧?」
「へ‥‥へへ、もうお前らおしまいだ。来ちまったんだ」
 シエラが周囲を見渡せば、いつの間にか砦を囲むように霧が出始めていた。何故かその霧を見て、拘束されていた男が諦めたように力なく笑っている。

「お前らはおしまいだ。きっとあいつらを怒らせちまったんだ。人間はあれには勝てない」
「‥‥」
 この男もまた、希望を失ったこの世界の人間一人にすぎない。シエラは口を横に結ぶ。
 今この世界に必要なのは、"希望"を言葉でなく、行為でもって証明することである。

「‥‥手荒な事してごめんね」
 栗花落の子守歌のような優しい催眠術に男は落ち着きを取り戻すと。そのまま静かに目を閉じた。栗花落とシエラはその場を離れ、移動する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


――"養豚場"の辺りに霧が立ち込める。

「霧だ! 霧が出たぞぉ!!」
 霧の到来を告げる男が市場を駆け抜けると、それまでの喧騒が嘘のように一帯が静まり返った。
 が、次の瞬間にはアリの巣をつついたような大騒ぎになり。

「今日は店じまいだ。早く帰ってくれ!」
「おおぃ商品を片付けるんだよ、急ぎな!!」

 バタバタと窓が閉まり、そして戸が閉じられていく。奴らの気を引きたくないのか、明かりさえも消して。人々は息を潜めた。

「‥‥オォォ」
 壊れた人形のようにこっくりこっくりと歩きながら、篝火を持つ亡者の集団が霧の中から現れる。

 ――目指すは一点、"商品"のある、砦。

 ◆◆◆

「‥‥!!」
 包帯を巻かれた少女が震えながら指を組んで祈る。鉄格子の先から霧が見えたからだ。この時の事は考えないようにしていた。だが奴らは来てしまった。
 販売業者の集団もオブリビオンの来訪を受け入れるために、にわかに内部で騒ぎ出す。

 さあ、討つべき敵は現れた。猟兵が動きだす時は、今である。
栗花落・澪
いつまでも怯えさせたままでいるのは可哀想だからね
さっさとケリつけちゃいましょ

空中へと飛び
空から敵の動き全体を把握しながら他の猟兵達に指示
技の挙動や狙いの方向に【見切り】を付け
随時共有するよ
自分への攻撃は特に翼撃墜に注意

【空中戦、全力魔法、範囲攻撃】でのUC使用で
広範囲の敵の殲滅、足止めで前戦で動く仲間のサポート
花吹雪は視界を奪う働きも出来るんだよ

また、怪我人が出た場合にはサンクトゥ・オラティオニスで治癒を
戦況に余裕がある場合には【催眠】効果のある【歌唱】で
あわよくば敵の混乱、相打ちを狙う

無いとは思うけど…
万一一般人に被害が向かいそうな場合は
そちらへの対処優先に【救助活動】

※アドリブ、共闘お任せ


寧宮・澪
ああ、来ましたねー……。
渡したりしない、ですよー……綿津見に、帰ってください、ねー。

【謳函】、使用。
女の子、渡せませんし、オブリビオンは倒しましょー……。がんばりましょー……。
予め録音した【鼓舞】や【祈り】を込めた、歌を謳函から流しましょー。

こちらに来た攻撃は、【オーラ防御】で軽減したり、【見切り】で避けたり。
【戦闘知識】も活かして、味方の負担を軽減しますねー……。

連携や、アドリブも歓迎、ですよー……。


推葉・リア
霧に紛れてくるなんてそこそこ浪漫よね、推しキャラの皆ならとても雰囲気でて素敵よね、うん
だけど来るのはオブリビオン!そんなの浪漫でもなんでもないわ!

『バトルキャラクターズ』で最大人数の正義感が特に強い推しキャラ達を呼びだして、それそれ彼らの得意な攻撃を仕掛けて、私は『ファイヤフォックス』で連携して敵を燃やしていく、それでも苦戦しようなら『推しキャラ達の一斉攻撃』に切り替えて一掃するわ
…中には倒されてしまう推しキャラもいると思う、けど私の呼び声に答えてくれる限りまた呼んで戦ってもらうわ…無理させてごめんね…!

私達だけじゃ全ての絶望を拭いきれないけど…ここの絶望は払ってみせるわ…!

★アドリブ共闘歓迎



オブリビオンの亡者達からすれば、いつも通りの取引になるはずであった。
 業者から"商品"を買い取り、主人の元へと引きずっていく。それだけのシンプルな任務である。

 ――はずだったのだが。

「推しキャラの皆が霧に紛れて動く‥‥とても雰囲気でて素敵よね、うん」
 妖狐のバトルゲーマー、推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)が堂々と仁王立ちしてオブリビオンの前に立ちふさがる。亡者たちはそれが"猟兵"と呼ばれる自分たちの不俱戴天の敵であると認識すると、篝火を構え直して低い唸り声を発し始めた。

「‥‥猟兵! そこヲどけ」
「お生憎様。ここから先は通行止めよ」
 推葉がパチンと指を鳴らせば、ユーベルコード"バトルキャラクターズ"が発動し15体の"推しキャラ"達が出現する。
「今日は特に"正義"感が強いキャラを呼んでみたの」
 彼女が共感する理想のキャラクター達が、一斉に武器を構えた。推葉も"フォックスファイア"で狐火を呼び出すと、戦闘態勢に入る。

「やっつけてあげるわオブリビオン。かかってきなさい」

 ◆◆◆

「ああ、来ましたねー‥‥」
 オラトリオのシンフォニア、寧宮・澪(澪標・f04690)がぼんやりとした顔で亡者の群れと対峙している。亡者たちは自分たちが数で圧倒している事にまだ余裕があるのか、さざめくように笑いながら寧宮に語り掛ける。

「諦めろ、猟兵。諦メろ」
「無意味だ。お前たチがいくらあがこうと。無意味ダ」
「邪魔をスルな」

 ――寧宮が目をつむる、数秒の沈黙。

「‥‥言いたいことはそれだけですか?」
「!!」
 寧宮の手にした謳函(ウタハコ)から、祈りを込めた歌が流れ出す。人々を鼓舞するようなその音楽が、雪で灰色になった市場に満ちていく。
「諦めろ? 冗談、じゃない。私は、いや猟兵は人々を渡したりはしない、ですよー‥‥」
 その声色には静かな怒りさえ籠っているかのようだった。飛び掛かってくる亡者の群れを、ステップでギリギリのところでかわす。火の粉の匂いが、鼻先をかすめた。ちょっとだけ笑う。

「綿津見に、帰ってください、ねー」
「何ヲ‥‥!!」
 寧宮を焼き尽くそうと立ち回る亡者の顔を、輝く鈴蘭の花びらが撫でた。

「ッ!?」
 空を見上げる。

「あの子たちを怯えさせたままでいるのは可哀想だからね」
 上空からオラトリオのシンフォニア、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)がゆっくりと滑空してくる。亡者はすぐさま栗花落めがけて炎を放つが、動きを微調整しながら降りてくる栗花落を止めることができない。

「罪を背負いし者達に、清浄なる裁きを与えん‥‥」
「や‥‥」
 一方、栗花落は急ぐ必要はない。もう既にチェックメイトの状態なのだから。

「"plumes de l'ange(プリュム・ド・ランジュ)"」
「ヤメロォォォォッ!!!!?」
 瞬間、輝く鈴蘭が猛吹雪の様に吹き荒れると、半径19m以内に存在する全ての亡者を一掃した。

 ◆◆◆

 ――場面は推葉の方に戻る。

「ああっ、無理させてごめんね‥‥!」
 彼女の召喚したキャラの1体が、膝をつく。体の一部が炭化する程の炎にあてられてたのか、崩壊が止まらない。
「‥‥っ」
 大好きなキャラクターが傷ついている、まるで己の身が引き裂かれたような気持になり、ぐっと胸元を抑える推葉。それでも。

「また呼んだら‥‥。私の呼び声に応えてくれる?」
「‥‥」
 キャラクターは言葉を発さない。だが、推葉を守護するように敵の前に一歩出ると、堂々たる風格で武器を再び構えた。
「‥‥何度見ても、好き」
 勇気が湧いてくる。そして寧宮の流している歌は、推葉の耳にも届いていた。亡者の群れが殺到してくる、だが、全く負ける気がしない。

「私達だけじゃ、この世界全ての絶望は拭いきれないけど‥‥」

 推葉のユーベルコード"推しキャラ達の一斉攻撃"が発動。彼女の召喚したキャラクターが、一斉に突撃して必殺の一撃を放つ。

「少なくとも、ここの絶望は絶対に払ってみせるわ!!」
 推葉は、亡者の群れを文字通り木っ端微塵にして空の果てまでぶっ飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

春霞・遙
WIZ
やることは変わらない。死者は救えないけど商品にされる人たちを護ったり癒やしたりして少しでも負傷者、気絶者を減らす。新たなる亡者が増えたとしてもが本体と死者と業者の人たちだけなら味方の人たちもためらわずに済むでしょう。
ただ、ユーベルコード使いすぎた疲労で自分が気絶しないようにだけは気をつけないとね。限界になる前に本体討ちたい。
敵や業者が人を助けることを邪魔したら?戦うよ。そのための武装(拳銃)だもの。



――"養豚場"・内部。

「ひっ‥‥!」
「大丈夫よ、あれは私の仲間がオブリビオンと戦っている音だから」
 "商品"として足枷をつけられたままの少女の背中をさすりながら、人間のUDCエージェント、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が優しく言葉をかけ続ける。

「‥‥っ?」
 不思議そうに顔を上げる少女に、にこりと春霞が微笑む。
「あんな恐ろしいものと戦うなんて、信じられないわ」
 春霞のユーベルコード"生まれながらの光"で体力が回復してきているのか、少しずつだが少女は喋るようになってきていた。
 
「う~ん、そうだね。まあ確かに厄介な存在かなあ」
「怖くないの?」
「どうだろうね。猟兵それぞれに‥‥」

「おい、先生よぉ。あんたいつまで油売ってんだ」
 少女と春霞の会話を遮るように、売買業者のリーダーと思しき男が現れる。棍棒を手にした部下を2人程付き従えたその男は、明らかにいらだっていた。春霞は怯える少女を自身の背に隠れさせ、立ち上がって男と向き合う。
「"商品"を表に運ぶんだ」
「嫌です」

 あまりにきっぱりと言われて面食らったのか。男が目を白黒させる。が、すぐに怒りの感情がこみ上げてきたのか、春霞を睨みつけ。
「て‥‥めぇ‥‥!!」
 男が飛び掛かろうと前に出た瞬間。

 ――ぱん、と銃声が響いた。

「があっ!!? なっ‥‥!!?」
「結局こうなってしまうんですね。まあ、想定内ではありますけど」
 春霞の手には拳銃。男は太ももを抑えてうずくまっている。男の部下2人は、春霞の持つ見慣れぬ武器に混乱し、動くことができずただ狼狽えている。

「いでぇぇ!! クソがっ! 何をしやが‥‥っ!!」
「あまり動かない方がいいですよ。太ももには太い血管が通っていますから、万が一、変に動いてそこから大出血したら‥‥」
「‥‥ひっ!!」
 太ももを抑えている男から血の気が引く。医療の心得がない男にはこの出血がまだ安全圏なのか、そうでないかの判別はつかない。
「でもあなたは幸運ですね。医者が目の前にいる状況でケガをしたのだから」
「‥‥っ」
 今や生殺与奪の権利は春霞の手にある。その意味を理解した男が、額から冷や汗を流す。

「彼女たちをオブリビオンには渡さない、いいですね?」
「‥‥わ、わかった」
 がっくりと、男は項垂れて降参した。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「これは一体何事か‥‥」
 霧の立ち込める"養豚場"の市場に、漆黒の軍馬に跨った騎士が現れる。
 もちろん猟兵の味方などではない、異端の騎士のオブリビオン、"サー・セルバンテス"が亡者たちの異変に気が付き、その姿を現したのだ。

 既に倒されている亡者を見て、その意味を理解する。
「おのれ賊‥‥否、猟兵どもめ! 我が領内で狼藉を働くとは不届き千万!!」
 どこか正気を失った言動が続く。屋内で息を潜めている人々は早く立ち去ってくれと祈るように震えあがった。

「ハッ‥!? さては我が任命せし徴税官の屋敷が目的か!? こうしてはいられぬ、ゆくぞロジーナッ!」
 "養豚場"を"屋敷"と呼ぶ騎士は漆黒の軍馬に颯爽と跨ると、ハイヨーと声を上げて"養豚場"めがけて馬を走らせる。生き残っていた亡者の残党は主人の姿に気が付くと、助けを請うようにその前に出るが。
「セルバンテス様‥猟‥‥兵ガ」
「続け者ども、"正義"は我にあり! ハッハッハー!!」
「グギャァァッッッ!!!」
 軍馬は容赦なく亡者を踏み砕き、そのまま味方を蹴散らしながら前進を続ける。

「さあゆくぞ猟兵ども、首を洗って待っておれい!!」
 ねじ曲がった騎士道精神と正義に酔いしれたオブリビオンは、高らかに猟兵達に名乗りを上げた。
宝座・四季
これはこれは、ご立派な騎士様の登場だ。
俺たち押し入り強盗を成敗しにいらっしゃったかな?

……ま、ここはお前の領地じゃないし、ここの人たちはお前の財産じゃない。
返してもらうぜ。あんたが奪っていった大切な宝、『尊厳』ってやつをな。


ふん。敵の攻撃手段は、剣による近接攻撃と、花びらによる範囲攻撃か。
範囲攻撃に巻き込まれないよう、味方同士距離を取り、敵との間合いを離しながら攻撃がいいか。

攻撃は【護法装填】で強化した銃による【2回攻撃】。狙いは敵の利き腕側の上腕部。比較的装甲も薄そうだし、腕をやりゃ剣も鈍るだろ。

動きが鈍ったところで【真の姿】解放。体の入れ墨に封印した四神の力を銃に注ぎ込み、叩き込む。


アンリエット・シャルパンティエ
【POW】
「おぉ、待ちかねたぞセルバンテス卿」
「妾は『白炎の殲姫』アンリエット・シャルパンティエ、
故あって本名は伏せておるが…まぁ気にするな。」
吸血鬼側の礼儀作法で挨拶
(名前が出たので使いました 知った理由は門番とのやりとりとかで)

「大した問題では無かろう。 妾は猟犬、お主はオブリビオン。
討ち、討たれる…それだけじゃろう?」

真の姿(闘気の様に白い地獄炎を全身から噴き出す)から【血統覚醒】
ピジョンブラッドの鉄塊剣「ルベド」で鎧砕き、生命力吸収、を用いた
怪力での攻撃
拷問機能付き棺桶「ニグレド」で捕縛した軍馬、亡者を盾にしつつ武器
受け、吸血も込めた防御、拷問具で傷口をえぐるカウンター

それぞれ随時使用



「ハイヨー、ロジーナッ!! 敵は我が徴税官の館にあり!」
 突撃の号令を鳴らし、異端の騎士のオブリビオン、"サー・セルバンテス"が馬で駆ける。
 ユーベルコード"ブラックキャバリア"で召喚したその馬に意志があるのかは不明だが、狂ったように嘶いて市場の樽や亡者の残党を蹴散らしながら突き進むその姿は、"狂暴"の二文字に尽きた。
 暴風のように騎士と馬が暴れまわりながら"養豚場"へと近づいていく。そして、その狂った嵐を叩き潰すために、猟兵が立ちはだかる。砦の正門にさしかかったところで、騎士が馬を止めた。霧の奥に浮かぶ二つの影。

「‥‥これはこれは、ご立派な騎士様の登場だ。俺たち押し入り強盗を成敗しにいらっしゃったかな?」
「おのれ、何奴!!」
 騎士が叫ぶと、ゆらりと霧の中から人間の陰陽師、宝座・四季(なんとなく団長・f04244)が現れた。その横にはダンピールのブレイズキャリバー、アンリエット・シャルパンティエ(白炎の殲姫・f07812)も外套をなびかせて佇んでいる。

「おぉ、待ちかねたぞセルバンテス卿。妾は『白炎の殲姫』、アンリエット・シャルパンティエ。故あって本名は伏せておるが‥‥まぁ気にするな」
「貴様‥‥吸血鬼か!? 邪悪なナ‥‥ナナ、ナナナナナナナ」
 吸血鬼のような仰々しい礼儀作法でアンリエットが名乗ると、それを見たセルバンテスは壊れた映像のように途中で同じ音を発しながら痙攣する。まるで何か、自己矛盾を起こしてバグを起こしたロボットの様に。
「‥‥っ」
 アンリエットは何も言わない。ただ、少しだけ驚いたように目が見開いたか。
「貴様、吸血鬼でありながら、猟兵なんぞに身をやつしたか! 恥を知れ裏切り者め!!」
 それまるで、オブリビオンたる自分が、吸血鬼を批判するという矛盾を回避するために、強引に解釈を捻じ曲げたようなセリフだった。なるほど、と宝座は独りごちる。

「"正義の騎士"という役の"設定"が崩れないようにか。こりゃあとんだ三文芝居に巻き込まれたな」
「大した問題では無かろう。我らは猟犬、そして奴はオブリビオン。討ち、討たれる。それだけじゃろう?」
 ごもっとも、と肩をすくめる宝座を横に、アンリエットは真の姿を解放する。倍近い体格差をあざ笑うように微笑むと、鉄塊剣"ルベド"を地面に突き立て、手の平を動かし騎士を正々堂々と挑発する。

「参れ、"小僧"。相手をしてやる」

 ◆◆◆

「騎士道ォォォッッッ!!!」
 馬上から大上段にセルバンテスのグレートソードが振り下ろされる。地面を抉るような衝撃。宝座、アンリエットそれぞれが獣のような俊敏さで跳ねとぶと、即座に反撃態勢に入る。

「急急如律令‥‥。役目を果たせ、護法」
 宝座は己の銃に印を刻み、銃口を騎士に向ける。引き金を弾いた。
「遅いッ!!!」
 得物の重さ、まるで意に介せず。セルバンテスは即座に反応して弾丸を叩き落としにかかる。見える。間違いなく叩き落せる。そう思った瞬間。

「グアッッッ!!?」
「悪いね。ここは"押し入り強盗の役らしく"泥臭くやらせてもらう」
 既に宝座もまた真の姿を解放し、体の入れ墨に封印した四神の力を銃に注ぎ込んでいたのだ。予想外の火力と目に追えない速さで追加で放たれた弾丸を腕に打ち込まれ、落馬するセルバンテス。

「そして返してもらうぜ。あんたが人々から奪っていった『尊厳』ってやつをな」
「尊厳!? 何をわけのわからぬ妄言を‥‥!!」
「やれやれ、つける薬がない。というセリフはお主の為にあるようじゃな」
「ッ!!?」
 セルバンテスの懐に、アンリエットが潜り込む。彼女の武器である多目的棺桶"ニグレド"は既に騎士の馬を捕らえており、そして。

「ヴァンパイアの全力‥‥受けてみよッッ!!」
 アンリエットは思い切りそれを振り回すと、シールドバッシュを敢行した。軽自動車程の重量はあろうかという騎士が、少女(?)の怪力による衝撃でくの字に折れ曲がって浮き上がる。
「ぐッはあっ‥‥!!!」
 地面に叩きつけられ、悶絶するオブリビオンの騎士。

「わぁ、こりゃひでえ」
「主演女優賞もらえるかの?」
 悶絶する騎士を横目に、宝座は曖昧に笑いながら肩をすくめた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

春霞・遙
初志貫徹、商品の人たちの命と心を救うことが優先目標。
身命を賭してでも弱い命を助けることが私の正義だ。
そのためにオブリビオンを倒す。

商品の人たちと縛したりして無力化した業者の人たちをできるだけ安全そうな部屋に保護して、何かあった時にわかるようにシャドウチェイサーをつけておく。
大した火力にはなれないから、馬の足を撃ったりオブリビオンに傷つけられた味方や他の人を癒して戦闘を補助する。

フォーリングローゼスの攻撃範囲が怖いなぁ。万が一商品の人たちの身に危険が迫るようなら真の姿を解放して駆けつける。マスクと帽子とローブをまとった姿になり、身を呈してでも守る。形振りなんて構わないよ。

アドリブ共闘よろこんで


アンバー・ホワイト
‪倒して、全て終わらせよう‬
‪人身売買をする奴に、手加減なんて有りはしない‬
さあ、みんな、鎖から解き放たれる時が来たよ

‪真っ向から敵へ向かい、星屑の鎖で敵を捕縛‬
‪捕えられるものの気持ちが少しは分かっただろうか‬
‪組み合いながら槍での攻撃を放つ‬
‪狙うは心臓、その一撃に躊躇いはない‬

‪救いの手はいつだって血まみれ‬
‪でも決して折れてはいけない‬
‪黒は一番強い色、それを背負うわたしは――強すぎるほどでいなくちゃいけない‬
‪真っ黒な私の手で、子供を救わなくては‬
‪孤独を救ってくれた母から貰った言葉と共に、その瞳に迷いは無い‬

真の姿はお預け
アドリブ絡み歓迎



「さあこっちに、早く」
 人間のUDCエージェント、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が包帯を巻かれた少女の手を引きながら、砦の中を移動する。
 春霞単独であればもっと素早く走ることもできるが、体力が回復したとはいえまだ少女の足取りはおぼつかなかった。
「すごい音‥‥この場所崩れちゃったりしないかしら?」
 戦闘音が断続的に響くたびに砦全体が振動する状況に、少女が不安そうに天井を見上げる。その度に春霞は優しく微笑んで彼女を励ました。

「大丈夫、これももうすぐ終わ‥‥危ないッ!!」
「きゃあっ!!?」
 すぐ近くで響く轟音。反射的に体が動いた春霞は真の姿を開放し、身を挺して少女をかばう。
 崩れる石壁と巻き起こる砂煙の中から、かのオブリビオン、セルバンテスがぬらりと現れた。春霞と少女の姿を認識すると、膝をついて立ち上がる。

「ッええい! ここにも鼠が潜り込んでおったか。我が徴税官の館を荒らす不届き者め、成敗してくれる!」
「‥‥参ったな。総大将とはち合うなんて」
 マスクの中で春霞が呟く。だが内心安堵もした、彼女のユーベルコード"シャドウチェイサー"は他の"商品"にされていた人々や、降参して隠れている業者たちが避難している部屋の位置を常に把握し続けていた。
「そこの"商品"を置いていけ! それは我が領の物であるぞ!」
 甲冑の奥から響く騎士の声に、少女が恐怖で硬直する。その怯えた顔がそれ以上オブリビオンを見ることのないように、春霞が拳銃を構えて騎士と対峙する。
「人はモノではありません。お断りします」

「あいわかった。ならば死ねいッ!!」
 剣を大上段に構えた騎士が跳躍すると、反射的に春霞も引き金を弾く。

「だめぇっ!!」
 少女の叫びが、騎士の一撃による轟音でかき消された。石畳の床にヒビが走り、土煙が舞い上がる。あわれ猟兵は真っ二つになったのか? 否。

「捕えられる側の気持ち、少しは分かった?」
「これ‥‥はッ!」
 ドラゴニアンのビーストマスター、アンバー・ホワイト(Snow・f08886)のユーベルコード"星屑の鎖"がしっかりと騎士を拘束し、紙一重の差で春霞への攻撃を逸らすことに成功していた。

「鎖から解き放たれる時が来た。全て終わらせるよ」
「小癪な、邪悪な怪物め!」
 標的をアンバーに切り替え、セルバンテスが跳ぶ。そのままユーベルコード"フォーリングローゼス"を発動し、己の武器を血の色をした薔薇に変化させて前に出る。それは、さしずめおとぎ話の竜とそれに挑む騎士のような構図。

「我が一撃のサビとなれいッ!!」
「決して折れてはいけない。黒は一番強い色‥‥」
 かつて母から貰った言葉を祈るように呟きながら、アンバーは異端の騎士に真っ向から立ち向かう。地面すれすれに地を駆け抜けて、薔薇の中で踊るように槍をふるう。

「‥‥」
 包帯の巻かれた少女は、春霞に庇われながらその戦いをぼんやりと眺めている。不思議と、怖くはなかった。

「こい‥‥つ!」
「それを背負うわたしは‥‥」
 アンバーの槍裁きが騎士を徐々に追い詰めていく。小さな竜のその戦いぶりに、少女は胸の奥に何か熱いものがこみ上げてくるのを感じている。
「何故だ!? なぜ我の剣はこいつらに届かない!?」

 ――強すぎるほどでいなくちゃいけない。

 白銀に輝くアンバーの槍が、騎士の甲冑を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

寧宮・澪
……ああ。
救いたくない、馬鹿がいた。
あれは、倒すもの。

【シンフォニック・キュア】で回復。
【鼓舞】も、【祈り】も、全部込める……あいつは、倒す。
そんな思い、全部乗っけて。
【歌唱】、するの。
くる攻撃は【オーラ防御】で軽減を。
倒れない、倒させない。
いっぱい、歌う、の。

何もかも蹂躙するしか、能がないのね……。
……きらい、なの。
こうした元凶も、こういう状況に入るしかなかった、人々も。
泣きたくなるような、眠ってしまいたくなるような。

怒り、と、眠気で、目をこすりながら、相手を睨む。
絶対、倒れない、からー……。

終わったら、女の子には、あったかい、毛布、届けたい、なー……。


推葉・リア
みんなありがとうお疲れ様、大丈夫よ休んでて…(バトルキャラクター解除)
……あれが店主の言ってた騎士ね…、アレの何処が騎士なんだか、私の騎士の皆の足元にも及ばないわ!

直接戦うのは苦手だけど『フォックスファイア』を個別に操って死角から放ったり瞬間に合体させて威力を上げて、敵の攻撃は相手をよく見て間合いには入らなくようにして【第六感】も使って回避していくわ

それと…効くかはわからないけど顔、特に目の部分を燃えさせてみる
一時的でも目潰しになれば少しは有利に立ち向かえると思うから

推しの皆があんなにも頑張ってくれたんだもの私もここで頑張らないと…!
この“養豚場”の絶望、私達が断ち切るわ!

★アドリブ共闘歓迎


宝座・四季
正義の騎士、か。
案外、昔は本当にそうだったのかもな。
今となっては『過去』にすぎないわけだが……哀しいもんだね。

騎士さんよ。あんたの言う『正義』ってな、一体なんだい?
倒すべき悪ってやつは、あんたにはちゃんと見えてるかい?
あんたの『領地』を見て、何か思うことは無かったかい?


銃と符を飛ばしながらけん制。
わざと剣で切り払わせるように仕向け、相手がそれに慣れた頃を見計らって本命の【七星七縛符】。狙いは敵の剣だ。
さっきまでの調子で切り払おうとすれば、符が剣に貼りつくって寸法さ。
ヤツの攻撃の起点はすべて剣。なら、それを封じることができれば……ってな。

トドメは他の仲間に任せる。頼りにしてるぜ?


アンリエット・シャルパンティエ
【POW】
【真の姿】は維持して戦闘継続
先の戦闘のセルバンテスの痙攣反応に着目し、重点的に攻める

「愉快よな”小僧”? オブリビオンの正義と騎士道が揺らいでおるぞ!」
「邪悪な吸血鬼がどうしたというのじゃ? ほれ、もそっと見せてくれ
壊れたカラクリの様な姿を!」

高らかに笑い声を上げ、恐怖や動揺を与える物言いと拷問具による捕縛
攻撃と武器受けで相手を牽制

捕縛等で隙を作れば【白炎】で追い打ち

「じゃが、吸血鬼の邪悪さはお主の言う通りよ。 それこそが妾という
個の意味、吸血鬼が育てた吸血鬼殺したる者のな。」


栗花落・澪
とりあえず、他に逃げ遅れた人が居ないかを確認して
もし少女を含めまだ避難が足りないようならそちらの援護に

流石に大の大人は難しいけど
子供なら抱えて飛べるかもしれないから
そのうえで少しでも安全な場所へ避難させたら
【飛行戦術】を生かして敵の攻撃を切り抜けつつ
サポートとしての立ち回り主体に行動
主にUCでの回復だね

あとは【歌唱、催眠】で翻弄
【全力魔法】で敵の体勢を崩させ
味方に攻撃の隙を作るよ

敵のSPD攻撃は馬狙い
WIZ攻撃には鈴蘭のUCで対抗

僕も、こういう場所にずっと居たから…
でも僕は救われて、世界を知って変われたんだ
だからこの子達にも色んなことを教えたい
その機会すら奪うなら、僕は絶対にお前を許さない…!



「ハァ‥‥ハァ! まだだ! まだ倒れんぞ!!」
 膝をついて崩れていた異端の騎士のオブリビオン、"サー・セルバンテス"が歯を食いしばって再び立ち上がる。
 ひび割れた鎧の胸元から赤黒い液体が吹き出すが、それでも剣を構える。

「我が家名の名誉にかけて‥‥このセルバンテス、敵に背は向けぬ! さあこい猟兵どもッッ!!」
「正義の騎士、か」

 満身創痍の状態でなお気を吐く騎士の姿に、思わず人間の陰陽師、宝座・四季(なんとなく団長・f04244)は呟いた。
「案外、昔は本当にそうだったのかもな。今となっては『過去』にすぎないわけだが‥‥哀しいもんだね」
「でも、この騎士を許すことはできないです」
 オラトリオのシンフォニア、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は逃げ遅れた人の確認を追え、ふわりと空から降りて宝座に合流する。つまり、もうこの騎士が取れるものなど何もないのだ。
 
「僕も、こういう場所にずっと居たから‥‥。ここの人たちの気持ちが良くわかる」
 口ときゅっと横に結び、凛とした眼差しでセルバンテスを見据える。
「でも僕は救われて、世界を知って変われたんだ。だから、この子達にも色んなことを教えたい」

「そんな機会すら人から奪うつもりなら‥‥。僕はお前を許さない!」
「ぬかせ悪党! きく耳持たぬッ!!」
 栗花落のユーベルコード"plumes de l'ange(プリュム・ド・ランジュ)"と、セルバンテスの"フォーリングローゼス"が真正面から激突する。鈴蘭と薔薇が吹き荒れる戦場を、異端の騎士が執念で駆ける。

「ゆくぞロジーナッ!! 騎士道ォォォ~~ッッッ!!!」
「‥‥っ!!」
 "ブラックキャバリア"をあわせてのセルバンテスのなりふり構わぬ騎馬突撃。あわやと迫るその時、炎が騎士の顔面に命中した! セルバンテスがまるで見当はずれの壁に馬ごと突撃すると、砦全体に轟音が響く。
「グアァァァァッ!!? この炎は‥‥と、とれぬッ!!」
「あんたの何処が騎士よ! 私の騎士の皆の足元にも及ばないわ!」
 妖狐のバトルゲーマー、推葉・リア(推しに囲まれた色鮮やかな日々・f09767)の"フォックスファイア"が延焼を続け、騎士を焼き続ける。
「こんなおぞましい場所を作って人を苦しめるなんて最低だわ。騎士の恥よ!」
「グッ‥‥ァァ‥‥無礼者め! 侮辱は許さんぞ!」
 騎士がグレートソードを力任せに振り回す。が、問題なし。感覚で斬撃を見ているのか、右へ左へとステップを踏んで推葉が跳ぶ。

「‥‥ハァ‥‥ハァッ! 馬鹿な! あり得ぬ、我が‥‥!」
「愉快よな、"小僧"」
 ダンピールのブレイズキャリバー、アンリエット・シャルパンティエ(白炎の殲姫・f07812)とオラトリオのシンフォニア、寧宮・澪(澪標・f04690)も駆けつけた。もはや鼠一匹逃さぬといわんばかりの猟兵の布陣。
「どうした? お主の正義と騎士道とやらは、この邪悪なる吸血鬼一匹、仕留められぬのか?」
「邪悪なる吸血‥‥ケッケケkkk‥‥"裏切り者"め! 貴様の言葉は耳に入れぬぞ!」
「あきれた‥‥。何もかも蹂躙するしか、能がないのね」
 クスクスと笑うアンリエットとは対照的に、寧宮は怒りと眠気で細くなった目をこすりながら騎士を睨む。

「‥‥きらい、だわ。こうした元凶も、こういう状況に入るしかなかった、人々も」
 寧宮は息を吸い込み、祈りを込めて歌いだす。水晶のように透き通ったその歌声に共鳴するように、栗花落もまたその場で歌を重ねる。
 戦闘状態である事を忘れてしまいそうなほどの荘厳な曲の中、拷問具を手にしたアンリエットの白い炎が荒れ狂う。

「懺悔するなら聞いてやってもよいぞ、セルバンテス」
「笑止! この命果てるまで何度でも‥‥! ‥‥!?」
 セルバンテスがユーベルコードを発動させようとした瞬間、本能的にそれが使用できない事を理解する。いやそれ以前に。
「うっ‥‥うごけ‥‥ぬ!!? 何だ、これ、は‥‥!!?」
「"七星七縛符"‥‥。悪いね。最初は銃撃に混ぜようかと思ったんだが、そうするまでもなかったよ」
 宝座の護符が、セルバンテスの動きはおろかユーベルコードさえも完全に封印する。これは解除をするまで毎秒寿命を削る危険なコードではあるが、拘束はあと数秒も必要ないくらいであろう。

「まさか‥‥これっは‥‥!? やめろ!! やめろ、来るなぁぁぁッッ!!!」
「セルバンテス、お主のいう通りじゃ、吸血鬼の邪悪さは、お主の言う通りよ。それこそが‥‥それこそが妾という」
 収束する白い炎の中、異端の騎士は彼女の口が微かに動くのを見た。

「塵は塵に‥‥"白炎"」

 騎士の断末魔が、砦全体に響いた。

 ◆◆◆

 推葉が足枷の外れた少女の足の具合を確かめている。
「大丈夫、痛くない?」
「あ‥‥ありがとう」
 おずおずとお礼を述べる少女に、ならよかった。と満面の笑みをしたためる推葉。その横から寧宮が現れ、無言で少女に毛布を差し出す

「えっと、これは?」
「ふかふかは、正義‥‥」
「せ、せいぎ?」
 何故か力強く頷く寧宮に押し負け、毛布を羽織る少女。
「‥‥あったかい」
 表情を和らげる少女の言葉に、ぐっ、と親指を突き立てて寧宮は頷いた。

 ◆◆◆

 体の半分程が炭化した騎士を、猟兵達が見下ろしている。

「我の‥‥領‥‥チ」
 騎士の視線は、既に猟兵達には向けられていない。それは遠い遠い空の先を見ているようで。

「騎士さんよ、あんた倒すべき悪ってやつが、ちゃんと見えてたかい?」
 闘いを終えた宝座は膝をつき、騎士に問いかけた。
「‥‥我の領の民‥‥ヲ」
「あんた、自分の『領地』のあの状況を見て、何か思うことは無かったのかい?」
「‥‥」
 騎士の瞳から光が消える。
「皆ノ‥‥者」
 騎士に見えているのは、この場の誰も知らない過去か、それとも今か。大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出す。

「大儀で‥‥アった」
 異端の騎士は完全に灰になって崩れ落ちると、風に吹かれて消えていった。

 ◆◆◆

 ダークセイヴァーはオブリビオンの支配する世界。今後も似たような事件は起こるかもしれないし、人々誰もが笑って暮らせる世界を取り戻すのは大変な事なのかもしれない。しかし。

 しかし猟兵達は、今ここで一つの絶望を確かに断ち切ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月09日


挿絵イラスト