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エンパイアウォー⑧~渇望する者たち

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「ひぃいい、た、助けてくれぇえ!」
「ま、まってくれ、あしが、うわぁあああああ!」
「いや、嫌、イヤァアアア!」
 山陰道のとある村。
 そこは今、肩から水晶を生やした屍人の襲撃により大混乱に陥っていた。
 突如現れた10体ほどのその集団は、運悪く側に居た村人を生きたまま食い殺し、その牙をまだ生ける村人へ向け走り出す。
 返り血で染まった顔と衣服、理性の宿らぬ濁った瞳、そしてなにより全身に浮かぶ人間の歯形が一度、人間によって食われた存在である事を物語る。
 その存在が人の言葉を発さずただひたすら、うめき声を上げながら迫る様は力なき村人にとって恐怖でしかない。
 すぐに村は恐慌を来たし、村人は追い立てられるがままに走り出す。
 途中、足をもつれさせたり息切れした村人を乱雑に抱え上げ、泣き叫び抵抗するのも意に介さず水晶屍人は生ける者達を追い立てる。
 逃げる村人達の行く先には、数多の人々が飢え、そして死した仲間の血肉を食う程に追い詰められた凄惨な戦のあった鳥取城。
 その城が不気味な沈黙を保ちつつ、逃げる人々を見下ろしていた。


「かつて大規模な兵糧攻め、その結果多くの餓死者を出した鳥取城。
 その地の怨霊を利用して作られた水晶屍人が近隣の村を襲い、鳥取城へ追い立てる事件が発生しています。
 通常の水晶屍人に比べ遥かに強化された水晶屍人、恐らく追い立てられた人々も同じように強力な水晶屍人の素材にされるという事ですね」
 予知した光景をクアド・ペントヘキシウム(バーチャルキャラクターの人形遣い・f09688)淡々と猟兵達に告げていた。
 今回は山陰道、鳥取城に程近い農村に突如出現した強力な水晶屍人、その駆逐が目的となっている。
「先に申し上げた通り、この水晶屍人は以前猟兵の皆様が戦ったものとは別格。無為無策に戦いを挑めば返り討ちにあう危険も伴います。
 そしてどうやら村人を目的地まで追い立てる事を優先してはいるものの、猟兵の皆様による妨害があれば人々を追い立てつつ、届く範囲の者に噛み付き同属化、自分達の戦力にし抵抗するようなのです。
 可能ならば同属化させず村人を助けられれば最良ですが、敵も見た目に反して実力は高いので無理は禁物です」
 敵の力量は高く、更に猟兵からの妨害を見越してか此方への嫌がらせとも取れる行動を仕掛けてくるという。
 となれば、最悪村人を守る事は諦めて戦いに集中するしかない場面もありえるという事だ。
「見捨てる際は心苦しいかと思いますが、同胞を増やそうとした分皆様への注意が逸れるのも事実。
 その機を逃さず攻撃すれば、一人の犠牲で強力な敵を倒す、という形にはなるでしょう。
 ですが、元々全員救えるかどうかは未知数の状況、既に最初、一人の村人が食い殺されるのは防ぎようもありません」
 介入できるのは最初、不運な村人が食い殺され人々が逃げ始め幾名かの村人が倒れたりし始めたタイミング。
 全ての村人を救う事は不可能、そして逃げ惑う人々の中から犠牲者が出るかどうかは猟兵の選択と行動、そして手腕に掛かっているという事だ。
「仮に犠牲者を容認する選択を取られてもそれは已む無き事、皆様がその選択によって責められる事はありません。
 選び、掴もうとした道へ躊躇い無く全力で挑まれれば胸を張れる事だと思っております。
 それでは、準備は宜しいですね? 転送に移らせていただきます」
 選択は猟兵に委ねられ、未来がどうなるかはわからない。
 ただ一つ確かな事は、猟兵達が動かねば多くの人々の未来が奪われ、そしてまた幕府軍への脅威が増える、という事である。


紅葉茉莉
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 こんにちは、紅葉茉莉です。
 今回もサムライエンパイアでの戦争シナリオ、目的は人々を追いたて捕らえ、拠点へと連れ去る水晶屍人の撃破と村人の保護となっております。
 両方を満たせれば最良ではありますが、最悪村人の犠牲が出ても人々を襲っている水晶屍人を倒せば成功となります。
 OPの予兆であった、人々が襲われる所に割り込み連れ去りを阻止、動けない村人を守りつつ強化された水晶屍人を倒してください。
 単体の戦闘力は高く、生半可な戦い方では苦戦は必至。
 上手く仲間と協力したり、様々な道具や要素を駆使することで戦況を有利に運ぶことは可能ですので、色々試していただければと思います。
 村の中には家屋や畑、田んぼやあぜ道、水路や肥溜めといったものがありますが比較的視界は開けています。
 単独ではあまり役にたたないかもしれませんが、皆様の技能やアイテム、ユーベルコードと組み合わされば大きな効果を発揮する事もあるでしょう。
 また、クアドも説明していますが敵は猟兵の妨害が加わると動けない村人に噛み付き、同属へと変化させる事を狙ってきます。
 護衛せずに戦えば戦いだけに集中でき、勝利は収めやすくなるでしょうがその分の犠牲者が出るのはやむを得ません。
 その点、どちらを取るのかは皆様次第、選択は委ねられています。

 では、ここまで長文を読んでいただきありがとうございました。
 ご縁がありましたらよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『水晶屍人』

POW   :    屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

峰谷・恵
「悪趣味にも限度ってものがあるだろうに、これだからオブリビオンは…!」

空在渾で最高速時速4900kmの飛行状態になり可能な限り急いで突入、最初の犠牲者に食いついている敵を速度を乗せた遅すぎた収穫期で斬り飛ばす(空中戦+怪力+鎧無視攻撃)。
その後上空から空在渾で強化した全射撃武器で村人を襲う敵を優先して攻撃(2回攻撃+誘導弾+鎧砕き)し、村人には敵が居ない方へ逃げるよう呼びかける。
村人が逃げるまでは敵の足止め重視、逃げてから撃破重視に切り替える。
敵が呼び出した霊の目眩ましはダークミストシールドをかざして防ぎ、射撃だけで村人を襲うのを止められないときは高速飛行からの遅すぎた収穫期の斬撃で引き剥がす


ラモート・アンゲルス
もういいです。苦しむ必要はないです。楽になって眠るです。

尼さんにでも姿を変えて歌うです。悲しみと安らぎを込めて。
彼らには罪はない。必要なのは救済なのですから。


ジニア・ドグダラ
なるほど……撤退戦のような、物ですか。ならば、私は妨害を行います。

棺桶の【封印を解く】ことで死霊を召喚。と同時に数体の死霊を、数発の弾丸に精製、水晶屍人や敵の足元に向かって発砲。命中したのなら死霊の【呪詛】にて対象の呪殺を試みます。地面に命中した場合、そこから死霊を大量に沸き立たせ、死霊の津波を盾にすることで村人たちが襲われ攫われないようにしましょう。

召喚されたのは水晶の霊、ですか……死霊術師を相手に、舐めているのでしょうか?
水晶霊が出現したと同時に数体の死霊を取り付かせ【生命力吸収】することで水晶霊を掌握。その閃光を水晶屍人に向けて発して妨害し、水路や肥溜めに足を取らせ【時間稼ぎ】します。


霧島・絶奈
◆心情
成る程、こう言った策を思い付く手合いなだけあって非常に厭らしい手を使ってきます
だからこそ、そう言った知恵者気取りの策を砕きたくもなるのですが…

◆行動
逃げる村人に「死にたくなければ城には絶対に向かわない」様に言い含めます

『暗キ獣』を使用
軍勢を展開し敵を包囲
村人の護衛と避難補助を兼ねつつ、軍勢による【範囲攻撃】で敵を殲滅
屍兵は槍衾にて迎撃し避難経路の確保を、屍獣は遊撃を其々担当
加えて何体かの屍兵と屍獣で村人を安全地帯まで直接護衛

私は【目立たない】事を活用
軍勢に紛れながら【罠使い】として避難経路に迎撃用の罠を設置
接敵時は【マヒ攻撃】を【二回攻撃】

負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復


山北・樅
敵は殺す、味方と村人は殺させない。
悩む理由はないし、あんな気持ち悪い奴ら、早く殺さないと。

逃げ遅れた村人を狙う敵を優先して狙う。
気付かれてないなら背後から、こっちに向かってくるなら振り回し攻撃を掻い潜って接近。
【刺天】を使って顎の下から上へ貫いて、噛みついたりできないようにして殺したい。

強い奴らしいし、連携できる味方がいれば多方向から仕掛けて確実に仕留める。
敵の注意を引けたら敗走を偽装して村の家屋の陰に隠れて、不意打ちも狙ってみる。
「…何度でも、殺す」

アドリブ連携歓迎



 突如出現した人々を襲う脅威、水晶屍人が村人を食いちぎり絶命させ、恐怖に慄く村人が走り出したその刹那。
 本来ならばありえない速度、人の目には視認するのが困難な速度にて戦場に飛来する影一つ。
 その影が村人に迫ろうと走り出した水晶屍人の脇を掠めれば腕から飛び散る濁った血液、そしてほんの一瞬だけ遅れ、大地を揺るがす轟音と共に地面が砕け、跳ね上がり、周囲にあるものを巻き上げ地形の崩壊が起こっていた。
「ちょ、ちょっと急ぎすぎちゃったかな」
 飛翔しての一撃、そして空中に浮かび状況見渡しながら呟く峰谷・恵(神葬騎・f03180)が頬をかく。
 超音速旅客機の二倍近い速度で一気に突っ込んだのだ、ソニックブームによって地表の破壊が起こるのも無理はない。
 しかし、だからといって村人を襲う水晶屍人を取り逃がす道理もない。
「まあやることに変わりはないよ。悪趣味にも限度ってものがあるだろうに、これだからオブリビオンは……!」
 地形ごと破壊してしまったが初動で相手の出鼻を挫いたのは事実。
 彼女は上空にて熱線銃、キャノン砲、マシンキャノンの狙いを定めれば巻き上げられて地面に落下、追いかけるはずだった村人を見失い標的探す水晶屍人へと容赦ない砲撃を開始していた。
「成る程、こう言った策を思い付く手合いなだけあって非常に厭らしい手を使ってきます。
 もっとも、少々やり過ぎな一手で完全に手が止まったようですが」
「そうですね……撤退戦のような、物ですが。既に思惑通りに出来ない様子、なら私は追加で妨害を行います」
 崩壊した大地、追い立てるはずが足を取られ思う様に村人へ迫れぬ水晶屍人を遠くに見つつ、戦場に向かう霧島・絶奈(暗き獣・f20096)とジニア・ドグダラ(白光の眠りを守る者・f01191)が足を速める。
 走りながら絶奈は己の体を異形へ変化、その体を覆い隠す燐光が暈すシルエットは最早人のものではなく、霞がかった下で蠢く者は神、または悪魔と称される姿そのもの。
 そのまま彼女は屍者の軍勢と数多の屍獣を召喚、村人にとっては恐怖を振りまく新手の脅威に見えるが絶奈の命令の下、屍者は槍を掲げ行軍。
 本来ならば村人と水晶屍人との合間に割り込む様に移動する筈だったが砕けた地面にて進軍は困難、となれば次善の手として包囲する様に広がれば、行軍不能な軍勢の穴を埋める様に屍獣が四肢を用いて縦横無尽に駆け巡り、荒れた足場を苦にせず水晶屍人狙い飛び掛っていた。
「足止め、感謝します。では突破出来ないように此方も妨害を始めます」
 飛び掛った屍獣を振り払おうと腕を振り、そして肩の水晶を光らせて悪霊を呼び出す水晶屍人。
 単体の能力では劣る屍獣が打ち払われるが足場の崩壊、上空からの射撃が加わればジニアが攻撃へ移る時間には十分すぎた。
「沸き立て! 力及ばず命を弄ばれし、殺意を抱き続ける者よ!」
 走りながら背負った棺桶、その鎖が緩んで封印が解かれれば。
 彼女の手にした拳銃に棺より滲み出た数多の死霊が乗り移り、弾丸と一体化。
 そのままジニアが引き金引けば、禍々しきオーラを纏った弾丸が続けざまに発砲されて水晶屍人の脚部、そして地面に命中し弾け飛ぶ。
 直後、外れた弾丸が跳ねた地面より這い出した死霊が水晶屍人の脚部に命中した弾丸、そこより生じた死霊と共に水晶屍人へと絡みつき自由を奪えば呪いの言葉をささやいてその生命力を奪っていく。
 更に別の地点では地面に着弾した弾丸、それが呼び水となってこの地にて死に、いまだ成仏できぬ霊を引き寄せた弾丸の死霊が先頭となって怨念の障壁を形成。
 初動、あまりに激しい恵の一撃で腰が抜けてしまったりして動けぬ村人を見つけた水晶屍人の進路を阻むように蠢いて、絶奈の軍勢が包囲、そして村人を守る壁となる時間を稼ぐ、その為に機能していた。
「地形が崩れたか。けど悩む理由はないし、あんな気持ち悪い奴ら、早く殺さないと」
 進軍がとまった水晶屍人、接近戦を行う面々には少々やりにくい状況にも関わらず眉一つ動かさず。
 敵は殺す、味方と村人は殺させない、という明確な目標を実行すべく山北・樅(自由隠密・f20414)が崩れ、隆起した地表を駆ける。
 パッと見て地形の崩壊具合、崩れた水路から洩れた水によるぬかるみ、脆くなった場所がどこかを勘で把握。
 飛び跳ねながら比較的頑丈な場所を乗り継ぐ形で地面を蹴って水晶屍人へ急接近、屍獣と死霊の障壁にて阻まれ注意の逸れた水晶屍人に狙いを定め背後から迫り、腕を伸ばせば相手を掴める距離になる。
「……何度でも、殺す」
 樅がぼそりと呟いて伸ばした左手、それは水晶屍人の後頭部を掴んで固定すれば、続けざまに顎下から脳天へ貫くように伸びたのは彼女の愛用する短刀、村雨小刀。
 頭蓋骨を突き破り見えた刀身、それは流れる血液と脳漿を跳ね除ける様に覆う水が呪詛がかった一品であることを物語っていた。
「まずは一体、けどこのままは厳しいね」
 水晶屍人は始末したが残る面子の動きは悪くない。
 足をとられ動けぬ者や死霊の妨害、上空からの射撃で動きが鈍った面々をカバーするように別の水晶屍人が農具を的確に振り回せば、移動不能の屍人が肩の水晶から霊を召喚。
 光り輝くことにて視界を奪い、射撃精度を落とす状況で切り込むのは無理があると樅は判断、一旦彼女は地面を蹴って飛びのいて、次の切り込む機会を待つことにしていた。
「おおお、うおああああああ」
 獲物を取り逃がした悔しさか、それとも攻め立てられる苦しみからか。
 水晶屍人たちは呻き声を上げ反抗とばかりに動き出す。
「もういいです。苦しむ必要はないです。楽になって眠るです」
 その進軍を阻もうと立ちふさがったのは翼を広げて舞い降りたラモート・アンゲルス(生きた概念・f18548)であった。
 直後、彼女は飢餓にて仲間を喰らい、また自らも喰われた者に救いを与える尼の姿に変化。
 優しさ、労い篭った子守唄にて水晶屍人を止めるべく動くがその歌声をかき消す様に屍人たちは一際大きな叫びを上げて進軍、振りかざした農具の一撃をかろうじてラモートは剣で受け止めよろめきながら後ずさっていた。
 あまりに激しい怨念、それと同時に強化された個体であるが故に攻撃が通じ難い事もあったが他の猟兵と比べあまりに効果が薄すぎる。
 足を取られぬように気をつけながら後退し、再度ラモートは歌うも水晶屍人は農具を振るいその拘束を打ち払う。
 歌声を確実に耳へと届ける、その為の工夫の不足。
 聞かせるために動きを止めるか仲間の行動に併せるか、ただ歌うだけではない何らかの手を打たなかったが故の不利を悟りつつ彼女は再度後退、距離を置いて好機を待つのであった。


「死にたくなければ城には絶対に向かわないように。あの場こそ怨念の溜まり場です」
 城の方角へ走り出していた村人、その前へ急ぎまわり込んだ絶奈が言い聞かせる間に彼女の召喚した屍者の軍勢が遅れて到着、槍を構えて防壁つくり村人の不安を和らげるように立っていた。
「後は私たちが守ります、不用意に動き回らず安全な場所まで同行して下さい」
 絶奈の放つオーラ、そして異形の姿に気圧されつつも村人は提案を了承、なにより守って戦ってくれている人に歯向かう程愚かではない。
 彼女の使役する屍兵が周囲を囲う円陣に加え屍獣が接近されれば真っ先に飛びかかれるよう数匹がうろつく状況。
 護衛を受けて村人が避難すれば猟兵が全力で攻撃するに支障はない。
「よし、あっちに逃げれば安心だね。それじゃ一気に攻めるよ!」
 上空から火砲を持って攻撃していた恵は万一のケースも無くなった事を確信、必死で輝き、目くらましを狙う水晶の霊が放った光を黒き霧の盾にてやり過ごし。
 光が収まったその刹那、反撃とばかりにアームドフォートの火砲が火を噴き、轟音と共に地面で炸裂。
 巻き上げられた瓦礫の隙間を縫うように狙い定めた熱線銃のビームが水晶屍人の右肩を焼き溶かし、悲鳴と共に水晶屍人はのた打ち回る。
「……死霊術師を相手に、舐めているのでしょうか?」
 上空からの砲撃、それと同時に射撃を放っていたのはジニア。
 水晶屍人が生み出した水晶霊、その使役が自身と比べあまりに拙い事を見て呆れながら言葉を紡げば、放たれた銃弾が地面をえぐり即座に生み出される彼女の死霊。
 今度の死霊は水晶屍人本体ではなくそれが呼び出した水晶霊へとまとわりつき、生命力を収奪。
 そのままコントロールを奪い取り、水晶屍人が予期せぬタイミングで発光させて逆に相手の視力を一時的に奪い去り、そして新たな死霊が組み付いて屍人を引けば破損した水路、そして生じた泥濘へと誘って行く。
 ふらりとよろめき足を取られ、もがく水晶屍人。
 周囲を見れば同じように引かれた者たちが肥溜め、あるいは地面の割れ目に足取られ、その動きを鈍らせていた。
「正面から仕掛けます。注意は引くので側面、後方はお任せします」
「わかった。確実に殺す」
 動きが鈍った好機を逃さず、絶奈が槍と剣を構えて駆ければそれに呼応し水晶屍人の後方、側面狙いまわり込む樅。
 オーラを必要以上に滾らせて、体を覆う蒼白い燐光を一際強く輝かせた絶奈が繰り出す槍の突きと剣の斬撃。
 続けざまに放たれた攻撃は相手の動きを鈍らせる力を持ち、反撃に振るわれた農具の殴打や噛み付きは彼女の纏うオーラが障壁となり深手とは為りえずに。
 動ける者の注意を引き付けた絶奈を倒そうと動いた刹那、首筋に走った刀身から夥しい量の血液と少量の水滴零し、また一体の水晶屍人が倒されていた。
 戦況は完全に決したと言って良い。
「ここまでよく頑張りました。おやすみなさい」
 押し込まれた水晶屍人、その耳へ届いたのは凛として透き通るようなラモートの声。
 戦の果て、同胞を喰い、また自らも喰われた彼らに罪は無い。
 ただ、こうして利用され、再び食人へと駆り出される悲しみ、苦しみからの救済が必要と彼女は呟き、響く歌声は未だ頑強に抵抗しようとしていた水晶屍人の力を奪い、そして緩やかに動きが鈍る。
 移動も、攻撃も封じられた残存戦力には最早抵抗は不可能。
 生き残っていた者も次々に討ち取られ、既に存在する怨念、そして素材を用いて更なる脅威を生み出す悪辣な策。
 厭らしい知恵者気取りの計略によって起こった山陰地方の村襲う水晶屍人、そしてそれを利用した屍人量産の企みの一角は防がれていた。

 土地の一部崩壊はあれど、人的被害は防ぐことが不可能だった一人の犠牲者以外になくほぼ完全な勝利。
 だが迫る脅威は此れだけに留まらず、更なる苦難も予想されるこの大戦。
 次なる戦場が迫る中、如何なる仕掛けが待つか、それはまだ分からない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月17日


挿絵イラスト