エンパイアウォー⑨~長州熱波戦線
●熱波戦線
ここは山陽道。影面道(かげとものみち)とも呼ばれる五畿七道の一つである。本州は瀬戸内海に面した播磨国から最西端の長州国までを通すこの道は、現在異常な気象に見舞われていた。夜間ですら平均気温が35度を超え、沿道に住まう人々の生活をも脅かし始めていた。
「こんだけ暑いとやれんのぉ」
「畑の作物が駄目になってしまうわ。一体なんなんじゃろうか?」
「毛利のお侍さんらぁも、なんか様子がおかしいて聞いたでよ。何かよぉないことでも起こるんじゃなかろうか……」
木陰で日差しを逃れ、農民は汗を拭う。夜も寝苦しい日々に、その顔には疲労の色が濃く滲んでいた。
●グリモアベース
慌ただしいこの空間に、堂々とした足取りで歩く白い女がいた。
「すみません。猟兵の方々にお力添え願いたいのですが、こちらでよろしいのでしょうか?」
紅が一筋さす長い白髪をさらりと落とし、夜嵐と名乗る女――夜嵐・右京(真白の守り刀・f18418)は首を傾げた。
しばらくして。猟兵たちが集まってくれた事に謝意を伝えると、夜嵐はゆっくりとした口調で話し始めた。
「侵略渡来人・コルテスの事は、皆様ご存じの事と思います。彼の者は幕府に叛意を持つ長州藩の毛利一族を手駒にし、多くのオブリビオンを生み出して幕府軍の迎撃準備を整えております」
より正確にお伝えするならば、長州藩士を生贄にして、骸の海からオブリビオンを呼び寄せた、でしょうか、と夜嵐は補足する。
「そして、その迎撃方法というのが、山陽道周辺の気温を極限まで上昇させ進軍してくる幕府軍を熱波によって茹で殺す、というものです。……あまりに非道だとは思いませんか」
太刀を本体とする女は、纏う空気で斬ってしまうのではないかと思うほど、凛とした空気を研ぎ澄まして言う。
「既に、山陽道の平均気温は夜間でも人々が過ごせる気温を超えつつあります。このままコルテスの儀式が進めば、平均気温が50度を超えるでしょう。わたしは、罪のない人々が犠牲になるのを止めたいのです」
真っ直ぐな眼差しで、夜嵐は猟兵たちに語りかける。
「それに……コルテスの策略は熱波だけではありません。『南米原産の風土病』なるものも蔓延させ、幕府軍に死をまき散らすことを考えています。ですが、この風土病の原因となるものは、極度の高温でなければ死滅するのだそうです」
そのため『熱波を生み出しているオブリビオン』を撃破できれば、風土病も阻止できるのだと、夜嵐は説明する。
「オブリビオン達は、『富士の噴火のエネルギーを蓄えた霊玉』を使って儀式を行っています。皆様にはその儀式の行うオブリビオンの撃破、及び霊玉の破壊をお願いいたします。敵は何やら愛らしい見目をしておりますが、決して油断なさりませぬよう。
……己が赴かずこのように助力を乞う事、申し訳なく思っています。その分、わたしも精一杯皆様の戦いの補助をさせて頂きます」
そこまで話しきると、夜嵐は美しい所作で頭を垂れた。
105
●ご案内
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●ご挨拶
105と申します。
よろしくお願いいたします。
●方針
オブリビオンを撃破し、儀式の阻止をすることが目的です。
●プレイング
8/13(火)8:31〜受付予定です。
シナリオの性質上、頂いたプレイングの数によっては全採用とならないかもしれません。ご了承ください。
ご参加、お待ちしております!
第1章 集団戦
『狸兵団』
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POW : 狂乱野鉄砲
【仲間がやられた恐怖心】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【弓矢や火縄銃の集中砲火】で攻撃する。
SPD : 狸兵団突撃
予め【突撃陣形を組む】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
WIZ : パンダ混じりの狸囃子
戦闘力のない【子狸応援団(何故かパンダがいる…)】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【戦場に響く賑やかな太鼓の音】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:綾智
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
落浜・語
まぁ、戦争だからな。戦争だから、なんだが…胸糞悪いな。
何でもかんでも巻き込みやがって。そんな目論見は早いところ潰すに限るからな。手早くやって行こう。
でもって、戦争中二度目か、この狸たちに会うのは。今回も早々に返ってもらいますかね。
UC『人形行列』を使用。
人形の爆発による広範囲への【範囲攻撃】でなるべく多くの数を巻き込んで吹き飛ばす。265体分の爆発なら早々逃がしはしないはず。
爆発音で、相手の狸囃子もかき消せるんじゃないかな。
もし、爆発によって、今であれ後々であれ周囲に悪影響が出るならば爆発の威力をなるべく抑える。
●
狸兵団は、広場で儀式の最中であった。『富士の噴火のエネルギーを蓄えた霊玉』を小さな祭壇に収め、何やら祈りを捧げていた。
その儀式場に、さぁと風が流れた。木々を撫でる音は爽やかだが、肌を触れるのは今や熱風に近い。
「……暑いな」
落浜・語(ヤドリガミのアマチュア噺家・f03558)は、額の汗を拭いながらその儀式場へと乗り込んだ。
「むっ、誰だ!!」
キリッ。見張り役の狸が、語を見つけて槍を構えた。
「戦争中二度目か、この狸たちに会うのは。今回も早々に返ってもらいますかね」
狸の問いに、語は応えない。胸糞悪いので、早々に退場願うだけだ。戦争だから、とも思うが……この胸に沈む重いものを形容するならば、その一言に尽きるのだ。
「なぁ、派手に壊さないでくれよ?派手に壊されたら、泣く。痛い思いしたくなければ、壊さないことだな」
「な、なんだ狐かこの野郎!ん、あれ……?人形……?」
儀式場の西側、語の周囲に現れたのは、狐を模した人形。その数――二百六十五体。
「何でもかんでも、巻き込みやがって。そんな目論見は早いところ潰すに限るからな。手早くやって行こう」
語の言葉に応えるように、人形たちが、狸兵団に向かっていく。
「敵襲~!敵襲~!」
何故かパンダも混じる応援団が、ぶお~!とほら貝を鳴らす。ドンドン、と太鼓のなる音が儀式場に響き、狸兵団が語の人形たちに槍を持って突撃してきた。
「なんでもかんでも巻き込むあんたらを、俺も巻き込んでやるよ」
背後に控える語の視線の先で、人形と狸兵団がぶつかり合い大きな爆発が起きた。一か所の爆発が連鎖するように広範囲に広がっていく。狸兵団が破壊した一体の人形が、その爆発を連鎖させたのだ。
『人形行列(アルイミオヤクソク)』――壊されると連鎖して爆発する人形を召喚するユーベルコード。
一度始まった連鎖は、すべての人形が爆発し広場の一角を焦がしきるまで続いた。
大成功
🔵🔵🔵
西条・霧華
「戦わずして勝。それは非道を肯定するものでも、理由でもありません。」
居合の極意の一つが「鞘の中の勝」です
それは戦わずして相手を制する活人剣
それ故に戦わずして勝つのです
決して人を人と思わぬ故に行う効率的な非道ではありません
私にできるのは所詮不肖の殺人剣まで…
そういう意味では同じ穴の狢かもしれません
それでも私は守護者として、この剣を揮うだけです
『無名・後の先』にて誘った敵の攻撃を【見切り】つつ【武器受け】
纏う【残像】で敵を乱し、【破魔】と【鎧砕き】の力を籠めた[籠釣瓶妙法村正]にて【カウンター】
【見切り】の時点で反撃が困難だと判断した場合
【武器受け】しつつ【オーラ防御】と【覚悟】を以て受け止めます
●
西条・霧華(幻想のリナリア・f03198)は、セミロングの美しい黒髪を西側から吹いてきた爆風に靡かせながら、儀式場の南側の立つ。
「戦わずして勝つ。それは非道を肯定するものでも、理由でもありません」
「むむっ、次はこっちだ!者ども~!」
狸兵団が、霧華の方へとっとこ駆けてくる。その姿を、霧華は凪いだ瞳で見つめていた。
「(居合の極意の一つが『鞘の中の勝』です。それは戦わずして相手を制する活人剣。それ故に戦わずして勝つのです。決して人を人と思わぬ故に行う効率的な非道ではありません)」
す、と瞳を閉じて心に平静を呼ぶ。
「(私にできるのは所詮不肖の殺人剣まで…。そういう意味では同じ穴の狢かもしれません。それでも私は守護者として、この剣を揮うだけです)」
平静からの、脱力。殺気すら消し去って、霧華は狸兵団の攻撃を誘う。
「はなて~!」
狸兵団たちが、弓矢や火縄銃を構えて霧華に向かって一斉に放つ。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」
霧華は一歩も動かない。すべての攻撃を霧華は受け止めた。
「やったぞ~!」
確かな手ごたえを感じて、狸兵団が武器を掲げる。矢と銃弾の嵐が去り、そして。
――籠釣瓶妙法村正の剣先が、狸兵団たちの間を走り抜けた。後に残ったのは、一面の血の海であった。
大成功
🔵🔵🔵
朝野・向日葵
薄荷・千夜子(f17474)と
SPDで判定
「暑さにも限度ってもんがある、風情の無い暑さはごめんだね」
「よし!ここは先手を取ることが大事だ…行くぞ!千夜子ちゃん!」
大木刀を構え【ダッシュ】で一気に距離を詰め敵の突撃陣形の綻びを【見切り】突っ込む!
「火縄や弓を持った相手には…ちょうど良い技があってね!」
UC【活人剣・火縄封じ】敵の武器を落とす事を狙い陣を組む敵を【なぎはらい】ます!
「いやはや千夜子ちゃんも燃えてらっしゃる…まあその熱さは嫌いじゃないな」
むしろ好きだねぇ…と付け足しつつ二人で連携を取り敵を倒します
薄荷・千夜子
朝野・向日葵(f18432)
いやはや、流石にこの気温は酷くありませんかね?
「ひま君、早急に片付けましょう!しっかり合わせてくださいよ!」
UC『干渉術式:護火剣乱』使用
「先手必勝!」
【先制攻撃】【破壊工作】で複製した夜藤を狸兵団に向けて射出、命中と同時に爆発するように仕掛けておきます
これで陣形攻撃を崩すよう動きつつ、先陣を切ったひま君の援護を
彼の動きを阻害するものから優先に狙っていきます
「一気に行きますよ!」
[祭花炎扇]を構えて一気に【ダッシュ】で接敵、【範囲攻撃】【属性攻撃:炎】で纏めて燃やしましょう
「熱いのはこれで終いですっ!!」
●
「いやはや、流石にこの気温は酷くありませんかね?」
顎に落ちてくる汗を手の甲で拭いながら、薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)は思わず愚痴を零す。
「暑さにも限度ってもんがある、風情の無い暑さはごめんだね」
同じように汗をぐいと拭って、朝野・向日葵(刀を抜かない侍・f18432)もやれやれとため息を零した。とはいえ、ここで言ってても気温は下がらないと向日葵は、肩に載せた大太刀をその手に構える。元凶を止めなければ。
「よし!ここは先手を取ることが大事だ……行くぞ!千夜子ちゃん!」
「了解です、ひま君!早急に片付けましょう!しっかり合わせてくださいよ!」
――二人が同時に、地面を蹴った。
「守刀に炎の加護を!」
藤棚を思わせる彫金の成された懐刀――夜藤に、炎を力が宿る。駆けながら千夜子は、四十六本に複製した夜藤を狸兵団に向けて射出する。一斉に射出された夜藤が、狸兵団に命中すると同時に爆発を起こす!
「先手必勝!今ですよ、ひま君!」
千夜子の前方を走っていた向日葵が、一気に敵陣へと駆け込む。爆発により綻んだ陣形を突っ切りながら、大木刀を引く。
「火縄や弓を持った相手には……ちょうど良い技があってね!」
陣形に配備された狸兵団たちの武器を的確に狙って、大木刀を一気に薙いだ。
「うぎゃー!」
バラバラ、と狸兵団の足元に武器が落ちていく。
「一気に行きますよ!」
その様子を確認した千夜子が、祭花炎扇を構えて一気に向日葵の前に躍り出た。
「熱いのはこれで終いですっ!!」
花火の描かれた大きな内輪が風を生めば、揺らめく焔が狸兵団たちを飲み込んでいく。
「いやはや千夜子ちゃんも燃えてらっしゃる……まあその熱さは嫌いじゃないな」
むしろ好きだねぇ……と、向日葵は小さく付け足して千夜子の隣へと躍り出る。
何度も戦いを共にしてきた狩人の少女と、その少女に救われた男の連携は、強い信頼関係をもってただただ狸兵団を圧倒した。
やがて祭壇へと向日葵の大木刀が届くと、高く響く音がして件の霊玉は亀裂を生みやがてバラバラに砕けた。
吹く風はまだ暑いが、こうしてまた脅威をひとつ退けたのだった。
大成功
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