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エンパイアウォー⑩~海上之華

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 ここは花街、宝船。
 数多と金銀財宝詰め込んで、華の女人を詰め込んで、悠々自適と波を蹴る。
「たくさん頑張った子には、とっておきをあげるニャ♪」
「いい目を見たかったら、たっくさん頑張るニャよ?」
「がんばれ、がんばれニャー♪」
 船の主たるは猫耳生やした花魁姿が十余り。
 きらりきらりと金装飾を手に遊ばせて、その視線の先へと声を向けていた。
 その視線の先にあるは厳つい亡霊。
 時折、ゆらりとその輪郭を揺らしながら、それでも黙々と彼らは動く。
 否、よくよく見れば、時折花魁たちの方へ視線がちらちらと。
 その視線の中には、我こそがという想いと、歓待の時を想っての熱がこもっていた。
 それを理解するからこそ、花魁たちもまたくすくすと嗤って、声援を送るのだ。
 掌の上で転がす珠のように、その心弄びながら。

「皆さんの活躍のお蔭でぇ、幕府軍の進軍は順調そうですねぇ~」
 集まった猟兵達の前にしゅたりと現れたはハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 動きに合わせて、兎耳は大きくゆらり、衣はふわり。
「ですがぁ、信長の軍勢はまだまだ多いようですぅ」
 はらりと解き、伸ばすは巻物。そこに描かれるは日本地図。
 幕府軍の進軍と確認された障害の書き記されたそれを示しながら、ハーバニーは続ける。
「皆さんの援護の下にぃ、幕府軍は関ヶ原を無事に抜けましたぁ。その後ぉ、彼らは軍を3つに分けたのですよぉ」
 するり動いた指先が示す矢印3つ。
 それは山陰道、山陽道の陸の道。そして、南海道の海の道。
「しかしぃ、敵もやはりそれを予期していたのかぁ、全てに妨害を用意していたのですぅ」
 その内の1つ、南海道が指でなぞられた。
「皆さんにはぁ、こちらの南海道を担当して頂けたらとぉ」
 そこは魔将軍の一角たる日野富子が財力により、現世へと復活した村上怨霊水軍が待ち受ける場所。
 超巨大鉄甲船の大船団。その内の一隻を討つことが目的だ。
 だが、どうやら狙いと定めた船は少しばかり趣が他の船と異なるらしい。
 それは乗船するオブリビオン達の気質によるものか。戦闘としての役割も果たすそれではあるが、それ以上に他の船へも含めた士気高揚としての面が強いらしい。
 腹に詰め込んだ金銀財宝。主たる花魁達、艶やかなる華。
 目立った活躍をした者に対し、それを褒美とすることで、ともすれば離反もしかねない亡霊達をより効率的に動かそうとしているだ。
 それはつまり、馬の眼先にぶら下げられた人参だ。
 そして、それが上手くいったのか、その船の亡霊達の士気は高い。
「船自体は水軍旗を引きずり降ろせば消滅するのですがぁ、そこに至るまでの障害は多いですぅ」
 船へと到達するための手段の確保。船へと到達する間も、到達してからも妨害してくるであろうオブリビオンへの対応。
 それらを乗り越えた先に、光明があるのだ。
「此処を抑えなければ幕府軍の被害は甚大なものとなることでしょう。ですが、ここまで至れた皆さんの力ならば、きっと成せると信じています」
 どうか、よろしくお願い致します。と、下げた頭の上で、兎耳もひょこりとその身を屈ませていた。


ゆうそう
 オープニングへ目を通して頂き、ありがとうございます。
 ゆうそうと申します。

 まず初めに、このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 そして、その中でもこちらは海を舞台とした戦場。
 村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を沈めるシナリオとなります。
 鉄甲船は帆柱に掲げられた水軍旗を引き摺り降ろすことでのみ消滅させることが可能であり、ユーベルコードを始めとしたものでは破壊することは出来ません。
 同様に、水軍旗もまたユーベルコードでの破壊だけでは意味がないと思って頂けると幸いです。

 また、鉄甲船は海上にあり、それへと接近を仕掛けるところからシナリオの開始となります。
 そのため、各自で海を渡る手段や巨大船に乗り込む方法も考えていた方が良いかもしれませんね。
 敵も接近に気が付けば迎撃してきますので、接近の際にはご注意を。
 なお、船の大きさは全長200m程度、全幅30m程度と思って頂けたら。

 皆さんのプレイング・活躍を心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『猫又花魁』

POW   :    ウチらとイイコトするニャ♪
対象の攻撃を軽減する【お色気モード】に変身しつつ、【欲望のままに相手を襲うこと】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    さあ、いい夢見せてあげるニャ♪
【キセル】から【催眠効果を持つ桃色の煙】を放ち、【昏睡させて意識を失わせること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    秘儀、「ねこまたぎ」だニャ♪
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【頭に乗るか跨ぐかすることで、自分の下僕】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:煤すずみ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

梅ヶ枝・喜介
さぁてどうする!
近付かにゃあ話にならんが…
さりとて海の上を歩けるようなマジナイは知らん!

ならば舟を漕ぐしかなかろうよ!

付近の漁村を回って小さい小舟を譲り受ける!
誠心誠意話をして、これまでの戦争で受け取った金須を全部渡せば何とかなるかもしらん!

あとは怪力任せに舟を漕ぐ!漕ぎ続ける!
冗談みたいな早さで突貫する!
あんなデッカい軍船の弾が、こんなちっさい小舟に当たるかよ!

近くまで来たなら小舟を捨て!大跳躍して直接甲板に乗り込んでやらぁ!

む!猫の妖怪変化か!
だが気合いの乗ったおれァ色香なんぞに騙されねぇ!

木刀を大上段に構えて飛び出す!
この一太刀!誰にも止められないと知りやがれッ!
ぜりゃぁああああああ!!


エーカ・ライスフェルト
【理力全開】を使って飛翔能力を獲得し、時速20km程度の飛行速度で敵船に近づくわ
矢が届く距離になる前に時速200kmまで加速し敵の狙いを外させ、その後は甲板への着地を試みる
出来れば敵があまりいない箇所に降りたいわね

着地後は派手に暴れるわ
UCで強化した【フォースオーラ】で【念動力】を操り、【猫又花魁】を舷側から海に向かって突き飛ばそうとする

【猫又花魁】を助けようと亡霊が奮起し実際助けるでしょうけど、亡霊の注意は【猫又花魁】や私に向かうでしょうから、他の猟兵が甲板に降りて水軍旗に向かう時間が稼げるはずよ

「私達の狙いは水軍旗。つまり貴方(猫又花魁のこと)を倒すのは必須ではない。時間稼ぎで十分なのよ」



 敵は水上、海の上。
 されど、己に他の猟兵の如くと空を往く翼も、海を渡る呪いもなし。あるのは腕っぷしの力のみ。
 では、どうするか。

「ならば、舟を漕ぐしかなかろうよ!」

 ドンと込めたる気迫の一声。
 梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)も、今暫しばかりはと海の人。
 当初こそ付近の漁村を巡って小舟を譲り受けようとしていた彼であったが、金子を全て出さんとする勢いに、同道していた親切なる猟兵がボートを用意してくれたのだ。
 故、今はそれを力いっぱいと漕ぎ進め、喜介は目的の血を目指す。
 その上を、ひらりと1つの影が舞った。
 喜介が鳥かとも思い見上げれば、その影は大きく、近い。
「引っ張らなくても大丈夫そうね」
 青空隠すは夜色の帳。
 纏う念動力の燐光がきらりきらりと輝けば、まるでそこだけ人型に夜空を切り抜いたかのよう。
 それはエーカ・ライスフェルト(電脳ウィザード・f06511)が飛翔の姿。
 身に宿す念動力を空駆ける力と変え、彼女が優雅に空を舞っていた。
 ややもすれば面倒くさそうに、しかし、念のためにと喜介へと声を掛けたのだ。
「おぉ、こいつは御親切に! だが、見ての通り大丈夫だ!」
「そうみたいね。なら、先に行ってるわ」
「おう! 後で追い付くとも!」
 喜介がボート漕ぐ手を止めて、人好きのしそうな笑み浮かべれば、エーカは、そう。と表情薄く視線を外す。
 そして、空気が震えた。
「なんとも、世界は広いものだな」
 喜介が視線の先、あっという間に点となったエーカが姿。
 それを見送り、彼はまたえいさえいさと舟を漕ぐ。

「見えた、あれね」
 喜介や他の猟兵達に先んじて飛翔すること暫し、エーカが視界に鉄甲船の姿。そして、甲板の上で慌ただしくと動き出す者達の姿が見えた。
 鉄甲船の士気は高いと予知されていたが、それは間違いないのだろう。エーカの姿をいち早くと発見した亡霊たちは、すぐさまと主である猫又花魁達へと報告をあげていたのだ。
 これが士気の低い船であれば、気付かずに接近ということも出来ていたのかもしれない。
「敵襲ー! 敵襲ー!!」
「おい! 矢を持ってこい! 撃ち落とせば褒美だって貰えるかもしれねえぞ!」
「あ? てめぇで持って来いよ! 俺が褒美を貰うんだ!」
「落ち着くニャー! 猟兵を倒せば、褒美は全員にあげるんだニャー!」
 喧々囂々。士気は高いが、統制は取れていない。
 しかし、それでもその対応は早く、視界の先でエーカへと向けて弓引き絞る姿が幾つも。
 だが。

「さあ、追いつけるかしら?」

 ――発見され、対応されることなど織り込み済みだ。
 零す言葉は小さく、誰へと向けるでもなく。
 されど、その言葉が示すようにと、エーカの身体はぐんとその身を加速させる。
 唐突なる加速は相手の目測を誤らせ、その鏃を彼女へと喰い込ませるをさせはしないのだ。
 瞬きの間にはもう船も目前。
 そのままにと船首降り立てば、ざわりざわめき、敵意の声。
「やっちまえニャー!」
「声をあげてくれて、ありがとう。間抜けさん」
「――ギニャー!? 落ちるニャー!?」
 褒美と言う名の人参に釣られ、亡霊たち――猫又花魁が下僕が手に手に刃を抜き放ち、エーカへと。
 だが、それよりも早くとエーカの腕が声のした方向へと動いた。
 それは腕で視界を薙ぐようにとした動作であったが、彼女のそれがただの動作である筈がない。
 エーカの身の内よりと零れだす念動力は主の意思に従い、形なき腕を生み出し、その視界にある者達をなぎ払ったのだ。
 そして、突如のそれにばらりばらりと海へと落ちていく亡霊たち。猫又花魁は猫の要素があるだけにか、不意打ちのそれもなんとかと船の縁を掴むことで耐え忍んでいた。
「花魁!?」
「手前、よくも! やっちまえ!」
 とは言え、ばらりとなぎ払い、落としたは亡霊の一部のみ。
 未だ数多とあるそれらは障害を越え、仲間を盾に、エーカのその身へと到達せんと迫る。
 その時。

「でりゃああああああ!」

 ――響いたそれは大音声。それと共に揺らぐは鉄甲船。
 太陽の輝きを背に負って、『彼』は空より舞い降りた。
 それは小舟をえいさと漕ぎ続け、遂には辿り着いた喜介が姿。
 鉄甲船揺らいだは、喜介漕ぎ漕ぎ、人漕いだとは信じられない程に加速した小舟が突撃を受けたが故に。
 ――もしかしたら、他にも要因があったのかもしれないが。
 なにはともあれ、彼はその衝突の寸前、鉄甲船へと大跳躍と共に乗り移ってきていたのだ。
 そして、着地と同時に振るった木刀の一閃は、エーカへと迫らんとしていた亡霊の1つを叩き割り、彼の登場に花を添えていた。
「ああ、追いついたのね」
「応とも! 待たせたか!」
「いえ、待たされてはいないけれど」
「そいつは重畳!」
「なんニャ、なんニャ! また新手の登場なのかニャ! 亡霊共、こっちにくるニャー!」
「む! 猫の妖怪変化か!」
 喜介が登場に尻尾逆立て、威嚇の猫又。それを目にし、喜介もまた油断なくと木刀を構える。
 そこにエーカとの掛け合いの余韻はない。
 じりと摺り足、草履の音。距離を測り、実力を測り、時を計る。
「俺達を無視すんじゃ――ガッ!?」
「無視はしてないわよ」
 視界の外で、エーカの念動力が再びと亡霊たちを薙ぎ、喜介に近づくを許さない。
 ありがたい、と心に零すは喜介。だが、気を抜く訳にはいかない。
 目の前のそれ――猫又から放たれるは芳しき香の匂い。それは音立てぬ猫の歩みのようにするりと心忍び込み、相手を骨抜きにせんとするもの。
 威嚇こそすれ、否、威嚇するからこそ、猫又はその香を速やかにと放ち、喜介へと向けていたのだ。
 常人であれば十も数えぬうちに骨抜きになるであろうそれ。
 だが。

「な、なんで眩まないニャ!?」
「おれァ色香なんぞに騙されねぇ!」

 ――それは常人であるならば、だ。
 喜介の心に秘めたる専心。剣の才能はないとされながらもその道を進み続け、たった1つを掴み取った者の鉄心は、決して揺るぎなどしない。
「なら、押し倒して、直接骨抜きにしてやるニャー!……ニャニャ!?」
 ならばとその獣性を解き放ち、猫又が喜介へと襲い掛からんとした刹那、再びと鉄甲船はぐらりと揺らいだ。
 だが、それは先程の揺らぎとはまた違う。

「ねぇ、気付いてる? 私達の狙いは水軍旗。つまり、貴方を倒すのは必須ではない。時間稼ぎで十分なのよ」

 猫又がハッと気づいた時にはもう遅い。
 振り返ったその視界の先にあったのは、帆柱より破れ落ちる――。
「ありがとう。アナタ達がこっちに来てくれたお蔭で、役割は果たせたわ」
 悔し気に歪んだ猫又の顔が、2人を見る。
 そして、その顔には、せめてお前達だけはという鬼気迫る彩。
 しかし、だ。

「戦場に置いて、敵から目を離すなんてなァッ!」

 ――猟兵達を前にして、彼らから少しでも目を離すなど致命以外の何者でもない。
 鍛え上げられた体幹は揺れる船の上であろうとも、平らな地に立つが如く。
 地を震わすような、床板を踏み抜かんとする程の踏み込みが、喜介の身体を前へと押し出す。
 その構えは大上段。
「しまっ――!」
「この一太刀! 誰にも止められないと知りやがれッ!」
 研鑽の末にと掴み取った喜介のただ1つ。己が魂の全て。
 それは烈火の如き勢いを持って、裂帛の気合を持って放たれる、絶対無比の一太刀!
 ただただ単純で、だからこそ防ぎようのないそれは、猫又を脳天からと断ち抜け、そして、根幹を失い揺れ崩れる船への止めとなったのであった。

「突っ込んでくるだけじゃなくて、帰る手段も用意しておきなさいよ」
「はははっ、悪いな」
 沈みゆく船の上、空中にて飛ぶはエーカが姿。そして、それに掴まった喜介が姿。
 役割果たした2人は、ゆるりゆるりとそれぞれの戻るべき場所へと帰っていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

御形・菘
このゴツい造形、キマフュではブームになりそうなカッコ良さではないか!
此度はこの鉄甲船を邪神パワーで沈める企画だ!

潜水具を装備して海中から接近するぞ
深めに潜って全速で泳いでいこう
それにこの世界の知識的には、妾は発見されても魚影と勘違いされんかのう?

旗取り狙いの者は多かろう
そちらは任せて、妾は陽動でありったけ船員を引き付けてやる
右腕を高く上げ、指を鳴らし、さあ鳴り響けファンファーレ!
味方の炎は即消すぞ

妾のチャンネルは至って健全なのでな、お色気系は他所へゴーバック!
とゆーことで、ファンファーレは継続して鳴らしつつ、速やかにボコり倒していこう
それに妾はモフモフよりもスベスベ(鱗)の方が好みであるしな!


トリテレイア・ゼロナイン
幾つかエンパイア中の戦場を転戦してきましたが、こうして戦っていると信長軍の陣容の厚さに圧倒されてしまいそうですね…
ですが幕府軍の被害を抑える為、ここで退くわけには参りません

騎士というよりかはもはや戦闘兵器の戦術ですが、それを使ってでも村上水軍を阻止してみせましょう

●防具改造で耐水性確保、●水泳技能が付いた水中戦用装備を装着
船からの発見と攻撃を避ける為、水中から隠れて接近
船の右舷、船腹に●破壊工作で陽動用の時限爆弾を設置
起爆後に左舷からワイヤーアンカーでの●ロープワークで乗り込み奇襲…●だまし討ちを仕掛けます

格納銃器の●なぎ払い掃射、UCの突撃攻撃で大暴れし囮になることで旗を取る味方を援護します



 こぽりこぽりと気泡が零れる。
 それは自分か、はたまた同伴の――いや、恐らくは自身のであろう。
 海中をするりと泳ぎ進む影は御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が姿。
 その影はヒト種の脚の代わりと伸びる尾により、もしも上から見ること叶えば、魚影かはたまた神話の何某かと見紛うことであろう。
 その隣を進むはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)の姿。
 状況により装備を換装する彼の今の仕様は水中戦用のそれ。
 白銀の体躯を今は蒼い海に溶け込ませ、菘と同様、水中を静かに進む。
 2人の思惑たるは潜水し、水中に隠れてからの接近、潜入だ。
 そして、その目的は見事に達せていたと言える。
 発見されることもなく、ひたり触れられたは鉄甲船の底。

 ――早々に参ろうではないか。
 ――ええ、他の方々も時期に……。

 潜水具越しの通信はクリア。
 意思の疎通も問題なく、ならば乗り込まんとした時、船底が揺らいだ。
 すわ、発見されたかと緊張も走れば、しかし攻撃は訪れず。
 その時、2人の思考に浮かんだは水上進むを選んだ猟兵達の姿。

 ――しまった、乗り遅れてしまったか。
 ――まだ間に合いましょう。
 ――ならば、急がねばな!

 そして、彼らもまた水面の世界へと。

 ざばりと水面より水柱が立ち昇る。
「徳川共の砲撃かニャ!?」
「はーはっはっは! 改めて見れば、このゴツい造形、キマフュではブームになりそうなカッコ良さではないか!」
 水柱を割って現れたは菘が姿。
 4つの翼をばさりと羽ばたかせ、ぐるりととぐろ巻く尾は流れ、その姿はまさしく邪神か魔王かを想像とさせる姿。それを遺憾なくと見せつけるのだ。
「なんっ、なんなのニャー!? って、こっちにも猟兵ニャー!?」 
「応さ、猟兵さ」
「ああもう! 他からも攻められてるってのに、あちき達は忙しいんだから、とっとと帰るニャー!」
「いいや、そうはいかん。此度はこの鉄甲船を邪神パワーで沈める企画だからな!」
 びしりと突き付ける指先は分かりやすくと標的――鉄甲船を指し示す。
 それは視聴者が見やすく、かつ、己が映えるようにと。
「それを聞いて、はいそうですかって、させる訳もないニャー!」
「それもそうだ。ああ、だからこそ、妾を止めたくばありったけを連れてくるがいい! さもなくば止まらぬぞ!」
「言われなくても、ニャー!」
 ぞろり現れるは亡霊、船員の群れ。
「――あいつを討てば、褒美は思いのままニャよ!」
 そして、響くは号令の声。
 だが。

「騎士と言うよりかは最早戦闘兵器の戦術ですが」

 ――ズンと揺らいだ船が、亡霊たちの脚を止めた。
 見れば、船体の右外壁よりもくりもくりと立ち昇る煙。
 そして、それを囮として左舷より現れた白銀の。
「うぎゃぁ!?」
「――それを使ってでも村上水軍を阻止してみせましょう」
 その姿はトリテレイア。意識の間隙を突くようにと、立体的な駆動を持って乗り込んだ勢いのまま、彼は手近な亡霊を纏めてとランスで突き穿ったのだ。
 確かに、その戦い方は騎士としてのそれというよりは、より戦術的、大局的なそれ。
 ――もしくは乱破……いえ、今はそういう思考を廻す時ではありませんね。
 ちらりと過るは過日の戦い。その折、掛けられた言葉。
 それを頭を振って追い出し、彼は今を見つめる。
「ほう! 爆発とはなかなか見栄えが良いな!」
「旗を落とさねば、あまり意味もないようですが」
「なに、それでも意識を惹きつけられれば十二分というものよ」
 そう、鉄甲船にひるがえる水上旗。それを落とさねば、船に幾らと損壊を与えたところで意味はない。
 だが、彼らにとっては、今はそれでいいのだ。
 彼らの真の目的は、他にこそあるのだから。
「どれだけ居るニャー!」
「さて、どれだけでしょうか。まだまだ居るかもしれませんし、もう居ないかもしれません」
「言葉遊びがしたい訳じゃないニャッ! もういいニャー!」
「そうとも、お遊びはもう終わりさ!」
「ニャニャッ!?」
 掲げた右腕。指先一つパチンと鳴らし、響き渡るは何処からともなくファンファーレ。

 ――いざ見よ。疾く見よ。妾を見よ。
 ――妾こそが遍く全ての世界を統べる邪神也!

 それは菘の中だけの設定であったが、彼女の作り出す世界――配信の中であっては、それは本物。現実をも侵食する虚構。
「あぢっ、あぢぃ!?」
「船の上で炎とか、正気か!?」
「あっ……なんだ、この感情。なんで、目が離せな……」
 響き渡るファンファーレが媒介となり、それを耳にする菘の敵たる者全てを燃やしていく。
 そして、その炎は熱となり、猫又に骨抜きとされ、下僕となり下がっていた亡霊達の心を虜としていくのだ。
「はーっはっはっは! 妾だけを刮目して見よ!」
「ニャー!? あちき達の下僕が!」
「信長軍の陣容の厚さに圧倒されもしましたが……私達も、そう負けてはいませんでしたね」
 ともすれば、行く先々で幕府軍を待ち受け、打撃を与えんとする信長軍の陣容に脅威を覚えもした。
 その危惧は間違いでなく、楽観をしないということは大切だ。
 だが、それにも負けず、打ち破るからこその猟兵達なのだ。
「――では、幕府軍の被害を抑える為、もう一押しと参りましょう」
 炎上し、燃え上がる熱に負けず、トリテレイアもまたその銃身を熱くと燃やし、亡霊たちを撃ち抜いていく。否、それだけではない。スラスタを吹かし、甲板の上を縦横無尽。手にした槍を自由自在と繰り、叩き潰していく。
 それは勝利への道拓く、騎士の突撃。
「ぐっ……ぐぬぬ、押し、押し負けるニャ。こうなったら、致し方ないニャ!」
「――雰囲気が、変わりましたか!」
「妾のチャンネルは健全! お色気系はゴーバック! ……なのだが、妾は亡霊を抑えるのに手一杯だ。そちらは頼んだぞ、騎士よ!」
「ええ、相手がなんであれ、守り通して見せましょう!」
「ニャー!」
 溢れ零れる色の香。
 まるで空気に薄桃の彩が付いたかのようにすら思えるそれは、機械の身体であるトリテレイアであってすらもぐらりと視界揺らがすもの。
 そして、獣性を解放した猫又は精気を貪らんとするのだ。
 ガンとぶつかる様に猫又はトリテレイアを押し倒し、そして。

「わざわざ近づいてくださって、ありがとうございます」

 ――響き渡ったは重低音の砲撃音。
 ぐらりと揺らぐ視界は健在。蕩かし惑わす色の香も健在。されど、それでもなおと失わぬは己が矜持。
 不確かな過去、揺らぐ現在の中にあっても、決して揺らがず、確かなる想い。
 それがあるからこそ、彼は過たずと引き金を引けたのだ。
 遠くでどさりと落ちる音が響いた。それは猫又の1匹が終わりを迎えた音。
 そして、それと時を同じくして、鉄甲船がぐらりと揺らいだ。見れば、帆柱から破れ落ちる水上旗。
 きっと他の猟兵達がやってくれたのだろう。
「妾達の役割は無事にと果たせたようだな」
「そのようですね」
 菘達が己へと課した役割。それは時間稼ぎであり、囮だ。
 少しでも多くの時を、少しでも多くの敵をと惹きつけ、他の猟兵が水上旗を落とすを助けるための。
 そして、その役割は無事に果たせたと言えるもの。
 目立つための大仰な行動が、惹きつけるための立ち回りが、その全てがあったからこその結果だと言えよう。

 依頼の達成を確認した2人は崩れ落ちる船より脱出し、再び海の中。
「さぁ~て、今回の配信はどれぐらいの再生数が期待できるであろうか」
「私の立ち回りなど、見応えは十分だったかと思いますよ」
「――! はっはっはっ、言うではないか!」
 思わぬ冗句に目も見開いて。
 明るき声が目指すは新たなる戦場か、はたまた、暫しの休息か。
 だが、脅威の1つは確かに取り除かれたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

上野・修介
※アドリブ、連携歓迎
「結構デカい船だな」

幕府軍に敵の攻撃範囲外から陽動のための攻撃を要請。
目立たないよう泳いで船に接近し外壁を登り【クライミング】乗り込む。。

【覚悟】を決め、腹を据えて【勇気+激痛耐性】推して参る。

調息、脱力、戦場を観【視力+第六感+情報収集】据える。
敵味方の戦力、総数と配置を確認。

UCは攻撃強化
近くの敵を盾にして出来る限り被弾を減らしつつ、相手の【ダッシュ】で懐に肉薄し擒拿術と柔術を主眼にした超至近戦闘【グラップル+戦闘知識】で一体ずつ確実に倒す。
囲まれそうになれば迷わず退き【逃げ足】仕切り直す。

船を沈めれば終わりだが、オブリビオンは後の障害にならないようキッチリ全滅させる。


月凪・ハルマ
デカい船だなぁ

◆SPD
まず【ガジェットショータイム】で小型のボートを召喚
それを【操縦】して敵船に接近していく

とはいえ、流石にこれだと発見されずにというのは無理だろう
なのでボートを【ハッキング】で敵船に向け全速進行するよう設定
そのまま敵船に衝突させてやる

自分は途中で海に飛び込み、敵がボートに気を取られている間に
泳いで敵船に乗り込んでおこう

その後は【忍び足】で【目立たない】様に船内を移動
オブリビオンを発見次第、【早業】の手裏剣【投擲】での
【暗殺】を狙う

敵の攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】で回避
あと煙管の煙には要注意、だな

イケそうなら水軍旗のある場所まで移動して
引き摺り降ろす事も狙ってみようか



「まさか、自動操縦も使わずに突っ込んでいくだなんてなぁ」
 泳ぎを止めて、ちゃぷりと顔出す海面の上。
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)の視界の先には、自力でオール漕ぎ、凄まじい速度で鉄甲船へと突撃していった猟兵の姿。
 金子を全額だそうとする姿に、思わずと手を貸したまでは良かったが、まさかであった。
 だが、最終的な狙いは自身が行おうとしていた吶喊と同じだ。ならば、結果オーライというものなのだろう。
「ああいう方法もあるのですね」
 まだ戦闘ではない故か、喋り掛ける言葉は丁寧に。
 ハルマと同じくと泳ぎ進むを選択し、鉄甲船へと近付いていたのは上野・修介(吾が拳に名は要らず・f13887)。
 視線の先、鉄甲船へと突っ込んでいった小舟の結果を見守っていた。
「いや、あれは……ええ、はい、そういう方法もあり、なの、かなぁ?」
「――?」
 突入の方法に対して、ハルマの持つ忍びとしての価値観が断言を避け、我知らずと言葉尻を濁していた。
 話す間も油断なく、視線は警戒を怠らない。
 するりするり、とぷん。ざばり、するするり。
 静かに泳ぎ進め、敵に見つからずと彼らは船体への接近を果たす。
 それは彼らが警戒を怠らなかったこともあるが、なにより、先んじて侵入を果たした猟兵達の騒ぎが故、警戒がざるとなっていたことも大きかった。
「結構、デカい船だな」
「デカい船だなぁ」
 人と大きさを比べるべくもないが、それでも近づいてみれば、やはりその威容はより一層。
 故に、零れ出た感想は同一のもの。だが、そこで照れ合うような2人ではない。
 逆に、如何にして昇るかへとその思考は推移するのだ。

 ――その時、頭上でズンと爆発が響いた。

 見れば、そこには大穴。もくもくと昇る黒煙。
 そこ目掛けて、一瞬、ナニカが高速で入っていくのが見えた。
 なんだったのであろうか。ともすれば、共にこの地に転移してきた金色黒色のナニカだったような。
「丁度良いですね、あそこから侵入するは容易そうです」
「外壁も登るには十分そうですね」
 なんだったのだろうという思考も一瞬、すぐさまと切り替え、彼らは開いた穴より遂に侵入を果たすのだ。

 忍び込んだは船の中。しかし、目的とする帆柱は甲板だ。
 だからこそ、2人は足音殺し船上を目指す。
 とは言え。
「――フッ!」
「遅いよ」
 ――そこへ至るまでの妨害はさしたるものではなかった。
 修介が踏み込み敵を打てば、ハルマが手裏剣の早業は敵を縫い留める。
 手練れたる2人の力量もあるが、亡霊の多くが囮となった仲間へと向かっていたのだ。
 そのために、彼らはその力を温存して船上へと至れていた。

「進路クリア、いけそうです」
「こちらも見る限りでは……いや、そうでもなさそうか」
 意識はとおに戦闘のそれ。
 被害は軽微。その円滑さはともすれば慢心を生みそうなものであるが、2人には無縁。
 警戒忘れぬその心が、その接近を気付かせた。
「ここまでくるなんてニャー!」
「きっと、あちき達に喰われに来たニャー」
 上空――いや、帆を繋ぐ縄より飛び降り、迫り来るは猫又花魁が2匹の姿。揺れる黒髪は長くと短く。
 まるでボディプレスの如くと飛び掛かるそれを跳び退ることで躱すは猟兵2人。
「あ、逃げるニャー!」
「素直に受け止める訳もないだろう」
「ここまで辿り着けたご褒美をくれてやろうと思ったのにニャー」
「必要性を感じないね。なにより、そのご褒美って、本当にご褒美なのか?」
 猫としての俊敏性。そのまま地にぶつかることもなく、態勢を変えてくるり着地。
 その身のこなしはただの花魁ではないと感じさせるに十二分。
 ここに来て、ようやくの障害のお出ましであった。
「俺は前」
「なら、俺は後ろから」
 交わす言葉は手短に。
 吸い込み、吐き出した息と共に踏み込むは神速。身体巡る力を進むための力と変えて、修介は前へ、前へ。
「おー。情熱的じゃニャいか!」
 それを止めんとするは猫又が1匹。長き黒髪が揺れて、揺れて。
 広げる手はまるで突き進む修介が身を抱き留めんとするかのように。
 とは言え、それがただの抱擁であろう筈もない。広げた腕の先、指先に見えるは鋭利なる爪。そこには敵引き裂かんとする意思が明確に見えていた。
 だが。

「そういった抱擁は遠慮しておこう」

 ――修介をその懐に迎え入れ、爪が閉じられんとした刹那、彼の腕が動く。
 柔よく剛を制す。
 余計な力みはなく、しなやかにと動いた腕が、猫又の腕を掴み、迫りくる勢いのままにとその身体を床へと叩きつけんと。
「世話のかかる奴だニャー」
「――チッ」
 ぐらり揺れたは色付いた世界。意識とは相反し、猫又掴む腕の力が抜けていく。
 それは後方にて控えていた短髪の猫又が煙管より漂う、艶なる香によるもの。心蕩かし、意識を奪う彼女らの手管。
 呼吸を戦いの術としているからこそ、その効果は修介には大きい。
 緩んだ力に黒髪が翻る。それは高所からの着地の折と見せた柔軟性であり、敏捷性。
 投げられる勢いを利用して、彼女は修介との距離を取ったのだ。
 しかし、態勢僅かと崩す修介への追撃はない。
 何故なら。

「こっちの方が、よっぽど忍びしてるじゃないか」

 ――それを牽制するハルマの存在がある故に。
 吹き抜ける風はガジェットの生み出した送風機。まるで洗い流すかのようにと薄桃の空気を掃っていく。
 いつかの戦いの折、日の本一を豪語する忍びは扇の一閃で脅威を掃った。だから、ハルマは己の持つ技術でそれを為したのだ。
「すまん」
「あの煙は俺がなんとかします。その間に」
「ああ、そちらは頼もう」
 役割は最初に分担をしていたのだ。ならば、それ以上は必要ない。
「あっという間に駄目にされてるじゃニャい!」
「それは仕方ないニャー。煙だからニャー」
「緊張感を持てニャー!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぐ猫又達に連携の意識はない。多少程度、あるのかもしれないが、それでもそれは猟兵のものほどではない。
 だからこそ、彼女らは簡単にと分断されるのだ。

「船を沈めるためにも、キッチリと障害は片させてもらおう」
「ああ、やっぱりこっちに来るよニャー!」
 煙晴れれば視界も良好。意識も清明を取り戻す。
 ならば、そこに障害はなにもない。
 呼吸巡り、力は十全。踏み込んだ脚の力は強く、瞬きの間すら与えずと彼我の差を埋めた。

 ――視える。狼狽え、乱れる呼吸の様が。
 ――視える。それでもと抗うように繰り出された悪足掻きの軌跡が。
 ――視える。どこを穿つべきかが。

 そして、響いたのは終わりを示す鈍い音。命砕ける、鈍い音。
 立ち残ったのは当然の様に、彼1人のみ。

「余計なことをしてくれたニャー」
「それはオブリビオンとしての存在そのものを言っているのかな?」
 ふわり吹き付ける煙を掃い飛ばし、ハルマと短髪の猫又とが火花を散らす。
 とは言えだ、技術も道具も豊富なるハルマに比べ、猫又の飛び道具は煙のみ。
 その彼我の差がどういう結果を生むかなど、火を見るよりも明らかであった。

 トンと跳びたる飛燕の動き。
 影も追い付けぬ程にと跳んで跳ね、世界に残すは己の足跡。
 それがあちらこちらで像を結び、気付けば現実は幻惑に塗りつぶされる。

「さて、どれが本物だ」
 響く声は十重二十重。誰が本物で、どれが影かなど分かりもしない。
「全部ニャー」
「――残念。答えはどれも違う」
 響いた声は1つ。猫又の真後ろ。そして、数多の残像は掻き消え、命の灯火も同じくして。
 とさり倒れる影の後ろ、血振りを行うハルマが姿は白日の下に。

 妨げる脅威無ければ、あとは目的を果たすのみ。
 あちらこちらで響く戦闘の音を、衝撃を背後に、2人は遂にと水軍旗を落とすへと至った。
 そして、宝船であり花街であった海上の花は、ほろりほろりとその身の崩壊を始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナミル・タグイール
宝船なんてあるにゃ!?素敵な響きすぎマスにゃ!
お宝がナミルを呼んでるにゃー!

ジャラジャラ金ぴかを纏ってUC発動
船の宝物がありそうな場所にマッハで突っ込む
思いきり突っ込めば迎撃する暇なんて無いはずにゃ。
船横からぶち抜いてお宝ゾーンまでいっちょくせんにゃー!【捨て身の一撃】
(壁が破れなかったらギニャーとぶつかる猫

この船のお宝はナミルがもらうにゃ!文句あるやつはかかってこいデスにゃ!
【呪詛】を体に纏ったまま体当たりしたり斧でザクーして暴れる
亡霊なんてきっと呪詛でいちころにゃ

弱そうなのもいるにゃ。イイコトよりイイモノ寄越せにゃ!
欲望バトルするにゃ

船沈めちゃだめにゃー!まだ金ぴか取りきれてないにゃああ!



 予知の話では語られていた。
 海上の華たる目的の船。それは金銀財宝も詰め込んでいた、と。
「宝船なんてあるにゃ!? 素敵な響きすぎマスにゃ!」
 ならば、それを頂戴するのも吝かではない。否、報酬としてはばっちりだろう。
 夢見るは金銀財宝の山。夢見るは腕に抱きたるそれ。
 これは、船上目指した者達とまた異なる目的を抱いた者のお話。
「お宝がナミルを呼んでるにゃー!」
 つまるところ、ナミル・タグイール(呪飾獣・f00003)が物語。

 黒猫は空を飛ぶ。 じゃらじゃら金ぴか、空を飛ぶ。
 目にする者があれば、その光景はきっと目を疑ったことだろう。
 幸いと言うべきか、先んじて突入した猟兵達の騒ぎにより、彼女を目にする者はいなかった。
「にゃー♪ にゃー♪」
 思わずこぼれる鼻歌に、ナミルがテンションも最高潮。
 彼女にかかったは強欲の呪い、金欲の呪い、そして――。
 呪いと言えば悪い方向に考えるものであるが、彼女の場合は違う。
 現在の状況と適した今、呪いは彼女の身体能力を支え、爆発的なまでに底上げしていたのだ。
 それ故の飛行。
 呪いも祝福も、方向性が異なるだけでひっくり返せば同じもの。それを表しているかのようであった。
 そして。

「ギニャー!?」

 ――鉄甲船の外壁にべちゃり。
 そのまま突き抜けていくつもりであったのだろうが、流石にそれは叶わなかったようだ。
 カートゥーンのようにずるりずるりと外壁伝って海にぽちゃん。
「なんデスにゃー! 邪魔するつもりデスかにゃー!」
 ぷかり浮かび上がって、折角の毛並みもへちゃんとずぶ濡れ。
 普段であれば思わずとテンションも下がろうというものだろうが、宝の山がそこにあると明言されている今、それで諦める彼女ではないのだ。
 そして、その諦めの悪さを肯定するかのように、外壁がはじけ飛んだ。
 それは他の猟兵の手によって仕掛けられた爆弾で、ナミルにとってはまさしく光明。
 先に待ち構えているであろう敵、予想される敵などを考えるよりも早く、黒猫は再び空を飛んだ。

「な、なんだ手前は!?」
「敵襲って、こいつのことか!?」
 飛び込んだ先には犇めく亡霊。
 甲板の戦いに合流せんとしていたのだろう、手に手に武器を持っていた。
 だが、今はその顔には一様に驚きを貼り付けて、新たなる闖入者を見る。
「この船のお宝はナミルがもらうにゃ!」
 だが、そんな驚きなど知ったことか。
 ナミルの心は金色一色。亡霊も、猫又も、そこへと至るための障害ならば蹴散らすのみなのだ。
 ガツンと床板を打つは災厄の音。
 妖しき黄金の斧が輝きは、ナミルの心を反映するかのようにと強く、強く。
 
「――文句あるやつはかかってこいデスにゃ!」

 ――そして、黒猫による蹂躙は始まった。
 斧の一閃が亡霊共を薙ぎ払い、呪詛纏った体当たりが壁すらをもぶち抜いて。
「こっちだ! こっちに居たぞ!」
「宝物庫には行かせるんじゃないぞ!」
「今、宝物庫って言ったにゃ? 場所を教えるデスにゃー!」
 問答無用と突き進むナミルを止める術などなし。
 それへ対処せんと船内に残る亡霊も集まるが、全ては黄金の斧の前に露と消ゆ。
 そして、それは奇しくも後続の猟兵達が進む道を拓く行為ともなっていたのは、幸か不幸か。
 だが、ハイテンションに身を任せる黒猫さんには、あまり関係のないことであった。

「ここ! デス! にゃー!」
 キリキリと締め上げた亡霊から引き出した情報の下、ドンとぶち抜いた壁の先、広がり見えるは金色の海。見上げる山。
「ニャー!?」
 響いたは悲鳴。
「にゃー♪」
 響いたは喜悦。
「――にゃ(ニャ)?」
 そして、声に互いの顔を見合わせて。
 1つはナミルの声であり、もう1つは猫又花魁が声。
 本来であれば甲板で猟兵達と戦い交わしているであろう筈なのに、何故ここにあるのか。
 それは、彼女らも一枚岩ではないことを示すモノ。
 猟兵の接近を悟った彼女は、戦うを選ぶよりもお給金を頂いてとんずらするを選んでいたということ。
 亡霊共の士気を高める役割はこなしたのだ。それ以上は賃金外というものだ。それが彼女の理論。
 だが、それがナミルとの遭遇を引き起こしたのだから、最早不幸と言う他にない。
「こっ、これはあちきのもの……と言いたいところニャが、山分けでどうニャ?」
「山分けデスにゃ? それも良さそうデスにゃー!」
 明らかなる戦意の低さ。
 それは彼女の戦闘能力が他の猫又達と比べても一段落ちるが故に。
 しかし、その分、生存への拘りは強く、だからこそ柔軟にナミルを買収する道を選べるのだ。
 とは言え。

「――でも、お前を倒せば、これは全部ナミルのものデスにゃ!」

 ――それが通用したならば、だ。
 それは誤算。ナミルにかかる呪いの強さを知らないが故の。
 勿論、他の猟兵ならばそもそもとして買収されるかも怪しいところであるが、この時においてはナミルの強欲の呪いが功を奏した。
「わ、わかったニャ。なら、あちきの身体もくれてやるニャ」
「イイコトよりイイモノ寄越せにゃ!」
 一刀両断。言葉も、身体も。
 欲望バトルなんて、する暇すらもなかった。
 そも、逃げるを選んでいる時点で、欲望の大きさがナミルに叶う筈などなかったのだけれど。
 そして、手にするは金銀財宝の海、山!
「にゃー♪」
 思わずともっふり頬ずりもしようとした刹那、揺れるは船。
 何が起ころうとしているか、彼女は一瞬で理解した。
「にゃ、にゃー!? まだ船沈めちゃだめにゃー! まだ金ぴか取り切れてないにゃ、あああああ!?」
 そして、諸共海の藻屑。嗚呼、諸行無常。

 ぷかりぷかり。
 空は蒼くて抜けるようで、雲は白くて眩しくて。
 漂流者のように浮かぶ黒色の猫さんの瞳から零れるは涙一滴。
 あぶく銭はまさしく泡と消えたのだ。
 とは言え、それでもと最後の瞬間まで手にしていた金塊を手放さなかったのは流石か。
 ただ、その重みがあるからこそ、余計に逃した魚の大きさに彼女は涙するのでもあったが。
「にゃー」
 力なくと漂流を続けるナミルを他の猟兵達が発見し、回収するまで、あともう少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト