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エンパイアウォー㉔～軍神の居ぬ間に

作者：刀道信三

●春日山城攻略戦
「みんな、集まった？」
　猟兵達に声を掛けてグリモアベースに召集した楜沢・玉藻（金色の天井送り・f04582）が話し始める。
「まずは信州上田城の攻略、お疲れ様。撤退した上杉軍は主力本隊と合流して関ヶ原に向かったわ」
　つまりこのことにより上杉軍の本拠地である越後の春日山城が手薄になっていることがわかった。
「春日山城は普段であれば堅牢な山城だけど、今なら攻め込んで制圧することもできるはずよ」
　春日山城は上杉軍の本拠地なので、制圧して調査する事が出来れば、信長軍に関する重要な情報を得ることができるかもしれない。
「あたし達の役割は、斥候として城攻めをしているあたし達の戦力を探ろうと、城門から出て来た部隊を返り討ちにして敵の戦力を削ぐことよ」
　１０体程度の切支丹武者が春日山城を出て東に向かうので、山中で待ち伏せするなり、広い平野まで誘い出すなりして、１体残らず殲滅してほしい。
「せっかく城の外に出て来ているんだから、放って置く手はないわ。千里の道も一歩から、城攻めもコツコツと斥候に出て来たオブリビオン兵力を叩くことで進めていきましょ」
　１体も残さず、ひとつの情報も春日山城に持ち帰らせないという気持ちと工夫を持って戦いに挑むと良いだろう。
「上杉軍が関ヶ原に行っている今が越後をオブリビオンの支配から解放するチャンスよ。越後の人達のためにも頑張りましょ！」
　そう言って猟兵達を激励すると、玉藻は扇子を振って猟兵達を送り出すのだった。

第1章 集団戦 『切支丹武者』

POW   :    騎馬突撃 自身の身長の2倍の【軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。 SPD   :    後方支援 【切支丹女武者】の霊を召喚する。これは【鉄砲による援護射撃】や【一斉掃射】で攻撃する能力を持つ。 WIZ   :    主の裁き 【ハルバード】を向けた対象に、【天からの雷】でダメージを与える。命中率が高い。 イラスト：森乃ゴリラ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「魔軍将はまだ俺の手には負えなさそうですが、ここでなら力になれるでしょう」
　ラヴェル・ペーシャ（ダンピールのビーストマスター・f17019）は戦争の情報を集め、この戦場を選んで転送に応じた。
　オブリビオンに支配された地という点が似ているというだけだが、ラヴェルは生まれ故郷のことを微かに思い出す。
「…………」
　提供された予知情報から、切支丹武者達が通る山道の樹上に息を潜めて待ち伏せした。
「行きますよ」
　ラヴェルは体長４メートル弱と、野生のライオンの倍くらいの大きさを持つ黄金のライオンを召喚する。
　そして黄金のライオンに騎乗して切支丹武者達を急襲した。
　まず着地点に居た切支丹武者がライオンに踏み潰され、その重量の前に全身の骨を折られ内臓を破裂させながら息絶える。
　次にすぐ近くにいた切支丹武者の喉笛に噛み付き、頚動脈どころかゴロリと首を落とした。
「敵襲！」
　切支丹武者達は火縄銃を構えた切支丹女武者の霊を召喚して応戦するが、馬と違い山の木々を苦としない黄金のライオンを、木々を遮蔽にされ捉えることができない。
「もう一撃」
　切支丹女武者の霊達が種子島に弾込めを行なっている隙にラヴェルはもう一度ライオンを突撃させた。
　鋭い爪と体当たりが切支丹女武者達の霊を薙ぎ払い、それを召喚していた切支丹武者一人の首を再び噛み切らせる。
「ここが退き時ですね」
　ラヴェルは素早い判断で撤退を開始するが、切支丹武者達は山を駆け降りるライオンを見送るしかなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ま、大きな戦ほど情報は力だからな。地味だが命の張りどころだ」
　茅原・紫九（風に流され来たる紫煙・f04064）は樹上から切支丹武者達の様子を窺う。
　猟兵の襲撃で死者が出て、春日山城に引き返そうという素振りを見せていた。
　そうはさせまいと紫九は木々を渡り、切支丹武者達に接近して行く。
「そうは問屋が卸さねえ」
　樹上を移動しながら、絵具による射撃を切支丹武者達に見舞っていく。
　飛来する絵具に対して構えることで切支丹武者達の足が止まり、彼らの足許は紫九の領域へと塗り潰されていった。
　絵具による射撃の直撃で一人、落下の勢いを乗せた大筆で兜ごと脳天を割られて一人、切支丹武者が絶命する。
「本業の鎧武者に真っ向から勝てるとは思っちゃいねえ。だけど塗られた地面の上なら俺の方が有利だ」
　塗り潰された地面の上で戦闘力が強化された紫九は、切支丹武者達のハルバードを木の幹を蹴った三角跳びで掻い潜り、マジックソードと小型ナイフで甲冑の隙間を的確に切り裂いていった。
「雷攻撃は山火事になるから使えねえだろ……使わねえよな？」
　戦力の半数が殺され、更に不利な状況に焦った切支丹武者達は神頼みでもする様に斧槍の矛先を一斉に紫九へと向ける。
　紫九は全力で跳躍することで切支丹武者達のユーベルコードを回避した。
　落雷は紫九の塗料に引火して豪快に燃え上がる。
「やれやれ、こうなる前に倒せるのが一番だったんだけどな」
　紫九から逃れる為の捨て身の行動で、切支丹武者達も少なくない被害を負うことになった。
　統率を失い鈍い足取りで散り散りに逃げる切支丹武者達を紫九は見送る。
　あの状態で猟兵達の手を逃れて城まで辿り着ける者はいないだろう。
　それより紫九は燃え上がる火の手を対処することにした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「猟兵……」
　それほど高くない頭上を見様によっては暢気そうに滑空して行くソラスティベル・グラスラン（暁と空の勇者・f05892）を見て、切支丹武者は身を潜めた。
　逃げる為に山道を外れ険しい山中を、春日山城の方角もわからないまま歩いていた矢先に猟兵が進行方向へと飛んで行く。
　幸い気付かれた様子はないが、このまま帰還できる当てもないなら一矢報いてやろうという考えが過った。
　そうと決めて切支丹武者は気配を殺しながらソラスティベルの飛び去った方向に進む。
　果たして木々の途切れた山中の広場でソラスティベルは、蒼空色の大斧サンダラーを手に仁王立ちで切支丹武者を待ち受けていた。
「この先は通行止めです、お帰り下さい！　押し通ると言うなら、今に生きる人々を害するというなら、我が『勇気』を以て相手になりますッ！！」
「おおおおぉ！」
　開けた場所と見て切支丹武者は軍馬を召喚し、騎馬突撃によってソラスティベルを轢き潰そうとする。
　それを気合の守りの勇者理論で自身を強化したソラスティベルは、擦れ違い様のカウンターで斧をフルスイングし、軍馬の脚を四本まとめて斬り飛ばした。
　更にそのまま遠心力に任せて旋風のように一回転。
　調度落馬して来た切支丹武者の胴を芯で捉えて甲冑ごと真っ二つにする。
「千里の道も一歩から……ふふふ、そうですね。猟兵の仲間たちは今も戦っています。この世界の各地で、この世界を救う為に！　ならばわたしも『勇者』として、越後を覆う暗雲を晴らしましょうッ！！」
　そう言ってソラスティベルは次の敵を探す為に、空に向かって飛び立つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「フィーアです。生かして返すなとのことなので、全力を尽くします」
　フィーア・ストリッツ（サキエルの眼差し・f05578）は山道をホバー走行する宇宙バイク、インパルスキャリバー『ナイチンゲール』を器用に駆って、逃げる切支丹武者を索敵する。
「あちらは騎馬兵ですか。ならば騎兵同士の戦いと参りましょう」
　形振り構わず召喚した軍馬で山道を春日山城に向かって走る切支丹武者を回り込み、フィーアは宇宙バイクで正面から突撃を仕掛けた。
「騎馬は突破力は脅威ですが……突撃中に真正面から放たれる攻撃をとっさに躱すような兵科ではないですね」
　ハルバードを構え押し通ろうとする切支丹武者に対し、フィーアは深く息を吸い込み喉奥に刻まれた魔術印を駆動させる。
　氷雪竜砲（グレイシャル・ドラゴンブレス）により前方の景色が一瞬で雪山と化し、凍った馬の脚が駆けていた勢いで砕けて切支丹武者が放り出された。
「敵の足さえ止めればあとはこちらのワンサイドです。歩兵が騎兵に対応する難しさは、あなたが良くご存知でしょう？」
　武器を構え、ナイチンゲールの機動力を活かして迫るフィーアを前にして、切支丹武者は為す術なく討ち倒された。
　こうして切支丹武者の斥候部隊は猟兵達の手によって各個撃破され、誰一人として春日山城に帰還することはなかったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年08月14日