3
エンパイアウォー⑩~水軍旗を奪取せよ

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0




●穏やかな海に浮かぶは
 穏やかな瀬戸内の海に、その『超巨大鉄甲船』は現れた。まるで海に浮かぶ鉄の城。それが、いくつも浮かんでいる。
 大悪災『日野富子』が有り余る財力で建造させた大船団だ。その甲板には屈強な男達が、無駄のない動きで移動し超巨大鉄甲船を操っていた。嬉々として働いている者もいれば、しぶしぶというかビビり顔で船を操舵している者もいるが、どの者の動きも洗練されていることが窺える。
 本来であれば、そんな人員を一朝一夕に用意することは不可能である。――それらがただの人であるならば。

 ――超巨大鉄甲船の帆柱に掲げられた旗には、丸に上文字が描かれていた。

●グリモアベース
 休む間もない、とはこのことだ。エンパイアウォーが始まってからのグリモアベースは、いつも以上に慌ただしい。グリモア猟兵のひとり、太宰・寿(パステルペインター・f18704)もまた小走りに、次の依頼を待つ猟兵たちの元へ飛び込んで来た。
「すみません、よろしいでしょうか」
 ほんの少し息を上げて、猟兵たちの顔を窺う。猟兵たちの頷く様子が確認できると、寿は少しだけ表情を緩めた。

「次の戦場は、南海道。淡路島にほど近い瀬戸内海の海上です。ここに、大悪災『日野富子』の建造させた『超巨大鉄甲船』の大船団が配置されています。皆さんには、この『超巨大鉄甲船』の一つを攻め落として頂きたいんです」
 手にしたスケッチブックを開き、白衣のポケットからペンを取り出すと、スケッチブックの上にさらさらとペンを走らせる。〇の中に上と描いて、猟兵たちに見せる。
「――船を操っているのは、戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』……その怨霊です」
 ざわり、と微かに空気が揺れる。
「村上水軍の怨霊は、帆柱に掲げられた村上水軍旗を引きずり降ろすことで消滅します」
 そう言って、スケッチブックに描いたものを指し示す。
「そして、それ以外の方法ではダメージを与えることは出来ません」
 ユーベルコードを使っても不可能である、と寿は告げる。
「村上水軍の怨霊の力が宿っている限り、『超巨大鉄甲船』は、すぐに復元されてしまいます」
 そこまで話して、寿は申し訳なさそうに一度顔を伏せた。

「実は、もう一つ問題がありまして……皆さんを直接『超巨大鉄甲船』にお送りすることが出来ないんです。近くの島までお送りしますので、皆さんには各々の手段で『超巨大鉄甲船』に乗り込んで頂き、妨害する護衛を撃破。その後に、村上水軍旗を奪取し船から脱出して頂くまでが一連の流れとなります。
 船団を沈めなければ、南海道の海路を進む幕府軍の船が悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまいます。皆さん、よろしくお願いします」
  猟兵たちの顔を見回し、それぞれが受け止めてくれた様子を確認すると寿はグリモアに光を宿した。


105
●ご案内
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●ご挨拶
 105と申します。
 よろしくお願いいたします。

●方針
 オープニングにもありますとおり、『超巨大鉄甲船』に乗り込むところから始まります。
 プレイングは『超巨大鉄甲船にどのように乗り込むか』『護衛との戦闘』『村上水軍旗をどのようにして奪取するか』をお書き頂ければと思います。なお、村上水軍の怨霊との会話は可能ですが、有益な情報は持っていないようです。

●プレイング
 オープニング公開から、受け付けます。
 シナリオの性質上、頂いたプレイングの数によっては全採用とならないかもしれません。ご了承ください。
 ご参加、お待ちしております!
68




第1章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:麻風

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ユェン・ウェイ
アドリブ連携歓迎

海の上でまでトラブルを起こしてくるなんて
無理やり働かされてる怨霊さんもいるみたいだし、バチッと解決してこよう

超巨大鉄甲船までは【スカイステッパー】で跳んでいけないかな?
距離が足りないなら小さな舟を用意して必要な距離まで移動してから跳んでいこう
鉄甲船に乗る時は上から行きたい

上手く鉄甲船に乗れたら早速護衛と戦おう
相手が肉弾戦で来るならボクもそうするよ
槍で【フェイント】も交えて、【串刺し】にして目指すは一撃必殺!
半端に損傷させると更に加速するみたいだしね
相手の攻撃には【野生の勘】を働かせて【ダッシュ】や【ジャンプ】で回避していこう

護衛さえ倒せたならまたしても飛び回って旗を奪取したいな


ジュリア・ホワイト
フム、船上戦か……
ボクの本体は陸上専門でこういうのは苦手だけど
なら工夫して戦えばいいだけの話だね

とはいえ直接は乗り込めない
だからまぁ、手伝えるのは護衛の排除までかな

島で手漕ぎボートでも何でも良いから調達して
鉄甲船の2キロ圏内まで近づくよ
理想は島からでも届くことだけど

そして射程に入ったら【駅の護り手達よ、我が招集に応えよ】で駅員の亡霊たちを召喚
鉄甲船に乗り込んで落武者達を攻撃するよう指示を出すよ
幽霊だからね、当然道がなくても飛んでいけるさ

そして落武者達も怨念をまとって戦うということは
霊的なものに干渉される余地があるということ
「なら、駅員さん達からも干渉できる。――GO!」
【アドリブ歓迎】


セルマ・エンフィールド
こんなもの、今までどこに隠していたのでしょうか……

それでは……まずは徒歩でいきましょうか。
【絶対氷域】を使用、海の深くまではすぐには凍らないでしょうが、足場にできる程度海面を凍らせるくらいならそう時間はかかりません。凍った海面を歩き船に十分近づいたら【スカイステッパー】で乗り込みましょう。
護衛との戦闘は引き続き【絶対氷域】を主軸に。素早く近づく敵の攻撃を「フィンブルヴェト」による武器受けで防ぎ、敵が凍り付くまで「時間稼ぎ」しています。
敵が減った、あるいは凍り付いた敵を盾にできる状況で余裕があるならば『スナイパー』技術による【氷の狙撃手】で海軍旗を支えるポールを狙い折りましょう。

アドリブ連携歓迎


トリテレイア・ゼロナイン
幕府軍の被害を抑える為にも、何としてでも鉄甲船をとめなければなりませんね
騎士というよりウォーマシンとして動くことになりますが、致し方ありません

●防具改造で耐水性を確保しつつ●水泳技能が付いた水中戦用装備を装着
●ランスチャージによる水中での突撃で速やかに船に近寄ります
接近したらUCの隠し腕を船上に伸ばしワイヤーを●ロープワークで巻き取り速やかに侵入。水中戦用装備をパージしつつセンサーで●情報収集
近くのオブリビオンに頭部と肩部格納銃器で●なぎ払い掃射
●だまし討ちの奇襲を敢行

衝撃波を刀を振るう軌道から●見切り●怪力の●盾受けで防御し剣で切り捨てつつ、派手に暴れて敵を引き付け旗を取る味方を援護します


西条・霧華
「精強さでは劣ろうとも、想いまで負けるつもりはありません。」

潮と風の流れによって速力を確保した小船で接近します
最後は『幻想華』を利用し攻撃しつつ乗り込みます

護衛との戦闘は【残像】を纏って眩惑し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて『幻想華』
敵の攻撃は【見切り】、【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止め、返す刀で【カウンター】を狙います
何れの場合も殲滅ではなく敵の追撃を振切る事を優先します

【視力】によって旗の場所を確認し、そこに至る最も効率が良い道程を【見切り】移動します
戦闘自体は旗に至るまでの障害になる場合以外は極力避け、速攻による旗の奪取を最優先で行動します


アマニア・イェーガー
(アドリブ・連携可)
なるほどね、あの船に乗り込んで旗を奪っちゃえばいいんだね?
おまかせあーれ!【逆巻く嵐の王】展開!
鉄甲船目指して出航!あ、もちろん相乗りOKだから足が無いひとは乗っちゃっていいよー!

鉄甲船に接近したら砲撃開始!乗り込む前に護衛に損害を与えておくよ!
そんなに効果ないかもしれないけど、やらないよりはマシ!

乗船したら海賊船は一旦解除
【空中浮遊】【空中戦】《電子の覗き窓》で攻撃をかわしつつ、《トロイの木馬》での爆破と【ハッキング】で船の制御を奪って護衛と戦うよ!

【破壊工作】で【時間稼ぎ】しつつ【鍵開け】【早業】で旗を略奪!
船上で【逆巻く嵐の王】を再発動して護衛を蹴散らしつつ逃げるね!




「あ~あ、だりぃなぁ」
 船倉の隅に、気だるげな声。穏やかな天気だが、彼の心は全く晴れていない。無理やり呼び起されて、金に物を言わせて、こき使われているのだから。まぁ、金は好きだけど。海賊だし。そう心で付け足しつつ、彼はこっそりサボっていた。だってやる気ないんだもの。
 ふわぁ、と大きな欠伸をしたところで、俄かに甲板が騒がしくなる。どえらい爆発音が響き、足元が揺れた。
「な、なんだなんだ?」
 この巨大な城のような船、早々落ちる事などあるまい。なんたって、あのいけ好かない女が莫大な金を費やして建造した船なんだから。むしろ沈めたら、後が怖いわ。そんな事を考えながら、甲板へ駆け上がると彼は叫ぶことになる。

「な……なんじゃあ!?」


 さて、時間は少し前に遡る。この作戦に参加した猟兵は全部で六名。彼らは戦力を二つに分散して、『超巨大鉄甲船』を見上げていた。

 一方は、小型の手漕ぎ船で『超巨大鉄甲船』から二kmの距離に停泊。ジュリア・ホワイト(白い蒸気と黒い鋼・f17335)は、双眼鏡を覗き込み甲板を見る。
「たくさんの船員が配備されているね」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は、舟を漕いでいた手を止め同じように『超巨大鉄甲船』を見遣る。距離が離れているにも関わらず、存在感を放つ姿はまさに鉄の城だった。
「いやはや、大きい。見事なものですね」
「こんなもの、今までどこに隠していたのでしょうか……」
 セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)もまた、『超巨大鉄甲船』を空と同じ色の瞳に写し、少しだけ呆れた色を滲ませる。
「財力に物を言わせて作ったらしいけど、幕府と仲が悪い藩主が手でも貸したかな?」
 推測だけれどね、と付け足してジュリアは肩を竦める。
「いずれにせよ、幕府軍の被害を抑える為にも、何としてでも鉄甲船をとめなければなりませんね」
「そうですね。きっちり、仕事をしましょう」
 それにしても、とジュリア。
「船上戦か……。ボクの本体は陸上専門でこういうのは苦手だけど。まぁ、工夫して戦えばいいだけの話だね」
「適材適所、ですね」
「では手筈通りに。私も、騎士というよりウォーマシンとして動くことになりますが、致し方ありません」
 三人で顔を見合わせ、頷き合う。
 真っ先に船から降りたのは、セルマ。そう、降りたのだ。事前に打ち合わせしていたから、二人は驚かないが。海に降り立つセルマの足元が急速に凍り付いていく。凄まじい冷気は、彼女から放たれていた。ユーベルコード『絶対氷域』――全てを凍てつかせる絶対零度の冷気は、彼女の周囲を凍りつかせ、停止させる。細身の彼女が歩くくらいでは、この氷は割れないだろう。
「私は徒歩で行きますので、先に向かいます。また、後程」
 そう告げ、てくてくと彼女は『超巨大鉄甲船』へと歩いて行った。
「気を付けてね」
 見送るジュリアの隣で、トリテレイアも防具改造を施し装備を整えて、準備は万全だ。耐水性を確保したアーマーは、水の抵抗を極力減らす滑らかなフォームの水中戦用。水泳技能の役割を果たすプロペラが二対装着してある。
「それでは、私も」
「気を付けて。それから、船漕ぐの変わってくれてありがとう」
「いえ、当然のことをしたまでです」
 海へ飛び込もうとするトリテレイアにジュリアは声を掛ける。本当はジュリアが漕ぐはずだったのだが、トリテレイアが漕ぐと申し出た経緯があった。彼女は弱きものではないから、それ以上は口にしない。だが、記憶を失った彼がその身に組み込む騎士道物語がそうすべきだと、記していたのだ。

 いってらっしゃい、と見送る声を背に受けて、トリテレイアは海へと飛び込む。水中に潜りランスチャージを利用した加速で、『超巨大鉄甲船』へと速やかに突撃して行った。
 二人を見送ったジュリアが、さて、と再び『超巨大鉄甲船』に目を向ける。
「それじゃ、ボクも準備を始めようか」
 そうして呼び出すのは駅員の姿をした亡霊だ。
「列車が行く所、駅も必ずある。そして駅があれば、駅員も当然居るのさ」
 その数、47体。
「幽霊だからね、当然道がなくても飛んでいけるさ」

 ――そして落武者達も怨念をまとって戦うということは、霊的なものに干渉される余地があるということ!

「なら、駅員さん達からも干渉できる。――GO!」
 ジュリアの指示を受けた駅員さんたちが、空を飛び『超巨大鉄甲船』へと向かって行った。


「なるほどね、あの船に乗り込んで旗を奪っちゃえばいいんだね?」
 アマニア・イェーガー(謎の美女ヴィンテージコレクター・f00589)は、手を目の上に添えて『超巨大鉄甲船』を追う。
「お城みたいな大きさだね」
 ユェン・ウェイ(M.Y.W・f00349)も、アマニアの隣で件の船を見上げた。並び立つ西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は、目を細めて帆柱の先で棚引く海軍旗に目を向けた。
「そして、あれが例の旗ですね」
「うん。まるに上の文字が書いてあるね」
 霧華の言葉に、ユェンも頷く。ちなみに、彼女たちがいるのはアマニアが『逆巻く嵐の王』により作り出したバーチャルな海賊船。古めかしく雰囲気満点の海賊船は、敵船の四分の一ほどの大きさ。敵船がいかに大きいかが窺える。
「海の上でまでトラブルを起こしてくるなんて。無理やり働かされてる怨霊さんもいるみたいだし、バチッと解決してこなきゃね」
「えぇ。私も、精強さでは劣ろうとも、想いまで負けるつもりはありません」
「それじゃ、距離も良い感じになってきたしいってみよー!よーそろー!」
 アマニアの掛け声で、ぐんと海賊船は加速する。盛大に砲撃しながら、『超巨大鉄甲船』に接近。
「それじゃ、向こうの甲板で会おうね!」
「はい。皆さん、御武運を」
「総員突撃ー!」
 ユェンが声を掛け、空中で多段飛び。ステップを踏むような軽やかさで『超巨大鉄甲船』の上空まで飛び上がっていく。同時にアマニアは、背中に電子の羽を作りだしふわりと空中に飛び上がると、舞うように甲板へ飛び去って行った。
 最後の霧華は、二人のように空を移動する技能がない。だが、上がる手段がないわけではない。海賊船の帆柱を、重力を無視して駆け上がる!そのまま頂上まで登り、勢いのまま帆柱を蹴る。普段使わない鉄塊剣を敵船の側面に思い切り投げつけ突き刺すと、横に向いた刃を足場に蹴り上げて、敵船の甲板に飛び乗った。

 『超巨大鉄甲船』の甲板の上は、突然の砲撃にてんやわんや。村上水軍の怨霊たちは、当然無傷だが動揺がないわけではないようだった。ユェン達が甲板の上空に舞い上がった頃には、先駆けてジュリアの放った駅員さんたちがすでに護衛の落武者たちと交戦を始めていた。一対複数の構図で、駅員さんが優位に動いている。

「上だっ!!」
 水軍の一人が、ユェンとアマリアを指差し護衛に向かって叫ぶ。だが、護衛の落武者たちには空を飛ぶ手段がない。くるりとユェンは掌の中で、ドラゴンランスを回転させるとそのまま重力に任せて、落武者に急降下する!合わせて刀を構えて受けようとする落武者を串刺しにするユェンの一撃は、刀を持つ両腕を甲板へと叩き落とした。欠落により身軽になった落武者がユェンに体当たりしようとするのを、槍で刺すと見せかけて横に躱す。そのままの勢いで、カンバルーの尾を振り弾き飛ばした。
「素早くなるの、分かってるんだからね!」
「ぐおっ!」
 落武者の背後にいたもう一体が巻き添えを食らい、折り重なって仰向けに倒れ込んだ。そこにダメ押しの串刺し攻撃。
「わたしも負けてられないね!」
 ユェンの戦いぶりを見て、アマニアは空中に半透明のウィンドウデバイスを展開。空中から落武者に向かって容赦なく降り注ぐのは、トロイの木馬――彼女の爆弾である。アマニアに操作されるそれらは、猟兵たちに当たることなく的確に落武者目掛けて迫っていく。盛大に甲板が揺れた。
「ちょ、やめぇ!!」
 ダメージは喰らわないのに、水軍の怨霊も一部が動揺している。
「旗だ!旗さえ取られなきゃ、どうってことねぇ!!」
「勿論、旗も頂きますよ」
「ひぃ!!」
 手すりにしがみついていた水軍の怨霊の真横から、ぬっと顔を出したのは水中を移動してやってきたトリテレイア。まさか、船の外から来るとは思わなかった怨霊が、水軍の猛者とは思えないほど情けない悲鳴を上げた。トリテレイアは、水中から『腰部稼働装甲格納型 隠し腕(打突用スパイク装備)』で自身を甲板まで引き上げてきたのだ。既に水中用装備もパージ済み。万全の体制で、手すりから顔を覗かせたまま、体を持ち上げて落武者の姿を捕捉。そのまま、頭部と肩部格納銃器から弾丸を一斉掃射した。
「騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きました」
 そのまま、ガシャンと重々しい音を立てて甲板へと降り立つ。
「私は自分の役目を定めて、ここに来ました。お相手願います」
 セレモニー用の美しき儀式剣は、トリテレイアの大振りで衝撃波を放ち落武者たちを吹き飛ばしていく。この依頼に参加した時に、トリテレイアは旗を取る味方を援護すると決めてやって来た。故に彼は己に視線を集めるために、大きな動きで甲板を派手に暴れ回る。

 ――完全に落武者たちの視線が、トリテレイアに集まった時。美しい一筋の光が、落ち武者の首に奔った。

 一瞬の無音。かちん、と鞘に刀の納まる音がする。

「助太刀いたします」

 籠釣瓶妙法村正を携えた霧華だった。再度、居合の構えを取り直し、トリテレイアの後ろに背を合わせるように立つ。

「ありがとうございます。では、参りましょうか」

 刃の数が二本に増える。甲板の上は、未曽有の混乱に陥っていた。
 そこへ、更に氷のように研ぎ澄まされた一筋の弾丸が、飛来する。

「ゆっくり来すぎてしまったようですね。挽回します」

 セルマだ。甲板に降り立ったセルマは、未だ圧倒的な冷気を纏い洗練された射撃で落武者を落としていく。手にした武器に攻撃力を乗せて落武者は攻撃に転じるも、セルマは冷静にフィンブルヴェトで往なしながら、じわじわと落武者を氷漬けにしていく。その落武者を、ジュリアの呼び出した駅員さんたちが集団で襲い掛かりトドメを刺していった。水軍旗への射線上に落武者がいなくなったことを確認すると、セルマは素早くフィンブルヴェトを構える。狙うのは、水軍旗……が翻っている帆柱だ。

「へし折ります」

 言うや否や、銃口を引く。素早く正確な射撃が数度撃ち込まれて、帆柱を氷漬けにしていくと、ミシリと音を立て帆柱が傾きはじめた。だが、怨霊の力が宿るこの船は、すぐに復元されてしまう。

「道を開きます!」
「わたしもやるよー!」

 霧華が、展開する落武者たちに斬りかかり帆柱までの道を切り開く。同時に、アマニアも爆弾で開いた道に邪魔が入らないように壁を作った。

「ユェン様!」

 その道を、しなやかにユェンが走る!甲板の中心、帆柱の側に立つトリテレイアが手を組み腕を突出しユェンを待つ。差し出された手に、ユェンの足がぐっと掛けられた瞬間に、トリテレイアが思い切り腕を振り上げる!その勢いに、スカイステッパーの跳躍力を乗せてユェンが水軍旗へと跳びかかった!

「……獲った!!」

 棚引く水軍旗をしっかりと掴み、そのまま甲板へと転げ落ちる。幾度か回転して、勢いを殺すとユェンは快活な笑顔で手にした水軍旗を掲げた。

 離れた小舟の上で、ジュリアは望遠鏡越しにその光景を見守っていた。
「よしっ!」
 ユェンの掲げる水軍旗を見て、ぐっと拳を握った。作戦は成功したのだ。

「それじゃ、撤収しよう!皆乗って乗って!」
 アマニアが再度『逆巻く嵐の王』を発動し、海賊船を生み出す。全員がそれに飛び移り、光と消えゆく『超巨大鉄甲船』の最後を見守った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月12日


挿絵イラスト