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エンパイアウォー⑦~軍神の下に集いし天使の舞

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「強大なオブリビオンであり、軍神と呼ばれし上杉謙信。そのカリスマは渡来してきた天使達をも魅了する、と言う事か」
 グリモアベースの片隅で北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)がそう小さく息を一つ吐く。
 その様子に気がついたのであろう猟兵達が幾人か優希斗の傍に集まっているのに気がつき、優希斗は、皆、と静かに呼びかけた。
「サムライエンパイアの関ヶ原に、上杉謙信が軍神車懸かりの陣を無数のオブリビオン達を使って構築している事が判明した。既に上杉謙信本人を狙う予知も行なわれているけれども、彼を完全に討滅するためには、この軍神車懸かりの陣そのものも破壊する必要がある」
 と言うのは、並外れた統率力を持つ上杉謙信がこの軍神車懸かりの陣を自らの復活兼、防衛のために使用している陣形であることが予知によって判明したからだ。
「要するに仮に上杉謙信本人の戦力を削りきったとしても、この布陣が存在している限りまた上杉謙信が復活してくる可能性がある訳だ」
 となれば、この戦いの中で上杉謙信を滅ぼすためにしなければならないことの一つは自ずと定まる。
 即ち、上杉謙信のカリスマと並外れた統率力によって作り出されたこの軍神車懸かりの陣本体に攻撃を仕掛けて布陣しているオブリビオンを討滅その戦力を削り切る事だ。
「そこで皆には、この軍神車懸かりの陣の一翼を担っている天使達と戦い討滅して欲しい」
 最もこの軍神車懸かりの陣は、全軍が風車の如く回転しながら最前線の兵士達をめまぐるしく効率よく交代させ、その間に戦力の回復と攻撃を行なうと言う所謂『超防御型攻撃布陣』とも言うべき兵力運用という点において極めて優れた陣形となっている。
「だからこの陣形の前では、並の攻撃では歯が立たない。それこそ、極めて効率的な皆での連携攻撃か、一回の攻撃でその防御を叩き切り、ほぼ一撃必殺でオブリビオンを屠ることが出来るくらいの火力を用意する必要がある」
 そうしなければ、この陣の前では与えたダメージを直ぐに回復され、そして反撃を受けてジリ貧になってしまうからだ。
「一撃で倒せるくらいの打撃力を用意できるなら話は別だが、敵がそう簡単に一撃必殺を許してくれるとも俺には思えない。となると、難しいかも知れないが現地に集った猟兵達との即興の連携による畳みかけが重要になるだろう。……上杉謙信本人を相手取るよりもある意味では厳しい戦いになるかも知れないが、どうか皆、宜しく頼む」
 その言葉と共に、優希斗がパチンと指を鳴らす音と共に。
 テレポートが発動し、猟兵達はグリモアベースを後にした。


長野聖夜
 ――軍神の無敵の布陣を突破せよ。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言う訳で、上杉謙信率いる車懸かりの陣そのものに攻撃を仕掛けるシナリオです。
 上杉謙信との直接対決ではありませんのであしからず。
 今回は下記2点が基本ルールとなります。
 1.このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 2.軍神車懸かりの陣については下記となります。
 ====================
 軍神『上杉謙信』は、他の魔軍将のような先制攻撃能力の代わりに、自分の周囲に上杉軍を配置し、巧みな采配と隊列変更で蘇生時間を稼ぐ、『車懸かりの陣』と呼ばれる陣形を組んでいます。
 つまり上杉謙信は、『⑦軍神車懸かりの陣』『⑱決戦上杉謙信』の両方を制圧しない限り、倒すことはできません。
 ====================
 このシナリオで取り扱うのは上記2戦場の内、『⑦軍神車懸かりの陣』となります。
 尚、システム上は集団戦として扱われておりますが、今回の敵の数は、6体と少数精鋭となっております。
 プレイングをお書き頂く際には、此方も考慮に入れて頂けますと幸甚です。
 また、上杉軍の状態は下記の様になっております。
 コンディション:最高。
 バフ:『防御力アップ&自動回復(特大)』
 対抗する手段についてはオープニングをご確認下さい。
 プレイング期間及び、リプレイ執筆期間は下記となります。
 プレイング期間:OP公開後~8月10日(土)中
 リプレイ執筆予定:8月11日(日)
 プレイングはこの期間が入る様、お送り頂けますと幸甚です。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 集団戦 『万能従者型・渡来の天使』

POW   :    天使の一撃
単純で重い【天使の斧】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    くるくる回る天使の輪
自身が装備する【天使の車輪】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    兄弟の危機を見過ごせない!
自身が戦闘で瀕死になると【新たな別の渡来の天使】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:つばき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グルクトゥラ・ウォータンク
【アドリブ共闘歓迎】
なるほど、つまりは防御を貫くような破壊力で再生させずに殺すべしということか。これはわしも奥の手を出さざるを得んな。渡来の天使よ、夏の成績アップキャンペーンとともに滅ぶがいい!

【先制攻撃】でUC発動、大祖神降臨!質量すなわち破壊力!おまけに火煙で継続ダメージ!正にうってつけよ。とはいえそのまま殴った程度では倒しきれんので一工夫。祖神が適当に殴りかかりつつガジェットボールズの【支援射撃】や【罠使い】によるスタングレネード投擲等で敵を撹乱、タイミングを見て【グラップル】!両拳に敵を握り込んだら手を潰す威力で拳を打ち付け合う!逃げ場のない破壊力じゃ、さすがに一堪りもないじゃろ!


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携可

参ったな…
僕の出せる火力では一撃では叩き斬れない
無理にするにも、この疲れのたまり具合では危険だな

即興での連携前提
※一撃必殺派が多ければそちらに準拠

【魂魄解放】発動
…今回も頼むよ

基本は弱った敵から1体ずつ確実に撃破
「2回攻撃、怪力、範囲攻撃、なぎ払い、吹き飛ばし」+衝撃波で
天使の車輪や狙いの敵以外にも傷を負わせつつ
狙いの敵を力任せに叩き斬る

1体集中攻撃が難しければ
「ダッシュ、地形の利用」+高速移動で天使たちを1か所に集めるように移動させる
離れている敵は「吹き飛ばし」て無理やり移動
まとめてしまえば範囲攻撃も効率良くできるだろ?

敵からの攻撃は「武器受け、オーラ防御」で軽減


藤崎・美雪
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎
※支援特化のため、出番なしなら却下可

さすが上杉謙信、オブリビオンと化しても考えることが一味違う
…とはいえ、これは非常に厄介だな

次々と敵が出るようでは
いずれこちらが押し負ける
ならば瞬間火力か、即興連携か

まあ、どちらにせよ私がやることは
歌で皆を鼓舞し、底力を引き出すことだ
…それしかできないし(ぼそ

戦闘開始と同時に皆を勇気づける歌を歌い始める
「歌唱、パフォーマンス、鼓舞、存在感」+【サウンド・オブ・パワー】で皆の戦闘力を底上げするぞ
もし皆の傷が嵩むなら【シンフォニック・キュア】で治療しよう

天使召喚は相手が瀕死にならなければ問題ないはず
仮に天使に攻撃されたら回避専念


郁芽・瑞莉
軍神率いる上杉軍の車懸かりの陣、
打ち破ってこの先へと進ませて貰いましょう。
進軍してきた徳川軍の皆さんと共に。欠けるものなく!

一撃必倒が求められるこの戦い、私にやれることは全てやります!
もし一撃目で倒れていなかったら即座に続いて。
私が一撃目で倒せない場合は仲間が攻撃しやすい様、
敵を盾にする様に誘導。

剣の封印解除して昔の私に変身したら、溜めていた力を開放。
先制攻撃で早業の鎧無視攻撃でなぎ払って。
相手の反撃は残像と迷彩、見切りと第六感の感覚で回避。
そのまま相手の勢いをも利用して、
カウンターの捨て身の一撃の2回攻撃2回目。
同じ個所を傷口を抉る様に串刺し、衝撃波も叩き込みます。
「攻撃を重ねれば必ずや!」


パラス・アテナ
単純で重い斧の一撃
御しやすい攻撃で助かるよ
アタシ達はここで立ち止まる訳にはいかないんだ


他の猟兵とも連携
回復される前に最大火力を叩き込む
一体に狙いを定めて2回攻撃で牽制しつつ動きを情報収集
敵がUCを使ってきたら見切りと第六感で回避
無理なら激痛耐性でこらえつつ、肉薄してカウンターを叩き込む
零距離射撃と一斉発射、鎧無視攻撃を併用した【一斉射撃】
2回攻撃しながら一度の攻撃で必殺を狙う
これを繰り返すよ

この陣形を崩して、上杉謙信の復活を止める
サムライエンパイアのためだ
さっさと骸の海へお還り


ウィリアム・バークリー
『車輪』ということは、座天使(ガルガリン)でしょうか? とにかく油断出来ませんね。

確実な討滅が必要ですか。いいでしょう。ぼくの全力を尽くします。
後衛で術式の準備を整えます。
スチームエンジン、トリニティ・エンハンス、Spell Boostを使用し、威力の強化と術式の制御力を正確にします。

そして使うは、Disaster。「全力魔法」氷の「属性攻撃」「高速詠唱」「範囲攻撃」「鎧無視攻撃」を乗せて。
ぼくらの前にいる天使に対し、かまいたち混じりの渦巻くブリザード!
皆さん、巻き込まれないよう気をつけてください!

術を放ってまだ戦えるようなら、Active Ice WallとIcicle Edgeを使います。




「『車輪』ということは、座天使(ガルガリン)でしょうか?」
 辿り着いた戦場に現われた天使達が車輪に座しているその姿を認めたウィリアム・バークリーが、隣に現われた藤崎・美雪に問いかける。
「どうなのだろうな。そうかも知れないし、そうで無いかも知れない。ただ一つだけ確実に言えることは、流石は上杉謙信、オブリビオンと化しても見事な策を思いつくな、と言う事だ」
「そうですね。少なくともぼく達個人個人の力だけでは、どうすることも出来ない相手ですし」
 美雪の答えに軽く頷き掛けながら、ルーンソード『スプラッシュ』を抜剣し、その鍔に取り付けられたスチームエンジンを起動した後、関ヶ原に集う精霊達の力を取り込んで、『スプラッシュ』の剣先で青と深緑色の魔法陣を展開しながら、口の中で詠唱を行ない始めるウィリアム。
 そのウィリアムの様子を見ながら、美雪は内心で嘆息を禁じ得ない。
(「考えてみれば、私に出来るのは、歌で他の者達を鼓舞する事だけだな」)
 この手の敵が相手である以上、どの様な戦いを繰り広げれば良いのか、それは分かっている。
 即ち超火力で一気に押し潰すか、即興で他の者達と連携し、回復の暇を与えずに畳みかけることだ。
(「最も、支援一辺倒である私では、どちらの力になる事も難しいのでは無いだろうか……?」)
「迷いを抱えているみたいだね、アンタ。戦場での迷いは、自分を殺すことになるよ」
 まるで、美雪の心の内を読むかの様に。
 そう告げたのは、アサルトウェポンと熱線銃を構え、その腰に差した拳銃の具合を確かめる歴戦の傭兵、パラス・アテナ。
「あなたは……」
「パラスさん、か」
 美雪の呼びかけに代わりにパラスの名を教えたのは、館野・敬輔。
 疲労からであろうか、目の下にクマができている。
 パラスが敬輔の呼びかけに一つ頷き、続けて美雪を見て、諭す様に語り始めた。
「アンタがどんな迷いを抱えているのか、アタシは知らないし興味も無い。だが、出来ることがあるなら、とにかくやる。戦場での役割なんて人其々だ。それを忘れるんじゃ無いよ」
「そうだな。すまない、パラスさん」
 パラスの言葉に静かに頷き、戦場をもう一度見つめる美雪。
「ガッハッハ! これはまた腕が鳴る相手だな! 何よりも、相手の防御を貫くほどの破壊力で再生させずに殺すべしとは、シンプルで実に良いのう!」
 グルクトゥラ・ウォータンクが野太く豪快な笑い声を上げながら、腕捲りを一つ。
 その様子には、強敵を目前にしている恐怖は存在しない。
 こんな状況……いや、こういう状況だからこそ、底知れぬ闘争心を滾らせている。
「集まったのは、私も含めて6人ですか。敵の数は6、私達も6。条件は五分の様
ですね」
 郁芽・瑞莉が戦況を確認し、命の危機に際してのみ顕現されるという十束剣を握りしめながらその上、と誰に共無く呟き続けた。
「敵は、軍神との誉れ高き上杉謙信率いる上杉軍の車懸かりの陣。防御が底上げされているというこの状況です。勿論全力で行きますが、それだけでは足りないでしょう」
「と言う訳じゃ、お嬢ちゃん。何を悩んでいるのかは知らんが、お嬢ちゃんの力もアテにさせて貰おうぞ!」
 十束剣を祈る様に胸元で構え、天使達をきっと睨付ける瑞莉とトン、と力強く美雪の背を叩いて激励するグルクトゥラ。
 グルクトゥラ達のその様子を見て、敬輔が思わず息を一つ吐く。
「皆、考えていることは同じって事か」
「ガッハッハ! ワシの奥の手だけで倒しきれるとは限らないからのう!」
「そうか……そうだな」
 問いかけに答えるグルクトゥラのそれに美雪が口元に微笑を浮かべ、深呼吸を一つ。
「――Spell Boost!」
 そんなグルクトゥラ達の会話を耳にしながら、儀式用の長い呪を予め魔法陣に仕込んだウィリアムが『スプラッシュ』を天に掲げた。
『スプラッシュ』の剣先に何時の間にか顕現していた十重二十重の魔法陣の全てが『スプラッシュ』の先端に収束し、戦場全体を覆い込まんばかりの巨大な魔法陣を形成、そこに氷と風の精霊達が何時爆発してもおかしくない程に大量に集結している。
(「魔術の制御力を高めても、何とか制御できるかどうかと言う程の魔力です……これをぶつけてやれば、流石の彼等の出鼻を挫けるはず」)
 そのウィリアムの思いに合わせる様に。
 美雪が清らかな声音でその歌を歌い始めた。
 猟兵として、上杉謙信の車懸かりの陣を破ると言う想いに共感した仲間達の戦意昂揚と、其々の戦闘能力を上昇させる、戦いの歌を。
 美雪の歌を耳にしたウィリアムが左手を『スプラッシュ』に添え、美雪の歌によって増幅された天災を起こす程に凝縮された魔力を制御する力を送り込んだ。
「それでは皆さん、行きますよ。……『Elemental Power Critical……Liberate……Disaster!!』」
 ウィリアムの叫びと共に。
 凝縮された氷の精霊達が一斉に天空に放たれ、凄まじい轟音と共に氷嵐となって天空を舞う天使達を飲み込み、更に空気を断ち切り鎌鼬を形成、天使達をズタズタに切り裂いていく。
 突然のその攻撃に態勢を崩した天使達を見つめながら、急激な魔力の消耗に疲労しながらも美雪の歌による能力増強で、継戦の為の魔力を残したウィリアムが叫んだ。
「皆さん、今です! 一気に攻撃をお願いします!」
 立て続けに詠唱に入ろうとするウィリアムに背を押され。
「此処から先はワシラの番じゃ! 渡来の天使よ、夏の成績アップキャンペーンとともに滅ぶがいい!」
 グルクトゥラと。
「進軍してきた徳川軍の皆さんと共に。欠けるものなく! 郁芽・瑞莉、いざ参ります!」
 瑞莉と。
「また僕に力を貸して。……行くよ、皆」
 敬輔が。
「アタシ達は、ここで立ち止まる訳にはいかないんだ。援護はしてやるから、思いっきりお行き」
 アサルトライフルとブラスターの引金を引き、無数の弾丸を解き放ったパラスの援護を受けて、傷つきながらもまた直ぐに立ち上がった6体の天使達に襲いかかった。


「くっ……敵襲だと!?」
「おのれ、我等車輪6人衆に奇襲を掛けてくるとは……!」
「だが……この程度でボク達は負けはしない!」
 ウィリアムのDisasterで出鼻を挫かれながらも、超高速で3体の天使が後衛に回り、残りの3体が前衛に立つ。
 グルグルと風車の様に回転して瞬間的に自分達が休む機会を作り、そしてその傷を回復しようとしたその矢先に無数の熱線と銃弾をばらまかれ、その隙を塞ぐ様に撃ち抜かれた。
「ぬっ……ぐぅ?!」
「この程度で……!」
 パラスが肉薄しながら絶えず二丁の銃を掃射しその動きを阻害する間に、グルクトゥラが素早く印を刻み、その術を完成させる。
『始源の王に冀う!捧げるは鋼、掲げるは炎、築き上げるは我が腕! 御身に相応しき依り代ならば、我が祈り正しければ! 今ここに顕現されよ!』
 グルクトゥラの呼びかけに応じる様に現われたのは、53m程の巨体を持った、火煙纏う鋼の祖神。
 巨大化した万能義腕ガジェットアームを構え鋼の祖神がブンブンと力任せに拳を振るって天使達に殴りかかり、その鳩尾や腕を容赦なくぶちのめす。
 天使達がお返しとばかりにその手に持つ巨大な斧を振るい、グルクトゥラの鋼の祖神を切りつけて負傷を与えるその間に、瑞莉が十束剣に接吻を一つ行った。
『昔の私、申し訳ありませんが、今一度お力を借りますね』
 ――それは、失われた筈の記憶。
 その頃の自分は、薙刀術よりも剣術に秀でていた。
 その時の記憶は、まるで思い出せない筈なのに。
 不思議な事に今の自分は、過去の自分の一部を、まるで鏡に映しているかの様に見て取ることが出来る。
 そんな瑞莉の言葉に応じる様に。
 ――フワリ。
 煌びやかな衣装に身を包み、天女の如き姿へとその身を変えた女がその姿を曝け出し大事そうに抱えていた十束剣を青眼に構えて優しく微笑した。
「……瑞莉さん?」
 その身に纏う霊力の変化に、幾度か戦場を共にしたウィリアムが思わず目を見開くが、瑞莉はそれを気にする様子も無くトン、と自らの胸をその左手で叩いた。
『……良いんだよ私。謝らなくて。選ばれし者の力、ご覧あれ……ってね!!』
 衣装を風に靡かせながらとまるで舞う様にしなやかな足取りで戦場を駆け抜ける瑞莉。
 十束剣に封じられていた魔力が銀の煌めきと共に放射され、瑞莉の後ろに銀の線を曳く。
「……! Active Ice Wall!」
 次の瑞莉の行動を予測したウィリアムが目眩を堪えながら、即座に左手で青と深緑色の混ざり合った魔法陣を描き出し、そこから無数の氷塊を撃ち出す。
「ありがとうだね、ウィリアム」
 その氷塊を足場にして肉薄した瑞莉が、十束剣を横一閃に振り抜いた。
 グルクトゥラの鋼の祖神の一撃に強かな一打を受けていた天使達を、銀の煌めきを発した十束剣が、容赦なく薙ぎ払っていく。
「この程度で……!」
 瑞莉の寿命を代償に放たれた銀閃が天使達の体を横薙ぎに斬り裂き、その体から血飛沫を舞わせるが、それでも尚、3体の天使達が三方向から一斉に瑞莉へと襲いかかり、更に後衛に回って回復に努めていた3体がウィリアムの呼び出した氷塊に対抗せんとばかりに幾何かの天使の歯車達を召喚。
『一斉攻撃! 貫けぇ!』
 後衛中央の天使の号令と共に、それらの車輪をブーメランの如く回転させながら、瑞莉とグルクトゥラを斬り捨てんと襲いかからせるが。
「……させるかよ」
 鎖から解き放たれた狼の様な速さで、白い靄を纏った黒剣を大地を擦過させながら駆け抜けつつ呟く敬輔。
 ――やらせない。
 ――お兄ちゃんの仲間を貴方達に。
 ――この世界の皆も。
 白き靄達から流れ込んでくる感情にその身を委ねた敬輔が、大地を擦過させていた黒剣を思いっきり下段から撥ね上げた。
 その軌跡に呼応する様に放たれた無数の衝撃波が、瑞莉を襲おうとした3体の天使達を容赦なく斬り刻んでいく。
「! 攻守交代、急げ!」
 後衛の天使が飛ばした檄に応じる様に、寸分違わぬ動きで風車の如く回転しながら前衛と後衛を入れ替える天使達。
 交代とほぼ同時に、その内の1体が巨大な斧を大上段から振り下ろそうとするが、その時には、それまで後方からの援護射撃に徹していたパラスが敢えて前へと踏み込んでいる。
「~♪ ~♪」
 戦場に響き渡る美雪の歌を背にしたパラスが振り下ろされた斧の動きを見て軽く体を横に傾けながら、その天使の眉間へとブラスターを突きつけた。
「単純で重い斧の一撃。御しやすい攻撃で助かるよ」
 そのまま、ブラスターの引金を引いて眉間を撃ち抜き、そのままウィリアムの呼び出した氷塊を蹴って空中へと飛び上がり、何時の間にかアサルトライフルから持ち替えた拳銃を零距離で天使に突きつけている。
「遅いね」
 ――パァン。
 傍目にはゆっくりと引いている様に見えるその動作と共に解き放たれた弾丸のあまりの速さに、驚愕の表情を隠せない天使。
(「……何故っ?!」)
 天使の口から驚愕の声の代わりに零れたのは、大量の血液。
 これが、美雪のサウンド・オブ・パワーでパラスの身体能力が強化された結果であるなどと、果たしてこの天使に想像することが出来ただろうか。
「そこじゃのう!」
 そのまま重力に引かれるに身を任せて落下するパラスの背後から、突き出されるグルクトゥラの呼び出した鋼の祖神の両腕が瀕死状態の天使を掴み、仲間を呼び出すよりも先にぐしゃりと天使を握り潰して止めを刺す。
「先ず一人目じゃ!」
「くっ……フィーア!」
 悔しげに呻く様な声を上げながら、大きく振りかぶった斧を振り下ろした傷だらけの天使の一撃を、万能義腕ガジェットアームで受け止めるグルクトゥラ。
 同時にグルクトゥラは、ポータブルハードディスク『ランドメイカー』から、半自律行動を行う事が出来る球体、ガジェットボールズを実体化させて宙へと放った。
 グルクトゥラの意志を正確に理解したガジェットボールズの電脳妖精が、グルクトゥラの要請に応えて『チープトイ』を射出。
 それは1人を倒され、動揺する5体の天使達の中心で炸裂した。
「くぁ……!」
「う……うわぁっ?!」
 前衛の2体の内1体が咄嗟にその目を庇い、後衛で回復に努めていた3体も其々に驚愕の表情を浮かべてその動きを一瞬だが止める。
「今だね、行くよ敬輔!」
「分かっている!」
『記憶喪失前の自分』と一時的に化し、その寿命が削れていくのを感じつつも、敢えてその頃をなぞる様に明るい声音で叫びながらウィリアムの氷塊を蹴ってグルクトゥラの投げ込んだスタングレネード仕様の『チープトイ』の爆発の中心点に向かって突進する瑞莉。
 天使達は目を眩まされながらも何とか周囲に浮いている車輪を投擲し、瑞莉の突進を防ごうとするが、その時には白い靄を纏った敬輔が、大地から突貫しながら力任せに黒剣を振るって広範囲へと三日月型の残影を解き放ち、それらの車輪を叩き落としている。
 それでも尚全てを押しとどめることが出来ず、幾何かの攻撃が瑞莉を斬り裂くが。
(「やらせるか……!」)
 美雪が旋律を戦いの激しさを物語るそれから、聞く者人々全ての心に平穏と癒しを齎す春風の様な旋律へと切り替え、瑞莉が負った傷を癒していく。
(「攻撃を重ねれば必ずや……」)
「行けるよ!」
 その弾んだ声音と共に、生き残った5体の天使達を纏めて薙ぎ払う瑞莉。
 銀の線を曳いた全てを纏めて薙ぎ払う銀閃が、目にも留まらぬ速さで放たれ布陣そのものを切り崩す。
 その隙を、ウィリアムは見逃さなかった。
「……Icicle Edge!」
『スプラッシュ』の先端で描き上げていた魔法陣から解き放たれるは195本の氷柱の槍。
 天空に解き放たれたそれらの氷柱の槍が雨の様に残った天使達に降り注ぎ、次々に天使達を射貫いていき、どう、と後衛の3体の内1体の全身を貫いて消滅させている。
「後一息です、皆さん……!」
(「頼む……終わらせてくれ……!」)
 疲労から強い目眩を感じたか、その場に屈み込みながらも瑞莉達に呼びかけるウィリアムをちらりと横目で気遣いながら、祈りを籠めて美雪はあらんばかりの声量を振り絞って戦いの歌を奏でた。
 美雪の歌では、傷を癒すことは出来ても瑞莉の寿命や、ウィリアムの疲労を癒すことは出来ない。
 だが、それでも歌い続ける。
 仲間達とその想いを共有し……この戦いに勝利を齎すために。
「サムライエンパイアのためだ。さっさと骸の海へお還り」
 美雪の歌に込められた意味を理解したパラスが白装束を風に靡かせながら、戦場を駆ける。
 瑞莉と敬輔の連携攻撃により崩れた陣形。
 ウィリアムのIcicle Edgeによって貫かれ、瀕死の重傷を負う天使達。
 そして、瀕死になった天使達が取る手段は一つ。
 即ち……援軍の召喚。
 ――だが。
「隙有りだよ」
 パラスがブラスターから持ち替えたアサルトライフルを乱射しながら後衛に向かって突っ込んでいけば、彼等の召喚は水泡に帰す。
 何故なら……。
「き……貴様……!」
 無数の銃弾を躱すべく、仲間の召喚を中断せざるをえないから。
「この……!」
 援軍を呼べぬやりきれない怒りを力に変えて、斧を振り下ろすべく肉薄してくる1体の天使。
 直感で前転して斧の一撃を回避してその懐に飛び込み、銃口を心臓に押しつけたパラスが、拳銃のトリガーを躊躇なく引く。
『そこ!』
 零距離から放たれた銃弾に心臓を撃ち抜かれ、ビクン、ビクン、と2、3回痙攣を起こした後、ヒュー、ヒュー、と喉から意味を為さぬ音を上げながら、3体目の天使が息絶えた。
「ゼクス!」
 仲間の死に動揺したか一瞬目前のグルクトゥラと彼の乗り込む火煙纏う鋼の祖神の事を忘れて叫び声を上げる後衛最後の生き残りの天使。
 その瞬間、天使は火煙を吸い込み、体内からその身を焼き尽くされてしまう。
「ガ……ガァァァァァァ?!」
「その余所見が、お前さんの命取りじゃ!」
 内側から火煙に焼かれのたうち苦しむ天使に、せめてもの慈悲とばかりに万能義腕ガジェットアームを振り下ろすグルクトゥラ。
 振り下ろされた義腕の握り拳が、まるで鉄塊の様に天使へと降り注ぎ、そのまま天使を押し潰した。
「くそっ、フィーア、フンフ、ゼクス、ドライの仇を……!」
「そうはさせないよ!」
 後衛の仲間達が全滅したのに気がつき、天使の内の1体が舌打ちと共に斧を振り下ろして来たのを素早く体を入れ替えて躱した瑞莉が、陣形をズタズタにされ、混乱していたもう一体の天使が斧を振り下ろしてくるのにも構わず十束剣を突き出す。
 斧に左肩を斬り裂かれながらも尚瑞莉の突き出したそれは、ウィリアムの氷柱の槍によって貫かれた傷口を抉る様に深々と食い込んでいた。
「ぎゃ……ギャァァァァァ?!」
「これで……終わり!」
 耳に残りそうな生々しい絶叫に鼓膜を震わせ、肉と骨を貫く鈍く重い感触が十束剣と腕を通して伝わってくるのを存分に味わいながら、瑞莉が突き立てた十束剣を横一文字に振り抜き、その天使の上半身と下半身を泣き別れにさせて止めを刺し。
 ――そして。
 瑞莉と体を入れ替えられた天使の真正面には、黒剣を大上段に振り上げていた敬輔が全てを読んでいたかの様に陣取っていた。
「しまっ……?!」
 天使が気付いて、咄嗟に交代するよりも一足早く。
「終わりだ!」
 敬輔が黒剣を袈裟に一閃。
 その袈裟を真正面から受け止める羽目になった最後の生き残りの天使の体が、右肩から左脇腹までを切断され、光となって消えていく。

 ――かくて上杉謙信配下の天使達の一部は……此処で最期の時を迎えるのだった。


「何とかなりましたか」
『スプラッシュ』を地面に突き刺して杖代わりにしながら、額を軽く手で押さえたウィリアムがポツリと呟く。
「ああ、何とかこの戦場は制圧できた様だ」
 歌による支援によりグルクトゥラ達の勝利に貢献した美雪が、ほっ、と肩の力を抜いて深呼吸を一つ。
 そんな美雪の肩を、ポン、とパラスが軽く叩いた。
「状況終了だよ、アンタ」
「パラスさん。……ああ、そうだな」
 パラスの呟きに、美雪が小さく首肯する。
 グルクトゥラが安堵の表情を浮かべる美雪の様子を見てガッハッハッと豪快な笑い声を上げた。
「お嬢ちゃんは、ワシ達の援護という役割を立派に果たしたんじゃよ。もっと胸を張って良いんじゃ」
「グルクトゥラさん」
 グルクトゥラの言葉に美雪が思わず呼びかけるのをちらりと横目で見ながら、力を貸してくれて有難う、と少女達に心の内側で呼びかけた敬輔が息をつく。
 仲間を支援することしか出来ない、と嘆じていた後輩の意外な活躍に、純粋に安堵したからであろう。
「この戦場では勝利することが出来ましたが……まだ、全てが終わったわけでは無さそうですね」
 寿命が削れた証明か、はたまた最後の捨て身の一撃の代償か。
 左肩から滴り落ちる血を止血しながら今後の戦況の事を考えて呟く瑞莉に、そうだね、と敬輔が静かに首肯で返し、静かに空を見上げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト