エンパイアウォー⑥~舞の頂
●舞の頂
ひとつまた、サムライエンパイアに赴いてくれんかと終夜・嵐吾(灰青・f05366)は猟兵達へと言葉を向ける。
「皆に行ってほしいんは関ヶ原なんじゃ」
というのも、『第六天魔王』織田信長の居城、魔空安土城へ向かう幕府軍は、最大の難所である関ヶ原に集結している。
関ヶ原で幕府軍を待ち受ける信長軍を突破し、さらに山陽道、山陰道、南海道の3手に別れて進軍することになっているのだが――関ヶ原で待ち受ける軍勢は、魔軍将、軍神『上杉謙信』と、大帝剣『弥助アレキサンダー』。
簡単に突破できる相手ではないのだと嵐吾は言う。
そこで猟兵の出番というわけなのだ。
「大帝剣『弥助アレキサンダー』が所持する『大帝の剣』には、広範囲の洗脳能力があるんじゃが、この力により農民たちが弥助アレキサンダーに従って幕府軍を迎え撃とうとしておる」
その農民たちは、日野富子から徴収した金銭によって整えられた『長槍』と『大盾』を装備している。
そして農民たちの戦術は、右手で長槍を構え、左手の盾で自分の左隣の仲間を守る陣形『ファランクス』――それは一般の幕府軍では突破は不可能。
このままでは幕府軍の半数が、関ヶ原の地で壊滅してしまうと思われる。
「と、いうことでわしら猟兵の出番なんじゃ」
戦う相手は弥助アレキサンダーの軍のひとつ。『ファランクス』は16×16の256名が1部隊であり、この部隊の中央に、指揮官である災魔がいる。
この災魔は帝の剣の洗脳能力を農民兵に伝達し、ファランクスを組ませる中継機の役割を果たしているのだ。
「つまりは、この指揮官を倒してしまえばええいうこと。そしたら洗脳もとけ、戦う事無く部隊は散っていくじゃろ」
部隊の農民たちは一般人。可能な限り殺さず、中央にいる指揮官を撃破して欲しいと嵐吾は言葉継ぐ。
「無用な殺生はしたくないもんじゃろ。ファランクスとやらの弱点をついたり中央に入り込む方法はあるはずじゃ」
きっと皆なら、うまくやれるじゃろと笑って、嵐吾は手の内のグリモアを輝かせる。
そして頼む、と紡ぎ猟兵達を戦いの場へと送るのだった。
志羽
御目通しありがとうございます、志羽です。
締め切りなどについてはマスターページの【簡易連絡】にてお知らせします。
OP公開後より受付をします。プレイングが送れる限りは送って頂いて大丈夫ですが、全員描写するとは限りません。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●敵部隊について
『ファランクス部隊』を指揮するオブリビオン1体を撃破する事が目的となります。
ファランクス部隊は、一般人なので、その攻撃は猟兵に届く事はほぼありませんが、突破方法などを工夫しないと、ボスとの戦闘が不利になる可能性があります。
以上です。
ご参加お待ちしております。
第1章 ボス戦
『橘・佐江』
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POW : 霧斬舞
【妖艶な花魁】に変身し、武器「【鉄扇】」の威力増強と、【幻惑の霧】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : 蝶の舞
【扇】による素早い一撃を放つ。また、【帯を解く】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 華の舞
自身の装備武器を無数の【桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
イラスト:茅花
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「シルマ・クインス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
片瀬・栞
対密集陣形はあたしの得意分野ね。
本命は指揮官のあの子だろうから、
アシストに回って共闘する他猟兵を消耗なくそこまで送り届けよう
【POW】共闘、アレンジ大歓迎
>行動
グレネードランチャーでスモークグレネードをばらまき、敵陣に【目潰し】【範囲攻撃】
中央に注意と警戒を集められても困るから外周から密集隊形へ突撃
スレッジハンマーで農民兵士を盾の上からがきんっ!と派手に音を立て死なない程度に殴り飛ばす
多くの注意と敵意をひけたらフラッシュバンで【目潰し】【範囲攻撃】【気絶攻撃】
他猟兵が指揮官に到達したらあたしも追いかけ合流
ボスはショットガンで対応
飛翔したらUC【バンダースナッチ】で絡め【怪力】で引っ張り落とす
尭海・有珠
無作為に吹き飛ばしていけないとはまた難儀だな
だが洗脳下の人間を無暗に殺すのは…うん、主義に反するな
右手に武器、ならば右端こそが守りは薄いだろうな
最右側面より突破を仕掛け
杖を振り回して、隊列を崩させ道を抉じ開ける
等身大、ないし極力大きめの氷杭を農民たちの足下に打ち込み、障害物にする
命中率重視にして、人は極力傷つけないように。
柵や壁代わりにできるのが一番だな
足止めされている隙に敵の近くまで駆け抜ける
邪魔してくる農民には都度氷杭で足止めを。
指揮官相手にはもっと小回りの利くサイズの氷杭で攻撃
鉄扇は杖と剣で受け、反撃は憂戚の楔にて。
飛んで逃げようと逃がすものか、私は執念深いんだ
命中率重視で叩きこんでやる
シャルロット・クリスティア
だだっ広い空間に密集した強固な陣形……なるほど、強力な布陣です。
16×16が密集している……となると、一人当たりの割り当てが1~2mとして、陣形は2~30m四方……と言ったところでしょうか。
だったら……外周を走って抜けられる程度の規模ではありますね。
隠れ身の外套で陣の背後を取り、敵陣の中央目掛けて麻痺【毒】のガスが詰まったポイズンボールを投げ入れる。放物線の軌道なら行ける筈です。
致死性ではなく、吸えばしばらく痺れるだけですが、混乱させるには十分。
そのまま崩れた陣形の隙間を縫って敵将を【スナイプ】できれば一番ですが……無理なら無理で他の人の援護にはなったでしょう。
やるだけやったら即撤収ですね。
緋翠・華乃音
ファランクスが相手なら真正面から衝突するのは下策だな。
例え突破自体は容易かろうと、戦場では何が起こるか分からないものだ。
……さて、俺は背面から奇襲させて貰おう。
気配や存在感を可能な限り消して背面へ移動。
個々の兵の挙動を"見切る"事を重視。
一手目で敵を台に空中へ飛び上がり、槍と盾を足場に軽業の如く空中を駆けていく。
災魔相手には優れた視力や聴力、直感を頼りにその行動を予測。
間合いとタイミングを読んでヒット&アウェイの攻撃を仕掛ける。
常に最適な行動を心掛け、無駄な動きは一切せず、戦法(UC)を切り替えつつ戦闘を行う。
クリストフ・ポー
【WIZ】
ほほう、可憐な乙女かと思えば
花魁で、帯を解いたりする訳だ?
流石お江戸!未来に生きてるねー!
ま、お巫山戯はこれ位で…
農民達のファランクスか
あれって正面衝突を想定したのだし
多方からだと脆いよね
ダッシュで回り込み
ジャンプで一気に距離を詰め
アンジェリカとオーラ防御を使って盾の上に着地
ブラッド・ガイストでパワーを上げ
長槍を圧し折り佐江を挑発しおびき寄せ
木偶諸共かい?舞姫?
出てくれれば御の字
出なければ引き続き武器落とし&気絶攻撃で農民を無力化
捕食は後でと僕の美しい花嫁人形を宥める
佐江にはフェイントで一度視覚を外して
死角からの2回攻撃
接近する為なら多少のダメージは覚悟の上だ
ソロもお終いだよ、舞姫!
嘉三津・茘繼
うーん、そうだね
食べられないのを殺しちゃってもお腹が空くだけだし
僕は情報収集と世界知識を使って判断して
その場の土が掘れる感じなら
トンネル掘りと念動力と怪力の技能で地中を掘るよ
地上の様子は大体を振動で判断して
頭上にファランクス部隊が来たと思えば地上に出てだまし討ち
「やぁ」
「えーい!」
【喰い】で佐江の胴体を掴んで外へ投げつけて
部隊は投げた方向と逆に吹き飛ばして引き剥がす
部隊が尚も向かってくるなら武器落としと気絶攻撃で応戦
「僕等のお目当てって彼女なんだよね、悪いけど寝てて?」
佐江の飛翔能力には浮遊と空中戦の技能で対応して
タールの身体から無数の手を出してもう一度捕まえたら
【喰い】の二回攻撃
「ごめんね」
●その陣形を前に
ファランクス――その陣形を目にシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)はなるほど、と頷く。
「だだっ広い空間に密集した強固な陣形……なるほど、強力な布陣です」
16×16が密集している……となると、とシャルロットは計算する。瞳を伏せ、目の前にそれがあると想像してみるのだ。
「一人当たりの割り当てが1~2mとして、陣形は2~30m四方……と言ったところでしょうか」
だったら、とシャルロットは青い瞳開いて。
「外周を走って抜けられる程度の規模ではありますね」
大きさの想像が、シャルロットの言葉でつく。
片瀬・栞(アラクニド・f17024)は口端をあげて笑みを零した。
「対密集陣形はあたしの得意分野ね」
本命は姿が僅かに確認できる指揮官の少女。
なら、アシストに回って他の猟兵達を消耗なく、そこまで送り届けようと栞は思うのだ。
「無作為に吹き飛ばしていけないとはまた難儀だな」
そう言いながらも尭海・有珠(殲蒼・f06286)は表情をわずかにきゅっとして。
「だが洗脳下の人間を無暗に殺すのは……うん、主義に反するな」
農民兵は出来るだけ傷つけないようにしようと、有珠は一つ頷く。
「ほほう、可憐な乙女かと思えば――花魁で、帯を解いたりする訳だ?」
災魔の姿を目に、クリストフ・ポー(美食家・f02167)は面白い、とご機嫌に笑っていた。
「流石お江戸! 未来に生きてるねー!」
「そうなの? 僕の世界知識にはそんなのないけどなぁ」
タールの身体をうねらせて首をひねる嘉三津・茘繼(悪食・f14236)。その様子にいやいやとクリストフは苦笑する。
「冗談だよ。ま、お巫山戯はこれ位で……」
農民達のファランクスか、とクリストフは瞳を細めた。
「あれって正面衝突を想定したのだし、多方からだと脆いよね」
「下からも弱そうだよね」
じゃあ僕は下からいこうーと、茘繼はのんびりと言って、農民はどうすればいいかなと零す。そしてしばし考えて。
「うーん、そうだね。食べられないのを殺しちゃってもお腹が空くだけだし」
放って置こう、と茘繼は決めて頷いた。
「ファランクスが相手なら真正面から衝突するのは下策だな」
緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は、突破自体は容易かろうと、戦場では何が起こるか分からないものだと呟いて。
「……さて、俺は背面から奇襲させて貰おう」
「じゃあ、私は横から」
気を引いている前にお願いと栞は言ってファランクスへと向かう。
そして茘繼はざくざくと穴を掘り始め、足元から迫る。トンネル掘り、そして念動力と怪力をもって地中を進む。
その様子を見送ってクリストフもまた動き始めた。
●突入
まずが側面――栞は6連装の回転式チャンバーを持つグレネードランチャー、『ぐれぽん』を構えスモークグレネードをばら撒いた。
突然の攻撃に農民兵たちはざわめいた。
「な、なんだ!?」
「げほっ!」
もわもわと広がる煙はその視界を奪って広がる。
「敵襲!? 守るのよ!」
と――中央から少女の声が響く。その声に農民兵たちは操られまた動き始めるのだが打撃面がとげとげの、大型スレッジハンマーを農民兵の盾の上から、派手に音をたて――けれど、死なぬ程度に殴り飛ばした。
「わああ!! 敵だ! 構えろ!」
その音に栞の周囲にいる兵士達は慌てて構える。
多くの注意が栞へと向く。そこへフラッシュバンを投げ込んだ。
激しい閃光と衝撃が辺りに広がる。農民兵たちの叫び声が響いて、彼らは気絶したり眩しくて見えないとその統制はぐだぐだになっている。
陣形が乱れ、他方からも崩しやすくなる。
栞が崩した場所より少し離れて――最右側面より突破を仕掛けたのは有珠だ。
その手の、『海』の宝珠を抱く真鍮色の蔓茨と、零れ、流れ落ちた青の仕込み杖を大きく振り回す。
すでに崩れかかった隊列は崩れ、道が開けるようでもあった。
そしてその開けた場所に向け、有珠が放つのは。
「来たれ、世界の滴――凝れよ、奔れ、『憂戚の楔』」
何もない場所から、大きな氷杭が現れる。
ひとつ目、ふたつ目は少し低く。駆けあがるに丁度良い高さだ。
農民兵達はそれを避けるように――有珠も極力傷つけぬよう当てるつもりはないのだが――動いていく。
そしてその杭は進むべき中央へと次々と振り下ろされ道を作りだした。
「邪魔をしないでくれよ」
無駄に傷つけたくはないのだと、有珠は氷杭の下から攻撃しようとしてくる農民兵を見下ろして、敵の元へと向かう。
と、少し離れた所からも動きがあったようでばたばたと倒れていく農民兵の姿が見て取れた。
柵や壁代わりに氷杭を生み出し邪魔する者達を有珠は遠ざけて。
真っ直ぐ、中央へと走り込んだ。
そして――陣の背後。
気配や存在感を可能な限り消し、静かに移動した華乃音。
個々の兵の挙動を見切ることを重視してタイミングを計っていた。
陣形が崩れてざわめき出した時を狙い、華乃音も動く。地を蹴って、敵の肩を台に空中へ飛び上がったのだ。
そして向けられた盾をさらなる足場に。向けられた槍は切っ先を蹴り上げて、態勢崩した農民兵に悪いなと一声かけて足場にしていく。
その様子を軽やかだな、とクリストフは十指に備う銀の指輪と糸によって誓約された、花嫁の如き戦闘人形、アンジェリカを伴って。
「円舞曲を踊ろう。舞台はちょっと面白い場所で」
舞うように、跳躍して盾の上に着地を。
目の前に迫る長槍はアンジェリカが圧し折る。
そしてクリストフも中央へと農民兵達の上を渡っていく。
その騒動を暫く見守り、そろそろ行きましょうとシャルロットも動く。その身を隠す外套を纏ってきたからこそ、気付かれずに動けこのまま仕掛けられそうだ。
放物線を描くように、陣の中央のほうへとポイズンボールを投げ入れる。
「なんだ?」
ぽん、ぽん、と地を転がったそれから麻痺毒がふわりと零れていく。
それを吸い込んだ農民兵はうぐ、と言葉詰まらせその場に蹲る。混乱させるにはそれで十分だ。
「しばらく痺れるだけです」
すぐ治りますと言ってシャルロットは崩れた陣形の隙間を縫って向かう。
そんな、戦いの喧騒の下を――掘り掘りと。
茘繼はよいしょ、よいしょと進んでいく。
「やぁ、えーい!」
ここだ! と地中から現れた茘繼。そこは農民兵達の中だった。
「て、敵襲ー!」
攻撃の気配に茘繼は近くにいた一人を掴んで、投げつけて崩していく。
「僕等のお目当てって彼女なんだよね、悪いけど寝てて?」
そう言って、もうちょっと掘るかと穴の中へ。
ちらりと見た敵の首魁は――もうだいぶ、近くにいた。
●対する
指揮官たる少女――橘・佐江は猟兵の襲撃に驚き、そして対応が遅れていた。
最初にそこへ氷杭の道を伝って攻め入ったのは有珠だ。
とんと、氷杭を蹴って距離詰める。すると佐江は鉄扇を打ち下ろすように有珠へと向けた。
それを咄嗟に杖で、受け止める。思っていたよりも重い一撃に有珠はすっと海を映した青の瞳を細めた。
有珠は小回りの利く、手に握れる程の氷杭を生み出し佐江へと放つ。すると佐江は飛び退り、その攻撃をかわして改めてというように視線向ける。
「なかなか手強いようですね」
そう言って妖艶さを纏い、そして霧を纏い上空をとる佐江。
鉄扇にも並々ならぬ、強い力を漲らせ有珠へと空を滑り、駆け込んだ。
攻撃は単純なようで、その分威力が増す。先程と同じように鉄扇を受け止めるが手にじんと痺れが感じられる。けれど距離が近いのなら、また狙い所。
「――凝れよ、奔れ」
紡いだ言葉に応えて氷杭数本が、佐江の肩を貫いた。
一瞬、佐江の動きが止まった。そこへ、その足を射抜く一撃が放たれた。
「きゃあ!!」
けれど、目の前の有珠からではない。
それは陣形の隙間を縫って、少し離れた場所よりシャルロットが放った銃撃。
「一撃でスナイプできればよかったのですが……」
さすがにそこまで都合よくいきませんか、とエンハンスドライフルを構え直してシャルロットはもう少し、と距離詰めるべく移動を。
銃撃受けた佐江はどこからと周囲を見回していたのだが。
そこへ。ぼこっと、地面が盛り上がって。
「な、なに?」
「ここかなー! あ、いた!」
地面から姿を現した茘繼に佐江は驚いて。
動きかたまっている一瞬に茘繼は佐江の胴体を捕まえた。
「えーっと、どっちに投げたらいいかな」
きょろきょろ見回す。そして茘繼はクリストフの姿を見つけて。
「クリストフー、いっくよー!」
力の限り、茘繼は佐江を投げた。
おや、こっちに飛んでくるとクリストフはその身を受け止めはしない。
「木偶諸共かい? 舞姫?」
「っ!」
挑発の言葉に鉄扇振り上げて、佐江はクリストフを叩きつけようとする。
その前に、アンジェリカが立ちふさがり鉄扇の起動を上手く反らした。
だが完全にはいかず、クリストフの身を衝撃が撃つ。
「はは、近づくなら多少はね」
覚悟の上だと言うクリストフの視線は真っすぐ、佐江を捕らえて。
何を、と思う佐江の前にはアンジェリカはおらず、クリストフが立つばかりだ。
けれど、死角に回り込んだアンジェリカが攻撃を放つ。
佐江は防ごうとしたものの、クリストフの視線の動きに佐江は騙されて、その行動が遅れていた。
弾くように、佐江の身をアンジェリカは吹き飛ばす。その一撃は佐江をさらに追い詰めるには十分なもの。
攻撃の隙はできる。息を詰めて、その背後に踏み込んでいたのは華乃音だ。
仲間の攻撃、そしてその間合いをこの場で感じる直感をも頼りにしてタイミングを計っていたのだ。
無駄な動きはなく、黒艶の刀身、ダガーを逆手にもって閃かせる。
佐江は鉄扇で受け流そうとしたが間に合わず、その身を切り裂いて華乃音は距離をとった。
腕の腱を持っていったか、佐江の片手はだらりと下がったままだ。止まらぬ血を抑え込んでいる。
「一度、逃げて態勢を――」
不利を悟って佐江はその姿を妖艶なるものの姿にかえ飛翔するべく飛びあがり、けれどその動きを栞は見とって。
「逃がさないよ! そこっ!」
「きゃああ!!」
鎖尽き棘鉄球を放った。それは佐江の足へと絡みつき、怪力でもって栞は地面へと、引きずり落とそうとするが、佐江はどうにか堪えている。
状況は均衡し、佐江も栞も身動きが取れない。そこへにゅるりと伸びる、茘繼のタールの身体。
「ごめんね」
掴んで、地面へと向かう力が増して佐江の身は地面に激しく打ち付けられた。
そして茘繼の腕はもう一回、と激しく地面に向かってうねる。
その手から逃れ、走って逃げようとする先に、有珠が巨大な氷杭を振り落として行かせない、と紡ぐ。
一瞬の逡巡の間に華乃音は距離をつめ、その手を掴んで投げ飛ばした。
傷みを堪え、這ってでも逃げようとする佐江。
けれど銃砲が一つ響いて、佐江の行く手を弾きその動きを止めざるを得ない。
シャルロットの援護の間に、さらに距離を詰める影ひとつ。
「ソロもお終いだよ、舞姫!」
アンジェリカに、己の血液を与えてその力を増す。
逃がさぬ一撃に佐江は短い悲鳴をあげて、崩れ落ちた。その身はざらりと砂のように解けて、消えていく。
すると――周囲を囲んでいた農民兵達は我に返ったようで。
手にしている盾や長槍をその手より落とし、何をしているんだというような顔をしていた。
大帝剣『弥助アレキサンダー』の力を猟兵達はひとつ、削いで。
これから先の戦いをまた一歩、進めたのだった。
大成功
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