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エンパイアウォー⑩~悲しき殉教の島より

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「大悪災『日野富子』……あのとんでもない財力は、一筋縄ではいきませぬ」
 月殿山・鬼照(不動明王の守護有れかし・f03371)は、集った猟兵たちに悩ましげに語り出した。
 富子は、そのありあまる財力で『超巨大鉄甲船』の大船団を建造していたのだ。そしてその大船団を、幕府軍の瀬戸内での南海道へと布陣した。その大きさたるや、全長200m程度、全幅30mもあるという。
 本来なら、船は建造できても、その船を自在に操る船員を用意するのは一朝一夕にはいかないだろう。
「ですが、富子は、戦国時代瀬戸内海を席巻した大海賊『村上水軍』の怨霊を呼び出し、鉄甲船の大船団を大規模海戦にも耐えられる、最強の水軍に仕立てあげたのでござる」
 このままでは、南海道の海路を進む幕府軍の船は悉く沈められ、海の藻屑と消えてしまうであろう。
 そうなる前に、村上水軍の怨霊が宿った鉄甲船を、猟兵の手で沈めなければならぬ。
「但し、怨霊の力が宿った船でござるゆえ、通常の破壊ではすぐに復元されてしまいます。帆柱に掲げられた、〇の中に上と描かれた村上水軍旗を引きずり降ろすことでしか、沈められぬのでござる」
 それ以外の手段(戦闘によるダメージその他のユーベルコード)では、ダメージを与えることはできないのだ。
 猟兵は、なんらかの手段で鉄甲船に乗り込み、妨害する護衛を撃破した後、村上水軍旗を奪取して船から脱出するという作戦をとらねばらない。
「生憎、皆様を直接鉄甲船に転送させることはできませぬ。拙僧がお送りできるのは、皆様に攻略していただく船の近くにある島……鶴島まで」
 かつて、隠れキリシタンが大勢島流しとなった殉教の島である。
 今は無人島だが、今回は近隣の島に物資補給を頼めるし、ターゲットの鉄甲船は、鶴島からなら手漕ぎ船や、得意な者であれば泳いでも近づける程度の距離にある。
「皆様が攻略する船の護衛は――切支丹女武者。鉄砲を得意としておりまする」
 10体の女武者が甲板上で護衛をしているという。この武者をある程度倒さねば、水軍旗に近づくことはできまい。
 この船が、キリシタン殉教の地である鶴島の近くを護っているのは……偶然なのか、それとも何らかの作為が働いてのことか。
「宗派は違えども、悲しき島と悲しき怨霊たちの存在を思うと胸が痛みまする……どうか皆様のお力で、鉄甲船もろとも安らかに眠らせてやってくださりませ」
 鬼照は静かに手を合わせた。


小鳥遊ちどり
 猟兵の皆様、ごきげんよう。
 海に船に怨霊。夏にぴったりのシナリオですね(!?)

●このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●シナリオの流れ
 鶴島から鉄甲船へ、何らかの方法で移動して乗り込む~女武者と集団戦~何らかの方法で水軍旗奪取~鉄甲船から脱出。

●女武者以外の船員は、富子が呼び出した亡霊なので、戦闘には加わらず、船を動かし続けます。

●物資補給
 小舟や大工道具や変装に使えそうなもの等、サムライエンパイアの瀬戸内海の小島にありそうな物資は近隣の島民が鶴島まで運んできてくれます。

●鉄甲船は海上に居るので、海を渡る方法や、巨大船に乗り込む方法などをプレイングで工夫していたら、プレイングボーナスがつくかも!

 ではでは、以上よろしくお願い致します。
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第1章 集団戦 『切支丹女武者』

POW   :    鉄砲三段
【鉄砲の一斉発射】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    部位狙撃
【鉄砲】から【トリモチ弾】を放ち、【手や足を狙う事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    聖母の慈悲
【聖母に捧げる祈り】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:森乃ゴリラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エル・クーゴー
●POW



躯体番号L-95、テイクオフ


・【嵐の王・空中行軍】発動
・強化パーツ群は【メカニック】を用い旋回/回避性能重視で配置、鶴島から飛んで出撃(空中戦)

・速度を抑えつつ船へ接近、女武者の布陣と撃って来る射程限界の把握に努める(情報収集+学習力)
・旋回/回避時は敵からの照準を妨げる狙いで太陽を背に飛ぶ

・陣容を把握次第速度を上げ反転攻勢、船体外縁へ射線を取る敵布陣へ搭載武装で【範囲攻撃+誘導弾】、更に【武器改造】で増設した副砲からの【2回攻撃】も【一斉発射】

・この戦闘は同時に陽動を兼ねる
・派手に砲火を撒く傍ら【迷彩】を施したサーチドローン『マネギ』を水軍旗へこっそり射出(吹き飛ばし)、奪取を図る


エドゥアルト・ルーデル
なんかでかくね?帆船の癖に現代の戦闘艦よりでかいんでござるが
しかも装甲化されてるし…これホントに動くの?

まず乗り込みだが空挺強襲と行きますぞ
補給物資で簡単なグライダーを作り【UAV】に牽引させて空から接敵でござるよ
船の真上まで来たらすかさず【爆撃機】召喚!船全体を満遍なく急降下爆撃を行い乗り込みを邪魔されないようにしますぞ
急降下に少し遅らせて拙者も乗り込みでござる!牽引を切り、自由落下で…エントリィィィィ!!

後は相手の【祈り】を妨害するように爆撃機に航空支援させつつ銃撃戦&向かってきたら引きつつ【罠使い】で罠張って爆破でござる
旗も爆撃したら折れねぇかな…嫌がらせに狙ってみるのもいいですな


ニトロ・トリニィ
あれが鉄甲船か… 遠目で見ると世界大戦時の軍艦に見えなくも無いかな。
あれをどうにかしなきゃいけないんだよね?
これは骨が折れそうだなぁ…

船には《念動力》を自分に使って体を浮かせて近付こう!
本当は軍旗の所まで飛んで行きたいんだけど、流石に守りが固いだろうからね。

手柄は他の猟兵に譲るとして、僕は囮として動こうかな。
上空から軽機関銃【rosé】で敵を掃射しつつ、敵の鉄砲攻撃は〈盾受け/激痛耐性〉で防ぐか、飛ぶのに使用している《念動力》の余力分の力を使って弾道をずらしたりして対処するよ!

あまり長くは持たないかも…
この隙に軍旗を確保してくれ!

アドリブ・協力歓迎です!


黒鵺・瑞樹
アレンジ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流

UC空翔で飛び移るので、そこそこの距離まででいい、船を出して貰う。
もし向こうからの攻撃の可能性があるのであれば、さらに手前まででいい。
飛び移る時は【存在感】を消し【目立たない】ように一気に移る。


そのままオブリビオンに【先制攻撃】で【奇襲】【暗殺】の攻撃。
さらに動きの制限【マヒ攻撃】、かつ【傷口をえぐる】でよりダメージ増を狙う。
遠距離かつ先制されたらたまったもんじゃないからな、先手必勝だ。
相手の物理攻撃は【第六感】【見切り】で回避。
回避しきれなものは黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らってしまうものは【激痛耐性】でこらえる。


リグ・アシュリーズ
手漕ぎ舟とオールを拝借、敵船の横に乗り付けるわ。
目的は武者打倒と、「味方用の足場確保」。
海戦に不慣れな者同士、うまくやりましょう!

到着までは変装、物資補給の非戦闘員を装って近づくわ。
銃火器にも布を被せて波よけに。
早めに着くとバレるから、横付けは交戦開始直後がベスト。
足場をなくしそうな味方に「こっちよ!」と声かけ、機関銃で援護射撃。

敵が乗り移ってきたら刃を交えつつ、鉄甲船に飛び移れる位置へ。
そろそろ元の船に帰った方がいいんじゃないかしら!
ああ、でも聞いたわ。
――『かえる』って貴方たちの間で忌み言葉なのよね?
今しがた乗ってきた舟を黒剣で破砕、
打ち上げた木片で「砂礫の雨」を見舞って置き去りにするわ!



 鶴島。
 ターゲットの巨大鉄甲船が臨める岬にて。

 エドゥアルト・ルーデル(黒ヒゲ・f10354)とニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)は、ターゲットを目の当たりにして圧倒されていた。
「あれが鉄甲船か……」
「なんかでかくね?」
「遠目で見ると世界大戦時の軍艦に見えなくも無いかな?」
「帆船の癖に現代の戦闘艦よりでかいんでござるが、しかも装甲化されてるし……これホントに動くの?」
「一応動くみたいだがな」
 帆で風を受け、櫓で漕いだとしても、エンジンがあるわけでなし、木造船より速度は大分落ちそうだ。たとえ怨霊船だとしても。
 一段と高い帆柱の天辺には『〇に上』の村上水軍旗が、これみよがしに翩翻と。
「あれをどうにかしなきゃいけないんだよね? これは骨が折れそうだなぁ……」
 眺めているだけでは目標は達成できない。猟兵たちはそれぞれが考えてきた自らの技と力を生かせる作戦を出し合い、それをどう組み立てれば水軍旗を奪取できるか話し合うことにした。

 寸刻の後。
「――躯体番号L-95、テイクオフ」
 まず、ユーベルコード【嵐の王・空中行軍】を発動して鶴島を飛び立ったのは、エル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)であった。強化パーツ群は、得意のメカニックの技により旋回/回避性能重視で組み立てられ、彼女の全身を覆っている。
 瀬戸内海の空へと飛び立った彼女は、
「高出力空戦モードに移行……いや、ここは速度を抑えつつ船へ接近する」
 女武者の布陣と射程限界の把握のために速度控えめのまま、いよいよ巨大鉄甲船の上空へと到達した。
 甲板上にいる女武者たちもエルの姿に気付いたらしく、集合して銃を構え始めた。
太陽を背にし、慎重に高度を下げていく……と。
『撃てーーーッ!』
 凜々しい女性の声が響き。
 ドン、ドン……ドンッ!
 続けざまに銃声が鳴った。
「――!」
 シュンッ、とエルの脚をトリモチ弾が掠めた。
「ここはまだ届くか……水軍旗の高さも、当然ながら射程内のようだな」
 少し高度を上げ、挑発するように誘導弾を一発発射してみる。
 誘導弾が甲板にめりこんで煙を上げると、再び、
『撃て!』
 ドゥン!
 多くの鉄砲が同時発射された大きな音がして、四方八方に銃弾が撒き散らかされる。その射程は範囲攻撃の分、トリモチ弾よりは少し短いようだ。
「よし、射程は確認できた」
 女武者の2種類の攻撃を把握したエルは、鶴島付近で動き始めている仲間たちに向かって、サッと手を上げた。

「よし、合図がきた。いくぞ!」
 武者震いと共に、
「う……動けぇ!」
 ユーベルコード【念動力】を発動し、自分の身体を海面すれすれに浮かせたニトロは、巨大鉄甲船へと走るようにして接近していく。
 軍旗のところまで一気に飛んでいきたいところだが、軍旗の高さは女武者の鉄砲の射程に入り、守りも堅いだろうし、念動力頼みで単騎で突っ込むのはさすがに心許ない。
「旗取りは仲間に譲るから、僕は囮として動くよ!」
 海面を滑るように近づいていくニトロの姿には、当然女武者たちも気付いて船端へと集まってくる。
 そろそろ女武者の鉄砲の射程に入る……という距離まで来たところで、チュイン、とニトロの頬を女武者の弾丸が掠めた。
「てえいっ!」
 ニトロは気合いを入れて、ぐっと高度を上げた。そして女武者たちを斜めに見下ろせる高度まで来たところで、軽機関銃【rosé】を構え、船端を掃射しはじめた。
 ダダダダダダダ……!
『うああっ!』
 いきなりの意表をついた角度からの掃射に、女武者の1体が鉄砲を取り落として倒れ込む。
「やった! でも、もうちょっと近づきたいところだな……」
 射程は互いにギリギリというところなので、いまひとつ命中率が悪いが、これ以上近づくとニトロも撃ち落とされかねない。
 この高さでは、念動力にも体力を使う。
「あまり長くは保たないかも……頼むっ、この隙に軍旗を確保してくれ!」
 ――ニトロは空を見上げた。

 空を見上げたニトロの目に入ったのは、無人航空機【UAV】に引かれた、妙に凧っぽいグライダーであった。近隣の島々の漁民たちが調達してくれた竹や帆布で作ったものなので、どうしても和風になってしまったのだ。
 その凧っぽいグライダーに乗っているのは――エドゥアルト。
「ひいい、落ちるぅ……落ちる前にっ、空挺強襲と行きますぞ!」
 がくがくと揺れる凧の上で、エドゥアルトは必死に、
「休んでいる暇はないぞ、出撃だ!」
 ユーベルコード【Sturz Kampf Flugzeug】を発動した。召喚されたのは250機にも届こうかという数の小型の戦闘用【爆撃機部隊】であった。
 爆撃機はエドゥアルトの意志に従い、巨大鉄甲船全体に急降下爆撃を実行し始めた。
 上空で待機していたエルも、それに合わせて装備している砲台から派手に砲火をばらまき始める。
「よ……よし、拙者も乗り込みまするぞ……!」
 エドゥアルトは凧に自分を括り付けていた綱を思い切りよくぶった切り、
「え、え、え、エントリィィィィぃぃ……!!」
 爆撃と砲弾にまぎれ、甲板へと突入……というか、落ちていった。

 仲間の爆撃と砲撃が、巨大鉄甲船に派手にぶちまけられ始めたのを見て、
「よし、ここでいい。俺が跳んだら、すぐに島に戻ってくれ」
 黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は、女武者の射程の少し外側の海上で、水手を止めた。
 瑞樹は支援の漁民に頼んで、鶴島から小舟を出してもらっていたのだ。
「こんなところで大丈夫かい? と、ゆうても、ここから先はおっとろしくて、わしにゃあ、とても船は近づけられねえが……」
 鉄甲船での戦闘を目の当たりにして顔色を悪くしつつも、水手は心配そうに瑞樹に訊いた。
「うん、大丈夫さ。ここまでありがとな。あんたも気をつけて帰ってくれ」
 ニコッと軽く笑みを見せると、瑞樹はユーベルコード【空翔】を発動した。
「よっと!」
 ドンッ、と船を揺らして大きく跳躍すると、空中を船へと駆けて行く。この技を使うと50歩あまりも空中を蹴ってジャンプすることができるのだ。
 あんぐりと口を開いて瑞樹を見上げている水手に、
「早く帰れってば!」
 声をかけると、もう振り返らない。
 仲間の派手な空中攻撃のお陰で、瑞樹は女武者に気付かれることなく甲板に降り立つことができた。
 ――ちょうどこちらに後ろ姿を向けている女武者がいる。
 味方の上空からの攻撃が降り注ぐ中、揺れる甲板に身を低くして忍びより、
「先手必勝だ!」
 右手に胡、左手に黒鵺の二刀流で、容赦なく甲冑の隙間をえぐる。
『……ぐあッ!』
 奇襲と暗殺攻撃は上手くいったが、女武者の断末魔の声と鉄砲を取り落とした音に、
『こちらからも来たか!』
 近くにいた武者が気付き、振り向きざまに引き金を引いた。
 ズドン!
「……つぅッ」
 瑞樹の身体に衝撃が走る。だが激痛耐性でこらえ、一旦太い帆柱の陰へと退避した――その時。
 ひゅるるるるる~~!
「うわああああぁぁぁ~~!」
 ズゴン。
 砲弾や爆弾に紛れながら、甲板に自由落下してきたのはエドゥアルトであった。

 その頃、リグ・アシュリーズ(人狼の黒騎士・f10093)は、近隣の島の漁民に譲ってもらった手漕ぎ舟を、巨大鉄甲船の舷側にぴたりと横付けにしていた。
「よしよし、何とかここまで辿り着いた。派手にやらかしてくれてるみんなのお陰ね」
 目立たないように変装していた海女さん装束の上にいつもの皮のコートを羽織り、さて、と船を見上げると、丁度真上くらいに、念動力で浮かんだまま踏ん張り、掃射を続けているニトロの姿が見えた。いかにも疲れている様子だし、かすり傷も幾つか負っているようだ。
「ニトロ君! こっち、足場があるわよ! 一旦降りなさいな!!」
 声をかけると、助かった、という表情でニトロがひゅう、と小舟に降りてきた。
「ありがとう、さすがに疲れてきてたところだったんだ」
「海戦に不慣れな者同士、うまくやりましょう」
 リグは応えながら、波よけの布をかけていた銃火器を取り出した。
「でも、ちょっと休んだら、私を鉄甲船の上に運び上げてね!」
「えっ、あっ、そうだね、うん、もうひと頑張りするよ……」
 そう言っている間にも、リグの船に気付いた女武者たちは船端からこちらに銃口を向けてきた。
「ほら、行かなきゃ!」
 リグは小舟に座り込んでいたニトロに発破を掛けて立たせる。
「わ、わかった、頑張るよ……てえいっ!」
『撃ていっ!』
 女武者に号令が下った瞬間、ニトロはリグの手をぎゅっと握ると、残る力をひっかき集め、再び念動力を発揮して跳び上がった。ここまで散々撃ち合ってきたので、射程や弾道はもうわかっている。2人は銃撃を上手く避け、巨大鉄甲船の甲板へと飛び移った。
「貴女たち、そろそろ骸の海に帰った方がいいんじゃないかしら!」
 飛び下りるなり、リグは、既に船上での戦いを始めていた瑞樹とエドゥアルトの援護のために、短機関銃WOL-8で激しい掃射を始める。
「ああ、でも聞いたわ――『かえる』って貴方たちの間で忌み言葉なのよね?」

 4人の猟兵が戦いを甲板上に持ち込んだ頃には、上空からの攻撃で、巨大鉄甲船は穴だらけになっていた。それなのに、船が沈む様子はない。これが怨霊の力なのだろうか?
 また、エドゥアルトの爆撃機は大方攻撃を終えて消滅しており、上空から攻撃を行っているのは、今やエルのみとなっている。
『乗船した敵から始末しろ!』
 甲板の4人への攻撃を優先すべきと判断したのか、切支丹女武者の指令者が新たな号令を下し――猟兵たちは、この瞬間を待っていた。
「さぁ、いくでござるよ!」
【罠使い】で爆弾を仕掛け、女武者の回復を妨げていたエドゥアルトは、唐突に振り向くと、水軍旗の掲げられている帆柱目がけて爆弾を放った。威力はさほどでもない。だが、ボウッ、と大げさな煙が立ち上り帆柱を隠した。
 同時にリグが機敏に舷側から飛び下りると、
「目も開けられなくしてあげる!」
 ユーベルコード【砂礫の雨】で、今しがた乗ってきた舟を黒剣で破砕し、木片を激しい砂礫へと変えて鉄甲船上へと巻き上げた。
 ゴオオオオッ!
 竜巻のような砂礫が甲板上を吹き荒れて、敵の視界を奪う。
『くっ……これでは撃てぬ……!』
 ――その時。
 頭上に聞こえてきたのは。
「にゃあ」
 何故か猫の鳴き声。
 猟兵たちが砂礫を透かして見上げると、羽生やしたデブ猫みたいなドローン……しかも迷彩柄……が飛んでいた。このデブ猫、いやドローン、実はエルが飛ばした『マネギ』である。
 女武者たちは、甲板上の猟兵に気を取られ、また砂礫と爆発の煙に巻かれ、あやしい飛翔体の存在に気付いていない。マネギは軽々と帆柱に近づき、しれっと水軍旗を回収した。

 ――その途端。

 ぐらあっ、と巨大鉄甲船が揺れた。
 水軍旗が奪取されたことにより、怨霊による守りが解けたのだ。
 無理もない。序盤の空からの攻撃により鉄甲船は物理的にはボロボロになっていたのだ。怨霊の力で回復され、支えられていただけなのだから。

「旗が無くなったら、この船、沈むんじゃないの!?」
「作戦は成功だ、逃げるぞ!」
「おうよっ!」

 沈む船には用はない。三十六計逃げるに如かず、だ
 猟兵たちは残った力を振り絞って、次々と甲板から飛び上がり、または海へと飛び込んで、今回の作戦基地である鶴島へと帰還するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月14日


挿絵イラスト