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エンパイアウォー⑥~剣鬼咆哮

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●荒野戦線
 関ケ原、洗脳された農民兵が巨大な盾と槍を構えて整然と進行する。
 その中央には凛とした佇まいの――鬼がいた。
『烏合の衆と思ったけれど、成程……恐るべき力ね』
 洗脳は魔軍将『弥助アレキサンダー』の『大帝の剣』の力、それに『日野富子』が手配した『ファランクス』戦術用の武具各種。これならば戦い方を知らぬ幕府軍では易々と突破も難しいだろう。そして、それらを指揮するのが一耀の羅刹『アラヤ』……高潔な武人だった彼女がオブリビオンとして、この戦場を支配していた。
『さあ、始めましょう……宴の時間よ』

「はい、先日はお疲れ様でした!」
 喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)はグリモアベースに集まった猟兵達に説明を始める。戦線が拡大し、敵の妨害第二陣が関ケ原に到達したのだ。ここを無事に抜けられなければ、この戦争は終わる。
「えーっと、今回は関ケ原に布陣した敵部隊を突破して貰いたいと」
 ぐらりと首を垂れて……再び顔を上げた紗羅の瞳が赤く染まっていた。
「あー、まどろっこしいのは無しだ。敵部隊の指揮官を叩け、以上」
 雑だ。別人格“鬼婆娑羅”はあっさりと言ってのける。だがそれだけじゃないだろうと飛ぶ野次に、頭を掻きながら説明を続けた。
「――指揮官の周りは洗脳された農民がデケェ槍と盾持って並んでる。こいつは出来れば殺すな。無辜の民草が利用されてるだけだ」
 洗脳された農民が迎撃と突撃を兼ねた厄介な密集陣形で並んでいるというのだ。彼らを殺してしまえば、後々まで禍根が残るのは必定。故に進んで命は奪えない。
「この陣形は『ファランクス』とか言うらしい。南蛮らしい何か洒落た名前だわ。意味は知らねえけど。まあ、洗脳されてるだけだからな、吹き飛ばすなり念力なりで無力化する……あるいはこの戦術の弱点を突くといい。幕府軍はそれを知らねえ」
 猟兵の超常の力をもってすれば多少はそれらを退かす事は可能だろう。だが数が圧倒的……おおよそ256名の農民兵が16人ずつ16列に並んで正方形に陣を組み、その中心に指揮官を据えているのだ。この戦術そのものを叩ければ、より確実に無力化出来る。
「正面からやぁやぁやってた連中だからな。これは盾が無い右翼が弱点だ。他にも進行方向に罠を仕掛けたり想定外の奇襲を仕掛けたり――そこは任せる」

 弱点を突いて陣を崩せれば敵指揮官との一騎打ちも容易だろう。だが油断は出来ない……周囲に健在の農民兵がいれば、確実に妨害してくるからだ。
「逆に農民兵が健在だと厄介だぞ……殺傷力は俺達にしてみればそれほどでは無いとはいえ、数が多いし始末も出来ねえ。一言で言えば、凄い邪魔だ」
 だからこそ戦術に対するカウンターが出来れば有効だ。勿論一撃離脱を狙って、局所的な妨害行動を絡ませるのも十分にありだ。要はファランクスを無力化しボスとの一騎打ちの手順を組み立てろ、と鬼婆裟羅は言いたかった。
「まあ、指揮官も戦狂いの気がある――上手く挑発して誘い出すのもいいだろう」
 敵は生前高潔な武人だったという。だが今は歪んだ戦狂いだ。聞こえるまで近寄る必要もあるだろうが、言葉が届けば誘い出すのも有効かもしれない。
「という訳だ。こっちも手一杯で中々支援し切れず悪いが……頼むぜ」
 再びぺこりと頭を下げる鬼婆娑羅。本来なら自ら飛び込みたい所だろうが、今回はそれ以外にも事情がある。
「幕府軍が島原まで辿り着かなきゃ、如何に魔軍将を征伐しても戦争には勝てない。この一戦は至極重要なんだ」
 ここを無事に突破出来なければ、総勢5万もの兵達が無残にも敗走するという。初動の全軍の半分近く――戦略上重要な戦いである事は明白だ。力を込めて、三度鬼婆娑羅が頭を下げて、スマホからグリモアの門を展開した。
「戦争はよくねえ。だが負ければ更に最悪だ――皆、よろしく頼む」


ブラツ
 ブラツです。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。1フラグメントで完結し、
 「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 戦闘は【ボス戦】となります。
 256名の農民兵(ファランクス兵)の中央に居るボスを撃破する戦闘シナリオです。
 農民兵は一般人なので、出来るだけ殺害しないような工夫があると良いでしょう。
 彼らの『ファランクス』戦術は、一般の幕府軍では突破は不可能です。
 猟兵の活躍が無ければ、幕府軍の半数は、関ヶ原の地で壊滅してしまうでしょう。

 プレイング募集は公開と同時です。今回は戦争シナリオの都合上、
 8/20迄の判定を確実にする為、採用をお見送りさせてもらう場合があります。
 連携アドリブ希望は文頭に●を、同時参加を希望の方は識別子をお願いします。
 それではご武運を。よろしくお願い致します。
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第1章 ボス戦 『一耀の羅刹『アラヤ』』

POW   :    荒谷流剣術・外法『九耀鏖殺刃』
自身の【敵の命】が輝く間、【斬擊一回】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD   :    荒谷流抜刀術『神薙の太刀』
【心眼】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【居合いにより発生する風の刃】で攻撃する。
WIZ   :    外法召喚・怨魂鬼
自身の【これまでに喰らってきた犠牲者の魂】を代償に、【召喚した配下の鬼達】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【本体と連携し、自身の犠牲も厭わない】で戦う。

イラスト:えんご

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は荒谷・ひかるです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
無辜の農民達を洗脳して戦場に立たせるとは、許せません。
指揮官のオブリビオンを撃破して、農民を解放しましょう。

ハイパー・ガーディアン・モードを発動して、
上空高く飛翔してからファランクスを飛び越えて
マッハ3を超える速度で急降下し、装備しているのは
ハルバードですが「ランスチャージ」で、直接オブリビオンを
狙って「串刺し」にします。

「貴様がこの隊の指揮官か! 農民達を解放するためにも、倒れてもらう!」

敵の攻撃は、緑の大盾で「盾受け」し、それでも食らったら「激痛耐性」と「オーラ防御」で耐えます。

敵UCの「味方を1回も攻撃しないと」の条件によって付近の農民兵が攻撃される場合は、身を挺して農民兵を庇います。



●翠玉の誇り
 陽光を浴びてエメラルドの肌が燦然と輝く。ウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)は眼前のファランクスを見やり、緑の斧槍を大地に立てた。
「無辜の農民達を洗脳して戦場に立たせるとは……許せません」
 静かに一歩、一歩と重装の重みがくっきりと足跡を残して。牙無き者を利用する悪辣な戦術など、この緑の騎士が必ず止める。
「指揮官のオブリビオンを撃破して、農民を解放しましょう」
 そしてふわりと、深緑の外套を翻しウィルヘルムは宙を舞う。正面と左翼が如何に鉄壁だろうと……空中までは守れまい。音の壁を越えて翠玉は弾丸と化した。

『――大きな戦と聞いていましたが』
 誰も来ない。何故でしょう。アラヤを囲んで陣を組む農民兵は誰一人その呟きに耳を貸さず、黙々と前進を続ける。
『こんな大盾に長槍、合戦ではさぞ映えるでしょうに』
 誰もいない。私はただ、早く幕府軍にこの兵をもって徒歩込みたいだけなのに。
『……何て考えていたからかしら、ようやくお目見えですね』
 するりとアラヤが太刀を抜く。ファランクスの行軍を止めて、その視線の先――遥か高空より迫る、翠玉の弾丸に切っ先を向けた。
「はぁぁぁぁぁぁッ!!!!!!」
 音速を超える斧槍の突撃は衝撃波を纏い、大盾でその身を守った農民兵以外……つまりアラヤのみをファランクスから追い出した。だがその一撃は、尋常ならざる太刀捌きにより、辛くも払われてしまう。
『音より早くその身を飛ばす、流石ですね……しかし』
 一手遅い。あえてその身を僅かに浮かして類稀な脚力で斧槍の突撃を相殺し、膂力のみで穂先を払う。大地には点々とアラヤの足跡だけが残り、対峙するウィルヘルムは依然、ふわりと宙を舞っていた。手にした斧槍をアラヤに向けて、ウィルヘルムが宣戦を告げる。
「私はウィルヘルム・スマラクトヴァルト。緑の騎士の名にかけて、貴様の好き勝手にはさせない!」

『――荒谷流宗家、一耀の羅刹『アラヤ』だ。お命頂戴する』
 瞬間、脱兎の如く地を駆けたアラヤが神速の連撃をウィルヘルムに放つ。間合いは――いつの間にか、ウィルヘルムの足元まで、恐るべき羅刹は迫っていた。
「流石、かつては随一の武人とまで言われただけ、ある!」
 担いだ大盾を前に出してその連撃を凌ぐウィルヘルム。止めどなく放たれる左右からの打ち込みに、反撃の暇すら与えられない。荒れ狂う暴風の様な威力を防ぎ、緑の闘気がウィルヘルムの全身から漏れ出る。
『しかし、宙に浮かれるのは面倒ですね――それに』
 そろそろ、血が足りない。不意にアラヤの打ち込みが止まる。バランスを崩したウィルヘルムがアラヤを追った視線の先には、ファランクスの農民兵が。
「――させるものか!」
 仲間の血を吸い力を発揮する妖剣か。ならば防がねば――再び音より早く空を飛び、農民兵とアラヤの前にウィルヘルムは陣取った。
「無辜の民草に血を流させる、武人としてあるまじき所業――見逃しはしない!」
『ここは戦場ですよ――日寄りましたか、猟兵!』
 農民兵を守るべくウィルヘルムが地に足をつけた瞬間、今度はアラヤが宙を跳ぶ。行く先は――ファランクスの中央、建て直された陣の最奥部。
「させるか――!」
 のったりと旋回する農民兵をかき分けてアラヤの前へ出るウィルヘルム。味方の首を撥ねんと太刀を振りかぶったその間に、大盾を掲げて割って入った。
『愚かな……ならばそこで、彼等の相手をしていなさい』
 全軍前へ――号令を掛けるアラヤに従って農民兵が再び前進を始める。
「そう易々と――!」
 再び飛翔しアラヤの元へ迫ろうとしたウィルヘルムを止めたのは、その場に留まった農民兵の長槍だった。足元を狙い何度も放たれる突きを躱して、空中で再びアラヤの方を見据える。
『前進を止めれば彼等の首が飛びますよ。さあ、どうします?』
 クスリと笑ってウィルヘルムを挑発するアラヤ。背後には農民兵が数十名――つまり、分断されたのだ。どちらかを守れば、健脚で迫ったアラヤに農民兵の首が撥ねられる。それを止める為には、今はアラヤの前進を見過ごす他ない。
「私は……それでも」
 民を守る。この心は真実だ。今は背後の農民兵をここで防いで、少しでも彼等の命が長らえる事を祈る他無い。続く仲間に後を託して、ウィルヘルムは迫り来る農民兵と向き合った。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリシア・マクリントック
互いにカバーする形の方陣……単純故に有効、というわけですね。
ならばこちらも単純に行きましょう。セイバークロスを纏い、鳳刀『暁』を手にシュンバーに乗って突っ込みます。
熟練の兵士でもなければ馬の速さに対応するのは難しいでしょうし、農民ならば馬が危ないというのはよくわかっているはず。まず自分の身を守ろうとするでしょう。怯むことなく向かってくる勇敢な物には峰打ちで対応します。
多少無理してでも一列乗り越えれば農民兵達にとって想定外の状況にできるでしょう。混乱が起きれば方陣は機能しない……そのまま突破して指揮官と一騎打ちです!
「私の名はアリシア・マクリントック!我が魂の一刀を恐れぬのなら勝負です!」



●高貴なる進撃
「互いにカバーする形の方陣……単純故に有効、というわけですね」
 アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は白銀の『セイバークロス』を装着し、狼の『マリア』と共に、愛馬『シュンバー』に跨って戦場を睥睨した。
「しかし一部の戦力は分断されて陣形も薄く。それにあの様な徒歩戦術では――」
 速度を持った騎馬兵の奇襲に、果たして耐えられるでしょうか。鳳刀『暁』をするりと抜いて、アリシアは手綱を捌いた。目指すはアラヤ率いるファランクス――その中枢。騎馬武者の如く土煙を上げて疾駆するその姿は、白銀の鎧と相まって戦場に降りた戦乙女の様だ。
「さあ行こうマリア、シュンバー。私の目の届く所で、これ以上の狼藉は許さない!」

 ゆったりと進むファランクスは前方に上がる土煙を見て、再び進軍を止める。
『騎馬武者ですか――成程。ですがこの陣形、果たして越えられるでしょう?』
 ニヤリとアラヤが口元を歪める。敵は歓迎だ。特にあの様な分かり易い相手は。
『左翼、左向きに回れ……少しだけな。さて』
 戦慣れしているならば、恐らくはこの陣形の弱点を突いてくる筈。左側面、そして後方……ならばあえて一ヶ所だけ開けて、そこから攻め入れさせればいい。来る場所さえ分かれば、如何に迅速な突撃だろうと防ぐのは容易い。だがアラヤは見誤っていた。相手は猟兵――そんな尋常の戦術が通用する相手では無いのだから。土煙が迫る。蹄が重々しい音を響かせて大地を揺らす。敵は目前、さあ来いと身構えるアラヤ――しかし敵は、アリシアは文字通り想像の遥か上より現れた。
「私の名はアリシア・マクリントック! この世界を守る為、義によってここに参上!」
 アリシアは跳んだ――正面から最大の加速で、陣の中へと真っ向から飛び込んだのだ。跳ねるシュンバーの威容は正しく天馬の如く、立ち並ぶファランクスを――長槍を立てる農民兵の頭上を飛び越え、一気呵成にアラヤの喉元へと迫った。
『そう来ますか! いいでしょう――このアラヤ、そういう手合いは至極好み!』
 対するアラヤは果敢な攻め手に喜色を浮かべ、太刀を抜きアリシアを迎え撃つ。
「シュンバー、行って! さあ――我が魂の一刀を恐れぬのなら勝負です!」
 柵越えの様に農民兵を飛び越えたシュンバーから白銀の戦士が舞い降りた。手にした打刀は梶本仕込みの永海謹製――このサムライエンパイアで、自らの手で鍛え上げた、世界にただ一振りの刀。
「この『暁』を恐れぬのなら、掛かって来なさい」
『笑止! 太刀ならこの『獅子王嵬』、現世の業物とて負けはしません』
 双方、自らの愛刀を構えて対峙――その側でシュンバーが威嚇する様に、農民兵を追い払わんと暴れまわっている。この駿馬はアリシアの思いを受けて、一騎打ちの戦場を作るべく、有象無象の妨害を許しはしない。
 ギラリと日差しが白銀の鎧を光らせて、戦乙女は鬼と剣を交わらす。

 先ず飛び出したのはアリシア、霞の構えの甲冑剣術。風を切るアリシアの連突きをアラヤはいなし、その弾かれた刀身を逆袈裟でアリシアが振り抜いた。
『流石猟兵、並の手合いではない……こうでなければなッ!』
 その一刀を打ち落とし、続く刃がアリシアの喉元に迫る。幾ら強靭なセイバークロスとは言え、眼前の羅刹は只者ではない――威力を高めた蹴り足が間一髪でアリシアをその場から大きく離し、再び刀を金剛の形に構え直す。
『守りは堅いが攻めは……どうか!』
「まだです。勝負は――一瞬!」
 下段から飛び掛かったアラヤの一撃を、切先を押さえて躱すアリシア。そのままぐるりと刀身を巻き上げ手元から弾き飛ばそうとするが、アラヤの強靭な握力がそれを許さない。そのまま二人は別れて、再び遠間からの対峙となる。
「流石です……しかし、これならば」
 どうでしょう! 無構えのアリシアが不意に姿を消した。気配も何もかも全く――いや、刹那の後、アリシアは突然アラヤの背後に現れて。
『何、だと……一体、何を』
 それがアリシアの超常。シュンバーと共に同じ世界にいる任意の味方の元に空間跳躍する異能の業。シュンバーはここに、そして仲間は――農民兵の間を縫って現れたマリアが、アラヤの背後を取っていたのだ。
「成敗!」
 一瞬の煌き、肩口へ斜めに振り下ろされた一撃がアラヤの着物を真紅に染める。
『まさかこれ程とは――ねぇッ!』
 ギロリと怒りの眼差しを浮かべ、背後を威嚇する様に――そして血を撒きながら振り向き様に、音速の太刀が風を切る刃を放つ。
「マリア!」
 瞬く間も無く放たれた一撃は心眼の業。故に目で捉えなくとも心で捉えれば、その超常は容易く当たる。マリアを守るべく間一髪その装甲で盾となったアリシアは痛みを堪え、同じく転移したシュンバーを見やり、包囲された状況を改めた。
『……これで振出しよ。さあ、続けましょう!』
 血で固まった着物を意にも介さず、アラヤは再び太刀を構える。シュンバーも転移によって位置が変わり、攪乱が止まったファランクスがじわりと包囲を狭めてきた。
「マリア、先に行って! 私はこれを――」
 ひらりと再びシュンバーに跨ったアリシアは、陣形の間を抜けたマリアを確認すると、刀を手にアラヤを睨む。八相に構え瞳をぎらつかせたアラヤはアリシアの先を潰さんと、殺意を露にその切先をアリシアの喉元に示した。
(ここであの攻撃を再びやられては……農民兵も巻き込んでしまうわ)
 馬上より切先をアラヤに向けながら、再びの跳躍。思い切り大地を蹴ったシュンバーがアラヤの頭上を飛び越えて、大地に影を作る。
『逃がすものか――!』
「当たるものですか!」
 農民兵を踏みつける勢いでその頭上擦れ擦れ、再びシュンバーとアリシアは空間を跳躍した。マリアは彼方――風よりも早く陣形を駆け抜けた狼は戦場を遠く離れ、アリシアとシュンバーも無事に転移を終らせる。あの数のファランクスではここまで追撃も叶うまい。
「後は、任せましょう」
 もしあの場で戦いを続けていたら、殺到した農民兵に妨害され、アラヤの超常が彼らを纏めて斬っていたとも限らない。しかし一太刀浴びせる事は出来たのだ。如何に尋常ならざる剣豪だろうと、決して倒せぬ相手では――無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月隠・望月

戦士でない農民を巻き込むとは、卑劣。あまりにも。恥を知ると、いい

指揮官を【挑発】して誘い出す
助走をつけて跳躍し、農民の肩などを足場に敵陣の上方から指揮官に近づく。農民の攻撃は刀で受け(【武器受け】)反動で飛んで更に指揮官に接近(【空中戦】)
指揮官に言葉が届くまで近づいたら「武人が農民に守られて情けない、ね? とはいえ、わたしは強い。とても。おまえが怖気づくのも、当然」等と挑発
指揮官が挑発に乗ったら、同様にして敵陣から離脱

指揮官がUCで手数を増やしたら、陰陽呪符による防御壁(【オーラ防御】)で攻撃を受け、威力を高めた【剣刃一閃】(【怪力】【衝撃波】【吹き飛ばし】)を放って敵の攻撃を中断させたい


アウル・トールフォレスト
●(好きにお任せします)

かわいそうな農民さん…そうだよね、あんまり傷つけたくないよね
上手くやれるかわからないけど、頑張るよ!

【深緑、底知れぬ恐怖を育め】を使用
最初に『高き森の怪物』になって、農民さん達が怖がるような大声を出して身動きを取れなくするよ(恐怖を与える、存在感、範囲攻撃)
それでも邪魔になるようなら、掌で払って風を起こして退ける。勿論、オーラで包んだりして、出来るだけ優しくね?(衝撃波、属性攻撃、優しさ、オーラ防御)

後はボスとの一騎打ち!さあ遊びましょ、剣士さん
何回攻撃してもいいけれど、そんな針じゃ木は切れないよ?
ふふ、精一杯頑張ってね
わたしも、全力で遊ぶから(怪力、踏みつけ)



●影なる我、真なる我
『猟兵……フフ、思ったよりやってくれるわね』
 欠けたファランクスの軍勢を率いるアラヤは、再び行軍を開始する。赤く染まった背中の傷も戦場においては日常茶飯、この位で立ち止まる様な柔な鬼ではない。
「やってくれるだと? してやられたの間違いではないのか?」
 風が吹いた――その先に、黒衣の忍が姿を現す。月隠・望月(天賦の環・f04188)が抜き身の刃を手にして、そろりとファランクスへ近付いて来る。
「戦士でない農民を巻き込むとは、卑劣。あまりにも――」
『卑劣? だったらどうすると言うのです』
 再び太刀を手に。今度は足を止めたりしない、そのまま前進し蹂躙する態勢に。
「――恥を知ると、いい」
 瞬間、望月が消えた。否――強靭な脚力で飛び跳ねた望月が太陽を背に上空へ。そのまま落下の勢いで農民兵の大盾を踏み抜いて、再度跳躍。迎撃の長槍を刀で払いのけ、農民兵の肩や頭を仮の足場にして、アラヤへの距離を詰める。
『恥ですって、愚かな。ここは戦場ですよ!』
 ああ、どいつもこいつも……命の重さを理解しない。吹けば飛ぶようなモノにどうして執着するというのだ。太刀の切先を空に向けて、望月の踏み込みに合わせて天高く突き上げる――しかし。
「戦場で、武人が農民に守られて情けない、ね?」
 尋常の忍ならばその神速の突きを躱す事は至難だったろう。だが望月はその若頭――そして猟兵だ。浮かんだ望月は影、放たれた突きは何もない虚空を貫く。姿を消した望月はアラヤの背後へ。
「とはいえ、わたしは強い」
 とても。一閃が再びアラヤの背後を狙うが、二度も同じ手を喰らう剣豪ではない。咄嗟に背後に被せた刀身が望月の一撃を防いで、返した手首が反撃の牙を剥く。
『強いわ、でも私ほどじゃ――無い』
「どうかな? こんな雑兵に己が身を囲わせて」
 おまえが怖気づくのも、当然だろうが、な。挑発を繰り返す望月がアラヤの一撃を紙一重で躱す。
「……ここでは全力を出せまい。まあ怯えて出て来れぬのも分かるが」
 武門のアラヤを感情を揺さぶる様に言葉を続け、望月は再び跳ぶ。農民兵を飛び越えて、遥か先までその足で陣形を抜け出た。
『言わせておけば――覚悟せよ下郎がッ!』
 これは戦場、ここは戦争。だからと言ってこれ以上の侮辱を甘んじて受けられるほど、アラヤは寛大では無い。故にその身を風の様に走らせて、望月を追って陣形の外へ。例え罠であろうと、我が一刀の下にあの忍を叩き斬らねば気が済まぬ。

「かわいそうな農民さん……」
 囲いを抜け出たアラヤを見やり、アウル・トールフォレスト(高き森の怪物・f16860)は黙々と進軍する農民兵を哀れんだ。彼らは洗脳されているだけ、あんまり傷つけたくはない。
「――うん、上手くやれるかわからないけど、頑張るよ!」
 そして麗しき金色の化生は緑の瞳を黄金色に輝かせて、巨大な『高き森の怪物』へと姿を変える。その瞳は炎。その声は洪水。その爪は嵐――美しくも悍ましい怪物は、声高らかに“逃げて”と叫ぶ。
『…………!』
 恐ろしげなその叫びに農民兵の足が止まる。本能的な恐怖、刷り込まれた妖への、大自然への畏怖、そして封じられていた生への執着が、洗脳を跳ね除けて彼らをこの地へ止まらせる。
「そう、そのままじっとしていて……」
 それでも、大帝剣の洗脳は強烈。心無き戦の道具と化した農民兵は、望まぬ行軍を……本能が抗おうと、支配された精神が再びその身を前へと向けさせた。
(――洗脳自体が強くなってるのかな? そんな事だったら)
 だったら、本心では進みたくないのなら手伝ってあげよう。アウルがするりと一歩前へ。巨木の様な威容から発される慈愛のオーラはまるで神仏の如く、それを目にした農民兵の双眸から涙がこぼれた。
(そうだよね、怖いよね――でも、ごめん)
 ちょっとだけ耐えて。ブンと振るったアウルの手から風が巻き起こって、その衝撃が前進する農民兵を来た道へと吹き飛ばす。あくまで優しく、落下の衝撃をふわりと風が受け止めて、バラバラに崩れた陣形を立て直さんと、農民兵は再び集合する。
「これでしばらくは時間が稼げたかな――じゃあ」
 後はボスとの一騎打ち。背後で忍と剣戟を続けるアラヤに向かって、アウルは大地を駆け抜けた。

「成程――流石の手練れだ、手数が違う」
 ファランクスから離れて一対一、アラヤとの一騎打ちを続ける望月が独り言ちる。囲いという枷から外れたアラヤの剣は文字通り尋常ではない。九耀の煌きが殺意を続々と望月へと放ち、止めどない斬撃の応酬を呪符を使ってかろうじで躱す。
『忍め、思ったよりしぶといわね』
 一閃、二伐、三撃、四鏖――縦横無尽、変幻自在の剣筋が全周から望月の命を狙う。それはまるで、九つの首を持つ神話の怪物じみた超常の剣技。
「勤めを果たすまで、死なぬのが忍」
 五攻、六刃、七斬、八殺――確かに剣技だけでは、この尋常ならざる怪物には敵わないだろう。忍びの業があってこそ、初めて打ち合える状態だ。
『ならばここで今すぐ――果たすといいわ!』
 九了――目に見えぬ絶命の一撃が意識の外から望月を襲う。張り巡らせた呪符の力場がちりちりと歪み、刀と暗器を握ったその手に力が篭る。上か、下か、左か、右か――否、その一撃は寸での所で止められる。
「――ずるいわ。わたしとも遊びましょ、剣士さん」
 巨大な影が二人を覆う――巨木の様な緑の腕がアラヤの一撃を遮ったのだ。九つに分け放たれた斬撃、その程度では怪物の――アウルの身体に大きな傷を与える事など出来はしない。
『貴様、今度は物の怪の類か――面白い!』
 アラヤが哄笑を上げる。新たな敵、新たな障害――予想だにしない展開、これこそ戦場の醍醐味よ! 背後に立つアウルの巨体に切っ先を向けて、アラヤが飛び掛かる。再びの九連撃、超常の剣筋が止めどなく打ち込まれる
「あんまりストレートに言われると、ちょっと嫌だな」
 その斬撃を躱す事なく、アウルは全てを受け止めた。如何に猛烈な攻撃であろうと、身の丈を遥かに上回る巨体――切り倒すのは生半な事では無いのだ。
「何回攻撃してもいいけれど、そんな針じゃ木は切れないよ?」
『私の剣を針と称すか……しかしこれでも、同じ事が言えるか、なッ!』
 ニヤリと口元を歪ませたアラヤ。続けて放たれた打ち込みはアウルの膝を、全く同じ個所を何度も、抉り倒す様に止まる事無く立ち切り続ける。鬼の形相――これはかの名高き示現流の稽古法、立たせた巨木をへし折るまで、巨大な木剣でそれを打ち続けるという狂気の沙汰。
『九で足りぬなら! 九十九ッ! それで足りぬなら! 九百九十九ッ! 断ち切るまでッ! この打ち込みはッ! 終わらないッ!』
「ふふ、精一杯頑張ってね」
「その間におまえを、始末してやろう」
 するりと影が――アラヤの腕に刃を走らせる。一閃――狂想に呑まれたアラヤを襲ったのは、現世の超常。望月の音も無い一撃が、太刀を振るうアラヤを断たんと振るわれた。
『――ッ! しまっ!』
 遅い。かろうじでその一閃を払い落としても、走った刃はアラヤの腹に横一文字の赤い線を引く。
「腕は、守ったか……しかし」
 背に腹、それぞれ一撃を貰った状態でまだ戦うか? 望月が血に濡れた切先を突きつけてアラヤを挑発する。
『いいえ、ここは一旦――』
「そうはさせないんだよ」
 ズシンと大地が震えた。農民兵の前にアウルの巨体が飛び込んで、彼等を護る様に立ち塞がる。
「……続けるか?」
『フ、フフ……』
 狂った様に笑い声を上げるアラヤ。その姿に異常を感じた望月が咄嗟に一撃を喰らわせる。しかし。
『このアラヤ、戦の中で己を見失ったわ』
 望月が斬ったのはアラヤの残像。ぼたぼたと血を垂らしながら、進軍方向を駆けるアラヤが言葉を続ける。
『次はこうはいかぬ。精々その農民を怯えて守るがいい』
 気が付けば農民が、今までには無い速度で駆けてアラヤに続く。このまま合流されては再びの一騎打ちは難しい。
『例えファランクスが届かなくとも――』
 それに今ならば農民兵だけを止められる。アウルの足元を抜けた農民兵の前へと、足止めする様に望月が現れて。
『代わりに私が幕府軍を皆殺しにしてくれるわ!』
 狂った様に笑い声を上げるアラヤ。前後に貰った一撃が己を真っ赤に染めて、それでも尚戦を求めて、一耀の羅刹は戦場を駆け抜けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイン・セラフィナイト
ファランクス、なんて本の中でしか聞いたことないよ。実際に見られるなんてちょっと嬉しいかも……ってちゃんと対策練らないとね。

【塵の嵐】で陣の全体に塵の嵐を拡散させる。体と武器、盾に吸着する高重量の砂で農民さんも鬼も対象オブリビオンも全員行動不能にするよ。

ファランクスってさ、側面と後ろ、上空……真上からの攻撃を考えてないんだよね。

砂を上空一点に集中させて、対象のオブリビオンだけを押し潰すように落下させよう。

なんの罪もない農民さんを兵士にした罰、しっかりと受けてもらうからね。


ミハエラ・ジェシンスカ

洗脳か
戦力と人質を兼ねるという意味で有効な戦術ではある
だが

サイキックエナジーに【催眠術】を乗せて広域照射
農民兵の洗脳に干渉する
これだけで完全に解除できる程度のものではないだろう
だが僅かにでも緩んだならそこへ【殺気】を叩きつける
本質的に烏合の衆である点までは変えられん
これで潰走してくれればそれで良し
必要なら【制圧用電撃杖】を振るいつつ指揮官に接敵する

捨て身か
先ほどの烏合の衆などよりよほど好ましい
2刀とドローンによる【武器受け】【見切り】で配下どもを捌きつつ
やがて捌き切れず本体に対して致命的な隙をさらす……フリをする
連携するというのならそれを利用するまでだ
隠し腕による【だまし討ち】【カウンター】



●反撃
「ファランクス、なんて本の中でしか聞いたことないよ」
 徒党を組んで進軍速度を上げる軍勢を見やり、アイン・セラフィナイト(精霊の愛し子・f15171)はぼそりと呟く。先の戦いの後、アラヤに合流したファランクスは総勢百数十名。当初に比べその総数は比べるまでも無く減ったものの、このまま幕府軍と戦闘に突入すれば、未だ少なくない被害を及ぼす事は明白だった。
「実際に見られるなんてちょっと嬉しいかも……ってちゃんと対策練らないとね」
 見てる分には成程、土煙を巻き上げて疾走する姿は迫力満点。正面からかち合えばその威力も大したものだろうが、だからこそ放置するわけにはいかない。アインは手にした二振りの杖に呪文を唱えると、形を変えた黒白二羽の鴉を空へと放つ。鴉はファランクスの上空で円を描くように旋回しながら、魔力の篭った燐光を大地へと振りまいていた。
「ファランクスってさ、側面と後ろ、上空……真上からの攻撃を考えてないんだよね」
 懐から神封の魔導書を取り出して、アインは呪文を唱え始める。これ以上彼等を進ませてはいけない――その思いを叶える超常を解き放つ為に。
「特に真上……こんな所からいきなり攻撃されたら、どうする?」
 風が純白の外套をばたばたと揺らす。己に込められた魔力が力となって、周囲を歪ませる。ぱたりと外套が静まって――そして、超常が解放された。
「なんの罪もない農民さんを兵士にした罰、しっかりと受けてもらうからね」
 ファランクス上空の鴉の円が魔力の力場を、巨大な魔方陣を形作る。象形文字を重ね合わせた様な幾何学形状の紋様が青白い光を放って、直下のファランクスへ向け塵の嵐を巻き起こした。
『――砂? 一体これは……』
 ぱさりと肩口に落ちて来た砂の様な物を手にしたアラヤ。その瞬間、超常の砂がアラヤの全身にぞわりと纏わりつく。そしてはるか上空で煌いた魔法陣から、滝の様に砂の礫が放たれる。
『これは、猟兵の仕業か――!』
 アインが生み出した超常の砂は無限増殖する超重量の罠。進む足が止められて、その重みが大地を抉る。降り注ぐのはアラヤのみ、ファランクスを形成する農民兵は未だ前進を止めない。
『この、こんな所で……』
 立ち止まれるか! 裂帛の気合と共に纏わりついた砂を弾き飛ばすアラヤ。しかし止めどなく降り積もる超重量の罠は依然、その数を増して呪いの様にアラヤの自由を奪った。

「洗脳か……戦力と人質を兼ねるという意味で有効な戦術ではある」
 だが――アラヤを置いて走り続ける農民兵を見やり、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は音も無く念動を走らせる。
「――本質的に烏合の衆である点までは変えられん」
 それは催眠術を乗せた広域精神干渉波。走り続ける農民兵の脳へ直接、それを解除する為の暗示返しを仕掛けたのだ。しかし大帝剣の洗脳はそれだけでは解けない。故にミハエラは、僅かでもこじ開けた精神に己の殺気を叩き付ける。
「であれば、多少は効果もあろう」
 何せ第一の戦争、宇宙世界で磨かれた生粋の殺意だ。そんな物に当てられれば、怯えて竦んでしまうのも無理はない。だがその殺気が、一人の鬼の魂を呼び覚ます。
『貴様か――あの妖術の使い手は』

「フン、先ほどの烏合の衆などよりよほど好ましい」
 鼻息を荒げ己へと歩を進めるアラヤを見やり、その尋常ならざる闘志にミハエラは舌を巻いた。
(ユーベルコードを耐え抜いたか。いや……)
 ちらりとアラヤの背後を見れば、狂暴な鬼達の姿が見える。それらが一様にアラヤへの呪いを肩代わりして、超重量の砂を受けていたのだ。
「成程、超常には超常――基本だな」
 するりと丸みを帯びた制圧用電撃杖を手に取って、ミハエラが正面から対峙する。
『――容赦はしない』
 抜き身の太刀を下段の霞の形にアラヤが駆ける。全身を真紅に染めた鬼の形相の女剣士は、マシンの騎士へ一太刀浴びせんと気炎を吐く。
「元より三味線を弾くようなタマでもなかろう」
 行くぞ――片手に光剣を抜刀しミハエラも駆ける。接敵まで僅か、ちりちりと火花が散る光剣の切先が加速で歪み、鞭のようにしなった。
『棍に光る剣とは……妙な技を使う!』
 一歩、先に踏み込んだアラヤの斬撃が地を這う様に迫る。その一刀を光剣で弾き、お返しと言わんばかりに電撃杖の一突きがアラヤを襲った。
『流石と言っておくか――だが、その様な一手で無ければ、討ち取れていたかもしれんというのに!』
 ミハエラの渾身の一突きをアラヤは掌で易々と受け止める。刃の無い杖だからこそ出来る技――恐るべき鬼の怪力がそのままミハエラの手首を返し、ジリジリと力尽くで追い込んでいく。
「討ち取るだと――馬鹿め」
 瞬間、バチリと紫電が奔る。これが只の棒だとでも思ったか――一撃で巨大生物すら昏倒させる程の電撃がアラヤの動きを封じ、そして。
「遠慮はいらん、全て喰らうがいい」
 隠し腕全解放、セイバードローン、アクティヴ――己に仕込まれた邪道の剣が一斉に牙を剥く。総勢五つの光の刃が、一斉にアラヤへ牙を剥いた。

『――本当に、その様な一手で無ければ』
 アラヤは生きていた。その傍らには屈強な鬼達が。
『討ち取られていたかも、しれない』
 その鬼達が咄嗟にアラヤを庇う。呪いの砂と同じ様に、その身を挺して主人を救ったのだ。光剣の群れを抜けて、アラヤは更に先へと進む。
『これ以上、何かを隠されていても困るからな』
 ここは任せる、と鬼達に無言で指示を送って。
『私は進まなければならんのだ――』
 恐るべき術の使い手達だった。かような戦でなければ、もうしばらく刃を交えていたかった。だが今は――進まなければ。
 満身創痍の血染めの鬼は、僅かな手勢を率いて進む。
 戦いの終局は、近い。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ


あの刀と出で立ちに、太刀筋。
何より、その名……間違いない。
うちの開祖にしてご先祖様、その人だわ……!

ファランクスは正面突撃以外は融通が利かない陣形
なら、足元から崩して動きを封じるわ
敵群正面から接近しつつ、コード発動して地面をボコボコに
地形破壊の余波で発生した衝撃波は簡易的な地震になり、密集隊形なら将棋倒しを狙える筈よ

アラヤに接触出来たら、当代の荒谷流正当後継者として名乗り、一騎討ちを挑む
一振り九連撃の魔刃は真っ向から見切り、武器受けして対処
そのまま【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】発動
ブースターによる吹き飛ばしと持ち前の怪力で押し切り、刀ごと鎧砕きで圧し折るつもりで叩き潰すわ


オリヴィア・ローゼンタール

アラヤ……ふむ、つかささんの縁者でしょうか?
ですがオブリビオンとして立ちはだかるならば倒します

白き翼の真の姿を解放
高速飛翔(空中戦・ダッシュ)で吶喊
ジグザグに飛んで撹乱し、横から回り込む
槍を念動力で操り、擬似ファランクスをした事があるので分かります
それは柔軟性に欠け、機動戦に弱い

【怪力】を以って聖槍を地面に叩きつけ、将と兵の間の地形を破壊(地形の利用)し分断

強化された【視力】で神速の斬撃を【見切り】、【聖槍で受け】流す
農民を斬ろうとする一閃はガントレットで殴り付けて逸らす(カウンター・グラップル)
それはさせません

体勢が崩れたところを【属性攻撃】で炎を纏い【踏みつけ】【熾天流星脚】で蹴り抜く



●荒野に戦鬼、慟哭す
「アラヤ……ふむ、つかささんの縁者でしょうか?」
 破邪の聖槍を抱えて、土煙を上げるファランクスを一瞥したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が呟く。
「ええ。あの刀と出で立ちに、太刀筋。何より、その名……間違いない」
 しかしその陣形は見る影も無く、最早数十名だけのファランクスとしての体を為していないもの。荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)は愛用の斬魔刀・暁を手に、先の交戦を思い返す。荒々しくも流麗な剣技、容赦の無い数々の攻め手――それらは正しく、自身が鍛えた数多の技と同質のもの。
「うちの開祖にしてご先祖様、その人だわ……!」
 まさかの相手に打ち震えるつかさ。明らかに失伝したと思しき技も見受けられる。こんな手合いと刃を交える機会は――そうそう無い。
「そうですか。ですがオブリビオンとして立ちはだかるならば――」
「皆までいいわ。それは私も同じだから」
 過去からの侵略者として蘇った自身の祖先に一体何があったというのだろうか。だが今は敵である。情けはいらぬ、容赦も不要。魔を断つ剣は例え自らのルーツが相手だろうと、その本分を忘れる事は無い。
「行きましょうオリヴィア、覚悟は出来ているわ」
「では……つかささん」
 私も務めを果たします。その背より白銀の翼を広げ、天使は空を舞う。そして鬼は地を駆けて、最大の敵に対峙した。

『来たか猟兵……ふむ、あの構え』
 アラヤの目の前、大小数多の刀を背負う小柄な鬼の少女が姿を現す。その少女が巨大な丸太を強引に大地へ突立てた。辺りに響いた轟音に一拍遅れて震動が――それと同時に空中から一筋の白い光が、黄金の穂先を以て自身の背後、ファランクスを分断せんと迫りくる。
『それに、そうか――来たか、遂に来たか!』
 割れる大地。そして空を裂く一撃が陣形を真っ向から分断した。ファランクスは柔軟性に欠け、機動戦に弱い――大地と空と、両面からその陣形を崩す強烈な一撃を喰らえば乱されるのは必定。更に減らされた人数が容易な立て直しを不可能にする。にも拘らずアラヤは、そんな事などどうでも良いと言わんばかりに、己に近付く鬼の少女に喜色を浮かべて対峙する。
「――荒谷流当代、正当後継者。荒谷・つかさ」
「一耀の羅刹・アラヤ。待ちわびたぞ、遥かな我が子よ」
 風が吹く。名乗りを済ませた双方が手にした刀を構える。
「我らに言葉は不要、剣にて返礼致す」
『如何にも。潔く果てるがいい。そして』
 その魂を頂こう。刹那、アラヤの姿が消え――否、神速の踏み込みを以て間合いを詰める。一閃、二伐、九耀の鏖殺が容赦無くつかさを追い込む。絶技たる打ち込みを火花を散らしながら受け、払い、僅かな間隙を縫って刃を返す。しかしそれすら呑み込む様に、アラヤの剣の冴えは止まる事を知らない。
『貴様――私では無いな』
 私ならば、そうはしない。力を以て力を制する。水月を突く様に捻り出された一撃を鎬で躱し、膂力で刀身を巻き込むアラヤ。そのまま密着して鎬を削り合う両者。
『そうか、当代は貴様では無い。もう一人』
 もう一人いるな。口元を歪ませたアラヤが呟く。
『もう一人を、この手で――』
「今何と言った」
 この手で喰らうと言ったのだ。つかさの懐を蹴り上げて間合いを離す。刀を八相に構え、必殺の絶技を再び放たんと気を溜めるアラヤ。
「それを、させるとでも」
 矢張り、強い――力も、技も。戦乱の世に生まれた荒谷流、その創始者たる一耀の羅刹は伊達ではない。だからと言ってひかるを危険な目に遭わせるなどと――絶対にさせる訳にはいかない。血を吐いて刀を構えるつかさ。その上にふわりと影が舞い降りた。
「ええ、させる訳には行きませんね」

『何奴――邪魔をするな』
 不意に空から黄金の穂先がアラヤの頭上を掠める。間一髪捌いた一撃、しかし続く連撃がアラヤの動きを容赦なく封じ込める。
「邪魔――いいえ、世界は違えど」
 石突きからの払い上げ、振り下ろしの斬撃、直突き――流れる様な動作で止めどなく放たれるオリヴィアの連撃は、膠着した戦いを再び押し進める。
「鬼退治は私の生業です。立ち塞がるなら――」
 ばさりと翼を広げて上空より、変幻自在の槍の妙技が突風を纏ってアラヤを襲う。
「立ち塞がるなら、真っ向から叩き斬るのみ」
 一閃。上段から振るわれた鬼殺しの一撃がアラヤを吹き飛ばす。
「幾ら鬼と言えど、この一撃を最後まで受け切れますか?」
『鬼――フフ、そうよ。故に!』
 吹き飛ばされたアラヤの先には、先程の地割れに飲み込まれた農民兵が。倒れ込んだその身体に切先を突き立てて、アラヤはその命を奪わんとする。
『これが私の兵法! これが私の糧よ!』
 びゅんと斬撃が風を切り、農民兵の首を刈らんと振るわれた――しかしその一撃は間一髪、空を駆けたオリヴィアの鉄拳により防がれる。
「させません――かつては誉れ高き武人だったと伺いました。それがどうして」
 ブンと振るわれた拳がアラヤを吹き飛ばす。血が固まった着物に再びじわりと血が滲む。開いた傷口から溢れるそれが、最早アラヤの命が長くない事を静かに告げる。
『――戦場に長く身を置いて、識った事がある』
 それでも、アラヤはゆっくりと身を起こして大地に立つ。
『生命とは平等ではない。それは戦場の内と外で――世界を蝕む』
 長く戦場を見てきた故の境地。届かぬ手が哀しみの連鎖を手繰り寄せ、哀しみが終わりの無い憎しみを巡らせる。それこそが過去の残滓、オブリビオン。
『故に正そうというのだ、全てを滅ぼしたその先で』
 血塗れの上掛けを投げ捨てて、アラヤが上段に構える。
『あらゆる生命が本来を全う出来る様に! この歪みを終わらせる!』

「歪んでいるのは……お前の方よ」
 つかさが叫ぶ。相手は偉大なる先祖、もしかしたらという思いもあった。だがそれは、オブリビオンとなった彼女には通じない。そんな生半な覚悟では戦えない。
「勝手に諦め勝手に終わらそうなどと、そんな虫のいい話は飲めないわ」
 アラヤが興しつかさが紡ぐその歴史を否定などさせない。そんな事でひかるを、世界を終わらせるなどと、絶対に認める訳にはいかない。
「だから私達は戦います。命、燃え尽きるまで」
 世界は違えど歪みは同じ――それを正すのが猟兵だ。空中より手をかざしたオリヴィアが、炎と黄金を呼び起こして。
『――そうだったな、我等の間に言葉は不要』
 口元を歪ませるアラヤ。天と地、上段は双方全てを受け止める意地の発露。
『さあ……来なさい。あなたの荒谷流、その全てを以て!』
 荒野に鬼の叫びが響いた。

 言われるまでも無い。光耀の紋が光を放って、加速。
 全てを掛けましょう。呼び出したるは黄金の獅子。
 上空から放たれた黄金の獅子を軽くいなしたアラヤは、その影から放たれた炎の散弾を目も向けずに躱しきる。瞬間、加速したつかさが暁をアラヤに突立てる。その勢いをアラヤは全身で受け止め、大地を抉って威力を相殺した。
『それで終わりか? 今度はこちらから――』
「いいえ、まだです」
 空中から炎を纏ったオリヴィアの飛び蹴りがアラヤの肩口を踏み潰し、血塗れの着物を焼き尽くす。その隙に後ろへ回り込んだつかさが、暁の柄を手放して零式を抜き、大振りでアラヤを空へと吹き飛ばした。
「これが私の荒谷流――刮目して受けなさい!」
 吹き飛ばされたアラヤを上空でオリヴィアの聖槍が切り裂いて、振り回された白銀の柄が再び大地へ叩き落す。その直下、両の拳を構えたつかさが無慈悲な連撃を止まる事無くアラヤへと打ち込んで。
『……これほど、とは』
「私達は諦めないわ、絶対に」
 最後の一撃、浮かび上がったアラヤの身体に突き刺さった暁を力任せに振り抜いて――同時にオリヴィアが黄金の穂先をアラヤに突立てる。
「だから――還りなさい」
 元居た場所へ。ここは現世、滅び去った過去が居ていい場所では無いのだから。

『……流石、ね』
 焼け焦げた着物に赤黒い染みがじわりと広がる。口元から血をこぼしながら、ゆっくりとアラヤは言葉を続けた。
『きっと、次の私が』
 これを知らぬ私が……あなた達の前に現れる。その時は。
「ええ、何度でも止めましょう」
 最早戦う術を失ったアラヤの手を取って、つかさが返す。
『それでこそ、荒谷流――』
 それが最後の言葉だった。力を失い項垂れたアラヤは、そのまま姿を消す。
「――これで終わり、ですね」
「ええ。後は農民兵を」
 地割れで無力化したとはいえ、洗脳が解けてそこに落ちては意味が無い。
 二人は急ぎ農民兵の元へ駆ける。戦いはまだ終わっていない。
 それでもいつか、この地に平和をもたらすと強く誓って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月15日
宿敵 『一耀の羅刹『アラヤ』』 を撃破!


挿絵イラスト