エンパイアウォー㉔~虚を突き、居を狙え
「緊急の案件だ。皆に一仕事願いたい」
徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)の――別段急いている風でもない、普段通りの――声がグリモアベースに響く。
「魔将軍たちとの戦いがあちらこちらで始まっているのは、もう皆知っているね?」
目まぐるしく戦況を変えていくエンパイアウォー。その戦場は魔将軍の所在が判明するにつれ方々に広がりを見せていた。
「その内の一人、『上杉謙信』が関ヶ原に大軍を動かしただろう。車懸かりの陣がどうとかでさ」
軍神と称される程優れた武将との戦いも、その火蓋は既に切って落とされている。とわはくるりくるりと尻尾を回し、戦況と陣形とに想いを馳せていた。
「……で、だ。結果、彼の本拠地である春日山城の防備が薄くなっているらしいんだ。ここまで言えば、あとはもう言わなくてもわかるね?」
緊急と声を上げたからにはそれも束の間の事。すぐに余分な思考も尻尾も止め、
「春日山城を落とすよ」
仄かに口端を上げるのだった。
「この忙しいときにその暇があるかというのは、うん、もっともな意見だね」
どこからか上がった一つの問い。今はもっと優先するべきことがあるのではないかという声。
しかし――、
「しかし、しかししかし、情報は武器なわけだよ。城を落とせば今後有効に働く情報を手に入れられるかもしれない。或いは、あの軍神の本拠地と言うくらいだからね。何らかの力を持ったお宝が出て来るかも、なんてこともある」
とわはこの案件が他の作戦と同じように優先すべき、緊急に足るものなのだと高らかに説く。
「それに彼には謎も多い。どうにも、グリモアについてならず【Q】までも知っている風でね。彼に関する情報は出来る限り多く得られた方がいいと考えた次第だ」
眼鏡の奥で個人的な好奇心を輝かせ、少女は一つ掌を打つ。
「さて、話を城落としに戻そう。堅城と名高い春日山城だが、その堅さを万全に引き出せる者が今そこに居ないというのは話した通り。この城に今残っている戦力はそう大したものじゃあない」
そうして彼女が言葉にしたのは春日山城の現状について。
「……まあ、主力に比べれば、という話だけれどね。皆に相手をしてもらいたいのは『兵器百般』と呼ばれる怪異だ」
上杉謙信から留守を預けられたオブリビオンについてだった。
曰く、それは合戦跡地や武器蔵などで発生する怪異。宙を飛ぶ刀に薙刀、弓矢たち。戦に無くてはならない兵器の数々が意思を持ったように動き回り、兵器の兵器たる所以を如何なく発揮するのだという。
「この群れを蹴散らして城に残る戦力を削げば、城の陥落に一歩近づくことができる」
されどもその撃破は、目的達成のための一歩。
「何分城は広大だからね。この一手で城を落としきることは叶わないが、しかし同じように動いている猟兵たちも多い」
数多の猟兵が力を合わせ、一歩を重ねて漸く成し得る、そんな目的なのだととわは語った。
「全員で一丸となってやってやろうじゃあないか。……さ、時間が惜しい。行こう皆」
粗方の説明を終え、少女はグリモアを翳す。
水面に浮いた梅の花が淡く光を放てば、集った猟兵たちを主不在の城へと誘うのだった。
芹沢
エンパイアウォー、中身がバラエティ豊富であちこちの戦況を見ているだけでもたっぷり楽しめてしまいますね。
今回のシナリオは猟兵の皆様のスピーディな活躍で切り開けた内容です。
見事春日山城を攻略した暁にはどのようなものを得られるのか、芹沢はわくわくしてなりません。
●特記事項
(1)
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
(2)
このシナリオに成功する事で、春日山城の攻略度が5%づつ進みます。
攻略度が100%になると、春日山城を制圧する事が出来ます。
●各章について
第一章:『悪屋形『大宝寺・桃』』との戦闘(ボス戦)
のみで進行します。
無数の『水晶屍人』の中、どのように『悪屋形『大宝寺・桃』』に辿り着くか。この方法がプレイングにある場合プレイングボーナスが付く場合があります。
※方法の記載がなくとも判定への悪影響は一切ありません。
●その他
公開され次第プレイング募集中となります。
また、プレイングを8月11日22時頃までに送って頂けますとスケジュールの都合上大変ありがたいです。同じくスケジュールの都合で採用人数は5名前後になる見通しです。
募集期間内であれば先着順ではありませんが、送っていただいたプレイングを流してしまう可能性があります。何卒ご了承いただければ幸いです。
以上、芹沢でした。
皆様のらしさ溢れるプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『兵器百般』
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POW : 騒霊カミヤドリ
【纏っている妖気の色が血のような赤】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : ひとりでに動く武器
【念動力で浮遊すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身が持つ武器としての機能】で攻撃する。
WIZ : 武器の知恵
技能名「【武器攻撃】【武器受け】【戦闘知識】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
イラスト:童夢
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィクティム・ウィンターミュート
──ハッ!主がいない間に居城を落とすか
あぁ、理に適ってる
鬼の居ぬ間にってやつだろ?戦術の基本さ
前から押し上げて、後ろから追い込んで…詰みにしてやるか
ハァイ、インジャン・カントリーにお邪魔しますってね
小粋な守衛さん出ておいで…なんてな
おーおー、意志を持つ武器どもか
俺を串刺しにする気かい?怖い怖い──
『Dainslaif』セットアップ
攻撃して来いよ…いくらでもな
【覚悟】を決めて、受け切る
エネルギー奪取完了、増幅、変換、広域化完了
歓待の礼をさせてくれ──【カウンター】で血の刃を振り抜き、薙ぎ払う
悪ィが負けられないんだ、絶対にな
非の打ちどころがない完璧な勝利の為に…
この城を攻め落とす。失敗は許さない
鳴宮・匡
鬼の居ぬ間に何とやら、ってやつか
ひとまずこの群れを散らせばいいってことで
……考えることが少なくて済むのはいいな
じゃ、仕事をしようか
近づいてくる武具から順に砕いていくよ
数が多くてとにかく対応速度が必要な序盤は
直感任せである程度まず数を減らす
多少は被弾するかもしれないが……まあ必要経費だ
致命傷だけは避けるさ
目と耳が慣れてきたら、精度を上げていこう
戦闘経験だけは重ねてきたつもりだ
目で視て、耳で聴き、ここまで観察して集積した動きから
どれを優先して落とすべきか瞬間的に判断して対応していく
ここからは一刀たりとも掠らせないぜ
その前に全て墜とす
さすがにこれ以上怪我はできないんでね
……怒られちまうからな
「──ハッ! 主がいない間に居城を落とすか」
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)がご機嫌に吠える。
軍神『上杉謙信』不在の春日山城。その名の通り春日山山頂に築かれたこの城は構える地形そのものが天然の要害であり、難攻不落とさえ謳われた城だった。
しかしそんな城に至る山道も今は静けさに包まれ、馬場に辿り着こうとも人っ子一人、馬一匹居らず。
故に少年は誰に憚る事もなく、正面から堂々と郭に肉薄する。
「理に適ってる。適いすぎてるよなァ」
主力を欠いた拠点への攻勢。それはこれまで幾度も行ってきたことだった。その有用性、実用性を何度も味わってきた。主力を拠点から遠ざける工作までも自身で担ったことさえあった。
「鬼の居ぬ間に何とやら、ってやつか」
彼の傍ら、鳴宮・匡(凪の海・f01612)もまた悠々とこの場へと辿り着く。山歩きに呼吸一つ乱さず、しかして油断することもなく、男は三の丸への門を見据える。
「戦術の基本さ。前から押し上げて、後ろから追い込んで……詰みにしてやるか」
「……考えることが少なくて済むのはいいな」
しかし静かな道行きもここまで。
「そろそろ……」
「居る」
ヴィクティムの予感を匡の洞察が肯定する。
肌に纏わりつく空気が、耳に届く微かな音が、門の先に敵が居る事を知らせていた。
「だろうな。派手に行こうぜ、相棒/チューマ」
チームメイトが派手を望むならば、男はそれに沿う。
「ハァイ、インジャン・カントリー/敵地にお邪魔しますってね」
「ひとまずこの群れを散らせばいいってことで」
二人はその脚で、文字通りに門扉を蹴破り、戦場へと、
「じゃ、仕事をしようか」
「小粋な守衛さん出ておいで、ってな」
武器の群れの中へと踏み込んでいった。
銃声が響く。
それは何者にも邪魔されることなく、遠くへ、遠くへ。小鳥が山道の木々から羽搏いていく。
「数は大層なもんだな」
舞飛ぶ刀、突き進む槍。矢は番える者ないままに弓から放たれ、突撃する先は匡の身体。
振るう者なき武器の群れ、『兵器百般』。青白き妖気を纏い宙に浮く武器の数々は己の機能を、存在理由を示すかのように縦横無尽に戦場を駆け回っていた。
匡は絶えず動きながら、構えた突撃銃で彼らの鍛え上げられた身体を撃ち砕いていく。
持ち主が介在していない為だろうか。武器たちの動きには駆け引きはなく、ともすれば愚直とさえ言えそうな真っ直ぐさ。
故にその軌道は読みやすい。男は彼我の距離の近いものを順に撃ち落していく。
だのに彼が――、
「(……まあ必要経費だ)」
その身に傷を負っていくのは、持ち主が居ないままに動き回るという兵器百般の特性故だった。彼らには足音が無い。呼吸が無い。その情報の欠落が匡の反応を刹那遅らせ、刃の接触を許してしまう。
「おーおー、串刺しになっちまう気か?」
「ならないよ」
匡に迫る槍の一振りを叩き伏せるヴィクティムの表情は笑み。友に向けた発破か、
「ハッ、だろうな」
信頼故の余裕か。
「もういける頃合いだろ? かましてやれよ」
「ああ。リロードの間だけ任せた」
「オーライ」
匡は空の弾倉を排出し、ヴィクティムが群れなす武器へと突撃していく。
「来いよ」
近いものを狙うのは、彼らもまた同じく。ただ愚直にヴィクティムへと殺到していく兵器百般たち。
彼はしかし、その機械仕掛けの腕で身を庇う事もなく、ナイフを引き抜いて応じるでもなく、
「いくらでもな」
無防備に彼らの身体を受け止める。
……そう、受け止めたのだ。
「エネルギー奪取完了、増幅、変換、広域化完了」
刀は彼の身体の薄皮一枚断つこともなく、槍は盾に阻まれたようにその動きを止め、矢は勢いを失い地に落ちる。
――Reuse Program『Dainslaif』。
一度鞘から抜かれれば誰かの血を見るまで鞘に戻らない、そんな逸話を持つ刀剣の名が冠されたプログラム。それは受けるはずだった傷を、
「それじゃあ、歓待の礼をさせてくれ」
流れるはずだった血を攻撃へと転ずる機構。
群がる武器を払うように腕を振るえば、放たれるは鮮血の刃。彼の刀剣は群れなす武器たちを薙ぎ払い、赤く染めていく。
「ここからは一刀たりとも掠らせないぜ」
続くのは無数の弾丸。
再装填を終えた匡が引き金を引き、オブリビオンの身体を砕いていく。
反応するように武器たちが男の身体に向かっていくが、
「さすがにこれ以上怪我はできないんでね」
それを捉える事は叶わない。
足音が、呼吸が無いのなら風切り音を。男は集中すべき情報を修正し、
「(……怒られちまうからな)」
血の川に鋼の雨を降らせていった。
「悪ィが負けられないんだ、絶対にな。非の打ちどころがない完璧な勝利の為に――」
血刃で武器を断ち、ヴィクティムは有象無象を嗤うように口端を上げる。
「この城を攻め落とす。失敗は許さない」
見据える先は山の頂、その最頂点。春日山城天守閣だった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
非在・究子
ぼ、ボスの、居ない間に、城攻め、か。基本だ、な。
て、敵は、武器の、騒霊、か。か、数で、襲ってくる、タイプの敵、だな。
こ、ここは、火力増し増しの、範囲攻撃で、押し切ると、するか。ちょ、ちょうど、いい感じの、SSR衣装を、引き当てた、ところ、だ。
ゆ、UCで、重武装の、強化外骨格を、呼び出して、装着する、ぞ。
りょ、両手の、ツインビームバスター、両肩のビームカノン、全身のミサイルポッド。他にも、色々。
こ、こいつらの、マルチロックオンで、兵器百般の、奴らを、一切合切、根こそぎ、撃ち落として、焼き尽くして、やるさ。
れ、レッツ、パーリィ、って、やつだ。
織座・このみ
●心情
このお城にあるもので、少しでも早くこの戦が終わるようになるといいんですけどねぇ
●行動
ユーベルコード:神玉降臨
を使いますよう
姉様と二人で鉾先鈴を手に
【祈り】を込めた神楽舞を奉げまして
神玉の御霊を宿しましたら
その鈴の音で兵器百般たちの動きを止めさせて頂きますねぇ
「しばらく、大人しくしててくださいねぇ」
舞の最中に攻撃されるようでしたら
【野生の感】や【第六感】で舞いながらも避けますよぅ
避けきれないようでしたら【オーラ防御】で防ぎますねぇ
※内心・思考の口調は、プレイング記述の話し言葉と違い、訛り気味
人前では狐面外さない
協力、アドリブ歓迎
順調に数を減らしていく『兵器百般』。防備の薄くなっていく春日山城三の丸。
「ぼ、ボスの……居ない間に、っ……城攻め、か。はぁ……基本だ、な」
舞い飛ぶ血飛沫と銃弾、武器の中を突っ切り、少女たちが二の丸へと辿り着く。
運動不足気味の身体には山道を行くだけでも大変だったというのに、その上駆け足。しとどに汗を流した非在・究子(非実在少女Q・f14901)の額には鮮やかな緑色の髪が張り付いていた。
「て、敵は、武器の、騒霊、か。か、かっ……かはっ、ゲッホ……数で、襲ってくる、タイプの敵、だな」
跳ねる心臓。揺れる胸と尻。……腹。
しかし瞳だけは動じさせず、独りでに宙に浮く武器たちを見据えている。
「このお城にあるもので、少しでも早くこの戦が終わるようになるといいんですけどねぇ」
傍らからはややくぐもった声。
白い狐面の少女、織座・このみ(半身は焔となりて傍らに・f04890)は自然豊かなサムライエンパイアでの暮らしが長い事もあってか、面をしているにもかかわらずそう息を切らした様子はない。
「か、隠し要素に、レアアイテム、役に立たなかったら、どうしてやろう、か」
燃やしてしまおうか。城を。
にたにたと白い歯を覗かせ、焼け落ちる城をシミュレートする究子。
……究子が燃やすという事を想起したのは、或いは三人目の少女を見た印象があったからかもしれない。
「さぁ姉さま、参りますよぅ」
このみに寄り添う黒の狐面、燃え盛る人型の獄炎。それは少女の半身。双子の姉、このか。
二人はゆったりと穏やかに頷き合うと、拍子を取るように鉾先鈴を鳴らし、神に奉ずる神楽を舞う。
されど武器たちにはそれを観覧するような感性はない。彼らにあるのは武器としての本能/機能。斬り、突き、射貫くためにと姉妹へ襲い掛かる。
「こ、後衛を守る、のも、基本だ、ろ」
立ち塞がるは究子の小柄な身体。
「ちょ、ちょうど、いい感じの、SSR衣装を、引き当てた、から、な」
ホロウィンドウ――彼女の所有物を表示したアイテム欄を開き、その一つを選択する。さすれば現れる、光の柱。高々と跳ねて……とはいかないが、究子はそこに飛び込んでいった。
「きょ、今日のアタシは」
間を置かずして声と共に光の中から出でたのは数多のビームとミサイル。
そして重火器を満載した強化外骨格を纏った、
「――タンクだ」
アームドガール/武装少女の姿だった。
収束するビームは笛。巻き起こる爆炎は鼓。
荒々しい戦の音色の中を鈴の音が跳ねる。
「い、いひひっ、多すぎ」
丸こい身体とは裏腹に、それだけが別の生き物のように究子の指が忙しなく動いている。少女は愛用のゲーム機で外骨格を、己が身体を操作して武器たちを撃ち落していた。
最前線で注意を引き、有り余る火力を放ち。守りと攻めを一手に担う姿はタンクにして重戦車。
しかし巨砲で狙うには、狙うべきは的は小さく多い。降り注ぐビームとミサイルの隙間を縫って、
「ぞ、ZOCの実装、はよ……!」
矢が究子の脇を通り抜けていく。
鈴の音に引き寄せられるように、吸い込まれるように、向かう先は舞い踊る狐面の姉妹。
その面故に、或いは意識を注ぐ神楽舞故に、彼女たちの視界にその攻撃が映っているかも定かではない。
……しかし矢絣模様の着物をその矢が射貫くことも、掠ることもなかった。
降り降ろされた刀は静かな足運びに空を斬り、突きこまれた槍はくるりと身体を翻されて宙を穿つ。
舞いながらの回避。回避しながらの舞。……否、これは唯々純粋な神楽舞。神に奉ずる為の一挙手一投足が、まるで零れだした神の恩寵を宿したかのように禍つ者を遠ざける。
そして打ち鳴らされる二つの鉾先鈴。一糸乱れぬ一つの鈴の音。騒々の戦場に響き渡り、静かに消えれば、数多の武器が作り出していた風切り音もまた、消えて失せる。
それは零れ出たでなく、奉に応じて借り宿した御霊の権能。
「しばらく、大人しくしててくださいねぇ」
降臨するは八尺瓊勾玉。悠久の時を越える静謐の神玉。
切っ先から石突まで、武器たちは全身余すところなく鈴の音に震わされ、時が止まったかのように宙で静止していく。
「ふふ、お疲れ様でした姉様。……究子さん、後はお願いしますぅ」
効果のほどを見届け、寄り添い合って後退する織座姉妹。
揺れる袴と鳴るブーツ。十分な距離が取られたのを確認し、究子はゲーム機のボタン――ジャンプ操作の宛がわれたそれを長押しする。
両肩部に備えられたビームカノンが背中へとスライド、推進器としてロケット噴射。汗を流していなければあわや積載量オーバーの身体を強引に空へと押し上げ、
「ぜ、全弾発射も、基本……い、いや、浪漫、だな」
良好な視界で以ってマルチロックオン。
「れ、レッツ、パーリィ……!」
気分は一国一城の主か、はたまた大統領か。搭載された全火器が静止した目標へと降り注ぎ、二の丸を炎と煙が包み込む――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
◎
WIZ
それじゃ春日山城、攻めようか!
「迷彩」を利用しつつイルダーナで上空から進入しようか
「拠点防御」「戦闘知識」を活かして、
相手の配置を想定、
怪異を発見したら、念動力や怪異たらしめる魔術構造を演算解析
「時間稼ぎ」「情報収集」しつつ、対処していこう
目処が付いたらUC【凪の潮騒】で片っ端から動きを止める
「出番だよ、ヌァザ!」
『ヌァザ』を魔剣型に戻し、
「部位破壊」「鎧無視攻撃」「破魔」で斬り落としていく
味方の猟兵が居たら
「援護射撃」「呪詛」「マヒ攻撃」「呪殺弾」の弾丸を撃って
敵を怯ませられると良いな
「先ずは過去にお帰りよ。オブビリオンじゃなくまた世に出るなら、ヤドリガミになれると良いね」
六六六・たかし
【アドリブ歓迎】
城取り合戦とは面白い。
俺もついに一国一城の主となるわけか…。
ん?ならない?そうか…
まぁ、いい蔓延る雑魚オブリビオンを始末しながら天守閣まで行ってやるさ。
なぜなら俺はたかしだから。
【SPD】
この俺がまともに城に挑むと思ったら大間違いだ
「かかし」変形だ。
『悪魔の案山子(デビルスケアクロウ)』!!
オフロードバイクに変形したかかしに《騎乗》し城をかけ上がる。
襲いかかってくる武器たちはかかしバイクで丁寧に受けながら
「たかしブレード-ガンモード
」で撃ち抜いていく。
何、俺の《視力》《スナイパー》《誘導弾》の技能があれば簡単なことだ。
武器は人が使ってこその武器だ。
デビル…たかし…シュート!
春日山城天守閣。事実上の、この山の頂。
それを擁する本丸の門が吹き飛び、なだれ込んでくる土煙。
「――城取り合戦とは面白い」
そして鋼の馬。
「俺もついに一国一城の主となるわけか……」
武者鎧然としたスーツを纏う少年、六六六・たかし(悪魔の数字・f04492)は運転するオフロードバイクを巧みに操り、敵配置の観察を兼ねて本丸内を駆け巡る。
《いやいや、そうはならねぇべたかし!》
彼の乗機、『デビルスケアクロウ』は意思を持つバイクだ。……いや、意思を持つ案山子がバイクへと変形した姿と表す方がより正確だろう。故に喋りもする。
殺人オブジェクト、デビルズナンバー。その身に数字を刻まれた現代の怪異。このバイクは467の数字を持つオブジェクトが姿を変えた存在である。
「ん? そうか? そうか……」
「ふふっ! 主にはなれないけど、主役にはなれるかもね!」
朗らかな笑い声は彼らの頭上、鋼の天馬から。
残念そうに瞑目するたかしにリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)がエールを送っている。
彼女の愛機、『イルダーナ』は宙間戦闘機ながら翔ける場所を選ばない。今も大気圏内をその翼で舞い、必要とあらば追加搭載されたホイールで地上さえ走破して見せる。
「悪くない代案だ。それでいくか」
「オッケー! それじゃ春日山城本丸、攻めようか!」
二人の騎兵は索敵も済ませ、それぞれの乗機は戦闘機動を描き出す――。
「ふんっ! そこだっ!」
響き渡るエンジンの唸りと剣戟。
デビルスケアクロウで戦場を疾走するたかしは握り締めた愛剣を振るい、速力を重ねてオブリビオンを薙ぎ払っていく。
「突っ切るぞかかし!」
《おうさ! オラの腕を離すんじゃねぇぞ!》
軽快なウィリー、後輪を軸にしたスイング。反転と共に前輪で迫る矢を弾き落とし、再びの疾駆。たかしとかかしは一つ所に留まらず、その機動力を十二分に活用して戦場を掻き回す。
追い縋ろうと突き進む武器たちも数多く存在するが、
「ほらほらっ、主役の邪魔はさせないよ!」
降り注ぐ機銃に阻まれ、地に伏せられ。
リアの援護射撃がたかしたちを守り、彼らの機動力を十二分以上に発揮させている。
しかし空中とて安全圏ではない。
『兵器百般』。妖気を纏い、己が念動力で動く武器の群れ。弓矢に限らず全ての武器が、その使用環境を人の身に縛られない。宙を走る刀と槍はさながら対空ミサイル。幾多の線となってリアとイルダーナを付け狙う。
「解析率82……3。もう少し、か。イルダーナ!」
リアの声に呼応するようにイルダーナが機首を上げる。発生する、大気圏内故の空気抵抗。機体全てで流体を受け、押し流され、失速し――、
「ふふ、いい子」
機首を戻せば刀と槍の背後。
戦闘機のマニューバに関する知識など白兵武器が持ちようはずもない。宙を浮けるとはいえ、使用環境を縛られないとはいえ、それは彼らの経験にはない領域。愚直に進むばかりの身体が機銃に砕かれ、あるべき場所へと還っていく。
「解析も完了!」
リアはキャノピーを開け放ちその身を乗り出して地上へ向けて掌を翳す。
「さあ、キミたちを世界から少しだけ切り離す!」
放たれるは流体を伝う波紋。
それは凪の前触れ。静けき潮騒。停滞を呼ぶ共鳴波。戦闘の最中に収集したデータを基に各種武器の時空間内固有振動数を解析、同周波数の波を放ち、触れた武器たちを時の流れから乖離させていく。
「やはり武器は人が使ってこその武器だ」
武器であるが故に、無機物であるが故に、『兵器百般』はこの停滞から逃れ得ない。
次々に動きを止めていく武器を前にたかしはバイクを止め、銃へと姿を変えた愛剣――超魔銃剣を変えた。
「次は人の――命ある者の手で振るわれることを願うんだな……かかし、頼む」
《まかせな! ぶち抜け!》
案山子姿に戻ったかかしが土に突き立ち、たかしの背を支える。
「……ああ! デビル……たかし……――シュート!」
迸る光。絶え間なく放出される熱線。二人掛かりで反動を抑え込み、薙ぎ払えば、地上の武器たちを焼き捨て、城壁を融解させていった。
「間隔は1.6秒! お願いね!」
リアが開け放たれたキャノピーから飛び立つ。
「出番だよ、ヌァザ!」
どこからともなく、猫の鳴き声。少女の手の内に現れるは一振りの魔剣。落下する身体でそれを振るい、
「先ずは過去にお帰りよ」
空中の武器を斬り落としていく。
僅かの自由落下の後にはイルダーナの翼、擦れ違う刹那に蹴って、再びの宙へ。それは斬撃と跳躍の空中舞踏。ティル・ナ・ノーグ式八艘飛び。
「オブビリオンじゃなく、また世に出るなら――」
最後には掬い上げられるように操縦席に収まり、鋼片煌めく地上を見下ろす。
「ヤドリガミになれると良いね」
――この子は果たしてどうだろうか。……ううん、きっと。
少女は穏やかに計器を撫で、その硬さにさえ慣れ親しんだシートに身体を預けるのだった。
大成功
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