エンパイアウォー⑩~くろがねの船と白き守り鳥
●海上の精鋭怨霊
サムライエンパイア、瀬戸内海。
巨大な影が、海上に浮かんでいた。
その正体は、超巨大鉄甲船。日野富子が建造させた、大戦力の一隻である。
だが、その甲板上に蠢く人影は、いずれも生気に乏しい。何せこの者達、かつて瀬戸内海に名をとどろかせた村上水軍、その亡霊なのである。
船上には、もう一種類の影がある。
それはとても白く、そして、もふもふとしていた。
●グリモアベースのネコ猟兵
「エンパイアウォー、みんなお疲れ様~!」
猟兵達を、タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)の笑顔が迎えた。
「この調子で頑張ろうね! それで、次の敵は、『超巨大鉄甲船』だよ」
京都の花の御所を制圧した魔軍将が1人、大悪災『日野富子』が莫大量の財力を投じ、『超巨大鉄甲船』の大船団を建造した事が判明したのだ。
とはいえ、立派な船は建造できても、優秀な船員をすぐに作り出すわけにはいかない。
「けど、日野富子は恐ろしい……。戦国時代に瀬戸内海を席巻したっていう大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出して、優秀な船員を確保しちゃったんだ」
船と船員が揃ったことにより、最強の水軍が誕生してしまった。
「幕府軍の船も南海道の海路を進んでいるけど、このままじゃ歯が立たなくて全滅しちゃうよ……」
それを防ぐには、村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を、猟兵が攻略する必要がある。
タビタビが予知で見た鉄甲船は、海上に浮かぶ城のようだったという。
何せ、全長は200m程度、全幅も30m程に及ぶ。小さなタビタビでなくても、威容、というに相応しい。
「みんなには、この船のうちの一隻に乗り込んでほしいんだけど、船自体をいくら攻撃しても、村上水軍の怨霊の力がある限り、すぐに直っちゃうみたいなんだ」
この力を無効化するには、怨霊を退治しなくてはならない。
しかし、普通の武器や、ユーベルコードさえ、怨霊には通じないというのだ。
村上水軍の怨霊を消滅させる方法は、帆柱に掲げられた村上水軍旗……『〇』の中に『上』と書かれている……を引きずり降ろすことだけ。
「何とかして、海にいる超巨大鉄甲船に乗り込んでほしいんだ。怨霊は、オブリビオンに守られているから、そっちを先に倒してね。その後で、村上水軍旗を奪い取って、船から脱出して!」
怨霊を守るのは、10体程の『まっしろピヨすけ』。白くてもふもふしている。
とても護衛と呼べるような勇ましい姿ではないが、猟兵への油断を狙ったものだろうか。
他に船内にいるのは、怨霊の船員達だけ。しかも、船を動かす事に集中しているため、戦いの間は、あまり気にする必要はない。
「船は海の上、まずはそこまでたどりつくところからだね。大丈夫、みんなならきっとうまくやれるよ!」
タビタビは、にぱっ、と笑って猟兵達を送り出したのであった。
七尾マサムネ
此度の戦場は、船上。
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●鉄甲船
今回の戦場です。
海上にいる鉄甲船へたどりつくため、海を渡る方法や、船に乗り込む方法を工夫する事で、すみやかに作戦を進める事ができるでしょう。(アイテムや技能、ユーベルコードを使っても、他の方法でも構いません)
●護衛
まっしろピヨすけ。もふもふの鳥妖怪です。
護衛というからには、戦闘力もそれなりにあります。
●船員
日野富子に、大金で雇われた村上水軍の怨霊です。
富子の財力目当ての者と、富子の力に恐れを抱く者の二種類がいるようです。
それでは、皆様、戦場でお待ちしております。
第1章 集団戦
『まっしろピヨすけ』
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POW : 超もふもふもーど
全身を【膨らませてめちゃくちゃモフモフな状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : もふもふあたっく
【もふもふ体当たり】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : もふもふソルジャーズ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【ミニまっしろピヨすけ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
イラスト:Miyu
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
薄荷・千夜子
何かちょくちょく可愛い系が出没しますね!?
とはいえ、油断は禁物です
「海を渡るのならば、空からですね。彗、行きましょう」
笛を鳴らし、UC『彗翔一閃』を使用
相棒の鷹に騎乗して空から攻め込みましょう
船の上空からピヨすけに向かって[祭花炎扇]を振って【全力魔法】【属性攻撃:炎】で攻撃を
彗と私でピヨすけを攻撃しつつ意識をこちらに逸らします
その間にもう1匹の相棒、イタチの颯に水軍旗を下ろしてもらいましょう
「動物には動物を、なのでしょうか。負けるわけにはいかないですからね!」
ポク・ョゥョゥ
わー海だー水着で行くー?
泳がないのー?そっかー
旗取りがんばるのー
海は広いからー、泳ぐの大変そー
ぽくね飛んでいくよーぱく呼んで乗るのー
でもーそのまま行ったら見つかるかなー?
じゃー最初にお船近くの海にー、
ぱくのキラキラドラゴンブレスを当てるのー
ばっしゃーんって大きな水柱をあげるんだよー
そしたらー、船員たんの注意がそっち行くかなー?
その間にこっそり船に飛び乗るよー
ふわふわ鳥たんだー
あたっくするー?よーし、勝負なのー
もふもふとぽくのぽよぽよのぶつかり合いだー
負けてもねー、船に跳ね返って再度あたっくするよー
勢い付けたぽよぽよは強いぉー
ぱくも一緒に戦うのー
旗もぱくに乗ってとるよー
ぽくが取ったのー
あがめよー
清川・シャル
船だー!シャル、船好きなんですよね。
早速乗り込みましょう!
櫻鬼のジェットを使って、ダッシュとジャンプと空中浮遊です
足りなければ風魔法で補助しましょ
もふもふは可愛いんですけどね…
氷魔法でミストを出して凍らせましょうか
凍らなくても動きが鈍ってもふモードになれなきゃいいかな
毒とマヒも加えて。
そーちゃんのチェーンソーモードでタコ殴りです
船員は怨霊ですしね
修羅櫻の破魔をメインに使いましょう
UC発動です
そこのけ鬼が通りますよ
富子より私の方が怖いですよ
お金は逆に巻き上げますよ
とか言いつつ2回攻撃、なぎ払い、恐怖を与える、串刺しな攻撃します
敵攻撃には見切り、残像、カウンター、第六感で対処
カイ・シュリック
アドリブ連携歓迎
船の上での戦いか……
あまり経験はないが、必要な作戦ならばしっかりやらせてもらおう
鉄甲船までは羽根で飛んで行こうか
船の傍まで無事に飛べたなら、フック付きワイヤーをどこかに引っ掛けて勢いをつけて侵入しよう
そのまま【暗殺・だまし討ち】といった技術を利用して敵が動くより早くUCを叩き込むぞ
ピヨすけ達が仲間を増やしたならば出来るだけそれも巻き込むように
それでいて一体一体【傷口をえぐる】ように攻撃して確実に倒していこう
……もふもふしていて愛らしいが、幕府軍の邪魔をさせる訳にはいかないからな
相手の攻撃は焼鏝で【武器受け】したり【地形の利用】で船内の死角や隙間を利用して回避していこう
クラウン・メリー
船に乗り込むんだね!これは俺の出番だっ!
翼を使って敵に気付かれない様に【忍び足】で乗り込むよ!
もし、飛んでいるところを見られたら偽物の鳥さんを飛ばして
爆発すれば煙で【時間稼ぎ】出来るはず!
ふわふわで可愛いぴよぴよ……。
ちょっと倒すのは躊躇うけど、ごめんねっ!
【早業】で【鎧も砕く】黒剣でピヨすけ達を斬るよ!
その隙にちょっとモフモフしつつ、
もふもふあたっくで攻撃されそうになったら火の輪で拘束するよ!
その後は【傷口を抉るように】黒剣で【二回攻撃】してピヨすけを倒すよ!
怨霊……。あまり良い響きじゃないし出来れば助けたいな。
でも、倒すしかないんだよね。早く魂を解放させてあげたいな……。
レイン・ドロップ
真夏の海でクルージング、胸が高鳴りますわー!
怨霊の船員も、とってもホラーで涼めそうですの……って
べ、べつにレインはお化けなんて怖がってませんのよ!
まずは船に乗り込む手段ですわね
ここは【エレメンタル・ファンタジア】で自然を操りますの
『氷の津波』を鉄甲船に向けて一直線に放って
海の上に足場を作って進みますのー!
むふふ、レインはコートとブーツで防水対策もばっちりですの
けろちゃんとまいまいさんは、無理せず抱っこ
その分、ピヨすけさんとの戦闘で暴れてもらいますわ
どうにか船まで到着したら、過激に行きますのー
ちみっこピヨすけは、『炎の竜巻』で一気に焼いちゃいますわ
そのまま熱の上昇気流に乗って、軍旗も降ろせたら!
ダリア・エーデルシュタイン
随分とかわいらしい護衛だね
けれどまずは乗り込まないといけないな
カード・シャッフルでカードを複製
そこに穴をあけてロープを通したら
カードを操り鉄甲船まで飛ばし
マストか何かに巻き付けるよ
ちゃんとロープを結ぶように操ってほどけないようにしたら
ロープの上を歩いて鉄工船まで渡ろう
なにしろ怪盗なのでね
こういう動きは得意さ
ビルの上じゃなく船と船の間でやることになるとは思わなかったけどね
護衛のピヨすけくんは
カードを板状に縦横に並べて盾を作って
体当たりがきたら斜めに構えて受け流そうか
行きすぎたところを後ろからカード達でザックリザクザク斬りつけよう
ちょっともふもふできないのは残念だけどね
片付いたら軍旗を下ろすよ
陸地より瀬戸内の海を臨む、猟兵達。
海の上、豆粒のようではあるが、わずかに船影が見える。さすがは、超巨大の名を冠する鉄甲船と言ったところであろうか。
「海を渡るのならば、空からですね。彗、行きましょう」
薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)の笛に応え、美しき鷹が飛来した。
鷹……相棒である彗に騎乗すると、千夜子は空へと舞い上がった。
カイ・シュリック(紫苑の殺戮代行者・f02556)に、船上での戦いの経験は、あまりない。だが、未知の敵、未知の戦場など、猟兵の足を止める障害とはなりえない。
オラトリオの翼をはばたかせて鉄甲船を目指すカイに続き、クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)もまた、翼を駆使し、空の人となる。
飛翔するクラウンの表情は、少しばかり曇っていた。その原因は、作戦遂行への不安というよりは、敵への思い。
「怨霊……。あまり良い響きじゃないし出来れば助けたいな。でも、倒すしかないんだよね。早く魂を解放させてあげたいな……」
さて、船好きの清川・シャル(ピュアアイビー・f01440)が、敵船を目指す方法もまた、空路であった。
空を征するのは、翼持つものだけではない。
気合一発、シャルの高下駄が、火を噴いた。魔力のジェットで空を飛ぶ。更に、空中で疾走、虚空を蹴って大ジャンプ。
翼にジェット。次々空を飛んで行く猟兵達を見送ったレイン・ドロップ(みずたま・f14853)も、行動に移った。
「真夏の海でクルージング、胸が高鳴りますわー!」
テンションの高まりもそのままに、レインは、大自然を操った。海が波立ったかと思うと、船に向けて、氷の魔力が走った。それは、氷の津波。
道を作り出したレインは、その上を走り、鉄甲船を目指した。
道中、ぱしゃんと海水がかかったりもするが、レインは、コートとブーツで防水対策。けろちゃんとまいまいさんは、抱っこされている。
一方、鉄甲船上の村上水軍は、異変を察知していた。
「ん? なんじゃ、ありゃあ」
突然、大きな音と共に、巨大な水柱が、船の近くに突き立った。
水柱を作り出したのは、ポク・ョゥョゥ(よろしくなの〜・f12425)を背に乗せた、白竜ぱくの、ドラゴンブレスである。
鉄甲船と比較してもなお派手な水しぶきに、船員や護衛達の注意が向いている隙に、ポク達は、ぐるりと周り込んで、船に乗り込んだ。なお、ポクは可愛い水着で、やる気満々。
ようやく海面が鎮まる頃には、千夜子が、鉄甲船との距離を詰めていた。近くから見る敵艦は、黒く、確かに巨大だ。
甲板上には、見張り役らしい船員と、白いもふもふの塊……まっしろピヨすけが確認できる。そして、帆柱の水軍旗も。
千夜子は、『祭花炎扇』を取り出した。花火が描かれたそれを振るうと、火炎が船へと降り注いだ。
「ピヨっ!?」
霊体である村上水軍、そして脅威の再生力を持つ鉄甲船には通じないが、羽毛に包まれたピヨすけにとっては、のっぴきならない事態である。
結果として、護衛の動きに混乱が生じた。そうして千夜子の作り出した隙は、他の猟兵にもチャンスをもたらした。
「さて、失礼させてもらうよ」
混乱に乗じて、船内に乗り込んだのは、ダリア・エーデルシュタイン(反撃の怪盗エース・オブ・ハート・f12598)である。
帆柱に、ロープが巻き付いている。穴を開けた金属製のカードを操り、ダリアの用意した船と鉄甲船の間に、ロープの道を作ったのだ。
道というにはいささか細すぎるが、曲芸というか軽業は、怪盗であるダリアにとってはお手の物だった。
もっとも、ビルなどの上ではなく、船と船の間でやることになるとは、ダリア自身、想定外であったが。
「敵襲ー!」
見張りの船員が報せたのは、シャルの襲来であった。
流石は水軍。海の男達は動揺を抑え、船の運航の役目を果たす。そして戦力を担うのは、
「ピヨ」
ずいっ、と、まっしろピヨすけ達が矢面に立つ。
愛らしい外見ながら、勇ましく甲板上に並んだり、ぱたぱたと帆柱の周りを飛び回ったり。
「もふもふは可愛いんですけどね……」
航空戦力を搭載していると考えれば、これもアリかも知れない。
空中のシャルは、高下駄の噴射で姿勢を整えながら、掌からミストを放った。キラキラと輝く冷気の魔力が、滞空中のピヨすけの羽毛に付着する。
「ピヨっ!」
とっさにもふもふモードで耐える構えのピヨすけだったが、シャルのミストに含まれた冷気と毒、麻痺の餌食になって、動きが取れなくなった。
そこへ、着艦したシャルが、金棒を振り上げる。チェーンソーモードが唸りを上げて、ピヨすけをタコ殴り。海だから。鳥だけど。
「派手な襲撃だな」
それぞれの方法で船へとたどりついた仲間達に、カイが、思わず感心する。
他の猟兵の攻撃に紛れ、良きところまで接近すると、カイはフック付きワイヤーを船に放った。手応えあり。一気に巻き、敵船へと乗り込んだ。
既に戦いを始めたもののほかにも、まっしろピヨすけが待機していた。待機……休憩?
「ピヨっ?」
突然の鈴蘭の嵐が、ピヨすけを襲った。死角からのカイの攻撃に、反応が遅れたようだ。
だが、さすがは護衛。ピヨすけは傷つきつつも、仲間を召喚した。二回りは小さなピヨすけの群れが、カイの迎撃にかかる。
あえて合体せず、数に頼む作戦のようだ。しかし、その分、戦闘力は低い。カイは、焼鏝でもふもふソルジャーズのアタックを受け止めると、カウンター。
勢いを更に増した鈴蘭の嵐が、ミニピヨすけ達を巻き込んで、吹き飛ばした。それから、一体一体、確実に仕留めていくカイ。
ミニピヨ達が合体を試みる頃には、数は少なく、頼りない。
「……もふもふしていて愛らしいが、幕府軍の邪魔をさせる訳にはいかないからな」
取り巻きを振り払ったカイは、いよいよピヨすけ本体を仕留めた。
船に乗り込む事に成功したクラウンも、行動を開始していた。
「なんとか無事にたどりつけた……」
「ピヨっ」
クラウンが、さっ、と動き出した時、白い塊と目があった。
「ふわふわで可愛いぴよぴよ……」
「ピヨ」
敵かな? でも翼があるから仲間? 一瞬、クラウンの姿に、戸惑う様子を見せるピヨすけ。
しかし、そのわずかな逡巡が、命取りになった。
「ちょっと倒すのは躊躇うけど、ごめんねっ!」
ざんっ!
クラウンの黒剣が、ピヨすけを切り裂いた。
「ピヨ~」
「ピヨっ!」
仲間の悲鳴を聞きつけ、別のピヨすけが駆け付けると……クラウンが、最初のピヨすけをもふもふしている最中であった。
何してるピヨ……と視線が語っている。気がする。
「あ、何かごめん」
「ピヨー!」
今度は、体当たりが来る。重量を生かした攻撃だ。船上をも巻き込んだ威力となるだろう。
船はすぐに修復されるからいいとしても、他の猟兵に被害が及ぶかもしれない。
そうはさせまいと、クラウンは、火の輪を投じた。
「ピヨっ!?」
動けない。いささか物騒なピエロの小道具に拘束されたピヨすけへと、黒剣の連撃が来た。
ばっ、と羽毛になって、消えていくピヨすけ。
まずは1体。クラウンは、もう1体のとどめにかかった。
敵襲へと対応を続けるピヨすけ達。
「ふわふわ鳥たんだー」
船上に現れたまっしろドラゴンと、くろとしろの合いの子、ポク。
船員でもピヨすけでもない者が船にいる。これは敵だ! そう判断したピヨすけが、ポクめがけ、突進してきた。
「ピヨー!」
「よーし、勝負なのー」
2体のもふもふが、甲板上で激突する。
ぽふん!
「おーつよいー」
ぽよん、とポクの体が、弾き飛ばされる。
が、ふよん、と船に跳ね返って、もう一度アタック! 増した勢いと、ピヨすけのアタック後に出来た隙の相乗効果。今度はピヨすけが弾き飛ばされる番だった。
「ぱくもいるよー」
ぶわっ、とドラゴンブレスが、ピヨすけに追い打ちをかけた。海上に吹き飛ばされ ながら、はらりと羽毛となって散っていくピヨすけ。
海路……氷路? を使い、船にたどり着いたレインを出迎えたのはミニピヨすけ軍団だった。多い。これはもはや、もふもふのおしくらまんじゅうではないか。
なのでレインは、先ほど高めた魔力で、今度は炎の嵐を巻き起こした。
「ピヨー」
くるくる回って、宙へと舞い上げられるちびピヨすけ。
更には、けろちゃんが文字通り毒を吐き、まいまいさんが仕留める。
その頃、レインはというと。
ぶわあっ。
炎によって生じた熱の上昇気流に乗って、水軍旗を目指していた。小柄なテレビウムならではの方法である。
だが、命より大事な旗を守ろうと、見張りの船員がよじ登って来た。もう死んでるけど。
「怨霊さん、とってもホラーで涼めそうですの……って、べ、べつにレインはお化けなんて怖がってませんのよ!」
ぶるり、震えるレインを見上げ、けろちゃんが、「フ」とダンディな声をもらした。
「ピヨー!」
ピヨすけが、ダリアにも襲い掛かる。鉄で覆われた甲板を蹴って、体当たりを敢行。
しかし、それを待ち受けていたのはダリアではなく、陣形を組んだカードだった。
縦横、板状に整列したカードが、盾の役割を果たしたのだ。衝突の瞬間、盾には傾斜がかかり、ピヨすけの衝撃と体を受け流してしまう。
「ピヨー!?」
つるりと滑るようにして、ピヨすけがあさっての方向へと転がっていく。
通過した所を見計らい、ダリアがカード達を操った。鋭い刃の如き札の群れが、四方八方からピヨすけを攻めたてる。
「ピヨ……!」
ぽふん、と羽根に変わって、消えるピヨすけ。タイミングも相まって、ダリアの奇術のようにも見えた。ダリアとしては、もふもふできなかったのが、心残りではあったけれど。
その時、ダリアに影が落ちる。千夜子と彗が船上を飛び回り、ピヨすけと空中戦を繰り広げていた。鳥対鳥。
「動物には動物を。負けるわけにはいかないですからね!」
「ピヨっ!」
攻撃態勢を整えるため、彗が高度を下げた瞬間を狙い、ピヨすけが体当たりを繰りだした。
だが、すんでのところで激突をかわすと、返り討ち。そして千夜子達は、再び空へと舞い上がった。
ピヨすけ達の注意が千夜子に向いている間に、水軍旗に近づく影があった。千夜子のもう1匹の頼れる相棒、イタチの颯が、旗を降ろしにかかったのだ。
「とりゃー!!」
「ピヨっ!?」
船上に響く、シャルの気合。刀の舞いが披露されると、ピヨすけが、またもや羽毛となって散った。
目の前のピヨすけを退治したら、目指すは水軍旗だ。
「はいはーいそこのけ鬼が通りますよ。富子より私の方が怖いですよ。お金は逆に巻き上げますよ」
船員達のほとんどは、黙々と船の運航に専念している。何より、鬼の子シャルの気迫に負けて、船員が近寄ってくる事はない。破邪の力もある。強い。
「もふもふーもういないー? よーしいくぞー」
ひとしきりピヨすけを退治したら、再びポクは竜使いになった。
ぱくが、ばっ、と飛翔して、水軍旗へ。落下しそうになっていたレインを支え、上昇。
はっし、とレインの手が、水軍旗をつかんだ。
「手応えあり、ですわ!」
ポクや颯と一緒に、ずるずると旗を引きずりおろしていく。
「私も手伝うよ」
レイン達に手を貸したのは、ダリアである。
ぱくとダリアの力で、旗は一気に降下した。
「俺達の旗が!!」
「わーい、ぽくたちの勝ちーあがめよー」
船員達が邪魔に入るようなら、押しとどめるつもりだったクラウンが、おっ、と目を見開いた。船員の姿が、足元から消え始めたからである。
「くそっ! やられちまった、せっかく手に入れた金がァァ」
「まあそういうな。死人は死人らしくあの世に還ろうや」
無念、諦め……様々な表情を見せて消えていく船員達を、クラウンが見送った。怨霊たちが、日野富子の呪縛から解き放たれた事に安堵しながら。
最後のピヨすけを仕留めた後、味方の様子をうかがっていたカイも、怨霊たちの消滅を見届けた。優秀な船員を失えば、いかに強力な船も、宝の持ち腐れ。
「さて、長居は無用だな」
再び翼を広げると、カイが船尾を蹴って、天高く羽ばたいた。心なしか、行きよりも体が軽い気がする。
他の猟兵達も、それぞれに鉄甲船を離脱。
一行が、再び陸の土を踏んだ頃には、コントロールを失った鉄甲船が、海へと沈んでいくところであった。
成功
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