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エンパイアウォー㉔～春日山城悪鬼殲滅攻略戦～

作者：丹藤武敏

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●軍神の居城
　戦国の軍神と名高き、越後の龍上杉謙信の居城、春日山城。
　春日山山頂に築かれ、天然の要害に守られた難攻不落の山城である。
　しかし、徳川幕府開闢以降はその役目を終えたとして廃城とされた。
　その城が、今こうして泰平の世を覆さんと復活したのである。
　幕府軍が信州上田城の上杉勢を早期に撤退させたことで、現在上杉の主力が越後から関ヶ原に向けて進軍したことが察知された。
　その春日山城で蠢いているのは只者ではなかったのだ。

「ここで待っておれば、戦ができる。食ろうてやるぞ、食ろうてやるぞォォォォォ……」

　彼らは、悪霊であった。
　血肉を貪り、人の命や断末魔を聞くことを好む。
　軍神上杉謙信にしたがうのも、戦においてその好物を求めてのことである。

「天下泰平など、面白うもない。血で血を洗う戦国の世こそ我らが待ち望むもの……」

　義による戦であろうが。
　私利私欲の戦であろうが。
　一度起これば、大量の人が死ぬ。
　そうなるからこそ、彼らは望んで上杉方につきまとう。
　戦国の世とは、かくあるべし。
　第六天魔王の復活降臨なったときこそ、天下は関ケ原の向こうに返るのだ。

●春日山城に攻め上れ
「戦争ってのは、どこでもいっぺんにいろんなことが起こって目が回りそうだ」

　グリモワベースに集まった猟兵たちに、堂崎・獣明（整備係・f15021）は今回の予兆を告げた。
　軍神上杉謙信の主力は、関が原に向けて進軍中である。
　今、本拠地である春日山城は手薄となっているはず。
　そこを攻めて敵の動きを測ろうということだ。

「ところが、さっきのでわかる通り、戦国の世の悪鬼どもが集まって後詰めで残っていやがる。嫌なもんだぜ」

　とはいえ、居城に本隊がいないのだから攻略の千載一遇の機会でもある。
　残っている部隊はそう多くはないはず。
　堅固な城である春日山城をおとすのは、今を置いてほかはないだろう。

「戦争なんてのはもう懲り懲りだが、片づけないと終わらねえからな。頼んだぜ、みんな。軍神と真正面から当たる前に、城を攻略して徳川勢を有利しないとな」

第1章 集団戦 『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』

POW   :    伽日良の鐵 【サソリのようにうねる尻尾（毒属性）】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。 SPD   :    欲欲欲 【血肉を求める渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。 WIZ   :    鳴神一閃 【全身から生じる紫色に光る霆（麻痺属性）】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　いまや戦国の悪鬼の巣窟となった春日山城に、着流し姿でふらりと乗り込んできたのは、トカゲ人の樫倉・巽（雪下の志・f04347）であった。

「俺にはうってつけだな、目の前の相手を斬ればいい。
それが平和に繋がるならな。手を血に染めるのは物好きの仕事だ」

　多少の諧謔を含む物言いをしながら、城内へと足を踏み入れる。

「そうです。平和な世の中の為に少しでもお役に立てれば」
「物好きがもうひとり、か」

　同じように春日山城の本丸を目指す、フェミルダ・フォーゼル（人間の聖者・f13437）であった。

「その、私程度の力が戦争に通用するかは分かりませんが」
「いいや、心強いさ」

　並んで歩く人間の聖者に、巽は視線を流した。
　そして、現れるもう一人の猟兵。
　鈴木・志乃（オレンジ・f12101）である。
　彼女は、現在『昨夜』という女霊に憑依されている。

「天然の要害を持つ難攻不落の城……。名前は春日神社に由来……。春日山と直接の連絡路……」

　データベースをスクロールしながら、情報を淡々と呟いた。

「さて、城内の戦いだ。城の中ってのは戦い方がある」
「そうですね。この右手の聖痕を頼りに索敵します」

　フェルミダの右手の甲に刻まれている聖痕は、悪意や害意に反応して疼くという特性がある。
　つまりは、敵が近づくとそれを教えてくれるのだ。

「……来ました！」

　フェミルダが、手の甲を押さえて告げた。
　巽は、志乃に目配せをして壁を背にしつつ、剣を構える。

「食ろうてほしいのは、うぬらかァァァァァ……」

　飢えた声を上げるのは、禍鬼たち。
　戦国の世の怨念が、骸の海から染み出して形となった者どもだ。
　フェルミダの聖痕が、その黒い衝動を感じ取って痛いほどに反応する。
　その全身から、紫電を放つ。
　フェルミダは、すぐさま鋼の剣を地面に突き立てた。
　紫の稲妻が、その剣に向かって集束する。
　避雷針の要領で、電撃を逸したのだ。

「皆、あの悪意をよく覚えて……行って！」

　フェルミダは、ユーベルコード【神鎗（ホーリージャベリン）】を放った。
　召喚された無数の槍は、聖痕が感じた悪意と害意を自動追尾するものだ。
　途端に、何体かの禍鬼に槍が突き立つ。

「志乃の力を借りましょう――」

　続いて、昨夜の声で【祈願成就の神子（ナナシノミコ）】が発動する。
　
　志乃の身体が、淡い光りに包まれた。
　妙やかなる歌声が、春日山城に響き渡る。
　美しい言葉と込められた祈りが、邪悪な禍鬼を滅ぼしていく。

「よし、いいぞ。そうら、こっちだ悪鬼ども」

　一方、巽は禍鬼を挑発し、一対一となる場面が来るよう誘い出した。
　【蜥蜴剣術無天流】の剣によって、前田はその蠍の尾による攻撃を捌く。
　そして、返す刀でその尾を斬り飛ばした。

「ぐああああああああッ!!」

　思わぬ反撃に、禍鬼は叫び声を上げた。
　多対一となる戦いを、複数の一対一の戦いに変えていけば勝てる。
　首、利き腕、心臓……精緻極まる技が、禍鬼を一撃で仕留めていった。
　

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

「もぬけの空の城を……っていきたかったけど、さすがにそうは問屋が卸さねえか」

　春日山城から響く剣声に、鏡島・嵐（星読みの渡り鳥・f03812）は構えを取った。
　戦場の怨念から湧き上がった禍鬼たちは、歓喜にも似た鬨の声を上げている。
　戦いを怖れる嵐としては、震えが来るほどの状況だ。
　だからこそ、この春日山城の攻略は早めに片付けようとも決心した。

「食ろうてやる、食ろうてやるぅぅぅぅ……」

　怨念は、その魂を人を喰う物の怪へと変えた。
　城から解き放たれば、泰平の世は地獄と化すだろう。

「ま、食べ物を欲しがるのは良しとしましょう――」

　旺盛な食欲を見せる禍鬼の前に、嵐とともに秋津洲・瑞穂（狐の巫女・f06230）は立った。

「それが人の血肉であっても、肉食獣であるというに過ぎない。もちろん、黙って食べられはしないけどねー」
「そりゃ、まあな」

　人を食うことへの忌避は、人の間で成り立つ倫理だ。
　禍鬼たちからすれば、単なる食料であろう。
　それもまた自然の営みとすれば、よくあることでしかない。

「しかし、戦乱を望むのは別よ。生きるに必要でもないんでしょう」
「まったくだ、戦なんてまっぴらだ」
「さあ、片付けましょうか」

　瑞穂は、背負った太刀を抜いて構えた。
　小柄な瑞穂が持てば、より刃が大きく見える。

「新当流太刀術、秋津洲瑞穂。参ります」

　あらためて名乗る。
　すると、城内の禍鬼たちが殺到した。
　狐の印籠から毒消しを口に含み、尾の毒に備えて疾走った。
　ユーベルコード【剣刃一閃】によって向かってきた禍鬼を真っ二つに斬り伏せる。
　群れをなした禍鬼の毒針も、残像を引いて躱していった。
　しかし、禍鬼たちは、味方の損害など気にしたふうもない。
　全身から紫の電撃を放った。
　猟兵たちを麻痺させるものであるが、嵐が召喚した人魚たちが【大海の姫の恋歌（シレネッタ・アリア）】を歌うとその痺れも雲散霧消していく。

「当たると結構やべぇな！」

　麻痺から回復したとはいえ、まともに食らうわけにはいかない。
　次々に放たれた鳴神一閃を、嵐は見切っていく。

「こっちも反撃よ」

　攻撃を躱すと、瑞穂は呼び寄せた狐火を禍鬼たちにぶつけていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

「骸の海からわざわざ現世を自分の望むようにするべく出てくるとは……はっきり言って迷惑ですね。お帰り願いましょう」

　城の中に溢れ出すオブリビオンたちに向かって、セルマ・エンフィールド（絶対零度の射手・f06556）は言い放った。
　城攻めや合戦については伝聞でしかないが、それらしく戦うことはできる。

「ここからは剣の冬、ということで。行きなさい、兵士たち」

　セルマのユーベルコードは【冬の尖兵（ウィンター・ソルジャーズ）】。
　52体もの氷の兵士を呼び出し、前線で戦わせることができるのだ。
　血肉を求めて殺到する禍鬼の群れが迫ると、整然と兵士たちが抜剣する。

「ぜんたーい、かかれー！」

　号令とともに、氷の剣を構えた兵士たちが歩みだし、連携を取って斬りかかる。他終えた兵士たちは、合体することでお互いを補い、さらなる防壁となった。

「食い止めていてください！」

　セルマは冬の尖兵たちが食い止めている間に、後方から援護を射撃を行う。
　愛用の銃フィンブルヴェトのスコープに敵影を捉え、確実に狙撃する。
　最後の銃声が響くと、やがて春日山城に静寂が訪れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月16日