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エンパイアウォー⑩~海へ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「折角だから、海へ行こうか」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)はそんなことを呟いた。勿論、遊びに行くわけでは無いのだけれども、どうせなら涼しいところがいい、とぼやくぐらいには暑さにやられているようであった。
「っていうのも、知ってる人もいるだろうけれども、京都の花の御所を制圧した魔軍将、大悪災『日野富子』って言う人がいて、この人がまた」
 面白おかしいんだ。と、言う言葉を若干、飲み込んだようである。
「……すごくお金を持っていて、そのありあまる財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造たみたい。……本当なら、船だってバイクだって、作ったからってそう簡単には動かせない……はずなんだけれど」
 だが、彼女はそれを思いもよらぬ方法で解決した。。戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出し、鉄甲船の大船団を大規模海戦にも耐えられる、最強の水軍にした……のだ、そうだ。
「俺はあったことがないけれども、きっとすごい使い手なんだろうね。南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまうでしょう。……って、言われてる。海上戦闘って、特殊なところがあるから……なれていないと、難しいのかもしれない」
 だから、そうなる前にこの音量の宿った船を沈めなければならないのだと、リュカはいった。
「とにかく、なんとしてでもこの……」
 リュカは手帳から紙を一枚破り、そして差し出す。そこには非常にざっくりとはしているが、鉄の城の様なものが描かれていた。
「この、『超巨大鉄甲船』の一つに乗り込んで、帆柱に掲げられた村上水軍旗を引きずり降ろしてほしい。それで、この音量は消滅する。……逆に、そうしない限り、何度船を壊してもすぐに復元されてしまうから、気をつけて」
 また、彼らにはそれ以外の手段ではいかなる方法であっても傷をつけることは出来ないのだろ、リュカは念を押すようにいった。
「その怨霊たちは船を動かし続けるから、こちらに向かって攻撃は仕掛けては来ないけれども……、勿論、妨害はある。この、獣が」
 ほら。と、リュカが差し出した紙をひっくり返すと、そこにはカモシカのような獣が描かれていた。
「藤の花を操り、紫雷を放って妨害してくる。敵は8体。もちろん、問答無用で攻撃を加えてくるから、そこは気をつけて」
 なお、巨大鉄甲船は、全長200m程度、全幅30m程度。
「申し訳ないけれども、こちらで海を渡って乗り込む方法は用意で来ていないから、各自、用意してほしい。……それじゃあ、簡単だけど」
 気をつけて、言ってらっしゃいと、リュカはそう話を締めくくった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。

=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
そんな感じ!
後は好きにするとよいのです。
自分の負担を減らすため、ほぼ最低人数で〆たいと思います。
なので、採用できない可能性もありますが、ご了承ください。
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第1章 集団戦 『荒ぶるカマシシ』

POW   :    アオの寒立ち
全身を【覆う和毛を硬質の毛皮】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    神鳴り
自身に【紫電】をまとい、高速移動と【電撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    影より出づる藤波
【自身の影】から【召喚した藤の花】を放ち、【絡みつく蔓】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:笠見諒

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


マスターより:
プレイングありがとうございます、プレイングの募集を締め切りました!
ヴィクトル・サリヴァン
人の技術力ってのは怖いねえ。鯨でもこれ程のはいないし。
もっともそれを使ってるのが怨霊とかそっち系のだと負けちゃいられない。
生者のが怨霊とか怨念より強いって示そうじゃないか。

船へ渡るのは水泳で。
深めに潜って一気に大ジャンプで甲板に上ってその勢いで旗を引きずり下ろす。
甲板上、海上でもカモシカ?が来たら迎撃優先。
海上では泳ぎで翻弄しつつ、甲板では真っ当に銛で迎撃。
防御態勢取ったら銛を投擲してUC発動、時間差の水シャチで守りを解いた瞬間に喰らいつかせる。
可能なら周囲の海を触媒にできるだけ巨大なのを召喚。
守り解かないなら丸呑みにしたまま放置、動かなきゃ船は守れないよねーと煽ったり。

※アドリブ絡み等お任せ


城島・冬青
【アヤネさん(f00432)と】
どうしよう、ここは泳ぐっきゃないかな…
(準備運動しつつ)
…って、あ・あれはシロイルカくーん!
アヤネさんのナンパ(*誘い)にホイホイとついていきます
(今回は恥ずかしがらずにしっかり捕まって二人乗り)
いざ船の旗を奪いに!
到着したらアヤネさんにしがみついて船に上がります…照れてませんよ(真っ赤)

本当ですね、藤の花が綺麗です
散らしてしまうのが勿体ないな…
【死神の矢】を繰り出し
ある程度距離を取りながら斬りつけていきます
負傷してる箇所は【傷口をえぐる】で追撃
カモシカの放つ絡みつく蔦には捕まらないよう【ダッシュ】と【残像】で常に動いて翻弄します

旗は【衝撃波】で引きずり下ろす


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
じゃ、行こうかソヨゴ
シロイルカに颯爽と乗り込み後部座席をぽんぽんと叩く
タピオカが美味い

船でかい
戦艦クラスだ
甲板まで意外と高さがある
UC発動
シロイルカ飛んで!
触手を絡みつけて船腹に取り付く
ソヨゴはつかまって!
触手を巻きつけて一緒に登るよ
(なんかすごく赤くなってるネ?)

綺麗な鹿だネ
でも観賞している暇はなさそう
Scythe of Ouroborosを袖口から滑るように取り出し
敵からの蔓攻撃は大鎌で切り裂いて進む
邪魔をするなら斬るよ

そのまま帆柱を目指す
触手を絡み付けて素早く帆柱を登ろう
ロープかなにかで引きずり下ろすか
すぐに見当たらないならさっさと登って切り裂くよ


影守・吾聞
でっけー!
じっくり観察したり
中を探検したいとこだけど…
幕府軍に被害が及ばないように
素早く攻略しないとだね

【黒竜召喚】を発動、リムを召喚!
リムの背中に『騎乗』して
空を飛んで船に乗り込むよ!

『オーラ防御』を展開しつつ戦場に降りたら
いっけー、リム!
『ダッシュ』で敵群をぶっ飛ばせ!

俺も魔法剣で応戦!
敵は高速移動をしてくるから
一体一体に切りかかるのは厳しいかも…だから
刃に風を纏わせた『属性攻撃』を放って
広範囲に『衝撃波』を生み出して攻撃するよ

敵の攻撃は『野生の勘』で察知し回避
無理ならリムに受け止めてもらうか『武器受け』で対応

戦闘後か、敵に隙ができたら
水軍旗を下ろしに行くね

※他参加者との絡み、アドリブOK


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

海上を歩けるなんてかっこいい……なんて、
惚気てる場合じゃないか
私は彼の先を行くように飛行で船に近付くよ
獣の視界に入らないようにこっそり船を偵察
足場があるとか、登りやすそうな場所から侵入
ここからなら大丈夫そう
さ、行こう!

毛皮に花に、それから蔦か
私より彼の方が上手く対処できそうかな
ヨハン、頑張って!
大丈夫!
疲れてる分、私がフォローするよ

ヨハンが戦いやすいように支援に専念
UCで防御力を強化して、彼や自分への攻撃を【武器受け】
隙が生じやすい動作の合間には【鎧砕き】で敵の守りを薄くしちゃおう

もし周囲に敵が確認できなくなったら
旗めがけて【早業】で飛ぶ
あの趣味が悪い旗を降ろさなきゃ!


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

『凍鳴蒼』を用い足元を凍らせる
寄せる波が絶え間ないとはいえ、進む方角へ向けて足場のみ作って駆けるくらいは出来るだろう
先を行く彼女の姿を追い、真っすぐに

登り易そうな場所、ありますかね
彼女と共に船上へ

辿り着くだけでもわりと疲れてるんですけど……
まぁ仕方あるまい

『焔喚紅』で怨嗟の炎を喚び出し、<呪詛>と<全力魔法>で強化
藤の花も蔓も焼き尽くしてやろう
本体は毛皮ごと焼き尽くす。焼けないのなら船から叩き落そうか
そもそもは村上水軍旗を降ろせばいいのですよね
【蠢く混沌】で穿ち、旗からそのまま遠ざける
動かない個体は放っておいてでも、旗を降ろしてしまいましょうか


コルネリア・ツィヌア
海と雷って相性最悪じゃないの……海に被弾してこの辺の魚とか死んだら、戦後の漁業に支障が出そうね
ルーンソードを用意して、氷の【属性攻撃】を海水に使って、船までの足場を作るわ
そして幻想想起で馬を呼び出して、一気に駆け抜ける
雷が狙って来たら、周囲の水を吹き上げて凍らせた氷で迎撃、軌跡を逸らす
出来れば他の人とも連携したい
メインの旗を狙う人が居るのなら、引きずり回す囮に専念
雷以外に、藤の花の蔓くらいならどさくさで引きちぎれるかもしれないし
もし隙があれば、ドラゴニック・ランスを槍形態にして、帆柱目がけて投げて串刺しにする
すぐドラゴンに戻って貰って、旗に齧りついて貰うわ
……危ない思いをさせるけど、頼んだわよ



●ヴィクトルと吾聞
 海の音がしている。
 塩のにおいがしている。
 そして……、
「でっけー!!」
 影守・吾聞(先を読む獣・f00374)の負けないぐらい大きな声が、海の上を通っていった。
「すごいな。中どうなってるのかな? やっぱり倒されたら消えたりするのかな。終わったら、探検してもいいかなあ……!」
「はっはっは。人の技術力ってのは怖いねえ。鯨でもこれ程のはいないし。これが海に浮いているのだから、いや、驚きだね」
 ヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)も興味津々で船に視線をやっている。二人の目は好奇心の色を湛えて輝いていた。
「んー。ほんとならすぐにでもじっくり観察したり、中を探検したいとこだけど……。幕府軍に被害が及ばないように素早く攻略しないとだね」
 残念。と、やっぱりきらきらした目をしながらも、ん、と、吾聞は頷く。それにヴィクトルも笑顔で、
「ああ。あのすごい船を使ってるのが怨霊とかそっち系のだと負けちゃいられない。生者のが怨霊とか怨念より強いって示そうじゃないか」
「おうっ!」
 いざ、とこぶしをつき合わせる二人。そのままヴィクトルはざばん、と水の中へと入っていく。
「じゃあ、俺は海から行くから、あとでね」
「ああ。俺は上から行くよ。何かあったら知らせるから」
「ありがとう。……それじゃ」
 健闘を祈る、なんて言いながらも、ヴィクトルは泳ぎだした。シャチのキマイラであるヴィクトルにとって、泳ぎはなにより得意とするところであったのだ。
「じゃあ、俺も負けていられないね。俺の魂の友達……リム、力を貸して!」
 赤い瞳の黒竜、リムを召喚してその背に乗ると、吾聞も空へと舞い上がる。海を泳ぐヴィクトルの姿を真下に見ながら、吾聞もまた、船へと向かっていく。
「うっわすごい……。やっぱり上から見ても凄い。探索して探検してプレイ動画上げたい……」
 まさにゲームのダンジョンのひとつとでもいえるような、巨大な船。鉄で出来た姿。吾聞にとっては若干古めかしいものにうつったかもしれない。それがまた新鮮でかっこよく見える。
「……で」
 それはさておき。と吾聞葉周囲の様子を伺う。もちろん、目的をおろそかにすることはない。泳ぎで辿り着いていたヴィクトルも、水面から顔を上げてちらとこちらを見ていた。吾聞は小さく頷く。今、

二人のいる場所から攻め込むのが、一番侵入しやすそうであった。
 ばさり、と、力強いリムの羽ばたきを聞き、吾聞はリムに向かっても、小さく頷く。
「いっけー、リム!」
 掛け声と共に、リムはまっさかさまに船の上へと急降下していった。

「そ……りゃあ!」
 なんとなく掛け声をかけてみた。ヴィクトルは声と共に大ジャンプで甲板へと躍り出る。敵の少ない場所を狙ったが、流石に敵は皆無とは言えなかった。……ので、
「うーん。やっぱりもうちょっとかっこいい掛け声がよかったかな? 何かこういうときに凄い登場台詞を考えるのも、いいよね。……っと。失礼失礼」
 着地時に踏みつけてしまったカモシカに、ヴィクトルは銛をぶっさして即座に後退するのであった。反撃のように放たれた雷が空を切る。ひるむことなくにっこりシャチスマイル浮べるをヴィクトル。
「いっけー、リム!」
 それと同時に、頭上から落ちてくる影があった。オーラ防御を展開させながら、吾聞がリムと共に突撃してきたのだ。勢いをつけて急降下してきたリムと共に、吾聞は最も明るい星の如く青白く輝く刀身

を持つ魔法剣を振り飾る。
「やった、ばっちりいい位置だね! 行くよー!」
 ひとふり、剣を振るうと同時に衝撃波が周囲に生み出される。刃に風を纏わせて、勢いをつけて吾聞も一体一体よりまとめてなぎ払っていく。
「おお。凄い凄い。これは負けてはいられないなぁ」
 ヴィクトルも楽しげに言って、こちらはトドメをさせそうな敵を銛で回収していく。
「あ……。あいつ!」
 しかし中には倒せぬ敵もいた。硬質の毛皮を身にまとい、動かない敵を指差す吾聞に、
「ああ。じゃああれは、俺に任せて。さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ!!」
 ヴィクトルは言うなり、銛を投げつけた。動かない敵に銛は難なく命中する。そして、
「お、おおー!!」
 その一瞬後、水で象った巨大なシャチが海の中より現れて、カモシカの姿を飲み込んだ。
「……!」
「いや、あれ敵じゃないから」
「や、解ってたけど、ごめん、つい……!」
 こう、ゲーマー的にラスボス感漂って立ち向かっていきたくなる容姿をしていた。本当にもう、今日は目がきらきらしっぱなしな吾聞とは裏腹に、シャチは難なくカモシカを飲み込んで、ついでに周囲の

カモシカも水圧で押しつぶして、水の中へと消えていく。
「ま、無敵で倒せなくても動かなきゃ船は守れないよねー」
 たぶんそのうちに根負けして消化されると思う。そして……、
「あれだ、今回の勝利条件!」
 周囲の障害を片づけてひと段落着けば、吾聞が今度ははっきりと指をさす。帆の上に堂々と掲げられた旗に、ヴィクトルも頷く。
「あれを外せばいいんだね」
「そういうこと。後ちょっと、頑張ろうね。リム!」
 吾聞が再び竜を狩る。そして二人は、穂の先を目指した……。

●冬青とアヤネ
「……どうしよう、ここは泳ぐっきゃないかな……」
 海に向かって、城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)はひとつ深呼吸した。
「泳ぐ! 追いつく! よじ登る! 完璧ですね。準備運動よし、目標確認よし。いざ……!」
 突入! と、大海原に向かって走り出す冬青。そのあまりに小さな背中に、
「落ち着いて。落ち着いてソヨゴ」
 アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)がばっ。とすれ違いざまにアヤネの首根っこを掴んだ。
「はっ。…って、ま・まさかシロイルカくーん! こんなところに!!」
「……待って。僕もいるから。シロイルカだけじゃなくて僕のことも見て」
 水上バイクのシロイルカに騎乗して、冬青に声をかけたはずだったのに。まるで乗り物しか見てないかのような冬青の台詞に思わずアヤネの拗ねたような声が漏れる。拗ねながらぽんぽんと後部座席を軽

く叩く。
「あ、いやいやわかってますよ。後ろ、乗せていただきますね」
 そんなアヤネに、えへへーっと笑いながら冬青はバイクの後ろに乗り込んだ。
「あ、拗ねてる、みたいな顔はやめてほしいネ。それと言い方が悪い。タピオカあげないからネ」
「く……っ。いいですよ。かわりに旗は貰います! いきましょう、いざ船の旗を奪いに!」
 水上バイクに二人乗り。派手な音を響かせて、二人の船は出発した。

「でかいネ。戦艦クラスだ」
 水上バイクが華麗に海の上を走る。特に水上での妨害はないようで、目標の船まで近付くと、アヤネは顔を上げた。
「ふぉぉぉぉ。見上げるような大きさですね……!」
「見上げるようなっていうか見上げてるよね。甲板まで意外と高さがあるな……」
 きらきらした目の冬青を横目で見ながらも、アヤネはウロボロスの術式を起動させる。
「シロイルカ飛んで!」
 スピードを上げて、一気に船へと接近する。そしてその勢いのまま、声に応じるように、シロイルカが跳ねた。空中をかけるバイクが船へと近付いたとき、
「ソヨゴは……、しっかりつかまって!!」
「はいっ!!」
 照れながらもしがみつく冬青。アヤネはそのまま召喚していた触手を使って、船腹に取り付いた。
「このまま一気に登るよ!」
「了解です!」
(……なんかすごく赤くなってるネ?)
「気のせいです!」
「……何にも言ってないのに、察せられた……」
「いやアヤネさんが、そんな顔してたから」
 どんな顔だろうと思いながらも、アヤネは触手を駆使して船に取り付き、登っていく。そして……、

「はあ……って、でました! 済みません、ここまで何もしてなくて!」
「いいよ。ソヨゴのこれからの活躍に期待してるから!」
「わ。そんなこと言われると、張り切っちゃいますよ……!」
 甲板に降りると同時に、冬青は花髑髏を構えた。即座に周囲を見回す。
 目に飛び込んできたのは、美しい姿の獣であった。船を操る亡霊も、いたけれども、それよりも更に目を引く姿をしている。
「……綺麗な鹿だネ。でも観賞している暇はなさそうっ!」
「本当ですね、藤の花が綺麗です。散らしてしまうのが勿体ないな……っ」
 そして向こう側もこちらを確認した。問答無用で放たれる藤の花の蔓を、冬青が一刀のもと切り捨てる。
 即座に二人、ぴったりと隣り合って戦闘体勢を整えた。アヤネもウロボロスの大鎌を、袖口から滑るように取り出して構える。
「行こう……邪魔をするなら斬るよ!」
「はい! 切り裂け、疾風!!」
 アヤネが鎌を振るうと同時に冬青も刀の先を向けて、カマイタチを召喚する。
「そのまま帆柱を目指す! ついて来て!」
「了解です。……っ、邪魔だよ!!」
 帆柱を目指すアヤネたちに、鹿が駆けてくる。接近してくるそれは、やはりアヤネたちの動きを察しているのかしきりに動きを封じるように蔓を射出してきた。
「ソヨゴ!」
「平気です! ……はあっ!」
 奪取でそれを回避して、傷口を追撃するように冬青はカマイタチを続けて叩き込む。
「まったく……。君はかわいいけれど、しつこいネ!」
 それでも尚すがろうとするカモシカに、アヤネもまた鎌を叩きつけた。
「ソヨゴ、トドメを!」
「はい、任せてください!」
 一刀、衝撃波と共に放たれた一撃に、カモシカの一匹が霧散する。それでもなおも追いすがってくるもう一匹に、
「く……。しつこいと、嫌われますよっ」
「そうだよ。ソヨゴを追いかけていいのは僕だけなんだからネ」
「こういうときにそういうこというの反則です!!」
「そう? じゃ……手早く片づけて急ごうか」
 軽い口調で言い合いながらも、二人は攻撃を続ける。もう一匹を倒しきるまで、さほどの時間は掛からなかった。

●オルハとヨハン
「これくらいなら……」
 ざっと周囲を確認して、ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は手を翳した。凍てつく水を封じた蒼石は、昏く黒い水が滲ませながら、即席の足場としての機能を果たしていく。
「寄せる波が絶え間ないとはいえ、進む方角へ向けて足場のみ作って駆けるくらいは……。いきますよ、オルハさん。……オルハさん?」
(ああ。海上を歩けるなんてかっこいい……。まるで映画みたい。手を繋いで、ずっとずっと海の上を……)
「……」
「っ、いったー!?」
 容赦ないデコピンが! オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)を襲う!
「そんなに痛くしてません。いきますよ」
「うう、はーい。いっきますー」
 そうそう。惚気てる場合じゃない。オルハは軽く自分の頬を叩いて翼を広げ、そうして空を飛んで先に海へと躍り出た。
「まったく……」
 その背中を追いかけて、ヨハンもまた走り出す。周囲も警戒し、充分に注意しているが……、
「……」
 ぐるりと、先に船に近付いて、獣の司会に入らないように船を一周するオルハ。
「……」
 足場があるかどうかや、登りやすそうな場所がないか、ヨハンのために確認しているのが走りながらでも見て取れる。
「……!」
 何のタイミングか、亡霊がひょいと船から顔を出すが、幸いオルハは見つからなかったようだ。
「……」
 ほっと胸をなでおろすヨハンである。
「ヨハンヨハン、こっちこっちー!」
「子供みたいにはしゃがないでください。聞えてますよ。登り易そうな場所、ありましたかね」
 そしてそんなことはまったく顔にも口にも出さずに、ぶんぶん手を振るオルハにまた子供っぽい事をして。なんて顔をするヨハンである。
「ここからなら大丈夫そう。さ、行こう!」
 しかしそんなヨハンの心配にまったく気づかずに、オルハは登りやすそうな侵入路のほうへとヨハンを案内するのであった。

「辿り着くだけでもわりと疲れてるんですけど……。……とっ」
 崖のような船を登りきる。ばさばさばさーっと飛んでいくオルハを見やると、オルハはえへへ。と、笑っていた。
「うんうん、でも……」
 登りきった直後、蔦が二人をとがめるように走る。それを三叉槍で叩き落しながらも、オルハがぎゅむぎゅむと、
「毛皮に花に、それから蔦。私よりヨハンの方が上手く対処できそうだから……」
「ええ。認めます。認めますよ……!」
「うん! ヨハン、頑張って! 大丈夫! 疲れてる分、私がフォローするよ」
 登りきったところで、息を整えるまもなく襲い掛かってくるカモシカの姿に、若干げんなりとするヨハンである。しかしその前をオルハが立ち塞がり、
「せい!!」
 三叉槍を振り回し、襲い掛かってくる花を叩きつけ、放たれる紫雷を庇うように受けながら、構わずカモシカに肉薄していく。
「君の力……、分けてもらうね」
 三叉槍はカモシカの影を突き刺す。そして防御力を強化し、敵の力をそいでいく。
「私が、君のことを護るから、その間に……!」
「ええ。わかっています」
 全力でヨハンを護るオルハに、ヨハンも小さく頷く。煌々ゆらめく炎を封じた紅石を開放すれば、黒い炎がオルハを傷つける敵へと襲い掛かっていく。
「この力で……藤の花も蔓も焼き尽くしてやろう。その毛皮が焼き尽くせないというのなら……」
 そのまま船から叩き落す、と。押すような決意を感じてオルハも頷く。炎が燃え移り、全身を炎上させるカモシカに、オルハがくるりと足をあげて、
「えいえいえいっ!」
 燃え盛るカモシカの体にためらいなく足を突っ込んで、そして蹴りとばした。トドメの一押しをされて、敵の姿が霧散していく。
「……あなたが蹴り飛ばしてどうするんですか」
「あ、ごめん……。なんだか、つい」
「怖くはありませんでしたか?」
「? だって、ヨハンの炎だもん」
 平気だよ、と言うオルハに、若干押し黙るヨハン。しかし、
「あの趣味が悪い旗を降ろさなきゃ! 行こう!」
 周囲に敵の姿が消えたのを確認すると、すぐさまオルハは天へと舞い上がった。
「急ぐよ。ヨハン!」
「ええ。そもそもは村上水軍旗を降ろせばいいのですよね。ですから……」
 そんなオルハに、させまいとカモシカが向かおうとする。即座にヨハンが視線を向けると、カモシカの影から暗闇が発生して攻撃を加えていく。
「反撃は最小限に。……動かない個体は放っておいてでも、旗を降ろしてしまいましょうか」
「うん!!」
 自由に飛ぶ背中をヨハンが目で追いかけると、オルハが肩越しに振り返って、笑顔を向けた。

●コルネリア
「海と雷って相性最悪じゃないの……海に被弾してこの辺の魚とか死んだら、戦後の漁業に支障が出そうね」
 コルネリア・ツィヌア(人間の竜騎士・f00948)はゆっくりと周囲を見回して、
「ここへ来て。御伽噺のように、お隣に」
 八本足の馬を召喚する。ひらりとそれに飛び乗ると、ルーンソードを掲げた。
「一気に駆け抜けたいの。……頼んだわよ」
 答えを聞くよりも早く、馬が走り出す。それと同時にコルネリアはルーンソードを払う。
 一瞬にして、海水が氷となっていく。自然の影響を考慮して、最小限の道行きで。前へ前へと足場を作り、その上を馬が全力で走っていく。
「……っ、来たわね」
 近寄ると。雷撃が襲ってくる。コルネリアはぐるりと周囲を見回した。
(反対側から……)
 別の猟兵たちが、別方向から船への侵入を試みているのが解る。
(だったら、私は……)
「こっちよ!」
 馬の首をめぐらせる。わざわざ人目を引くようにぐるりとコルネリアは回っていく。
 雷の頻度はそう多くはない。注意していれば避けられる範囲だ。だから……、
「いくわ……よ」
 厳しくないとはいえないけれど。
 気合をこめて、船へとコルネリアは接近し、そしてその側面を登り始めた。
 襲い掛かる蔦を引きちぎり、雷をすんでのところでよけるのには骨が折れたけれど、
 それでもゆっくりと、確実に。コルネリアは上を目指した。
「……っ!」
 視界の端にカモシカの姿が映る。上部では戦闘が繰り広げられていて、順調に敵は数を減らしているらしい。コルネリアが敵をひきつけたおかげで、各個撃破しやすかったのであろう。
 徐々に、こちらの攻撃も頻度が少なくなってきている。そうすれば駆け上がることも容易ではない。コルネリアは一気に甲板へと登っていく。あと少しで上だ。と思う、その直前、
「ほら!!」
 目の前に手が差し出された。
 躊躇わずコルネリアはその手を握った。
 握ると同時に、引っ張り上げられる力がある。そして甲板へとでると、
「……はあ!!」
 帆柱目がけて即座にコルネリアは槍の形状にしたドラゴニック・ランスを投げた。
「……危ない思いをさせるけど、頼んだわよ」
 後はただ目で追いかける。それから、引き上げてくれたその手の主に、ありがとうと声をかけた……。

●そして
「おおー!」
 吾聞の頬を槍が掠めて飛んでいった。そのまま柱にぶち当たり、ドラゴンに戻って駆け上がっていくそれに、吾聞は興味深げに目をやる。
 上から見ていた吾聞には気づいていた。コルネリアが彼らの為に一人で敵をひきつけてくれていたことを。なので、
「一緒にいくか?」
 と、笑いかける。コルネリアは息をついて、
「いいえ。大丈夫。あの子に託すわ」
 首を横に振った。
「そっか、じゃあ……」
 いくか、と、吾聞は再びリムをと共に天へと舞い上がる。
「お疲れさま! 後は……任せて!」
 オルハも声をかけて、一直線に舞い上がっていく。天高く掲げられた帆の上で、
 コルネリアのドラゴンが端にかじりついていて、今にもそれを折り倒そうとしている所であった。
「っし、一緒にやろうか」
「うん、こっち持って……っ。案外、風に」
「ああ。無理しないで気をつけて行こうよ」
 ぐらぐら揺れるオルハが旗を手に取る。思った以上に重くて、体が揺れる。吾聞がリムに騎乗したまま、それを支えた。
「大丈夫ですか、オルハ」
「うん、だいじょうぶー」
「キミ、右側だよ、右側」
「んー。右側?」
 ヴィクトルの声かけに、吾聞が右方向に視線をやると、
「こっちだヨ、落としてくれても大丈夫」
「わ、わ、アヤネさん、案外おっきいですね!」
「危ないから、ソヨゴは離れてて」
「よし、じゃ、投げるよー」
「うん、せーの!」
 吾聞とオルハが同時に旗を船からとって落とすと、アヤネが触手でそれを受け止めた。
 それで、水軍旗も倒される。これで……この船は力を失った。船を動かしていた怨霊も、消えていくことだろう。
 けれどもエンパイアウォーはまだまだ続くだろうけれど、
 ひとまずこの戦いは終わった。
 今はただ、青い海に燦燦と光が降り注ぐ。そんなつかの間の海の風を、ただ誰もが心地よく感じていた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月13日


挿絵イラスト