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エンパイアウォー⑦~透破旋風

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●車懸かりの陣
「上杉謙信率いる上杉軍精鋭部隊が、関ヶ原で幕府軍を蹂躙しようとしてる」
 そう切り出したのは浮世・綾華(千日紅・f01194)、紅を纏う、鍵のヤドリガミだ。
 上杉謙信の軍神車懸かりの陣は、上杉謙信を中心に、オブリビオンが円陣を組んで敵陣に突入、まるで全軍が風車の如く回転しながら、最前線の兵士を目まぐるしく交代させるという、上杉謙信のずば抜けた統率力が可能にした「超防御型攻撃陣形」。つまり、常に万全の上杉軍と戦わねばならないにも関わらず、上杉軍側は充分な回復&バフの時間を得ることができるのだ。
 また上杉謙信は、自身の復活時間を稼ぐ為にもこの陣形を使っているため、上杉軍も倒さなければ、謙信を倒すことはできない。

 今回の目的は、車懸かりの陣の最前線にいる上杉軍、妖魔忍者を撃破すること。この妖魔忍者は防御力アップ&自動回復(特大)の効果を得た、最高のコンディションで襲い掛かってくるため、並大抵のダメージでは、耐えきったうえで回復してしまう。
「敵の防御を撃ち抜いて、一撃で撃破できるような作戦が必要になる。一体一体が大幅に強化されてる状態で、簡単に――とはいかんだろーが」
 まあ、あんたらなら、できんだろ。緋色の視線が、集まった猟兵達の意志を確かめるように右から左へと移動した。信頼を置くほど、見知った仲じゃないものもいるだろう。けれど、その瞳をみれば分かる。少なくともその猟兵達が、己が生まれたこの世界を、愛する世界を救わんがため、力を尽くそうとしていることが。

「嗚呼、それから――」
 今回戦う妖魔忍者は、既に滅んだ忍者の里で、非人間的な修行と人体改造によって造られた人間兵器――だったらしい。武術や忍術、改造された肉体で戦い、忍者として必要とされる以外の精神は徹底的に破壊されている。
「嘗てこいつらが、どんな想いで生きてたかなんて知ったこっちゃねーが……そうだな」
 陣に組み込まれ何度も回復を繰り返し、忍者として戦うことを全うしようとしている姿は何処か物悲しくも見えるのだと綾華は言う。
「在るべき場所に、還すぞ」
 この世界を、守るためにも。
 だからどうか、力を貸してほしいと緋色を細め、グリモアを輝かせた。


紗綾形
 紗綾形(さやがた)と申します。
 どうぞよろしくお願いします。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●特殊ルール
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。

●プレイング
 1人、または2人で1体を撃破するようなプレイングをかけてください。軍神車懸かりの陣への対抗策、大ダメージを一気に与えられるような工夫や、連携で回復させずに撃破するような工夫があった場合は、プレイングボーナスが入ります。
 この戦いや敵に対する想いなど、心情などもありましたらご記載頂けたらと思います。

●受付期間
 公開と共に受付いたします。お手数をおかけしますが、受付終了についてはマスターページをご確認ください。
 達成最少人数で完結する予定です。有難くも多くのプレイングを頂けた場合、内容に問題がなくとも採用を見送らせて頂く場合がございます。(先着順ではございません)
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第1章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

五条・巴
統率、軍略のほかにも人を弄ぶことも上手なんだね
褒めてないよ
僕は各個撃破するほどの力はないから
共に戦う猟兵と併せて戦うよ

回復できても怪我をすれば痛いのは当たり前のことなんだ
君らがそこまでして上杉謙信に従う意義を問いたいところだけど、もういいよ。
これで最後にするから、ごめん。
"薄雪の星"
付与する属性は風
相手と充分に距離を取って。鬼火や衝撃波は僕の銃弾が届くまでの間に相殺して消えてくれれば御の字だ。
風車の如く、というのだから動きを止めようか
絶えず関節を狙って銃を打ち込む
回復時間を与えないように、仲間が攻撃しやすいように。

手向けの鉛花を贈ろう

◎〇☆


秋穂・紗織
幾ら己が役割を果たそうとしても
彼らはただ、ただ、未来を削ることしか出来ない
望む明日がなく、理想がなく
……兵器として育てられた心は、残骸の海から浮かび上がって、何を想うのか

「何をしようとしているのか。それが何に繋がるのか」
その瞳は決して、この世界を、移ろう毎日を捉えていないのでしょうね

ならばせめて、これ以上に血で穢れぬ前に


狙い斬り崩すのは、全身に全霊を込めた一点への全力集中
車懸りとは常に高速で動く為に、そこには流れの勢いと向きがある

その全軍の流れを見切り、一体へと狙いをつけて
迎撃厭わず、捨て身の一撃+早業+二回攻撃での都合、十八閃にて斬り伏せましょう
一瞬、刹那
その吐息の先に、望むもがあるのだから



 軍神を守り渦巻くは旋風の如く。傷を負い負わせ、吹き出し浴びる鮮血は軈て色を変え、黒い装束を更に深い色へと変えていく。
 それが彼らの役割であるとするならば、なんて悲しいことなのだろう。
 彼らはただ、未来を削ることしか出来ない。
 望む明日も、理想もない――兵器として育てられた心は、骸の海から浮かび上がって尚、何を想うのだろうか、と。
 秋穂・紗織(木花吐息・f18825)は、栗色の双眸で戦場を見つめた。同じ色の柔らかな髪を戦場の風に靡かせて。
 秋の紅葉から降る木漏れ日の、温かなひかりのような穏やかな雰囲気は、戦場で合っても変わることはない。
「……何をしようとしているのか。それが何に繋がるのか」
 普通の少女と変わらない、華奢な指先が握るのは、涙に濡れるような色合いの白き刀身を持つ妖刀、天峰白雪。

 狙うのは初めから、一体……一点のみ。
 回転を、流れを読むことに全神経を集中させる。

 ぎょろり刺す視線は、妖刀の美しさに惹かれるものがあったからだろうか。
 紗織はその四白眼を捉えると、白雪を体の正面に構えた。
 あなた方の眸から、涙が零れることはないのかもしれない。
 ならば、この刃がその代わりに涙を流しましょう。
 これ以上、血で穢れぬ前に此処で終わらせましょう。
 今、私に出来ることは、それだけしかないから――。

 けれども、私にはそれが出来るから。

 狙いをつけた一体へと目掛けて、走り込む――が。
 渦巻くのは個体だけではない。その忍者を取り巻く気流が、ただでさえ素早い忍の動きをより高速なものへと変える。
 忍法鎌鼬。振るう忍刀から放射される斬撃が、紗織を襲う――かと思われた時だった。

「よそ見はいけないな」

 それは敵の忍に向けた「僕の、美しい彼女を見てよ」と言いたげな、誘うような声だった。
 注いだのは、何だっただろう。
 弓矢か? 銃弾か? 否、違う。

「――星?」

 思わず呟いた紗織を、プルシアンブルーの虹彩に映して微笑んだのは五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)。
 七曜の星を模した流星は繰り出される衝撃波を相殺するように撃ち抜いていく。
「動きを止めるのは、僕に任せて」
 巴がそう告げたのは、紗織の手に握られた妖刀を目にしたから。
 自分には各個を撃破するほどの力はない。自分の力量は理解している。
 けれどそれは、自分を卑下しているわけではなく。
 彼もまた、自分の役割を全うすべく動くことを決めていただけ。

 彼女が接近し、大きな一撃を与えてくれるなら、自分は十分に距離を取って、彼女が動きやすいよう、敵を確実に仕留められるように努めようと。
 彼女も猟兵。きっと想いは同じだと。

 隙を伺うのに、何度も回復を繰り返される彼らを見ていた。
 回復が出来ても、怪我をすれば痛いのは当たり前のことのはず。
 けれど彼らには、感情だけじゃなく。きっともうそんな感覚すら残ってはないのだろうと感じた。
 君たちがそこまでして、あの軍神に従う意義はきっとない。
「だから、もういいよ」
 これで、最後にしようと動きを止めるべく、関節に打ち込む星。
 隙を与えない、止むことのない流星――舞い降るそれは、雪の一片にも似ていた。
 だから、巴は告げる。

「手向けの鉛花を」

 ――どうか、安らかに。

 向けられた視線に、紗織は頷いた。
 放つ刹那。己が傷つくことも厭わず、全てを賭け斬り伏せる。
 その吐息の先に、望むものがあるから。

 黒を大きく裂けば、散る鮮血。
 天峰白雪が輝く。
 切っ先を伝い零れる紅は、流せなかった彼らの涙のようだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ


…確かに、悲しい
この人たちも、望んでこんな姿にされたんじゃない
いやそうせざる得なかった人もいるかもしれない
だから…俺の氷で痛みを与えないように
楽にしてやれるかな

飛び交う鬼火を潜り抜ける為に
氷を敢えて身体中に纏い、熱さを軽減させるよう工夫し
氷の道を作りながら鬼火たちを突っ切り、敵の至近距離まで全速力で滑り込む

敵の攻撃はチェーンソー剣の《メチェーリ》で受け止め
振動する刃は敵の刃を受け止めて離さない筈

大丈夫
俺はお前を眠らせに来たんだ
もう戦わなくていい
もう楽になっていいんだ

敵の刃を受け止めたまま、【2回攻撃】を乗せた『風神の溜息』を
息が続く限り、至近距離で冷気を浴びせ
眠らせるように終わらせてやりたい



 透破旋風、忍は廻る。
 己の意志とは関係なく――否、意志などきっと存在しないだろう。
 けれども、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は思うのだ。

 ――悲しい。

 その姿を見て、そう思わずにはいわれなかった。
 いつもの快活な表情とは違う。菫色の片目がその感情を纏い揺れる。

 眸に映るのは、軍神の歯車の一部となって廻る漆黒の影。
 抑々、この忍達は嘗て、自ら望み、このような姿になったのだろうか。
 いや、そうせざるを得なかった人もいるかもしれない。
 理由があって、望んだ人すらもいるのかもしれない。
 けれど、例えそうだとしても、今は違うはずだ。
 骸の海から蘇ってまで、全うしようとする想いなどはないはず。

 ――少女は想う。

 せめて自分の氷で、痛みを伴わぬように楽にしてやることはできないだろうか、と。

 敢えて氷を身体中に纏うのは、向かい来る鬼火の熱さを軽減できるように。
 氷の道を作りながら、飛び交う炎を避けることなく突っ切ろうとすれば――いくら冷気を纏おうともじわりと焼けるような熱が服を、皮膚を焦がした。
「――っ」
 しかし、彼女は止まらない。
 氷のブレードは氷結された道を一直線に駆ける。
 そこには軽やかさなど、なかったかもしれない。
 でも、だからこそ。

「っ大丈夫」

 何が? そんな問いさえも籠ることのない四白眼。
 握るメチェーリ。それは凍てつくほどの冷気を纏った氷の刃。
 素早く繰り出される忍刀をそれで受け止める。
 カキンと散る火花にも、怯まない。
 反動で右眼に掛かる髪が揺れた。
 菫色の双眸が、強く揺るがぬ意志を歌う。

「もう戦わなくていい」

 何故? 戦うのだろう。そのように命じられている。
 それしかない、それしかない――のに。

「もう、楽になっていいんだ」

 一瞬、ほんの一瞬。ぎょろりと剥かれた眸が、瞬いた――気がした。
 それはもしかしたら、気のせいだったかもしれない。
 でも、ヴァーリャは目を細めた。
 柔らかく笑んで、その幼さを残す唇から絶対零度の吐息を放つ。
 受け止めた刀はふるふると震え、次第に白く、白く。
 それは少女の唇を借りた、風神の溜息。

 眠らせるように、終らせてやりたい。

 だから、息が途切れても繰り返した。
 軈てそれが動かなくなるまで、何度も――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

終夜・嵐吾
うん、難しいことはようわからんのじゃけど
ようは――姿かたち無くなるまで燃やしてしまえばええんじゃろ

人間兵器、か…
弄られて壊されて、それでもなお戦いの中におる
可哀想などとは思わんのじゃけど、己などなく使われるだけのものは――きっと守るものもわからんのじゃろな
そんな輩には、負けんよ

元気そうな相手見据え、狐火集わせ燃やし切る迄炎は止めず
一つ二つで足りぬなら己の持ちうるすべて束ねて燃やし尽くす
狐火を火柱として高く高く燃え上がらせよう
これが一番簡単で間違いないからの

敵が鬼火向けてくるなら、それも糧にしてしまおう
わしの身を燃やすなら、狐火で喰ろうて倍々にして返してあげよ
やられたなら相応にして返す性分でな



 猟兵達の猛攻を受け、その数を減らしながらも旋回を続ける忍達。
 鮮血を流し苦しもうとも、声ひとつ上げることなく握り直される刃を見て、灰青の長髪をゆらり揺らすひとりの妖狐。戦場が見渡せる場所でこてりと傾げていた首を、正の位置に戻して笑みを浮かべたのは、終夜・嵐吾(灰青・f05366)だ。
「うん、難しいことはようわからんのじゃけど。ようは」

 ――姿かたち無くなるまで燃やしてしまえばええんじゃろ。

 決して小さくはないその身体を軽やかに跳ねさせて戦場を駆ける。柔らかな灰青の髪が、尾が、戦場の風を受け揺れる。

 未だ、体力を削られるばかりか、その四白眼をぎょろりと向けてくる応戦体制の者に目を付けて、嵐吾は笑う。
 人間兵器。身体をまるで機械のように、玩具のように弄られ壊され――骸から這い出てまで尚。戦い続けることしか出来ぬ、哀れな道化。

「燃えよ」

 おいで、と。まるで誘うような火だった。
 浮かぶ狐火に吸い寄せられるように、先ほど目を付けた一体が向かい来る。
 駆ける足袋は音を伴わず、しかし血のような紅い鬼火が黒装束の周りにゆぅらり浮かび灰青に向かって放たれた。炎がぶつかる。衝撃で溢れた火の粉が、蘭吾の髪を僅かに焼いた。けれども、攻撃の手を休めることはない。

 嗚呼、虚ろの主よ。
 己などなく、使われるだけの歯車と化した忍よ。
 そんな者たちを、嵐吾は決して可哀そうだとは思わなかった。
 慈悲など、くれてやるつもりはない。……けれど。

 もう、守るものすら分からない。
 嘗てはあったかもしれない、意志も何も存在しない。そんな輩に。

「わしは負けんよ」

 気づいた頃には何時だって遅いのだ。
 火を追うように駆けていたはずの足が、一瞬止まる。

「やられたなら、相応にして返す性分でな」

 忍を取り囲む炎。それが一斉に中心へと向かえば、鬼火すらも巻き込み高く高く燃え上がる火柱。細かいことを考えるのはどうにも性に合わない。だから初めから、浮かんだ答えはひとつだった。敵も火を操るのであれば、己の持ち得るすべてでそれを喰らい、糧にしてしまおうと。

 おお、よく燃えておる!

 バチバチと燃え上がる火注を、まるで宵の華を見上げるように尾を揺らして。
 戦場に響いた無邪気な声を、聞いた者はいただろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​

薬袋・布静
【◎】
死ぬことも許されず、苦痛からも解放されぬまま
生きた屍同様に駆り出される…哀れやな

自分の意思も持たぬ壊れた精神にいくら説こうとも無意味
ひび割れたモンに水を注ぐんと同じやもんなあ…
壊れモンは大人しゅうゴミ箱ん中へ還ろうか

間合いに入らぬよう気を付け【蛟竜毒蛇】を展開
傷口が治され塞がる前に「傷口をえぐる」ように幾らか忍び込ませ
残した数十匹のウミウシが外、忍ばせたモノが内から
毒と捕食を繰り返す

それだけではなく【潮煙】の青煙の海を泳ぐホホジロザメ
毒(毒使い)を含んだ牙で喰らう
念の為にこちらも敵の行動を学習(学習力)し
敵の回復と同様に此方も「医学」にて味方や自身を治癒

さあて、耐久の背比べと行こうか


トトリ・トートリド
…トトリも、役に、立ちたい

近くの仲間と、協力する
孔雀緑青の絵具弾
背中、死角、狙われてたら、庇うように飛ばして
皆、だいじょうぶなら…逃げ道塞ぐように、反対側から
…回復されるなら、一度じゃ、きっと足りない
でも、外れ弾で蔦の魔法紋、描き重ねたら
防御を打ち破る強さ、トトリにくれるはず

鬼火の炎、あつい…けど
戦いに巻き込まれるひとたちは
トトリたちより、弱い…痛みも、こんなものじゃ、ないから
火には、水…エレメンタルファンタジアの、水の、竜巻
孔雀緑青でめいっぱい、高めた力、乗せて放つ
…自分も纏って、少しでも長く、耐えてみせる

…楽しい戦いも、あるって。知ったけど
こんな戦いは、好きじゃない
もう、誰も、傷つけないで



 悲しいことは、嫌い。

 緑を纏う、異形の――けれども、心優しい青年、トトリ・トートリド(みどりのまもり・f13948)はいつでもそう思っている。そう、今この瞬間も例外ではない。

 悲しいことは、嫌いだ。
 悲しむひとを見るのも、嫌だ。
 だから、青年は武器を取る。

「……トトリも、役に、立ちたい」

 零れ出た音は、強い想い。
 傷つく人を見たくないから、増やしたくないから。
 人と関わるのは得意ではないけれど、人の優しさは知っている。
 この戦いに勝つことが出来なければ、多くの犠牲を増やすことになってしまうだろう。
 幸せな生活を脅かす――そんなことは、絶対に防がなければならない。
 トトリが向けた視線の先、ひとりの男の姿があった。
「死ぬことも許されず、苦痛からも解放されぬまま、生きた屍同様駆り出されるなんて――哀れやなあ」
 まるで退屈を持て余すように呟いたその男の名は、薬袋・布静(毒喰み・f04350)。男は異形の青年と目を合わせると、口布の下で口端を吊り上げて嗤う。
「共闘相手をお探しですかい? ええですよ。俺も誰かと協力しよ思ってたとこやしねえ」
 応答をする前に続けられる言葉に、口下手なトトリはこくこくと頷くだけで精一杯の様子。けれど、今はそれで十分。無駄なお喋りをしている暇がないことは、布静とて承知している。

 先ず先に、風車の如く回る忍を狙うはトトリだった。
 狙いをつけた数体目掛けて放つ、ペイントローラー。孔雀緑青の飛沫が漆黒の姿を鮮やかな緑へと染める。――が、それだけで動きが簡単に停止することはない。
 しかし一瞬の隙さえ出来れば十分だった。俺が相手をしてやると、距離を詰めながらも相手の間合いには決して入らぬように。沼のように歪んだ地面から、這い出るように召喚される霊。蛟竜毒蛇。トトリがダメージを与えた場所は何とも分かりやすく染まっている。数十匹のそれが傷口が塞がる前に猛毒の棘を刺し、捕食しを繰り返せば、蓄積するダメージは止められない。
「さあて、耐久の背比べと行こか」
 自分の意志も持たぬ壊れた精神にいくら説こうとも無意味。
 憐れんだところで、一体何が残るのだろう。
 答えはひとつだ。そこには「何も残らない」。
 そう、それはまるで、ひび割れたものに水と注ぐのと同じだと布静は考える。
 水――そう、水?

 ぴちゃり。

 冷たい水が、布静の額に触れた。
 傷を抉られた忍の周りに浮かびあがったのは、無数の鬼火。
 それが布静を襲う前に、打ち消さんと舞い上がったのは水を含んだ竜巻だった。
「おやおや、こりゃあまた」
 ――随分と立派な竜巻ですねえ。
 見れば、彼の足元に浮かんでいたのは蔦の魔法紋。ローラーから飛んだ飛沫が描いていたものだ。それはトトリに力を与えてくれる魔法の力。
「……大丈夫?」
「ええ、おかげさんで」
「……鬼火の炎、あつい……けど」
 戦いに巻き込まれるひとたちは、自分たちより、ずっと弱い。
 受ける痛みだって、こんなものではないから。纏った水魔法で消しきれない熱さも、今はじっと耐えて。大丈夫。だって、他の誰かが傷つくほうが、ずっとずっと痛いのだ。
 悲しいだけじゃない。楽しい戦いもあることを知った。
 けれど、これは違う。こんな戦いは好きじゃない。
「――もう、誰も、傷つけないで」
 トトリの想いを形容するように力強く舞い上がる水の竜巻。そんなトトリの姿を見て、笑みを深めた男は、潮煙から青煙の海を泳ぐホホジロザメを浮かび上がらせる。
「もう、限界やろ」
 毒に侵された身体は、もう忍として俊敏に動くことなど叶わないだろうに。それでも向かい来るのだ。さあ、これで終いにしよう。
「壊れモンは、大人しゅうゴミ箱ん中へ還ろうか」

 猛毒を含んだ鮫の牙が、その個体を骸へと還した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月15日


挿絵イラスト