エンパイアウォー⑥~ぼくらのしきかん
島原へと向かう徳川幕府軍を、関ヶ原で待ち受ける信長軍があった。
魔軍将。
軍神『上杉謙信』。
そして、大帝剣『弥助アレキサンダー』。
弥助アレキサンダーは、所持する『大帝の剣』の能力で畿内全域の農民達を洗脳し、ファランクス部隊を編成していた。
農民兵は、右手に長槍を構え、左手の大盾で自分の左隣の仲間を守る陣形……それこそがファランクスと呼ばれる陣形をとる。
16人ずつ16列に並んだ、256名で1部隊。
整然と並ぶ部隊を突破することは、一般の徳川幕府軍にはできず。
このまま両軍が戦えば、幕府軍は半数が壊滅という大打撃を受けるだろう。
そんなファランクス部隊には、部隊毎それぞれに指揮官がいる。
部隊中央に鎮座し、大帝の剣の洗脳能力を農民兵に伝達して、ファランクスを組ませる中継機の役割を果たす、部隊指揮官。
それはもちろん、オブリビオンであり。
「わんっ」
真っ直ぐな瞳のくろまろわんこだった。
「徳川幕府軍を待ち受ける部隊の指揮官を倒して欲しい……んだが……」
猟兵達を前にして、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)は酷く難しい顔で頭を抱えていた。
……『第六天魔王』織田信長の居城、魔空安土城を目指す徳川幕府軍は、最大の難所である関ヶ原へとさしかかっていた。
まずはここを突破しなければならないのだが、敵には厄介なファランクス部隊がいて。
対応しきれない徳川幕府軍を助けるため、その部隊の指揮官を強襲する作戦が猟兵達にもたらされた。
洗脳の中核を成す指揮官のオブリビオンを倒せば、部隊のファランクスは壊滅し、戦闘意欲を失って降伏してくると見られている。
ゆえに、作戦は、操られているだけの一般人である農民兵をできるだけ傷つけずに突破し、部隊中央に居る指揮官オブリビオンを討つ、というもの。
ファランクスへの対策、そして農民兵への対処が多少厄介ではあるが、夏梅にそこまで難しい顔をされる作戦ではないはず……なのだが。
夏梅は、苦虫を噛み潰したような表情で、告げる。
「指揮官は、くろまろわんこ。
もふもふで遊びたがりの黒わんこ型オブリビオンだ」
……何だってこんな可愛いのが指揮官なんてやってるんでしょうね?
というか、指揮してませんよね。
完全に、洗脳能力の中継役、ってだけじゃないでしょうか。
戸惑う猟兵達に、夏梅も瞳を泳がせて。
あー、と空を仰いでから、言った。
「とりあえず、指揮官撃破、よろしく」
佐和
こんにちは。サワです。
戦争よりも遊んで欲しいって瞳してませんかこのわんこ。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
ファランクス兵を突破しないとくろまろわんこには辿り着けませんが、誰か1人でもファランクスを崩して突破できれば、他の猟兵はその後に続いた扱いといたします。
指揮官撃破を重視したプレイングでも大丈夫です。
それでは、円らな瞳の黒わんこを、どうぞ。
第1章 ボス戦
『くろまろわんこ』
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POW : あそんであそんで
【投げて遊んでもらうための枝】が命中した対象に対し、高威力高命中の【あそんでくれるひとみつけたアタック】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : もふもふぱわーあっぷ
全身を【もふもふの毛並】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ : どうしてあそんでくれないの?
【遊んでほしいというせつない鳴き声】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠蓮賀・蓮也」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
知念・ダニエル
もふもふっすかー…
道を作る方をメインに。傷付けない戦法なら心得てるっすから
敵の部隊を発見次第、月の叫び(拡声器)で大声を出すっす(【衝撃波】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】)
大音量ノイズで敵を怯ませた所で、こいつらの出番っす
目には目を、犬には犬を、って事で【もふもふわーるど】っす
大半の農民兵はこいつらのもふもふタックルで何とかなると思うっす
もふもふっすから怪我なんてせずに押し倒されるだけっす。あ、槍の先端には気を付けるっすよ
隙を見て指揮官を見付けたら、残っている俺の犬達を向かわせるっす
…そんな切ない声出して首傾げないで欲しいっす
俺の犬達と遊んで、満足したら帰ってくれっす
…それじゃ駄目っすか?そっすか…
知念・ダニエル(黄昏冥土・f00007)の前には、農民の一団がいた。
普段は鍬や鋤を握っているであろう右手には槍を構え。
農作物を大事に扱っているであろう左手には盾を構え、左隣の農民を守る。
仲間を守りながら戦う、ファランクスという戦法。
農村の繋がりを表すような団結力を見せ、農民兵は向かってきていた。
統率の取れた一団は、一般の軍としてはかなりの脅威ではあるが。
猟兵であればさほどの相手ではない。
むしろ気を付けるべきは、ファランクス部隊を編成するのが農民兵……操られているだけの一般の農民である、という点で。
「傷付けない戦法なら心得てるっす」
さらり、とダニエルは告げると、真っ黒な拡声器を掲げた。
「もふもふわーるどの開幕っす!」
月の叫びで拡大された獅子の咆哮の如きダニエルの声は、衝撃波のように農民兵へと襲いかかり、その身を揺さぶり。
その大音量ノイズにさすがに怯んだか、進軍の足が止まる。
そこに。
「さあ、目には目を、犬には犬をっすよ」
ダニエルの周囲に、もっふもふの毛玉の群れが現れた。
いや、その毛玉には、円らな瞳と短い四肢が生えてて。
わんわんきゃんきゃんと可愛い声も響く。
「……犬?」
思わぬ相手に、農民兵の1人が目を瞬かせて呟いた。
ダニエルのユーベルコードで召喚されたその犬は、戦闘用であると同時に、撫でる用でもあって。まさしく毛玉犬。
百を軽く超える大群で農民兵に押し寄せ、片っ端からタックルしていくけれども。
「あっ、もふもふ……」
「ぐわっ……って全然痛くねぇ」
「もふもふっすから怪我なんてせずに押し倒されるだけっす」
毛玉に飲み込まれて倒れていく農民達を眺めて、ダニエルが頷きました。
「あ、槍の先端には気を付けるっすよ」
毛玉犬に注意をしながら、ゆるりと歩いて部隊中央へと進む。
もっふもふの波が左右に別れるようにして作られた道を通り、辿り着いた先には。
「くーん?」
黒い毛並みのくろまろわんこが鎮座していた。
「……そんな切ない声出して首傾げないで欲しいっす」
こちらを見つめて来る真っ直ぐな瞳を見て、ダニエル少しだけ眉を潜める。
きちんと揃えられた前脚が。額の情けないようなまろ眉が。
ぱたぱたと精一杯揺らされる、くるんと毛先を丸めて短く見える尻尾が。
声以上の切なさをダニエルに伝えてくるようで。
「俺の犬達と遊んで、満足したら帰ってくれっす。
それじゃ駄目っすか?」
周囲の毛玉犬を示してそう提案するけれども。
「くーん?」
くろまろわんこは逆の方向に首を傾げるのみで、鳴き声の威力は変わらない。
「駄目っすか……そっすか……」
ダニエルは残念そうに空を仰ぎ。
ふぅ、と息を吐いてから。
そっとくろまろわんこを示すと、毛玉犬がころころ転がるように、くろまろわんこへと突進していった。
大成功
🔵🔵🔵
化野・風音
ファランクス。正しく外津国の戦術ということですね
なかなか厄介です
……が、戦闘の技術はまだしも、ただの農民を統制するというのは大変なものですよ?
混乱させてみましょうか
農民兵の前に立って【誘惑】【時間稼ぎ】
邪気のない落ち着いた……それでいて心を蕩かす妖艶な笑みを向けて
手が鈍っている間に観察して敵のオブリビオンの居場所にある程度辺りを付けつつ≪外法・化野転写≫
戦場の光景が瞬時に変われば
ましてやそれが迷い路であればよほど訓練を積んだ兵でなければまともな行軍はできないでしょう
統制は
その混乱の隙を突いてオブリビオンに【破魔】と【呪詛】両方を乗せた霊符を叩きつけます
「ファランクス……正しく外津国の戦術ということですね。なかなか厄介です」
農民兵の陣形を見て、化野・風音(あだしのの怪・f11615)が赤い瞳を細めた。
長い髪と同じ銀色の耳を立て、銀色の尻尾をふぁさりと揺らした銀狐は、しかし、どこか面白がるようにくすくすと笑う。
「……が、戦闘の技術はまだしも、ただの農民を統制するというのはなかなかに大変なものですよ?」
すらりと伸びた美しい脚をゆるりと動かし、風音は槍を構える兵達の前に立って。
妖艶な笑みを浮かべた。
「混乱させてみましょうか」
殺気立つ農民兵を前に、邪気のない落ち着いた風情で風音は立つ。
武器もない。鎧もない。
さらりと風になびく銀髪と、美しい毛並みを見せる狐耳、そして艶やかな尻尾。
夏らしく涼し気な、違う見方をすると男達を誘うような、きめ細やかで白く輝いて見える艶やかな肌を随所に魅せる服を纏い。
心を蕩かすような美麗な姿を見せつけた。
農民兵達の視線が僅かに惑い、槍が、盾が、並ぶ様が少しずつ乱れる。
軍神の『大帝の剣』による洗脳を解く程の威力はなくとも、風音の姿は、そこに僅かながらも亀裂を生じさせることができたようだった。
それを確認した風音は、農民兵達へと誘うように片手を伸ばし。
笑みを深めて、声を上げた。
「……どうぞ、ご覧になってくださいませ。
現世と幽世に、果たしてどれほど違いがありましょうか?」
途端、辺りの景色が一変する。
草原が広がる夏の関ヶ原が。
人骨が転がる荒野の幻影へ。
「ひいっ!?」
「な、何なんだこれは!?」
急に現れた地獄のような光景に、さすがに隊列が乱れた。
風音の誘惑からの落差もあり、混乱を見せる農民兵達。
何とかそこから立ち直った者もいたようだが、荒野は迷路と化していて。
進もうとしても道が閉ざされ、さらなる混乱を呼び寄せる。
「よほどの訓練を積んだ兵でも、不意の事に対応するのは難しいこと。
それがただの農民であるなら尚のこと」
風音は混迷の最中をゆったりと歩み行き。
農民兵の間をあっさりと通り抜けると、部隊中央へと到達する。
そこには、毛玉犬に囲まれた黒い毛色の犬がいた。
風音の接近に気付いてか、振り返ったその額には可愛いまろ眉がある。
「さあ、辿り着きましたよ」
「くーん?」
妖艶に微笑んだ風音は、何かをねだる様な声に表情を変えることなく。
繊手を舞うように動かし霊符を取り出すと、そのままくろまろわんこへ叩きつけた。
大成功
🔵🔵🔵
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
夏梅、すごい顔してた(思い出して、むむ)
まつりん?わんこ、指揮官だけど……遊びたい?
ん、それじゃあ連れていってあげる(こく)
突破に【うさみみメイドさんΩ】
ファランクス部隊は農民兵
洗脳されてるだけだから
傷つけちゃだめ
だからメイドさん達、小回りきく体格を活かしてダッシュ
長槍を見切り、槍や盾を利用しジャンプ
農民兵の身体に飛び付き、脇や体をくすぐって?
その隙にまつりん行って
メイドさん(本体)もまつりんの背に乗せてもらって
くろまろわんこを……、やっぱりくすぐって?
ん、負傷させなければ強化は出来ない
わんこ指揮官はまつりんに任せて、わたしは農民兵の抑え(くすぐり)に集中
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とくろまろと遊ぶよー♪
くろまろ、どうしてココに来たのー?(動物会話)
そっかー。
ん、じゃあ、力いっぱい遊ぼう!
ほら、枝チョーダイ?
(ぽーいと投げられた枝をひょいっとキャッチ)
さー、おいでー♪
(突進してきたくろまろをダッシュ&ジャンプで躱す)
へへー、残念ー♪
今度はおいらからだよー♪
(ぽーいと懐から取り出したほねっこを投げる)
そーれ、キャッチー!
おおー、上手じょうず! スゴイすごいー♪
ん、もっかい。
(最初の枝を置いて下がる)
さあ、おいでー!
(どーんと全身で受け止め)
よしよし、いい子だー♪
(激痛耐性でにっこり)
満足できたかなぁ? それじゃ、おうちに帰ろ?
(カウンターで灰燼拳)
「夏梅、すごい顔してた」
送り出してくれたグリモア猟兵の複雑な顔を思い出して、木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)はふと振り返り。
すぐに戦いの相手へと……農民兵達へと向き直る。
「さー、くろまろと遊ぶよー♪」
その隣では、元気に両手を掲げた木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)が快活に笑っていた。
楽し気な双子の兄を杏はじっと見つめて。
「まつりん? わんこ、指揮官だけど……遊びたい?」
「遊びたい!」
「ん、それじゃあ連れていってあげる」
きっぱりと返ってきた答えを受けて、杏はこくりと頷いた。
その周囲に50体程のうさ耳付きメイドさん人形が現れる。
「ファランクス部隊は農民兵……
洗脳されてるだけだから、傷つけちゃだめよ」
杏の指示に、今度はうさみみメイドさん達が頷いて。
そのまま農民兵達へと突撃していく。
長槍を構え、盾で受け止めんと構える農民兵に、だがうさみみメイドさんは激突する寸前で飛び上がり、次々と宙を舞って。
降り立つのは部隊の中。
農民兵の至近距離。
そこから何も持たない両手を農民兵に伸ばして。
くすぐった。
「え、あひゃひゃひゃひゃ!?」
「うひひひ!? くすぐったははははは!」
脇を、身体を、くすぐられて、身をよじり笑い転げる農民兵達。
「まつりん、行って」
「遊んで来るー!」
その崩れた陣形を縫うように、笑い声の中を、祭莉が素早く駆け抜ける。
その背には、うさみみメイドさんが1体張り付いていた。
農民兵達をくすぐるのは、この1体の複製達。
「わたしは農民兵を抑えているから」
杏の決意に応えるように、本体のうさみみメイドさんは、杏の代わりを果たそうとするかのように、祭莉と共に指揮官を目指す。
そして辿り着いた先では、黒い毛の後ろ姿がふるふると身を震わせて、霊符を引きはがしているところだった。
「くろまろ、どうしてココに来たのー?」
話しかけると、振り返ったまろ眉が祭莉を捉えて。
「くーん」
「そっかー。
ん、じゃあ、力いっぱい遊ぼう!」
言葉が通じたのか、祭莉はにかっと笑うと迎え入れるように両手を広げた。
くろまろわんこは尻尾を振ると、その目前に唐突に枝が現れて。
とってこい、と言うかのようにぽーいと投げられ、祭莉の手の中に納まる。
祭莉は握り締めた枝を確認すると。
「さー、おいでー♪」
誘いの言葉に乗るように、くろまろわんこが駆け込んできた。
それは、遊んで欲しいとじゃれつく子犬の動作だったけれども。
オブリビオンなればこそ、強烈なアタックになっていたから。
祭莉は、たんっと地を蹴りくるりと宙を舞い、躱す。
「へへー、残念ー♪
今度はおいらからだよー♪」
そして、懐からほねっこを取り出し、くろまろわんこに見えるように振ると。
ぽーい、とその頭上を越すように投げ放った。
視線で追いかけ、走り込んで、くろまろわんこはしっかりキャッチ。
「おおー、上手じょうず! スゴイすごいー♪」
褒めてくれる祭莉に、尻尾をぶんぶん振って駆け戻ってきた。
「ん。さあ、おいでー!」
祭莉は持っていた枝を置いて下がると、今度は足にぐっと力を入れて構え、強烈なアタックを正面から全身で受け止める。
肩に張り付いていたうさみみメイドさんが、その衝撃でころりと落ちたけれども。
「よしよし、いい子だー♪」
痛みを堪えて、祭莉はにかっと笑った。
わしゃわしゃとふわもこな毛を撫でてあげると、くろまろわんこは祭莉から離れ、嬉しそうに尻尾を振る。
そこにうさみみメイドさんが近づき、貼りついて、全身でくすぐるように黒い毛をさらにわしゃわしゃとさせれば、くろまろわんこはその場ではしゃぎ回った。
「満足できたかなぁ?」
楽しそうに遊ぶその様子に、祭莉は頷くと。
「それじゃ、おうちに帰ろ?」
今度はぐっと拳を握る。
全身のバネを使って放たれた狼拳は、うさみみメイドさんと遊んでいたくろまろわんこには不意打ちとなって。
どがん、と撃ち込まれた大威力の一撃は、黒い身体をひっくり返した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
水元・芙実
…フライングディスク投げたら出てこないかしらあの犬…
やるだけやって駄目なら別の手段を考えましょう、うん
とりあえず太陽光を反射するようなリング状のフライングディスクを敵上空をかすめるように投げるわ
即座にファランクスの左手側に走って、幻炎合成法で土を水に変えてファランクスの機動力を殺すわ
この国で流行らなかったのは湿度も高いって事もありそうよね
ぐるりと一周すれば、もう簡単に移動はできないわ
動きが鈍くなった所で敵陣に割って入るわ
あのわんこの足元を空気に変えて穴に落としちゃおう
…ちょっと心苦しいけど、遊ぶために世界滅ぼしそうだし
上から強力な麻酔ガスを充満させて眠らせるわ。…死ぬくらいの濃度で
ごめんね
農民兵達の頭上スレスレを、輝く円盤が飛来する。
それは太陽光を反射する、リング状のフライングディスク。
青空の下で煌めきながら、弧を描くようにして飛んで行き。
「さすがにフライングディスクにつられて出てきたりはしないのね。あの犬」
その軌跡を眺めて、水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)は呟いた。
指揮官として部隊中央に居るはずのくろまろわんこの反応は見えなかったけれど。
農民兵達は視界の端を過ぎる輝きに気を取られ。
その隙に、芙実は部隊の左手側へと位置取っていた。
「この私にかかれば作れない物なんて何も無いわ!」
言ってその手を向けたのは、足元の大地。
農民兵達の行く先を狐火で包み込むと、土は水へと変換される。
幻炎合成法で作り出した即席の堀に、行く手を阻まれる農民兵。
さらに芙実は、また左へと回り込み、そこでも狐火を生み出して。
ぐるりと一周し終われば、農民兵は四方を水に囲まれ、身動きが取れなくなっていた。
「これでもう簡単に移動はできないわね」
元々、他の猟兵の突撃で足並みが乱れていたファランクス部隊は、芙実の策で完全に機能を失うこととなり。
烏合の衆の間を通り、芙実は指揮官の元へと向かう。
毛玉犬にのしかかられる農民を。
幻影に惑わされる農民を。
くすぐられ笑い続ける農民を。
横目に見ながら駆け抜けていって。
辿り着いた先で、倒れていたくろまろわんこがころりと起き上がり。
芙実を見つけると、その円らな瞳を向けて首を傾げた。
「くーん?」
困ったような、縋るような、可愛らしい鳴き声が響くけれども。
「ちょっと心苦しいけど、遊ぶために世界滅ぼしそうだし、ね」
苦笑しながら芙実は再び地面に手を向ける。
生み出された狐火は、くろまろわんこの足元へと広がって。
土を今度は空気に変換し、作り出されたのは落とし穴。
「くーん」
すっぽりと頭上まで地中に落ちたくろまろわんこは、上を見上げて鳴く。
芙実はそれを見下ろして。
「……ごめんね」
幻炎合成法で生み出された麻酔ガスが穴の中を満たしていく。
その濃度はすぐに致死量を超えていった。
そして。
指揮官、もとい、洗脳の中継役を果たしていたオブリビオン・くろまろわんこを失った部隊は、すぐに我に返ると元の農民へと戻り。
死亡者も大きな負傷もなかったものの、四方を囲む堀を越えて帰るのに、ちょっぴり苦労したという、話。
成功
🔵🔵🔴