エンパイアウォー⑳~天上天下全部ぶっ殺す
●グリモアベースにて
「おまえたち猟兵の功労のおかげで、大悪災『日野富子』の居所が掴めたぞ」
第一声。
グリモア猟兵――プルート・アイスマインドはそう告げて、まずは感謝の言葉を伝え、続けてその大悪災に関する予知を口にした。
「日野富子は京都――『花の御所』という豪華絢爛な邸宅にいるようだ」
花の御所は足利将軍家の邸宅だった場所である。
江戸時代では別の建物に代わっていたのだが、富子の有り余る私財によって、そこは豪華絢爛な彼女だけの御所に変えられてしまったらしい。
そしてひとり、その華美な邸宅で怒りの炎を滾らせている。
「奴もまた第六天魔軍将の一角……当然ながら強敵だ。先手はまず取れん」
恐らくどうあっても、後手に回る戦いとなる。
富子のユーベルコードに何かしらの方法で対抗できなければ、猟兵たちとてなす術なく敗れ去ってしまうだろう。
しかし決して勝てぬ相手ではない。
「奴のユーベルコードへの対策が打てれば、きっと打ち倒せるはずだ。そしておまえたちならば、それができるだろう?」
にやり、と含んだ笑いを滲ませながら。
プルートがグリモアの輝きを散らす。
「怒りつづけるのも疲れることだろう。骸の海に還し、奴を楽にしてきてやれ」
●殺して殺して殺してやる
目も眩むばかりの、絢爛の邸。
その中にあってしかし、日野富子は払いようもない怒りに狂っていた。
「金、金、アタシの金……!」
足取り荒く最高級の畳を踏みつけ、ぐるぐると歩き回る富子。
財を尽くした豪奢な空間にあってなお、その心は満たされない。徳川に金を奪われた、という怒りに身悶えせんばかりである。
「昔っからそうだ! どいつもこいつも、アタシに逆らいやがって……! アタシが金を吸い上げたから国が乱れた? 乱れたんなら、金を持ってるアタシが正義だろうが! 黙ってヘイコラ従えよ!」
怒鳴り散らしながら襖を蹴り破り、紫炎でもって燃やし尽くす。
そしてそれでも、腹の底から突き上げる憎悪はどうしようもなく止まらない。
「ああムカツク! ああああムカツク! どいつもコイツも、アタシが殺してやる!」
徳川も、猟兵も、信長も――。
もはや怨霊じみた形相で吐き捨てた、そんなときだった。
ちらりちらりと、御所の周囲に光が咲くのが見えた。
猟兵だ。猟兵がこの花の御所に踏みこんでくる。
自身が財を投じた邸宅、つまりは財産に。
「――ぶっ殺す!!!」
豪華絢爛を極めた舞台に、紫紺の業火が燃え上がる。
星垣えん
案外可愛いのではないだろうか。
というわけでハイ、おっかねー日野富子さんを倒すんだ!
きっと邸宅をぶっ壊したりしたらぶっ殺してくるんだろうなあ。
やることはひとつ、富子を倒すだけです。
ですが相手も幹部級、まあ強いんで気をつけて下さい!
それではプレイングお待ちしております。
以下、本シナリオの特殊ルール等々。
◆====================◆
大悪災『日野富子』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼女を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
◆====================◆
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 ボス戦
『大悪災『日野富子』』
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POW : アタシの前に立つんじゃねぇ!
【憎悪の籠った視線】が命中した対象を燃やす。放たれた【爆発する紫の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : アタシのジャマをするな!
自身の【爪】が輝く間、【長く伸びる強固な爪】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 誰かアイツをぶっ殺せよ!
自身が【苛立ち】を感じると、レベル×1体の【応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊】が召喚される。応仁の乱で飛び交った火矢の怨霊は苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:みそじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
栗花落・澪
【天海花】
先制攻撃へは
【空中戦】での距離稼ぎと【オーラ防御+激痛耐性】で
最悪食らう覚悟も決めつつ
水の【高速詠唱、属性攻撃の範囲攻撃】
自分や味方ごと濡らし炎対策も取りながら可能な限り相殺
傷を受けても即座に【指定UC】発動
欲に塗れ怒りに溺れた今の彼女では
僕の想いも届きはしないでしょ
【祈り】の歌を奏で
自分や味方が受けた傷を回復
翼を射られても★Venti Alaに風魔法を宿し
【空中浮遊】、空中歩行で空中戦続行
全体の戦況を見極め時折足場に★花園を生成
風の【全力魔法】で舞い上げた【破魔】の花嵐で斬撃を加えたり
破魔の光魔法で視界を奪う、強制的に鼓膜を揺らす【催眠歌唱】で足止めする等援護
がめつい人は醜いよ
天星・零
【天海花】
敵の先制攻撃に対しては
星天の書-零-で【オーラ防御】とグレイヴ・ロウで防御、出来れば牽制攻撃
常に【戦闘知識+世界知識+情報収集+追跡+第六感】で戦況や敵の癖などを見て弱点や死角を把握して万が一がないよう
☆通常は近接はØ、遠距離はグレイヴ・ロウで対処し、基本的には臨機応変に距離を詰めたり間合いを保つ☆
普段は悪魔と天使の羽の時計の付いたチェーンをポケットから取り出して、指定UCを発動。その後は、攻撃をしても防御はしないでわざと攻撃を受けます
針が一周したら、強化された装備達で☆の戦術を使い、enigmaで別人格の夕夜共に死角から攻める
キャラ口調ステシ参照
基本A+1で話します
アドリブ歓迎
六道銭・千里
【天海花】
敵の攻撃は霊符(ご縁玉)で作った結界や手の銭貫文棒で払って【盾受け&武器受け】
澪の水で炎のダメージを軽減し最小限に抑えられるように
死角は零と注意しあって
回復の澪が潰れるとまずいから最悪その時は肉盾にな
澪のUCで回復したらこっちの番やな
六道銭家長男、六道銭・千里。行くで…!
銭貫文棒を手に突貫
前衛としてこっちに意識を向けて援護しとる澪に攻撃がいかんようにな
金にうるさい女は嫌われるで?
閻魔様の代わりに俺がまたあの世に送ったるわ!
少し距離をとってUC発動
怨霊丸ごと払ったる。三途の渡し賃。俺の奢りや!
「呼んでもいねぇのにノコノコ来やがって……!! クソ! クソクソクソが!!」
御所に踏み入る猟兵を見るなり、日野富子は病的なまでの怒りで喚き散らした。その怒気は抑えること叶わず、火矢の怨霊という姿を取って猟兵たちに襲いかかる。
「矢がたくさん飛んでくるよ!」
オラトリオの翼をひろげて御所内を浮遊する栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が、直下の仲間に声を飛ばす。
「後は打ち合わせ通りに、やな」
「ええ、そうですね」
軽い目配せで意思を共有するのは、六道銭・千里(冥府への水先案内人・f05038)と天星・零(多重人格の霊園の管理人・f02413)だ。
猛然と迫る矢衾を前にして、千里は五円玉の霊符『御縁玉』をばらまいて結界の盾を作り、零は禁書『星天の書-零-』をひらいてオーラの防壁を形成する。
二重の壁――そこへさらに。
「水よ、僕たちを守る力になれ!」
上空にいる澪が、水流魔法を詠唱する。千里と零が張り巡らせた防壁を降りそそぐ水流が覆い、三段のシールドとなって燃える矢衾に対抗した。
火矢の雨が降る。水流が紫炎を鎮火する。
だが矢の怨霊自体は、水の力をものともせず防壁に突き刺さった。
二度、三度、四度、その数量たるや尋常ではない。波のように押し寄せた矢は、千里と零の防壁をも突破して2人の体に深々と突き立てられる。
「なんや、防ぎきれんみたいやな……!」
「さすがに敵将の一角ですね……!」
矢衾に晒されつつも何とか致命の一矢は避けつつ、顔を歪ませる千里と零。
「2人とも、大丈夫!? 任せて、すぐ僕が癒すよ!」
言下、上方の澪が瞑目する。
胸に手を乗せ、口から流れ出るは――願いと祈りのこもった歌声だった。熱砂に雫を落としたように、暖かな歌声は千里と零の心に染み入り、肉体の負傷すらも治癒してゆく。
「行けそうですか? 千里さん」
「当たり前やろ」
ちらりと色違いの双眸を向けてきた零に、千里は肩に刺さった怨霊矢を引き抜きながら笑い、武具『銭貫文棒』を持ち出した。
撃ち尽くしたか、矢は止んでいる。
「六道銭家長男、六道銭・千里。行くで……!」
「うおっ!?」
千里の突き出した銭貫文棒が、富子の頬を掠めた。
富子の形相が、ますます怒りに染まってゆく。
「しぶてぇなクソが! アタシの顔は安くねぇんだ! 勝手に汚すんじゃねぇ!!」
「はー言いよるな、あんた。でも金にうるさい女は嫌われるで? 閻魔様の代わりに俺がまたあの世に送ったるわ!」
「ふざけんな! 地獄に落ちんのはテメェらだろ!」
銭貫文棒を振るい、攻め立ててくる千里に口汚く言い捨てる富子。
だがそうして興奮するあまり、零に後方に迫ることを許してしまう。
「なっ、いつの間に!」
「一撃、見舞わせてもらいましょう」
悪魔と天使が意匠された時計を携えた零が、空いた手を振り上げた途端――地面から石造りの十字架が突きあがる。その場から生えたように現れた十字架『グレイヴ・ロウ』は富子の腹を強かに打った。
「ぐっ……っの野郎ォ!!」
腹の痛みに歯を食いしばる富子が、ぼうっと紫炎を揺らめかせる。再び火矢の怨霊へと変化したそれは、まるで炸裂したかのように四方に弾け飛び、零と千里はもちろん上空の澪までも捉えた。
「い、いたた……」
「少しは配慮とかないんか、この女……!」
体に無数の矢を立てながら、激痛に眉根を寄せる澪と千里。
だがそんな中、零はむしろ微笑んでさえいた。
チッ、と――彼の持つ時計が鳴る。時を刻んだ針が、一周している。
「贖罪の時間です……」
虚空の裂け目に突っこんだ零の手が、すらりと小ぶりな刃『Ø』を抜き出した。構える間もなく、富子を肩口から斬りつける零。
「テ、メェ……!」
傷口を押さえ、よろめく富子。控えめな刃とは裏腹に、ユーベルコードで強化された威力は富子を苦悶させるに十分だった。
しかも、零の攻撃はそれで終わりではない。
「夕夜!」
「わかってるよ!」
零と挟撃する形で、富子に後ろに現れたのは――零だ。
銀髪を揺らす零のもうひとつの人格『夕夜』が、一時的に実体化した姿だった。夕夜が駆使する砲撃ユニット『Punishment Blaster』が火を噴き、富子を呑みこむ。
「ぐあああ……っ!」
「今だね、千里さん!」
「あぁ、一気呵成といっとくか」
富子が弱った隙を突き、動き出す澪と千里。
「風よ! 力を貸して!」
澪が解き放つ魔力に呼応して、花弁の嵐が舞い上がる。破魔の力をこめられた花の刃が富子の肌を斬り、怯ませたそこへ――千里のユーベルコードが放たれる。
「三途の渡し賃。俺の奢りや!」
「ざけんな! どうしてアタシが……ガァァァッ!!」
百を超える破魔の霊符――『霊符弾・三式』を撃ちこまれた富子が、憎々しげに声を揺らした。
苦戦
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
アリス・セカンドカラー
某バスケ漫画のミスディレクションステルス(目立たない、念動力視力ハッキング、盗み攻撃、地形の利用、迷彩、影が薄い属性攻撃)を模倣して、知覚の中にいながら認識の外へと外れましょう。
失敗しても大食いの念動力による盗み攻撃で熱量を吸収してダメージ軽減を、意識さえ残ればユベコで幻想創造して回復できる。
私の幽体分身を幻想創造して膀胱をにぎにぎしての精神攻撃で集中力を乱すわよ♡ほらほら、他に気を取られると大変なことになるわよ♪で、限界まで我慢したとこに封印を解く、と開放されちゃったわね☆
憤死や発狂死までいかんでも血管きれて脳にダメ入るっしょ。
茫然自失になるなら妄想世界に取り込んで生命力吸収のキスをするわ♡
「猟兵……ああ憎たらしいゴミどもが!」
破魔による苦しみも抜けぬまま、怒鳴り散らす富子。
その逆上っぷりを見て、アリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の魔少女・f05202)は不用意に姿を晒すのは危険だと考えた。
「ここは某バスケ漫画に則り、ミスディレクションステルスよ」
などとほざくアリス。
彼女は持てる力、技術のすべてを尽くして――なんかもうひたすら影を薄くした。
THE空気となり、そろそろと進むアリス。
しかし!
「コソコソしてんじゃねぇぞクソが!!」
「あーっ」
サクッと富子に発見されて爆発した。ひゅるひゅると吹っ飛んだアリスは、御所の庭の花に頭からぽふんと落下する。
常人相手ならいけただろう。
だが猟兵絶対殺すウーマンになってる富子には無理だったんや。
が、ミスを引きずらぬのがアリスという女だ。
「熱量を念動力とかで吸収してゴリ押しよ☆」
「な、なに普通に走ってきやがるテメェ!?」
アリスを目で追い、爆発させまくる富子。しかしアリスはあらゆる技術を用いてダメージ軽減を図り、言葉どおりゴリ押しで富子の攻撃をやり過ごした。
「ふふ、次はわたしの番ね」
にやりと笑ったアリスが、ユーベルコードで想像を創造。無敵の幽体分身を生み出して、富子に飛びつかせる。
すると――。
「……あん?」
富子さんに異変が。
「なんかムズムズする……」
「ふっふっふ。わたしの幽体分身があなたの膀胱をにぎにぎ」
――――しばらくお待ちください――――。
「ハッ。一瞬焦ったが、炎で蒸発させれば問題はねぇ!」
「くっ、さすがは大悪災と称されるだけあるわね……」
なんか笑い飛ばしてる富子の前で、がっくりと地面に手をついているアリス嬢。
何があったのかはわからない。
わかってもいけない気がする。
苦戦
🔵🔴🔴
ヴィヴィアン・ランナーウェイ
【野良】で連携。
さて、偶然にも面子は揃った訳ですしその首いただきましょうか。
●ダッシュを用いて距離を保ちつつ、敵のUCの隙を探します。
敵の攻撃はほかの皆様が凌いでくださるようなので、こちらに集中出来ますわね。
もちろん、被弾は可能な限り減らしますが。
そして、この状況こそが弱点。
貴女は、貴女のUCは、集団の敵に弱い。
憎悪の視線をぶつける、というのもそれこそカバーできる範囲に限界がありますから。
ひとりよがりの貴女は、数の暴力に負けるのですわよ。
さあ、貴女を裁く断頭台の用意は出来ました。
拘束した敵に向けて、槍の一撃を放ちましょう。
おさらばです。
グラディス・ドラモンド
【野良】
グハハハハ!!大したババアだなぁおい!!……だがこいつぁこのまま置いとくわけにゃいかねぇなぁ
うっし、相手の先制には嬢ちゃん達が向かった、んなら俺様は追撃の時間稼ぎをしてやらぁな!!
魔眼の視線をぶつけて爆破、ババアの影と俺様の影を繋ぎ動きを阻害する。
俺様の威厳とテメェの憎悪……どちらが上か付き合ってもらうぜ年増ァ!!
集団戦に弱いとありゃあ後は全員でボコるだけだな!
俺ぁ影だ、影を司る狼……繋いだ影を伝って死角から飛び出してその貧相な身体を食い破ってやらぁ!!視線をぶつけるのは良いがよぉ…テメェに影を補足できるんか?
───我が影踏みの魔眼……オメェの憎悪で逃れられるか試してみやがれ!!
アリス・レヴェリー
【野良】で連携。
嫌な視線ね。そんなにじっと見られたら穴があいちゃいそうだわ。
……現に、【刻命の懐中時計】の12枚の結界を何枚か張ってなかったら、穴じゃとても済まなそうだしね。
結界にも限りがあるから、このまま防ぐんじゃそのうち限界がくるし、あの人は視線を動かすだけでいいから皆も動きづらいし……
うーん……あっ、そうだわ。
【光】属性の高純度の【世界の雫】。これを富子さんの眼前を通るように放りましょう。直接ぶつけるのが目的のような仕草で【フェイント】をかけて、視線での迎撃を誘うわ。
飛んできた結晶を撃ち落とすには見るしか無い。割れた瞬間、凄まじい光を放つ結晶をね
彼女の目が眩んだら、後は皆に任せたからね!
アリエル・ポラリス
【野良】で連携
怖い顔したお姉さんね、綺麗なお洋服とお顔が勿体ないわ。
よぉし、行くわよ!
最前線に踏み込む勢いで前に出るわ!
爆発する炎なんて危ないじゃない! ブレイズキャリバーとしての物質化した炎を纏って視界を遮るわ! 炎ごと燃やそうとするなら、延焼する前に炎を切り離す!
それに、長々耐える必要も無いもの。
ワンちゃんとアリスちゃんが相手の動きを邪魔してる間に、ヴィヴィアンさんが相手のユーベルコードを止めてくれるはず。
さて、この世界、なんだかんだで富子さんの財が無きゃここまで豊かでは無かったはず。
だからこそ――苦痛なんか与えないわ。
私の『恩返し』の炎、受け取りなさい!
紫の炎熱が迸る、花の御所。
その圧するような空気を肌で受け、グラディス・ドラモンド(30の軍団を統べる■■の公爵(自称)・f16416)は野太い笑い声をあげた。
「グハハハハ!! 大したババアだなぁおい!!」
「ほめてる場合じゃありませんわよ」
「……あぁ、まぁその通りだなぁ」
横からヴィヴィアン・ランナーウェイ(走れ悪役令嬢・f19488)のお嬢様ツッコミを受け、キリッと黒狼の顔になるグラディス。
そんなやりとりを横目に、アリエル・ポラリス(慈愛の結実・f20265)は向こうから息荒く近づいてくる日野富子に目を留める。
「殺す殺す……全部全部、ぶっ殺してやる!」
「怖い顔したお姉さんね、綺麗なお洋服とお顔が勿体ないわ」
「言っても無駄……かもね」
おどけてみせたアリエルに、アリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)がこそりと呟く。怒りに燃え、炎を散らす姿を見れば、敵に何を言えども無駄なのは明白だった。
富子の不気味なほど青い瞳が、大きく剥かれる。
「死ね! 死ね死ね死ね!!」
「来ますわよ!」
「わたしに任せて」
ヴィヴィアンたちを制して前に出たアリスを、視線を伝った力が襲う。導火線のようにアリスの眼前に奔った熱が弾け、煌々と紫の爆炎が炸裂する。
邸宅が揺らぎ、軋む大爆発。
――しかし紫炎が勢いを休めたとき、その向こうには平然と立つアリスの姿があった。
「テメェ、何のうのうと立ってやがる!」
「嫌な視線ね。そんなにじっと見られたら穴があいちゃいそうだわ」
青い瞳を向け、毅然とするアリスだが、内心はそう平静でもない。
後ろ手に握る『刻命の懐中時計』の文字盤には、12個の世界の雫をはめこんでいる。しかし雫の数はもう半分になっていた。雫1つにつき1枚張れる堅牢な結界を重ねなければ、今頃アリスたちは爆炎に包まれて倒れていただろう。
「とりあえず1回は防げたけど……」
「十分よ! アリスちゃん!」
不安げなアリスの肩に手を置き、飛び出したのはアリエルだ。
前へ出る。
距離を詰める。
爆発を生む富子の視線を、恐れもせずに。
「そんなに肉片になりてぇか? なら殺ってやるよ!!」
「そうはいかないわ!」
富子の憎悪の眼差しが自身に向くのを認めるや、アリエルが掌をかざす。
愛亡き者への葬送火(クレマシオン)――静やかに燃え盛る赤炎を盾のように前方にひろげ、自身の姿を陰に隠した。対象を失った視線はアリエルの炎で止まり、中空で大爆発を巻き起こす。
「爆発する炎なんて危ないじゃない!」
「はぁ? 知るか! アタシが爆ぜろっつーんなら爆ぜれば……ん?」
途方もない熱で歪む空間を挟み、アリエルに吐き捨てた富子が、気づく。
アリエルの後方にアリスしかいない。
他にいたはずの2人――『癇に障る話し方をする赤髪女』と『真っ黒な体をした狼』が、見えなくなっている。
「クソが。どこに隠れやがっ――」
「どこにと言うなら教えてやろう。こっちだぜ!」
「!?」
高らかに放たれた一言に、即座に振り向く富子。
壁。壁に貼りつくようにグラディスがいた。アリスとアリエルに構っていた間に側面に移動していた黒狼は、金色の魔眼を光らせる。
途端、富子の肉体が爆発を起こす。
「ぐっ……!?」
ひとまず飛びのき、体勢を立て直そうとする富子。
だが、いくら強く床を蹴ろうとも、体が動かない。その場に磔にされたかのように、奇妙な力で繋ぎ止められてしまっている。
「な、何だこりゃ!!?」
「そう急いで離れることはねぇだろ。俺様の威厳とテメェの憎悪……どちらが上か付き合ってもらうぜ年増ァ!!」
床にしかと四つ足を踏み、咆哮するグラディス。
魔眼(カゲフミノマガン)――互いの影を繋ぎ、移動を阻害するユーベルコードが、接着剤でもつけたように富子の足を止めていた。
「こうなりゃ後はボコるだけだぜ!」
「ナイスよワンちゃん!」
「誰がワンちゃんだコラァ!」
親指を立てたアリエルにガルルと牙を剥くワンちゃんもといグラディス。
そこはかとなく空気が緩んだ……が。
「クソクソクソどもが! 一丁前にアタシに盾突きやがって!!!」
脚が動かせないならば、と富子がグラディスに向けて眼を見開く。見えぬ力が空間を奔り、グラディスを炎に呑みこむべく迫る。
「やべぇ!?」
爆発に備え、身を固めるグラディス。
しかしそんなとき、視界の端に、難しく考えこんでいるアリスの姿を見つけた。
「うーん、うーん……あっ、そうだわ」
ぽん、と手を叩いたアリスが自身のエプロンドレスを探る。
そして探って探って取り出したのは――懐中時計のものとは別に持っている、『世界の雫』だった。
「えいっ!」
「あん?」
アリスから放られた物体に、富子の視線が移る。
一見してそれが何かはわからない。だが自分に向かう以上は攻撃の部類だろう。そう判断した富子はまずそれを爆破しようと、ユーベルコードを使おうとした。
しかしその瞬間、世界の雫が、眼も焼けるような凄まじい閃光を放つ!
「!!?」
眼を閉じる富子だが、もう遅い。
高純度な光属性をこめられた世界の雫によって、その眼は一時的にだが見えなくなっていた。
「今のうちよ!」
「よっしゃあ!」
グラディスの体が足元の影に溶けて消え、富子の影から出現する。そのまま牙で喰らいつくと、富子は張り裂けんばかりの叫びをあげた。
「い、ガアアアアアッ!!?」
「どうだババア! テメェに影は捕捉できまい!」
「クッソがぁぁぁぁ!!!」
いまだ視界が闇に覆われながらも、富子が瞳をグラディスに向ける。見えずとも視線さえ向ければ爆破はできるのではないか、という望みにかけた。
しかしそのとき、姿を消していたもう1人――ヴィヴィアンが突如として陰から飛び出し、『アリスランス・烈火』の一突きを富子の背部にお見舞いする。
「ガッ……そういやもう1人いやがった……!」
「1度に攻められると、困ってしまいますわね!」
立て続けのダメージに膝をついた富子を悠々と見下ろし、ヴィヴィアンはいつものように手の甲を口元に添えて高笑いした。
「そう! 貴女は、貴女のユーベルコードは、集団の敵に弱い。視線をぶつける、というのもそれこそカバーできる範囲に限界がありますから」
「弱い……アタシが弱いってのかテメェ!!」
「そうですわ! ひとりよがりの貴女は、数の暴力に負けるのですわよ!」
ビシッ、と憤慨する富子を指差すヴィヴィアン。
その指摘はまさにそのとおり。背を斬られてその弱点を証明されてしまった富子は、気づけば刃のない断頭台に拘束されていた。
「な、何だこりゃあ!?」
「さあ、貴女を裁く断頭台の用意は出来ました」
手足まで拘束されてもがく富子を置き去りに、クールにその場を離れるヴィヴィアン。
そして入れ替わりに近づくのは、アリエル。
「さて、この世界、なんだかんだで富子さんの財が無きゃここまで豊かでは無かったはず。
だからこそ――苦痛なんか与えないわ」
アリエルの手に赤炎が灯る。
葬送の炎。死者を送る、静かな炎。
その肌を撫でる熱を感じた富子は、見えぬ眼でアリエルを睨む。
「お、おい、やめやがれ! やめやがれクソがァーー!!」
「私の『恩返し』の炎、受け取りなさい!」
懇願とも命令とも取れぬ、聞き苦しい断末魔ごと、アリエルの葬送火が呑みこんだ。
ただ静かに花の御所を満たす炎――それが消えたとき、もう、醜悪な欲望に燃える女の姿は灰も残さず消えていた。
大成功
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