エンパイアウォー⑧~冥府魔道の再現を阻止せよ
●鳥取城周辺・農村
その日、ある農村は屍人に蹂躙された。
「ひ、ひぃ……っ!!」
「化け物じゃ、化け物が……あああああっ!!」
逃げ惑う村人を、肩から水晶を生やした屍人が次々と捕らえてゆく。
「女子供だけでも、せめて……!!」
勇気を振り絞り、女性や子供を庇おうとした村人も、屍人に殴られ、昏倒する。
それでも前に別の村人が立ちはだかるが……彼らはあまりにも無力。
――ヴアアアアアアアアアア!!
理性無き咆哮で威圧され、動けなくなる村人を、片っ端から屍人が捕らえていく。
やがて村人は、老若男女問わず全て連れ去られて行った。
彼らが連れて行かれる場は、鳥取城。
かつて籠城戦により城内が全滅し、未だその怨霊が棲まうと囁かれる場所。
――この後、村人らはさらに惨たらしい目に遭わされることになる。
●『鳥取城餓え殺し』の再現を阻止せよ!!
「…………っ!!」
丸盾のグリモアが新たにもたらした予知に、憔悴し切っていたグリモア猟兵館野・敬輔の表情と雰囲気が一気に険しくなった。
「安倍晴明……奥羽の次は鳥取か!! この計画、絶対阻止する!!」
肩を、拳を震わせ、全身で怒りを表現する敬輔。
「これ以上……これ以上一般民の犠牲を出させるな!! 誰か手を貸してくれ!!」
その叫びで何かを察したか、猟兵らが次々と敬輔の元へ集まってきた。
「……皆に阻止してほしいのは『鳥取城餓え殺し』再現による水晶屍人の量産計画だ。」
UDCアースの歴史上における『鳥取城餓え殺し』を説明する敬輔の口は、重い。
かつて鳥取城を攻略した羽柴秀吉は、意図的に農民を鳥取城に避難させた上で兵糧攻めを行った。
外部からの兵糧流入すら秀吉の手で悉く断たれ、たちまち兵糧が尽きた鳥取城内では武士も農民も皆餓え、餓死者が続出。最後にはお互いの肉すら喰らう凄惨な状況に陥った。
この惨状に耐えかねた当時の城主は、己の自決と引き換えに鳥取城を開城したのだが……その時に死した農民や侍の恨みの念が強く残っているのだろう。
「その鳥取城が、安倍晴明の手に落ちた。奴はここを拠点として、幕府軍と僕達猟兵を壊滅させるための準備を行っている」
安倍晴明は、怨念残る鳥取城に近隣の農村や城下町から人々を集め、閉じ込めて飢え死にさせることで、奥羽戦線で利用された『水晶屍人』の十倍以上の戦闘力を持つ、強化型『水晶屍人』を量産しようとしている。そう敬輔は語る。
「もし強化型が完成し、量産されたら……幕府軍も猟兵も壊滅させてなお有り余る戦力が手に入る、というわけだ」
もし壊滅したならば、その後何が起こるかは……考えたくもないだろう。
「今からすぐ駆けつければ、強化型『水晶屍人』が農民を連れ去る直前に介入できるはずだ。その場にいる強化型『水晶屍人』を壊滅させ、農民たちを救出してほしいんだ」
現場にいる強化型『水晶屍人』は10体程度だが、ある程度の集団で猟兵と渡り合えるよう強化されているためか、1体あたりの強さは奥羽で遭遇した『水晶屍人』とは桁外れ。注意してかかってほしい。
なお、奥羽と同様、水晶屍人との会話は成立しないため、安倍晴明につながる情報は手に入らないと思っておいていいだろう。
「……僕は『鳥取城餓え殺し』のことは伝聞でしか知らない。でも、同じ状況を再現しようとする試みは……許せない」
――これ以上、無辜の市民に犠牲を出させたくないから。
「だから、この企みは絶対に潰したい。惨いところを見せるかもしれないが……頼む!!」
頭を下げる敬輔に頷いた猟兵らは、彼が開いた転送ゲートを潜り、一路鳥取へと赴いた。
北瀬沙希
北瀬沙希(きたせ・さき)と申します。
よろしくお願い致します。
鳥取城を拠点に、安倍晴明が幕府軍と猟兵をまとめて壊滅させる計画を練っております。
皆様には、その阻止をお願い致します。
なお、シナリオの性質上、残虐描写が発生する可能性がございます。
参加の際は良くご検討いただきますよう、お願い申し上げます。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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概要・詳細はオープニングの通り。
奥羽諸藩で遭遇した『水晶屍人』とは桁外れの強さを誇ります。油断なさらぬよう。
●プレイング受付について
オープニング公開後から受付いたします。
なお、北瀬の都合により「8月13日・14日朝失効」で送られたプレイングは再送をお願いする場合がございます。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『水晶屍人』
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POW : 屍人爪牙
【牙での噛みつきや鋭い爪の一撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 屍人乱撃
【簡易な武器や農具を使った振り回し攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : 水晶閃光
【肩の水晶】の霊を召喚する。これは【眩い閃光】や【視界を奪うこと】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
真白・白夜
苦しむ死者を使い、何の罪もない人達を苦しめる所業、断じて許しません!
敵に目立つように立ちはだかると同時に、残忍な人格に交代します
「行くよ!」
『てめぇらはとっくに死んでんだよ!俺がもう一度殺してやる!とっとと眠りな!』
拷問具で拘束して、【串刺し 傷口をえぐる】でダメージを与えてやるぜ!
屍人乱撃を使ってきやがったら、オルタナティブ・ダブルを使って回避だ!
「こっちだよ!」
『俺一人でいいってのによ!』
さらに、【残像 空中浮遊】も使って、回避率を上げるぜ
僕は、ハンドガン・改でもう一人の人格を援護
【援護射撃 範囲攻撃 誘導弾 クイックドロウ】で攻撃します
「僕もいるよ!」
アドリブ&協力OK
●「僕」と「俺」で協力して
水晶屍人に慈悲は無い。ただ、命じられた通りに村人を捕らえ、殴り倒し、鳥取城に連行するのみ。
しかし、村人を連行しようとしていた水晶屍人達の前に、真白・白夜(多重人格者のサイキッカー・f10864)が両手を広げて立ちはだかった。
「苦しむ死者を使い、何の罪もない人たちを苦しめる所業、断じて許しません!」
暗に水晶屍人を生み出した存在への怒りも込めて、水晶屍人の気を惹くために叫んだ後。
「行くよ!」
白夜の目が一瞬で険しくなり、人格が残忍なそれに交代した。
『てめぇらはとっくに死んでんだよ! 俺がもう一度殺してやる! とっとと眠りな!』
突然人格を豹変させた白夜を見た村人達が恐れおののくが、水晶屍人は白夜を妨害する者とみなしたか、拘束していた村人をその場に放り出し、鍬や木の棍棒を手に白夜に迫る。
『何ぼうっとしてやがんだ! とっとと逃げろ!!』
「ヴアアアアアアッ!!」
村人を叱咤する白夜に水晶屍人が2体接近し、乱暴に鍬や木の棒を振り降ろし始める。白夜も1度は避けたが、立て続けに滅茶苦茶に得物を振り回されると全ては避けきれない。何度か鍬で腕を裂かれ、木の棒で叩かれる。
何度目かの鍬が振り下ろされた時、突然白夜がふたりに分裂し、左右に別れた。同じ顔をした存在がもう1体増え、一瞬水晶屍人たちが戸惑う。
「こっちだよ!」
【オルタナティブ・ダブル】で現れた温厚な白夜が、距離を取りながら残忍な白夜に木の棒を振り降ろした水晶屍人にハンドガン・改の弾丸を撃ち込むと、木の棒を持つ水晶屍人は温厚な白夜に向かい歩き出す。
『俺一人でいいってのによ!!』
残忍な白夜は温厚な白夜に悪態をつきながらも引き付けてくれたことに内心感謝しつつ、目の前の水晶屍人が持つ鍬から目を離さず、振り下ろされる鍬を右へ左へ素早く身体を振って避ける。
『早いだけで大振りなんだよ!!』
何度目かの高速の鎌の振り下ろしを、残忍な白夜は残像を囮に避け、そのまま鍬を持つ腕を蹴って鍬を手放させ、さらに拷問具を素早く首にかけ、強引に地面に押し倒した。
『おらっ、このまま逝きやがれ!!』
残忍な白夜は拷問具を両手に嵌めて拘束した後、首を残虐に斬り裂き、止めを刺した
残忍な白夜が止めを刺した頃、木の棒を持つ水晶屍人も、温厚な白夜のハンドガンに翻弄され続けた末に立て続けに頭に弾丸を撃ち込まれ、止めを刺されていた。
「ここはもう大丈夫そうだね?」
『ああ、おそらく平気だろうよ』
ふたりの白夜は手を取り合い、ひとりに戻って農民らを避難させるために駆け出した。
――まずは、2体。
成功
🔵🔵🔴
徳川・家光
「よくもエンパイアの領民を!死を弄ぶ安倍晴明、この家光決して許さぬ!」
最大の目的は、いち早く敵の群れを殲滅することです。
その為なら、ある程度のダメージはやむを得ないものとします。
名馬「火産霊丸」にまたがり、吹き出す炎と馬の踏みつけ、馬上からの斬り降ろしを交え、とにかく最速で、一体でも多くの水晶屍人の駆逐をめざします。
……国の統治を任ぜられた武門の統領として、死して尚操られる領民達の姿は見るに偲びない。僕にできるのは、もはや一刻も早く彼らに死を授ける事のみ。
●武門の統領としての責を果たす
村内の別の場所でも、若い男性が水晶屍人に引きずられていた。
「ひぃぃっ……!!」
水晶屍人への抵抗空しく、男性が連れ去られようとした、その時。
「よくもエンパイアの領民を!」
威厳ある青年の怒号と共に白き馬の脚が水晶屍人を蹴りつけ、若い男性から引き離した。
「早く逃げよ!」
「は……はいぃ!!」
逃げ出す若い男性と追う水晶屍人の間に、炎を纏う白い馬が割って入る。
「ヴアアアアアアア!!」
水晶屍人が若い男性を追うべく白い馬を無視して通り過ぎようとした、その時。
――白い馬に騎乗する青年の持つ刀が、水晶屍人を一刀のもとに斬り捨てていた。
白い馬――名馬「火産霊丸」に跨り、水晶屍人を斬り捨てたのは、徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)であった。
(「これが水晶屍人……安倍晴明が操る屍人」)
外道の術を持って屍人を操り、生者を害す存在――陰陽師『安倍晴明』。晴明は奥州に続きこの鳥取でも策を弄し、死者の尊厳を踏み躙るだけでなく、幕府を、そして猟兵をも害しようとしている。
「死を弄ぶ安倍晴明、この家光決して許さぬ!」
未だ姿現さぬ陰陽師への怒りを胸に、家光は駆け出した。
とにかく最速で、とにかく1体でも早く水晶屍人を駆逐するために、家光は目につく水晶屍人を片っ端から火産霊丸に踏みつけさせ、時には口から吐く炎で焼き払う。そのためなら多少の傷を負おうが気にしていられない。
(「国の統治を任ぜられた武門の統領として……死してなお操られる領民たちの姿は見るに忍びない」)
1体だけで蠢く水晶屍人がいれば、馬上から千子村正権現を斬り降ろし、一息で水晶屍人の首を刎ね、地に還す。
(「僕にできるのは、もはや一刻も早く彼らに死を授ける事のみ」)
それが、一介の猟兵である今の自分ができる、領民に対する精一杯の慈悲。家光はそう信じて駆け続ける。
――屍人と化せば、もう生者に戻す術はないのだから。
無我夢中で駆けていると、いつの間にか家光の周囲から水晶屍人の姿が見えなくなっていた。
己の手で引導を渡せたのは2体に留まったが、他はおそらく村内の他の場に移動して農民を連れ去っているのか、それとも他の猟兵が対処してくれているのだろう。
家光がふと馬上から空を見上げれば、流れる雲は夏から秋へと移り変わりつつある。
(「この戦争が終わったら、みんなで秋祭りにでも行きたいですね」)
そのために、今は将軍として、武門の統領としての務めを果たそう。
――サムライエンパイアを怪異や魑魅魍魎から、第六天魔王の手から守る為に。
成功
🔵🔵🔴
ルパート・ブラックスミス
農民の命と怨嗟を糧にした強兵か。
悪辣だが、心乱すほどの嫌悪感がないのは、この身も生命力を啜る黒騎士の鎧故か。
行くぞ。惨劇は起こさせない。
UC【理異ならす凍炎】発動。
凍る鉛を地を伝わせ敵を氷結【属性攻撃】でしつつ拘束(【グラップル】)。
周囲に村人がいる場合は【かばう】為や、逆に敵を味方が攻撃しやすい位置に【おびき寄せ】る為の氷壁の形成を試みる。
敵は近接戦しか出来ないならそう難しくはないはずだ。
その上で突破してくるなら大剣で【武器受け】し【カウンター】で切り伏せる。
屍人よ、貴様らも元を正せば犠牲者か。
眠れ。死の救済しか与えられんが、せめて逝く末の安寧への【祈り】を捧げよう。
【共闘・アドリブ歓迎】
●犠牲者に死の救済を
別の場所では、水晶屍人に襲われている農民らをルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が目撃していた。
(「農民の命と怨嗟を糧にした強兵か」)
悪辣にも程があるが、一方でルパートの心中は不思議と凪いでいた。目の前の光景に対し、心乱す程の嫌悪感を持てないのだ。
(「……この身も生命力を啜る黒騎士の鎧故か」)
黒騎士は生命力や殺した敵の魂を啜る存在。ルパート自身、死した主の魂を宿す黒騎士の鎧のヤドリガミ。だからこそ、命を糧にした存在に嫌悪感を持たないのかもしれない。一方で、己が嫌悪感を持たないことが、失われようとするいのちを見捨てる理由にもならない。
「行くぞ。惨劇は起こさせない」
ルパートは、目の前の農民たちを救うべく駆け出した。
「ぎゃあああああ!」
「ヴアアアアアア!!」
「ば、化け物……お助けを……!!」
2体の水晶屍人に殴られている農民を見て、ルパートは、【理異ならす凍炎】を発動。鎧の中の燃えている鉛を凍りし鉛に変換し、広範囲の地面に薄く這わせる。それはルパートの意に沿って形状を変えつつ水晶屍人の両足に纏わりつき、さらに水晶屍人と農民達の間を遮るような氷の鉛の壁を形成した。
「ヴァアアアア!?」
「ひゃあ!?」
「こ、凍る壁!?」
結果、凍りし鉛は水晶屍人にとっては地に縫い止めるための枷と化し、農民らにとっては化け物から引き離されるための壁と化した。水晶屍人は飛び道具や遠距離攻撃の術を持たず、近接戦しかできない。鉛の壁を破る為に鍬で殴りつけても、鍬から冷気が伝わり腕の動きが鈍るだけ。ルパートのユーベルコードは守りと妨害に最大限の効果を上げ、この場の農民らの安全は確保された。
安全が確保されても、壁が破られないに越したことはない。ルパートは水晶屍人の前に躍り出る。
「屍人よ、貴様らも元を正せば犠牲者か」
鉛を引きはがそうともがく水晶屍人の振り回す鍬を、ルパートは手にした凍りし鉛滴る大剣で受けた後、下から押し込むように弾き飛ばし、水晶屍人の上半身が泳いだところを大上段から一息に斬り伏せる。もう1体の水晶屍人も、ルパートに木の棒を叩き落された後、胴を真っ二つに薙がれて消滅した。
ルパートは鎧が一時的に凍りつくのも厭わず、その場に片膝をつき、両手を組んで祈りを捧げる。
――自分には死の救済しか与えられん。
――だが、逝く末の安寧への祈りをささげることは、できる。
「……眠れ」
せめて魂が残っていたなら、それだけでも安らかに。
ルパートの祈りは、望まず屍人とされたヒトに向けて捧げられていた。
大成功
🔵🔵🔵
月代・十六夜
なるほどなるほど。つまり、全部回収してくりゃいいんだな?
まぁ大集団は他のメンツに任せていいとして、こっちは細かいところを拾っていくとすっかな。
相手の攻撃は距離を空ければ基本問題はない。
【韋駄天足】の【ジャンプ】で屋根伝いに高速移動し【視力】と【聞き耳】で逃げ遅れた少数の農民の位置を【情報収集】し発見、救出に専念。
見つけ次第【鍵のかかった箱チェック】で一時的に収納し、また別の場所に向かう。
敵との距離が近かったら【ジグザグフィールド】で農民達と相手の間にワイヤー陣を貼って【時間稼ぎ】を行う。
粗方見つけたら光の結晶を目印に投げて離脱だ!
範囲攻撃でも何でもヨロシクゥ!
●村人を屍人の手から救うために
他の猟兵達が水晶屍人の手から農民を救い出すために奮闘している頃、屋根の上を伝うように高速移動する月代・十六夜(韋駄天足・f10620)の姿があった。
十六夜は村に到着し走り出す前に、屋根の上から目を凝らしてざっと状況を観察。
村内には既に水晶屍人の脅威から解放したと思われる農民の大集団が3つほど。いずれも助けたと思しき猟兵が護衛している。しかし彼らの中には誰かを案じている者もいるようだ。
(「大集団は他のメンツに任せていいとして、こっちは細かいところを拾っていくとすっかな」)
おそらくまだ、取り残されている人が村内にいるのだろう。今、水晶屍人に襲われていないとしても、いつ気づかれ、連行されるかわからない。
――それなら、自分がその前に全員保護しよう。
心に決めた十六夜は屋根を蹴り、走り出した。
十六夜は鋭い五感を研ぎ澄まし、抜群の視力で家屋の隙間までくまなく観察、しかる後に聞き耳を立て、農民の息遣いや衣服が擦れる小さな音を耳で拾う。
そうして農民の隠れ場所を特定次第、地を蹴って急行。当たりをつけた家屋の扉を開けると、震えている農民らを発見した。
「おーい、無事か? 助けに来たぜ」
「あ、……ありがとうございます!」
救出した農民は、十六夜の手にした【鍵のかかった箱チェック】に触れてもらい、一時的に収納・保護する。箱の中は広い空間故、農民たちが窮屈な想いをすることはないはずだ。
救出した農民たちの身の安全を確保すると、十六夜はさらに別の場所へ向けて走り出し、目と耳を駆使して次々と逃げ遅れた農民を発見、保護していく。幸い、水晶屍人に接近するようなことはなかった。水晶屍人の攻撃は全て近接攻撃故、距離を空ければ問題はなかったことも功を奏した。
やがて、少人数で村内の随所に取り残されていた人々は、十六夜が粗方保護することに成功する。十六夜は念のため村をもう1周したが、もう逃げ遅れたり取り残された農民はいないようだ。
箱の中の農民を他の猟兵が護衛として残っている広場に搬送し、鍵のかかった箱から解放すると、見知った顔に出会えた安堵感から農民が泣き出した。
「よかった、無事だったんじゃな」
「友達を見つけてくれてありがとうございます!!」
「当然のことをしたまでだ。さて……」
十六夜はポケットから照明弾代わりの光の属性結晶を取り出し虚空に投げ、広場にいない他の猟兵に大集団以外の農民の保護と救出を知らせる。これで後は水晶屍人の殲滅に専念してもらえるはずだ。
「範囲攻撃でも何でもヨロシクゥ!」
そう言い残し、十六夜は風のように村を去っていった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
※全ての行動に祈り、破魔、呪詛耐性を付与※
※オーラ防御常時発動※
なんて、ことを
この命は二度と戻らない
その意志は二度と叶えられない
……、……。
UC発動
燃え上がれ、死人送りの花よ
死者の弔いの為の花を咲かせよう、思い切り
聖属性……霊に良く効くと良いんだけど
そして同時にあの腐った体を燃やすんだ
二度と、蘇ることのないように
元より目での戦闘には頼る気は無い
それだけ水晶を背負っていれば嫌がおうにも音が立つ
耳を澄ませろ 空気の振動を感じろ【第六感】
光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
周囲の器物を巻き上げ咄嗟の防御と攻撃に使う
恨み辛みは私が聞き届ける
どうか安らかに……眠れ!!
●戻らぬ命のために、祈る
他の猟兵が打ち上げた「村人の安全確保」の合図は、鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)。の目にも届いていた。
しかし、志乃の前には今、鎌を手にした水晶屍人が2体、行く手を遮っている。
「なんて、ことを」
奥羽で目にした水晶屍人より異質さを増したそれを直視できず、俯きながらぽつり漏らす、志乃。
「この命は二度と戻らない。その意志は二度と叶えられない」
――この人たちは、どれだけ苦しい思いをして屍人と化したのだろう?
おそらく、目の前の屍人達は、鳥取城で屍人に変えられた農民達だろう。
彼らの苦しみは、絶望は、想像を絶するに余りある。
ならば、と志乃は心に決める。
苦しみから解放するために、【意志の花】を咲かせよう、と。
周囲の残留思念を光の大花火として、水晶屍人らの周囲に死者の弔いの為の花として咲かせよう、と。
パンッ!
パパパンッ!!
花火に似た音と共に、光の粒子が水晶屍人の周囲を舞い始める。
粒子が水晶屍人に触れると、魔を砕く青白い炎が噴き上がった。
(「聖属性……霊に良く効くと良いんだけど」)
聖なる光で送るべく、同時にあの腐った身体を燃やすべく、志乃は光の花火を打ち上げ続ける。
――二度と彼らが、屍人として蘇ることのないように。
「ヴアアアアアアアアアッ!!」
聖なる花で焼かれ往く水晶屍人らの、悲しみの咆哮。それは浄化されることへの悔しさからか、あるいは解放を求める雄叫びか。
「ヴァアアアア!」
燃えながら右往左往する水晶屍人らの肩の水晶から召喚された霊は、一瞬強く発光して目を眩ませ、志乃の視力を一時的に奪う。
だが、志乃は元より目視に頼る気はない。
それだけ大きな水晶を肩から生やしていれば、嫌がおうにも音が立つのだから。
志乃は耳を澄ませ、勘を研ぎ澄ませ、空気の振動を、水晶の霊の声を感じ取る。
「そこ!」
霊が密集していると思しき場に光の鎖を投げると、返ってきたのは水晶を殴りつけたと思しき手ごたえ。
「アアアアア!」
未だ軽く目が眩む志乃が目にしたのは、鎌を持つ水晶屍人が2体。しかしかなり燃やされたのか足元はふらついている。
――なら、終わりにしよう。
「貴方達の恨み辛みは私が聞き届ける」
「アアアアアアッ!」
「だから、どうか安らかに……眠れ!!」
志乃は光の鎖に魔を砕く力を強く込め、薙ぐように横にひと振り。
鎖に薙がれた2体の水晶屍人は、それが止めとなり消滅した。
成功
🔵🔵🔴
ネフラ・ノーヴァ
アドリブ、共闘OK。
「美しくないな...。」
蠢く屍人というのがまず美しくない。
それに水晶を生えさせるのが、なお美しくない。
そんな屍人を作り出し、こんな計画を企てる晴明とやらの精神がなんとも醜い。
奴にとっては小さな一片でも打ち砕こう。
かつての人とて、私は優しくないぞ。
ああ、屍人の腐液を浴びる気はない。爪や牙は刺剣で払い避ける。
己が右手を切り、溢れる血を浴びせ、UC葬送黒血の炎で燃やし尽くす。
水晶はハイヒールで蹴り砕いてやろう。
志乃(f12101)がいれば労いを。無茶な連戦を咎めはしないが、肩を貸すぐらいはするさ。
●友を労わり、美しくある為に
「村人の安全確保」の知らせは、村の外れにいたネフラ・ノーヴァ(羊脂玉のクリスタリアン・f04313)の目にも留まっていた。
これで水晶屍人の対応に全力を注げると一息ついたネフラの目に新たに留まったのは、遠くで戦っている知己の猟兵の姿。サムライエンパイア各地を転戦しているとは聞いていたが、ここで目撃するということは……。
(「無茶な連戦、咎めはしないが……」)
近場にいたら肩を貸すくらいはするのだが、村人を探しているらしき水晶屍人が2体、目の前を過った。どうやら、知己に手を貸す余裕はなさそうだ。
「それにしても、美しくないな……」
ネフラは目の前の水晶屍人を一瞥し、大きくため息をついた。
蠢く屍人と言うのがまず、美しくない。
その双肩から水晶を生えさせるのが、なお美しくない。
そんな屍人を作り出し、こんな計画を企てる晴明とやらの精神は、何とも醜いものだ。
ネフラはもう1度大きくため息をつく。
(「奴にとっては小さな一片でも、ここで打ち砕こう」)
奥羽では小さな一片が雪だるま式に膨れ上がり、大きな脅威となった。鳥取でも同じことを繰り返させるわけにはいかない。ネフラは血棘の刺剣を左手に持ち、水晶屍人の前に立ちはだかった。
「ヴアア!!」
行く手を阻まれすぐ反応した水晶屍人が繰り出す鋭い爪や牙を、ネフラは冷静に血棘の刺剣で払い除ける。どろりと黒い体液が刺剣の先端に付着し、一瞬顔をしかめた。ネフラに屍人の体液を浴びる気は全くない。
「かつての人とて、私は優しくないぞ」
付着した体液は刺剣を小さく振って払い落とし、刺剣の根元で己の右手を切ると、溢れ出すは黒い血。流れる血は赤とは限らない。
「弔いをくれてやろう」
ネフラは黒い血を水晶屍人に振りかけながら【葬送黒血】を発動。黒い血は瞬時に炎となり、激しく燃え上がる。
「ヴアアアアアアアア!!」
水晶屍人らが黒い血を、炎を振り払おうともがくが、その程度で炎は振り払えない。むしろ水晶屍人の身体を全て燃やし尽くそうと激しさを増す一方だった。
やがて水晶屍人が2体とも黒い炎とともに地に伏し、だが最後の足掻きとばかりにネフラを切り裂こうと爪を蠢かす。
しかしネフラはそれを避け、双肩の水晶をハイヒールで蹴り飛ばし、砕いた。
水晶の砕ける、澄んだ音。
それは、この戦いが終わったことを村内に知らせる鐘の音のように、遠くまで響いていた。
こうして、猟兵たちは水晶屍人の脅威からひとつの村を救い、守り抜いた。
成功
🔵🔵🔴