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エンパイアウォー⑩～○上旗を引きずり下ろせ！

作者：しじる

　京都の花の御所を制圧した魔軍将、大悪災『日野富子』は、そのありあまる財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造していた。
　本来なら、船は建造できても、その船を自在に操る船員を用意するのは一朝一夕にはいかない。
　しかし富子は、戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出し、鉄甲船の大船団を大規模海戦にも耐えられる、最強の水軍にしたのだ。
　このままでは、南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまうだろう。
　そうなる前に、村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を、猟兵の手で沈めなければならない。
「と言うわけで、皆にはあの船に乗り込んでもらうよ」
　グリモア猟兵のクトゥルティア・ドラグノフはそう言って、背景に写る超巨大鉄甲船団を指差した。
　残念ながら船に直接送ることはできないようで、どうにかして乗り込み、船内に複数ある村上水軍旗を守る亡霊を撃破後、軍旗を引きずり下ろして離脱する必要がある。
　さらに今回転移する場所は、徳川軍の船の上なので、近づく方法も考えなければならないようだ。
「まあ飛べる人には関係ない話だけどね」
　苦笑しつつそういうドラグノフ。この世界には目立った対空兵器がないからだろう。だが油断していると鉄砲や弓矢で撃ち落とされるので、飛ぶにしてもある程度は考えた方がいいかもしれない。
「今回攻める船には魍魎に憑かれし女忍がいるよ。日野富子の用意した魍魎に操られてるみたいだけど、今回は魍魎が死ぬと一緒に死んじゃうみたい。だから説得や助け出すのは諦めるしかないね」
　残念そうに言うドラグノフ。彼女らも好きで日野に従ってる訳ではないのだ。倒してやるのが情けと言うものだろう。
「さあ皆、侵入方法は任せたよ。村上水軍を倒して、徳川軍の皆を守ってあげて！」
　そう言って、ドラグノフはテレポートを繋ぐのであった。

第1章 集団戦 『魍魎に憑かれし女忍』

POW   :    魍魎呪術・狂化 【魍魎に狂わされて狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。 SPD   :    魍魎呪術・降魔化身法【偽】 【魍魎におぞましき呪いを流し込まれ】【全身の傷口から血を噴き苦しみ悶えながら】【恐るべき力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。 WIZ   :    魍魎呪術・殺戮変化 【魍魎によって強制的に高速殺戮形態】に変形し、自身の【只でさえ消耗しきっている気力・体力】を代償に、自身の【攻撃力と敏捷性即ち殺戮効率】を強化する。 イラスト：すねいる 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

　財宝は積んでなさそうだが、一応幽霊船ということでいいのだろうか。【ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード】はそう考えつつ、海に潜るための準備を整える。空を飛んでもよかったのだが、対空兵器のことを考えて潜水を選択した。
　徳川軍の兵士たちに見送られながら海へと飛び込む。そして船の近くまで泳いで向かい、その傍までバレることなく近づいた。近づけば近づくほど船の大きさは明確にわかり、まるでネズミ返しのついた巨大な鉄の壁のようであった。
　これなら普通の人間ならどうあがいても上ることはできない。掴むところもないのだから。だがンゴゥワストードはキマイラだ。ユーベルコード【超軟体化（シェイプ・テンタクル）】を発動する。自身の肉体を43本の蛸足が生えた超軟体に変化させる。タコの吸盤は凶悪な吸着力がある。それは自身の肉体を軽々と持ち上げるほど。ゆえにたとえ何もないところでも、ンゴゥワストードは特に苦も無く船を上っていった。
　まさか船を上るものがいるとは思わなかったのだろう。警護に当たっている女忍は完全に無警戒。船の上に現れたンゴゥワストードに反応することができなかった。
「それじゃあ、ごめんね」
「な、貴様どこから！？　ぬわぁ！！」
　反撃することも許されず、タコ脚で薙ぎ払われ、投げられ、叩きつけられ、あっという間に船の上から吹き飛ばされてしまった。油断を突いていたのが大きいだろう。
　さてあとはがら空きとなった旗を持って帰るだけ。タコ脚を伸ばし、奪い取ったらさっさと撤退。このままだとこのエリア以外からも女忍が来てしまう。海に飛び込めばもう追撃も不可能。さっと船から飛び降りる。
　こうしてンゴゥワストードは見事な奇襲によって、最小の労力で旗を奪い取るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　【フルム・サーブル】と【アーサー・ツヴァイク】はほぼ同時に空からの侵入を試みていた。とはいってもサーブルは迷彩で隠れつつ、ツヴァイクは時速5300キロで飛行しつつとなるので、両者の到達時間には大きな差があるのだが。当然ツヴァイクのほうが早く、というより早すぎて対空兵器をまともに構える前に到着した。
「くっ、旗のもとには行かせない！」
「船は旗の効果で壊してもすぐ復活するんだっけ…ならいくら暴れても問題ねえよなあ！」
　女忍が集ってくるがお構いなし。槍に変形できる大型バイクライドランを疾走させる。狂気化して早く動くものに反応しても、触れられないなら話は別だ。近づけば跳ね飛ばされる。船を破壊しながら疾走するツヴァイクを止められるものは、はっきり言ってこの船には誰一人いなかった。
「これぞドーンブレイカー流・ダイナミック供養…！」
「ダイナミック過ぎるわ！！」
　そんなことを、轢かれながら女忍は言ったとか言ってないとか。
　さて、遅れて到着したサーブル。迷彩を使った状態の小さなその体を発見するのは至難の業。なによりツヴァイクが大暴れしてるため、探す余裕などない。あたり一帯てんやわんやしていた。
「これは潜入しやすそうだね」
　苦笑しつつ、それでももしかしたらまだ警戒に当たってる女忍がいるかもしれないと、細心の注意を払う。会敵が少なそうなルートを選択し、鍵がかかっているなら鍵開けで開ける。
　そうして隠密していると、出会い頭に何かにぶつかる。なんだと顔を上げる。女忍であった。どうやらツヴァイクを止めるために応援として来ていたようだ。運悪く出会ってしまった。
「っ！？　敵……ぅおおおお！！？」
「ごめんね！」
　応援を呼ばれる前にユーベルコード【妖精さん式反り投げ（フェアリースープレックスコンボ）】を発動させる。女忍の指を捕まえ、30.6センチの小さな体からは想像もつかない怪力で、女忍を反り投げる。投げられた女忍は他の女忍を巻き込みながら飛んでいった。
　今のうちにと急いで旗のもとに向かう。すると操舵室に一本あった。早速奪い取り脱出を試みる。その前に旗を取った後も再生するのか、試しに破壊工作をしてみる。しかし旗をすべて取らないと無効なのか、すぐに再生してしまった。
　ならこだわる必要はない。いまだ派手に暴れて囮をしてくれているツヴァイクに声をかけ、二人は船から颯爽と脱出するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「これは私達が何とかしないといけませんね……」
　立ちふさがる巨大な鉄甲船を見つめる【二條・心春】。これほど大きな船はUDCアースでも珍しいだろう。故に猟兵でなければこれを止めることなどできないだろう。
　二條は早速ユーベルコード【召喚：蛇竜（サモニング・ワーム）】で蛇のような体と翼を持つ竜の霊を召喚して、それに騎乗する。竜は飛翔し、船へと向かう。当然迎撃として、近づけば船から矢や弾丸、大砲が飛んでくる。それらは二條の優れた視力と六感で把握し、どこへ行けば回避できるかを割り出す。
　そうして船にたどり着けば、竜と共に女忍を蹴散らして旗を探す。竜は毒の息を吐き、二條は自身の直槍に麻痺属性を付与して突く。それらが当たる度におんな女忍の体が固まり、そこへ竜の尾が薙ぎ払われる。
　直撃した女忍は海へと叩き落とされ、戻ってくることはないだろう。女忍の苛烈な攻め、それに少し傷を作りつつも旗を探し、最後の旗をついに見つける。急いで旗を奪い、飛翔する。だが逃がさないと女忍が矢をつがえ始めた。だが迎撃はさせない。
「これでどうです！」
　取り出したスタングレネードが炸裂、爆音と閃光があたりを支配して、女忍の視界と聴力を奪った。その隙に一人と一匹は離脱するのであった。
「お疲れさま、ワームさん。大活躍だったね」
　竜の頭をなでながらそう呟く二條、心なしか竜は嬉しそうだった。
　すべての旗を失った鉄甲船は泡のように消えていく。それはまるで幻であったかのように。こうして猟兵は鉄甲船の一つと排除することができたのであった。
　まだ戦争は続く、鉄甲船も残っている。徳川軍を島原に送り届けるためにも走れ猟兵よ。
【END】

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年08月14日